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幼小の連続性を踏まえた小学校教員養成における「生活科」の指導法

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幼小の連続性を踏まえた小学校教員養成における「生活科」の指導法

日比野博(人間生活科学部特任教授) 長江美津子(人間生活科学部特任教授) 伊藤博美(非常勤講師) 要約:本稿は,幼児教育と生活科教育との相違を踏まえつつ,実践例を挙げながら,幼児教育から 生活科教育への接続のあり方,すなわち,幼児期に遊びを通して育んできた「学びの芽生え」を小 学校教育での「自覚的な学び」につなげていく指導のあり方について考察し,次に,子どもたちの 興味や関心を持って環境に主体的に関わろうとする姿を示した。最後に,平成 29 年3月改訂の幼稚 園教育要領と小学校学習指導要領において育まれるべきとされた「資質・能力」について,デュー イの遊び論に依拠して,幼児教育と「教科教育法(生活)」の事例からその連続性を示した。 0 生活科は,1989(平成元)年改訂,1992(平成4)年より実施の学習指導要領に創設された小学 校低学年対象の教科である。その成立過程については,当時,文部省初等教育局教科調査官の生活 科担当であった中野重人に詳しいi。中野によれば,1968(昭和 43)年の小学校学習指導要領改訂 の時から,低学年の社会科や理科の在り方が問われてきた。次の 1977 年(昭和 52)年改訂の際は, 新教科の構想が出されつつ,「合科的な指導」が推進されるに留まり,実施は十分でなかった。ま た「合科的な指導の事例の多くは,社会科と理科の内容にかかわるもの」iiであった。そこで 1983 (昭和 58)年の中央教育審議会の「審議経過報告」に加え,1986(昭和 61)年の臨時教育審議会の 第二次答申でも小学校低学年の教科の再構成が検討された。その後「小学校低学年教育問題懇談会」 (後に増員し「小学校低学年の教育に関する調査研究協力者会議」へと改称)による「審議のまと め」で「生活科」の構想が提案された。「生活科構想は,突如として出てきたものではなく,それ までの総合化という改善の歩みの一つの結論ということができる」iii。そして 1987(昭和 62)年に 教育課程審議会の出した(生活科については「生活科(仮称)委員会」による検討結果を中心とす る)「審議のまとめ」では,「生活科」は社会科と理科の統合ではなく,「自己認識の教育」「個 性をいかす教育」としての生活科の独自性や,活動や体験が重視される生活科の特質が提示されたiv こうして創設された「生活科」の実施から,四半世紀が過ぎようとしている。その間,教科の目 標は 1999(平成 11)年,2008(平成 20)年改訂を経てもほとんど変化していない。「生活科」を 新設した学習指導要領の実施以前から,富山県で生活科の実践・研究を行ってきた水上義行は,そ の実践から生活科が与えた影響をあげている。第一に,生活科が小学校教育における教師の「指導」 を子ども主体の学習への教師の「支援」へと転換させたこと,第二に,幼稚園や保育所における活 動の中心である「遊び」を学習に取り入れた生活科vが,幼稚園・保育所・小学校の連携を図り,例 えば小1プロブレムviといった新しい課題を解決する一翼を担っていることであるvii 就学前から小学校にかけて円滑な接続を図ろうとするこの動きは,2012(平成 22)年の幼児期の 教育と小学校教育の円滑な接続の在り方に関する調査研究協力者会議「幼児期の教育と小学校教育 の円滑な接続の在り方について(報告)」においてまとめられている。この報告では,幼児期から 児童期における「三つの自立」(「学びの自立」「生活上の自立」「精神的な自立」)が,「幼児 期の教育との接続を図る上で重要な役割を果たす小学校低学年の生活科の目標に通ずるものである」

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2 (p.15)とされ,そうした実践報告も出されているviii こうした生活科をめぐる動きに対して,小学校教員養成課程において「生活科」の指導方法に関 する授業全体の実践報告は,未だ豊富に蓄積されているとは言えないix。しかし,近年では上記の 接続の問題に対応して,伊勢正明(2014)x,伊勢正明(2016)xiなどがある。 2017(平成 29)年3月告示の学習指導要領改訂に向け,前年8月に出された中央教育審議会の「次 期学習指導要領に向けたこれまでの審議のまとめ」では,「幼児期の終わり(5歳児修了時)まで に育ってほしい姿」が明確にされ,幼児教育の学びの成果が小学校と共有されるよう工夫・改善が 求められる一方,小学校に対しては「生活科を中心とした「スタート・カリキュラム」等を通じて, 保幼小連携を図っていく」ことが示された。さらに,現行学習指導要領における生活科の成果と課 題については,次のように述べられている。 ○ 生活科は,児童の生活圏を学習の対象や場とし,それらと直接関わる活動や体験を重視し, 具体的な活動や体験の中で様々な気付きを得て,自立への基礎を養うことをねらいにしてき た。現行学習指導要領では,活動や体験を一層重視するとともに,気付きの質を高めること, 幼児教育との連携を図ることなどについて充実を図った。 ○ 各小学校においては,身近な人々,社会及び自然等と直接関わることや気付いたこと・楽し かったことなどを表現する活動を大切にする学習活動が行われており,言葉と体験を重視し た改訂の趣旨が概ね反映されているものと考えることができる。 ○ 一方で,以下のような点については,更なる充実を図ることが期待される。 ① 活動や体験を行うことで低学年らしい思考や認識を確かに育成し,次の活動へつなげる学 習活動を重視すること。「活動あって学びなし」との批判があるように,具体的 な活動を通し て,どのような思考力等が発揮されるか十分に検討する必要がある。 ② 幼児教育において育成された資質・能力を存分に発揮し,各教科等で期待される資質・能 力を育成する低学年教育としてなめらかに連続,発展させること。幼児期に育成する資質・能 力と小学校低学年で育成する資質・能力とのつながりを明確にし,そこでの生活科の役割を考 える必要がある。 ③ 幼児教育との連携や接続を意識したスタートカリキュラムについて,生活科固有の課題と してではなく,教育課程全体を視野に入れた取り組みとすること。スタートカリキュラムの具 体的な姿を明らかにするとともに,国語,音楽,図画工作などの他教科等との関連についても カリキュラム・マネジメントの視点から検討し,学校全体で 取り組むスタートカリキュラムと する必要がある。 ④ 社会科や理科,総合的な学習の時間をはじめとする中学年の各教科等への接続が明確では ないこと。単に中学年の学習内容の前倒しにならないよう留意しつつ,育成を目指す資質・能 力や「見方・考え方」のつながりを検討することが必要であるxii すなわち,新幼稚園教育要領および新学習指導要領においては,幼児教育と小学校教育のより円 滑な接続が図られるよう,両者における学びの連続性が強調されると同時に,小学校教育課程にお ける生活科の役割はさらに重要度を増したと言えよう。 そこで本稿では,幼児教育と小学校教育の学びの連続性を踏まえた保育者・小学校教員養成課程 における「生活科」の指導法に関する授業の在り方を検討することとする。以下では,「教科教育法 (生活)」担当の日比野が小学校生活科と幼児教育の比較検討を行い,その上で「教科教育法(生 活)」の実践について報告する(1,2,4)。その際,長江による幼児教育の実践事例を含める(3)。 その上で,幼児教育と小学校教育の学びの連続性についてデューイの遊び論を観点として,伊藤が 検討する(5)。 − 180 −

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(伊藤) 1 はじめに 子どもにとって小学校への入学とは,遊び中心の生活から(教科)学習中心の生活へと変わるこ と,また,時間の区切りがはっきりとして,学んでいくことが一日の中で明確に決められているな ど,生活スタイルが大きく変わることである。近年,子どもが迎えるこのような大きな変化の中, 集団行動がとれない,授業中に座っていられない,先生の話を聞かない等,学校生活になじめない 状態が続く子どもが見られ,現場においては「小1プロブレム(問題)」と言われる問題になってい る。原因としては,基本的な生活習慣が身についていない,人間関係を形成する力が低下している, 自分をコントロールする力が身についていないことなどが考えられているxiii。幼稚園や保育所では, 主に「遊び」や「体験」が重視されるのに対し,小学校では教員による「座学」での教科学習が中 心になる。また,チャイムに合わせて時間割通りに動かなければならない。小学生になって急に長 時間イスに座り,じっと先生の話を聞くことになじめない子どもが出てくるのは当然のことである。 近年,学校種間の接続の重要性についての議論がされ,幼稚園から小学校,小学校から中学校, 中学校から高等学校などの様々な連携が図られている。平成 29 年3月告示の新学習指導要領第2章 第5節生活科の指導計画の作成と内容の取り扱いにおいて「(4)幼稚園教育要領等に示す幼児期の終 わりまでに育ってほしい姿との関連を考慮すること。特に,小学校入学当初においては,幼児期に おける遊びを通した総合的な学びから他教科等における学習に円滑に移行し,主体的に自己を発揮 しながら,より自覚的な学びに向かうことが可能となるようにすること」とうたわれている。 そこで,本報告においては,幼児教育と生活科教育との相違を踏まえつつ,実践例を挙げながら, 幼児教育から生活科教育への接続のあり方,すなわち,幼児期に遊びを通して育んできた「学びの 芽生え」を小学校教育での「自覚的な学び」につなげていく指導のあり方についての一考察を目的 とする。 2 生活科教育や幼児教育の特徴 生活科とは,知識や事柄を覚えればよい教科ではない。幼児教育とのつながりが深い小学校生活 科においての目標は,具体的な活動や体験を通して,身近な生活に関わる見方・考え方を生かし, 自立し生活を豊かにしていくための資質・能力を育成していくことを目指している。つまり,身の 回りの環境や活動の中で,子ども自身が五感を働かせ,周囲と関わりながら不思議さに気付いたり, 生活に取り入れ工夫したりすること,また,能動的に身近な物やと関わり,工夫しながら楽しく遊 んだり活動や創造したりすることである。そして,これらのことを通して,自分自身の良さや可能 性,素晴らしさに気付き自立し豊かな生活を送るための資質・能力を育んでいくことである。この 目標を達成するため,教師は子どもの体験していることやそこからの気づきを敏感にキャッチし, 子ども自身が気づきを深めることができるような働きかけをすることが大切になってくる。 一方,幼児教育は幼児の一人一人の発達の姿や内面を理解しながら,発達の道筋を見通して,教 育的に価値ある環境を意図を持って計画的に構成していくことを行っている。そして,幼児が主体 的にかかわることのできる環境を作り,適切な援助をしていく,遊びを通して子どもたちが自ら気 付き,考え,自己実現する中で多くのことを学ぶようにしている。したがって,幼児期の子どもた ちは遊びながら様々な資質や能力を身に付けているが,小学校以降は,学びや育ちが行動内容によ って判断・評価されたりする。どちらも学びや育ちを目標としているが,その質が違っていると言 える。 例えば,遊ぶ活動を通して学ぶことについては,新小学校学習指導要領生活科と第2章第5節生 活科の内容(下表左欄),新幼稚園教育要領第2章ねらい及び内容における,環境のねらい(下表右

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4 欄)には次のように書かれている。 (6) 身近な自然を利用したり,身近にある物 を使ったりするなどして遊ぶ活動を通し て,遊びや遊びに使う物を工夫してつくる ことができ,その面白さや自然の不思議さ に気付くとともに,みんなと楽しみながら 遊びを創り出そうとする。〔下線部は新版 に加筆された部分:引用者〕 (1) 身近な環境に親しみ,自然と触れ合う中 で様々な事象に興味や関心を持つ。 (2) 身近な環境に自分から関わり,発見を楽 しんだり,考えたりし,それを生活に取り 入れようとする。 (3) 身近な事象を見たり,考えたり,扱った りする中で,物の性質や数量,文字等に対 する感覚を豊かにする。 このように,生活科では,遊びや遊びに使う物を工夫してつくったり,遊びを創り出そうとする という到達目標を掲げている。また,面白さや自然の不思議さに気付くという態度を目標に挙げて いる。それに対して,幼稚園教育では,「興味や関心を持つ」「生活に取り入れようとする」「感 覚を豊かにする」など,活動や関わりを通して小学校での学びの基礎的なものや,態度的なものを 育んでいくことが中心となっている。また生活科では,経験や体験を通して気付き学んでいくため の明確な手段や目標を基に活動が計画されているが,幼児教育においては遊びという活動が中心と なっており,その中で偶発的,自然発生的な物事から気付き学んでいくという形態である。 (日比野) 3.幼児教育における実践 本節では前節で述べられたように,小学校での学びの基礎を育む遊びの姿として,小学校「生活 科」につながる幼児教育の実践事例を2つ紹介し,考察を述べる。 (1) 事例1 4 歳児 『はちみつジュース!』(5 月 8 日) E:「先生,はちみつジュース飲みたい?」 保:「うん,飲みたい!」 E:「こっちこっち」(走って行く) -ブランコ横の低木に子どもが群がっている- E:「これ,チューっとして!」(保育者に小さな赤と白の花を渡す) 保:(言われたとおりに吸う)「おいしい!」 E:「うん,はちみつだよ」 A:「これもいいよ」 B:「こっちいいよ」 T:(がくがついた花を保育者に見せる) A:「その緑は取らないかんよ,花の咲く前もダメだよ,咲いてからがいいんだよ」 (低木の周りには,子どもたちが吸ったチェリーセージの花が沢山落ちていた) 一昨年,職員が植えておいたチェリーセージの花が今年も開花。白に赤の花びらが可憐で可愛い。 昨年もこの場所で年中児や年長児らが花の周りに集まり,蜜を吸って遊んでいた。そのことを子 どもたちの中の一人が思い出し花の蜜を吸ってみたのではないか。試してみたらやはり甘かった。 このことが子どもの間に広まり『はちみつジュース』となったのだろう。 Eの「先生,はちみつジュース飲みたい?」は,先ず保育者の意思を尊重して飲みたいかどうか確 認をしているが,Eの友達だけでなく『先生にもこの楽しさを伝えたい』『面白さを知らせたい』『発 見を知らせたい』といった思いも感じられる。 保育者はEの指示通りに実際花の蜜を吸って「おいしい!」と返した。保育者が「おいしい!」 − 182 −

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と言ったことで,自分がしたことが喜んでもらえた,伝えてよかった,承認されたといった思いを 味わったのではないか。周りでこのやり取りを見たり聞いたりしていた A や B も,保育者に教えよ うと「これもいいよ」「こっちもいいよ」と声をかけ知らせている。自分たちが発見した『はちみつ ジュース』。 そこに集まってきた子どもたちは花の蜜を吸う行為,花の蜜の甘さの共有など,同じ場所で同じ 感じ方をする中で,“友達と一緒は楽しい”という心地よさを味わっていたのではないか。保育者は 子どもの誘いに乗って蜜を吸ったり,子どもたちが期待している言葉を返したりすることで,子ど もたちの発見や遊びを肯定的に受け止めている。保育者の子どもたちを肯定的に受け止める姿勢は, 安心して遊びを続けていくことや,豊かな友達関係を育んでいく上で大切な役割といえる。 また,4 月や 5 月は子どもたちが初めて幼稚園や保育園に入ってきたり,進級でクラスや担任が 変わったりしたことで,子どもたちの情緒が不安定な時期でもある。この時期,保育者と一緒に園 で飼っている身近な飼育物を見たり,園庭の花に水にやったりしながら少しずつ園の生活に慣れ親 しんでいく。 職員が植えておいたチェリーセージは,そういった子どもの情緒の安定を図る役割だけではなく, 甘い蜜が吸えるといった子どもの興味や関心を惹く魅力があったのではないか。 「その緑は取らないかんよ,花の咲く前もダメだよ,咲いてからがいいんだよ」といったこれま での経験から分かった気付き,子どもと子どもの遊びを繋げるきっかけづくりの役目など子どもの 園生活を豊かにする大事な環境の一部につながったと言える。 保育者が環境構成の一つとして保育室に植物図鑑を置いておくことで,花の名前を調べたり他の 植物への興味や関心に繋がったり,また,ままごとやジュースやさんごっこ等の遊びなど,様々な 遊びへと展開をする可能性とそこでの学びに広がっていく。 (2)事例2 異年齢 『そら豆の皮むき』(5 月末) 保育者が職員室の前のテラスに「よいしょ,よいしょ」と言い ながら机を出し,何やら準備をしている。新聞紙を広げ,そこに ビニール袋に入ったそら豆を広げる。 その様子を“おや?”“何がはじまるのかな?”と 5 歳児の H 児や M 児,B 児がやってきた。 H:「せんせい,今からなにするの~」 M:「まめだよね」 保:「そう,マメでもいろんな種類の豆があるんだけど,これはそら豆っていうんだよ」 B:「しってる!せんせいにそらまめくんの本よんでもらったことある!」 M:「うん,M も!」 H:「ずっと前のおやつで食べたことあるやつだ~」 保:「そう,今日の 3 時におやつにしてみんなで食べたいなぁと思ってね。いっぱいあるから手伝 ってくれたら先生うれしいなぁ」 H:「うん,やりたい」 M:「M もやる」 B:「B も!」 その様子を見て,4 歳児や 3 歳児のJ児,K 児,D 児 らも次々と参加。

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6 テーブルを囲みながらそら豆の皮むきが始まった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ J:「わ~4つ入ってた!」 K:「中,ふわふわしてる」 D:「ワタみたいで,きもちいいね」 見たり触ったりしてその中で感じたことを思い思い言葉に表しながら楽しんだ。 保育園では給食やおやつでどのような物を食べているか献立表を配付して伝えるだけではなく, その日,給食で使われるニンジンやほうれん草などの食材や,調理したものを子どもや保護者など 多くの人の目に触れやすい場所に置き,関心を持ってもらえるような配慮がなされている。 そら豆の皮むき体験も食育の一つとして保育に取り入れている。子どもたちが自分たちの手で皮 を剥いたリ触ったりしたそら豆がおやつの時間に子ども達の前に提供されれば,どうであろうか。 「わ~!あさむいたそらマメだ」「早く食べてみたいな」と心が動き,食に対する意欲も湧き,おい しさも倍増になるのではないか。 また,こうした子どもたちの体験は食への関心だけではなく,見たり触ったりすることで,皮の ままのそら豆とさやの中の違いや『本当に“そらまめくんのベット”のようにふわふわだった』こと を知る幼児もいるだろう。『ふわふわして気持ち良いな』と感じる幼児もいるだろう。 同じ場所で同じようにそら豆の皮むき体験をしても,個々に面白い,不思議などの感じ様も様々 であろう。もう一度「そらまめくん」の本を見たくなる幼児,舟に見立てて水を張ったタライに浮 かべたり,絵本のようにさやをベットにしてそこに小石を並べたりと,感じ方やイメージの違いか ら様々な遊びに広がっていくだろう。年長児は 5 月の半ばに植えた,キュウリやナス,トウモロコ シやラッカセイなど他の食物への興味や関心,成長を期待しながら水やりなどの世話をすることに もつながっていくのではないか(下図参照)。 図 5領域から見る「そら豆の皮むき」 そら豆の皮むき そらまめくんの絵本を 先生に読んでもらう 豆 の 種 類 に 関 心 を持つ 図鑑で調べる 落花生の苗を 植える 世話をする おやつに食べる 友達とそらまめくんの 絵本を見る 何個あるか数える 大小のまめを比較する や 言葉 環境 人間関係 健康 表現 そ ら 豆 の さ や で あそぶ 豆 の 栄 養 効 果 を 知る 自 分 の 体 の 健 康 に興味を持つ そらまめくんの カルタとりをする そ ら ま め く ん に なってあそぶ そ ら ま め く ん の 劇遊びをする そらまめくんの絵本を 置いておく − 184 −

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(3)考察 幼児期はあそびを中心とした生活の中で,個人差や興味の違いなど幼児期の特性に応じた保育を 進めることが基本である。また,子どもたちが主体的に環境に関わり遊びが展開できるように,意 図的な環境構成を考えていく力が必要である。 こうした環境の下で,子どもたちは「面白そう」「やってみたいな」と心を動かし興味や関心を持 った環境に主体的に関わろうとする。その遊びが楽しいと益々好奇心が旺盛に働き,没頭したり繰 り返し遊んだりする。そういった姿が粘り強い姿となり,小学校以降の学習の基盤となる。 (長江) 4 「教科教育法(生活)」における実践 模擬授業における実践(A大学 平成28年度) ○ 授業科目 「教科教育法(生活)」 ○ 学 生 数 3年生25名 ○ 授業時数15コマ(1コマ90分)のうち,5コマ分の実践 「小学校学習指導要領(文部科学省 平成20年8月)」の2学年共通目標の中に,「自分と身近 な動物や植物など自然との関わりに関心を持ち,自然の素晴らしさに気付き,自然を大切にしたり, 自分たちの遊びや生活を工夫したりすることができるようにする。」とある。また,「平成20年 8月 小学校学習指導要領 解説編」(生活科)の中に,以下のように書かれている。 ○ 内容(5) 身近な自然を観察したり,季節や行事に関わる活動を行ったりなどして,四季 の変化や季節によって生活の様子が変わることに気付き,自分たちの生活を工夫したり楽しく したりできるようにする。 目指しているものとして, ・ 身近な自然に目を向け,興味・関心をもって観察したり,季節や地域の行事にかかわる活 動を行ったりして,四季の変化を体全体で感じ取り,季節によって生活の様子が変わることに 気付き,自分たちの生活を工夫したり楽しくしたりできるようにすること そして,次のようなことを配慮していくことが大切であると記されている。 ・ 身近な自然とかかわる活動を繰り返す中で,自然と一体になりながらその特徴や性質をと らえ,四季の変化や季節によって生活の様子が変わることに気付いていく。教師がこうした活 動から生まれた気付きを大切にし,振り返ったり交流したりする場を設け,それらの意味や価 値を児童が自覚できるようにしていくことが,自分の生活を工夫したり楽しくしたりすること につながっていくこと ・ 内容(6)「自然や物を使った遊び」等と適宜関連させて,創意工夫のある指導計画を作成す ること ○ 内容(6) 身近な自然を利用したり,身近にある物を使ったりなどして,遊びや遊びに使 う物を工夫して作り,その面白さや自然の不思議さに気付き,みんなで遊びを楽しむことがで きるようにする。 目指しているものとして, ・ 身近にある自然を利用したり,身近にある物を使ったりなどして,遊び自体を工夫したり, 遊びに使う物を工夫して作ったりすることが主な活動である。そして,その過程を通して,遊 びの面白さや自然の不思議さに気付くとともに,みんなで遊びを楽しむことができるようにす ること

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8 また,次のような活動を取り入れることが大切であると記されている ・ 特に大切にしたいのが,「比べる」「繰り返す」「試す」などの活動である。「比べる」 ことで相違点や共通点に気付いたり,「繰り返す」ことで「どうしてかな」と疑問が生まれた りする。体験を生かして「試す」ことで,「いつもこうなる」ときまりに気付くことなどが考 えられる。さらに友達とのかかわり合いを通して,約束やルールが大切なことや,それを守っ て遊ぶと楽しいことなどに気付き,友達のよさや自分との違いに気付いたり,相手の考えを尊 重したりできる態度が身に付いたりする。このようにして,児童は遊びを通して友達とのかか わりを深めたり広げたりしていくのである。 「小学校学習指導要領 解説編」(生活科)一部抜粋・加工 と記されている。 平成29年3月告示小学校学習指導要領では,遊ぶ活動を通して,遊びや遊びに使う物を工夫して つくり,その面白さや自然の不思議さに気付くとともに,みんなと遊びを楽しみながら創り出そう とする方向性が記され,楽しむ,気付くことが重要視されている。 そこで「教科教育法(生活)」では,身近な自然と身近な身の回りの物を使って,作ったり遊ん だりする実践を通して,子どもに対する指導の視点を考えていくこととした。 (1) 実践1 身近な自然(本実践では秋)を感じ,自ら集めてきた物を使い,楽しい物を作る(授業時数2. 5コマ) 最初に,学生には,小学校2年生になったと想定して,自分たちが生活をしている大学の構内の 様子を見学させ,五感(体で,目で,耳で,鼻で,手で)で感じさせるようにアドバイスをした。 その後,自分なりに秋を感じると思う物を集めさせた。私たちが普通に生活をし,普段通い慣れて いる環境においても,改めて目的を持って見渡すと,違ったものが見えてくることがある。大学生 も同じで,毎日通い慣れている構内でも,結構違ったものを捉えることができたようだ。例えば, こんなところに珍しい木が生えている。木の葉は,こんな形をしていたんだ。何もいないと思って いた芝生や木の根元には結構虫がいる。木の実がたくさん落ちている。久しぶりに手で草を触って 気持ちよかった。など,教師側が考えていたよりも多くの驚きがあった。やはり,改めて,意識を させることは大切であると思われた。また,次時に,ある学生から駅から大学へ歩いてくる間に, このような物があったと教えてくれたり,構内と外では植えてある植物が違うなど,植物の種類ま でに目を向けて話をしてくれたりする学生もいた。 さて,生活科は合科的な指導をして他教科とつながるような工夫をすることが求められている。 実際の小学校の授業では図工,国語の授業と組み合わせて行うことが望ましいという話をしながら, 次時に,見つけた物を使って,楽しい物,もらってうれしい物,飾って楽しい物など何か目的を持 った物を作ってみようということにした。制作時間は,90分を使い,自分なりの工夫をさせた。 制作後,材料はどこで集め,何を作ったのか等を個々で発表させた。学生たちは,結構楽しそうに 制作活動に取り組み,その後,できあがった作品について発表する時には,自分の秋に対する思い や苦労して集めてきた材料を使って工夫したことなどを得意げに語る姿が見られた。発表者以外の 学生は,良い点・工夫している点,自分だったらこのように工夫する点などを評価させた。小学生 であろうと大学生であろうと,良い点を評価してもらうことに喜びを感じるのは同じである。 写真 学生たちの作品 − 186 −

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この実践を通して,目標を持って追究していくことが物事の関心や理解を深めていくことができ ること,それ以上に追究していく楽しさや喜び,新しい発見が楽しい学びや主体的な学びにつなが っていくこと,また発表し合うことがお互いの良さや自分自身の振り返りにつながっていき,今度 はもっと違った制作物を作ろうとする意欲につながっていくことを学生自身が身をもって体験でき たようである。 (2) 実践2 身近な物を使って遊べるおもちゃを使い,1年生と一緒に遊ぼう(授業時数2.5コマ) 大学生自身が小学校2年生の子どもになり,身近にある物を使って動くおもちゃを自分なりに工 夫して作り,作ったおもちゃで遊んだり,友達と工夫を教え合ったりしながら,1年生を招待して 一緒に遊びを楽しむことを目的とした実践をした。 最初に,身の回りにある物を使い,おもちゃ作りに取り組むことを知らせた後,いくつか手作り おもちゃの紹介をした。それを参考に,どのようなおもちゃを作ると1年生と一緒にみんなで楽し く遊ぶことができるか,身近な物(普段よく見られる物で簡単に手に入る物,改めて購入すること はしない)でおもちゃ作りの材料となる物は何があるかを考えさせ,作りたい物の設計図を2つか かせることにした。学生の中からは,結構複雑な物や遊び方が難しい物が出されていたが,お互い に設計図を見ながら,「難しすぎる」「こんな単純な物で,面白いのかな?」「自分一人で楽しむ 遊び道具になっていないか」等の意見やアドバイスが出ていた。設計図ができあがった後,材料集め を行った。ここでのポイントは,1年生と一緒に遊ぶ活動であることから,相手の立場に立って設 計することを意識すること,子どもたちの力で作り上げられるような設計図を作り上げること,材 料も実際の現場では,自由な発想でできるようにある程度,教師側が取りそろえておくことも必要 であることなどを確認させたことである。 制作時間は90分(授業時間1コマ)を使い,2つの遊び道具を作り上げた。最初は自分で遊び, 問題点を改良しながら,さらに工夫して制作をしていった。制作終了後,遊び道具について,個々 で工夫したところ,なぜこの遊び道具を作ったのか,使った材料などを発表させた。そして,学生 たちの前で,遊び方を説明し他の学生たちと一緒に遊んだ。発表する学生以外は,その遊び道具の 良い点,感想,発表した遊び道具を自分だったら,さらにどのように工夫するか記入し発表させた。 学生の感想から,「単純なおもちゃでも自分で作ってみると結構面白い」「○○さんが作った物は とてもよく工夫してあり素晴らしい」「面白くないかなと思っていたが,実際に遊んでみると楽し

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10 かった」「もう一回作ることができたら,もっとみんなで遊ぶことができる物を作ってみせる」など, 簡単な遊び道具でも自分で制作することの楽しさや,他の学生たちと一緒に遊んだり褒めてもらえ たりしたことのうれしさが見られる意見が多く見られた。また,いろいろな発想があり,参考にし て,次回も作ってみたいなど,工夫する楽しさ,他の学生の素晴らしい発想に驚いている意見も見 られた。 この実践を通して,学生たちは,子どもたちの「作りたい」「やってみたい」という気持ちを引 き出し,それを大切にすることが重要であること,そういった気持ちを引き出すための見通しを持 った手立ての必要性について理解していくことができた。また,交流する活動を積極的に設け,コ ミュニケーションを通して,分からないことがあっても積極的に尋ねたり,教え合ったり,工夫し たりすることが大切であることに気付いていった。そして,それが,子どもたちが主体的に活動す ることにつながっていくことを捉えることができるようになっていった。 (3)2つの実践を通して 生活科では,比べることや,そこから自分なりに何かを見つけさらに工夫することが大切である。 また,ほめられて自信を持ち,次時の意欲やさらなる発見につなげていくことが大切である。学生 たちは,自らが小学生になったつもりで実践を行っていった。その中で,子どもたちは,目的意識 を持たせたり気付かせたりすることで主体的な活動につながっていくこと,ほめられることがさら に追求していくことにつながっていくこと,新しいことの発見や交流を通して伝えることの楽しさ, 比較し見直すことの大切などについて学んでいった。そして,それを手助けするために必要な援助 が必要であることも学んでいくことができた。 (日比野) 5 幼児教育から生活科への学びの連続性 3で長江が示した『はちみつジュース』の実践事例からは,次のような子どもの姿が見られる。E が花の蜜を試しに吸い,A,Bにも広がり,お互いに結果を言葉で伝え合っている。またTが,がくの ついた花を保育者に見せた時,Aが試して気づいた結果を踏まえ,Tに何がいいか言葉で伝えている。 またEは保育者に,はちみつジュースを飲みたいか訊ね,自分の発見,はちみつジュースの味を伝え, 共有している。また,『そら豆の皮むき』の実践事例の子どもの姿は,図に示されたとおりである。 いずれの事例からも,身近な植物や食物に子どもが興味関心をもって主体的に環境に関わり,そこ からの気づきを子ども達が伝え合い,植物や食物への理解を深めていることがうかがえる。 また4で日比野が示した「教科教育法(生活)」の授業実践1からは,教員志望の学生が模擬的 に小学校2年生となり,大学構内の秋の自然物を収集するなかで自然の不思議さに気づき,さらに 収集物で工夫して作品を製作した。幼児教育の事例と同様,身近な植物に学生が興味関心を持ち, 互いの気づきを伝え合ったことに加え,授業以外でもそうした気づきをもとに,これまで気づかな かった植物の違いに気づくなど,展開が見られる。授業実践2においても模擬的に学生が小学校2 年生となって,1年生と遊ぶことを想定し,身近な材料で動くおもちゃを設計し製作した。ここで は学生が互いにコミュニケーションをとって取り組み,最後に互いの工夫した点を評価し合った。 2で日比野が述べたように,生活科では身近な自然や物を利用して遊ぶなかで,遊びや遊びに使 う物を工夫して作るという到達目標と,遊びの面白さや自然の不思議さに気付き,楽しんで遊びを 創り出そうという態度が目標に挙げられている。他方幼児教育では,「興味や関心を持つ」「生活 に取り入れようとする」「感覚を豊かにする」など,活動や関わりを通して,小学校での学びの基 礎や態度を育んでいくことを中心とした方向目標が示されている。また生活科では,経験や体験を 通して気づき学んでいくための明確な手段や目標を基に活動が計画されており,遊びは学ぶための − 188 −

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活動であるが,幼児教育においては遊びを通して学ぶことが前提とされている。 このように遊びや学びについて幼児教育と生活科に違いはあるものの,冒頭に述べた 2017(平成 29)年に同時改訂された幼稚園教育要領(保育所保育指針・幼保連携型認定こども園教育・保育要 領も同様)と,小学校から高等学校までの学習指導要領は,「知識・技能」「思考力・判断力・表現 力等」「学びに向かう力・人間性等」という新しい時代に必要となる「資質・能力」の三つの柱の成 長を促すことで一貫している。幼児教育はこれら三つの柱の基礎の部分を育むこととし,小学校以 上では教科等の指導によって成長するものとされているxiv この三つの柱の内容を見てみよう。幼児教育における「知識・技能の基礎」とは,「豊かな体験を 通じて,何を感じたり,何に気付いたり,何が分かったり,何ができるようになるのか」,また「思 考力・判断力・表現力等の基礎」とは,「気付いたこと,できるようになったことなども使いながら, どう考えたり,試したり,工夫したり,表現したりするか」,三つ目の「学びに向かう力・人間性等」 とは,「心情,意欲,態度が育つ中で,以下によりよい生活を営むか」を意味している。この三つの 柱を具体化したものが,「幼児期の終わりまでに育ってほしい 10 の姿」,つまり①健康な心と体,② 自立心,③協同性,④道徳性・規範意識の芽生え,⑤社会生活との関わり,⑥思考力の芽生え,⑦ 自然との関わり・生命尊重,⑧数量・図形,文字等への関心・感覚,⑨言葉による伝え合い,⑩豊 かな感性と表現であるxv。無藤(2017)は,5 歳児から小学校以降にかけて子どもが成長していく様 子がこの 10 の姿で示され,特に「自立心」「協同性」が学びに向かう力の中心だと指摘しているxvi 小学校以降の「知識・技能」とは,各教科等における知識や技能とされ,「基礎的・基本的な知識・ 技能を着実に獲得しながら,既存の知識・技能と関連付けたり組み合わせたりしていくことにより, 知識・技能の定着を図るとともに,社会の様々な場面で活用できる知識・技能として体系化しなが ら身に付けていくこと」が想定されている。「思考力・判断力・表現力等」は,「問題を発見し,そ の問題を定義し解決の方向性を決定し,解決方法を探して計画を立て,結果を予測しながら実行し, プロセスを振り返って次の問題発見・解決につなげていくこと(問題発見・解決)や,情報を他者 と共有しながら,対話や議論を通じて互いの多様な考え方の共通点や相違点を理解し,相手の考え に共感したり多様な考えを統合したりして,協力しながら問題を解決していくこと(協働的問題解 決)」に必要な力であり,「学びに向かう力・人間性」には,「主体的に学習に取り組む態度も含めた 学びに向かう力や,自己の感情や行動を統制する能力,自らの思考のプロセス等を客観的に捉える 力など,いわゆる「メタ認知」に関するもの」と「多様性を尊重する態度と互いのよさを生かして 協働する力,持続可能な社会づくりに向けた態度,リーダーシップやチームワーク,感性,優しさ や思いやりなど,人間性等に関するもの」が含まれているxvii このように,平成 29 年3月改訂においては,「資質・能力」の三つの柱は,幼児教育の遊びや環 境を通して基礎から,また小学校以降の教科等の学習を通して育成されるものとして,連続的な育 成が図られている。こうした遊びから学びへの連続性について,山田(1994)によるデューイの遊 びに対する考え方が参照に価しよう。山田は,デューイの著書How We Think(1933)xviiiを引用し,

幼稚園の遊びは目的がなく,小学校の課業(work)は教師だけが目的を持っているものと捉えられが ちだが,デューイは遊びと仕事の間は,遊びは活動の過程そのものに,課業は目的に,より関心が 強く向けられた連続的なものとして捉えていると指摘するxix。長江が提示した,幼児教育において 植物や食物への理解を深める子どもの姿からは,対象となっている身近な植(食)物に向き合う過 程とそこに生じる気づきに重きが置かれている一方,日比野が述べたように,生活科では遊びや遊 びに使う物を工夫して作ること,楽しんで遊びを創り出すことが目的とされ,そのなかでの気づき が重視されている。この意味で,後者の遊びは,デューイの言葉で表現すれば課業と言えるかもし れないが,しかしそれは遊びとは区別されたものではなく,遊びの過程がもつ楽しさを感じるとい

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12 う意味で過程にも重きを置くものであるといえる。このように,身近な自然や物に対するかかわり という幼児教育および小学校教諭養成課程における生活科の指導法に関する授業(「教科教育法(生 活)」)での実践事例を検討すると,幼児教育から生活科への学びの連続性は,遊びという活動の 過程そのものに重きをおく幼児教育の遊びがもたらす学びから,活動の成果を重視する課業として の生活科における遊びを通した学びの事例から見出せるといえよう。 (伊藤) 6 まとめ 以上のように,1,2,4節において日比野が,幼児教育と生活科教育との相違を踏まえつつ, 実践例を挙げながら,幼児教育から生活科教育への接続のあり方,すなわち,幼児期に遊びを通し て育んできた「学びの芽生え」を小学校教育での「自覚的な学び」につなげていく指導のあり方に ついて考察し,3節において長江が,子どもたちの興味や関心を持って環境に主体的に関わろうと する姿を示した。さらに伊藤が5節において,平成 29 年3月改訂の幼稚園教育要領と小学校学習指 導要領の学びの連続性を踏まえつつ,デューイの遊び論に依拠して,幼児教育と「教科教育法(生 活)」の事例から連続性を示した。 幼児教育と小学校「生活科」に共通して見られる遊びという活動は,デューイに依拠すれば連続 したものであり,活動過程そのものまたは活動の目的どちらに重きがおかれているかの違いであり, その違いは相体的なものであって排他的なものでない。こうした遊びのもたらす学びの連続性を踏 まえた保育者の幼児教育の指導法,および小学校教員養成課程における「生活科」の指導法として は,前者では,遊びの活動過程そのものにも重きをおくと同時に,そこに見られる萌芽的な学びの 姿(これを幼稚園教育要領では「基礎」と表現している)を幼児教育においても重視し,他方後者 では遊びの目的を重視するだけではなく,小学校教育においても遊びの活動過程そのものにも重き をおくことが求められるといえよう。 (伊藤) i 中野重人『生活科のロマン』東洋館出版社(1996) ii 前掲書,p.32。 iii 前掲書,p.26。 iv 前掲書,「第一章 生活科の成立過程」参照。 v 中野は,「生活科の新設は,伝統的な教師中心の在り方に対する一つの問題提起であるとともに, 幼・小関連への小学校側からの触手であるといってよい」としている。前掲書,p.220。また後に, 中野は「生活科は,「遊びも学習のうちに入れます。」ということにしたわけです。……それはやは り幼稚園教育との関連を計っていくという,大きなねらいがあったからだと思っています。」とも書 いている(中野重人『生活科の授業づくり Q&A』明治図書(1990),p.148)。 vi 「いわゆる「学級崩壊」から分岐し,マスコミの報道により社会的な注目を集めるのは,「平成 11 年以降のことである。」東京学芸大学(2010)『特別教育研究経費事業 小 1 プロブレム研究によ る生活指導マニュアル作成と学習指導カリキュラムの開発 平成 19 年度~平成 21 年度 小 1 プ ロブレム研究推進プロジェクト 報告書』第1章,p.1。「「小1プロブレム」名付けの親と目される 新保真紀子によると,最も初期にこの問題を提起した大阪府人権・同和教育研究協議会(大同協)」 で研究が開始されたのは平成 10 年である。」東京学芸大学(2010)『特別教育研究経費事業 小 1 プ ロブレム研究による生活指導マニュアル作成と学習指導カリキュラムの開発 平成 19 年度~平成 21 年度 小 1 プロブレム研究推進プロジェクト 報告書』第2章,p.2。 vii 水上義行「過去 20 年間の生活科教育における諸発展と今後取り組むべき諸問題」『富山国際大学 子ども育成学部紀要第3巻』(2012),p.119-128。 viii 針生弘・久能和夫・郡山孝幸・金賢植・柴田千賀子「学びの連続性及び幼小連携の視点から見 た生活科学習についての一考察」『仙台大学紀要第 47 巻第2号』(2016)p.57-65。 − 190 −

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ix 野崎健太郎「保育者・小学校教員養成課程の「生活科」授業における生命と食と学び」『椙山女 学園大学研究論集第 43 号(自然科学篇)』(2012),p.1-12 参照。野崎は,生活科における理科(自 然科学)的な観点の教育が排除されてきたことから理科の復活を求める意見が多いことを踏まえ, 教員養成における生活科授業について,「 “遊び”を中心とした保育から,学習中心となる小学校 への移行科目として生活科には意味があり,小1プロブレムの解消を目指す幼小連携に寄与できる 教科として着目している。ただし,兵頭(2010)の主張のように,理科・社会科の学習につなげる ために,自然科学的および社会科学的な観点を教科書,指導法に反映させる必要がある」と訴えて いる(野崎健太郎「植物の成長観察を用いた大学生の科学的素養(科学リテラシー)教育の実践― ―保育者および小学校教員養成課程における教科_生活科_での事例研究――」。『椙山女学園大学研究論 集第 42 号(自然科学篇)』(2011),p.27-33。野崎(2012)によれば,小学校教員養成課程における 生活科関連の授業実践や教材開発として,以下に言及している。木村吉彦「大学における生活科授 業の在り方について──実践力のある教員を養成するための「生活科指導法」の探求」『教員養成学 研究(弘前大学教員養成学研究開発センター)1』(2005)p.47‒56。今村律子・佐藤史人「和歌山大 学の教員養成における「生活科」の教育実践報告」『和歌山大学教育学部教育実践総合センター紀要 14』(2004)p.199‒205。管道子「「生活科」における音楽の教材開発の可能性──歴史にみる音楽の 合科・統合カリキュラム編成の試み」『和歌山大学教育学部教育実践総合センター紀要14』(2004) p.169‒177。鈴木隆司「生活科教育法における飼育活動の授業研究」『千葉大学教育学部紀要54』(2006) p.93‒98。 x 「保育内容「人間関係」と小学校教育の内容の関連に関する一考察」『帯広大谷短期大学紀要第 51 号』p.87-97。 xi 「生活科の指導内容・方法が示す幼保小連携のモデル」『帯広大谷短期大学紀要第 53 号』p.67-76。 xii 中央教育審議会(2016)「次期学習指導要領に向けたこれまでの審議のまとめ」p.184.URL: http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1377051.htm 2017 年5月 16 日取得。 xiii 小1プロブレムが発生する理由について全国の市町村教育委員会を対象としたアンケートの結 果によれば,「最も回答件数の多かった項目は,「家庭におけるしつけが十分でないこと」(868 件) であった。以下,回答件数の多かった順に見ていくと,「児童に自分をコントロールする力が身につ いていないこと」(779 件),「LD や ADHD 等の発達障害をもつ児童への対応が困難であること」(680 件),「児童の自己中心的傾向が強いこと」(603 件),「少子化や地域の人間関係が希薄になっている こと」(518 件),「児童の変化に今までの教員の指導方法では対応できないこと」(470 件),「児童の 個別的な支援の必要に対して,学校側の支援体制が整っていないこと」(323 件),「教員の指導力が 不足していること」(201 件),「幼稚園・保育所の保育が,幼児が自由にさせすぎること」(154 件), 「授業についてこられない児童がいること」(92 件),「未回答」(40 件),という結果であった。東 京学芸大学(2010),第2章,p.21。 xiv 無藤隆(2017)「『幼稚園教育要領』解説」,無藤隆・汐見稔幸・砂上史子(著)『ここがポイント! 幼稚園 保育所 幼保連携型認定こども園 3法令ガイドブック』フレーベル館所収,p.14。 xv 文部科学省(2017)「幼稚園教育要領」 xvi 無藤隆(2017)「『幼稚園教育要領』解説」,p.15。 xvii 中央教育審議会初等中等教育分科会(第 100 回 平成 27 年9月 14 日開催)配付資料「資料 1 教育課程企画特別部会 論点整理」より「新しい学習指導要領等が目指す姿」 URL: http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1364316.htm (平成 29 年 10 月 27 日閲覧)

xviii John Dewey(1933), How We Think, D. C. Heath & Co., Boston. xix 山田敏(1994)『遊びと教育』明治図書,pp.122-124 参照。

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参照

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