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2005年イギリス総選挙に関わる教育政策論争 : 各党マニフェストの分析を基礎とした労働党教育政策の検討

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1、はじめに  本稿は、2005 年 5 月 5 日に実施されたイ ギリス総選挙に向けて、各党より出されたマ ニフェストや教育政策関係文書の検討を行い、 各党の教育政策を考察すること、さらにこれ を基礎に、1997 年より政権を担い、引き続き 2005 年以後も政権を担うことになった労働党 の教育政策を分析・検討することを目的として いる。 さて、2005 年 4 月 5 日に首相、トニー・ブ レアはバッキンガム宮殿に出向き、女王に議会 の解散を上奏するとともに、5 月 5 日に総選挙 を行なうことを決定した。すでに年明け早々か ら、議会解散の時期が関係者の関心事になって おり、各党とも総選挙に向けた準備を行い、臨 戦態勢に入っていた。そして、各党とも政策文 書を出し、その政策の情宣を加速させていた。 2005 年 5 月の総選挙における最大の関心事 や争点は、ブレア政権がアメリカブッシュ政権 とともに行なった、イラクへの軍事介入の是非、 また、その根拠になった大量破壊兵器の不存在 の問題、また軍事介入の判断の基礎となった情 報入手の方法や扱いをめぐる問題であった。ブ レアは、国内問題について教育は労働党の最優 先課題であることに変わりがないことを強調し たが、医療や安全保障、移民などの問題に比べ て、それに関心が集まったとは言えず、論議は 概して低調であった。 ところで、近年わが国でも総選挙の際にマニ フェストが出され、それに対する関心が高まっ ているが、それはもともとイギリス総選挙の際 出されるマニフェストに倣ったものであること はよく知られている。イギリスにおいて総選挙 の際に各党から出されるマニフェストについ て、わが国での理解や報道には、必ずしも正確 でないこともあるが、それが教育政策の動向や 今後の方向性を検討する際に、重要であること は論ずるまでもない。 本稿は、1990 年代の末から 2000 年のはじ めの時期のイギリスの教育政策の動向や方向性 を探り、それを整理するために、2005 年総選 挙の時期の各政党の教育政策、中でも労働党の 教育政策について分析検討することを目的とし ているが、それは次の手順で行なう。 まず、総選挙に先立って、各党から出された 教育政策関係文書のうち、特に重要なものを取 り上げ、これを整理する。次に総選挙の際に出 された各党のマニフェストの中の教育関係部分 についてまとめ、これを比較、検討する。その 上で、選挙に勝利し 2005 年以後も政権を担当 することになった労働党のマニフェストについ て、1997 年に政権をとって以後の党の教育政 策の展開を検討し、2005 年総選挙のマニフェ ストをこうした流れに位置づけ検討する。そし て最後に、労働党政権の教育政策の基本的特質 No.55, pp. 49 - 82, 2005

2005 年イギリス総選挙に関わる教育政策論争

――各党マニフェストの分析を基礎とした労働党教育政策の検討――

藤 田 弘 之

A Study of the Education Policy in the 2005 General

Election Manifestoes in Britain

with special reference to the education policy of the Labour Party,

based on the examination of other party's manifestoes

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について、分析検討する。 なお、検討の対象は、労働党、保守党、自由 民主党の主要 3 党とする。 2、2005 年総選挙にむけた各党教育政策関係 文書の検討  周知のように、イギリスにおいて政党のマニ フェストは、相当の期間党内で多方面の検討が なされ、議論がつみ重ねられてまとめ上げられ る。マニフェストは、各党の政策を考えるとき に重要であるが、しかし、それは選挙において 国民に訴え、支持をうるためのものであり、そ の内容は短く凝縮され、あるいは選挙のために 加工される。  マニフェストで出される政策内容をより具体 的かつ正確に理解するためには、その他の教育 政策関係文書を検討する必要がある。2005 年 総選挙に向けては、遅くとも 2004 年初頭より その検討が始まっていたと考えられる。した がって、こうした検討の過程で出された文書を 検討しておくことが必要であると考える。  (1)労働党の教育政策関係文書 1997 年から政権を担当している労働党の教 育政策は、政府が出す教育政策文書と表裏一体 のものであり、したがって、これら政府の関係 文書の検討が必要である。それは政策課題ごと に極めて多数にのぼるが、その中でも、2004 年 7 月 7 日に教育技能省より出された、『教育 技能省:子どもと学習者のための 5 カ年戦略 ―国民を公的サービスの中心に置く―』( 以下、 『5 ヵ年戦略』) という文書は、今後の労働党の 教育政策の方向を示すものとして極めて重要で ある。(1) 『5 ヵ年戦略』は、当時の教育大臣、チャー ルズ・クラーク(Clarke,C.)の「子ども、及び 学ぶすべての人々は我々の未来である」とい う言葉に続いて、以下のような緒言をもって始 まっている。(2) それによれば、 1944 年のバトラー法、1942 年のベヴァリッ ジ報告書、1948 年の児童法等々の戦後の改革 は、教育機会の拡充や整備、福祉や児童サービ スの向上に大きな影響を与え、非常に重要なも のであった。しかしそれらは、公的サービスの 発展に好ましくない種もまいた。第 1 に、そ のモデルが単純なものであり、教育や社会サー ビスの提供につき、基本的かつ標準的なものに 焦点が置かれていたこと、第 2 に、保健や学校、 社会サービスにつき、当初より行政的な区分が あり、それぞれ独自のシステムや機構を発展さ せてきたこと、第 3 は、特に教育については、 エリート主義的であり、グラマースクールを通 じ、高等教育の機会をうるものは少数であった こと、また職業的技能訓練は劣ったものとされ、 さらにそれ以外の学校や教育機会について不平 等が存在していたこと、等々である。 総合制学校への動きは、これらの問題を克服 しようとするものであり、一定の成果があった が、それが学校のタイプについての議論に重点 があり、そこで行われる教育の質や教育そのも ののあり方については、十分ではなかった。こ うして 1976 年の首相、ジェームズ・キャラハ ン(Callaghan,J.)の演説は学校の教育水準や 雇用者や社会の要請に応じていない教育制度 について問題を提起し、これはその後全国カリ キュラムや教育水準庁の設置をへて、教育水準 の確保の問題につながっていった。 今日、産業、雇用、技術、社会は根本的に変 化しており、教育や訓練への要請も大きく変 わった。こうした状況に応ずるために、時期に より、また改革によっては、システムを急激に 変えるために、直接的、かつ強力な措置により 大きな変化をもたらさなければならない。これ は例えば、1997 年の読み書きや数的能力の向 上のための上からの政策であった。しかし、基 礎が確立された場合は、さらにそれ以上の優秀 性をめざさなければならず、新しいシステムを 必要としている。 その新しいシステムの主たる特徴は、個別化 (personalisation) である。個別化とは個人をシ ステムに適応させるのではなく、システムが個 人に適応することである。これは、児童サービ ス、教育や職業訓練などについて、すべての者 に高い水準を提供する。個別化が結果するもの は、システムがより自由になり、また多様であ

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るべきこと、個々人のニーズに応じるために柔 軟性を持つこと、また提供されるコースや提供 を行なう主体のタイプの中からより多くの選択 ができることである。多様なまた個別化された システムは、すべてのレベルでリーダーシップ と職員の高い専門的水準を必要とする。また、 提供主体そのものが多様になることから、相 互の協力とパートナーシップが必要となる。そ して、公的部門とともに、私的部門、共同体部 門、私企業などとのパートナーシップが必要と なる。中央、地方の行政組織はこうした変化に 応じて、その組織や機能のあり方を変える必要 がある。 以上を論じたうえで、今後のとるべき教育政 策について、報告書の主要な点を取り上げてい る。 『5 ヵ年戦略』の文書そのものは、110 ペー ジに及ぶものであり、はじめに労働党政権下で のこれまでの成果を述べた後、なお残る、また 挑戦しなければならない問題をまとめている。 そして、「我々の目的は、我々国民の大多数に、 特に学校の生徒達に世界的水準を確保すること である」とし、それを達成するために改革の 5 つの基本原理を述べている。これは、クラーク の緒言でも言及されているが、ここで今一度整 理しておく。 第 1 は、よりよい公的サービスや高い水準 の中核をなすものとして、個別化と選択の推進 を考えることである。これは、子ども、親、学 習者の希望や要求を中心に置き、そのための措 置を取ることである。 第 2 は、選択を実質化するために、サービ スの提供、提供方法、提供者の多様化を進める ことである。したがって、地方や公的私的各部 門、また新しいタイプの参入者によるサービス の提供の多様化を促進し、真の選択を可能にす ることである。 第 3 は、明確な説明責任と確実、かつ合理 的な財政制度を付与された、第一線の校長、理 事、管理者達が自由と独立性を持つことである。 第4は、中央、地方において、高いレヴェル の校長のリーダーシップと教職員の質を確保す るために、評価、ケアー、教育などを改善する 研修を受け、また支援を受けられるようにする ことである。 第5は、多様な提供者をはじめ、個々人、雇 用者、私的団体、ソーシャル・ワーカー、その 他様々な人や団体が、子ども、若者、成人のラ イフチャンスを極大化するために、これに関わ り、効果的なパートナーシップを確保すること である。 『5 ヵ年戦略』の文書は、こうした基本原則 を基礎に、5歳以下の子どもへのサービス、初 等学校、中等学校における教育、14歳から 19歳の青年の教育や訓練、成人の教育訓練、 高等教育のあり方、教育行政組織のあり方につ いて論じている。ここでその大要をまとめる。 幼年期、就学前のサービス ・ 全ての親が、子どもセンターで、保育、教 育、健康、雇用、子育てなどのワンストッ プ支援を受けられるようにする。 ・ 子どもの誕生から 2 歳まで、希望する場 合には、親が家庭にとどまるためにより多 くの支援が受けられる。 ・ 教育の柔軟な制度を設けること、すなわち、 教育と保育の一元化、また学校に行く前に 3 歳児、4 歳児に対して、1 週 12 時間半 無料の支援を提供する。 ・ 親が忙しい生活を乗り切っていくのを支援 するために、朝食の世話と放課後のクラブ がある、夜明けから夕刻まで開校する学校 を発展する。 ・ 各地方において、子どもと家族のための サービスを提供する全ての人々が協力し、 危機にある子どもが確実に適正なケアーを 受けられるように、子どもトラストを設け る。 初等学校段階の教育サービス問題 ・ 読み、書き、数的能力を子どもが可能な限 りのばせるよう、教室において高い資質を 持った教師と支援スタッフを用意する。 ・ カリキュラムをより広くし、すべての子ど もが、外国語を学び、音楽を演奏し、競技 スポーツに参加するというような選択を提 供する。 ・ 親と学校のより緊密な関係をつくりだす。

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・ 多くの初等学校が、そのネットワークにお いて、相互に協働し、支援しあい、また成 果に劣る学校の改善に挑戦する。その際、 優良な校長が、問題校の改善を支援し、方 向転換させることがあるが、閉鎖される場 合もある。 中等学校段階の教育サービス ・ 中等学校段階について、次の 5 年間の主 たる目的は、教育、学習の質を引き上げる こと、可能な選択の範囲を拡大することで ある。また、過去 7 年間の実績に基づき、 学校の自由と独立を拡大し、教育や学習の 改革を促進し、またカリキュラムの選択と 柔軟性を拡大する。そして、そのための資 金が投下される。 ・ 改革の中心は、伝統的な総合制学校に変わ り、独立した特別学校を発展することであ る。すなわち、特別学校の制度において、 より多くの独立を与えるが、それは以下を 条件とする。 少数者を選び、多数の者の入学を拒否す る選抜制度には復帰しないこと 問題校への介入を放棄しないこと 学校が改善を持続するため意欲的な目標 設定をやめないこと 独立は、公正な入学、十分な説明責任、 改善を推進する強いパートナーシップ を必要とすること ・ 中等学校改革は次の 8 つの柱からなる。 第 1 は、生徒数に連動した、3 年単位の 予算を保障することである。これにより、 校長や理事は、安定した財政の下で将来の 計画を作成することができる。 第 2 は、特別学校を普遍化し、さらに 優れた特別学校をつくることである。全て の学校は、特定のカリキュラムにつき優れ たセンターになるという使命をもって特別 学校になるが、それはその使命をさらに発 展させるために、第二の専門分野を引き受 けることができる。また高い実績を上げて いる特別学校は、教員養成学校、またはリー ダー校になることができる。第 6 年級の ない学校は、それを発展する機会を持つこ とができる。 第 3 は、全ての学校は、その土地や 建物を所有し、その職員を雇用し、理事 会を改善し、外部のスポンサーや教育基 金とのパートナーシップを徐々に進める などについて自由を持つことである。現 在、3 校に1校の割で、こうした学校経 営管理の自由を持っているが、将来は全 ての学校が、理事会の投票に基づきこう した権限を持つであろう。ただし、公正 な入学という要件は残り、能力による選 抜の拡大は認めない。 第 4 は、希望者が殺到する学校にお いてより多くの定員を認めることであ る。この進行を促進するために、資本的 基金を導入した。また、親のグループや 他の人が学校を新設することが可能なよ うな手続きを設けている。 第 5 は、学校と当局が新しい関係を 築くために、責任問題に関わる官僚的形 式主義をなくすことである。ただし、そ れは学校が全く自由になるというわけで はない。質を確保するために、問題のあ る学校への査察、責任問題、介入は必要 であるが、できるだけ査察にともなう負 担は軽減する。 第 6 は、2010 年 ま で に 200 ま た は それ以上のアカデミーを新設することで ある。既存の中等学校が不十分である地 域において、200 校の独立して管理さ れるアカデミーを新設する。いくつかは 成果の上がらない学校を改組するが、残 りは新設する。 第 7 は、向こう 10 年から 15 年にわ たって、全ての中等学校の施設設備を新 築し、または改修して、整備する。 第 8 は、学校がその教育水準を引き 上げるためにグループ化し、また学校が より広い責任を引き受けるために協働す るために、設置者の間でパートナーシッ プを確立する。 ・ 以上のようにして、改革される中等学校 は質を引き上げ、また選択の範囲を拡大 する。しかし、こうした改革を基礎に、 教育は生徒個人のために個別化されなけ

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ればならない。 ・ こうして生徒のために個別化される教育と して、全ての生徒がその潜在力を開花する ように支援し、個々の生徒の知識に基づい て優れた教育が提供されること、より多く の選択範囲を持った広くかつ豊富なカリ キュラムが提供されること、さらにはより 広い時間外の教育機会 ( 例えば高いレヴェ ルのスポーツ活動 ) がセットされて提供さ れること、最先端の革新的技術が使用され ること、校長が問題を生ずる生徒を取り扱 う権限を留保しつつ、よい規律が維持され、 尊敬や権威などの伝統的価値にコミットさ れること、全ての学校で規則的に出席する という風土をつくること、学校が地域社会 の中心に位置し、子どもを支援する親と緊 密に協働しつつ教育が行なわれること、な どが上げられる。 ・ 中等学校について、とりわけ規律の問題に 3 ページを割き、この問題を論じている。 そこでは、よい行為はよい学習や市民性に 不可欠であること、不登校の風土は廃絶す ること、全ての学校が制服の着用を期待さ れること、全ての学校が明確な規則や行動 規範を持ち、いじめに対抗するよう期待さ れること、攻撃的なやり方で行為する人物 を排除する校長の決定を支持すること等々 を述べている。 14 歳に達した生徒に対するサービス ・ 新しい第 6 年級、第 6 年級カレッジをは じめ、何をどこで学習するかについてさら により多くの選択をあたえる。 ・ 生徒が伝統的な教科を選択しようと、職業 科目を選択しようと、また 14 歳から始ま る現場実習を選択しようと、生徒が必要と するコースを整備する。 ・ 学校と雇用者は密接な関係を維持する。 ・ 若者が適切な決定をなすために高い質の助 言とガイダンスを提供する。 個人の技能取得の問題 ・ 全ての成人のために、よりよい職業につく ために必要とする技能を得ることができる 質の高いコースを用意する。 ・ 基礎技能、GCSE のレヴェル 2 を得るため の成人の学習は無料で提供され、成人に対 して学習補助金を提供する。 ・ 高い質の継続教育を提供する。 大学生へのサービス ・ 潜在可能性を持ったすべての人が大学にア クセスできるようにする。 ・ 学習のためより柔軟な、また高い質の教育 を提供する。 ・ 世界クラスの研究を保持する。 ・ 革新と技能を押し上げる雇用者と高等教育 の間のよい関係を維持する。 以上、『5 ヵ年戦略』の概要を見て来たが、 その中では他の問題に比べて、中等教育問題に 相当の重点が置かれていることがわかる。すな わち、中等学校の特別学校化、またその多様化 を一層推進する方向であり、これに教育の個別 化が加わっている。  労働党は、総選挙がまじかに迫った 2005 年 3 月に、数々の政策文書を出したが、そのトッ プを切って出したのが、『学校-改革をすすめ、 後退しない―』と題する教育政策文書であった。 (3) これは、教育問題がなお労働党の最優先事 項であるとするブレアの立場を示すためのもの であったと言われている。この文書の内容は概 ね、上で見た『5 カ年計画の文書』をコンパク トにまとめたものであったが、それに「親を第 1に置くこと」という項と「保守党はイギリス を逆戻りさせる」という項が加わっている。親 を第1に置くという部分では、親に子どものた めに必要な教育を確実にする権限と選択を与え ること、その際、情報技術や生徒の個別的計画 の作成などの方法を活用すること、学校査察過 程に関する情報を親に提供し、また親のこうし た過程への関与を考えること、責任を果たさな い親に対する規制や制裁を強化すること、等を 述べている。 (2)保守党教育政策関係文書 野党にある保守党の教育政策検討の進展状況 については、別の論文で言及した。(4) そして、 その中で 2004 年6月に出された、『選択する 権利』という文書がこうした検討の 1 つの集

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約書であると指摘し、その内容を整理し、紹介 した。その要旨を再び掲げれば、以下の通りで ある。 労働党政権の下では、教育を最優先するとし、 公費の支出が大幅に増えたが、教育水準、無断 欠席者、教育の質ともいずれもいぜんとして改 善されていない。主として、教育の官僚化にと もなう仕事量の激増と生徒からの攻撃のため に、離職し、または離職を希望する教師が増え ている。労働党政権の集権的な政策により、学 校の自律性、校長や教師の自由が侵されている が、特に生徒規律問題への規制により、問題が 増大している。子どもや親の学校選択の自由に もなお制約が加えられており、貧困で不利な条 件にある子どもが実質的に選択権を行使できな い。労働党政権下の教育政策には、以上のよう な問題があり、これに対して、親や子どもに学 校の選択権を与え、また親や子どもがその選択 権を行使できるように、また選択の前提となる 優良な学校が増えることを可能にし、また校長 や理事会が中央政府からの介入なしで学校を経 営できるような改革を行う必要がある。 具体的には、第1は教育選択権の保障である。 このため 1 つには、学校の財政的支援の方法 を変え、学校に通う生徒数に生徒一人当たりの 単価を乗じた額を学校に交付すること、2 つに は、優良学校の供給を保障するために、種々の 制限を撤廃し、希望者の多い学校が定員を増加 させられるようにすること、また学校の新設を 緩和し、他方問題のある学校への介入や措置を 強化することがある。 第 2 は、教育専門家の自由を保障すること である。このため 1 つには、学校の自由や自 律性に対する制約を撤廃し、入学、生徒指導、 教職員給与、その他の問題について自由に管理 経営できるようにすること、2 つには、学校の 財政的自主権を大幅に認めること、3 つには、 中央省による目標設定、ひも付きの事業などを 廃止し、学校での政策立案権を大幅に認めるこ と、4 つには、地方教育当局や教育技能省を見 直し、こうした自由な学校の管理経営が可能に なるようにすることがある。 第 3 は、学校供給権の保障である。すなわち、 生徒のために多様な提供の主体、例えば、信 仰集団、親、私企業、慈善信託、その他の多 様な団体が学校を設置できるようにし、その ための資本的費用の支援、教育起業を支援す る。 すでに 2004 年 7 月に出された労働党政 権の教育政策文書、『5 ヵ年戦略』について 概要を紹介したが、その内容には基本的な原 則を含め、多くの点でこれより先に出された 保守党の『選択の権利』の内容と重なる部分 がある。例えば、学校設置主体の多様化、学 校の自由、自律性の拡大、学校規律問題など である。ただ、その影響関係の子細について は、今後の課題である。 この文書発刊の後も、党首ハワード、また 影の教育大臣や関係者が、教育政策を表明 し、また党より広報・情宣が続けられてきた が、文書としてまとまって出されたものとし ては、2005 年 2 月の『教育に関する行動- 保守党のマニフェスト、2005』がある。(5) これは表題の通り、来るべき総選挙に備えて 出されたものである。この文書には、「我々 は親がその子どもに最上の学校を選択する権 利と、学校における規律を改善する権利を与 える」との副題が付され、子どもの学校選択 権とともに、学校における規律問題が前面に 出ている。ここでこの文書の概要を整理して おく。 この文書は最初に、「保守党は、生徒の中 の破壊的行為を行う少数者が多数の生徒の教 育を乱さないように教室内での規律を回復す る。親に子どものための最上の学校を選択す る権利を与える。優良な地方の学校がより多 く存在するように教育への投資を増大する。 青年がその経歴を借金の重荷をおってはじめ ることがないように、大学授業料を廃止す る。」という行動目標を掲げたのち、党首ハ ワードの以下のような緒言を掲げている。 「保守党政権が行なう全てのことは、人々 に人生におけるより大きな機会を与えること が目的である。」そして、青年たちが自信と 自らをもっとも生かす技能を持って学校や

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カレッジを卒業すること、そして “ブリティッ シュ・ドリーム” に生きることを目的とする。 しかし現実には学校には規律が欠け、水準が低 下し、試験の合格率も低下している。イギリス の教育制度の質は、その将来の経済的繁栄や社 会の本質を決定するものであり、学校に行かな い子どもや、適切な教育機会を失った子どもた ちなどの問題に対応しなければならない。この ため、学校において規律を回復することが最優 先事項である。また、親を信頼し、政治家が中 央で決定するのではなく、親の希望や価値に よって教育制度が形成されるようにすべきであ る。さらに、すべての子どもがそれぞれの独自 の才能や能力を最大限に活用し、のばせるよう に、伝統的教科とともに職業教育、その他の教 育を支援する。 文書は、以上のようなハワードの緒言の後に、 ブレア政権下の教育政策や実績を批判し、さら に教育に関する保守党の教育政策基本的立場と して、(i)、親や教師が政治家や官僚よりも子ど もの教育についてよりよい決定をなすと信じる こと、(ii) 学校の規律が優良な教育の中心であ ると信じ、子どもは早期に他人に対する尊敬 や権威を学ばなければならないこと、(iii)、教 育制度は人々の意欲や優秀性を奨励すべきであ り、全ての児童生徒が、個々人のスキルや才能 を最大限にのばせるようにしなければならない こと、を述べている。その上で、個々の教育課 題について論じている。以下、この文書の概要 である。 学校の規律の確保 この問題に関しては、本文書で述べられてい る以下の点を除き、ほぼ次項で述べるマニフェ ストと同様である。 ・ 学校は、他の学校からの退学生の受け入れ を強制されることはない。 ・ 学校における麻薬問題に取り組む。校長や 親が望むならば、各地方教育当局の地域に おいて検査機械の購入に財政的補助を行う などの支援を行なう。 また、児童生徒を立ち直らせる改善学校 (turn around school) については、本文書がより詳し く説明している。すなわち、 ・ 退学処分を受けた児童生徒を立ち直らせ るため改善学校 (turn around school) を設 置する。現在、退学処分を受けた児童生徒 に対しては、十分な指導や教育が行なわれ ていない。こうした子どもが立ち直るため の学校を設置し、重点的に指導する。行動 が改善した場合は、元の学校に復帰できる ようにする。 親の教育選択権、および学校の自律性の保障 この問題に関しては、既述の『教育の選択』 の内容をほぼ繰り返している。 教育水準の向上、その他 ・ 教育や学校選択はすべての領域で水準を引 き上げる。親の学校選択権は成果が上がら ない学校への圧力として作用する。 ・ 保守党政権は教育改革に大幅な投資を行な う。 ・ 教育制度を複雑にし、教師がその職務で 阻害されている中央が設定する目標を廃棄 する。そして、学校が直面する特別な条件 に応じて自らの優先を設定するように認め る。 ・ 学校水準と教室における行為は緊密に関係 している。悪い行為は、しばしば教育水準 の低い状態から生じる。このために、基礎 的な読み書き、数的能力の向上に努める。 その際、伝統的な教育方法は子どもに読み 書き計算を教えるもっとも効果的な方法で あることを示す圧倒的な証拠がある。保守 党政権は教師や親に伝統的な教育方法を選 択する自由を与える。 ・ 保守党政権は試験制度の信用を回復する。 そして、現在は目標を達成するために、等 級のインフレが生じている。このために 個々人の成績と等級が公表されるようにす る。目標を廃棄し、A レヴェルの最上級ラ ンクについて、毎年固定した比率の生徒に 与えられるようにする。 ・ 教育資格およびカリキュラム当局 (Quality and Curriculum Authority) を 改 革 す る。 また、O レヴェルや他の国際的に認められ た資格を学校が提供できるようにする。 ・ 16 歳での外部試験を維持する。

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14 歳以上の生徒・青年の職業教育の振興 ・ イギリスにおいて、あまりにも一般主要教 科中心の教育が重視され、適切な技能教育 が不十分である。そして、多くの生徒の問 題行動の原因の 1 つになっている。その ために、保守党政権は技能教育の提供を強 化する。 ・ 第 1 に、青年の不登校や教育機会を離れ るという問題を解決するために、彼らが能 力や関心に応じた職業選択が可能になるよ うに支援する。そのために、14-16 歳の若 者が職業訓練に参加し、GCSE の準備とは 別に、職業資格を得る機会を広げるために、 30 万人分の職業教育補助金を交付する。 将来この額を増加する。 ・ 第 2 に、生徒や青年が訓練を受ける場所 やその方法を自由に選べるように、職業訓 練や教育の場所への財政支援は、彼らが選 択した場所に対して青年一人当たりの積算 に応じて行なわれる。 ・ 第 3 に、高度な質の技能の不足というイ ギリスがかかえる問題に取り組むために、 高度なレヴェルの資格が取れる、スーパー ・カレッジの新しいネットワークを整備、 投資し、継続教育の発展を奨励する。 ・ 第 4 は、非能率な学習技能評議会(Learning

and Skills Council)を廃止し、上記のよう な選択に基づく基金配分のための基金団体 を創設する。緩やかな査察は残すが、カレッ ジへの官僚的干渉はやめる。 ・ 第 5 に、技能教育を学習者が有益な選択 ができ、また利用できるように情報を提供 する。そして、新しいキャリアサービスを 整備する。既存のいわゆるコネクション (Connection Service)はやめ、キャリアと 職業選択に関してアドヴァイスができるよ うにする。その際、私企業の関わりや民営 化を奨励する。 高等教育の振興 ・ 政府が支出して、学生を教育するコストに 見合う全国奨学金(National Scholarship) を創設し、これをもって、学生の授業料政 府補助金を置き換える ・ 大学は、学生数によって教育基金の配分 を受ける。政府は全体の数を決定する。 2006- 7年から9億ポンドまで学部学 生の教育のために毎年の大学の収入を支援 する。 ・ 寄付金計画によって大学の財政的独立を確 保する。その際、マッチングファンド方式 が用いられる。 ・ 大学に進む青年の比率を50パーセントに するという政府の目標を廃棄する ・ 保守党は労働党の授業料、追加授業料を廃 止する。そして、学生ローン制度を改革す る。 ・ 新しく学生ローントラストを設け、低利で、 また資産調査なしで、貸与する。貸与額や 返還の条件は、学生に無理のないようにす る。 以上である。この文書は、学校規律問題が前 面に出されていること、14 歳以後の職業教育 や継続教育、高等教育などの問題を取り上げた ことを除いて、その基本や原則は、2004 年 6 月の文書と変化がないと考えられる。 (3)自由民主党教育政策関係文書 自由民主党は、党首チャールズ・ケネディ (Kennedy,C.)の下で、政策の検討を行なって きた。教育問題についての議論や検討も種々 の機会になされ、党大会でも熱心に議論がなさ れているが、教育政策文書としてまとまって出 されたものは、調べた限りではほとんどなく、 2004 年 9 月 14 日に出された、『自由、公正、 信頼』というプレ・マニフェストが主要なもの である。(6) この中で、教育については、① すべての学生が大学教育を受けられようにする ために、労働党政権が導入を考えている授業料 を廃止すること、②ヨーロッパの中でも最も多 くテストがなされているというイギリスでのテ スト漬けの現状を改善するために、不必要な官 僚的なテストを廃止し、教師には教える時間を、 また生徒には学ぶ時間を与えること、③適切な 教育を受けた有資格教師の不足と、無資格者に よる教育の現状を改善するために教員養成を改 善すること、④現在その不足が指摘されている 職業のためのスキルを与えるために、14 歳以

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上の生徒の教育を改革し、職業教育と伝統的教 育がバランスをとって行なわれるように、また、 職業的成功に必要なスキル修得の機会を提供で きるようにすること、⑤乳幼児教育への投資を より多く、また適切に行ない、子どものクラス 規模を減じ、またすべての子どものため保健、 教育、社会サービス、家族支援を行なう幼年児 センター(Early Years Centre)を設置するこ と、以上の5項について述べられている。しか し、その記述は簡単なもので、具体性を欠き、 スローガンの提示に終わっている。総じて、マ ニフェストが出される以前の自由民主党の教育 政策の重点は、労働党政権が導入しようとして いた大学の授業料に対する反対が主たるもので あり、その他の教育政策についてさらに知るた めには、マニフェストそのものの発刊を待たな ければならない。 3、2005 年総選挙マニフェストにおける各党 の教育政策の検討 2005 年総選挙の際の各党の教育政策に関わ る基本的立場は、すでに述べた総選挙前の文書 から明らかである。総選挙マニフェストは、こ うした文書から凝集され、選挙に向けて重点化 され、各党の政策がいっそう鮮明に提示されて いる。これまでの記述と重複する場合もあるが、 ここではまず、各党のマニフェストにおける主 張をできるだけ正確に整理したうえで、これを 比較・検討しすることとする。 (1)労働党のマニフェスト 「イギリスは前進し、後退しない」というタ イトルの労働党マニフェストは、ブレアの緒言、 これまでの実績を述べた後に、第 2 章で教育 について述べている。(7) 第 2 章は、「教育:より多くの子どもが基準 を達成し、個別化学習をすすめ、多数の子ども が落ちこぼれるような状況には戻らない」とい う見出しが付けられている。 この章は、教育がなお労働党の最優先課題で あることを明確にし、また第 1 期では、初等 教育で成果をあげたこと、第 2 期では、教育 職員の充実、財政投下、特別学校やアカデミー 計画などによって中等教育の改革で成果を上げ たことを強調した後に、第 3 期の計画の全体 像を次のように提示している。 「現在の我々の計画は、さらに教育水準を引 き上げるという点で、教師やその支援職員を支 える親と協力して、個々の生徒のニーズに教育 制度を適合させることである。それは、初等学 校では、国語や数学とともに、音楽、美術、スポー ツ、語学である。すべての子どもにとってよい 中等学校は、近代的建物と優れた専門教育を備 えている。必要な子どもには追いつく教育支援 がある。16 歳では、第 6 年級の席、職場実習 や継続教育が保障される。高等教育では優れた 質と豊富な教育機会がある。すべての子どもが 優れた教育の権利を持っているが、どの子も他 のこの教育を妨げる権利を持っていないという 明確なメッセージを我々はそれぞれの段階で送 る。」そしてさらに、就学前教育から、第 6 年 級、現場実習、またそれ以上の段階で、すべて の子どもや青年が必要とする個別的なパッケー ジを彼らに提供する改革計画を持って、全ての 子どもに平等な機会を提供することを述べてい る。ここに見られるように、第 3 期においては、 教育の個別化、個性化が基本方針になっている。 マニフェストでは、こうした基本方針をふま えて個々の政策を提示している。以下はその大 要である。 教職員問題 ・ これまで教師や支援職員を増員し、また給 与など勤務条件、研修の改善を行なってき たが、児童生徒のニーズに応じるために、 こうした方向をさらに進める。 ・ すなわち、教職員の現職教育を強化し、教 師になれるルートを拡大し、教師を支援す る職員(学習補助者、音楽や芸術教育支援 者など)を増員する。 ・ こうして全ての生徒が不得意科目では特別 の支援を受け、得意科目では一層能力を伸 ばせるような機会をつくる。 ・ 全ての生徒が基礎を修得する必要がある が、11 歳までにそれが十分でない場合は、 中等カリキュラムでそのための特別な時間

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を設ける。11 歳、14 歳、16 歳で、国語、 数学の試験があり、その改善の状況が判断 される。 ・ 全ての生徒がその能力を伸ばされる必要が あるが、もっとも優秀な生徒については、 A レヴェル、また A レヴェルよりさらに高 度な問題に挑戦するプロジェクトを発展す る。 学校の経営管理問題 ・ 教育への財政支出は引きつづき増加させる が、各学校へは数年分まとめて配分される。 その場合、生徒増加分は別に保障される。 ・ 成果をあげている学校やカレッジの校長や 理事会は、予算の作成、支出について大き な裁量権が与えられる。 ・ 成果をあげていない学校については、別の 新たな教育サービス提供措置がとられる。 ・ 学校理事会における親の地位は強化する が、理事会を効果的にするために、理事数 を 10 人またはそれ以下にすることも含め、 その組織改変などに柔軟性を持たせる。 親とのパートナーシップ ・ 学校教育において成果を出すためには、親 との効果的な関わりが必要である。親は、 必要な情報や支援を受ける必要がある。ま た、学校の業績評価、教育改善の推進、子 どもの行動改善、学校給食の質の改善など で重要な役割を持っている。 ・ すべての学校は、新たに学校と子どものプ ロファイルを作ったり、また情報技術を活 用するなどして、学校と家庭の接触を密に し、また望ましい関係が持てるようにする。 ・ 教育水準庁は、査察の際に親の見解を聴取 しているが、今後は親の苦情に応じて、必 要な場合には、成果の上がらない学校を閉 鎖し、または管理者を変えるなどの新しい 権限を付与される。 初等学校問題 ・ 読み書き、および数的能力の水準向上プロ グラムをさらに強化する。( 目標達成率を 85% に設定する ) ・ 初等学校の子どもが、美術、音楽、スポー ツ、外国語の高い水準の授業が受けられる ような支援プログラムに予算措置をする。 ・ 公立学校の範疇内にあるファウンデーショ ン・ ス ク ー ル (foundation school) は、 直 接にその資産を管理し、教職員を雇用でき るなどの裁量権を持っているが、成果をあ げている学校は、親と相談し、理事会の手 続きを経て、こうしたファウンデーション・ スクールになることを認める。 中等学校問題 ・ 全ての学校が、強い気風と高度のリーダー シップ、また制服を含めた良好な規律、規 範力、高い質の能力別の学習や施設設備な どの特性を持った独立特別学校になるよう 希望する。 ・ ただし、これらの学校は、入学について、 11 歳試験を課したり、逆に全く自由であっ てはならず、公正な入学制度の中で、個々 の生徒の、ニーズ、興味、能力に教育を適 合させることを保障しなければならない。 ・ 特別学校は、全国カリキュラムを全て教え ているが、中心となる優れたカリキュラム をもっている。全ての既存の特別学校は、 第二の専門性を持つことができる。 ・ 時間をかけて、特別学校は放課後の活動を 提供する、時間延長学校になる。 ・ 優良な学校は、成果を上げていない学校を 接取するなどして、その規模と影響を拡大 することができる。成果をあげている学校 は、生徒や親の要求がある場合は第 6 年 級を設置する制度を発展する。 ・ 親の要求があり、公正な基金や入学手続き を持ち、教育水準や機会を支援すると考え られる場合は、教会や他の宗派団体を含め、 新しい教育供給者が公的教育制度に参入す ることを認める。 ・ 独立した、非選抜の新しいアカデミーを強 く支持する。現在 17 校が存在し、50 校 が計画中であるが、教育条件のよくない地 域において、2010 年までに 200 校のア カデミー設立をめざす。 ・ 教育条件のよくない地域にいる子どもを支 援する方法として、より小さな学校や寄宿 学校を奨励し、それに必要な財源を受けら れることを保障する。 ・ 公的部門と私的部門の間の、これまでの不

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健全な歴史的分断を橋渡しすべく、両者の パートナーシップを支援する。 学校規律問題 ・ 全ての生徒は妨害なく学習する権利を持っ ており、教師は虐待や不敬に甘んじるべき でない。校長には規律を維持し、高い行動 基準を維持する権限を与える。ナイフの使 用を含む暴力的行為には受忍しない。また、 程度の低い破壊行為についても、ゼロトレ ランスを実施するために学校や教職員組織 と協働する。 ・ 問題に対応する校外部門も数が増え、また その質も改善されたが、校長にはこうした 校外部門での対応のために、必要な場合そ の拡大や改善のために、予算の統制権を与 える。秩序を乱し、また退学処分を受けた 生徒のために、慈善団体や私的団体ととも に、より効果的なサービスを提供する。い かなる学校もこのような生徒のごみだめに はならない。 ・ 親は子どもを学校に出席させる義務を持っ ており、養育命令、罰金などを導入したが、 不登校について一層を続けて強く訴える。 特別の教育ニーズを持った生徒 ・ 特別の教育ニーズをもった子どもは、訓練 を受けた職員から適切な資源と支援を必要 としている。親は、普通学校であるか、特 別学校であるか、その子どもに適切な教育 を利用できるべきである。地方当局は、地 方での提供の形式を決定する役割を持つ。 16 歳以上の青年の教育問題 ・ 一般普通教育に比べて、職業教育の位置が 弱くまた十分でなかった。このために職業 教育の位置と質を引き上げる。 ・ GCSE と A レヴェルは、14 歳以上の全て の生徒が高い質の職業教育計画を利用でき るための基礎である。 ・ 将来、現場実習、継続教育、高等教育につ ながり、また訓練を受けつつ職業を行なう ことにつながる、専門的なディプローマを 経済の重要な領域で設ける。 ・ 16 歳から 19 歳の青年が、第 6 年級、継 続教育カレッジ、新しい技能アカデミー、 現場実習などの機会を得られるように、こ うした教育を拡充整備する。 ・ 経済的に不利な条件を持ったものには、給 付金を交付するなどの支援を行なう。 子どもトラスト ・ 教育と社会サービスの協働、子どもや家族 への隙間のないサービスを提供するため に、地方教育当局が子どもトラストを設置 するようにする。 高等教育問題 ・ 2010 年までに高等教育に進む若者の比率 を 50% にする目標を堅持する。 ・ 引き続き財政支出を拡大する。 ・ 授業料の高騰を抑え、追加授業料の制限を 年間 3000 ポンドとする。 ・ 困窮学生には給付金の交付などの支援を行 なう。 ・ 博士課程の学生への経済的支援を強化す る。 以上、労働党のマニフェストをまとめてきた が、既述の『5 ヵ年戦略』の基本的内容が大き く盛り込まれていることがわかる。マニフェス トは、教育の個別化を基本方針としているが、 中等教育問題がなお大きな問題であることがわ かる。さらに、学校規律問題に一定のスペース を割いているが、これは多分に保守党を意識し たものであると思われる。 (2)保守党のマニフェスト 保守党のマニフェストは、「より多くの警官、 よりきれいな病院、安い税金、学校の規律、移 民の統制、説明責任――あなたは我々が考えて いることを考えているだろうか。行動の時であ る。」という副題が付けられており、教育問題 については学校規律に重点が置かれている。(8) 教育の部分では、「学校における少しの規律 で何が悪いのか」、という表題がつけられ、「教 師はより規律を持った学校でのみ教えることが でき、また子どもは学ぶことができる」という スローガンではじめられている。以下、これま での文書と重複する点もあるが、保守党マニ フェストをできるだけ正確にまとめる。

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柔軟な保育 働く家族への支援を増大する。具体的には、 ・ より柔軟な出産手当を支給する ・ 労働をしている家族の、5 歳以下の児童に 週 50 ポンドまで児童手当を支給する ・ 職場の保育所に特別の支援をする ・ 年長の児童のためにクラブのネットワーク を提供する 規律ある学校での優れた教育の提供 現在、100 万人以上の子どもが毎年不登校 である。校長は退学の最終決定権を否定されて いる。優良学校は、暴力を起こす生徒の一定割 合を受け入れることを求められている。児童の 3 分の 1 以上が、正しく読み書きできないまま 初等学校を卒業し、4 万人以上の生徒が 1 つも GCSE の資格を取らずに卒業した。試験は、等 級を確保するために評価基準が下げられてい る。保守党は、こうした状況をただす。 ・ 校長や理事に入退学に関する完全な統制権 を与え、学校での規律を確保できるように する。 ・ 少数者が多数のものの教育を妨害すること を認めない。そして、指導が困難な子ども は、特別の矯正学校において、その生活を 正す機会を与えられる。 ・ 教師に対する悪意ある訴えや大きな事務負 担を軽減し、教師に対する尊敬の念を回復 する。 ・ 学校は、自らの優先事項を基礎に、自由に 予算を決定できる。 ・ 学校への財政支出は、生徒数を基礎に配分 される基金にかえる。すなわち、児童生徒 一人の単価に生徒数を乗じた額が交付さ れ、校長は、その学校のニーズにしたがっ てお金を支出する。 ・ 試験制度は、透明に、また説明責任を果た せるものに正される。すなわち、目標達成 のための、試験官の合格等級操作をなく す。採点は等級とともに公表される。学校 は、GCSE、A レヴェルとともに、国際的 に認知された資格を提供することが自由に なる。 ・ 全国カリキュラムをスリム化し、改善する。 教師に、再び、創造的な領域を与える。 ・ 労働党の下で、スポーツは抑えられた。学 校は、子どもが健康な生活のおくりかた、 チームワーク、他人を尊敬することなどを 学ぶ場所である。したがって、すべての子 どもに、放課後 2 時間、親に負担をかけ ずにスポーツに参加する権利を与える。 ・ 学校における給食を改善し、スナック食品 を禁止する。 ・ 子どもに教室外でのリスクに対処すること を教える。 親の教育選択権の保障 親は子どもの最善の利益を知っており、子ど もの教育により最上の学校を選択する権利を与 え、教育の統制を行なえるようにする。 ・ 学校拡大基金に基づいて、60 万人の新し い学校定員を創出する。これにより、5 年 間で、10 万人以上の親が、1 番目の学校 選択を確保できることになる。 ・ 優良な学校は拡大することが認められる。 ・ 親の要求に応じて設立される新しい学校に 支援がなされる。 ・ 親は、費用をかけずに独立学校に子どもを 送ることができるようになる。 ・ 特別の教育ニーズを持った子供たちの教育 について、労働党がインクルージョン政策 の結果、閉鎖してきた特別学校の閉鎖を見 合わせ、親が子どもの最上の利益のために、 普通学校か特別学校か選択できるようし、 またその情報を与える。 継続教育、および高等教育の振興 ・ 継続教育部門の財政支援の方法を単純化 する。学習・技能評議会を見直す。そして、 基金は、その教育機関を選択した学生数に 応じて支給され、カレッジが、予算の管理、 計画、専門化、その他の大きな自由をもっ たスーパー・カレッジになる道を開く。 ・ 大学の授業料を廃止し、労働党政権の入学 規制を廃止し、高等教育での選択の自由を 回復する。 ・ 大学基金は、その大学を選択した学生数に 応じて交付される。また、個々の寄付金を 積み立て、これに政府がマッチングファン ドを与えることにより、大学に大きな財政 的独立を与える。

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以上である。マニフェストでは、さらにスロー ガンとして、「クラスでの規律」、「厳格な基準」、 「親の選択」、「地方の学校へのより多くの投資」、 「大学授業料の廃止」の 5 つが掲げられている。 保守党のマニフェストでは、それまでの文書 に比べて、既述の通り学校規律問題が非常に重 視されている。また、乳幼児、就学前の子ども に対するサービスが新たに加えられている。そ れまでの選挙関係文書ではこの問題はあまり扱 われておらず、多分に選挙を意識したものであ ると思える。逆に、教育水準問題は、必ずしも 前面には出されていない。 (3)自由民主党のマニフェスト 『真の選択枝』と表題が付けられた自由民主 党のマニフェストは、党首ケネディーの緒言の 後、党の基本原則について解説している。すな わちそれは、党の基本原則として、自由と公正 と信頼をあげ、大要次のように説明している。 (9) 自由――政府または社会による不必要な干渉 から自由に、個々人がその生活をコントロール することを自由民主党は信じる。それゆえ、個々 の男女に自らの目的を追求し、その才能を開発 し、成功をする機会を与える社会を創造したい。 公正――病気、身体障害、貧困、環境汚染、 犯罪の恐怖は自由を制約するので、すべての人 が、自らの生活で真の選択をなす際に必要な、 本質的要件を提供することを政府に望む。すな わち、よい教育、寛大な年金、きれいな環境、 効果的な警察、高い質のヘルスケアーなどであ る。 信頼――自由と公正を果たすために、自由民 主党は、国民に政府から説明を受ける権限を与 えることを必要とする。また、イギリスの民主 主義を強化し、また権限を行使する人々に対し て真の民主的な統制を持って多くの権限を中央 政府から地方共同体へわたすことに関わる。 マニフェストはこうした基本原則に続き、影 の大臣フィル・ウイリス(Willis,P.)が、「す べての子どもにとって意欲的であること」とい うタイトルで、教育方針を述べている。以下は その概要である。 「我々の世代がなしうる最高の投資は、次の 世代に高い質の教育を与えることである。何 もこれ以上多くの子どもを自由にするものは ない。もし、我々が順調にことを運べば、どの 子もその潜在可能性を解き放つ機会を与えられ る。我々が失敗するならば、その全ての未来は 危機に陥る。」「校長として、私は保守党や労働 党の政治家が教育を政治的フットボールとして 扱うやり方に全くがっかりした。どの新しい教 育大臣も、カリキュラムを変え、官僚主義を増 大し、教室に介入し、教育はロンドンから細部 にいたるまで管理されるという不利を生じるこ とによって、自らの名を上げざるをえなかった。 だが、誰一人として、学級規模を削減し、近代 的設備を提供し、よい規律を支持し、よく訓練 された教師の労働力を提供するために必要な投 資のために戦う用意があるようには思えなかっ た。」 こうして、ウイリスは、すべての子どもや学 生、青年、成人の才能を極大化するための支援 を行なう政策を掲げるとしている。以下は、教 育と技能という項で示されている自由民主党の マニフェストの概要である。 いかなる授業料も、いかなる追加授業料もなく、 公正な給付金の交付によって全ての学生に可能 になる大学 ・ 有能な学生が借金を背負い、また大学に行 くことを阻害されている。自由民主党は全 ての大学授業料を廃止し、貧困な学生には 生活費の助けになる給付金を支給する。 学級規模の削減と教育サービスの充実 ・ 最高 30 人の学級規模から 20 人平均に学 級規模を減らす。また、ジュニアークラス では、学級規模を 25 人に減らす。 ・ 上記のために、21000 人の教師を補充す る。 ・ 学校を午前 8 時から午後 6 時まで開き、 授業前、放課後のサービスの提供を拡大す る。 ・ 2010 年までに、3500 の児童センターを 完成する。

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適切な資格を持った教師により、国語、数学、 理科、現代語、情報技術などを教えられるよう にすること 学校規律の確保 ・ 児童は安全で、秩序正しい環境で学ぶ必要 があり、高度の行為基準が支持される。 ・ 学級規模の縮小は、規律の問題の解決に資 する。 ・ より持続的な破壊行為については、学校は 親や生徒とともに積極的な行動計画を作成 し、外部からモニターされる。 ・ 必要ならば地方当局の行動支援部が問題に 取り組む。 ・ 他にすべがないときには、校長は地方教育 当局に転校を上申する。 テストの削減と教える時間の確保 ・ イングランドの児童は現在ヨーロッパで最 も試験を受けている。しかし、政府がテス トや目標に熱心であることが、水準を改善 したという証拠はない。 ・ 自由民主党は、教師が教育に多くの時間を 与えられること、またテストが児童の学習 の改善の明らかな目的を持つべきであるこ とを信じる。 ・ 外部試験を減らす。そして、7 歳、11 歳 の強制的テストにかえて、全国規模のサン プルテストを導入する。 ・ 生徒の成績は、教師が規則的に評価し、親 に子どもの進歩に関して正確な情報を提供 する。 特別のニーズをもった子どもの支援 ・ 特別のニーズをもった子どもは、通常は地 方の学校で、また必要な場合は特別学校で そのニーズにふさわしい環境で教育を受け るべきである。 ・ 親の要求はその子どもの教育を決定する際 に考慮される。 ・ 各学校で指定された教師が、こうした子ど ものニーズの確認と計画を立てる責任を 持っているが、こうした子どもとともに働 く教師や教師補助員は適切な訓練を受けて いなければならない。 仕事のための技能 ・ 学校を卒業した青年は、職場で成功する技 能を与えられるべきである。そのために、 GCSE、A レヴェル、職業計画などの資格 を 1 つのディプローマに統一する。 ・ 14 歳以上の学生が職業教育と主要教科教 育の両者を学ぶ機会を与えられるようにす る。 世界クラスの経済のための世界的技能クラス ・ 質の高い技能訓練を与えるのに必要な近代 的で、高い質のカレッジの施設への投資計 画を実施する。 通学への支援 ・ 初等学校では 2 マイル以上、中等学校で は 3 マイル以上の通学距離があるときは、 通学費を保障する。 ・ より近くの学校へ通学する場合は、通学の 安全を保障する。例えば、交通緩和、安全 な歩道、十分な照明、通学を管理する成人 の配置 学校、カレッジ、大学の施設や校地を環境に配 慮したものにする 自由民主党のマニフェストは、とりわけ社会 的公正に重点をおいて提言が行なわれているこ とで特徴がある。 (4)各党のマニフェストの検討 ベーカー(Baker, M.)は、「過去 2 回の選挙 で、労働党は教育に火をつけたように思える。 1997 年において、伝えるべき堅固で、自らに 課した目標を支えに、改革の巨大な意欲的な計 画を持っていた。今回はおそらくは不可避的 に、そのエネルギーは幾分欠けているように思 える」と述べている。(10) 労働党はすでに『5 ヵ年戦略』において、将 来の政策を提示し、それは特別学校や都市アカ デミー、水準の達成等のような既定の政策の多 くを延長する方針を示していた。第 3 期の主 要なテーマとして考えられることは、以上を別 とすれば、親を支配的な位置に置くこと、教育 の個別化を進めること、学校における教育サー ビスを授業時間前また放課後に延長して提供す ること、児童センターのサービスを拡充するこ と、応募者の多い学校の拡大を早めることなど

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であった。 一方保守党は、学校における規律の確保を中 心問題にすえた。そして、これとの関わりで、 校長の権限や学校の自律性の確保、教育水準の 向上を論じた。また、学校、継続教育機関、大 学などへの財政支援について、事実上教育ヴァ ウチャーの考え方に基づく提案を示し、教育選 択の拡大や教育提供者の多様化の方向を示し た。また、試験制度や学校での教育方法につい ては、いわゆる保守党の旧来の主張を繰り返し た。 自由民主党は、学級定員の減少、全国テスト の廃止または見直し、学校視学職の見直し、大 学での授業料の廃止、職業資格と等格一体化し た試験制度 ( いわゆるトムリンソン報告書の提 案 ) などに中心とした提案を示した。それは、 なお総合制学校を支持し、学級規模の縮小、教 育の質の改善、官僚化の弊害の除去などによっ て、その改善を図ろうとしているのである。 3党を大きく見た場合、保守党は、新自由主 義的教育政策を柱にし、新保守主義的な教育政 策、さらには状況対応的な政策をこれに絡めて いる。自由民主党は、社会的公正や福祉、教育 保障に焦点を当て、いわゆる社会民主主義的な 教育政策を前面に出している。これに対して、 労働党はいわばその中間にあり、両者を様々に 取り込んでいる。 ところで、エコノミスト誌は、「国内問題で はまた、どの党も有利に戦える。2大政党の間 に大きな政策上の違いはない。労働党が 1997 年に保守党の考えを取り入れ、またそれに適合 することによって政権につくことができたこと を見ている保守党は、その戦いにおいて労働党 を利するようなことをしている。そして、保守 党の計画は政府の政策と区別することが困難で ある。」として、労働党と保守党の政策に大き な相違のないことを指摘した。(11) また、ベーカーは、「彼らは何を考えている のか」という論の中で、とりわけ労働党と保守 党の教育政策が近く、また労働党が保守党の政 策を取り込んでいることを指摘している。(12) すなわち、「今日我々は、マニフェストゲーム をしようとしています。次の約束をした政党を あてなさい。1、「我々は教会や他の信仰団体、 親のグループ、慈善団体、会社が新しい学校を 設置することを認める。」2、「我々は親に、も しその子の学校がうまく行っていない場合、教 育水準庁による特別の査察を要求する権利を与 える。」そうです、これは 2001 年の保守党の マニフェストです。しかし、それが労働党の約 束であると思った人も間違っているわけではあ りません。最近の労働党のマニフェストが、5 年前の保守党の計画と如何に似ているかを見て みましょう。1、「新しい教育供給者が地方に おいて水準や機会を引き上げるのを支援する場 合は、我々はそれらを歓迎し、公的制度に取り 込むであろう。」2、「教育水準庁は、親の苦 情に応えるため新しい権限を与えられる。そし て、必要な場合に、不適格な管理者を置き換え、 またうまくいかない学校を閉鎖する権限を与え られるであろう。」これらは著しく似ています。 我々はあまり驚くべきではありません。2001 年において保守党の主要なテーマは、親の権 限の保障でした。今回の選挙の間に、教育大臣 ルース・ケリー(Kelly, R.)のマントラはまた、 親の権限でした。」ベーカーはさらにこの論で、 「我々は、ブレアが、我々の考えていることを 考えていたとは考えられない。政府は保守党が 2001 年にさかのぼって考えてきたことを今考 えている。」という保守党党首ハワードの言葉 を引用し、学校規律問題を含め、ブレア政権が、 保守党の政策を盗み取ったことを彼が非難した ことを紹介している。事実、学校規律問題は、 総選挙の期間、またはそれ以後労働党の最重要 課題の一つになった。また、労働党も認める学 校供給主体の多様化、とりわけ私企業部門の参 入の容認は、やがて、保守党が主張するヴァウ チャー計画につながっていく可能性があるとさ れている。労働党はまた、GCSE や A レヴェル、 職業資格をあわせて新しい統一資格試験を提案 したトムリンソン報告書を拒否している。そし て、保守党の主張してきた、A レヴェル試験を 維持する方針をとった。 もちろん、各党の立場に相違点があることも 多い。相違があるとされているのは、例えば、 学校規律確保の方法、学校への入学選抜の可否、 試験基準、試験制度の問題、大学授業料の問題 などである。とりわけ、自由民主党と他の政党

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の間の違いは大きい。しかし、自由民主党の場 合には、財政問題を含め、具体性や現実性に欠 けるという批判もある。こうした点の細部を除 いて、政党間の政策が多くの点で類似性を持っ ていることが指摘できるであろう。 4、労働党政権の教育政策の展開と 2005 年総 選挙マニフェスト 周知のように、2005 年の総選挙では、労働 党が勝利し、以後 5 年間政権を担当すること になった。したがって、今後展開されると考え られる教育政策の基本的方向性を探るために、 労働党のこれまでの教育政策の流れをまとめ、 それとの関わりで 2005 年総選挙のマニフェス トを検討する。 (1)1994 年までの労働党教育政策 さて、労働党は 1979 年から 1997 年まで 野党にあり、政権から離れていた。同党は、 1970 年代末より左傾化を強め、こうした状況 の中で、内紛が生じ、一部が離党し、新党を作っ た。1980 年代に入っても、党内の内紛は終息 せず、次第に左傾化を強めていった。しかし、 1985 年にキノック(Kinock, N.)が党首にな ると党内戦闘的分子をおさえ、党の穏健化をめ ざすことになるが、1990 年代に入って次第に 中道寄りへの方向性が示されることになった。 教育政策についても、大きくこのような動向に 沿っていると考えられるが、ここでは 1979 年 から 1992 年までの総選挙マニフェストを検討 し、さらに 1992 年総選挙敗北後の党内の教育 政策の検討について論じる。 (a)1979 年のマニフェスト:『労働党の道が より良い道である。』(13) 1979 年の総選挙は、党首キャラハンの指導 の下で戦われた。キャラハンは、マニフェスト の緒言で、「我々は、これまで以上に、協力、 社会的公正、公平という労働党の伝統的価値を 必要としている。このマニフェストは将来への 強い意識を持った行動計画において、これら労 働党の原則を再宣言する」と述べ、不平等、貧 困、凝り固まった悪を克服し、イギリスを真に ひとつの国民にするとしている。 教育については、以下の点が重要である。 ・ 労働党は機会の平等を信じる。普遍的な総 合制の教育は 1980 年代に完成させる。 ・ 独立学校は、機会の平等に障害となり、そ れへの種々の公的支援をやめる。 ・ 5 歳児以下の保育学級や保育教育を拡充整 備する。 ・ 学級規模を縮小する努力を続ける。 ・ 16 歳以上の生徒、青年、また学生のため に、適切な教育や訓練の機会を整備、拡充 し、とりわけ低所得層、労働者階級出身の 人々に、教育が受けられように財政支援を 行なう。   (b)1983 年のマニフェスト:『イギリスの新 しい希望』(14) 1983 年の総選挙は、党首フット(Foot, M.) の指導の下で戦われた。マニフェストでは、経 済、失業、労働問題が中心になっている。それ は行動のための緊急計画をリストアップしてい るが、その中に、より公正なイギリスをつくる ことがあげられ、教育問題については、より多 くの教育への投資、国庫補助席計画の中止、中 等学校における選抜の中止をあげている。 教育については以下の点が重要である。 ・ 5 歳以下の子どものために、教育サービス とケアーを統合した包括的なサービスを提 供する。その際不利な条件にある地域の子 どもたちに優先を与える。また、希望する 全ての親のために、保育教育を改善する。 ・ 初等学校では、学級規模を減じる他、学習 教材や施設を改善する。 ・ 中等教育において、総合制学校を実質化す るために、 11 歳試験を完全に廃止する 広範で、バランスの取れた、また種々 の人々に真の機会の平等を保障するよう な総合的なカリキュラムを維持する 学校の努力を推進し、正確に成績を記 録するための 16 歳の生徒のための共通 の評価制度を確立する ・私立学校は公正な教育制度にとって妨害と

参照

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