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〈論説〉有限会社における定款自治--ドイツ法を中心にして

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Academic year: 2021

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(1)有限会社 におけ る定款 自治. 有 限 会 社 にお け る定 款 自 治. H. ー. 定 款 自 治 の原 則 の再 考. 債 権 者 の利 益 お よび 少 数 社 員 の利 益. 有 限 会 社 と 形 成 の自 由. はじめ に. ド イ ツ法 を 中 心 に し てー. 皿 有 限 会 社 の法 形 態 の変 遷. i. W お わり に. 増. 田. 政. 一175一. も く じ. V. はじ め に. 班. 1. (匹 ①ヨ Φ ﹀ 寮 δ づoqΦωΦ=ω-. ( OΦωΦ↓N ま 円 巨 Φヨ Φ 諺評口Φ-. UΦ同①⑳巳 δ 毎 コσ q αΦω 諺 江 δ コ﹃Φ。葺 ω)﹂ が 制 定 さ れ 、 ﹁小 株 式 会 社. ド イ ッ で は 、 一九 九 四 年 に ﹁小 株 式 会 社 の 規 制 お よ び 株 式 法 の 規 制 緩 和 の た め の 法 律 づσ qΦω①=ω9 Φ津 Φづ 仁コα Nξ. 早. 立.

(2) 9 鋤3 ﹂ の導 入 が はか ら れ た 。 し か し 、 こ の ﹁小 株 式 会 社 ﹂ と は何 か の定 義 規 定 はな いが 、 従 来 の、 いわ ゆ る 大 公 開. ⑧. 株 式 会社 と対 比 し て、 いま だ株 式 を 上 場 し てい な い株 式 会 社 が ここ で は概 念 づ け ら れ る の であ って、 新 た な 種 類 の株. 式 会 社 は 念頭 にお か れ る も の では な い。 こ の小 株 式 会 社 の創 設 の背 景 にあ る諸 事 情 か ら み ると 、 市 場 か ら 自 己 資 本 を 必 要 と し な い会社 も こ の株 式 会 社 形 態 を容 易 に利 用 でき る よ う に配 慮 され てい る。. と こ ろ で、 従 前 か ら、 ド イ ッ の資 本 会 社 は株 式 会 社 と有 限 会 社 と い う 二元 主 義 がと ら れ てき て い る。 こ の小 株 式 会. 社 の概 念 を 創 設 し た立 法 草 案 では、 資 本 会 社 を株 式 会 社 と有 限 会 社 と い う分 け方 を す る の で はな く 、 む し ろ、 投 資 家. ㈲. 保 護 を 強 く 求 め る資 本市 場 と いう点 か ら、 す な わ ち、 上 場 会 社 と非 上 場 会 社 に区 別 す る こと が 正 当 であ ると の議 論 が. な さ れ た 。 一人 株 式 会 社 の容 認 (ド株 二 条 )、 定 款 自 治 に よ る利 益 処 分 (同 法 五 八 条 二 項 )、 株 主 総 会 の手 続 の簡 略 化. (同法 一二 一条 六 項 ) な ど を み ると 、 少 な く と も 、 これ ら の規 制 は 有 限 会 社 法 に接 近 す る も の であ り、 ま た、 上 場 し. ω. て いな い会 社 、 つま り 、 閉 鎖 会社 は 有 限会 社 を も 選択 す る こと が可 能 であ る ことを 考 え ると 、 当 然 に、 有 限 会 社 と こ. ㈲. の種 の株 式 会 社 を 並 存 さ せ る意 義 が あ る のか と いう疑 問 が生 じ てく る は ず であ る。. 小 株 式 会 社 の創 設 に関 す る立 法 草 案 の理 由 づ け に対 し て、 批 判 的 見 解 も み ら れ る。 す な わち 、 株 式 会 社 と 有 限 会 社. ㈲. の双 方 の資 本 会 社 形 態 に つき 根 本 的 論 証 が な さ れ て いな い。立 法 者 は、 実 務 に お い て十 分 に検 討 され て いな い概 念 問. 題 や構 造 問 題 を さ てお き 、 資 本 会 社 法 のさ ら な る発 展 の方 向 づ け を な す べき な のか と い う。 確 か に、 株 式 会 社 は、 資. 本 市 場 を 通 し て広 く 散 在 す る危 険 資 本 を 集 あ 、 大 規 模 企業 を担 う と いう 二 つの機 能 を有 し てお り、 そ の結 果 と し て、. m. 会 社 の組 織 を 規 制 す る ため に、 規 定 は非 常 に複 雑 化 し 、 運 用 が む ず か し く、 労 力 を要 す るも のにな ってく る。 加 え て、. 株 式 法 上 、 定 款 の厳 格 性 が求 め ら れ 、 株 式 法 が あ ま り にも 硬 直 化 し て いる 。 ま た、 中 小 企 業 が、 実 際 上 、 株 式 会 社 形. 一176一. 第49巻 第2・3号 近畿大学法学.

(3) 有限会社 にお ける定款 自治. む. へ. 態 の利 用 に有 用 性 を 認 あ な い理 由 と し て、 た と え ば 、 企 業 家 た る 家 長 の地 位 を失 ってし ま う こと、 自 己 の会 社 に他 の. ㈹. 株 主 グ ルー プが 参 加 す る危 険 が あ る こと 、 資 本 会 社 に特 有 の開 示 制 度 が あ る こと 、 被 用者 の共 同決 定 が実 施 さ れ る こ. と な ど が あ げ ら れ る。 これ ら の要 因 を 内 包 す る株 式 会 社 、 あ る いは 、 今 は な いが 将 来 にお い てそ れ ら の要因 を有 す る. ㈲. であ ろう ﹁小 株 式 会 社 ﹂ な る概 念 が採 用 され たと し ても 、 資 本 会 社 た る 有 限 会 社 の並 存 の意 義 が あ る は ず であ る 。. ㈹. 国 家 か ら近 い こと ろ に い る株 式 会 社 、 国 家 か ら 遠 いと こ ろ に い る有 限 会 社 と いう 命 題 のも と 資本 会社 の二 元主 義 を. 認あ る、 有 限 会 社 の形 成 の自 由 ( 定 款 自 治 ) の検 討 が 必 要 と さ れ よ う 。 す な わ ち 、 有 限 会 社 の特 性 は 形 成 の自由 ( 定. 款 自 治 ) にあ る。 定 款 の自 治 ( 定 款 作 成 の自 由 ) にも と づ き 、 有 限 会 社 の組 織 構 造 が よ り 簡 素 化 さ れ る こと によ り、 よ り大 き な実 効 性 が得 ら れ る はず であ る。. oo. ﹁ヨー ロ ッパ にお け る閉 鎖 会 社 立 法 の動 向 e. 本 稿 は、 こ の定 款 自 治 の原 則 が株 式 会 社 と有 限 会 社 の並 存 の理 由 づ け であ り 、 それ が 有 限 会 社 の特 性 であ る こと か. 梅 本 ・前 掲 注 ω 八 一五頁 。. 梅本 ・前 掲 注 ω 九 二 九 頁 、 早 川 ・前 掲注 ω 二 頁 。. 早 川 ・前 掲 注 ω 一〇 頁 。. 諺ヨ ヨ8 \Ω2 凶 訂 "U同 ① 鉱①貯 Φ諺評こ窪 σ qΦω巴 の9 翼 L 8 μ ω゜器 る ① ま Φコ\宍αωけ ①コ U蹟 Φ 匹Φぎ ① 諺ρ 卜 。 °諺色 4 お ㊤伊 ω゜認 ご. 法 の規 制 緩 和 のた め の法律 ﹄ に つい て﹂ 同志 社 法 学 四七 巻 二号 一頁 (一九 九 五 年 ) が あ る。. 口 ・完 ﹂ 民 商 = 二 巻 四 ・五 号 八 一 一頁 、 同六 号九 〇 八頁 (一九 九 五 年 )、 早 川 勝 ﹁ドイ ッにお け る ﹃小 株 式 会 社 の規 制 と 株 式. 匹Φぢ ① 諺ぎ 貯目oqΦ ωΦ濠 oゴo津 に つい て論 じ る文 献 と し て、 たと え ば 、 梅 本 剛 正. ︿ 注﹀. ら生 じ る問 題 点 を指 摘 す る も の であ る。. ω. 伽 ㈹ ω. 一177一.

(4) ⑧. ㎝. ㈲. ⑤. い鐸暮Φ罷 U霧. 国o∋ ヨ 色 ゴo頃 前 掲 注 ㈲ ω゜①α捗. ζ Φ§ 口曾. 鋭 pρ. =oヨ ヨ Φぎ oh hこ Φ§. &Φ . . 匿 ①ぎ Φ. .旨 α ♂ 暮. 働 有 限 会 社 の形 成 の自 由. 津2. 巨. NO国 一㊤㊤企 ω ゜お ①跨. (社 員 総 会 の. ωo巳 Φ昌 Φ津 一ト。 (お O艀) 唱ω'①αま. 姻 o冒 Φヨ 同8 9. ぎ 。ゴ Φヨ Φ . 、 諺巳 ΦαQΦ﹃ >Q . ℃NOズ. 掛さ Φ〒 ⊆巳. (定 款 作 成 の 自 由 ) に よ る だ け で な く 社 員. ﹁定 款 規 定 の 解 釈 ﹂ 近 畿 大 学 法 学 四 九 巻 一号 一三 六 頁 参 照 。. OΦω審 詳ロコσqの陣 Φ曽 ①津 団 ヨ. dヨ ぴ毎 9 1 ①ぼ 団導 Φヨ p菖8 巴 Φ同 く 興 σ q巨 9 (一㊤逡 ン oQ°①竃 ご. 有 限会 社 と形成 の自 由. NO幻 Qっo口αΦ誉 Φ津 旨 がある。. 1. 有 限会社 の位置づけ. oQΦω巴 のoげや. ①ヨ Φ 、 、 ﹀巳 Φα qΦ同 諺 O. . 噂. 幻o夢 ﹂ )oの ω団ωけΦ日 α巽 閑p嘗 け巴. 9 コ昌 ロ09. Oヨ げ団-幻①oプ戸 NO幻 ωo昌αΦ島 Φ津 一ω (一〇㊤刈Y ¢ こ。①hh な ど. 唱一㊤りρ ω﹄ ①R こ Φけ暮 a Φ . 、 固 Φ口 Φ"ロ巳. る 。 た と え ば 、 Uδ αΦ巨 ωoげ① Oヨ げ踏 同 日 oQ唄゜ Dけ①ヨ α巽 国9娼算巴 σqΦωΦ=°励oゴ9津ΦP ぎ. 本 稿 は 、 出 oヨ 日 Φ旨 o律 の 見 解 を 基 礎 に 論 じ る も の で あ る 。 出o∋ 日 ①田 o識 は 一連 の 論 文 の 中 で 、 こ の 問 題 に つ い て 論 じ て い. 決 議 ) に よ っ て も 達 成 さ れ る 。 定 款 自 治 に つい て は 、 拙 稿. (OΦ゜。邑 言 昌oQ°。博 oぎ ①埠) は 、 単 に 、 定 款 自 治. 留 ゜。梓Φヨ 9 円 内 巷 坤巴 α q8 ①房 9 0津 自 噛Oヨ げ缶 幻 お ㊤ρ ω゜巽 ㊤゜. ω葺 N旨 oq停 § α 9 0 qき 冨 鉱8 器 暮 8 0日 同Φ 巨. ω゜刈ご 榎 本 ・前 掲 注 ω 九 二 九 頁 。. ㈹. ⑳. 6. 個. ド イ ッ有 限 会 社 法 の立 法 にあ た り 、 そ の基 礎 を 人 的 要 素 の強 いも の にす る か、 あ る い は、 物 的 ( 資 本 的 ) 要 素 に重. 点 を お く か の議 論 が あ った 。 す な わ ち 、 一つの考 え 方 は 、社 員 に有 限 責 任 だ けを 認 め た合 名 会 社 を 基 盤 にし た も の で. あ って、 個 人 主 義 的 色 彩 の濃 いも のを 創 設 し よ う と し てい た。 他 の 一つは、 株 式 会 社 制 度 を 緩 和 し た も の であ るが 、. ㈲. 株 式 会 社 の設 立 の厳 格 性 を 排 除 し た 団 体 主 義 的 な も の であ って、 株 式 会 社 に関 す る規 定 を 排 除 す る こと によ って新 た. な 企 業 のた め の可 能 性 を 創 設 す る こと が 求 め ら れ た。 結 果 的 に は、 後 者 の色 彩 の濃 いも のが でき あ が った の であ る。. 一178一. 第49巻 第2・3号 近畿大学法学.

(5) 有限会社 にお ける定款 自治. 立 法 化 され た 有 限 会 社 法 が 対 象 と す る 会社 形 態 は、 比 較 的 規 模 の大 き い企 業 にも 及 ぶ こと にな った わ け であ る が 、 小. 規 模 な 企 業 あ る いは 営 利 を 目 的 と し な い団体 を対 象 とす る場 合 に は、 定 款 自 由 (定 款 自 治 ) の原 則 に従 う こと にな っ. た 。 し か し 、 ドイ ッ の有 限 会 社 は、 単 な る 小株 式 会 社 では な く、 法 的 に独 立 し た 第 二 の資 本 的 会 社 形 態 であ って、 株. 式 会 社 や そ の他 の会社 と 異 な り、 立 法 者 の思考 によ る創 造 物 であ る。 つま り 、 強 行 的 に広 範 囲 に定 め ら れ た 組 織 規 定. を 有 す る 株 式会 社 と意 図的 に相 異 し た、 単 純 で、 敏 活 で、 か つ、 柔 軟 的 な 組 織 形 態 が 有 限 会 社 な の であ る 。有 限会 社. と 株 式 会 社 の双 方 の会 社 形 態 は法 規 の任 意 性 と強 行 性 で区 別 され る。 立 法 者 は、 それ ぞ れ の会 社 にお い て定 款 を いか. αの. に定 め る こと が でき る か に つき、 一方 で、 有 限 会 社 法 に は定 款 自 治 (形 成 の自 由 ) を 広 範 囲 に認 め、 他方 で、 株 式 法. ⑮. では定 款 の厳 格 性 を 定 め た。 この株 式 会 社 と有 限 会 社 の相 違 対 比 は ドイ ッ法 にお け る 二 つの資 本 会 社 、 す な わ ち、 二. 有 限会 社 の利 用目 的. 元主 義 を 理論 的 に根 拠 づ け るも の であ る。. 口. 株 式 会 社 は変 動 やま な い、 想 像 力 た く ま し い経 済 活 動 に基 礎 を お い て成 立 発 展 し てき たも の であ る が、 有 限 会 社 は. ㈹. 株 式 会 社 と異 な った背 景 を も と に創 造 され た の であ って、 そ こ には定 款自 治 の原 則 が中 心 的 機 能 を 果 し て い ると い え. よう 。 こ の定 款 自 治 の原 則 は、 有 限 会 社 が 利 用 さ れ る 目 的 と 密 接 な 関係 を有 し て い る。 有 限 会 社 の立 法 者 は、 有 限 責. 任 を 負 う 資 本 的 な 会 社 を 創 設 し よ う と し た と き に、 ま ず、 これ に企 業 の担 い手 と し て の役 割 を 持 た せ ると と も に、 そ. れ 以 外 に、 あ ら ゆ る目 的 遂 行 に対 応 でき る 会 社 形 態 を 考 慮 に 入 れ た。 す な わ ち、 有 限 会 社 はあ ら ゆ る目 的 を 達 成 す る. こと の でき る会 社 形 態 と し て創 設 さ れ た も の であ って、 そ の た め に強 行 規 定 を も ってし て は法 の目 的 にか な わ な か っ. 一179一.

(6) 隅. ㈲. た はず であ る。 今 日 の有 限 会 社 形 態 の利 用 目 的 か ら みれ ば 明 白 であ る。 た と え ば、 中 小 規 模 の手 工業 、 グ ロー バ ルな. 08. 大 企 業 、 国 際 的 な コ ン ツ ェル ンの子 会 社 、 一般 の市 場 と 全 く コン タ ク ト のな い企業 の研究 部 門 、 自 治 体 と産 廃 業 者 間. で設 立 さ れ る公 私 結 同 のジ ョイ ント ベ ンチ ャー、 慈 善 団 体 な ど 有 限 会 社 形 態 を 利 用 す る 企業 や 団体 は多 種 多 様 であ る。. この よ う に利 用 さ れ る有 限 会 社 は、 相 互 に異 な る目 的 を 遂 行 し 、 異 な る活 動 を し 、 異 な る経 営 形 態 ( 業務執行 および. 監 督 ) を必 要 と し て い る。 し た が って、 立 法 者 は統 一的 な 強 行 規 定 を も って、 一律 に規 制 し て企業 や経 済 活動 に損 失. を与 え る よ う な危 険 を 回避 し な け れば な らな い。 こ の こと が 、 有 限 会 社 (法 ) 創 設 以 来 、 一〇 〇年 を経 過 し ても、 法. 的 に厳 格 に規 制 さ れ てい る株 式 会 社 と並 ん で、 有 限 責 任 を 負 い形 成 自 由 な 法 形 態 を 必 要 と し た ゆ え ん であ る 。. と ころ で、 有 限 会 社 は あ ら ゆ る目 的 を遂 行 す る た め の法 形 態 と いわ れ る の であ るが 、 そ の例 証 と し て、 た と え ば 、. 社 員数 の最高 限 の法 定 の是 非 が あげ ら れ る。 有 限 会 社 の閉 鎖 性 を 強 調 す れ ば 、 当 然 に、 社 員 数 の制 限 は 一つの メ ル ク. マー ルと し てと ら え る こと が でき る (日有 八 条 一項 )。 社 員 数 の最 高 限 を 設 定 す れ ば、 必 然 的 に持 分 数 も 制 限 さ れ る. こと にな る 。 そ う な れ ば、 資 金 調達 も そ れ に応 じ て狭 ま って く る の であ る か ら、 企 業 規 模 の拡 大 は望 ま れ な い。 社 員. ㈲. 数 が 多 く な れ ば 、 会 社 の内 密 性 が 失 わ れ 、事 実 上 、 資 本 会 社 を そ の与 え ら れ る べき 役 割 内 に止 ま ら せ 、 同 時 に、 問 接. 的 に多 数 社 員 か ら な る 団 体 は 株 式 会 社 に関 す る厳 格 で、 よ り適 切 な規 定 に服 す る こと にな る。 こ の よう に考 え ると 、. ⑳. 広 い分 野 で有 限 会 社 の利 用 を 認 あ よ う と す れ ば 、 す な わ ち、 大 規 模 企 業 に も こ の会 社 形 態 の選 択 の余 地 を 与 え る こと. にな れ ば 、 社 員 数 の最 高 限 を 設 定 す る 必 要 は な い。 ド イ ッ の有 限会 社 制 度 は、 こ の点 か ら み ても 、 株 式 会 社 と 並 ん で. 第 二 の資 本 会 社 と いわ れ る の であ って、 日 本 法 にお け る 有 限会 社 と相 異 す る と こ ろ であ る。. あ ら ゆ る目 的 を 遂 行 す るた め の道 具 と し て の有 限 会 社 の背 景 には、 ま ず、 この法 形 態 を 選 択 す べき 動 機 づ け が 必 要. :1. 第49巻 第2・3号 近 畿 大学 法 学.

(7) 有限会社 における定款 自治. ⑳. であ る。 少人 数 の社 員 か ら大 人 数 のグ ル ー プま でも 包 含 す るか ら であ る。 つま り 、 人 的 な 会 社 か ら 大 規 模 な 資 本 会 社. ま で機 能 的 で、 か つ合 目 的 的 で有 用 な 会 社 形 態 であ るた あ に、 有 限 会 社 は柔 軟 的 でな け れ ば な ら な い。 いか な る 企 業. 規模 であ っても、 ま た いか な る目 的 を 遂 行 す る にし ても 、 ま ず 、 債 権 者 の利 益 を 考 慮 に入 れ な け れ ば な ら な い。 少 な. く と も、 相 当 程度 の規 模 の会 社 は、 企 業 の組 織 体 制 を 整 備 す ると と も に、 市 場 秩 序 の維 持 確 立 を 図 ろう と す る 法 の秩. 序 政策 に適 合 し な け れ ば な ら な い。 つぎ に、 一方 で、 人 的 な 会 社 、 他 方 で、 投 資 家 グ ル ープ が 参 加 す る資 本 的 な 大 会. 社 が 両極 に対 峙 す る こと が 想定 さ れ る の であ る が、 そ の際 、 社 員 の地 位 はど の よう にと ら え る べき か と いう 問 題 も 当. 然 に発 生 す る 。 人 的 な 有 限 会 社 では、 社 員 の地 位 は任 意 に形 成 され る の であ ろう が 、 あ る 一定 規 模 以 上 の会 社 にあ っ. て は、 企 業 組 織 と いう 面 か ら 、 少 数 社 員 の地 位 は法 にも とづ き 確 立 され て行 く はず であ る。 こ の よう に、 社 員 の地 位. はあ る程 度 ま で定 款 自 治 の原 則 にも と つ い て形成 さ れ る の であ る が、 債 権 者 の利 益 保 護 と 少 数 社 員 の利 益 保 護 の 二律. 形成自由 ( 定 款 自 治 の原 則 ) の意 義. 背 反 は回 避 す る こと の でき な い現 象 であ る。 こ の点 に つい ては、 後 述 す る。. 日. 有 限 会 社 は、 企 業 が 多 様 な 目 的 を 達 成 す る にあ た り 、 そ の有 用性 を示 す こと が でき る よ う に、 立 法 者 は 一貫 し て強. 行 現 定 を 定 め る こと を 可 能 な か ぎ り避 け 、 それ に代 え て、 形成 の自 由 ( 定 款 作 成 の自 由 ) を広 く認 め、 同 時 に、 発 起. ㈱. 人 お よび 社 員 は自 己 責 任 の原 則 のも と 定 款 であ ら ゆ る定 め を な し う る の であ って、 これ は あ ら ゆ る観 点 か ら不 可 欠 な. こ と であ る。 有 限 会 社 は、 本 来 的 に私 的 自 治 (定 款 自 治 ) に立 脚 し て いる。 立 法 者 は会 社 法 の領 域 で不 必 要 な国 家 の. 干 渉 を 止 め て い る。 彼 ら は、 一八 八 四年 に資 本 市 場 を と り ま く 不 幸 な 出 来 事 を背 景 に、 投 資 家 の保 護 を意 図 し た株 式. 一181一.

(8) 法 か ら有 限 会 社 を 区 別 し た。. 有 限 会 社 法 に お け る形 成 の自 由 、 す な わち 、 定 款 自 治 の原 則 の実 務 上 の意 義 と し て つぎ のよ う な こと が あ げ ら れ る 。. 第 一に、 会 社 の事 業 計 画 、 社 員 の範 囲 お よび 個 々 の社 員 あ る い は社 員 全 体 の要 請 に応 じ た 会 社 組 織 を 定 款 で定 め る こと が でき る。. 第 二 に、 企 業 お よ び そ の構 成 員 の立 場 か ら、 変 化 す る市 場 に会 社 お よ び そ の定 款 を 柔 軟 か つ即 時 に適 合 さ せ る こと が でき る。. ( 晃 洋 書 房 、 平 成 六 年 ) 九 一頁 以 下 が詳 し い。 国oσ霞σq"Uδ 国導 ω♂言 昌α q α興 Oヨ げ出. ( 新 山 ・前掲 注 ㎝九 五 頁 ) が 、 株 式 会 社. NO幻 ωO口住Φ﹃げ①津 湯 (這雪 )讐ω゜ωS 結 局 、 ド イ ッ の有 限 会 社 形 態. 出oヨヨ①ぎ o自 ( 前 掲 注 ㈱ )ψ ゜。G。旧ω9 0訂\≦ Φ響興ヨ § ﹃ Oヨげ出ρ G。 °諺亀 r 国鉱 ダ 切α戸 Nω゜. と は異 な る別 の会 社 であ る ( 田 中 耕 太 郎 ・改 正 商法 及有 限会 社 法 概 説 ︿ 有 斐 閣 、 昭 和 十 五 年 ﹀ 二七 六 頁 )。. と し て の特 徴 は人 的 会 社 と 株 式 会社 の中 聞 形態 に 位 置 す る も のと い われ る の であ ろ う. =Oヨヨ 巴ゴ9 h"ΩΦ簿巴言 昌σ qω h H鉱げΦ 凶 ニ ヨ Oヨσ出ー幻Φ。 算. 形 成 の自 由 と 定 款 の厳 格 性 に つい て は 、 出oヨ ヨ巴げ9 h"Uδ ◎①二↓ ω。 ゴ① Oヨげ出 凶 ヨ ω誘 8日 住Φ﹃囚o且↓ 〇一 α qΦωΦ=ω9 溝 ↓ ΦP 営 切o§ "U器 ω窃 ↓ Φヨ 9 ﹃囚碧 ヰ巴σ qΦω①︼ ︼ ω9 鑑8コ 一 ヨ dヨσ歪 9 1 Φヨ ヨ 8ヨ 象 δβ巴Φ 村 く興 σq蚕 9 し OOρ ω`& 律. ヨ UΦ9 ω9 一 碧 α ⊆昌ユ 孚 き 評冨団 9 し ㊤㊤卜。 "ω゜ωα ま 出8 げ窪 9 目σq\d巨 ①コ Oヨげ出ρ ゜。°諺邑 `国巨 ゜力曾 ゜伊. と 課 題 ﹂ 現 代 有 限 会 社 法 の判 例 と 理 論. 法 と 展 開- 債権 者 保 護 の強 化 を中 心 にi ﹂商 事 法 務 一〇 五 七 号 一〇 頁 以 下 (一九 八 五 年 )、 新 山 雄 三 ﹁ドイ ッ有 限 会 社 法 の現 状. 国議 会 議事 録 お よ び政 府 草 案 ・理由 書 を 中 心 と し てー ﹂ 成 城 法 学 十 九 号 八 七 頁 以 下 、 同 ﹁西 ド イ ッ ﹃有 限 責 任 会 社 ﹄ 制 度 の立. ド イ ッ有 限 会社 法 の立 法 過 程 に つい ての最 近 の文 献 と し て、 今 野 裕 之 ﹁ド イ ッ ﹃有 限 責 任 会 社 ﹄ 制 度 の立 法 過 程 ー ドイ ッ帝. ︿ 注﹀. 第 三 に、 突 発的 に発 生 す る ト ラブ ルを法 にも とづ き 迅 速 に解 決 でき る よう に定 款 を 作 成 す る こと が でき る。. 働. ㈲ 0の ㈱. ㈲. 一182一. 第49巻 第2・3号 近畿大学法学.

(9) 有 限会社 におけ る定款 自治. こ こ で、 幻oσΦ 暮 七doω9 Ωヨげ出 を 挙 げ よう 。 世 界 的 に知 ら れ て いる ドイ ッ 切oω9 は有 限 会 社 形 態 を と る ド イ ッの大 規 模 企 業 であ る。 切oω。げ は 一八 八 六 年 に個 人 企 業 か ら 初 ま り 、 合 名 会 社 か ら株 式 会 社 へと 会 社 形 態 を 変 え た後 に、 一九 三七 年 に有 限. 頁以下。. 鴻 常 夫 ・有 限 会 社 法 の研 究. は これ を き ら った。 し か し、. ( 形 成 の自 由 ) であ. 二 八 〇頁 以下 ) 。. ( 文 久 書 林 ・昭 和 四 〇 年 ) 八 九 頁 以 下 、 江 口順 一 ・新 版注 釈 会社 法 qの ( 有斐閣、 平成二年) 五三. おけ ば 改 正 も 容 易 であ る こと 、 有 限 会 社 を 商 法 中 に入 れ ると 商 法 改 正 が 遅 れ る な ど であ った (田中 ・前 掲 注 05. 導 入 す る に は全 体 の体 系 上 好 ま し く な い こと 、 有 限 会 社 制 度 は 新 制 度 であ る か ら後 日改 正 が 必 要 にな った と き は特 別法 に し て. 法 と し て の特 別 法 は全 く 法 政 策 上 の理 由 であ った。 す なわ ち 、 当 時 の商 法 改 正 は 一部 改 正 であ り、 有 限 会社 制 度 を商 法 典 中 に. と し ても 、 有 限会 社 が 果す べき役 割 を株 式 会 社 の そ れ と異 な って設 け る こと が でき な か った の であ ろう か 。 実 際 に、 有 限会 社. は商 行 為 お よ び そ の他 営 利 行 為 を 目 的 と す る こと を 前 提 と し て い る の で、 文 化 ・慈 善 ・公益 な ど を 目 的 と す る こと が でき な い. 求 め れ ば 、 有 限会 社 法 は商 法 上 の株 式 会 社 と異 な る目 的 遂 行 の ため に制 定 され る べき であ った ろう 。 ただ 、 商 法 で定 め る会 社. Ω9 囚昌 淳巴σ qΦωΦ一 一 ω魯 oh け 魯 団 ヨ dヨ げ歪 9 1 Φぎ 貯 ♂同 冨 菖§ 巴興 く興 σq一 Φμ o互 一 8 ρ ω゜露砕 )。 日本 に有 限 会 社 法 制 度 を 導 入 す る に あ た り 、 有 限 会 社 を 商 法 典 中 に取 り込 まず に特 別法 と し て立 法 し た こと の 理論 的 説 明 を. も み ら れ る の であ る ( 竃 oω岳 o㌘ カ①o葺 ω噛 o﹃ヨ Ω輿 Oヨ げ= ま ﹃α鋤ω d口8ヨ ①ゴヨ①コ ヵoσΦ詳 bdoωo戸 ヨ ヵo薮 "UΦω ω団ωけ Φヨ. て資 金 を 調 達 す る こと が でき な い の で、 利 益 を 社 内 留 保 す るし か な い の であ る 。 こ の点 か ら 、 少 数 社 員 と多 数 社 員 の利 益 対 立. 有 限 会 社 が 株 式 会 社 と 比 較 し て全 て の点 に つい て好 都 合 であ る と は か ぎ ら な い。 と り わ け、 有 限会 社 は自 己資 本 市 場 を通 じ. 切oω魯 同口α二ω一 ユ①#Φ昌 き ロ 渓○) の分 離 は、 株 式 会 社 形 態 で は不 可 能 な こと であ る 。. る。 と く に、 租 税 上 の理 由 か ら 導 入 さ れ た の で あ る が、 持 分 権 者 ( 力oσΦ村 け 切oω。げ ωま 言 昌σq Ωヨげ=) と 議 決 権 者 ( 国oげ①巨. 社 員 の取 締 役 に対 す る指 図 権 が あ る。 ま た 、 有 限 会社 の大 きな 長 所 と し てあ げ られ る の は、 形 成 の柔 軟 性. こ の よう に、 開 示 お よ び 監 査 に つい て は、 大 有 限 会 社 と 株 式 会 社 と の間 に差 異 は な く な った が、 有 限 会 社 に は、 依 然 と し て、. 定 法 に より 、 切oω9 も 同 権的 共 同決 定 を 受 け 入 れ ざ る を え な くな った。. 基 準 と な る 貸 借 対 照 表 によ る開 示 と 監 査 を 受 け るよ う にな った 。 ま た 、 監 査役 会設 置 に つい ても、 と く に、 一九 七 六 年 共 同 決. そ の後 、 開 示 と 公 認 会 計 士 に よ る監 査 に つい ては 、 一九 六 九 年 の開 示 法 に服 し 、 監 査 と開 示 の義 務 が生 じ、 一九 八 六 年 の決 算. 会 に指 導 者 原 理 を 導 入 し 、 株 主 か ら取 締 役 に対 す る指 図 権 お よび 解 散 権 を 取 り 上 げ た の で、 切oω9. によ る 監 査 を 受 け る 必 要 も な く 、 監 査 役 会 の設 置 も 不 要 であ った 。 と く に、 株 式 法 は国 家 社 会 主 義 的 思 想 にも と づ き、 取 締 役. 会 社 に組 織 変 更 し た 。 一九 三 七 年 改 正 株 式 法 で は、 株 式 会 社 と有 限 会 社 の相 異 が 明 白 にな った。 有 限会 社 は開 示 と公 認会 計 士. αの. ⑬. 働. 一183一.

(10) U三 けΦ賢. 国ξ o冨. 知αP 一。。` 拙 稿. (前 掲 注 ㈱ ) 幻位戸 Nド. 一〇°。ρ ω゜卜。㎝゜. 冨 耳 Φ Oヨ げ=lOΦω①貫. 一〇⑩N. ﹁有 限 会 社 制 度 の 生 誕 一〇 〇 年 と そ の 発 展 ﹂ 近 畿 大 学 法 学 四 一巻 一 ・. 仁コニ 団づ αΦ円 ≦ 色 一﹂ コ 司Φω一ω9 葺 け 一8. ≡ ω9 冨 "Uδ 評昌 津巴 凶 ω口ω9 Φ ℃Φ冨 8 Φコα qΦωΦ=ω9 鑑 けL O刈ρ ω゜°。箪. (前 掲 注 03. U団Φ 国葺 乱 o乞 ニコαq 9 円 O∋ σ出 ぢ. ≦ Φωけ①﹃ヨ 鋤づ﹃. ⑳. ⑳. 拙 稿 ・前 掲 注 ⑳ 一三 六 頁 。. 二 号 四 八 頁 。). ω゜①崔 旧出09 ①づげξ σq\⊆ ヨ 興. 囲. =oヨ ∋ Φぎ o津 (前 掲 注 ㈲ ) ω゜島 "=09 ①づσξ σq\d一∋ 興. ∪帥① Ω∋ σ出1Φぎ , . ≧ 一 N≦ 8 〆1ぎ ω窪 ニヨ 8 代、N ぢ 牢 o O∋ σ渾. 23. 債権 者 の利益 お よび少 数社 員 の利益. 強 行 規 定 の機 能. 皿. ⑳. 9. 有 限 会 社 は、 企 業 のあ ら ゆ る目 的 遂 行 の たあ に用 立 てら れ て い る の であ るか ら 、 法 概 念上 ま た法 実 務 上 も、 定 款 自. 治 の原 則 に立 脚 す る、 あ ら ゆ る 目 的 の手 段 ( k ノ=N≦ΦO評同 コω一﹃己[ 旨P①づ一 ) であ る と 考 え ら れ る。 立 法 者 は、 でき る か ぎ り、. 株 式 法 のご と く詳 細 か つ広 範 囲 に わ た る規 定 を 排 除 し、 有 限 会 社 法 を 任 意 法 の領 域 にお く こと に徹 し て、 有 限会 社 を. 発 起 人 お よ び社 員 に開 放 し てい る。 法 概 念 的 に み れば 、 社 員 と 取 締 役 に関 係 す る有 限 会 社 法 三 七 条 ・四 六 条 お よ び 四. 九 条 と資 本 調達 に 関 す る同 法 一九 条 以下 の規 定 を比 較 し て み ると 明 白 であ る。 有 限 会 社 法 は、 前 者 にあ っては 若 干 の. 規 定 を 配 置 し て いる にす ぎ な い が、 後 者 に あ っては、 包 括 的 か つ詳 細 な 規 定 を 置 い て い る。. 法 律 上 、 社 員 と 取 締 役 の関 係 に つい て詳 細 な規 定 を定 あ な い か、 あ る い は、 定 あ る こと を 自 し ゅく す る こと は 、 実. 務 上 、 有 限 会 社 に広 く 目 的 開 放 し た り、 有 限 会 社 を多 様 に形 成 す る こ と に起 因 す る。 定 款 自 治 、 す な わ ち 、 形 成 の自. 一184一. 第49巻 第2・3号 近畿大学法学.

(11) 有限会社 における定款 自治. ㈲. 由 の意 味 は、 一方 で、 詳 細 な 規 定 を 設 け る 必要 が あ る場 合 に は、 そ れ ら を規 定 し、 他 方 で、 規 定 を 欲 し な いと き に は、. 業務執行. 規 定 を し な いと いう 主 旨 のも の であ る 。. 口. ㈱. 伽. 有 限 会 社 の内 部 の権 限 調 整 に関 す る 法 規 定 は 社 員 を 拘 束 す る も の では な い。 定 款 お よ び社 員 総 会 は、 有 限 会 社 の業. 務 執 行 に つい て、 代 表 権 を 除 き これ を 任 意 に定 め る こと が でき る 。有 限 会社 法 に は、 株 式 法 二 三条 五項 に相 当 す る規. 定 が な い の で、 社 員 は定 款 で取 締 役 の地 位 お よ び 取 締 役 と 社 員 総 会 と の関 係 を 任意 に定 あ る こと が でき る。 たと えば 、. ㈱. 取 締 役 の自 己 責 任 を 強 化 し た り 、 営 業 政 策 の決 定 を 取 締 役 に委 ね た り、 社 員 の取締 役 に対 す る指 図 権 を 制 限 し た りす. る こと が でき る。 他 方 、 日常 業 務 の中 の 一定 の行 為 を 社 員 の同 意 にか か ら し あ る こと も でき る。 これ ら の場 合 で問 題. と な る の は、 社 員 は、 定 款 でど こま で任 意 に定 あ る こと が でき る か 、 あ る いは 、 業 務 執行 権 を社 員 や他 の機 関 に付 与 す る に つき 、 定 款 上 の根 拠 が 必 要 か ど う か と いう こと であ る。. 定 款 の定 め に よ って、 業 務 執 行 に関 す る 一定 の権 限 を 取 締 役 以 外 の他 の機 関 、 たと えば 、 社 員 総 会 、 社 員 委 員 会. (O①ωΦ一 一 ωoび98冨 二ωωoげニピ 。)、 顧 問 会 (bdΦ貯魯)、 任 意 に設 置 され た監 査 役 会 に付 与 す る こと が でき る。 ま た 、 同 じ く. 定 款 で、 取 締 役 に対 し て、 あ る種 の業 務 執 行 の禁 止 を 定 あ る こと も でき 、 さ ら に、 社 員 の同 意 を も って のみ あ る種 の. 業 務 執 行 を 許 容 す る こと も 可 能 であ る。 た と え ば 、 不 動 産 の購 入 あ る いは 売 却 、 一定 額 を 超 過 す る 貸 付 け、 投 資 の決. 定 、 支 店 の設 置 、 新 商 品 の製 造 な ど の項 目 に つい て であ る。 加 え て、 定 款 によ って、 取 締 役 が 行 う こと の でき る取 引. の範 囲 を列 挙 し た り、 取 締 役 以 外 の会 社 の他 の機 関 に取 引 を な す 権 限 を 詳 細 に決 定 す る こと を 授 権 す る こと も でき る。. 一185一.

(12) 業 務 執 行 権 が社 員兼 取締 役 に 固有 権 と し て認 め ら れ て い る場 合 に、 定 款 中 で取 締 役 は社 員 の指 図 に従 う 旨 の定 め が. あ る と き には、 社 員兼 取締 役 は こ の指 図 に拘 束 さ れな い。 し たが って、 社 員 兼 取 締 役 は、 会 社 の利 益 、 会 社 の目 的 お. よ び 企 業 の目 的 に従 って、 通 常 の業 務 執 行 を独 自 に行 う こと が でき る。 人 的 に形 成 され た 有 限 会 社 にお い て は、 定 款. ⑳. で別 段 の定 あ が な いか ぎ り 、 企 業 の活 動指 針 お よ び通 常 で な い業 務 執 行 に関 し て社 員 か ら 指 図 を 受 け る。 けれ ど も 、 こ のよ う な 指 図 にも 拘 ら ず 、 社 員 兼 取 締役 の業 務 執 行 権 の効 力 は失 われ な い。. 有 限 会 社 法 は 、 取 締 役 た る地 位 、 そ の任命 代 表 権 お よ び義 務 な ど に関 し て の み強 行 的 に規 定 し て い るだ け であ る。. と り わ け 、 取 締 役 の義 務 は 、 会 社 債 権 者 お よ び 一般 大 衆 に対 す る自 己 責 任 であ り、 か つ、 そ れ は社 員 の拘 束 力 あ る指. 図 にも と づ き 履 行 さ れ な け れ ば な ら な い。 た と え ば、 資 本 維 持 ・充 実 、 計 算 お よ び そ の開 示 、 な らび に適 宜 に行 われ. る べき 破 産 の申 立 てな ど であ る。 取 締 役 は 有 限 会社 の内部 では プ ロモー タ ー と し て職 務 を 執 行 し な け れば な ら な い。. た と え 、 社 員 が あ ら か じ め 指 図 を し な く と も 、 自 己責 任 のも と、 定 款 で定 あ た プ ログ ラムを 積 極 的 に遂 行 す る義 務 お. ⑳. よび 年 度 決 算 書 の作 成 のご と き 附 随 的 に協 力 を 求 め ら れ る も のも あ る。 言 う ま でも な く、 強 行 的 に定 め ら れ てい る機. 能 を 果 す べき 取 締 役 の地 位 は定 款 を も って これ を 排 除 す る こと は でき な い 。 そ の職 務 を引 き受 け よ う とす る社 員 は、. 債権者保護. 会 社 の機 関 た る地 位 に組 み込 ま れ 、 か つ、 取 締 役 の地 位 に つく こと に な る 。. 日. 会 社 の設 立 お よ び資 本 維 持 ・充 実 に関 す る規 定 は、 債 権 者 の利 益 保 護 のた あ に これ を 定 款 の任意 に 委 ね る こと は で. き な い。 有 効 な債 権 者 保 護 は、 一定 の開 示 と 有 限 会 社 法 の外 にあ る 商 法 典 で定 め る 計 算 規 定 で強 行 的 に実 現 さ れ てい. :.. 第49巻 第2・3号 近畿大学法学.

(13) 有限会社 にお ける定款 自治. る。 取 締 役 は正 規 に会 社 の帳 簿 を 作 成 す る義 務 を 負 って いる. (ド有 四 一条 )。 ド イ ッ商 法 典 二 四 二条 お よび 二六 四条. にも と つ い て作 成 し な け れ ば な ら な い年 度 決 算 書 の貸 借 対 照 表 上 に、 資 本 金 の額 を 引 受 済 資 本 と し て表 示 し な け れ ば. な ら な い (ド有 四 二 条 一項 )。 そし て、 取 締 役 は、 年度 決 算 書 と状 況 報 告 書 を作 成 し た ら、 す み やか に年 度 決 算 書 の. 確 定 のた め に社 員 に提出 し な け れ ば な ら な い (ド有 四 二 条 a第 一項 )。 こ こ で注 意 す べき こと は、 有 限 会 社 の計 算 お. よ び そ の開 示 に つい ては 、 商 法 典 で規 定 す る会 計 原 則 に従 わな けれ ば な ら な いと いう こと であ る。 と く に、 資 本 会 社. であ る有 限会 社 は そ の規 模 に応 じ て、 大 会 社 、 中 会 社 、 小 会 社 に分 類 され 、 決 算 書 作 成 、 監 査 お よび 開 示 の義 務 に つ. き相 違 が み ら れ る 。 す な わ ち 、 総 資 産、 年 間売 上 高 お よび 従 業 員 数 の三 つの基 準 が 設 け ら れ 、 そ のう ち の 二 つの基 準. を連 続 す る 二営 業 年度 の決 算 日現 在 でみ た し て いる会 社 区 分 で大 中 小 の会 社 が 分 類 され て い る (ド商 二六 七 条 )。. こ のよ う に有 限 会社 が 大 中 小 の いず れ か の会 社 に分 類 さ れ たな ら ば 、 それ ぞ れ の区 分 で決 算 書 作 成 、 監 査 お よび 開. 示 に つい て の義 務 が定 あ ら れ て いる 。 た と え ば、 年 度 決 算 書 ( 貸 借 対 照 表 、 損 益 計 算 書 、 付 属 明 細 書 ) はす べ て の会. 社 で作 成 を義 務 づ け ら れ 、 監 査 は 小 会社 では 不要 ではあ る が、 中 お よび 大 会 社 で は必 要 と さ れ る。 開 示 に つい て み る. と、 年 度 決 算 書 は、 大 会社 では 、 連邦 公報 に登 載 し、 中 会 社 では登 記 裁 判 所 に届 け 出 な け れ ば な ら な いが 、 子 会 社 で. ㈲. は貸 借対 照表 お よ び付 属 明細 書 を登 記裁 判 所 に届 け出 な け れば な らな い (ド商 三 二五 条 ・三 二六 条 ・三 二八 条 、 有 四 二 条 a)。. ま た 有 限 会社 法 では、 限定 的 では あ る が、 債 権 者 保 護 を 実 現 す る のが 最 低 資 本 金 であ る。 最 低 資 本 金 は五 万 ドイ ツ. マルク 以上 でな け れ ば な ら な い (ド有 五条 一項 ) が、 定 款 を も って容 易 に これ を 引 き 上 げ る こと が でき る。 定 款 の自. 治 は 、 資本 調 達 の自由 な方 法 で債 権 者 の保 護 を は か る こと が でき る。 ただ 、 法 定 の五 万 ド イ ツ マル クと いう 最 低 資 本. 一187一.

(14) 金 額 の経 済 的 意 義 は 、 法 が 意 図 し て い る債権 者 の厳 格 な担 保機 能 を決 し て有 効 に果 す も の では な い。 か り に、 最 低 資. 本 金 額 は五 万 ドイ ッ マル クと 制 定 さ れ た 当 時 に会社 債 権者 にと って最低 限 の担 保 を意 味 す るも の であ ったな ら ば 、 少. な く と も 、 今 日 で は そ の経 済 的 背 景 が 全 く 異 な って いる の であ る か ら、 そ の額 高 も当 然 に変 化 し て行 かな けれ ば な ら. な い はず であ る。 た と え ば 、 非 営 利 を 目 的 と す る会 社 を 除 い ては、 五 万 ド イ ッ マルク の最 低 資 本 金 額 は経 済 的 目 的 を. 達 成 す るた あ に不 可 欠 な 設 立 資 本 を ま か な う には 決 し て十 分 な も のと は いえ な い。 有 限 会 社 は多 様 な 目 的 遂 行 の ため. に開 放 さ れ て い ると いう 観 点 か ら み れ ば 、 重 要 な 債 権 者 保 護機 能 は営 利 目的 を前 提 と し てい る有 限 会 社 の資 本 維 持 ・. ㈱. 充 実 に関 す る規 定 が 意 図 し て い る目 的 を 達 成 す る こと は でき な い。 む し ろ、 今 日、 最低 資 本 金 の機 能 は、 有 限 責 任 の. ( ㎏ 〆二ゆ①つげ9哺 隔二つσq) が肯 定 さ れ る か ど うか 、 そ し て、. 利 益 を享 受 す る た め の 一定 の基 準 であ り、 そ れ によ って、 信 用 力 のな い会 社 の設 立 を 防 止 す ると こ ろ に あ る。 し た が って、 明 ら か に不 十 分 な 資 本 装 備 の ため に社 員 に対 外 責 任 それ はど の よう な 条 件 のも と で認 あ ら れ るか が 問 題 であ る。. 定 款 自 治 は、 資 本 調 達 の自 由 な 方 式 によ って、 債 権 者 保 護 を 確 立 す る こと が でき る 。 と いう のは、 そ れ ぞ れ の会 社. が企 業 活 動 を 行 う にあ た り 、 そ の目 的 を 達 成 す るた め に適 切 であ ると す る自 己 資本 を 調達 し な け れば な ら な い と い う. 義 務 はな いか ら であ る。 つま り 、 企 業 の目 的 遂 行 に際 し 、 設 立 段 階 では ど れ だ け の資本 が な け れ ば な ら な い と か、 あ. る い は、 営 業 活 動 にあ た って はど れ だ け の資 本 が 必 須 であ ると いう も の では な い。定 款 の定 め によ って、 最 低 資 本 金. を 任 意 に引 き 上 げ て債 権 者 の利 益 保 護 を 図 る こと も 可 能 であ る。 と く に、 こ の関 係 でふ れ てお く べき こと は、 有 限 会. 社 で は、 追 出 資 義 務 を 定 款 で認 め る こと が でき る (ド有 二六 条 ) こと か ら 、 こ の制 度 が 資本 制 度 を補 完 し てい る と い. う こ と であ る。 ま た、 同 様 の機 能 は、 社 員 お よび 取 締 役 が 会 社 に対 し て厳 格 な 責 任 を 負 って いる (ド有 九 条 a) こと. .. ... 第49巻 第2・3号 近畿大学法学.

(15) 有限会社 におけ る定款 自治. 単 独 社 員 ・少 数 社 員 の保 護. か らも 得 られ る。. 四. ㈱. 定 款 自 由 の原 則 の意 義 は会 社 の内 部 関 係 に つい て任 意 に定 め る こと にあ る の で、 いき お い多 数 決 によ り 、少 数 社 員 の利 益 が 必 ず し も 尊 重 さ れ るわ け で はな い。. 単 独 社 員 お よ び 少 数 社 員 の利 益 保 護 に つい ても 、 法 は 強 行 的 な 定 め を も って、 定 款 を も ってし ても 、 これ を制 限 し. た り 、 あ る い は奪 った りし て はな ら な いと し て い る。 主 な も のを あ げ よ う 。 ま ず 、 個 々 の社 員 は 、 年 度 決算 書 に つい. て決 算 検 査 役 の監 査 を 受 け ると き に は、 監 査 報 告 書 の提 出 を 求 め る こと が でき る (ド有 四 二条 a)。 つぎ に、 情報 請. 求 権 ・閲 覧 請 求 権 が あ る。 取 締 役 は、 各 社 員 に対 し て、 請 求 が あ った と き には 、 遅 滞 な く 会 社 の業 務 に関 す る情 報 を. 提 供 し 、 か つ、 帳 簿 や書 類 の閲 覧 を 許 可 しな けれ ば な ら な い (ド有 五 一条 a)。 情 報 請 求 権 の対 象 範 囲 は 会 社 の義 務. に関 す る 一切 のも の であ る。 これ は、 取 締 役 のな す べき 業 務 執 行 の 一つであ る の で、 業 務 全 般 にわ た って情 報 を 提 供. ㈹. す る こと にな る。 閲 覧 の対 象 はあ ら ゆ る帳 簿 お よび 書 類 であ って、 社 員 は そ の場 で閲 覧 す る こと が でき る 。 複 写 ・コ. ピ ー に つい て は、 自 ら それ が でき るだ け であ って、 会 社 に要 求 す る こと は でき な い。 も ち ろん 、 取 締 役 は 社 員 が 情 報. お よび 閲 覧 を 会 社 以 外 の目 的 に利 用 し 、 か つ、 それ に よ って、 会 社 ま た は結 合 企 業 が 少 な か ら ぬ 不 利 益 を こう む る お. それ があ る場 合 に は、 これ を 拒 否 す る こと が でき る (ド有 五 一条 a第 二 項 )。 言 う ま でも な く 、 定 款 に よ って、 こ の. 権 利 を 制 限 す る こと は でき な い ( 同 条 三 項 )。 さ ら に、 少 数 社 員 権 と し て、 社 員 総 会 招 集 権 (ド有 五〇 条 )、 会 社 の解. 散 の訴 え提 起 権 ( 同 六 一条 二項 ) お よび 清 算 人 の選 任 申 立 権 (同 六 六 条 二項 ) が あ る。 こ こ では 、 社 員 総 会 招 集 権 に. ...

(16) 鞘. ふ れ る。 合 計 し て資 本 の 一〇 分 の 一以 上 にあ た る 持 分 を 有 す る社 員 は、 そ の目的 お よ び 理由 を 示 し て社 員総 会 の招 集. を 請 求 す る権 利 を 有 す る (同 五 〇条 一項 )。 招 集 請 求 が な され た 場 合 に は、 取締 役 は 遅滞 な く これ に 従 わ な け れ ば な. ら な いが 、 これ に は強 制 力 はな い の で社 員 自 ら が そ の事 情 を 示 し て、 招 集 ま た は 通 知 を す る こと に な る (同 条 三項 )。. こ の よう に、 少 数 社 員 に よ って招 集 さ れ た 社 員 総 会 に つき 生 じ た 費 用 に つい ては 、 一体 誰 れ が 負 担 す る か が 問題 であ. る。 社 員 総 会 が 明 ら か に不 要 か 不 合 理 であ る 場 合 に のみ 、 会 社 は そ の費 用 の負 担 を 拒否 でき る 。. ド有 三 七 条 三項 ﹁⋮ ⋮代 表 権 に つい ては 、 これ を 制 限 し ても 第 三 者 に対 抗 す る こと は でき な い。﹂. 出o∋ヨ Φぎo津 ( 前 掲注 ㈲ ) ω゜卜P. ︿ 注﹀. ド株 式 法 二 三条 五 項. ㈱ ⑳. ﹁定 款 は明 示 的 に許 さ れ て いる 場 合 に のみ 本 法 と 異 な る 定 め を す る こと が でき る 。 定款 の補 足 的 規 定 は. ⑳. 定 款 で社 員 総 会 以 外 の他 の委 員 会 な ど に、 取 締 役 を 指 図 す る権 限 を 与 えた り、 あ る い は、 取 締 役 の業 務 執 行 権 を 制 限 す る 規. ≦Φ ω8円ヨき 口 (前掲 注 ⑳ ) ω゜ωω宍. 許 され る。 ただ し 、 本 法 が 最 終 的 規 定 を 含 む と き は こ のか ぎ り では な い。﹂ ⑱. 定 を 設 け る権 利 を 認 め るな ら ば 、 これ ら の権 利 は社 員 総 会 のそ れ の下 位 に位 置 す る のか 、 あ る いは 、 同 置 す る のか 、 さ ら に は 、. ⑳. い は非 社 員 に、 取 締 役 に対 す る指 図 権 を 認 め るな ら ば 、 そ れ には 機 関 た る 性 質 が 示 さ れ る 。 つま り 、 非 社 員 は 有 限 会 社 の組織. 社 員 総 会 の権 限 が 排 除 され る のか に つい て の定 め を 設 け る こと が 望 ま し い。 定 款 の定 め によ って、 非 社 員 か ら な る 委 員 会 あ る. 中 に組 み込 ま れ、 か つ有 限 会 社 の利 益 に そ って行 動 す る こと が 求 め ら れ る。 し か し な が ら 、 こ の場 合 に、 ど のよ う な 要 件 が 必. 要 な の か、あ る いは、非 社 員 は 正 規 の社 員 か ら 干 渉 さ れ う る のか、 それ は、ど の程度 のも の か に つい ては問 題 は残 る ( 鵠9 げΦ ⇔す ω9 9ミ ωoぎ Φ 三 ①コ Oヨげ出ρ ⑳ 掛巳 計. ゜。刈諺ロ日゜鐸. 毎 oq\竃 ①コ魯 ω"Oヨσ出ρ 鉾 諺珪 r ㈱ω刈 幻身 ﹂ 刈)。 ⑳. 出 oヨ 日 Φヨ o津 (前 掲 注 ㈲ ) ω゜畠 ゜. 鋭 ρρ. 伽① ぎ ヨ ト 。 ﹄. 劒. ⑳. 一190一. 第49巻 第2・3号 近畿大学法学.

(17) 有限会社 におけ る定款 自治. ㈱ 勧. ㈲. ( 口 [Oσ qΦげΦ同 凶 Oゴ一 ) に は、 実情 に 合 致 し た 写像 を 伝 達 す る ため に、 少 なく と も、 会 社 の営 業 の経 過 お よ び状 況 が 記. 一九 八 〇 年 有 限 会 社 法 改 正 と 一九 八 五 年 貸 借 対 照表 指 令 法 に関 連 し て債 権 者 保 護 を 説 く も のと し て、 新 山 ・前 掲 注 働九 八 頁 状況報告書. 以 下 が あ る。. 述 され な け れ ば な ら な い。 さ ら に、 営 業 年 度 終 了後 に生 じ た重 要 な事 象 、 当 該 会 社 の発 展 の見 通 し 、 な ら び に、 研究 お よ び 開. 発 の領 域 を 記 載 し な け れば な ら な い (ド商 二八 九 条 )。 状 況 報 告 書 は 、 小 会 社 を 除 く す べ て の会社 が これ を作 成 し な け れ ば な ら. 一九 八 六 年 に施 行 さ れ た貸 借 対 照 表 指 令 法 に よ って、 こ のよ う に詳 細 な 計算 規定 が 設 け ら れ 、 有 限会 社 も 年 度 決 算書 開 示 が. な い。. ( 要綱 二二. 義 務 づ け ら れ た わ け で あ る が、 こ の よう な 開 示 を 拒 否 す る有 限 会 社 は 、 社 員 か ら 責 任 制 限 の特 権 を 奪 う べき 危 険 を 昌 す わ け に. 日本 でも 、 平 成 二年 の商 法 改 正 にあ たり 、 法 律 要 綱 中 で、 貸 借 対 照表 等 を 商 業 登 記 所 で、 公 開 す る旨 が 示 さ れ た. は行 か な い よ う であ ろ う。. ﹁会社 の責 任 財 産 の維 持 と 債 権 者 の利 益 保 護 e ﹂ 法 協 一〇 二 巻 三 号 四 四 二 頁 以 下 、 梅 本 ・前. 株 式 会 社 の計 算 ・公 開 1 )。 し か し、 こ の商 業 登 記 所 で貸 借 対 照 表 等 の計 算 書 類 の公 開 が ど のよ う な 利 益 が あ る のか な ど に つき 疑 問 が投 げ か け ら れ た (吉 原 和志. 奥島 孝 康 ・会 社 法 の基 礎 (日本 評 論 社 ・平 成 六 年 ) 四 六 頁 以 下 、 梅本 ・前 掲 注 ω九 二 八頁 、 ア メ リ カ で は、 資 本 制 度 の債 権. 掲 注 ω九 二六 頁 )。. 喜 多 川 篤 典 ﹁有 限 会 社 法 の比 較 法 的 研 究 e ・ド イ ッ法 を中 心 とす る考 察 ﹂ 法 協 六 九 巻 二号 一六 四頁 以 下 、 日本 法 に つい て は、. て、 小 林 量 ﹁コー ポ レ ー ト ・フ ァイ ナ ン ス法制 の柔構 造 化 ﹂ 商 事 法 務 一六 〇 三 号 一八 頁 以 下 (二〇 〇 一年 )。. ¢Φ9 魯 σ仁円 σ q\⊆ ヨ①﹃ ( 前 掲 注 q紛) 伽α 幻α戸 刈 "梅本 ・前 掲 注 ω 九 二七 頁 、 資 本 制 度 と 債 権 者 保 護 の諸 外 国 で の議 論 に つい. い う (伊藤 靖 史 ﹁ア メリ カ にお け る 資本 制 度 と債 権 者 保 護 ﹂ 商 事 法 務 一六 〇 一号 = 頁 以 下 ( 二 〇 〇 一年 ))。. 者 保 護機 能 は な く な ってお り 、 む し ろ 債権 者 保 護 は、 詐 害 的 な 取 引 の禁 止 、 取 締 役 の忠 実 義 務 の強 化 、 配 当 規 制 な ど によ ると. ㈹. ⑳ 鯛. 有 限 会 社 の中 心 的 関 心 事 が 少 数 社 員 の保 護 であ って、 多 数 決 に よ っても そ の意 の まま にな らな い社 員 の保 護 であ る。 こと に、. 酒 巻 俊 雄 ・閉 鎖 的 会 社 の法 理 と 立 法 ( 日 本 評 論 社 、 昭 和 四 八年 ) 二五 三 頁 以 下 。. 多 数 派 の権 限 行 使 に よ って社 員 の利 益 を 危 険 に さ ら し た り、 正 当 な 理由 な く し て社 員 た る地 位 を 侵 害 す る よ う な 不 利 益 か ら の. 保 護 であ る 。 こ の種 の侵 害 の危険 は有 限会 社 では大 であ る。 と いう の は、 内 部 関 係 に つい ては 、 株 式 法 と 異 な り、 有 限 会 社 法. は 広 く 任 意 の定 め を す る こと が でき る か ら であ る 。 一般 的 には 、 誠 実 義 務 、 社 員 平 等 の原 則 お よび 会 社 外 で の特 別 利 益 追 求 の. 禁 止 な ど によ る保 護 手 段 が 考 え ら れ る 。 訴 訟 上 の少 数 社 員 の保 護 と し て、 多 数 決 に よ る法 律 あ る い は定 款 違 反 に つい て、 取 消. 191一.

(18) 69. 定款 自治 の原 則 の再考. 定款自治 の原則 の限界. W. 荒 木 和 夫 ﹁ド イ ッ有 限 会 社 法 解 説 ﹂ ( 商 事 法 務 研 究 会 、 平 成 八 年 ) 一九 三頁 。. の訴 あ る い は無 効 の訴 が あげ ら れ よ う。. e. ω. ㈹. 有 限 会社 法 の基 礎 を な し て いる定 款 自 治 の原 則 (形成 の自 由 ) を議 論 す る に あ た り ふ れな け れば な らな い こと は、 こ の原 則 に限 界 は あ る のか と いう こと であ る。. 人 的 会 社 にお け る社 員 の除 名 の問 題 と 同 じ く 、 定 款 で、十 分 な補 償 を し な い で、 あ る特 定 の社 員 を 除 名 す る こと を. ㈱. 多 数 派 社 員 に授 権 す る こと が でき るか と いう 問 題 が あ る 。 こ の種 の問題 は、 形 成 の自 由 を 制 限 す る こと が継 続 的 法 律. ㈲. 関 係 と し て の会 社 機 能 の有 効 性 を 確 保 す る 目 的 と し て論 じ ら れ て いる 。 判例 は、 人 的 会 社 に お け る こ の種 の定 款 条 項. ㈹. を 民 法 典 = 二八 条 (公 序 良 俗 ) に違 反 す ると し て い る。 連 邦 通 常 裁 判 所 は、 有 限会 社 に つい ても こ の考 え方 を 引 き 継. い で い る。 実 際 に有 限 会 社 でも 、 定 款 の定 あ に則 った 除 名 が 許 さ れ る のは 、 あ く ま で、 そ の除 名 が定 款 中 で具 体 的 に. 定 め ら れ て い る事 由 に適 合 し た 場 合 だ け であ る。 こ こ で取 り 上 げ ら れ る事 項 と し て、 た と え ば、 定 款 中 で個 々 の社 員. の行 為 資 格 を 剥 奪 す る権 限 を 認 あ る こと や 取 締 役 の主 権 を 原 則 制 限 す る こと な ど であ る。 つま り、 有 限 会 社 では、 社. 員 全 体 が そ の本 質 上 、 最 高 機 関 性 を 有 し て い ると いう こと が 堅 持 さ れ な け れ ば な ら な い。 取締 役 な る者 の地 位 が欠 落. す る こと にな れ ば 、 会 社 は機 能 不 全 に陥 入 る こと にな る の で、 定 款 でも って、 社 員 の地 位 に関 連 し て、 た と えば 、 議. 一192一. 第49巻 第2・3号 近畿大学法学.

(19) 有限会社 におけ る定款 自治. 決 権 な き持 分 を創 設 し た り、 現 行 法 上 無 効 ではあ る が、 社 員 の情 報 請 求 権 お よび 閲 覧 請 求 権 を 排 除 し た り (ド有 五 一. 条 a三項 )、 さ ら には 、 利 益 配 当 請 求 権 を 付 与 し た り す る こと に な ろ う。 こ のよ う に、 定 款 自 治 の原 則 に よ って、 制. 限 す る こと が でき る のは ど こま でか と いう限 界 線 を 引 く こと は明 ら か で はな い。 し か し な が ら 、 有 限 会 社 を 支 配 す る. 定 款 自 治 の原 則 の全 体 像 は そ の制 限 を 認 あ る こと に よ って、 形 成 の自 由 の本 質 を 変 更 す るも の で はな い。 有 限 会 社 の. 特 性 であ る定 款 自 治 の原 則 が有 限会 社 創 設 以来 一〇 〇 年 を 経 過 し ても 一般 に承 認 され て い ると こ ろ であ るが 、 これ に. 関 す る議 論 の成 果 は有 限会 社 の法 形 態 を利 用 す る実 務 家 の行 動 に帰 す る。 し か し 、 最 終 的 に は、 裁 判 所 、 と り わ け 連. ㈲. 邦 通常 裁 判 所 の判 決 でそ の動 向 は決 せ ら れ る の であ る が、 自 己 資 本 の補 充 に関 す る判 例 か ら も 明 ら か の よう に、 有 限. 定款 自 治 の原 則 の監視 ・是 正. 会 社 の形成 の自 由 の過度 の行使 は抑 止 傾 向 にあ る。. ⇔. ㈹. 有 限会 社 の特 性 であ る定 款 自 治 (自 由 ) の原 則 によ って、 定 款 中 に不 適 切 な条 項 が組 み込 まれ る の で はな いか と い. ㎝. う 疑 問 が あ る 。定 款 で定 め る 規 定 と 法 律 で定 あ る そ れ と が相 違 す る な らば 、 こ の こと は そ の妥 当 性 ( 適 合 性 ) な いし. 合 理 性 と いう 観 点 か ら チ ェ ック (監 督 ・是 正 ) さ れ な け れば な ら な い。 こ の種 の具 体 的 な 問 題 と し て生 じ る の は、 た. と え ば 、 あ る社 員 が定 款 作 成 に関 与 せ ず 、 後 日 、相 続 人 と し てか、 あ る い は、 会 社 設 立 後 に社 員 とし て新 た に加 入 し. た 場 合 であ って、 こ の者 は定 款 内 容 に自 己 の意 見 を 反映 さ せ て いな い。 こ のよ う な例 示 は、 社 員 を 一般 消 費 者 と 同 じ. レ ベ ル にお く よ う な も の であ る 。 し か し 、有 限 会社 の定 款 の妥 当 性 ( 適 合 性 ) に つい ては、 公 証 人 か ら指 摘 を 受 け る. であ ろう か ら 、 定 款 作 成 に関 与 し な い者 にと って不 利 益 と な る よ う な定 款 は無 効 であ る。 日本 法 と同 じく ( 有五条 二. 一193一.

(20) 項 、 商 一六 七 条 )、 定 款 を作 成 す る に際 し て、 公 証人 に よ って公正 証書 と し てこ れ を作 成 し な け れば な ら な い (ド有. ㈱. 二条 )。 定 款 を 公 正 証 書 にし た のは 、 定 款 の作 成 お よび 内 容 を 客 観 的 に明 確 化 し 、 そ れ によ って定 款 に関 す る ト ラブ. ルや 不 正 を 防 止 す るた め であ る。 定 款 の規 定 か ら 、 具 体的 に生 じ る法 的 効 果 が修 正 さ れ る 必要 が あ る と き に は、 そ れ. ㈲. を チ ェックす る こと に よ って合 法 的 に行 わ れ な け れ ば な ら な い。 つま り、 定 款 条 項 そ れ自 体 の内 容 に関 す る監 督 は あ. 定 款 の自 治 と 少 数 社 員 の利 益 保 護. く ま で例 外 的 に、 か つ、 一定 の条 件 のも と で のみ 行 わ れ る べき であ って、 有 限 会社 の特 性 が否 定 さ れ ては な ら な い。. 日. 定 款 の自 治 ( 形 成 の自 由 ) の議 論 にあ た り 、 少 数 社 員 の利 益 が いか に確 保 さ れ る べき か の問題 に つい ては、 す で に. 述 べ たと こ ろ であ る が、 こ こ で は、 年 度 決 算 書 の確 定 お よ び 利 益 処 分 と いう 具 体 的 事 例 に則 し て少 数社 員 の利益 保 護 5① に ふれ て み る。. 通 例 、 定 款 に よ って、 社 員 が 年 度 決 算 書 の確 定 お よ び 利 益 処 分 を 社 員 総 会 の決 議 で決 定 す る こと にな って いる (ド. 有 四 二条 a ・二九 条 )。 社 員 は 、 こ の社 員 総 会 の決 議 にも と づ き 具 体 的 に会 社 に利 益 配 当 を 請 求 す る こと が でき る 。. と こ ろ で、 取 締 役 と し て業 務 を 執 行 す る多 数 派 社 員 は、 社 員 総 会 で年 度 決 算 書 の確 定 お よ び 利 益 処 分 に つき 、 恣意 的. な決 議 を な し う る か と い う問 題 が生 じ る。 も し 、 そ の よう な 決 議 が な さ れ た と す れ ば 、 少 数 派 社 員 は利 益 処 分 の決 議. に対 し て給 付 の訴 え (H、 Φ一 ωゴ﹂昌M 四 ω評一 〇M 四 ①) を 提 起 す る こと が でき るだ け であ る。 そ の際 、 少 数 社 員側 の問 題 は、 訴 訟. 費 用 の負担 であ って、 一体 誰 れ に対 し て請 求 す る のか 、 多 数 派 社 員 に対 し てな のか 。 も ち ろ ん、 こ の給 付 の訴 え は、. 具体 的 な決 議 の内 容 に対 し て では な く、 利 益 処 分 の決 議 に対 し て であ る。 と いう の は、 社 員 は年 度 利 益 の処 分 に つい. 一194一. 第49巻 第2・3号 近畿大学法学.

(21) 、. 有限会社 における定款 自治. て は、 企 業 家 の裁 量 で多 数 決 を も って これを 決 定 す る か ら であ る。 社 員 兼 取 締 役 の意 図 に よ って利 益 処 分 の完 全 な る. 社 内 留保 が決 議 さ れ、 そ の結 果 、 す べ て の配当 が スト ップす る。 取 締 役 兼 多 数 派 社 員 は取 締 役 と し ての報 酬 を 得 る こ. と が でき る の であ る か ら、 別 段 問題 は な い。 し か し、 他 方 にお い て、 少 数 社 員 は、 こ の決 議 に誠 実 義 務 を 根 拠 に異 議. を 唱 え る こと が でき る が、 ま れ にし か功 を奏 し な い の であ る。 一般 に、 この よ うな 場 合 に は、 会 社 は営 業 活 動 にお け. る 必 要 な 資 金 需 要 を そ の理由 と し て準 備 し て いる か ら であ る。 少 数 社 員 が取 消 の訴 えを 提 起 し ても 、 取 消 に関 す る形. 形 判決 は 必 ず し も彼 ら にと って好 都 合 な も のと は な ら な い。 裁 判 所 は、 社 員 の利 益 配 当 請 求 権 に つい て、 社 員 に好 都 合 な 理由 づ け を 準 備 し て いな いか ら であ る。. そ こ で、少 数 社 員 は 自 ら の利 益 を ど のよ う に確保 し な け れば な ら な い のか。 少 数 社 員 は、 法 律 上 の保 護 手 段 を 信 頼. し て いな い の で、 会 社 の設 立 あ る い は加 入 に際 し て、 問題 解 決 に必 要 な条 項 を 、 法 律 が定 あ る と ころ と異 な って、 有. 限 会 社 の定 款 中 に入 れ よ う と す る。 形 成 の自 由 のも と、 彼 ら は、 自 ら の利 益 獲 得 を あざ す の であ る。 し た が って、 も. 社 員 の自 己 責 任 と 立 法 者 の責 任. し 、 彼 ら が これ を 怠 れ ば 、 後 日 そう し な か った こと か ら生 じ る 不 利益 を甘 受 し な け れば な ら な い。. 四. 形 成 の自 由 は少 数 社 員 の立 場 か ら ど の よう に考 え ら れ る のか 。 形 成 の自 由 が有 限 会社 に特 有 のも の であ る と し ても、. それ が ど こま で可 能 な のか 、 少 数 社 員 の利 益 保 護 の見 地 か ら み て そ の有 効 性 は ど のよ う な も のか を 検討 し な け れ ば な ら な い。. 60 少 数 社 員 の利 益 保 護 を 図 る に は いく つか の間 題 が あ ろう 。 こ の少 数 社 員 の利 益 保 護 の方 法 と し て、 た と え ば 、 定 款. 一195一.

(22) を も って少 数 社 員 に年 度 利 益 の 一定 の割 合 の額 で利 益 配 当 を 保 証 す ると か 、 あ る いは 、少 数 社 員 に訴 の提起 を 認 あ る. と か、 あ る い は、 社 員 総 会 の決 議 で利 益 の内 部 留 保 を 決 定 す る に は、 四分 三 以 上 の多 数 決 を 必 要 と す ると か の提 案 が. み ら れ る。 し か し現 実 に は、 必 ず しも こ の少 数 社 員 の利 益 を 調 整 す る こと は容 易 でな く 、 問 題 解 決 のた め の適 切 な 条 項 が必 要 と さ れ て い る。. つぎ に、 多 数 社 員 と少 数 社 員 と の間 での利 害 衝 突 の解 決 に つき 適 切 な 解 決 モ デ ル、 つま り 、 具 体 的 に示 さ れ る判 例. の積 み 重 ね が必 要 であ り、 そ れ に よ って初 あ て 一般 大 衆 は法 を 信 じ る こ と にな る。 あ く ま で、 こ こ で の利 益 衝 突 と い. う争 は、 利益 処 分 に 関 す る 多数 社 員 と少 数 社 員 間 に存 在 す る の であ る か ら、 少 数 社 員 に自 己 責 任 にも と つ く 形 成 の自. 由 の行 使 を求 あ る こと は 説 得 力 のな い こと であ る 。社 員 の自 己責 任 に よ る自 己 規 制 に つき 、 一九 八 〇 年 改 正 法 で設 け. ら れ た 情 報 請 求 権 お よ び 閲 覧 請 求 権 (ド 有 五 一条 a ・五 一条 b) が あげ ら れ る。 立 法 者 は、 一九 八 〇 年 以 前 に これ ら. の権 利 を あ く ま で社 員 の自 己 責 任 にも と づ き 定 款 で の自 己 規制 に 委 ね た の であ る。 社 員 は こ の種 の情 報 請 求 権 を 定 款. で合 意 し な け れ ば な か った の であ る が 、 これ す ら 一般 に行 わ れ な か った の であ る。 会 社 法 に お け る定 款 自 由 の原 則 の. 実 現 を は か る には 、 いか に知 的 で、 か つ骨 の折 れ る作 業 であ る か 知 れ よ う 。法 律 に よ る助 け が必 要 と さ れ た ゆ え ん で あ る。. そ こ で、 有 限 会 社 の立 法 者 は、 少 数 社 員 の利 益 保 護 を は か る べき 法 規 定 を 整 備 す る こと によ って、 定 款 自 治 の原 則. (形 成 の自 由 ) を 堅 持 す べき であ る こと が 求 め ら れ る 。 定 款 作 成 の当 事 者 は、 大 な り小 な り、 法 律 で定 め る少 数 社 員. 保 護 と の相 異 を 定 め る こと が でき る の であ るが 、 む し ろ、 法 律 よ り も 狭 いも の にし よ う と し て いる よ う であ る 。. 有 限 会 社 は、 あ く ま で資 本 会 社 とし て追 究 され 、 今 日ま で そう であ る こと を 変 更 せ ず にし てき た 、 法律 上 認 あ ら れ. 一196一. 第49巻 第2・3号 近 畿 大 学 法学.

(23) 有限会社 にお ける定款 自治. て い る資 本 会 社 の典 型 であ って、 将 来 にお い ても そ れ を堅 持 さ れ る べき であ る。 そ の ため にも 、 有 限 会 社 の特 性 であ. る形 成 の自由 は 保持 さ れ な け れ ば な ら な い。 社 員 の自 己責 任 の確 立 が形 成 の自 由 を 確 立 す る はず であ る。 少 数 社 員 の. 利 益 が 保 護 さ れ て初 め て形 成 の自 由 が そ の意 義 を 発揮 す る。 少 数 派 であ ろ う が、 多 数 派 であ ろ う が、 有 限 会 社 の特 性. 法 規 制 の必 要 性 の判 断. であ る形 成 の自 由 の恩 恵 を 受 け る こと が でき な け れ ば 、 そ の本 来 の意 義 を失 う か ら であ る。. ㊨. 定 款 自 治 の原 則 ( 形 成 の自 由 ) は、 社 員 に対 し て、 単 純 に、 有 限 会 社 を 資 本 的 な も のか ら人 的 な も のま でを 任 意 に. 形 成 す る余 地 を 与 え るも の で はな い。 定 款 自 治 の原 則 それ 自 体 と そ の実 行 と いう 二 つの成 果 が 目的 であ る。 す な わ ち、. 有 限 会 社 に人 的 な 性 質 を 装 備 し よ う とす る者 は、 有 限 会 社 法 が 定 あ る規 定 に つい て、 そ れ ら が こ の会 社 が向 い て いる. 方 向 に合 致 し て い る か ど う かを 検 討 し、 そ れ 以外 の法 規 定 を 、 と く に会 社 の人 的 な 特 性 と いう 点 か ら補 充 し な け れ ば. な ら な い。 こ の こ とを 社 員 兼 取 締 役 を例 示 と し てあ げ よう 。 社 員 兼 取 締 役 も 正 規 の社 員 では な い通常 の取締 役 と 同様. ㈲. に、 い つでも随 意 に こ れ を解 任 す る こと が でき る。 (ド有 三 八 年 一項 ・四 六 条 一項 ・四 七条 一項 )。 た だ し 、 定款 で、. 社 員 に 固有 権 と し て取 締 役 の地 位 を付 与 し てい る場 合 は、 こ の限 り で はな い。 こ の固 有 権 と し て の地 位 は 、 社 員 が 定. 款中 です でに 選任 さ れ てい る と い う こと だ け では 認 め ら れ な い。 定 款 で の選 任 要 件 は取 締 役 た る地 位 の固 有 権 を 根 拠. 働. づ け る非 社 団的 な も の であ る か ら だ。 し た が って、 こ こ で会 社 実 務 上 注 意 し な け れば な らな い こと は、 社 員 兼 取 締 役. は 常 にそ の取締 役 た る地 位 が保 証 さ れ て いる わ け でな い と い う こ と であ る。 と い う の は、 法 律 は本 来 的 に会 社 の人 的. な 基 本 的 特 徴 を 前 提 にし て いる わ け では な いか ら であ る。 社 員 兼 取 締 役 は、 場 合 に よ って は、 誠 実 義 務 違 反 を 理 由 に. 一197一.

(24) 抵 抗 す る こ と が でき るだ け であ る。 こ の よう に、 業 務 執 行 に つき 人 的 な 要 因 を も た す た め に社 員 兼 取 締 役 の制 度 を 導. 入 し よ う と し ても、 そ れ が ど の よ う な法 的 効 果 を も た らす か 、 有 限 会 社 法 を 検 討 し て、 定 款 中 で そ の地 位 を 明 確 化 す る 必要 が あ る。 そ れ が、 有 限会 社 の有 す る定 款 自 治 ( 形 成 の自 由 ) の意 義 でも あ る。. Nα一ぎ 輿 "ぎ ごρ。詳ω旨9 げΦ津 げ皿 Ω①ω①一一 ω9 亀 ↓ω<Φ洋 鼠 oqΦ戸 言. ミ 凶巴 Φヨ き ﹃. 以 下 、 嵩o日 日 2げo鴇 (前 提 注 ㈲ ) ω゜匁 律. ︿注 ﹀. ω. た と え ば 、 ゆO出N °。倶"ω゜一舟 一〇幽︾ω゜α゜。h旧Z 臼類. ω. 吻. uuΩ= Z匂≦. 即Φ9 一 9 ω ヨ σq①づ評昌 坤9一 Φ﹃ω讐 NΦω 言. α①﹃ U団畏 島 ωδ P NO沁 お ㊤8 ω゜嵩 伊. 一りリト。︾ω゜㊤①律. 出o日 ヨ ①ぎ o自 (前 掲 注 ㈲ ) ψ 嵩 h. U器. 司Φω訂 o訂 龍け 一〇〇 冨 訂 Φ Oヨ げ¢lOΦωΦ貫. 国ほ 昌 霊 昌o q①昌 ヨ 蹄 9 吋ΩΦω一巴 ε づα qω砕 Φ臼 ①一 二 ∋ Ω①ω①一 ︼ωo冨 津ω目①o窪 "ヨ NΩ切 ω8 9 筈 Φ{二 ωし ㊤OS ¢ 刈律. ㈱. OΦ爵 o﹃. 一りc°伊 ω゜卜゜心b°一排. ㈹. 一りOρ ω゜卜 。①卜 。卜 。°. ㈲. Nα=づ興. (前 掲 注 働 ) ψ O①律. ㈲. 荒 木 ・前 掲 注 ㈲ 二 七 頁 。. お c。c。り. ㈲. NO拶. 有 限 会 社 の経 営 機 関 体 制 に対 応 す る 社 員 の地 位 の強 化 は 、 ど こま で こ の会 社 の本 質 に 合 致 す る のか 、 と い う基 本 的 問題 があ. 閑⑳且 ↓巴 oqΦω①房 oゴ帥沖. ⑱. (酒 巻 ・前 掲 注 ㈱ 二 六 六 頁 )。. 出 8 ゴ魯 σξ o q\dぎ 興. (ド 株 五 八 条 二 項 )。 (前 掲 注 ㈲ ) ㈱㎝ 幻O戸 嵩 ωま. も 問 題 と さ れ る が、 株式 法 では、 非 上 場 の会社 に あ っては 、 定 款 によ って年 度 剰 余 金 の半 分 以 下 の積 み 立 てが 認 め ら れ てい る. 有 限 会 社 で は、 自 己資 金 の調 達 の必 要 性 と 社 員 の利 益 を いか に調 整 す るか が 一つの課 題 であ る。 同様 の こと は、 株 式会 社 で. 出 oヨ ヨ Φぎ o律 (前 掲 注 ㈲ ) ψ α9. ω゜凸 ①hh°. 缶 oヨ ヨ 巴げo律 (前 掲 注 ㈲ ) ω゜幽G。ご Nα置づΦ﹃ Uδ ωoσ qΦコ磐 づ一Φ口 ΩΦω巴 ω9 鉢 一Φ村匹 oσqΦ⇔ ヨ. ると いう. ㈲. 励. 励 働. ㈹. .・. 第49巻 第2・3号 近畿大学法学.

(25) ﹃. 有 限会社 におけ る定款 自治. 岡. e. 乞 匂類. ω﹂. ω一旧 O ヨ げ= 知. 一り゜。ト。冒ω゜ 這 り゜. 有 限会社 の法 形態 の変 遷. お ①P. V. 財産共同体. 有 限 会 社 の立 法 者 の考 え によ れ ば 、 有 限 会 社 の法 形 態 は 一般 投 資家 の共 同体 と し て の役 割 を果 し、 会 社 に集 績 し、. か つ、 増 大 す る財 産 が 投 資 家 以 外 の者 によ って管 理 さ れ る は ず であ る 。 有 限 会社 た る 資本 会社 は、 社 員 の単 な る財 産. 共 同 体 (<輿ヨ o、oq①づωo q①ヨ ①ぎωoゴ跨け ) と し て概 念 づ け ら れ て いた の であ って、 あ く ま で社 員 個 人 が 重視 さ れ る の では. (↓餌口αq評Φ陣 房σqΦヨ9⇔ωoゴ93. では な い。. な く 、 会 社 の目 的 お よび そ の遂 行 のた め の財 産 的 寄 与 に重 き が お か れ て いる 。 有 限 会 社 は、 全 員社 員 あ る い は 一部 社 員 の活 動 の場 と し て概 念 でけ ら れ るも の で はな い。 す な わ ち、 活 動 共 同 体. ( 形 成 の自 由 )。 これ ら は 有 限 会社 を. 第 三者 機 関 、 強 行 的 な 最 低 資 本 金 制 度 、 持 分 の譲 渡 性 お よ び 相 続 の余 地 な ど は こ の概 念 を 特 徴 づ け る 諸要 因 であ り、 な お か つこ の概 念 を 明 確 化 す る のは定 款 での定 め お よび 社 員 総 会 の決 議 であ る. ㈱. 人 的 なも のかあ る い は資 本 的 なも のか の性 格 づ け を す る。 典 型 的 な も のと し てあ げ ら れ る のは 、 持 分 の譲 渡 制 限 (ド. 有 一五条 五 項 ) であ る。 こ の持 分 譲 渡 制 限 は、 簡 単 に定 款 中 に入 れ ら れ 、 有 限 会 社 を 人 的 に形 成 す る 手 段 と し て利 用. さ れ る。 と り わ け、 同 族 会 社 に あ っては、 構 成 員 を 拘 束 す る たあ の有 効 な 方 法 と な る。 ま た 、 有 限 会 社 の人 的 特 色 を. 示 す も のと し て、 通例 用 い ら れ る こと は、 業 務 執 行 を 固 有 権 と し て認 め る こと や持 分 権 者 に差 押 え や 破 産 が 生 じ た と. き の持 分 の強 制 取 り あげ が あ る。 さ ら に、 社 員 は、 会 社 お よび 外 部 に対 し て、 指 図 権 を 行 使 し た り 、 取 締 役 の地 位 を. 一199一.

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