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携帯電話利用における結婚効果についで1

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愛知淑徳大学論集 一コミュニケーション学部篇一 第5号 2005 61−76

携帯電話利用における結婚効果についで1

新美明夫※2・松尾貴司※2・永田忠夫※3

 電気通信事業者協会(2004)の集計によると,2004年9月末の時点での携帯電話の契約数は8383万6600 台,PHSの契約数が480万7500台,合計8864万4100台に達している.総務省統計局によると2004年5月1

日現在の日本の総人口は1億2756万人なので,総人口の69.5%が携帯電話をもっていることになる.

2000年3月に固定電話加入数を追い越した携帯電話は,「いまや固定電話に代わる個人間のコミュニ ケーション手段として,日常生活で欠かせない『パーソナル・メディア』の一つとなっ(三上,2004)」

たと言えるだろう.

 このように国民の3人に2人以上が利用するようになった携帯電話であるが,その利用状況について はかなりの年齢差や性差があることが報告されている(三上ら,2001;毎日新聞社,2002;野村総合研 究所,2003;三上,2004).そこでは,一般に若年層における携帯電話利用がとくに頻繁であることが報 告されてきており,この年齢層に注目した利用状況の報告も多い(田中,2001;中村,2002).松田

(2001,2002)は,この携帯電話利用に見られる年齢差について,若年層に特徴的な「番通選択」行動 に注目して議論している.番通選択は「電話がかかってきた時に,端末画面にあらわれる発信者番号表 示を見てから,電話に答えるかどうかを決める行為(松田,2001)」である.若年層ほど携帯電話の・番号 を誰にでも教え,その結果電話番号を大量に登録することから番通選択が必要となるのに対し,30代以 降,とくに4,50代では携帯電話をもっていても,まず人に知らせるのは,自宅の電話であり,固定電話 の延長線上で携帯電話を利用するので,「番通選択」のような新しい使い方は採用されない,と松田

(2001)は述べている.さらに松田(2001)は,ライフステージの違いにも注目し,結婚による社会的 な役割の変化によって電話利用の性差を説明している.すなわち,独身者にとっての携帯電話は,「友 人・知人中心」の彼らのパーソナルネットワークを反映した「パーソナルフォン(個人専用電話)」であ

り,携帯電話で連絡を取る相手も多く,番通選択で相手を選別する.これに対して既婚者は,「事前に選 んだ相手」とのみ固定電話の使えない状況で携帯電話を利用する「モバイルフォン(移動電話)」である.

ただし,「事前に選んだ相手」には性差があり,男性が家族以外は仕事関係に偏っているのに対し,女性 は仕事関係以外の友人・知人と家族が中心であることを指摘し,「モバイルフォン」を既婚男性の特徴と し,既婚女性にとっての携帯電話を「プライベートフォン(私的電話)」と名づけ,家庭の用事や親族や 家族ぐるみのつきあいの維持など,以前には家庭の固定電話を通じて行われていた「家事」が現在では 携帯電話によって行われていると捉えている.

※1 本研究は,平成14年度・15年度愛知淑徳大学研究助成(共同研究)をうけた。

※2 コミュニケーション心理学科

※3 医療福祉学部福祉貢献学科

(2)

 番通選択行動をキーとして,電話番号の登録数や,連絡相手の種類などから結婚効果によって性差を 説明するこの松田(2001)の論理展開は魅力的である.しかし,この主張の根拠となったなった調査は,

20歳〜59歳までの年齢層を対象としたものであり,結婚効果の検討の際には,既婚率が50%を越える前 後の年齢層である,20代後半から30代前半のサンプルに限って議論がなされている.そこでのサンプル 数は,独身男性:18,既婚男性:27,独身女性:22,既婚女性:27であり,松田(2001)自身が指摘す るように「本来数量的な扱いをするには適当ではない」大きさである.サンプル数の少なさにも問題は 残るが,さらに,この調査の行われた2000年1月時点での20代後半から30代前半の年齢層は,携帯電話 の先駆であるポケットベル(以下,ポケベルと表記)を高校・大学時代にほとんど経験していない世代 にあたる.新美ら(2003)は,ポケベルの利用経験・利用時期によって世代区分を行い,現在の友人関 係におけるメディア利用の形態に世代差が見られることを示している.携帯電話利用におけるライフス テージの移行の影響(結婚効果)に注目するのは慧眼ではあるものの,ポケベルの急速な普及と衰退,

それと表裏をなす携帯電話の急速な普及がわずか数年で進行したことを考えると,対象者の年齢が数年 違うだけで,調査結果が大きく異なる可能性がある.独身者と既婚者が拮抗する年代を取り上げるとし ても,分析から「年齢」要因を除くべきではなかろう.

 前報(新美ら,2003)で行った質問紙調査の対象者に対して,今回追跡調査を改めて行うことができ た.女性に限られるものの,今回の調査における調査対象者の調査時点における年齢は,ほぼ松田

(2001)が分析対象とした20代後半から30代前半に重なる.調査自体の主要な目的は別の所にあるもの の,松田(2001)の分析と比較しうるだけのデータを入手することができた.本報では,携帯電話利用 における結婚効果に注目しつつも,同時に年齢効果をも考慮に入れながら検討を行うことを目的とする.

1.調査票の構成

 調査票は6部構成とした.第1部では,現在の氏名・住所・メールアドレス・職業・家族・同居形態 を尋ねた.第2部では,調査時点の前年に開設された同窓会サイトの利用状況・希望,インターネット 利用環境について尋ねた.第3部は短大時代の友人との交流について,第4部では母娘関係について尋 ねた.第5部では携帯電話と日常生活について尋ねた.第6部では有子の者に限って,子育てにおける 携帯電話利用について尋ねた.本報に直接関係する調査内容は第1部と第5部である.

2.調査対象と手続き

 愛知淑徳短期大学コミュニケーション学科の全卒業生(1期生〜13期生,2054名)のうち,前回の調 査(新美ら,2003)で宛先不明で返送された者を除き,1917名を対象に,郵送法で実施した.2003年9 月12日に調査票を発送,約1か月後の10月15日,未回収者宛に督促ハガキを送達した.回収は2004年2 月下旬まで行われた.最終的な有効回収数は887票,回収率は46.3%であった.

 表1に期生別の回収状況を示したが,もっとも回収率の低い期生でも1/3は越えており,郵送法の 調査としては,一応満遍なくサンプルが得られたと考えてよかろう.なお,対象者はすべて女性であり,

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携帯電話利用における結婚効果について(新美明夫・松尾貴司・永田忠夫)

調査時点で短大卒業後約2年半から14年半になる.

 調査は卒業生の所在確認も兼ねているため,調査票には通し番号を記入し,現在の氏名・住所の記入 を求める記名方式で行った.表2に期生別の主な属性の内訳を示した.

表1 調査対象者の期生別回収状況 表2 調査対象者の期生別属性の内訳 期生(入学年度) 送付数 回収数 回収率 期生(入学年度) 有職率 既婚率 有子率

1期生(1987)

2期生(1988)

3期生(1989)

4期生(1990)

5期生(lgg1)

6期生(1992)

7期生(1993)

8期生(1994)

9期生(1995)

10期生(1996)

11期生(1997)

12期生(1998)

13期生(1999)

∵努㌫㌶鴛㍑㍑

力ω餌路M卯貌衿引妬祁 56.2%

62.6%

62.1%

515%

50.7%

41.5%

43.1%

45.5%

44.8%

41.9%

36.7%

34.6%

39.0%

1期生(1987)

2期生(1988)

3期生(1989)

4期生(1990)

5期生(lggl)

6期生(1992)

7期生(1993)

8期生(1994)

9期生(1995)

10期生(1996)

11期生(1997)

12期生(1998)

13期生(1999)

42.6%   85.3%   69.1%

45.8%   86.1%   69.0%

39.0%   83.1%   74.1%

53.6%   75.0%   60.9%

40.4%   85.6%   68.0%

54.5%   76.1%   46.6%

58.3%   69.0%   34.9%

67.0%   54.2%   29.2%

769%   36.0%   14.0%

79.6%   33.3%   10.2%

90.2%   15.7%    7.8%

78.3%   11.1%    2.2%

91.7%    6.3%   4.2%

合 計 1918 887    46.2% 全 体 59.9%   60.8%   41.8%

3.分析方法

 携帯電話の利用状況を検討するため,分析は携帯電話所有者のみを対象とした.今回は結婚効果とと もに年齢効果も検討するが,その年齢区分は,ポケベルの利用時期に基づく表3のような世代区分(新 美ら,2003)によるものとする.ただし,世代名称は前報(新美ら,2003)のものではわかりにくいの

表3 対象者の年齢区分の名称と携帯電話所有率 期生区分 前報での

世代名称 世代の説明 携帯電話

所有率

本報での名称 o内は年齢*

1期生〜4期生 5期生〜6期生 7期生〜10期生 11期生〜13期生

未経験世代 卒業後世代 短大世代 高校世代

ポケベル未経験

短大卒業後にポケベルを経験 短大時代にポケベルを経験 高校時代にポケベルを経験

89.9%

95.8%

97.2%

993%

1群(32−35)

n群(30 31)

皿群(26−29)

IV群(23−25)

*現役で短大に入学した者の2004年3月末時点での年齢

で,今回は年長の者から「1群」〜「IV群」の通し番号とし,

調査年度の最終日(2004年3月末)時点での現役で短大に入 学した者の年齢を併記することとした.表3に新旧の名称と 携帯電話の所有率を示した.調査対象者全体での携帯電話所 有率は95.0%であった.

 本報では,結婚効果と年齢効果を同時に検討するために,

表4 分析対象者の年齢区分と      配偶者の有無のクロス表

配偶者あり 配偶者なし

(既婚女性) (独身女性)

1群(32−35)

n群(30−31)

田群(26−29)

IV群(23−25)

193(80.4%)

148(80.4%)

138(51」%)

16(11.2%)

47(19.6%)

36(19.6%)

132(48.9%)

127(88.8%)

(4)

従属変数となる携帯電話の利用状況の測度が質的データの場合には,対数線型モデルによる分析を行っ た.分析の対象となった者は,携帯電話利用者843名のうち,配偶者の有無に関して有効な回答をした

837名である.表4に分析対象とした者について,配偶者の有無と年齢区分とでクロス集計した結果を 示した.対数線型モデルによる分析はSPSSを用い,モデル選択にはHILOGLINEAR,標準効果の有意 性判定にはLOGLINEARの各プロシジャを利用した.

      結  果

1.携帯電話利用の現状

 今回の調査対象者の,基本的な 携帯電話利用の現状について,図 1に示した.さらに図1に示した 通話の発信・受信回数,携帯メー ルの発信・受信回数のそれぞれに ついて,年齢区分と配偶者の有無 を独立変数として二元配置の分散 分析を行った結果を表5に示した.

 携帯電話を使った通話回数につ いて,発信では0.1%水準で,受信 では10%水準で,結婚効果が見ら れた.交互作用は見られなかった.

いずれも独身女性の方が既婚女性 よりも利用回数が多く,受発信と も,既婚女性が1回強なのに対し,

独身女性は2回弱であった.

 携帯メールの利用回数について は,受発信とも有意な結婚効果が 見られた.発信ではさらに年齢効

一●一既婚女性 …書・ 独身女性

 回/日       回/日

2       2

1

0

8 6 4 2 0

1………シ㌫逼一

1群︵ωN−ω9

通話発信回数

回/日

n群︵ωO−ω一︶ 皿群︵NΦ−袖Φ︶ 群︵Nω心9

1群︵ωN−ωO︶

1

1

0

8 6 4 2

        .。。一一一

一●二二∴」 ニニニ

1群︵ωN−ω9

通話受信回数

回/日

ロ群︵ωPω↓︶ 皿群︵N?NΦ︶ 群︵Nω心9

0 1群︵ωドωO︶ H群︵ωPωご 皿群⌒NΦ心9 W群⌒Nω㎏凹

 ロ群︵Nω㎏O︶

 皿群⌒8−N⑩︶

 ロ群︵ωPωご

果も見られた.受発信とも,独身女性の方が既婚女性よりも利用回数が多かった.発信ではさらに,IV 群が,他の群に比べ,より利用回数が多かった.

       表5 携帯電話利用の現状についての二元配置分散分析結果の概要(F値)

変動因 年齢区分 配偶者の有無 交互作用

従属変数 (df』3) (dH) (df』3)

通話発信回数 0.288n.s. 11360*** 0.895n.s.

通話受信回数 0.999n.s. 6.689† 1.061n.s.

携帯メール発信回数 2.646* 17210*** 1.946n.s.

携帯メール受信回数 1.713n.s. 17.464*** 1.691n.s.

† p<.10,*p<.05 ,*** p<.001

(5)

携帯電話利用における結婚効果について(新美明夫・松尾貴司・永田忠夫)

2.プライベートな場面で,初対面の人に教える連絡先

 番通選択の前提となるのは,初対面であっても気楽に携帯電話の番号を交換しあう習慣である.プラ イベートな場面で,初対面の人に教える連絡先をすべて選択してもらい,教える比率の高いものから3 位までを表6に示した.松田(2001)のデータも参考のためあわせて示した.連絡先としてあげたのは,

自宅の電話番号(自宅電話),会社(職場)の電話番号(会社電話),携帯・PHSの電話番号(携帯電話),

携帯メールのアドレス(携帯メール)・パソコンEメールのアドレス(Eメール),自宅の住所その他,

とくになしである.松田(2001)の調査では,携帯メールのアドレスがなく,自宅および会社のファッ クス番号,ポケットベルの呼び出し番号が選択肢として入っている.

表6 プライベートな場面で,初対面の人に教える連絡先(第3位まで)

第1位 第2位 第3位

独身女性(今回)

1群(32−35) 携帯電話 (70.2) 携帯メール(447) 自宅電話 (17.0)

n群(30−31) 携帯電話 (72.2) 携帯メール(50.0) Eメール (16.7)

m群(26−29) 携帯メール (69.7) 携帯電話 (659) Eメール (9.8)

IV群(23−25) 携帯電話 (81.7) 携帯メール(64.3) 自宅電話 (7.9)

既婚女性(今回)

1群(32−35) 自宅電話 (53.4) 携帯電話 (503) 携帯メール (31.6)

H群(30−31) 携帯電話 (56.1) 携帯メール(50.7) 自宅電話 (36.7)

皿群(26−29) 携帯電話 (65.9) 携帯メール(47.1) 自宅電話 (21.7)

IV群(23−25) 携帯電話 (68.8) 携帯メール(37.5) 自宅電話 (25.0)

松田(2001)のデータ

独身女性 携帯電話 (40.9) 自宅電話 (36.4) 会社電話 ・とくにない (18.2)

既婚女性 携帯電話 (48.1) 自宅電話 (4α4) 会社電話 (22.2)

 ここからわかることは,松田(2001)の調査時点(2000年1月)でも第1位であった携帯電話の連絡 先としての開示比率がさらに高まったことである.さらに今回新たに選択肢としてあげた携帯メールの 開示比率も既・未婚を問わず,ほとんどの群で携帯電話に次いで高く,自宅電話・Eメールを除くと,

そのほかの連絡先はあまり利用されていない.松田(2001)の結果では,携帯電話や自宅電話を教える 比率は独身女性よりも既婚女性の方が高かったが,今回の結果では携帯電話に関しては独身女性の方が,

開示比率がかなり高くなっている.

 それぞれの連絡先について,年齢区分,配偶者の有無,開示の有無の3重クロス表を作成し,対数線 型モデル分析により,年齢効果,結婚効果を検討した.表7にG2(尤度比X2統計量)を利用したモデ ル選択の結果を,開示比率の高かった自宅電話・携帯電話・携帯メールについて示した.検討したモデ ルの表記は,松田(1988)にしたがって,各変数の最高次の効果項だけを示す簡易表記としている.い ずれの連絡先の開示についても,年齢効果,結婚効果が見られ,両効果の交互作用は見られなかった.

 年齢効果,結婚効果の具体的様相を検討するため,図3に年齢区分別・配偶者の有無別の連絡先の開 示比率を示した.引き続き,採択したモデルの各効果項について標準効果を算出し,効果の有意性を検 討した.その結果,自宅電話では既婚女性の開示比率が高く,携帯電話・携帯メールでは独身女性の開

(6)

表7 対数線型モデル分析によるモデル選択結果 連絡先の開示 変数C G2(尤度比X2統計量)有意でないモデルのみ

[AB】[AC】[Bq   [AB】[AC】 [AB】【BC】 [AB】[C]

採用されたモデル

自宅電話 携帯電話 携帯メール

 0.509

(df=3,p=917)

 4.992

(df」3,p=.172)

 5.430

(df=3,p;.143)

【AB】[AC][BC]

[AB][AC】[BC】

[AB】[AC][BC]

変数A 年齢区分  変数B:配偶者の有無 示比率が有意に高いという結婚効果があることがわかった.次に年齢効果では,自宅電話においては,

最年長の1群が,携帯電話では最年少のIV群,携帯メールでは皿群の開示比率が有意に高かった.開示 比率が有意に低かったのは自宅電話では皿群,携帯電話・携帯メールでは1群であった.

一●一既婚女性 ・ ■卜・・独身女性

  (%)       (%)      (%)

100      100       100

80      80      80

60      60      60

40      40      40

2:蹴+−r12:   2:

   1   皿   皿   N         I   皿   皿    w「        1

   貰葵壁壁  群群群群 

   8  8 声 ilg    軍  8 寧  隅    ll;    旦  ε  墨  旦     8  巴  18 N    8

       図3 年齢区分別・配偶者の有無別の連絡先の開示比率

ロ群︵Nω㎏O︶

皿群⌒8㎏Φ︶

皿群︵ωPωご

3.電話帳(メモリダイヤル)登録数と話す相手の数

 携帯電話の電話帳(メモリダイヤル)機能は,番通選択を成立させるのに重要な要素である.携帯電 話には当初からあった発信者番号通知機能によって,着信時,携帯電話には発信者の番号が表示される.

番号だけから相手が誰かを判断するのは難しいが,その番号が登録されていれば,その番号の持ち主の 氏名が表示される機能をほとんどの携帯電話がもっている.電話をかけてきた相手が誰かを確認して電 話に出る,出ないを選択する.あるいは,氏名が表示されずに電話番号だけが表示されている(したがっ て自分の電話帳には登録されていない)ので,電話に出ない,などの行動は,携帯電話のこの電話帳機 能が可能にしている.松田(2001)は,若年層ほど携帯電話の番号を交換する傾向があり,したがって 多くの人からかかってくるので,今自分が接触を望む相手を選ぶため「番通選択」が必要となることを,

電話帳への登録数が多いこと,それに比して,普段携帯電話で連絡を取り合う相手の数が少ないことで 説明しようとしている.今回の調査でのこれらの結果を図4に示した.電話帳への登録数,連絡を取り 合う相手の数は,極端に多い者が少数存在するので,図4では中央値で図示してある.

(7)

携帯電話利用における結婚効果について(新美明夫・松尾貴司・永田忠夫)

独身女性(今回)

    1群(32−35)

■電話帳(メモリダイヤル)への登録数

£違普段携帯電話で連絡を取る相手の数

    lll群(26・29)

    IV群(23−25)

既婚女性(今回)

     1群(32−35)

     H群(30−31)

    lN群(26・29)

    IV群(23−25)

松田(2001)のデータ       独身女性       既婚女性

      0   10  20   30  40  50   60   70   80

       (人)

図4 年齢区分別・配偶者の有無別の電話帳への登録数と連絡を取り合う相手の数 ロ≡きンぎ≡2峯≡ヨi

ロw噤g≡ i :

鋤㌧湊ンと=㌧≡         i

已二{∫i働z≦≦i工鋤i      :      i

@      :

@       …

d泌鍵巡ゴ㌶≡コ       ⑨

̀、, ,∵,㌧、,、,、,、, ,㌧、,、,㌧、,

@      :

♂♂w巳! ㍑弱≦!召己i

i      i

@      …        …

?R土乙:   :      i

 この図から,松田(2001)のデータと比べて,全体として電話帳への登録数も,連絡を取る相手の数 もはるかに多くなっていることがわかる.両者について,年齢区分と配偶者の有無を独立変数として二 元配置の分散分析を行った結果を表8,9に示した.その結果,電話帳への登録数では,年齢区分の効 果は見られず,配偶者の有無のみに効果が見られ,独身女性の方が既婚女性よりも登録数が多いことが わかった.普段携帯電話で連絡を取り合う相手の数では,年齢効果も結婚効果も見られなかった.

表8 電話帳(メモリダイヤル)への    登録数の二元配置分散分析結果の概要

表9 普段携帯電話で連絡を取り合う相手の     数の二元配置分散分析結果の概要

要因 自由度 F値 有意性 要因 自由度 F値 有意性

  年齢区分 配偶者の有無   交互作用    誤差

 3  1  3 767

1.395 22.722

L907

n.S.

***

n.S.

  年齢区分 配偶者の有無   交互作用    誤差

 3  1  3 768

0596

0.005

L509

n.S.

n.S.

n.S.

*** o<.001

4.番通選択の現状

 「携帯電話やPHSに電話がかかってきた時,あなたは発信者がわかった上で,電話に出ないことがあ りますか」という問に対する実行頻度の回答比率を示したのが図5である.松田(2001)のデータも併 記した(「よくある」と「時々ある」が合算されている).今回の結果も松田(2001)のデータも,結婚 効果が明確に見られ,独身女性の番通選択の頻度が高い.

(8)

 ■よくある■時々ある

独身女性(今回)

    1群(32・35)

    ll群(30−31)

    lti ev《26・29)

    lV群《23●25》

既婚女性(今回)

    1群《32.35)

    tt群(30・31)

    ltl群《tts−29》

    lV群《23●25)

松田{200t)のデータ      独身女性      既繕女性

閣たまにある圏  ない

   0%  10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 9096100%

図5 年齢区分別・配偶者の有無別の番通選択実行状況

 対数線型モデル分析の結果を表10に示した.採用されたモデルにより,年齢効果,結婚効果いずれも 見られることがわかった.両要因の交互作用は見られなかった.標準効果の有意性判定の結果,年齢効 果では,時々番通選択を行う者の比率が皿群で多く,1群で少ないこと,番通選択を行わない者が1群 で多く皿群で少ないことがわかった.結婚効果では,独身女性では時々番通選択をする者の比率が多く,

既婚女性では番通選択をしない者の比率が多いことがわかった.

      表10 対数線型モデル分析によるモデル選択結果:番通選択 変数C G2(尤度比X2統計量):有意でないモデルのみ表示

IAB】【Aq【BC】  [AB】【Aq [AB】[BC】 [AB】【q 採用されたモデル  番通選択

発信者不明時  応答拒否

 13.861

(dfL9,P=.13)

 4.229

(diY9,P=.CO)  19.713

(dfL 18,P=.349)

[AB】[AC】[BC】

 [AB胆C】

変数A:年齢区分  変数B:配偶者の有無  番通選択は,着信時に発信者がわかっている場合に,応答するかしないかを選択する行動である.本 調査では参考までに,着信時に発信者が不明な場合(すなわち電話帳に登録されていない場合),応答を 拒否することがあるかを尋ねた.その結果を図6に,対数線型モデルによる分析結果を,番通選択の分

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携帯電話利用における結婚効果について噺美明夫・松尾貴司・永田忠知

■よくある

独身女性(今回)

    1群(32−35)

■時々ある 騒たまにある

H群(3a31)

lll群(26−29)

IV群(23−25)

既婚女性(今回)

1群(32−35)

il群(30−31)

m群(26−29)

IV群(23−25)

ない

     0% tO%20%30%40%50%60%70%80%900/.100%

図6 年齢区分別・配偶者の有無別の発信者不明時応答拒否実行状況

析結果と併記して表10に示した.

 番通選択の実行状況と比較すると,「よくある」「時々ある」の比率が明らかに増えており,年齢区分 間の差が少なくなっていた.対数線型モデルの分析結果では年齢効果は見られず,結婚効果のみが有効 であった.標準効果の有意性判定の結果,「よくある」「時々ある」者の比率が,独身女性では既婚女性 よりも有意に多いことがわかった.

 次に,番通選択の実行者および,発信者不明時の応答拒否実行者に対して,応答拒否をした際に後ろ めたい気持ちを感じるかを尋ねた.その結果を図7,8に示した.対数線型モデルによる分析結果ではい ずれも年齢効果・結婚効果とも見られなかったが,発信者が明確な場合と,不明な場合での応答拒否に 対する後ろめたさの反応分布は大きく異なる.発信者が明確な場合,すなわち番通選択時には,応答拒 否をすることにほとんどの対象者が多少の後ろめたさを感じるが,発信者が不明な場合には,全体で7 割程度の者が後ろめたい気持ちを感じないことがわかった.

5.携帯電話で連絡を取る人

 松田(2001)はパーソナルネットワークが携帯電話の利用を規定するとして,携帯電話で連絡を取る 人を複数回答で選択させ,既婚者には家族が,男性(とくに既婚男性)には職場・仕事関係が多く選ば れる,と報告している(表11参照).

(10)

独身女性(今回)

    1群(32−35)

    Ij群(30−31)

    川群(2529)

    IV群(23−25)

既婚女性(今回)

    1群(32−35)

    Il群(30−31)

    川群(26−29)

    IV群(23−25)

■後ろめたい■少しする 「] しない

  気持ちがする

        0%  10% 20% 30%40% 50% 60% 70%80%90%100%

   図7 番通選択(発信者明確時の応答拒否)実行時の後ろめたさ

      ■後ろめたい■少しする [三i しない 独身女性(今回)   気持ちがする

    1群(32−35)

   H群(30・31)

   Ill群(26・29)

   lV群(23−25)

既婚女性(今回)

    1群(32−35)

   ll群(30−34)

   lll群(26−29)

   IV群(23−25)

   O%  tO% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%tOO%

図8 発信者不明時の応答拒否実行時の後ろめたさ

(11)

携帯電話利用における結婚効果について(新美明夫・松尾貴司・永田忠夫)

表11 携帯電話で連絡を取る相手(複数回答)

独身男性  既婚男性  独身女性  既婚女性 家族

彼氏・彼女 職場の人 仕事関係の人 その他の友人・知人

61.1 55.6 44.4  5.6 100.0

92.6 3.7

5Lg

l8.5 74.1

72.7 59.1 36.4 0.0 90.9

81.5 7.4 37.0 7.4 88.9

松田(2001)より作成

 今回の調査では,家族・友人をさらに詳細に分類して尋ねた.選択比率の比較的多かった相手につい て,図9にその結果を示した.さらにそれぞれの相手について,年齢効果,結婚効果を対数線型モデル で検討した結果を表12に示した.

 その結果,家族では,自分の親,自分の兄弟姉妹ともいずれの効果も見られなかった.友人について は,普段よく会う友人と,普段あまり会わない友人とに分けて設問した.その結果,いずれの友人につ いても結婚効果のみが見られ,独身女性の方が既婚女性よりも,普段携帯電話で連絡を取る比率が高い ことがわかった.また,松田(2001)の報告では差のなかった,職場の人における女性の未既婚間の差 が今回は見られ,独身女性の方が既婚女性よりも選択比率が有意に多かった.独身女性のいずれの年齢

100 80 60 40 20  0

(%)

__.

ェ黒三知  _._.

 、⑨も      ●

       ・●●■■●■・

自分の親

1群︵ωN︑ω凹幻 皿群︵NΦ心O︶ロ群︵ωPω一︶ 群︵Nω−NO︶

100 80 60 40 20  0

(%)

100 80 60 40 20  0

100 80 60 40 20  0

ロ群︵Nω心9

皿群︵NOふΦ︶

皿群︵ωPω↓︶

1群︵ωN⁚凹

100 80 60 40 20  0

(%)

・■一一■・…一■・ 一畳…

ロ群︵Nω−N凹

皿群︵NO−NO︶

皿群︵ωPω↓︶

1群︵ωN−ωO︶

i:lll・逼…;・;;;ぼ:1:・・…r

普段よく会う友人

1群⌒ωN−ω凹 皿群︵8心⑩︶皿群︵ωO⁚▲︶

普段あまり会わない友

牢;::二;1::1:ここ・;;:;;=

一●一既婚女性

…■…独身女性

図9

N       I   il   皿   N

群     群  群  群  群

A      A       A

N         ω     ω     M     M ω         「∨    o     or    ω

      l        l        l        l

M         ω     ω     N     M on         un    ▲     o     th

)       )         )         )         )

年齢区分・配偶者の有無別の携帯電話で連絡を取る相手

(12)

区分においても選択比率は40%前後であり,松田(2001)の比率と同程度なので,今回は既婚女性の比 率が低かったと考えられるだろう.年齢効果は見られなかった.

表12 対数線型モデル分析によるモデル選択結果:携帯電話で連絡する相手 変数C G2(尤度比X2統計量):有意でないモデルのみ表示

[AB】[AC】[BC]  [AB][AC】 [AB][BC] 【AB][C】

採用されたモデル

自分の親 (  7.674df=3,p=.053)

自分の      2.931 兄弟姉妹   (df=3,pr402)

普段よく     3525 会う友人   (df」3,pr318)

普段あまり    4.087 会わない友人 (d f」3,p=.252)

        0.561職場の人        (df=3,p=.905)

 7.677

(df=4,p=.104)

 7.840

(df=6,p=.250)

 5.443

(df」6,p;.488)

 0.750

(df」6,p=.993)

       13.487

      (df」7,p=.061)

 4.397       4.586

(df=6,p=.623)  (df=7,p=.710)

[AB】{C】

[AB][C】

[AB][AC]

[AB][AC]

[AB】[AC]

変数A:年齢区分  変数B:配偶者の有無

6.携帯電話導入のきっかけ・時期

 図10は携帯電話を導入したきっかけが,自分から進んでもった者の割合を示したものである.松田

(2001)のデータもあわせて示したが,独身女性が自発的に導入した割合が,今回の方がやや低めであ

る.

 松田(2001)の場合には,2番目に多いきっかけ(図10の棒の中に,注で記入)として,独身女性では

「恋人,友人にすすめられた」,既婚女性では

「家族からすすめられた」が多いことを報告 しているが,今回の場合,既婚の1,IV群を 除き,ll,皿群は未婚女性と同様「彼氏・友 人からすすめられた」が2番目に多いことが

示された.

 次に携帯電話の導入時期を検討するために,

導入してからの所有期間の平均値を表したも のが図11である.表13には,年齢区分と配偶 者の有無による二元配置の分散分析を行った 結果を示した.

 携帯電話の所有期間は,年齢効果,結婚効 果,交互作用のいずれの要因も有効であった.

交互作用が有意であったので,引き続き,単 純主効果の検討を行った.年齢区分ごとの検 討では,もっとも年長の1群のみに結婚効果 が見られ,独身女性の方が既婚女性よりも所 有期間が長かった.

独身女性(今回)

   1群(32−35)

   ll群(30.31)

   川群(26−29)

   lV群(23−25)・

既婚女性(今回)

   1群(32−35)

   H群(30−31)

   lll群(26・29)

   IV群(23−25)

松田(2001)のデータ

    独身女性     既婚女性

   0    20    40    60    80   100 携帯電話を自分から進んでもった者の割合(%)

図10 携帯電話導入のきっかけ

(13)

携帯電話利用における結婚効果について(新美明夫・松尾貴司・永田忠夫1

100 80 60 40 20  0

1Fぷ

・・ ・..

・. .・ ・.

・・ ⑳・

1経侃︵ωNーωO︶ 皿群︵ωO−ωご

11 皿群︵NOもΦ︶ 壁8心O

一●一既婚女性

…−…独身女性 表13 携帯電話所有期間の

   二元配置分散分析結果の概要

要因 自由度 F値 有意性

  年齢区分 配偶者の有無   交互作用    誤差

 3 12.829  1  6.882  3  3901 827

***

**

**

携帯電話の所有期間

牟傘 吹メD01 ,*率奉 p<.001

 配偶者の有無ごとの分析では,まず,独身女性においては,もっとも年少のIV群が皿群よりも所有期 間が短いことがわかった.平均値を見ると,1〜皿群は80か月前後であり,時期的には,携帯電話の激 増期である1997年前後の社会人,短大生の時に導入したことになる.他方,IV群の平均値は70か月程度 であり,約1年導入が遅い.IV群の短大入学は1997年から1999年であり,高校時代にポケベルを経験し たこの世代が,短大入学とともに導入したことがわかる.既婚女性の分析では,1群の所有期間が1,

m群よりも短いことがわかった.既婚女性のn〜Iv群の所有期間は独身女性とほぼ同様の平均値を示し ており,導入時期についても同様に考えられるが,既婚女性で最年長の1群のみが,めだって所有期間 が短いことがわかった.

 携帯電話の導入時期について,別の観点から検討した結果を図12に示した.これは,導入時期をライ フステージに注目して「学生時代」「短大卒業後」「結婚前後以降」「出産前後以降」の4つの選択肢から 選んでもらった結果である・

。牲時代■短大卒業後

未婚女性については,後半 の二つの選択肢の比率が極 端に小さくなるため,統計 的な検討は行っていないが,

1群の既婚女性の携帯電話 導入が遅れた様子が明らか に示されている.すなわち,

もっとも年長で,ポケベル をほとんど経験していない 世代である1群は,未婚の 場合,携帯電話の普及とと もに導入をしたが,既婚の 者は,結婚後,または出産 後に導入がずれこんだと考 えられる.

未婚女性

1ξ羊(32−35)

ll君羊(30−31)

Hl君羊(26−29)

iv群(23−25)

既婚女性

  1言羊(32−35)

H書羊(30−31)

mg羊(26−29)

iv群(23−25)

.]出産前後以降

   0%  IO%20%30%40%50%60%70%80%90%100%

図12 年齢区分・配偶者の有無別の携帯電話導入時期

(14)

 若年層の携帯電話利用の特徴について松田(2001)は,携帯電話番号の積極的開示,電話番号の大量 登録,番通選択の実行をあげている.この松田(2001)の調査と今回の調査の間には4年近い時間経過 がある.両調査の結果の差違に注目しながら,これらの点について考察を加え,最後にパーソナル・ネッ

トワークの結婚効果について検討したい.

 まず,連絡先としての携帯電話番号の開示であるが,松田(2001)の時点よりも開示比率は大幅に高 まった.とくに独身女性の開示比率は各年齢区分で7割から8割を示しており,伸びが大きい.松田

(2001)の時点では,独身女性の開示比率は約4割,既婚女性は5割弱で,女性,とくに独身女性が携 帯電話の番号を開示することには若干の抵抗感が見て取れるが,今回の調査結果では,それが気軽な行 動になってきていることを示している.既婚女性は独身女性よりは開示比率が低いが,それでも5割か

ら7割近い.全体として,携帯電話番号の開示は一般的な行動になったと言えるだろう.また,携帯 メールの開示も多く行われており,携帯電話の主要な機能である,通話とメールが,いずれもよく利用 されていることを示している.自宅電話の連絡先としての重要性は凋落しており,既婚女性の最年長で ある1群において,携帯電話と同程度の5割強を示したにすぎない.この年齢層が松田(2001)の調査 対象の世代と共通することは興味深い.

 次に電話番号の登録数についてである.松田(2001)の指摘した結婚効果(独身者の方が既婚者より も登録数が多い)は,今回の結果でも継続しているが,登録数自体は独身女性も既婚女性も非常に多く なっている.また,普段携帯電話で連絡を取る相手も松田(2001)の時点の倍以上の値を示している.携 帯電話番号の開示の積極化と連動して,携帯電話でのコミュニケーションが全体として非常に活発化し ていると言ってよいだろう.

 3つめに,番通選択行動について検討する.この行動は上記の,携帯電話番号の積極的開示,番号の 大量登録を前提とするものだが,松田(2001)が指摘するように,今回もやはり,独身女性の実行比率 の方が既婚女性よりも高い.年齢効果も見られ,最年長の1群で番通選択をしない者が多く,nI群で 時々行う者が多いことがわかった.若い層ほど,未・既婚間の差が小さいと言ってよいだろう.本報で はさらに,発信者が不明の場合にも応答を拒否するかどうかを尋ねている.この場合には,応答を拒否 する者の比率は,独身女性がやや多いものの,年齢区分にかかわらず5割前後と,非常に多い.大量に 電話番号が登録してあるのにもかかわらず,発信者が特定できない着信に対しては応答拒否をするとい

う対応がもはやあたりまえになってきたと考えられる.また,応答を拒否した場合の後ろめたさについ て尋ねたところ,発信者がわかっている場合には,ほとんどの者が多少の後ろめたさを感じるが,発信 者が不明の場合には7割程度の者が後ろめたさを感じない.いずれも年齢区分,配偶者の有無の影響は なく,番通選択に関連する行動が,もはや独身者だけに特徴的な行動ではないことが示されたと言えよ

う.

 最後にパーソナルネットワークの結婚効果について検討したい.松田(2001)は,独身者のパーソナ ルネットワークが友人に集中する傾向が多く,既婚者では親戚・近隣をあげる者も多いと指摘し,既婚

(15)

携帯電話利用における結婚効果について(新美明夫・松尾貴司・永田忠夫)

女性が「家庭の用事や親戚や家族ぐるみのつきあいの維持などの『家事』を」現在では,携帯電話で行っ ていることが通話相手の分布に反映していると述べている.既婚女性が,この家庭内での「秘書的役割」

を期待されることから,携帯電話の導入理由には家族からすすめられた者が多く,独身者は自ら導入を 決定した者が圧倒的に多いと指摘している.

 今回の調査で松田(2001)と異なる結果を示したのは,連絡を取る相手のうち,自分の親自分の兄 弟姉妹については年齢効果,結婚効果とも見られなかったことである.家族でもとくに自分の親をあげ た者の比率が多い.また,職場の人の選択比率は独身女性の方が高かった.友人の選択比率については 松田(2001)の指摘と共通しており,普段会う者も会わない者も,いずれも独身女性の選択比率が高い.

携帯電話の導入理由では,第1位の自発的に導入した割合の未・既婚間の差はあるものの,松田(2001)

の時点よりも小さくなっていることが注目される.第2位についても,松田(2001)の指摘した既婚者 で家族にすすめられた者は,対象者の極端に少ない最若年のIV群を除くと最年長の1群に限られている.

他の年齢群では,独身女性の各群と同様,彼氏・友人にすすめられた者が多かった.自発的な導入は第 1位ではあるものの比率が低く,家族にすすめられた者の比率が高いという,この既婚の1群の導入理 由の特徴について,ライフステージの観点からの検討ができる.既婚女性1群では,結婚前後以降に携 帯電話を導入した者が,出産前後以降に導入した者4割強を含めて7割近くいる.H群ではそれが約3 割,In群, IV群では1割以下である.未婚女性のこれらの比率はあたりまえだが,ほとんどない. IV群 の携帯電話所有期間が配偶者の有無にかかわらず短いことは,この年齢層が最若年であるので当然とし,

既婚女性の1群を除いた他の群では,配偶者の有無にかかわらずほぼ80か月前後であったことに注目し たい.既婚女性の1群では,60か月弱と1年半から2年導入が遅くなっている.これを導入時期のライ フステージの結果と考え合わせると,次のように考えられるだろう.独身の1群および,ll・皿群の者 は,携帯電話の普及期であった1997年前後に導入した.他の者が次々と導入を開始していた時期にすで に結婚していた既婚の1群は,すぐには導入せず,少し遅れて,出産などを契機に自らすすんで,ある いは家族にすすめられて導入した,と考えられるだろう.残りのIV群の者は,高校時代にポケベルを経 験し,短大入学とともに導入した.この時期は少し遅れて,1997年から1999年になる.

 以上の検討をふまえて,最後にまとめと今後の展開を述べておきたい.松田(2001)の指摘した独身 の若年者による「番通選択」は,今回の調査でも結婚効果が示されたものの,同時に年齢効果も見られ た.松田(2002)は,「結婚という社会構造上の位置の変化が『本当に』ケータイ利用に影響を及ぼして いるかどうかについては,たとえば,今日幡通選択』をおこなう若者の多くが,将来結婚した場合に『番 通選択』をやめるかどうかといった,経年的比較が必要である」と述べている.今回の結果は,結婚し ても番通選択をやめない可能性を示したと言えるだろう.また,発信者が不明な場合の応答拒否は,か なり一般化していることが示された.場合により応答することを拒否する行動は,自分の都合によって つきあう相手をその場で選択することを可能にするとともに,そもそも自分のパーソナルネットワーク に所属する者であるかどうかの関門となっていると言えよう.煩項な家事を携帯電話でこなす既婚女性 にとっては,それは重要なスキルとなっているようだ.松田(2001)は,既婚女性が「家庭の秘書的」

な役割を家族にとってより便利にこなすため,携帯電話をもっことを「家族からすすめられる」ことが 多いと述べたが,そのような受動的な導入は普及期における一時的な現象であり,すでに結婚する以前

(16)

に携帯電話をもっていることはあたりまえになっていることが示された.今後はもっと積極的な携帯電 話利用が既婚者層にも行われるであろう.

 本報の調査対象者は女性に限られている.男性における「番通選択」の現状がどのように変化してき ているかについても,今後報告がなされることを期待したい.また,中村(2001)は,「携帯電話は離れ ていながらも子供を管理できる『リモート・マザリング』ともいうべきものを実行可能にしていま す…  有職女性にとっては仕事をしながら家事も同時に行える手段となっています」と述べ,既婚女 性にとっての携帯電話の重要性を指摘している.今回の調査では,育児における携帯電話利用について

も別途設問しており,これについては次回報告することとしたい.

文  献

電気通信事業者協会 2004 事業者別契約数

 http://www.tca.or.jp/japan/database/daisU/yymm/0409matu.html

毎日新聞社 2002 2002年版読書世論調査 毎日新聞社東京本社広告局

松田美佐 2001パーソナルフォン,モバイルフォン,プライベートフォンーライフステージによる携帯電話利用の差異  一川浦康至・松田美佐(編)携帯電話と社会生活 至文堂 現代のエスプリ,405,126−138.

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松田紀之 1988 質的情報の多変量解析 朝倉書店

 http:〃www.sci.kagoshima u.ac.jp/・−ebsa/matsudaOl/index.html

三上俊治 2004 メディアコミュニケーション学への招待 学文社

三上俊二・是永論・中村功・見城武秀・森康俊・柳澤花芽・森康子・関谷直也 2001携帯電話・PHSの利用実態2000  東京大学社会情報研究所調査研究紀要,15,145−235.

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新美明夫・松尾貴司・永田忠夫 2003 大学時代の友人関係の維持とメディア利用 愛知淑徳大学論集一コミュニケーショ  ン学部篇一,3,105−119.

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田中ゆかり 2001大学生の携帯メイル・コミュニケーション 日本語学,20(10),32−43.

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