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胸腔内食道胃吻合による食道癌手術の一治験例

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〔臨.床 実 験〕

(東京女子医大・第22巻第3号頁 120−123 日召和27年9月)

胸腔内需道胃吻合によろ食道癌手術の

一治験例

織 オリ 東京女子医科大学外科学敏室 (転任 嶺原仔敏授)

畑秀夫 中山耕作

ハタ ヒデ ヲ 旨カ ヤマ コヲ サク (受付 昭和27年2月11白⊃ 胸部食道癌の切除手術は従来非常に困難でその成功 ・例は少かったが,最近我教室で胸膣内吻合により,食 道下部癌切除手術を行い1成功例を見たので此処に報 告する。 症 .例 (患者)55歳,6。食後の嘔吐を主訴として昨年11 月当科外来を訪れた。 (家族歴)父親,胃癌で死亡。 (既往歴)生来熱いものが好きであった。:叉非常に

酒禍で讃噸ぬ夢呑んt2’・

(現病歴)一ケ月半程前より食事をすると胸が つかえる様に感じ,少し休んでから叉食事すると 云う様に少量宛取る様になつすご。「当時は嘔吐も胸 やけも痙痛もなかつt二。更に半月経つと食事出来 る量が次第に減り,最近は少量の食事も食後直ぐ 嘔吐する様になり,此の際幾分吐気はあるが疹痛 はなく,吐物は食べたまSのものがそっくり出て きた。胃液や」血液を混ぜすb自然にあふれ出る様 に吐いアニ〇 五,六日前からは水も殆んど通らなくなつf:の で,某内科医を訪れ,胃癌の疑で直に当科に紹介 され,入院しナこ。’ (現症)患者は全身憔埣強く,皮膚は乾燥し, 体車47kg。口臭強く,舌は高度の白苔を被る。全 身に浮腫を証明せす。腹部は陥没し,圧痛,腫瘤 を認めす。 血液所見。血色素ザーり一一 99%,赤血球数326 万,白血球数8506,血沈62/1時間,全血比重56.5 血漿比重28,血液:像変化なし。.血圧130∼70。i糞 便の潜血反応(一),その他,検尿,検便,肝臓機 能に変化なし。バリウム造影剤による,レントゲ ン透視で図(1)の如く,横隔膜食道三口より上 :旧約6∼8cmの所に高度の固定した狭窄を証明し 噴門部に線状のバリウム流入像が見られる程度で あっナこ(図1)。

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‘1ヒ:二, .:二≡ ・つ一 第 1 図 ロ側には食道の拡張像が見られ,食道癌と診断 した。 術前の準備として,手術前日迄八日間,毎日輸 血.200・)400cc, リンゲル 1000cc, 5%葡萄糖 1000bcを皮下に与えた。此の間,尿量は1000cc一 前後であった。 以上の結果,全身状態の回復を見,皮膚の光沢 緊張良好となる。 手術の3日前より左胸腔に人工気胸を行い陽圧: とした。 街手術前日からストレプトマ4シン1日b.5g

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一121一 8日間,ペニシリン60万単位7日闇の投与を始 め7こ。 手術は十一月二十七日 ナルスコの基礎麻酔, 閉鎖循環式高圧気管内麻酔によb,織畑助教授執 刀の下に三つナ:。 左第八肋骨に沿う約40cmの弓状皮膚切開を施 し,第八肋骨を前方は肋軟骨との境から,約20cm 切除,第六,第七肋骨を後腋窩線にて切断し,開 胸器で開くと図の如く,巾14∼ユ5cmの手術野と なる(図2)(図3)。 左肺は完全に収縮して居り,肺靱帯を鈍性に剥 離した所,大動脈が非常に太く,縦隔はその蔭に なって居た。次で縦隔を切開,食道を鈍性に剥離 腫瘍は噴門部より約2cm.E方で,長さ約3cm, 追約2CMのもので周囲との癒着もなく容易に挙 上出来アこ(図4)。 横隔膜に前方より食道裂口に達する切開を施し 出血部は結紮止血し,次に胃を引出し,左胃動脈 左胃網膜動脈を切断。血管蹄係を保存。脾動脈も 保存した。

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第 3 図 第 4 図 噴門部を切断縫合。胃頂部を食道に吻合したが 食道側の切断部の壁に浸潤があったので,更に上 方を切断,吻合し直しf二。従って全身状態悪化し 手術は伸々困難であっ7こ。吻合は内側一一暦,外側 二三に縫合した。胃を縦隔肋膜に縫着,更に横隔 ,膜を縫合して,ネラトン誘導管を胸腔に挿入し, 最後に肺を拡張させて閉胸し,手術を終つナこ。 (図5)(図6)(図7) 使用時間3時間50分,エーテル使用量60cc,出 血量1200cc,術中輸」血1200cc,輸液2000cco 四時間後,意識回復し,24時間後,ネラトン誘 導管より持続吸引を行い,400ccの血性滲出液を 得た。その後,誘導管からぺ=シリン5万単位, ストレプトマイシン0.59を注入した。術後毎日 輸血.300cc,輸液3000cc,ポリタミン300ccを十 二日間行った。 術後三日目に誘導管を除去し,七日目に抜糸し

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第 7 図 強制したわけではなかったが,患者自身手術後 10日間,唾一滴も春込まなかつtこ』 十二月七日,即ち術後10日目,初めて経口的 に水を与えた(図8)。 術後13日目から再び39∼37。Cの弛張熱を 見t:が,胸腔穿刺を行っても滲出液を証明せす, 白血球増多,核の左方移動見られす,全身状態も 良好であっt:が,肺炎の合併が考えられるので, 大量のペニシリンを投与,経過を観察しt;所,10 日間の後,換散的に解熱し†こ。 その後,頗る元気で十二月二十八日全治退院し た(図9)(図10)o 切除標本は10図の如く長さ約3cm,巾約2cm の全周に亘る腫瘍であって,組織標本では扁平上 皮癌で周囲には慢性炎症像の方が強く出ている。

考按並びに総括

第 6 図 7:。その七日目の朝,39。Cの発熱を見,早速胸 腔穿刺を行い,約100ccの透明な滲出液を得ナこの みで,午後には平熱となった。 嘗っては胸部食道癌の胸腔内切除吻合術は困難 であって,余り行われす,多くは胃痩造設術,腸 痩造設術等の姑息的手術によって栄養を与え,若 干生命を保つナニ程度で,時に積極的に食道癌切除

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一 124 一 を行った場合,殆んど凡ての例に於て,シヨジク や出血1;より,叉縫合不出,膿胸,肺炎等で死亡 していアこ。 即ち,胸腔内食道切除例は,V, Hacker及び Lotheisen二一の統計によると,1924年迄に世界 の三献中,僅かに82例の報告例しかなく,しか もその内僅かにTorekの1例のみが根治し10年 余り生存し.たのみで,術後11∼35日間生存した もの4例で,後は凡て死亡している。 最近,米国に於ては非営に盛に胸腔内手術が行 われて居り,特にR・H・Swe¢tは1948年1こは中 部食道癌27例もの手術を行って居る。之は死亡 17例,約24%の死亡率である。食道下部並に噴 門癌で手術されナこのは109例, 中死亡13例で 12.5%という成績であ、る。 日本では最近迄,非常に報告例少く,最初に成 功し九のは昭和3年京大の大沢教授で,左側二丁 開胸洞横隔膜開腹術の下に,食道癌胃内套陥法を 行っている。 街,その後面7例の套陥法の報告がある。胸腔 内吻合術では先に述べナこ急な困難さが存する為に 昭和22年,千葉の中山教授が腹腔術式により, 又25年にぽ胸腔前皮下人工食道造設術を行いジ 相当例を治癒させて居る。 昨年は中山教授,東北の一続撰,日赤の幕内二 等は胸腔内切除吻合術を行い,若干の成功例を拳 げているQ 最近の世界の趨勢がそうである様に,食道は胸 腔内で吻合するのが最も生理的であり,且又,腹 腔術式の場合の如き,種々の条件に制約されるこ となく,開胸によれば胸腔内食道の如何なる部の 手術も高度の癒着のない限り可能で、ある。 今迄食道切除胸腔内吻合・が余り行われなかつ 九理由は,ショック,及び膿胸等を起して死亡率 が高かった為で,之が最近,輪血.や抗生物質の発 達,麻酔の進歩によって解消され,非常に安全に 手術が出来る様になつナこ。 従って現在では手術成功の鍵は一にか∼つて, 如何に早期に食道癌を発見するか否かに存して居 る。 本症例は,幸い非常に早期であり,周囲との癒 着もなく祓功しす二ものである。 参 考 文 献・ 工) 三宅遠:日本タト科学会雑,志 第26回, 第3号. 2) 大沢達:日本外科学会雑誌 第31回,臨三号. 3)副肝・日本外科学会雑誌第33回,4号,600. 4) 長町誠一:東京医事野臥 3007号,3266.

s) Jokn H. Gibbon Tr. Frank F. A]lbsitten. Tr. and. John Y・:Journal of the A. M.

A. Vol. 6. No 9. July 15. 195

6) V.Von Hacker u G. Lotheisen:Neue deu−

tsche Chirurgie. Bd. 34,

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参照

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