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無機化合物の樹脂固定による木材の高耐朽化

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Academic year: 2021

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(1)

無機化合物の樹脂固定による木材の高耐朽化

−フェノール樹脂を用いた2段階含浸法による抗菌性の向上−

*1 * 1 *2

脇坂政幸 平野吉男 樋口光夫

Study on High Durability Wood by the Resin with Inorganic Compounds

TheImprovementofAntibacteria by2stepImpregnation whichusedphenol-holmaldehyde resin

MasayukiWakisaka, YoshioHirano,MitsuoHiguchi

木材の腐朽性を改善した新規材料の開発を目的に,抗菌性が予想される金属含有化合物及びフェノール樹脂を用 いて木材注入処理条件の検討,並びに耐腐朽性評価を行った。木材への注入条件として

金属化合物とそれの固定 化用樹脂であるメチロール化フェノールを混合(

1

液(

1

ステップ))して注入する1段階注入法と,金属化合物水 溶液を注入後,同フェノールを注入する

2

段階注入(

2

ステップ)法で比較した。後者は特定の金属に対し高い材内 固定化能を示した。一方,薬剤効果強調のため,耐腐朽試験では基材にスギと比べて耐朽性の弱いブナを用い,オ オウズラタケ(褐色腐朽菌)で腐朽を行った。その結果,初期

30

日での基材表面の菌増殖度の観察では

CCA

(従来 型防腐剤)と

NaF

が同等の忌避性を示し,現在主流の防腐剤

CuAz

に比べ初期における防御能がうかがえた。

1 はじめに

従来,木材用防腐剤として使用されてきた銅・クロ ム・ヒ素(

CCA

)系防腐剤が人体への安全性の懸念か ら規制強化の方向にあり,木材保存業界では新規防腐 剤の開発が急務となっている

1 )

木材用の接着剤に用いられるフェノール樹脂(

PF

樹脂)は抗菌成分であるフェノールを主成分とし,防 腐・防蟻処理薬剤としての可能性を有する。また,木 材への定着性がよく,寸法安定性を付与できるため,

系防腐剤の代替品としてのみならず,乾燥割れ

CCA

の防止等,木材の寸法安定化に伴う防腐効果の高度化 が期待できる。特に重合を抑え弱酸性に調整した硬化 反応前のメチロール化フェノールは色相,浸透性が高 いため,木理を生かした工芸品,エクステリア等幅広 く利用できる

2)

。一方,供給量は増加の一途であるが,

製材コストや安価な輸入材の多用などから,利用度が 低く需要の拡大が望まれているスギの間伐材を有効に 利用する方策として,エクステリア分野は重要な市場 の一つである。

樹脂注入法による木材の耐朽性向上,及び防蟻

PF

性付与の試みは,資源の有効利用を図るうえで重要で ある。

インテリア研究所

*1

*2九州大学大学院農学研究院

本研究では供試材として,スギ材に比べ耐朽性の劣 るブナ材を用いた。そして防腐効果向上を目的に数種 の金属化合物をフェノール樹脂と混合含浸し,金属固 定化能などの評価を行った。これらは防腐性能や,エ クステリア用資材への可能性を探るためである。

2 実験方法 2−1 樹脂調整

セパラブルフラスコにて原料溶液中で窒素ガスをバ ブリングしながらメチロール化フェノールを合成した。

この時の配合は概略次の通りである。フェノール:ホ ルムアルデヒド:触媒=1:2:

0.1

0.5

操作としては,混合後低温に保持し,触媒を数

10

分で滴下。その後所定の温度条件操作により反応を進 め,最終的に

N.V

45wt%

の水溶液を得た。

2−2 試験材料の調整及び注入法 2−2−1 配合化合物種類と濃度

配合した金属化合物の種類及び濃度を表

-1

に示す。

なお,濃度は金属ベースである。

2−2−2 1ステップ注入法

で合成した溶液の樹脂濃度を に希釈する

2−1 10wt%

と同時に,表1の化合物が所定の濃度になるよう混

-

合調整した。調整した水溶液は以下の条件で注入を行

った。予め秤量したブナ試験片( ×

2 2

×

1cm

)を密

封容器内で

1.2Torr

×

15min

減圧後,常圧にする際,

(2)

表‑1 配合化合物種類と濃度

金属化合物 調整濃度(

wt

%)

NaF 0.10 0.20

A g S O2 4 0.10 0.20

CuSO4 0.10 0.20

CETSA*-Ni 0.10 0.20

既定条件に準じる

CCA

既定条件に準じる

CuAZ

*含イオウトリカルボン酸金属塩

調整液を系内に導入し注入を行った。その後

60

℃×

で乾燥後, ℃× で硬化し試料とした。

12Hr 130 5Hr

2−2−3 2ステップ注入法

-1

の化合物が所定の濃度になるよう水に溶解し,

予 め 秤 量 し た ブ ナ 試 験 片 を 密 封 容 器 内 で

1.2Torr

× 減圧後,常圧にする際,水溶液を系内に導入し

15min

注入後

60

℃×

12Hr

で乾燥した。次に

N.V10wt%

に調 整した

2−1

の溶液を同条件で注入処理し,乾燥硬化 を行い試料とした。

2−2−4 従来型木材保存薬剤処理

既存処理薬剤との効果を比較するため,現在使用さ れている薬剤の内,有害性が高いながら防腐効果並び に,薬剤固定化能が最も高い

CCA

と,日本・ヨーロ ッパでシェアが高い

CuAz

を対象剤として,これらを 既定条件で注入し,風乾した。

2−3 評価

2−3−1 耐朽性評価

試験方法は

JIS K1507

(木材防腐剤の試験方法)に 準じた。サンプルは

1

試験区当たり

2

×

2

×

1cm

の ブナ木片

9

個を

3

ブロックに分け,

2−2

の方法で作製 したものを使用する。

腐朽操作は斜面培地から取り出した菌株(褐色腐朽

Tyromyces palustris

菌の一つであるオオウズラタケ菌[

(

Berk.et Curt Murr FFPRI 0507

) ])を用い,予め数ヶ月 間の拡大培養を行った。その後サンプル腐朽用容器 本に石英砂・液体培地を投入滅菌し,菌株を所定

100

量移植後その菌が十分増殖するまで数ヶ月培養(

26

×

76%RH

)を行った。菌糸が成長したのちサンプルを

個/容器ずつ設置し腐朽操作を実施した。

3

2−3−2 金属固定能評価

で作製した各試料のうち,金属濃度 を含

2−2 0.2%

浸させた系

4

種,及び対象サンプル(

CCA

CuAz

2

種について,蒸留水抽出による耐候操作を行った。

条件は各種類の木片

8

ヶを各々

360ml

の蒸留水中に 浸漬し,

18Hr

振とう攪拌したのち

60

℃で

6

時間乾燥 させた。これを

1

サイクルとし, サイクルについて

2

抽出水中の金属含有量を

ICP

発光分析法にて測定を行 った。

2−3−3 防蟻評価

表‑1の薬剤濃度

0.20wt

%の条件で防蟻試験サンプ ルを作製し,

JWPA

規格第

11

号(塗布,吹き付け,

浸漬用木材防蟻剤の防蟻効力試験法(2)野外試験方 法)に準じた。サンプルは鹿児島県吹上浜の国有保安 林内で白アリの巣の周囲に設置し試験を実施した。

3 結果及び考察 3−1 耐朽性評価

腐朽菌が木材を栄養源として吸収を図る場合,菌糸 を材表面に増殖させ酵素分解により行う。サンプル表 面での菌の増殖率は腐朽性と関連があると考えられ,

菌の増殖によりサンプル表面が覆われることから,サ ンプル上での増殖率を菌による被覆率として表す。本 稿では菌の腐朽進行状況を操作開始後

30

日における 被覆率として,その比較結果を表‑2に示す。

日後の腐朽菌による木材サンプルの表面被覆状況

表‑2

30

添加薬剤の金属濃度(wt%)

ステップ ステップ

1 2

0.1 0.2

含浸薬剤の種類 0.0 0.2 0.1

Blank(ブナ) × − − −

無添加(フェノール樹 × − − − 脂のみ)

○ ○ ◎

NaF添加 − ○

△ △ × △

AgSO2 4

× ×

CuSO4 − × ×

× ×

CETSA−Ni − × ×

CCA

×

CuAz

※サンプル上面における被覆率を下記基準で示す。

◎:被覆率 0% ○:被覆率0〜33%

△:被覆率34〜66% ×:被覆率67 〜100%

表‑2より

30

日後における菌の被覆率を調べたとこ ろ,

CCA

及び

NaF

含浸材以外は殆ど被覆されており,

初期の防菌能では

CCA

が最も高く,次いで

NaF

が優 位であることが分かる。

また,前報

3)

の結果からも褐色腐朽菌は白色腐朽菌

に比べ木材の腐朽力が強い事が分かっており,木材組

(3)

織の分解に係わる

HO

・(

HO

ラジカル)

4)

の影響が うかがえる。

また,図‑1に

JIS A9201

を参考に行った耐朽性試 験による重量減少率を示す。この結果から,ブナ材を 対象とし

PF

樹脂を無機物固定剤として使用した場合,

無機物複合化の系は

PF

単体より重量減少抑制傾向が うかがえ,さらに

NaF

含浸系は,既存品種中最も効 果が高い薬剤である

CCA

に近い効果がうかがえた。

図‑1 腐朽による重量減少率

図‑2 抽出操作による無機化合物の材中残存率結果

3−2 金属固定能評価

住宅用土台材や住宅のエクステリ製品,並びに屋外 環境下で使用する遊具・パーゴラなどにおける,ロン グライフ(保存処理)木材としての効果は,注入処理 した材中の抗菌化合物の溶出速度をどの程度制御でき るか,即ち材中に固定化する事ができるかに起因する。

そこで,注入方法の違いによる金属化合物の固定化 能を比較した結果を図‑2に示す。またその時の残存順 位と全化合物名,処理法を表

-3

に示す。

図‑2及び表‑3より,全体の中で

CCA

の固定能が最

図−2 抽出操作による無機化合物の材中残存率結果

0 20 40 60 80 100 120

0回 1回抽出 2回抽出

抽出回数

無機物残存率(%)

NaF 2step法 NaF 1step法 Ag2SO4 2step法 Ag2SO4 1step法 Ni 2step法 Ni 1step法 CuSO4 2step法 CuSO4 1step法 CCA

2step NaF 2step CETSA-Ni 2step Ag2SO4 2step CuSO4 1step NaF 1step CETSA-Ni 1step Ag2SO4 1step CuSO4 CCA CuAz PF10% PF15% Blank 金属濃度0.1%

0 10 20 30 40 50 60

重量減少率(%)

注入法種類 金属濃度0.1%

金属濃度0.2%

も高いが,

2

段処理法を用いた

A g S O2 4

及び

CuSO4

は と同等の固定能がうかがえた。

CCA

表‑3 残存率順と全化合物名及び処理法 残存順位 化合物名 注入処理法

CCA

AgSO 2step

2 4

CuSO 2step

4

NaF 2step

AgSO 1step

2 4

CETSA-Ni 2step

CuSO 1step

4

CETSA-Ni 1step

NaF 1step

表‑3より木材への金属化合物固定化を施す方法とし て,金属化合物及び樹脂を2段階に分けて注入する方 が,屋外使用における耐候性を想定した水による抽出 に対し,効果的である傾向が示された。また,同ステ ッ プ 中 の 化 合 物 間 に お け る 比 較 で は ,

AgSO2 4

及 び が と に比べ溶出しにくい傾向

CuSO4 NaF CETSA-Ni

がうかがえる。このことについては,木材細胞中にお ける化合物の存在形態を調べることにより,樹脂を含 めた相互作用を明らかにする必要がある。

3−4 防蟻評価

白アリが営巣するマツの切株を調査確認し,これの 周囲に試験サンプル(

1step

法)を埋設した後,1年 後における食害状況を調査したところ,表‑4に示され るような状況が確認できた。

表‑4 シロアリによる被害度

赤 マ ツ 赤マツ ス ギ

供試材

(誘因材) 注入処理 注入処理 含浸薬剤の種類

× ◎ ◎

無添加(フェノール樹 脂のみ)

× ◎ ◎

NaF添加

× △ −

AgSO2 4

× × ×

CuSO4

チオスルファト銀錯体 × ×× −

・誘因材について → ○:食害なし ×:食害あり

・サンプルについて→表面における被害度を下記基準で示す。

◎:加害なし,○:誘因材より軽度の被害

△:誘因材と同等の被害 ×:誘因材以上の被害

××:原形を維持していない

この結果,シロアリに対する効果を示したのは金属

化合物無添加の系,及び

NaF

の系であった。チオス

ルファト銀錯体

5 )

を注入した系では,誘因材(攻撃を

受けたか否かを判断するためのエサ)以上に食害を受

(4)

けており,銀化合物が示す活性酸素作用

6)

が有効でな いことが明らかとなり,今後は金属化合物が食害傾向 に及ぼした要因について明確にする必要がある。

4 まとめ

メチロール化フェノールと金属化合物を異なる手法 で複合併用し,薬剤の効果を明確にするため非常に被 害を受けやすいブナ材を用いて,防腐分野における利 用可能性を検討したところ,主に以下の結果が得られ た。

)耐腐朽性評価では,腐朽初期である木材への菌の取

1

り付き状況において,オオウズラタケに対し,併 用 した各種金属化合物の中では

NaF

に,また従 来薬 剤である

CCA

に初期抗菌効果が確認できた。

さらに,重量減少率の結果から,無機物固定系 は,PF単味系に比較して重量減少が少なく,特 に

NaF

固 定 系 は , 防 腐 効 果 が 高 い 既 存 薬 剤

CCA

)に近い重量減少抑制効果傾向が伺えた。

一方,スギを対象材として行った同様の耐朽性 試験

7)

では,金属化合物の種類に関わらずPF樹脂 により発現される耐朽効果が高いことから,スギ 材に関しての金属化合物の複合利用は,カビ等に よる汚染を抑制する忌避剤としての役割が期待さ れる。

)木材に対する金属化合物の固定化に関して, 段処

2 2

理法による効果が明確になった。材内での存在形 態については今後明らかにしていく。

本研究では,研究組織体制を含め概略的な道筋が立 った。今後は多方面での実用化に向けて検討を行う予 定である。

5 参考文献

)角田邦夫:木材工業, , , ( )

1 vol.52 No.5 p232 1997

)樋口光夫: 科研費報告( )( ) ( )

2 H8 A 1 06556031 1997

)脇坂政幸:平成9年度福岡県工業技術センター研究

3

報告,

vol.8, p 7 8

(

1998

)

)田中裕美:木材保存, , 〜 ( )

4 vol.24-1 p2 13 1998

) 冨 岡 敏 一 : , , ,

5 J.Antibact.Antifung.agets vol.21 No.10

( )

p543 1993

)エヌ・ティー・エス:抗菌・抗カビ剤の検査・評

6

価法と製品設計,

p136

7

)脇坂政幸,樋口光夫:木科学情報

, vol.8,No.2, p25

(

2001

)

(5)

参照

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