北海道医療大学学術リポジトリ
口腔扁平苔癬におけるE‑cadherin,β‑catenin, p16ink4a, MGMTのメチル化解析
著者 中條 貴俊
学位名 博士(歯学)
学位授与機関 北海道医療大学 学位授与年度 平成28年度 学位授与番号 30110甲第287号
URL http://id.nii.ac.jp/1145/00064486/
論 文 要 旨
口腔扁平苔癬における
E-cadherin, β -catenin, p16
ink4a, MGMT のメチル化解析
平成 28 年度
北海道医療大学大学院歯学研究科
中條 貴俊
【緒言】
口 腔 扁 平 苔 癬(OLP)は,
口 腔 粘 膜 の 角 化 異 常 を 示 す 慢 性 炎 症 性 疾 患 で あ る
.基本的に原因は不明といわれているが
,歯科用金属や薬剤によるアレルギー
,ウイルス感染といった環境因子の関与が示唆されている
.こ の 環境 因子 が 引き 起 こす 遺伝 子 変化 の代 表 的な もの に エピ ジ ェネ ティ ッ
クな修飾がある
.エピジェネティクスは
, DNA塩基配列の変化を伴わず遺伝 子発現が変 わる現象 であり
,代表的な メ カニズム に
DNAのメチル 化がある
.口 腔 が ん や 前 癌 病 変 で は
, DNAの 高 メ チ ル 化 を 介 し て
E-cadherinや β
- catenin, また p16ink4aや
O6-methylguanine-DNA methyltransferase (MGMT)などの遺伝子発現が低下をしているとの報告がある
. OLPにお いて
, E-cadherinやβ
-cateninが発現減少しているとの報告があり
, また p16ink4aは
OLPの悪性 化の関与を示唆する報告がある
. MGMTについては
SCCで は
p16ink4aと同様に発 現の低下や高メチル化が観察されて いるものの
, OLPで
MGMTについて観察し た報告はみられない
.そこで本研究では
, OLPについて上皮接着関連分子である
E-cadherin,β
- catenin,がん抑制遺伝子である
p16ink4aおよび
DNA修復遺伝子である
MGMTを ターゲットとし
,これらの遺伝子上のプロモーター領域における
DNAのメチ ル化の程度を検討した
. 同時に非炎症性組織(Non-I),歯根嚢胞
(RC),口腔扁 平上皮がん
(SCC)でのメチル化の程度を検討し, OLPの結果と比較検討した.
【材料および方法】
1.
材料
材料 として
,北海道医 療大学個体 差医 療科学センター 倫理委員会 より承 認 済み
(受付 番号 2012-005号
)で あ る 1996年から
2014年までの生検・手術材料 のホルマリン固定されたパラフィンブロック包埋標本を使用した
. OLP 26検 体
, RC 30検体
, SCC 25検体および 陰性コントロールとして
Non-I 25検体を 使用した
.これらを
Microtomeで 厚 さ
5㎛に薄切し
, 2枚の 切片を
,0.5 µL PCRチューブに回収し使用した.
2. DNA
精製
1)DNAの抽 出
切片は
Epitect Plus FFPE Lysis kit®を用いてプロトコールに従い
, PCR Thermal Cyclerを用いて切片を溶解しクロスリンク された
DNAを抽出した
. 2)Bisulfite処理
抽出した
DNAを 500 ng/µl の濃度になるように調整し, EpiTect Plus DNA
Bisulfite Kit®を用いて
, Bisulfite処理を施した
.3.
プライマーの設計
DNA
メチル化レベルを検討するため, E-cadherin, β-catenin, p16
ink4a,およ び
MGMTのプロモーター領域における高メチル化領域の
CpG配列部位に焦点 を絞り
, そ の領 域のBisulfite処理後の
DNAに対応した
Methylation Specific PCR (MSP)プライマーを用いた.4.
半定量的
MSP法
メ チル 化 の発 現状 態 を確 認す る ため に アガ ロー ス ゲル を用 い た電 気泳 動 法 にてバンドの観察を行った
.5.
定量的
MSP法
Bisulfite
処理した
DNA, MSPプライマー, SYBR
® Green PCR Master Mix を用いて
, SYBR Green法による定量的
MSP法でメチル化発現解析を行った. 得 られた結果から
CT値を算出し
,その値を定量値に変換しメチル化 レベルの算 出を行った
.6.
統計分析処理
算出されたメチル化レベル
(%)は Kruskal-Wallis検定にて比較検討を行っ た
(p<0.05).7.
免疫組織化学的検索
DNA
高メ チ ル化 が タン パ ク発 現 に影 響 を与 え てい る かを 組 織学 的 に観 察 す るために
,免疫組織化学染色を行った. 免疫染色後の評価は
, 1枚のスライ ドからランダムに
3ヵ所観察 し, 光学顕微鏡
400倍の視野中から上皮内の陽 性細胞数を計測し
,陽性率
50%以上を強陽性の++, 25〜50%を陽性の+
, 10〜
25%を弱陽性の±, 10%未満を陰性の−として判定した.【結果 】
1. MSP
法による
DNAメチル化程度の検討
E-cadherin
のメチル化程度を半定量的
MSP法により観察すると
, OLPや
SCCではメチル化のバンドが強く発現し
, Non-Iや
RCでは非メチル化のバンドが 強く発現し た
.定量的
MSP法により比較したところ, OLP は
Non-Iや
RCと 比 べ
,有意に高いメチル化率を示した(P<0.01). 一方, SCC とは明確な有意差 は認められなかった
.β
-cateninのメチル化程度を半定量的
MSP法で観察すると
, OLPや
SCCで はメチル化のバンドが強く発現し
, Non-Iや
RCでは非メチル化のバンドが強 く発現 し た
.定 量的
MSP法に より比 較 したとこ ろ
, OLPは
Non-I(p<0.05), RC(p<0.05), SCC(p<0.01)の
3つよりも有意に高値を示した
.p16ink4a
のメチル化程度を半定量的
MSP法で観察すると
, OLPや
SCCではメ チル化のバンドが強く発現し
, Non-Iや
RCでは非メチル化のバンドが強く発 現し た
.定量的
MSP法で比較したところ, OLP は
RCよりも有意に高値を示し たが
(p<0.01), Non-Iとは有意差を認めなかった. また
SCCと比べると有意に 低値を示した
(p<0.01).MGMT
のメチル化程度を半定量的
MSP法で観察すると
, OLPや
SCCではメチ ル化のバンドが強く発現し
, Non-Iや
RCでは非メチル化のバンドが強く発現 した
.定量的
MSP法により比較したところ, OLP は
Non-Iや
RCと比べ
,有 意 に高いメチル化率を示した
(p<0.01).一 方
, SCCとは明確な有意差は認めら れなかった
.2.
免疫組織化学的検索
E-cadherin
の陽性率は
, Non-Iおよび
RCで 強陽性
, OLPおよび
SCCで は陽 性となった
.β
-cateninの陽性率は
, Non-Iおよび
RCで強陽性
, OLPおよび
SCCでは陽 性となった
.p16ink4a
の陽性率は
, RCで強陽性, OLP, SCC および
Non-Iでは陽性 となっ た
.MGMT