<資料> 少年非行関係諸機関の職員に対する調査(家族機能を中心とする)結果の分析
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(2) 14 (2〉 監護に問題のある親およびその典型事例(Ω7(2)) (3) 父親の監護のあり方(Ω7(3〉). (4) 母親の就業と子の監護(Ω7(4)) (5) 非行事実を発見したときの親の対処の仕方(Ω7(9)). (6〉 親に対する指導・助言(子の監護に対する)のプログラムの有無(Ω6. (1×2)〉. (7)親と機関および機関職員との関係(Ω7(5)〉. (8〉親に対する調査・助言・指導を行う上での現行法制度上の問題点および. 法制度以外での問題点 7 非行関係諸機関の非行・行政(実務)の現状と問題点 (1) 家庭裁判所の実務の現状と問題点(Ω13,14,16,17) (2〉 非行に対する学校の対処(Ω18) (3) 家庭裁判所・学校・児童相談所の機関相互の連携(Ω15). (4) 各種機関の電話相談(Ω20) (5〉 非行関係機関(職員)が直面している課題(Ω22) (6) 非行・行政の現状に関する機関職員の評価(Ω19) (7) 非行の対処に問題を孕む機関(機関職員の意識〉 (Ω12). 非行・行政ネットワークの中核にすわるべき機関(機関職員の意識) (8). (Ω21). 8 「子の監護等に関わる法制度」に対する機関職員の諸見解(Ω23,25) (1) 親権および親権喪失制度(民法834条)(Ω23(1)). 面接交渉権(Ω23(2)) (2〉. (3) 離婚後の親権者,監護者の指定(Ω23(3〉). (4) 共同監護制度(joint custody〉に対する機関職員の意識(Ω23(4)). 子の養育費履行制度(Ω23(5)) (5). その他少年問題に関わる法制度の問題点(Ω25) (6). 9 少年非行に関する機関職員の将来的予測(Ω24) 10 非行原因と非行防止手段(Ω26〉. 一353一.
(3) 少年非行関係諸機関の職員に対する調査(家族機能を中心とする)結果と分析 15. 11 おわりに. 1 はじめに. われわれは,昭和59年4月から3年問に亘り,文部省科学研究費(総合研究 A)の助成を受けて,有地亨九州大学法学部教授を研究代表者とする窪現代家. 族の機能障害の実態と紛争処理の総合的研究一法・政策のための基礎的調査 分析一遍を実施してきた。この共同研究は,現代家族の機能障害の実態分析 を通して,少年非行・離婚・老人問題という現代家族がかかえる諸問題の解決 に必要な法,政策,制度のあり方に関する提言を試みようとするものである。. われわれは,この共同研究の中にあって,少年非行問題を担当してきた。その 成果はすでに下記のような形で公けにされてきた。. ①ヂ少年非行と家族機能に関する調査報告」(昭和60年3月,『有地亨編・現. 代家族の機能障害と紛争処理の総合的研究蝿〉②「少年非行と家族機能等に 関する調査報告」(昭和61年3月,揮有地亨編・現代家族の機能障害と紛争処理. の総合的研究珊)③緒方直人「少年非行」(日本家族〈社会と法〉学会編稼. 族〈社会と法>選聾02,日本加除出版,1986年7月)④緒方直人「少年の非行 に対する親や関係諸機関の対処」(第1回ゼ大学と科学遍公開シンポジウム組. 織委員会編『現代社会における法的問題処理一交通災害及び家族問題函1987 年7月,出版科学総合研究所〉⑤佐々木美智子・田代英美「少年非行と家族機 能との連関」 (同上〉. 以上の論稿は,われわれが,この三年閥に実施してきた「非行少年の親に対 する面接調査」(昭和59年),「非行少年に対するアンケート調査」(昭和60年),. 「一般少年に対するアンケート調査」(昭和60年〉,「非行関係諸機関の職員に. 対するアンケート調査」(昭和61年〉の4つの調査結果を種々の角度から分析 ・検討したものである。. 本稿は,上記4調査中,昭和61年に実施した「非行関係諸機関の職員に対す るアンケート調査」の分析である。ところで,その一部については,すでに前. 一352一.
(4) 16. 記④の中で公けにしたのであるが,ここでさらに本調査の全容を明らかにする ことにした。非行関係諸機関の職員に対して,非行少年の家族関係の問題を中. 心に据えた詳細な調査は実施されておらず,本調査はそれなりの意義を有する のではないかと考える。. 2 調査対象者の概要と調査方法. (1〉所属機関等. 表1所属機関名. 小学校 中学校 教育委員会 青少年相談(補導)センター. 市役所相談室. 母子寡婦福祉協会 福祉事務所. 母子寮 児童相談所. 1 婦人相談所 4 養護施設 1 教護院 3 矯正関係機関 1 保護関係機関 1 司法機関 7 弁護士会 4 NA 11. 総 計. 1 王. 1 3 2 4 2 2 49. 調査対象者の所属機関については,表1に示した。機関の所在地は福岡,熊 本,鹿児島の三県に跨る。具体的な機関名,職種についても,より詳しく調査 しているのであるが,機関および職員の公的な立場等,複雑な事情が存在し,. 機関名を表1以上に詳らかにすることは差し控えざるをえなかったし,職種に ついても∼定の配慮をせざるをえなかった。. 表1に示した「機関」を見ると,福祉事務所および児童相談所が若干多く なっている。これは,この爾機関に少年に関係する職種が多いためで,全体的. に見ればそう大きな偏りもなく,結果的には少年閥題に関わりを持つ機関が一 応網羅されていると言えよう。. 職員の性別,年齢を表2に示した。男性29名(59.2%),女性15名(30.6. 一351一.
(5) 少年非行関係諸機関の職員に対する調査(家族機能を中心とする)結果と分析 17. 表2 調査対象職員の年齢・性別 20歳代. 30歳代. 40歳代. 50歳代. 60歳以上. 無回答. 計. 6. 1. 29 15. 男. 4. 4. 4. 女. 2. 3. 2. 4. 4. 0. 無回答. 0. 0. 1. 2. 1. 1. 計. 6. 7. 7. 10. 16. 11. 2. 5 49. %),不明5の総計49名である。年齢的には50歳代が最も多く,知識・経験と もに円熟した年齢層が中心を占めていると言えよう。. (2)調査方法. 調査対象者の選出は,福祉関係機関職員については,自治体の関係部局等に. 依頼して公的なルートを通して実施することができたものも多いが,その他の 機関職員については(とくに司法関係,保護関係,矯正関係等),われわれの 調査の内容が家族関係等のきわめて微妙な問題を含むこともあり,研究グルー プのメンバーが個人的ルートを辿って,調査への協力をお願いするという形式 をとらざるをえなかった。そのため,この領域における調査は困難をきわめた。. 最終的に49名の回答を得,また,前述のように,結果的にそれほどの偏りも生 ぜず,一応非行関係機関の全般に亘ることができたのであるが,調査対象集団 の上記のような性格から,本調査は厳密な意味での統計学的分析にはなじまな い。したがって,本稿の中で,数量的議論を展開する場合でも,それは厳密な 意味での統計学的意味を持つものではなく,⊥応あ傾向を示ずもd)として呈示 されるにすぎない。. 調査票は本稿の末尾に添付したとおり,調査対象職員に対するアンケート (自由記述方式を中心とする)方式であり,その内容は,非行少年の家族関係. を中心としながらも,きわめて広範かつ詳細なものである。したがって,この. すべてについて回答すれば優に3時間を越える時間が費やされることになる。 しかし機関によっては,職務上関わりの薄い質問項目も多数含まれていること. にもなり,項目によっては,無回答が多くなる場合が生じる。しかし,とくに. 一350一.
(6) 18. 司法関係,矯正関係,児童相談所等の職員にとっては,その多くの質問に回答 が可能であり,そのため,これらの職員の方々にはとくに詳細な回答をお寄せ いただいた。本稿において,できるかぎり客観的にその回答の内容を明らかに したいと考える。. 3 少年非行に対する機関職員の諸見解. (1)機関職員の非行観 Ω4の「20項目」について,それぞれ「非行と思う」・「非行に近いと思う」 ・「非行だとは思わない」・「わからない」と回答した割合を示したものが,図. 1である。機関職員の過半数が「非行だと思う」と回答した項目について,そ の比率の高いものから列挙すると,「売春」(93.9%)・「リンチ」(93.9%)・ 「たかり」(89.8%)・「シンナー遊び」(89.7%)・「万引」(87.8%)・「不正乗. 車」(65.3%)・「他人の自転車の無断使用」(61.3%)・「バイクで猛スピードで. 走る」(57.1%)となっており,機関職員の多くは主に,「刑法犯」およびその. 他の「触法行為」を「非行」として把握しているように思われる。これに対し て,「ギャンブル」(46.9%)・「異性との性的行為」(38.8%)・「中高生の飲酒」 (38.8%)・「未成年のたばこ」(36.7%)・「家出」(34.7%)・「同棲」(32.7%). ・「無断外泊」(26.5%)・「中学生がゲームセンターで遊ぶ」(20.4%〉・「成人. 映画を見る」(16.3%)・「盛り場を歩き回わる」(14.3%)といった「虞犯的行. 為は,「非行に近い」と認識されてはいるが,「非行」と意識される割合は低く なっている。そして「学校・職場をよく休む」(8.2%)・「中・高生の化粧」 (4.1%〉は,「非行に近い」とするものを加えても半数以下となっている。す なわち刑法犯・その他の触法行為は「非行」,「虞犯的行為」は「非行に近い」. と認識され,それ以外の「ずる休み」や「化粧」は非行とも,非行に近いとも 認識されていないようである。. ところで,このΩ4は,「婦人問題に関する調査」(福岡県・昭57年)および. 「青少年に対する県民二一ズ調査」(宮崎県・昭56年)で使用されている質問. 一349∼.
(7) 少年非行関係諸機関の職員に対する調査(家族機能を中心とする)結果と分析 19. 図1 機関職員の非行観 0 50 100(%) 未成年のたはこ. 中,高校生の飲酒 2.0. 4.1. io2. 家 出. 000 シンナー遊ひ. 103 0. 449. 成人映画をみる. 388 02.0. ハイクで猛スピートて. 16.4. 走る. 20. 無断外泊. 8.2. 00. 売 春. 000 たかり. 27. 異性との性的行為. 81. 20.4. 00 万 引 2.0. 449. 中,高校生の化粧. 61. 42.9. 0 34. 同 棲. 102 2.1. 673. 盛り場を歩きまわる. 学校・職場をよく休む. 16.3. 429. 40.8. 8.1. 000 リンチ. 61 2。0. 中学生がゲームセンター. 102. で遊ぶ. 4,1 不正乗車(キセル乗車). 14.3. 2,0. 14.3. 2.0. 他人の自転車の無断 借用. 24.5. 122. 0 ギャンブル,かけこと. 449 非行だと 思、 う. 非行に近い. 非行たとは. と思う. 思わなレ・. 一348一. わからなし、. 4。14。1. 不 明.
(8) 20. 項目を借用したものである。そこで,比較のために,これら二調査結果から 「非行だと思う」とする回答の割合を抽出し,われわれの調査結果と比較した. ものが表3である。. 表3 非行観の比較. 本調 査. 婦人問題に関す 青少年に対する る調査(農業) 県民二一ズ調査 94.6①. 94.2①. 売春. 93.9①. リンチ. 93.9①. 81.7⑤. 82.1④. たかり. 89.8③. 82.1④. 85.0③. シンナー遊び. 89.7④. 89.6②. 万引. 87.8⑤. 85.8③. 不正乗車(キセル乗車). 65.3⑥. 42.6⑬. 他人の自転車の無断借用. 61.3⑦. 34.8⑯. バイクで猛スピードで走る. 57.1⑧. ギヤンブル,かけごと. 46.9⑨. 異性との性的行為. 38.8⑩. 中・高校生の飲酒. 38.8⑩. 未成年のたばこ. 36.7⑫. 家出. 34.7⑬. 同棲. 32.7⑭. 無断外泊 中学生がゲームセンターで遊ぶ. 26.5⑮ 20.4⑯. 37.0⑮. 73.8⑥ 62.4⑨. 38.9⑬. 66.6⑥ 58.3⑦. 37.4⑮. 68.7⑦. 54.4⑧. 63.8⑧. 53.6⑨. 48.7⑪. 37。9⑭. 28.5⑰. 20.2⑳. 盛り場を歩きまわる. 14.3⑱. 39.9⑭. 4.1⑳. 39.2⑫. 45.2⑫. 27,6⑱. 中・高校生の化粧. 45.6⑪. 46.9⑩. 16.3⑰. 8。2⑲. 80.5⑤. 49.0⑩. 成人映画をみる. 学校,職場をよく休む. 87.8②. 27.5⑲ 24.0⑳. 3L9⑰ 35.2⑯. 21.7⑲ 24.2⑱. 『婦人問題に関する調査一農・漁業に従事する婦人を対象として一』(S58.3 福岡県民生部〉より. 一347一.
(9) 少年非行関係諸機関の職員に対する調査(家族機能を中心とする)結果と分析 21. 売春・リンチ・シンナー遊び・たかり・万引といった刑法犯・その他の触法 行為については,機関職員と福岡県農業婦人や宮崎県の大人の両者とも共通し. て高い割合で,これらを非行と認識している。ただし,売春を除いて,機関職 員の方がこれらを非行として認識する割合が相対的に高い点が注目される(と くにリンチにおいて差が大)。. これに対し,家出・成人映画・無断外泊・異性との性的行為・盛り場を歩き まわる・ギャンブルといった行為は,福岡県農業婦人や宮崎県の大人の方がこ. れらを非行と認識する割合が高く,とくに家出・異性との性的行為・同棲・ ギャンブルについては,機関職員がこれらを非行と認識する割合が半数を越え ていないのに,福岡県農業婦人や宮崎県の大人はその過半数がこれらを非行と 認識しており,かなりの差がある。. 上記とは逆に,バイクで猛スピードで走る・不正乗車・他人の自転車の無断 使用については,機関職員の過半数がこれらを非行と認識しているにもかかわ らず,福岡県農業婦人や宮崎県の大人はこれらを非行と認識する割合が低い。. 以上を全体としてみれば,機関職員が何らかの法に抵触する行為に対して非 寛容な非行観を持っているのに対し,福岡県農業婦人や宮崎県の大人は法に抵. 触する行為よりもむしろ虞犯的行為,とくに家出や性関係等に対して強い抵抗 感を持っていることがわかる。この傾向は,中高生の「化粧」や「学校・職場 をよく休む」にも現われており,機関職員がこれらを非行と認識する割合はき. わめて低いにもかかわらず,福岡県農業婦人や宮崎県の大人たちは相対的にか なり高い割合でこれらを非行と認識しており,これらの非行概念の広さが窺わ れる。. (2)少年非行の現状に対する認識(Ω2). 「少年非行の現状」に対する質問の回答を表4に示した。非行の量について は,「増えている」が57.1%,「減っている」が10.2%,「変わらない」が30.6. %となっている。青少年白書によれば,刑法犯については昭和59年に至り若干. の減少傾向を示して,少年非行に歯止めがかかったとされているが(『青少年 白書』昭和60年版,218頁),われわれが調査した機関職員の認識はこれと若干. 一346一.
(10) 22. 表4 非行の現状に対する機関職員の認識 のずれを示している。. (〉% 非行の内容については,「悪 ω非行の量. 28(57.1〉 ④増えている くなっている」と認識している 5(10.2) ◎減っている ものが,67.3%と多数を占め, 15(30.6) ㊦変らない そのうち,13名(39.4%)は非. 1(2.0) 無回答 行の質を「陰質化している」と. ㈹内容. 33(67.3) ④悪くなっている 認識し,9名(27.3%)は「分. 1(2.0) かりにくくなっている」,8名 ◎良くなっている. (24.2%)は「粗暴化してい 12(24.5〉 ㊦変らない る」と認識している。またその 無回答 3(6.1). 他に,「低年齢化している」 8(24.2) ④粗暴化している. ⑥質. (養護施設・児童指導員),「階 13(39.4〉 ◎陰湿化している. 層に関係なく発生している」 4(12.1). ㊦知能化している (母子寮職員〉, 「年長者や暴 ⑦分りにくくなっている 9(27.3). 力団との関係が深まっている」 5(15.2〉 ㊥その他 (児童相談所・心理判定員)と. ※照猶鷺餐回答も膿留葛いう回答があり,少年非行の現 割合である・ 状は必ずしも好転の兆を示して いない事実を窺わせる。. (3)非行化の責任の所在に対する認識(Ω3). 少年の非行化の責任の所在に対する質問に対して,その選択枝に順位を付け. させたのであるが,分析の必要上,1位回答に6点,2位回答に5点,以下3 ∼6位に4∼1点を与え,平均点を算出してみると下記のようになる。①「家 庭や親」(5.5〉,②「地域社会の人的・物理的環境」(3.9),③「本人」(3.8),. ④「学校」(3。4),⑤「時代の風潮」(3.2)となる。①「家庭や親」が②以下. をかなり上回っており,職員は,非行における家族の責任の重大さを認識して いるものと言える。. 一345一.
(11) 少年非行関係諸機関の職員に対する調査(家族機能を中心とする)結果と分析 23. 4 少年をとりまく諸環境(家庭環境・学校関係・地域社会)の調査. (1)少年をとりまく諸環境についての機関職員の調査の有無と程度(Ω9 (1×2)). 表5 少年をとりまく諸環境についての機関の調査の有無 調査している. 家 庭 環 境. 36(73.5%). 調査していない. NA. 6(12.2%). 7(14.3%) 7(14.3%〉. 学 校 関 係. 35(71,4%). 7(14.3%). 地域社会の環境. 30(6L2%). 10(20.4%). 9(18.4%). 表5は少年をとりまく諸環境について,関係機関が調査しているか否かを調 べた結果である。「家庭環境」について,「調査している」とするものが,36 (73.5%),「調査していない」が6(12.2%)(無回答7)となっており,比. 較的よく調査されていることが知れる。また,「学校での友人,教師との関 係」についても,ほぽ同様によく調査されている。しかし,「地域社会での人 的・物理的環境」については,「調査している」61.2%,「調査していない」. 20.4%となり,その調査の度合いが低下する傾向を示している。何を調査する. かについては,機関によってばらつきがあるが,学校関係,司法関係,保護関 係機関職員においては,地域社会について調査していないと回答したものが目 立つようである。. では,これらの機関は,これらの問題をどのような形でどの程度調査してい るのであろうか。学校関係では,「家庭訪問,本人・友人からの聴取,民生委 員・児童委員の意見を聞く」という形で,「両親の人間関係,家庭での子ども の位置,経済状態,成育歴」など,かなり詳細に調査しているところもあるが,. 「生活指導のための調査は実施していない」という回答もあり,学校によりか. なり違いがありそうである。保護関係機関は,環境調整の際に調査するようで. ある。司法関係機関にあっては,「少年,保護者に対する面接調査,学校に対 する書面(担任との面接)調査」によると回答している。矯正関係機関におい. 一344一.
(12) 24. ては,「家裁,少年鑑別所調査資料,保護者に対する照会,保護観察の環境調. 査調整報告書,本人の面会」を通して,教護院では,「児童相談所の記録,本 人・親との面会」などの形で,詳細に調査している。児童相談所に関しては,. 「民生委員,担任教師,本人・両親との面接」などの形で調査しているが,あ. る児童相談所の医師が「本人と僅かな時間しか面接できない」と回答している. ことや,各担当部門のセクショナリズムのためか,否定回答を寄せている点が. 印象的であった。機関によって差があるものの,全体として見れば,少年の環 境調査は,おおむね実施されている。 (2)問題の所在(Ω9(3)). 調査の結果として,機関職員はどの部分に問題を発見しているのであろうか。 ほぼ全員が,「家庭環境」,「家庭の崩壊」,「家庭の問題」をあげている。より 具体的に言えば,「片親」,「親夫婦の不和」,「親の生活態度」,「過保護,過干 渉」,「母親がアル中」,「離婚」,「親の養育態度」,「家庭の閉鎖性」などがあげ. られている。あげられている具体例の中で,「父は某高校(私立)のP T A会. 長という地位にある有力者で,兄や姉もそれぞれ大学生,高校生で問題ないが,. 少年は性非行をくりかえし少年院送致となる。父は女性関係があり,一見幸せ そうな父母は離婚寸前になっている。少年は父親不信を示す。親が非行を改め ること」(矯正関係機関職員)が,とくに印象的であった。また,同職員は,. 「全般的に父親の暴力によって家族関係が破壊されることが多い」とも指摘す. る。また,「甘えたいのに甘えられないという,日本人にとって一番共通する. 母子関係の形成の過程で,自我形成が未熟のまま,年齢や体格面だけが発達し ている。心身のアンバランスに問題を発見することが多い」(青少年相談セン. ター職員)との指摘もある。さらに,「親子・友人・学校(担任教師)との間. に問題が多い。非行が進んでいる場合には隔離する以外には方法がない。教師 の態度を変えることは実際にはかなり困難と思われる」や,「学校現場でのラ ベリングが問題である」(司法関係機関職員)があった。. 一343一.
(13) 少年非行関係諸機関の職員に対する調査(家族機能を中心とする)結果と分析 25. 5 少年の両親の夫婦仲(Q10〉. 少年の両親の夫婦仲についての質問を用意したのであるが,これは,前述の 昭和59年と60年に実施した調査の結果から,非行少年の両親の夫婦仲に多くの 問題(不和,別居,離婚等)を発見したことに因る。 (1)両親の夫婦仲についての調査の有無(Ω10(1)). 学校関係は,「家庭訪問を通じて」,司法関係機関は,「少年・両親との面接. を通して」とか,「カウンセリングを通して両親の問題が浮上したときは原因. 調査する」と回答している。保護関係機関では「環境調整報告に際して,引受 人または保護者との面接を通じて詳細に調査する」と回答し,矯正関係機関で は,「少年,親その他教師,保護司,家裁調査官からわかる範囲で」とか,「家. 裁・鑑別所の調査報告,保護観察所の環境調査調整報告,保護司,保護者との. 面談を通じて調査している」と回答している。養護施設では「福祉事務所・児 童相談所へ調査依頼する」と回答しているが,児童相談所では「面談で子ども から聞く程度」であると回答し,福祉事務所では,「家庭訪問,児童委員との. 話し合い,近隣の知人から聴取する」と回答している。青少年相談センターで は,「クライエントが語るペースの調査で,親が夫婦関係に問題があることに. 気付くとみずから話し始める」という回答もある反面,「詳しく調べるように しているが,夫婦関係はわかりにくい点があり,よわっている状況」(精神科. 医)であるという回答もあった。自治体の教育相談室では,「相談および親子 関係診断テストを実施する中で」と回答している。全体としては本人からの聴 き取りが主になっているようである。 (2)少年の非行と両親の夫婦仲の影響に関する機関職員の認識(Ω10(2), Ω11(1)). この問題に関しては,「夫婦関係の不和・破綻」(Ω10(2))と「離婚」(Ω11. (1))とに分けて,それらが非行に影響を与えると思うかを質問した。その結果. を表6に示したが,結果は比較的明白であり,不和・破綻についても,離婚に. ついても,ともに否定回答は0であり,関係機関の職員の多くは,この両者が. 一342一.
(14) 26. 表6 夫婦関係と非行 不和・破綻. ④影響を与える 40(81.6%) ◎影響を与えない 0 (0.0%). ㊦どちらともいえない 4(8.2%〉 ◎NA 5(10.2%〉 離婚. ④影響を与える 35(7L4%) ◎影響を与えない0 (0.0%) ⑤どちらともいえない 8(16.3%〉 ◎NA 6(12.2%) 少年の非行に影響を与えていると認識しているように思われる。では,機関職 員の多くが離婚即非行原因と理解しているのかといえば,必ずしもそうではな く,不和・破綻より離婚の方に肯定回答が少なく,「どちらともいえない」と. いう回答が多い点や,「離婚の理由にもよる。とくに母親の態度が左右するよ うに思われる」(婦人相談所・婦人相談員)という回答や,「ストレートに離婚. 即非行という図式が成立するわけではないが,非行少年は多分に社会的成熟 (自我の確立)が遅れているので家庭の影響を受けやすい」(矯正関係機関職. 員)という回答,あるいは,「両親の不和・破綻や離婚が発生した時期にもよ る。離婚について少年が積極的に賛成することもないわけではない」(司法関. 係機関職員)という回答,さらには,「思春期の親夫婦の離婚の方が非行に走 りやすく,幼少のころの場合は親の苦労を見て育つのでそうでもない」(保護 関係機関職員)等から推察すれば,機関職員は,離婚そのものよりも,むしろ. 離婚前後の親子関係の形成(子の監護のあり方)に注目しているように思われ. る。具体例としては,「高2暴走族。離婚後父子家庭となり,実母が再婚した ため,その新しい家庭に嫉妬して実母の家の前で暴走行為を行なった」(青少 年相談センター・相談員)などがあげられているが,「不和・破綻」について は,その具体例も,「父に愛人ができたことから,高校生の娘が父を困らせよ うとして万引をしたケース」(司法関係機関職員),「父の愛人問題を告発する. ために,性非行に走ったケースなど,あらかさまな親夫婦の不和による少年へ の悪影響については枚挙にいとまがない」(矯正関係機関職員)等々,全体と. 一341一.
(15) 少年非行関係諸機関の職員に対する調査(家族機能を中心とする)結果と分析 27. してみれば,親夫婦の不和により子どもが家庭にいても安らぎを得られず,非 行に走った例が数多くあげられている。 (3)親夫婦離婚後の少年および親からの相談(Ω11(2)). 少年から機関職員が受ける相談としては,「母親の男性関係について,自分 のとるべき態度についてどうしたらよいか」(中学校教師),「母親の異性関係 が嫌い」(保護関係機関職員),「母親の異性関係から家に居たくない」(司法関. 係機関職員),「母親に新しい男性ができて,それへの反感」(市教育相談室・. 相談員),「父親が女性のところへ行ったきり,家庭をかえりみなくなった」 (保護関係機関職員)等,親(とくに母親)の異性関係についての相談が目立. つ。つぎに,離婚後の親子関係形成上の問題,すなわち「継父母との折り合 い」(司法関係機関職員,矯正関係機関職員),「別居親の悪口を同居している. 親の口から聞くこと」(児童相談所・児童福祉司),「母親の飲酒,父が飲酒し 粗暴となる」(保護関係機関職員),「食事などをつくってくれない」(児童相談. 所・児童福祉司),「継母のつれ子との差別感」(精神科医〉や,「反抗期に同居. している親とうまくいかず,別居している親を理想化し,別居している親のと ころへ行きたい」(青少年相談センター職員,精神科医)とか,「母親の方に原. 因があり,少年は離婚に納得していたにもかかわらず,離婚後同居している父 親を責め,母親に会いたいという」(司法関係機関職員),「欠けた親が欲しい」. (児童相談所職員),さらに「別居している父又は母のもとに帰りたい」(市教. 育相談室・相談員)といった,同居している実親や継親との不仲,すなわち親 子関係形成上の諸問題やその反面としての別居親へのあこがれ(とくに母親と. 別居している場合)が相談内容として多いようであるが,これとは逆に,「生 別した父母への憎しみ」(司法関係機関職員)というものもあり,これらは離 婚前後を通して,同居・別居の実親や継親との親子関係形成の困難性と親子関 係調整の重要性とを浮かび上がらせている。さらに,「父母のどちらにつくか」 (養護施設・児童指導員),「親のとった行動(離婚)そのものに対する評価を. もとめられることもある」(児童相談所・児童福祉司,中学校教師)という指. 摘もあり,少年は,時に,両親の離婚そのものに対して自分のとるべき行動や. 一340一.
(16) 28. 両親の離婚をどう評価すべきかという基本的問題を職員にぶつけることもある。 さらに,「夜のさびしさ,両親のいる家庭がうらやましい」(児童相談所職員),. 「両親そろった暖かい家に生まれたかった」(母子寮・児童指導員),「低学年. の場合,片親になったものの淋しさ」(青少年相談センター職員〉といった 「心の悩み」をストレートに職員にぶつけることもある。つぎに,これは重要. な指摘であるが,「母子家庭のために,母親も忙しいので相談相手がいない」 (青少年相談センター職員)とか,「親の注意や指示が不都合な場合,あるい. は自分の行動を弁解したいが,同居している親に受け入れてもらえない時,両 親がいれば他方に話しを聞いてもらって助言してもらえるのに,それができな い。一度こわれた親子関係を調整し修復してくれる人がいないので困る」(児 童相談所・児童福祉司)という片親家庭のハンディを訴えているものもあり,. 注目される。その他,学校,進学,就職,将来への不安」(市教育相談室相談 員,福祉事務所・児童福祉司,母子寮・児童指導員)についての相談もある。. 親からの相談としては,「子どもの問題行動」に関する相談が最も多く,こ. れは機関の全般にわたっている。もっとも,調査対象機関が,少年の非行に関 わる機関であることから当然のことでもあるが。「養育・教育・保育」といっ. た子の監護上の問題について,「どう育てたらよいかわからない」といった深 刻な相談も目立つ(児童相談所,母子寮・寮母,母子寡婦福祉会会長),「親不. 在中の監護のあり方」(司法関係機関職員)や「継父母に対して素直になって. 欲しい」(矯正関係機関職員)という相談もある。とくに「異性の子の成長上 のことについてわからないことへの不安」(青少年相談センター職員,児童相. 談所・児童福祉司,司法関係機関職員)は,離婚後の片親にとって深刻な問題 であり,とくに母親は,「(男の子の)思春期特有の一見反抗的態度や自立への. 言動について,これらをどう理解していいのかわからず,ゆえに少年の反抗的 態度の扱い方に悩み,少年の性的関心の持ち方やそうした問題に関する相談に のる自信がなく,不安を感じている」(児童相談所・児童福祉司)ようである。. 関連して,「母親が,少年が別れた夫(父親)に似ているため,これを憎いと. 思って接するなど,夫婦は別れれば他人だが,子どもにとっては一生父と母で. 一339一.
(17) 少年非行関係諸機関の職員に対する調査(家族機能を中心とする)結果と分析 29. あるという論理がわからず,別れた相手を相当悪い人物に仕上げている」(母. 子寮・児童指導員〉といった離婚後の母子家庭の監護上の問題点が指摘されて いる事実は注目に値する。つぎに,「離婚後,子どもを引き取ったが,経済的 理由から,父の元へ帰したい」(司法関係機関職員),「経済問題,これからの 生活」(青少年相談センター職員)や,「職業上の相談」(母子寮・寮母),「生. 活苦,就職のむずかしさ」(婦人相談所・婦人相談員)など,離婚後の母親に とって,経済・就職上の問題が,今日でも大きな比重を占めている。経済問題 は,同時に子の面から見れば,「養育費の問題」(母子寡婦福祉会長,児童相談. 所・児童福祉司)であり,これらの経済問題が「子どもの進路の選択」(青少 年相談センター職員,市教育相談室・相談員)につながっているようである。. さらには,「親の離婚が非行につながりはしないかという不安」や「離婚後の. 相談相手や心の安定が得られる人が欲しい」(児童相談所職員)といった親自 身の深刻な精神的悩みもある。. (4〉非行問題処理における少年の非行と両親の夫婦関係の調整との関連 (Ω10(3×4)). (2〉(3〉の分析結果を予想して,「非行問題」と「親の夫婦関係の調整の問題」. とを有機的に結合して総合的に処理すべきと思うかを質問したのであるが,肯 定回答が34(69.4%)と多く,否定回答は2(4.1%),「どちらとも言えな い」5(10.2%)は少数であった(表7)。. 表7 非行問題処理における少年の非行と両親の夫婦関係調整の間題との結合. 有機的に結合 して処理 34(69.4%). 別個の問題と して処理. どちらとも いえない 5(10.2%). 2(4.1%). NA 8(16.3%). そのための「総合的問題処理機関」としては第一に「家庭裁判所」をあげる ものが多く,っぎに「児童相談所」をあげるものが多かった。その他に母子寮. や福祉事務所,保護観察所,民生委員等をあげるものもあり,また,「適した 機関なし,家庭で解決すべき」(福祉事務所・婦人相談員〉という回答もあっ. 一338一.
(18) 30. たが,とくに注目されるものとして,「家庭裁判所と児童相談所の両面性をも つ機関が必要」(司法関係機関職員),「総合的相談センターの必要」(児童相談 所職員〉,「家庭療法やカウンセリングの機関をつくる」(矯正関係機関職員),. 「家裁の少年部と家事部を統合した指導形態をもつ機関が必要j(矯正関係機 関職員〉等の意見がある。. 全体としてみれば,総合的機関として,「家庭裁判所」と「児童相談所」あ るいは,その両者の機能を兼ね備えた機関がおおむね考えられており,非行関 係機関のカウンセリング機能の重要性が指摘されているように思われる。. 6 少年の親子関係および機関の対処. (1)親の監護のあり方についての関係機関の調査の有無(Ω7(1)). われわれは,昭和60年度調査の結果分析において,非行群と一般群とで親の. 子の監護に顕著な差がある事実を指摘したが,その事実を念頭に置きつつ,本 調査では,まず親の監護に関する調査を関係機関職員がどの程度実施している かを調査した。. 表8 親の監護のあり方についての関係機関の調査の有無. 調査している. 調査していない. NA. 25(51.0%〉. 16(32.7%〉. 8(16.3%). 結果は,表8に見るように,約半数が調査している。学校関係(中学教師4,. 小学教師1)が全部「調査していない」と回答しているが,これは,生徒(児 童)に問題行動が生じた場合にも全く調査していないという意味ではないよう で,そのような場合には,「話し込みや聞き込みで調べていく」(中学教師)と. か「担任が親と面談して調査」しているという回答もある。しかし,他方, 「子どもの教育は親が一番でまかせきっている」(中学教師)と楽観してよい. ものか,問題行動発生前にあっても,学校は生徒(児童)の親子関係を何らか. の形で(家庭内のプライバシーの侵害にならないように十分に配慮しつつ)把. 一337一.
(19) 少年非行関係諸機関の職員に対する調査(家族機能を中心とする)結果と分析 31. 握する試みが必要ではないかという若干の疑問が残る。比較的によく調査を実 施している機関としては,児童相談所,青少年相談センター,司法関係機関,. 矯正関係機関などがあげられるが,母子寮がその機関としての性質上母子の生. 活に密着した調査を実施していることや,福祉事務所の家庭児童相談員が比較 的詳細な調査を実施している事実も特徴的である。ただし,ある児童相談所で は,機関内の分業体制に阻まれて親に対する医師の面接が制限されているとい う回答もあり,疑問を感じさせられた。 (2)監護に問題のある親および典型事例(Ω7(2)). 表9 監護に問題のある親 父 親. 母 親. 9(18.4%). 5(10。2%). 両 親 25(51.0%). その他の保護者 4(8.2%). NA 9(18.4%). ※その他の保護者には,父,母,両親と回答したものが含まれているため,総 数は100%を越える。. 表9に見るように,機関職員の目から見て,監護に問題のある親(保護者〉 は,両親(51.0%),父(18.4%),母(10.2%)となっている。父が母を上. 回っており,母の監護に問題ありと回答した5名中2名は,直接的には母親だ けと接触する母子寮の職員であることも考慮すると,母の数値が意外に低いこ. とが知れる。わが国においては,子どもに問題行動が発生すると,それを主に. 母親の責任と考える傾向があるように思われるが,少年非行に関わりを持つ機 関の職員はそのようには見ていないことが分かった。この点は,われわれの昭 和59・60年度の調査結果の分析とも一致し,大変興味深いところである。. 表10は,自由記述形式によって,経験上子の監護に問題のあった典型事例と. 思われるケースを呈示してもらい,それらを分析・類型化して,その類型の出 現頻度を示したものである。監護に問題のある親については「両親」と回答し ている場合でも,記述された典型事例の中では父母に分けて問題点が指摘され ていることが多く,これらはそれぞれ父および母の問題事例として分類してい. る。したがって,「両親」の問題事例は父または母と区別せず,たとえば「両. 一336一.
(20) 32. 表10 親の監護の間題事例の類型とその頻度 父 親 ①飲酒(アル中・酒乱). ②暴力(体罰を含む〉. ③怠業 ④固晒・頑迷な性格 ⑤仕事オンリー. ⑥嚇髪織 ⑦放任. 2 1 1 1 1 1 1. ⑮逃避的. ⑨主観的. ⑧拒否. 2 1 1 1. ④放任. 1. 9 8 4. ⑧権威喪失. 3 2 2 2. ⑪幼児性. 5 3 3 2. ⑤未成熟. ⑨教育的愛情の欠如. ⑩暴言. ⑫厳格 ⑬拒否 ⑭期待過剰. ⑯女性関係. ⑰低収入. 総 計. 1 1 1. 41. 母 親. ①過保護 ②過干渉 ③男性関係 ④育児能力不足. ⑥溺愛 ⑦放任. ⑩期待過剰. ⑪盗癖. 1 1 1. 総 計. 21. 総 計. 10. 両親 ①不和. 5. ②麟購贈の信 1 ⑤離罵する責任 1 ③溺愛 1 ⑥灘考董鱗場 1. 親が放任」というように記述しているような場合だけをここに分類している。. 全体として見た場合,父親について指摘されている監護上の問題点の方が母に 関するそれよりも,種類も頻度もはるかに多いことがわかる。この点からも,. 非行を生んだ家庭における父親の問題性を機関職員が強く感じていることが知 れよう。. (3)父親の監護のあり方(Ω7(3)). 前述のように,昭和59・60年度の調査結果は,非行を生んだ家庭における父. 親の監護上の問題性を示唆するものであった。そこで,本調査においては,機. 一335一.
(21) 少年非行関係諸機関の職員に対する調査(家族機能を中心とする)結果と分析 33. 関職員に「父親の子の監護のあり方はどうあるべきか」という質問を真正面か らぶっけてみた。表11は,自由記述形式でなされた回答を,類型化して,「父 親の存在感」・「父子関係のあり方」・「父母(親夫婦)の協力関係」・「その他」. に分類したものである。数字はその出現頻度である。全体として見た場合,質. 問内容が父親の監護のあり方であることから,「父子関係のあり方」が頻度48 表11 「父の監護のあり方」 父親の存在感20. ①父親自身が確かな人生を歩くこと. (隻鰯麟様醐霧書繍鯉告蚕鞠. ②一家の柱としての自覚. (家族の信頼をえていること,夫として父としての責任). ③自分の仕事に誇りをもつこと(仕事に誠実). 父子関係のあり方 娼. ④灘轟簾轄さ をもつ耀もへの) ⑤子どもに規範意識を育てること. (たくましい意志力,行動力を養う). 12. 6 2 13. 8. ⑥子どもとのふれあいの時間を工夫してつくり出すこと (接触時間が少なくとも,その範囲内で子への接し方を工夫). 10. ⑦子どもの考え,行動,生活態度等についての把握力をもつこと 子どもの心身の発達,変化について関心をもち,日常的に 配慮。子どもの社会観・人間観・価値観に関する父親とし ての責任の自覚。友人選択についての指導《友人関係の把 握》. 10. ⑧. 礁鰻…幸薦欝包容九子どもと噛〉. 父母︵夫婦あ協力関係26. ⑨家族とともに,その課題・問題・子どもの日常問題を担う姿勢. ⑩母親まかせにならないこと ⑪母親(妻)の人格を尊重し,母に不足する育児機能を分担する こと(母《妻》をサポートする態度〉. ⑫子育てについての母親(妻)との共通理解をもつこと (意見の一致をはかること). その他2. ⑬夫婦の和 ⑭男の子の性教育 ⑮酒に溺れて感情に走らないこと. 合 計. 一334一. 7. 8 7 4 3 4 1 1 96.
(22) 34. (総数96に対する割合50.O%〉と最多数を占めるのは当然として,第二位に 「夫婦の協力関係」が26(27.1%)と,「父親の存在感」20(20.8%)よりも. 上位にあることは注目に値する。この事実は,子の監護について,いわば母親 (妻〉まかせになっている父親(夫)の問題性を,機関職員が感じていること の反映とも言えそうである。 (4)母親の就業と子の監護(Ω7(4)). 機関職員に,「取り扱ったケースの中で母親の就業が子の監護に支障をきた していると思われたケースの有無」と「その具体例」および「解決方向」を質. 問した。この質問は,昭和60年度の調査結果が母親の就業率において,非行群 と一般群との間に顕著な差を示し,また,その就業形態や就業時間にも差が見 られたところから,この問題が何らかの形で子の監護の問題に影響を与えてい. るのではないかと思われたためであり,母親の就業と非行とを短絡的に結びっ. けんとする意思は毛頭ない。表12に見るように,母親の就業が子の監護に支障. をきたしていると思われたケースの有無について,調査結果は,「有り」31 (63.3%),「無し」10(20.4%)であった。全体として見た場合,機関職員の. 多くは,こうしたケースに接したことがあるようである。なかでも,非行との 関わりが深いと思われる「児童相談所」(有り8,無し2,N A I),「司法関. 係機関」(有り3,無し1),「矯正関係機関」(有り2,無し1),「青少年相談. (補導〉センター」(有り3,無し0),「教護院」(有り1,無しO)等が注目 される。. 表12母親の就業が子の監護に支障をきたしていると思われたケースの有無 有 り. 無 し. NA. 31(63.3%). 10(20.4%). 8(16.3%). 典型事例では,スナック等の夜間の水商売をあげるケースが最も目立った。. この点はわれわれの昭和60年度調査とも一致する。解決方法については,学校. 関係では「解決方法は現在のところ思いあたらぬ」という回答もあるが,「単. 純に母親の就業が非行の原因ではなく,子の監護を十分に行えない就業形態が. 一333一.
(23) 少年非行関係諸機関の職員に対する調査(家族機能を中心とする)結果と分析 35. 問題」(青少年相談センター・相談員〉なのであるから,親に対して一定の影. 響力を発揮しうる機関では,「夜の水商売を昼間の仕事に転職させたり,経済 的に余裕のあるケースでは母親の就業時問を昼間のみのパートに変更させたり, 仕事をやめさせて子の監護に主体を置かせ」(保護関係機関職員)たり,「子ど. もを学童保育所に入所させ,母親に職種の再考を促し」(司法関係機関職員). たりして,一定の具体策を追及している場合もある。「地域社会の中で子ども に直接被害が及ばないような方策(夜間保育,学童保育〉」(児童相談所職員〉. を追及し,その制度化をはかっていくとともに,この問題で母親の悩みや相談 を積極的に汲み上げて,具体的にそれらの問題解決を図るための機関として,. 福祉事務所・母子寮・婦入相談所等の福祉機関の拡充・改組とそれら機関相互 の連携を強めるための方策を具体的に呈示していく必要がある。 (5)非行事実を発見した時の親の対処の仕方(Ω7(9)). われわれは昭和59年・60年度の調査結果の分析において,非行発見時の親の 対処の仕方に問題があったのではないかと指摘した。すなわち,平和的方法に よる相互理解の追及という対処のあり方から程遠い古典的とも言うべき一方的 ・暴力的対処が依然として優位にあること,対処にさいしての親夫婦の協力関. 係の弱さ(父親が非行事実を知らされていないことも含む),さらに,これら の事実からひき出される父親の監護のあり方の問題性といった特徴である。そ こで本調査では,少年の非行を発見した時の,あるべき親の対処の仕方につい. て機関職員に質問した。表13は,自由記述方式による回答を類型化したもので ある。したがって,結果的に複数回答となり,比率は,総数49に対する割合と して示した。. まず,「少年との話し合いの必要性」の指摘が,41(83.7%)と圧倒的に高. い数値を示している点が注目される。非行少年の親の対処として,「少年の言 い分も十分に聞かない一方的・暴力的対処」が特徴となっていることについて は上述したところであるが,機関職員の実務経験からひき出された「親のとる. べき対処」は,この事実に驚くほどみごとに対応している。このグループはさ らに細かく分類すると,「非行の動機」・「非行の原因」・「問題行動の奥にひそ. 一332一.
(24) 36. 表13 非行事実を発見したときの親の対処の仕方 (MA,%は総数49に対する割合). ①非行事実の客観的認識の必要性. 7(14.3%). ②少年との話し合いの必要性. 41(83.7%〉. ③関係機関との相談. 12(24.5%). ④非は非として毅然とした態度をとる. 14(28.6%). ⑤夫婦間の意見の調整. 2(4.1%). ⑥ 子どもに暖かく接し,能力以上の学業を強制しない. 4(8.2%). ⑦ その他. 6(12.2%). んでいる心情」等,原因や動機について少年と十分に話し合う必要性を説くグ ループ(17,34.7%)と「非行事実の確認とそれをどう受けとめるべきか」や. 「解決の道」を「子どもと向きあって,心を開いて共に重荷を負う覚悟をもっ. て」(矯正関係職員〉あるいは「自己反省や人間的交流を基礎にした全人格的 対応」(児童相談所職員)でもって臨むべきだとするグループ(24,49.0%). から構成されている。つぎに「非は非として毅然とした態度をとる」べきこと を指摘する回答が14(28.6%)と多数を占めている。. 「関係機関との相談」をあげる職員は,12(24.5%〉である。機関職員の回. 答であることを考慮すると,意外に低い数値であるようにも思われる。しかし,. ある司法関係機関職員が,「非行の程度にもよるが,軽度のものであれば親は 自分の能力を考え,子どもと話し合って親の指導でできるものであれば親だけ. の指導ですませる。非行が進んでいる場合や親の指導のみでは十分でないと思 われるものについては,信頼できる関係機関に相談すべきだと考える」(同旨 ・矯正関係職員)と回答していることに象徴されているように,機関職員は,. 非行への対処のキーポイントはまず家庭・親子関係の健全化にあると考えてお り,機関はそれを外からサポートする役割を果たすべきだと考えているように 思われるのである。. 「少年の非行事実の客観的認識の必要性」が7(14.3%)とつづく。ある中. 一331一.
(25) 少年非行関係諸機関の職員に対する調査(家族機能を中心とする)結果と分析 37. 学教師は,「(親は)知らされた事実を冷静に受けとめ,子どもの言い訳けに振. り回されず,保護者の責任として,子どもと共に解決の道を考えて欲しい。70 %ぐらいの親は,証拠がない等と言ったり,私の子どもはと言い(世間に対す. る守り)事実を認めない。教師側の報告や指導に対して面子を捨て,真剣に考 えて下さる家庭の生徒は,非行に走ってもほぽ立ち直れる」と回答している。. また「冷静に事態を受けとめ,いたずらに感情に走ったり,事なかれ主義的に. 処理しないこと」(矯正関係職員,司法関係機関職員,福祉事務所・児童福祉 司,同・婦人相談員,弁護士)という指摘があり,非行と直面する機関職員と 少年の親との間のむずかしい人間関係が示唆されている。. 「子どもには暖かく接し,能力以上の学業を強制しない」ことを指摘する職 員が4名(8.2%)ある。昭和60年度調査では,非行群の特徴として,「学業不. 達成」がある事実を指摘したのであるが,福祉事務所の家庭児童相談員や青少. 年補導センター職員が,この回答を寄せており,非行と学業不達成との相関が 示唆されている。. 「夫婦問の意見調整」の必要性を指摘した職員は,2名(4.1%〉と少数で あった。上述のように,われわれの二年度に亘る調査では,非行への対処に際 して,夫婦間の協力関係がきわめて弱いという事実が特徴的に現れていた。そ. の意味で,この数値の低さは意外であったが,表13の「①一④の対処」を望ま. しい対処として回答した職員は,「夫婦間の意見の調整」を,その当然の前提 としているのかもしれない。. その他の回答としては,「非行グループとの接触を断固としてさせない」 (司法関係機関職員),「強い精神力を養う」(青少年補導センター職員),「他. の兄弟と比較したり,差別したりしない」(同),「ほめてやり,自信をつけさ. せる」(同),「子ども自身に原因を意識させ,失敗を恐れずに問題解決を子ど. もに任せ,見守る方向で努力する(非行は自分で解決せねばならない)」(児童 相談所・児童福祉司),「暴力を振わない」 (司法関係機関職員)等があった。. この暴力の問題(体罰)は,われわれの前調査からも,重要な指摘であるが,. 数値が低いのはやはり②「少年との話し合い」の当然の前提とされているもの. 一330一.
(26) 38. と推察される。. (6〉親に対する指導・助言(子の監護に対する)のプログラムの有無(Ω 6(1×2)). 表14 親に対する子の監護上の指導・助言のプログラムの有無 有 り. 機関として. 8(16.3%). 職員個人として. 12(24.5%). 無 し. NA. 34(69.4%). 7(14.3%). 29(59.2%). 8(16.3%). 親に対する指導・助言のためのプログラムの有無とその具体的内容とを調査 したのであるが,結果は,表14に示したように,プログラムが「有り」は,機 関として8(16.3%),職員個人として12(24.5%)であり,「無し」が,機関 として34(69.4%),職員個人として29(59.2%)である。両者とも,「無し」. が過半数を越える。これは,ひとつには「プログラム」という言葉を厳格に受 けとった職員が多かったせいもあるかもしれないが,「特定方法による指導は ケースの内容の多様性から困難」(児童相談所・児童福祉司〉,「特別のプログ. ラムなし,ケース・バイ・ケースで」(小学校教師)などの回答に見られるよ. うに,非行事実やそれをとりまく事情の複雑性から,ケース・バイ・ケースで. の対応となっていることが窺われる。しかし,機関職員がすべてこうした対応 で良しとしているのかといえば,「ぜひ必要だが,個々バラバラで,問題解決 のための指導・助言を正しく行うためには『専門家』の指導が必要」(児童相 談所・医師)という指摘や,「(機関としてプログラムが無い理由は)相談員に. なるまでの各人のキャリアがガンとなっており,各人のキャリアに伴う相談員 像が異なっているため」(青少年相談センター,相談員)という重要な指摘も ある。. つぎに,回答の内容に少し立ち入って分析を加えると,第一に,機関として. プログラムが有りと回答した職員の内訳は,保護関係機関1,矯正関係機関1,. 福祉事務所(家庭児童相談室)2,母子寮1,児童相談所2,弁護士1となっ ている。これらは非行との関わりが深い機関であることから,一応納得のいく. 一329一.
(27) 少年非行関係諸機関の職員に対する調査(家族機能を中心とする)結果と分析 39. ところである。弁護士1のいう所属機関は弁護士会という意味であろうが,こ れは当弁護士会が少年事件に関して専門的な部会を設け,研究会を継続し積極 的に非行問題に対応してきている結果と考えられ,注目される。. っぎに,「機関として有り」と「職員個人として有り」の重複を見ると,保. 護関係機関職員1と児童相談所職員2の合計3だけが重複しており,したがっ て,「職員個人として有り」と回答した12名中9名は,「機関としては無い」が,. 「職員個人」としては一定のプログラムを有していると回答していることにな. る。これらの内訳は,青少年相談センター1,福祉事務所(婦人相談員)1,. 中学校2,児童相談所3,母子寮1,精神科医1となっている。これら9名の 職員は,機関としてのプログラムの欠如を職員個人の工夫で補おうと努力して. いるものと理解できる。さらに,「機関として有り」と回答した8名中,上述. の重複している3名を除いた5名の職員は,職員個人としてはプログラムを持 たないものの,機関のプログラムに従って実務に携わっている訳であり,した がってこの5名を加えた17名(34.7%)の職員が,何らかのプログラムによっ て仕事をしていることになる。. 以上の分析結果と,前記6(2〉に述べたように,機関職員の多くが非行少年の. 親の監護のあり方に問題性を強く感じており,さらにまた,とくに父親の監護 のあり方に問題性を感じているという事実を考慮すれば,この問題に焦点をあ. てた指導・助言のプログラムを作成し,親夫婦の養育機能回復(あるいは形 成)へ向けた努力を,機関として外からサポートしていくことが,非行関係諸 機関の緊急の課題とされよう。 (7〉親と機関および機関職員との関係(Ω7(5)). 表15は,少年の親と機関および機関職員との関係について質問した結果であ. 表15親と関係機関および職員との問 ④うまく いっている. 職員個人. 26(53.1%). 機 関. 21(42.9%). ◎うまく ㊦どちらとも いっていない いえない 2(4.1%) 3(6.1%). 一328一. ◎NA. 10(20.4%). 11(22.4%). 12(24.5%). 13(26.5%).
(28) 40. る。親との関係が,◎「うまくいっていない」とする回答は「機関」との関係 について,3(6.1%),「職員個人」との関係について,2(4。1%)と,きわ. めて少数であり,少くとも「うまくいっていない」とは認識されていないこと. が分かる。しかし,④「うまくいっている」という回答が「機関」との関係に ついて,21(42.9%〉,「職員個人」との関係については,26(53.1%)と半数. 程度にとどまり,◎「どちらとも言えない」が比較的多い事実にも注意する必 要があろう。. ◎及び◎と回答した職員については,その理由を記述してもらった。その内. 容を見ると,学校関係では,PTAの問題が指摘されている。「PTA等の参 加が少い。これは母親の就業が多くの原因。教師からの一方的な連絡で終り,. 教師に対して連絡をとることが少くなってきているのでは」という回答と, 「P T Aは,学校幹部とP T Aの幹部が私物化しており,真に子どもの立場に. 立とうとしない」という指摘があった。共働き家庭の増加とともに,P T Aへ. の参加が従来より容易ではなくなってきていることは推察に難くない。また, P T Aの一部幹部による私物化があるとすれば,一般の親にとってP T A活動. への参加が時間的に必ずしも容易でないことが,その一因となっていることも. 考えられる。上記二つの異なった指摘は意外に同じ根を持つものかもしれない のである。とすれば,共働き家庭の増加という背景の下に,親のP T A活動へ. の参加を時問的にどう保障していくかが一つの課題とされよう。. 教護院では,「こちらから連絡するが,親からの連絡の少なさに対して,親 の無責任さを感じる」という回答があったが,収容施設という点では共通性を. 持つ矯正関係施設職員は,「大部分の親は少年院の業務を理解し,協力的であ る」と回答している。児童福祉法上の児童福祉施設としての教護院と少年院法. 上の矯正教育施設としての少年院との法律上の位置づけの相違が,機関や職員 に対する親の態度の違いを生んでいるのかもしれない。. 児童相談所については,「医師は身体をみる者としてしか認識」されていな いとして,そのため医師が親と面接・接触する機会があまり与えられないとい う指摘があり,児童相談所の本来的機能,すなわち,子どもに関する総合的相. 一327一.
(29) 少年非行関係諸機関の職員に対する調査(家族機能を中心とする)結果と分析 41. 談機関としての機能が十分に生かされていないようにも感じられる。また, 「かなりうまくいっている場合が多いが,そうでない場合も時々ある。それは. 職員の受持ケースが多すぎて手が回りにくいことが第一,職員の絶対数の不足 が原因である。つぎに職員の専門性のレベルや人格の問題,スーパービジョン の問題等がある。また親の人格上の問題が影響する場合もあり,大変苦労して. いるケースがある」(児童相談所職員)という重要な指摘があった。職員数の. 絶対的不足は,現場にとって深刻な実態であり,行政改革の進行の中での児童 福祉法や社会福祉事業法についての見直しがはかられ,児童相談所等の児童福 祉施設の縮小の方向が示されるとすれば,この状況はますます深刻化していく ことになる。児童福祉法の法理念を画餅となすことがあってはならないであろ う。. (8)親に対する調査・助言・指導を行う上での現行法制度上の問題点およ び法制度以外での問題点(Ω7(6×7)). ①法制度面(行政的側面も含む) 学校関係では,「教師の同一校勤務の長期化」があげられている。短期間で の転勤が地域に根ざした教育を困難にしているという認識に立つものであろう。 司法関係機関では,「自己の所属機関の守備範囲以上は他機関に移送するが,. 他機関も職員の人員不足であまり期待できない」と,ここでも職員の不足の問 題が顔を出している。. 矯正関係機関では,「子どもの非行の背景には家族の問題があり,子どもは そのしわ寄せや犠牲であることが多い。家族の病理として非行をとらえ,親を はじめ家族全体が変えられるように法制度上も改善される必要がある」として,. 「例えば,家庭裁判所の少年部と家事部を有機的に統合して機能させるための. 制度を設けることなど」と指摘し,夫婦と親子の問題の総合的処理のための法 的手当てを提案している。さらに,「(少年院の)保護者会その他の行事に親が. 出席したり,面会に来院する場合に,その交通費や宿泊代を公費から援助でき. ないか」ときわめて細やかな,実務の現場からならではの提言も見られた。非. 行を家族機能の障害という観点からとらえ,かつ,非行少年の家庭の経済状態. 一326一.
(30) 42. をも視野に入れて,上記の提言はきわめて有意義なものと評価できる。. つぎに,児童相談所の職員が「登校拒否の子に対して児童福祉司の介入が過 剰で,心理判定員の方針や医師の役割が理解されていない。また,児相の各職 種の役割が,子どもは心理士,親は児童福祉司,身体(疾患)は医師と分割的. になっているが,各職種それぞれの関わる部分が質的に異なるので,三者が (それぞれの観点から〉調査・助言などを行うべきだと思われる」と指摘して. いるが,これは児童相談所の各職種の専門性の観点からの役割分担の明確化と. その上での各職種の連携の強化が提言されているものと理解される。また, 「親権の逸脱とそれに対する法的対処の困難性」があげられている。「明らか. な虐待の場合はともかく,総合的に判断して明らかにその親に養育させること. が不適と思われるケースでも,(児相として)強い指導ができにくい。家裁に. 問題を提起することは,手続上も非常に大変であり,その結果全国的にも件数. が少ない。また,施設に入所させた場合にも,親の引き取りを拒絶することが できにくい場合が多い。」(児童相談所職員)というのである。同様に,市教育. 相談室でも,「施設への入所について,親の同意を得にくい場合がある」とい う指摘をしている。. 青少年相談センターの場合,機関そのものの法的根拠に問題があるようであ. る。「相談センターの場合,児相や家裁の正式ルートに乗せられないケース (たとえば登校拒否,金銭持ち出し,女装等)のように,触法行為とはならな. いが,問題行動としてあり,病院でも取り扱わないケースが多い。いわば(他 の機関の〉受け皿のないケースを取り扱わざるをえないが,それらを取り扱う. 機関としての法的痕擁がない」と回答している。この機関の場合,「総理府青 少年対策本部次長」名の『少年補導センターの運営に関する指導要領』(昭和. 45年7月1日付〉が,いわば根拠規定としてあるが,機関の主管部局さえ, 「当該地方公共団体の総合的青少年対策主管部局または児童福祉,教育もしく. は警察部局のいずれかとする」(要領第5)とされ,自治体によって主管部局 が異なれば,機関の性格そのものが大きく左右されるという問題点がある。し. たがって,機関の名称も「少年補導センター,少年センター,少年相談セン. 一325一.
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