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単純ヘルペスウイルス1型角膜感染症に対する免疫局所リンパ節細胞の効果とT細胞サブセットの役割

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原 著

〔書蟻蔑85第臨6確言〕

単純ヘルペスウイルス1型角膜感染症に対する免疫局所リンパ節

細胞の効果とT細胞サブセットの役割

東京女子医科大学 眼科(主任 内田幸男)

即死 萱 豊

(受付 昭和62年1月21日)

Analysis of the Cell Mediated Immunity in Corneal Herpes Simplex Virus Infection:Role of the Immune Local L,ymph Node Cells

Norio KAZAMI

Department of Pphthalmology(Director:Prof. Yukio UCHIDA) Tokyo Women’s Medical College

Aprotective role of cell mediated immunity in corneal herpes simplex virus type−1(HSV−1) infection was studied. Immune local lymph node cells and immune spleen cells obtained froln the animals which had been sensitized with HSV4 subconjunctivally were adoptive transferred into the syngeneic BALB/c nude mice. HSV4 inoculated on the abrased cornea of nude mice multiplied locally and spread to the trigeminal ganglia by 7 days post−inoculation. Adoptive transfer of 1060f sensitized lymph node cells or 1070f sensitized spleen cells 2 hours prior to the corneal virus chanange inhibited

the viral proliferation in the eye balls and prevented viral spread to the trigeminal ganglia. Depletion of

Lyt l or Lyt 2.3 bearing cells reduced markediy their protective effect against infection.

The results might indicate that collaboration of both Lyt l and Lyt 2.3 positive T cells play a role in resolving corneal HSV−1 infection.

緒 言 単純ヘルペスウイルス(以下HSVと略)感染防 禦機構の中で細胞性免疫の重要性が数多く報告さ れている1)∼3).一方HSV角膜感染症では感染防禦 だけでなく実質性角膜炎をひきおこす要因として も細胞性免疫が重要な役割をはたしていると考え られている4)∼6).そしてそうしたなかでT細胞サ ブセットの働きについての解析も行なわれてい る. ウイルスが宿主に接種されるとT細胞が免疫さ れる.ウイルスのクリアランスに有効に働くT細 胞サブセットは,接種された抗原の量や感染して から経過した時間によって違いがあると考えられ る7).さらに重要なことは,ウイルスの接種ルート によっても大きな相違がみられるという点であ る8). 今までに報告されている実験ではその多くが免 疫脾細胞を用いて行なわれている.そこで今回, より実際の病像に近いものを得るために,免疫局 所リンパ節細胞を用いてHSV角膜感染時のウイ ルスの拡がりに対する抑制効果についてT細胞サ ブセットの働きを調べた.移入細胞数を変えるこ とにより,この効果の発現に必要な免疫細胞数に ついても検討を加えた.またこの際同時に得た免 疫脾細胞についても同様な実験を行ない,両者を 比較したのでここに報告する. 材料と方法 1.ウイルス

GMK細胞で継代したHSV 1型(以下HSV−1

と略)CHR3株を用いた.使用時のウイルス価は

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4.3×106plaque forming unit(以下pfuと略)/ m1であった. 2.動物 雌雄のBALB/c CrSlc(以下マウスと略)6 ∼8週齢,雄iのBALB/c nu/nu Slc(以下ヌード マウスと略)6週齢を用いた. 3.免疫局所リンパ節細胞浮遊液の調整 マウスの両眼球結膜下に0.8∼!.2×105pfuの HSV−1を接種した.7日後,マウスを殺し耳前リ ンパ節,顎下リンパ節を無菌的に摘出した.摘出 したリンパ節をステンレスメッシュを通して個々 の細胞とし,10%胎児ウシ血清加RPMI1640液に 浮遊させた.0.83%NH4C1液を加えて赤血球を溶 解した後,10%胎児ウシ血1清加RPMI1640液に再 浮遊させた.ついで,ルー瓶中で37℃,40分間保 温し,ガラス壁に付着したマクロファージを除き 免疫局所リンパ節細胞浮遊液を得た. 4.免疫脾細胞浮遊液の調整 球結膜下にウイルスを接種したマウスからリン パ節を摘出した際,同時に脾臓を無菌的に摘出し た.リンパ節の場合と同様の処理を施し免疫脾細 胞浮遊液を得た. 5.免疫局所リンパ節細胞の抗体処理 ’ 免疫局所リンパ節細胞浮遊液に適量の抗しyt 1・2単クローン抗体あるいは抗しyt 2・2単クロー

ン抗体(Cedarlane Lab., Ontario, Canada)を加

え,4℃,60分反応させた.10%胎児ウシ血清加 RPMI1640液で洗った後,再び同齢に浮遊させた. この浮遊液に適量の低毒性ウサギ補体(Cedar−

lane Lab., Ontario, Canada)を加え37℃,60分

反応させ,洗浄した後章浮遊液をつくった.それ ぞれの浮遊細胞をTrypan blueで染色し生細胞 数を確認した.抗しyt 1・2抗体処理細胞では53%, 抗しyt 2・2抗体処理細胞では55%が生細胞であっ た. 6.ヌードマウスへの細胞移入 ヌードマウスを13群に分け,1群につき5匹と した.免疫局所リンパ節細胞,免疫脾細胞をヌー ドマウス1個体につきそれぞれ107個,106個,105 個尾静脈より養子移入した.同様に抗しyt 1・2抗 体処理細胞はヌードマウス1個体につき5.3×106 個,5.3×105個,5.3×104個,抗しyt 2・2抗体処理 細胞は5.5x106個口5.5×105個,5.5×104個それぞ れ養子移入した.細胞移入を受けないものを対照 群とした. 7.ウイルス接種 細胞移入の2時間後,すべてのヌードマウスを エーテルで麻酔した後,両眼角膜を27G針で実質

に達するまで乱切した.そして両角膜上に

0.8∼1.2×105pfuのウイルスを滴下した. 8.ウイルス価の測定 ウイルス接種から7日後,すべてのヌードマウ スを殺し眼球,三叉神経節を摘出した.これらを 各群ごとに分け乳化し,GMK細胞を用いプラー ク法にてウイルス価を測定した. 結 果 1.免疫局所リンパ節細胞のウイルス増殖抑制 効果 免疫局所リンパ節細胞,免疫脾細胞のウイルス 増殖抑制効果を調べるため養子移入実験を行なっ た結果が表1である.細胞の養子移入を受けず角 膜にウイルスを接種された対照群では,接種後7 日目に摘出された眼球,三叉神経節はそれぞれ

4.0×104pfu/0.1g tissue weight(以下t,w.と略), 5.3×104pfu/0.1g t.w.のウイルス価を示した.免 疫局所リンパ節細胞を養子移入された群では, ヌードマウス1個体につき107個,106個移入した とき,眼球,三叉神経節ともにウイルスは検出さ れなかった.しかし,移入細胞数が105個の場合, 眼球,三叉神経節ともに対照群と同等のウイルス 価を示した.免疫脾細胞を移入した場合にはヌー ドマウス1個体につき107個の細胞を移入したと 表1 局所リンパ節細胞と脾細胞の抑制効果の比較 ウイルス価 細 胞 移入細胞数/マウス (pfu/0.1g tissue) 眼 球 三叉神経節 局所リンパ節細胞 107 0 0 106 0 0 105 3×104 3.7×104 脾細胞 107 0 0 106 2.7×104 LO×103 105 4.3×104 6.0×104 対 照 4.0×104 5.3×104 一282一

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表2 局所リンパ節細胞とTリンパ球サブセットの 抑制効果の比較 細胞の処理 移入細胞数/マウス ウイルス価 ipfu/0.1g tissue) 眼 球 三叉神経節 抗Lyt1・2抗体+補体 RLyt2・2抗体+補体 @ 対 照 5.3×106 T’.3x105 T.3×104 T.5×105 T.5×105 T.5×104

@一

2.8×103 R.0×103 R.Ox104 Q.0×102 V.5×103 U.5×1伊 S.0×104 0 Q.7×103 @6×104 @ 0 @ 0 R.3×1G4 T.3×104 き,眼球,三叉神経節ともウイルスは検出されな かった.しかし移入細胞数が106個のとき,三叉神 経節では1.0×103pfu/0.1g t.w.と対照群よりやや 低いウイルス価を示したが,眼球のウイルス価は 対照群のそれと変わりなかった.そして移入細胞 数が105個では,眼球,三叉神経節ともに対照群と 変わらないウイルス価を示した.これらの結果か ら免疫局所リンパ節細胞は,免疫脾細胞の約10分 の1の数で同等のウイルスの拡がりに対する抑制 効果をもつことがわかった. 2.ウイルス増殖抑制に働くT細胞サブセット 免疫局所リンパ節細胞についてT細胞サブセッ トの働きを比較するために,抗しyt 1・2または抗 しyt 2・2単クローン抗体と補体で細胞を処理し,細 胞養子移入実験を行なった.その結果,表2に示 すように抗しyt 1・2抗体,抗しyt 2・2抗体処理細胞 ともに約5×106個,5×10‘個移入したとき,眼 球,三叉神経節のウイルス価は対照群のそれより 低い値を示した.しかし両細胞とも約5×104個の 移入細胞数のときにはウイルス価は対照群と同等 であった.従って,抗しyt 1・2抗体,抗しyt 2・2抗 体処理細胞ともにウイルスの増殖抑制効果をもつ ことが示された.しかしこの効果には両細胞の間 で大きな差はみられなかった. 考 察 細胞性免疫の主役をなすTリンパ球は,遅延型 過敏反応(以下DTHと略)のe任ectorとされる helper/inducer T cell(以下THと略)と細胞障 害性を示すsuppressor/cytotoxic T ce11(以下 CTLと略)の2つのサブセットに大きく分けられ る.マウスではTHはLyt 1, CTLはLyt 2・3の表 面抗原をもっており,この点で区別される9). 前回,著者ぱ免疫脾細胞を用いた養子移入実験 で,HSV眼感染時の感染防禦の主役はCTLであ ると報告した10).CTLがウイルスのクリアランス に有効に働くということは,Lyt抗原だけでなく H−2抗原の解析からもいわれている11)∼17).しかし

THがHSV感染防禦の主体をなしているとの報

告もある18)∼20).この相違は動物を免疫するときの 抗原の量や,抗原を接種してから免疫細胞を得る までの時間などが関与していると思われる7).さ らに抗体で処理する際に,precursor CTLである Lyt 1・2・3陽性細胞を除去してしまう可能性が考 えられる21).

HSVを静脈内や前房内に接種するとDTHが

抑制され,サプレッサーT細胞が多く誘導される ことが知られている22) 24).またHSVの接種ルー トによって誘導されるTリンパ球サブセットに相 違がある8).これらは抗原の進入経路によって免 疫系への抗原呈示の仕方が異なることによると考 えられる.したがって腹腔内に抗原を接種して得 られる免疫脾細胞よりも眼局所に免疫して得られ るリンパ節細胞を用いる方が,HSV角膜感染時 に働く免疫細胞を解析する場合,より適当である と思われる. そこで今回,マウスの球結膜にHSV4を接種 し,7日後に耳前,顎下リンパ節を摘出して免疫 局所リンパ節細胞を得た.この細胞を用いて HSV−1角膜感染マウスに対し免疫細胞養子移入 実験を行なった.同時に同様の実験を免疫脾細胞 についても行ない,免疫リンパ節細胞と免疫脾細 胞との有効性を比較した.そして,さらに免疫局 所リンパ節細胞についてウイルスのクリアランス に働くT細胞サブセットについて検討を加えた. 結果に示したとおり,免疫局所リンパ節細胞, 免疫脾細胞ともウイルスの増殖を抑制した.この ことから免疫細胞を全身投与した場合,眼局所の 感染に対して有効に働くことが確認された.しか しこの移入された細胞両者を比較すると,リンパ 節細胞は脾細胞の10分の1で同等の効果を得てい ることがわかる.これは球結膜下という限られた

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場所に抗原が接種されたとき,局所リンパ節の方 に脾臓と比べてより多くの抗原が達することが一 因となっていると考えられる. 局所リンパ節細胞では106個,脾細胞では107個 の細胞を移入したときには完全なウイルス増殖阻 止効果がみられた.しかし移入細胞数をそれぞれ 10分の1にしたとき両者ともほぼ全く阻止効果を 示さなかった.このことから免疫細胞の示すウイ ルス増殖阻止効果は免疫細胞の数に依存すること が示唆された.この効果発現は一定の細胞数を境 としてall or noneであり,その細胞数は今回使用 した免疫局所リンパ節細胞では10‘∼106個の問で あった. 次に局所リンパ節細胞のT細胞サブセットの働 きを知るために抗しyt 1・2,抗しyt 2・2単クローン 抗体と補体で細胞を処理し養子移入実験を行なっ た.Lyt 1, Lyt 2・3陽性細胞ともウイルス増殖の 抑制効果に大きな差はみられなかった. 抗体処理をしていない細胞を106個移入したと きの方が,Lyt 1, Lyt 2・3陽性細胞をそれぞれ5× 106個移入したときよりも,眼球のウイルス価は低 い値を示している,また,Lyt 1, Lyt 2・3陽性細 胞のどちらかを移入した場合には,両者が存在し ている場合に見られたような移入細胞数と効果発 現の関係はみられない.従って,抗原接種から7 日目の免疫局所リンパ節細胞では,ウイルスのク リアランスにLyt 1, Lyt 2・3陽性細胞の相互作用 が働いていると考えられる. 脾細胞を用いたこれまでの報告では,どちらか のT細胞サブセットがeffector cellとして働いて いるとされている.この相違は抗原が呈示されリ ンパ球が免疫される過程の違いによるものと思わ れる.さらに前述したように抗原刺激を受けてか ら免疫細胞を得るまでの時間によってもT細胞サ ブセットの割合や働きが異なることが考えられ る.したがって,こうした点も考慮して検討する 必要がある. 今後,感染防禦だけでなく実質性角膜炎の発症 のメカニズムに関しても,T細胞サブセットの役 割について実験を重ねていく予定である. 一284 結 語 HSV−1角膜感染症の際に働くT細胞とそのサ ブセットの役割を知るために,球結膜にウイルス を接種して得た免疫局所リンパ節細胞を用いて養 子移入実験を行なった.免疫局所リンパ節細胞は 免疫脾細胞の!0分の1の細胞数で,眼球,三叉神 経節へのウイルスの拡がりを阻止した.また,免 疫細胞がウィルス増殖を抑制するためには,ある 一定の細胞数が必要なことが示唆された.Lyt 1, Lyt 2・3陽性細胞の間にはウイルス増殖抑制効果 の差ぱ認められず,両者の相互作用が働いている と考えられた, 稿を終えるにあたり,御指導,御校閲頂いた内田幸 男教授,郡山免疫医学研究所林皓三郎先生に深謝す る. なお本研究は昭和61年度文部省科学研究費補助金 (第61570851号)の援助を受けた. 文 献

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参照

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