2014
年度卒業研究
皆既月食時における月の明るさと色の検証
明星大学理工学部物理学系天文学研究室
11s1-030
小池 万里
花
11s1-054
福島 慧久
1要旨
2013
年から 2014 年にかけ月食の当たり年ということで、
10
月 8 日の皆
既月食に合わせ、本学の 40㎝望遠鏡により月の観測を行った。雲が多く、部
分食の始め、皆既月食中のわずかな時間、部分食の終わりのみ月の撮影ができ
た。撮影した CCD カラー画像を赤(R)、緑(G)、青(B)のバンドごとに fits 処理
し、皆既月食の明るさと色を比較した。
その結果、皆既月食では、R バンドの明るさは満月の時に比べて 2.4×
10−5倍(11.6 等)減光したことがわかった。
また、G バンド、B バンドの明るさは R バンドに比べて、さらに、0.53 倍、
0.18
倍になっており、青い光の方がより大きく減光したことがわかった。
2目 1章.月食...4 1-1.月食の原理...4 1-2.月食と月の満ち欠けの違い...5 1-3.月食と日食の違い...7 2章. 月食の色...8 2-1.月の色...8 2-2.皆既月食の色...9 3章. 観測...10 3-1.機材...10 3-2.10月 8 日の食の状況...11 3-3.満月の観測...13 4章. 画像処理...14 4-1.色の検証...14 4-2.明るさの検証...17 5章. 結果のまとめと考察...19 謝辞...20 参考文献...21 3
はじめに
月食は、太陽-地球-月が一直線に並ぶとき、つまり、満月のときだけに起こる。地球の 影の中を月が通過することによって月が暗くなったり、欠けたように見えたりする現象 のことである。数年ごとに肉眼で観測できる月食、特に地球の本影に入る場合を皆既月食 という。一部分だけが本影に入る場合を部分月食、月が半影(地球が太陽の一部を隠して いる部分)に入った状態は半影食もしくは半影月食という。 41
章.月食
1-1.月食の原理
地球と月は太陽の光を反射して輝く天体である。地球(月)には太陽の光による影 があり、この地球の影の中を月が通過することによって、月が暗くなったり、欠けた ように見えたりする現象が「月食」といわれる。 月食は、太陽-地球-月が一直線に並ぶとき、つまり、満月のときだけに起こる。 ただし、天球上で太陽の通り道(黄道)に対して月の通り道(白道)が傾いている ため、普段の満月は、地球の影の北側や南側にそれた位置になり、満月のたびに月食 が起こるというわけではない。 地球の影には「本影」と「半影」の 2 種類があり、月がどちらの影に入り込むかに よって、月食の呼び方が変わる。通常、本影に月が入り込むときに我々は「月が欠け ている」と認識できるが、半影の部分に入り込んだ時には、月はわずかに暗くなる程 度である。そのため、肉眼では、注意してみないと気が付かないことが多いが、写真 で比較すると片側が満ち欠けとは違った暗さになるので、月食とわかる。 このため、本影部分に全体が入り込んでしまうと「皆既月食」、本影部分をかすめ ると「部分月食」、半影の部分の中だけを通過するときには「半影月食」という。 51-2.月食と月の満ち欠けの違い
月食で欠けた月と、月の満ち欠けは同様のものだと一般には考えられているかもし れない。かし、実際に比べてみるとずいぶん様子が違うことが分かる。 月食の場合は月の欠けぎわがぼんやりしている。太陽の光が地球の大気層を通って 月の表面に当たるため、地球の大気で散乱され、月にできた地球の影はぼんやりとし ているのである。 また、月の欠けぎわのカーブ、つまり投影された地球の影がゆるやかな弧を描いて いる。これは、月に投影される地球の影が月の直径よりもずっと大きいためである。 6月 食 月の満ち欠け
1-3.月食と日食の違い
下の画像は部分日食である。月食が太陽→地球→月という順に並ぶのに対し、日食 は太陽→月→地球という順に並んだ場合に起こる。 日食の場合は月食と比べると太陽の欠けぎわがはっきりしており、急なカーブを描 いている。これは、月には大気がないこと、および太陽の視直径と月の視直径がほぼ 同じだからである。 82
章.
皆既
月食
中
の色
2-1.月の色
月の色は観測するときの「大気の状態」や「高度」の影響を受ける。 大気の層を通過する光は、大気の分子や水蒸気分子、大気中の塵などによって散乱 される。波長が短い紫や青の光の方が波長が長い緑や赤の光より大きく影響を受ける。 大気層の中で長い距離を通過した白色光は、青色から黄色に近い波長の光のほとんどが何 らかの影響を受け、赤色付近の光だけが我々の目に届く。地平近くの月や太陽が赤く見え るのはこのためである。散乱の程度により、短い波長域が目に届くと黄色や緑に見える ようになる。 92-2.皆既月食の色
皆既食では、月が本影の中に完全に入り込むみます。しかし、皆既食中の月は真っ 暗になって見えなくなるわけではなく、「赤銅色」と呼ばれる赤黒い色に見えるます。 皆既月食の、つまり本影の位置にある月には太陽からの光は直線的には当たらない 位置にある。ところが、地球の大気圏を通過する太陽光は大気により屈折し、影の内 側に入り込むように進むため、屈折率の大きい赤い色の光が月面に当たる。このため 、 皆既月食の月はおおよそ赤い色に見えるのである。 大気を通過するので、その影響が色に現れるため、赤黒く見えたり、オレンジに近く 見えたりする。 103章.
観測
3-1.機材
望遠鏡 40㎝:リッチークレチアン式反射望遠鏡 カメラ EOS 5D Mark Ⅱ ISO 感度 640~1600 シャッタースピード 撮影方法 撮影方法 ~法 フォーカス 月食の明るさのピーク値で調節 ドライブソフト EOS Utility にて撮影 観測データ (月食) 撮影日 2014/10/8 撮影地時刻 18:07~21:35 露出時間 1/125~4 秒 撮影数 106 枚 (満月) 11撮影日 2014/12/6 撮影地時刻 21:37~21:57 露出時間 1/1000~1/125 秒 撮影数 12 枚
3-2.10
月 8 日の食の状況
以下の数値は観測地=明星大学における数値である。 標準時:UT+9h 月天頂 状況 年月日 時刻 食分 経度 緯度 半影食の始め 2014/10/0 8 17h14.1 m 0.00 0 -128°11' 5°49' 部分食の始め 2014/10/0 8 18h14.5 m 0.00 0 -142°44' 6°00' 皆既食の始め 2014/10/0 8 19h24.6 m 1.00 0 -159°39' 6°13' 食の最大 2014/10/0 8 19h54.6 m 1.17 1 -166°52' 6°18' 皆既食の終り 2014/10/0 8 20h24.5 m 1.00 0 -174°05' 6°24' 部分食の終り 2014/10/0 8 21h34.7 m 0.00 0 169°01' 6°37' 半影食の終り 2014/10/0 8 22h35.2 m 0.00 0 154°26' 6°48' 12観測結果
部分食始め 皆既食 部分食終わり 天候がほとんど曇りであり、月食の経過中の一部のみ、撮像できた。 14 撮影地時刻 18:07 露出時間(s) 1/125 ISO感度 640 撮影地時刻 20:05 露出時間(s) 4 ISO感度 1600 撮影地時刻 21:27 露出時間(s) 1/125 ISO感度 8003-3.満月の観測
皆既月食と満月の色と明るさを比較するため、12 月 6 日に満月の観測も行なった。 月の全体を撮影できなかったが、データは取得することができた。
以下は撮影結果である。
4
3
章.
画像処理
4-1.色の検証
① 40cm 望遠鏡にて撮影した RAWCR2画像を星空公団の raw2fits にて fits ファイルに変換し、RGB ファイル(raw2fits.exe -r <Raw File>R チャンネルの み raw2fits.exe -g <Raw File>G チャンネルのみ raw2fits.exe -b <Raw File>B チャンネルのみ)を作成する。
なお、G のカウント値は、G1 と G2 を足し合わせているので、単位ピクセルあた りのカウント値としては、R、B での数え方の倍になっている。
②画像をすばる画像処理ソフト マカリを使い、開口測光{((月食)恒星径 750,、sky 内径 820,、sky 幅 50},{(満月) 恒星径 930,sky 内径 1000,sky 幅 50})を行い, sSky の明るさ部分を除去する。
内円(紫)が月のカウント数(=STAR)、二重線(青)が、背景のカウント数(= SKY)、Count が STAR の総計から SKY のカウント値を引いた値である。
月食 満月 恒星径 750 930 内径 820 1000 幅 50 50 ③ 明るさや色のムラがあるため、矩形測光を行いピクセル数、総カウント値の測 光結果を出力する。(色の定量化) ④ 画像ごとに出力したピクセルあたりの平均値を GR/RG, B/Rに代入し、それぞれ の比を求める。(明るさの比較) 皆既月食 満月 B G R G/R 0.99 1.85 B/R 0.33 1.84 ⑤ 露出時間と ISO 感度が異なるため、値をそろえる。 ⑥ 皆既、満月の RGB の値を代入し、(皆既)/(満月)の比を求める。 17
各色の比はG/R<B/R となる。 皆既月食中の月の色は地球大気の影響によるものと考えられるので、B/R の値の比が より大きいという結果から、R の散乱の度合いが皆既月食中の月の色に反映されてい ることがわかる。 18 G/R B/R (皆既)/(満 月) 0.53 0.18
4-2.明るさの検証
ここでは、皆既月食時の月全面の明るさと、満月時の月全体の明るさを比較する。 (月食) 1 マカリにて開口測光を行い、SKY の明るさ部分を除去する。 2 求めた値×ピクセル数が月食時の総カウントとなる。 (満月) ③ 開口測光を行い、STAR 平均を出力する。 ④ 画像が切れているため X 座標より月の直径を測定する。 ⑤ STAR 平均値×π R2 =(満月+SKY)の明るさの総カウント値を A とする。 ⑥ SKY 平均値をとり、SKY 平均値×π R2 =SKY の明るさの総カウント値を B と する。 ⑦ A-B=純粋な満月の明るさの総カウント値 B G R STAR 平均値×π R2 …A8.70 ×10
93.12× 10
108.43 ×10
9 SKY 平均値×π R2 …B6.66 ×10
71.93× 10
84.23 ×10
7 満月の明るさの総カウント値…A-B8.63 ×10
93.11×10
108.39 ×10
9 ⑧ 月食時と満月における露出時間と ISO 感度が異なるので、以下の表より係数とし て 6400 をかけて値をそろえる。 19 B G R 皆既月食中の月の明る さの総カウント値4.11× 10
82.63 ×10
91.29× 10
9月食 満月 露出時間(s) 4 1/1000 ISO感度 1600 1000 ⑨ 求 め られた月食の総カウント値と満月の総カウント値の比を求め、下式により月食の等級、 m月食 と満月の等級 m満月 の差を求める。
m
月食−
m
満月=2.5∗log
10満月の総カウント
月食の総カウント
ここで、満月の実視等級がおよそ-12.6 等であることを考慮すると、皆既月食の月 はおよそ 0 等から-1 等である。 20 満月時の総カウント値(m
満月 ) (感度補正後) 5.52× 1013 1.99× 1014 5.37 ×1013 B G R満月の総カウント
月食の総カウント
7.45×10
−6 1.32×10
−5 2.40×10
−5m
月食−
m
満月 12.8 12.2 11.65
章
.
結果のまとめと考察
撮影した raw 画像を FITS 処理し,RGB の比を求めた。 満月の時に比べ、R に対する G が 0.53 倍、R に対する B が 0.18 倍減ったことがわ かった。 また、満月の時に比べ、皆既月食は、R が 11.6 等級、G が 12.2 等級、B が 12.8 等 級暗くなったことがわかった。 明るさの検証により、等級数が最も明るい R が残り、我々の目に入ることになったと 考えられる。 また、色の検証より B/R の値の減少が最も大きかったので大気層による散乱は R が散乱されにくく皆既月食の色に反映されたと考えられる。 皆既月食の際に月面から見られる光は、太陽からの光が地球の大気で屈折を受け、地 球の後ろに回り込んだものと考えられる。そして、その際、地球大気を通過する際 に、地球大気分子によるレイリー散乱で減衰を受けると考えられる。レイリー散乱 の散乱断面積は波長の4乗に逆比例するので光の中で波長の短い B が一番減衰を受 け、次に G が減衰が大きい。 この予測は、皆既月食と満月の時の明るさの比を B,G,R の色ごとに比べた結果と矛盾 がないということになる。 21謝辞
卒業研究を行うにあたり機材やソフトの使用方法をご教示していただいた、研究室担 当教官井上一先生、小野寺幸子先生、日比野由美さんにはこの1年大変お世話になり ました。この場を借りて深く感謝申し上げます。