偶然 的学 習につい ての研究 ‡ *
‑ 系列 間干渉 の機 構につ い ての一 考察‑
石 川 信
問 題 (8)
本論 考で報告す る実験 は, 前論 文 で提起 した仮説 とそ こで残 された 問題 の解 明のた めに新たに提起 した仮説 の検証 を 目的 と して行 なわれた。 そ こで今,節 者を再説 し,後者 の詳 細を論 述す ることに したい。
系列間干渉
( i nt e r s e i a li nt e r f e r e nc e )
の機 構 ,特 に逆 向 抑 制 (r e t r oa c t i ve i
nhi bi t i o r ) )
**のそれについ ては , 既に幾 多の理論 が提 出 され てい る。 その中で (67も
1 94 0
年 にMe l t on
とI r wi n
が提 出 した二要 因説 は,RI
の研 究に一時期 を劃 し た もの と言われ ,今 日なお最 も有力な理論 と目され てい る。 この理論 の特質 は それ まで 最 も有力 な もの として認 め られ ていた転移説 あ るいは反応 の競争説 を 発展 させ,新たにunl ea mi ng
要 因 な るものを導 入 して理論 構成を行 な った点 に あ る。彼 らに依れ ば,RI
は挿入学 習(i nt e r po l a t e dl e a r ni ng)
*柵 の際に起 る原 学 習( or i gi na l】 e m i ng)
**耕 のunl ea mi ng
お よび原 リス トの再生 (再学 習)の 際に起 る原反応 と挿入反応 との争 いの二要 因 の作用 に よって起 る とされ る。 こ れ ら二要 因 の うち後 者は転移説におい て既に主張 され ,それ を考え ることの妥 当性 も認 め られ ていた ものであ る。 従 って彼 らの理論 への批判 は,専 ら前者, す なわちunl ea ni ng
要 因につい ての疑 問 とい う形でな され て きた。 そ して今 日 で も,なおい くつか の疑 点が指摘 され てい る。斗この研究は,筆者お よび小柳恭拍 (北海道学芸大学) による偶然的学習につ い ての共同研究 の一部である。
*キ以下
,RI
と略す。半券*以下
,I L
と略す。*#*キ以下
,OL
と略す。さて
Me l t o n
らは このu nl e a mi ng
要因を次 の よ うに考え る。 す なわ ち,I L
の間に学 習者は時 々原 リス トの反応 を試み るが,それ らの反応 はI L
の時には 間違 いであ るこ とを知 ってい る。 そ こで,学 習者はそれ らの誤 ま りを避 け よ う と試み る。 その結果,原反応は徐 々にunl e a
m され る。 それ故 ,原反応 の再生 (再学 習) を試 み る時 には,それ ら 原 反 応 はI L
の間に起 ったun】 e a r ni ng
の 故 に弱 くな り保持が低下す る と考え る。 従 って,彼 らの理論 に依れ ば,OL
はI L
の 際 にu nl e a r
n さ れ るがI L
はu nl e a
m され ないので,OL
の再 生はI L
の再生 よ りも少ない こ とにな る。 そ こで今, 同一条件 で前向抑 制 (
pr oa c t i ve i
nhi bi i o n)
* の量 とRI
の量 とを 比較す る と,前者 ではOL
の再生時に起 る原 反 応 と先行 リス トの反応 の争 いか ら抑制 が起 るのに対 して,後者ではI L
の際 に起 るOL
のul l l e a mi ng
とOL
の再 生時に起 る原反応 と挿 入反応 との争 い から抑制 が起 るので,後者 の方が抑制量 は大 き くな る筈 であ る。
(乃 (4) 的 .QB この予想 は
,Me l t o n
とvo nLuc ku m, Mc Ge oc h
とUnde r Woo d
,Unde r Wo od
な どの実験結果 と一致 した。 この こ とか ら,Me l t o n
らは 自己の理論 の 妥 当性 が一段 と確定的に な った と考え る。 しか し, 厳 密に言 えば,RI
の量がPI
の 量 よ りも大 きい とい う予想を支持 した それ らの結 果に よって実証 された のは,PL
ではOL
の再生時 とい う一つ の位 置で抑制が起 るのに対 してRI
ではI L
の際 と
OL
の再生時 とい う二つ の異 な る位置 で抑制が起 る と考え る こ と の 妥 当性 であ り,I L
の際に起 る抑 制の機 構をunl e a r ni ng
むこ情す ることの妥当性 で(5)
はない。 とい うのは,例 えば
Mc Ge oc h
の よ うに,実験的消去 は反応 の争 いに よって起 る と考え,RI
は反応 の争 いが二つ の異 な る位 置 で作用す るこ とか ら起 る と して も上 の予想は成立す るか らであ るOす なわ ち, I L
の際には原 リス ト の反応は挿入 リス トの反応 と相争 う故 に弱め られ,消去 され る。 そ の 上,OL
の再 生時には ,原反応 は よ り新 しく強 い挿入 リス トの反応 と相争 う故 に現わ れ*以下
,PI
と略す。3
ることが ない。 ところが,
PI
実験 においては,上 で よ り新 しく強 い挿入 リス Tlの反応 とされた ものが原 1)ス T‑の反応 とな る。 従 って, 同一条件 でRI
の量 とPI
の量 とを比較 すれ ば,前者の方が抑制量 は よ り大 きい筈 であ る とい う予 想が成立す る。さて,
RI
の実験に おけ るOL
とI L
は共に意図的に行 なわれ るのが通例 で あ り,Me l t o n
らの実験 とて例外 ではない。従 って,彼 らの言 うu n l e a mi n g
要 因 もこの条件 の下 で起 る干渉機 構の一つ と して考想 された もの といえ る。 とこ ろが, この条件以外 の条件 を設 定 してRI
実験 を行 な う場合 ,す なわちOL
の いずれか一方が意図的,他方が偶然的に行 なわれ る場合に は,u n] e a r n i ng
は全 く起 らないか,あ るいは殆 ん ど起 らない と考え られ る。 何 故 な らは,OL
が 学 習意図 な しに行 なわれ る場合には,I L
の際に学 習者が原 リス T‑の反 応 を 試 み ることは全 くあ るいは殆 どない であろ うし,I L
が学習意 図 な しに行 な わ れ た場合には,I L
の.際に学 習者が原 リス Tlの反応を試みた と して も,そ れ らの 反応を誤 りであ る と して避 け るこ とはない と考え られ るか ら で あ る。OL
とI L
が共に偶然的に行 なわれ る場 合 も同様 な理 由か らu n l e a r n i n g
は全 く起 らな い と考え られ る。 従 って,意図的学 習*と偶然的学 習**におけ る習得( a c q u i s i ‑ t i o n )
の程度が等 しい とい う条件 の下 で,OL
とI L
が共に意図的 また は偶然 的に, OL
とI L
のいずれか一方が意図的 であれば他方 は偶然的t/こな され るとい う四つ の異な る場合に得 られ るRI
の量 の間には,次 の よ うな関係が成立す る 筈 であ る。 す なわち, OL, I L
とも意図的に行 なわれた場合 のRI
の量 は, OL, I L
とも偶然的に行 なわれた場合の
RI
の量 とOL
が意図的に, I L
が偶然的に行 な われた場合お よびその道 の場合 のRI
の量 よ りも大 きい。OL,I L
ともに偶然的 に行 なわれた場合 のRI
の量 は,OL
が意図的に,I L
が偶然的に行 なわれた 場合お よびその道 の場合 のRI
の量 と等 しい。OL
が意図的に,I L
が偶然的半以下 ,意学と略す。
半券以下 ,偶学と略すC
に行 なわれた場合 の
RI
の量は, その逆 の場合 のRI
の量 と等 しい。 なお, これ らの関係を図式的に示せば,意OL
一意I L
群 のRI
量 > (偶OL
一偶I L
群 のRI
量 ‑意OL
一偶I L
群 のRI
量 ‑偶OL
一 意I L
群 のRI
量) の よ うに な る。 さ らに, 同一 の条件 でPI
の量 とRI
の量 を比較す る と,OL
,I L
とも意 図的に行 なわ れた場合 のRI
の量は,いずれの場合 のPI
量 よ りも大 き くな るこ と を 除 け ば,PI
の量 とRI
の量 との間には差が ない筈 であ る。 そ して,Me l t o n
らがu nl e a r ni n g
な る機構 を考え ることの妥当性 は, これ らの予想 を支持す る実験結 果が得 られた時に こそ一段 と確定的に な ると考え られ る。( 9 )
さて, この瞳 の実験 デザイ ンに よる実験 は,既に
Pr e nt i c e
お よびPo s t ma n
と (8)Ada ms
に よって行 なわれ てい る。 しか し,そ こでの 目的 は,RI
におけ るOL
とI L
の意学 ・対 ・偶学 の効果を比較検討す ることに あ り,上述 の問題 とは直(3)
接 の関連 はない。 これ らの実験 の内容 とその批判 は既 に前論 文で詳述 した。 今 それ らを要約的に再説 してみたい。
まず 第一に,
Pr e n t i c e
の研究 では,そ こで堤起 された仮説 を支持 した とされ る実験結果 も,それを仔細に検討すれば,む しろ否定的 な結果 と看 供 され るこ とが指摘 された。次 に,
Po s t ma n
らの実験 では,OL
条件 とは関係 な く意図的I L
の場合に よ り大 きなRI
量が得 られたが, これは彼 らの次 の仮説を支持す るも の で あ っ た。 す なわ ち, 意図的OL
は保持頃数 は多いが連合強度 の低い頃 も比較的多 いので,干渉を受け易 い頃 の占め る割 合は よ り高 いのに反 して,偶然的OL
の 場合はその逆にな ってい る。 それ故 ,学 習意図 の有無に拘 らず,OL
のRI
に 対す る感 受性 は等 しい。 ところが,RI
の量は挿入 され る頃数が多いほ ど大 き い。従 って,保持頃数 の多い意図的I L
の場合 の方がRI
の量が よ り大 きい と い うのが それ であ る。 もちろん, この仮説は意学 の習得度が偶学 のそれ よ りも 多い とい う前提 の上に成立す る ものであ る。 ところが,彼 らの実験 に お け るRI
条件 では 意 学 と偶 学 の習 得 度 はほぼ等 しい。 従 って, 彼 らの結果が予想5
と一致 した として も,それ は上 の仮説 を一義的に支持す るものではない。 そ こ で, この点を検討す るた めに,習得の程度を等 しくす る条件 の下 での再実験 が 示唆 された。
…
また
,Sl a me c ka
とCe r a s o
も1 9 4 4
年以降 のRI
研究 の文献展 望 を 行 っ た 際Po
stman らの実験に も言及 し,意学条件 ・対 ・偶学条件 のRI
効果を明 らかに す るた めには次 の仮説 の検証 が必要 であ る としてい る。 す なわ ち,意学 と偶学 とでは学習の構えが異な る。 従 って,OL
とI L
のいずれかを意図的に他方を 偶然的に行 な う場 合には,そ こに機 能的孤立( f uI I C t i o na li s o l a t i o n)
が生 じると 考え られ る。 それ故 ,この想定が正 しけれ ば,習得 の程度が等 しい条件 の下 で は.OL,I L
とも意図的 または偶然的に行 な った グル ープ (意OL
一意I L
群;偶OL
一偶I L
群) , 彼 らの言 うs i mi l a r l yt
re a t e dgr o u p
は,構えが変化 した ゲ ル‑プ (意
OL
一偶I L
群 ;偶OL
一意I L
群) ,彼 らの言 うc ha n g e d‑ s e tgr o u p
よ り もRI
の量は大 きい とい うのが それ であ る以下に述べ る実験 は,上述 した二つ の仮説 の検証を 目的 と して行 なわれた。
方 法
実験 デザイ ンー実験 デザ イ ン (●●●●●● 第
1
表) はRI
お よびPI
測定 のた めの慣 習 的諸条件 をその一部 と して含む。実験群 の被験者は意図的 または偶然的教 示 の第 1表 実 験 デ ザ イ ン
群 R I条 件
第
1
リス ト l第2
リス トP I
条 件 第1
リス ト 1第2
リス ト( A
お よびB
は刺激 リス ト.RI
とPI
の検査 はすべ て リス トA
で行 なわれた)下に第
1
リス トを学 習 し,次に意図的 また偶然的 リス T‑の下に第2
リス Tlを学 習 し最後に第1
リス ト( R
I) また は第2
リス† ( PI )
の 自由 想 起 テス トを受け た。RI
条件 とPI
条件 の統制群 は異な る被験者 よ り成 るoRI
統制群 の休憩時 には,2 5×3 5 c
mの白紙 の全面に印刷 した4m
m間隔 の点 を線 で結 んで好 きな 模 様 をつ くる作業 を行 なあせた。学 習材料一二つ の刺激 リス tl(第
2
表) は.各1 2
語 の 日本語三音節 名詞 に よ'I'' (1)
って構成 した。 これ らの語は,小柳 らの 日本語三音節 名詞 の熟知価 表 か ら 熟 知価
4. 0 0 ‑4. 9 9
の範囲 で選 び出 した ものである。 なお, 刺 激 リス トは4. 5×
第 2表 刺激 リス ト リス ト
A
l リス トB第
1
図 剃激呈示用小冊子の一員9. 5 c
m の紙1
枚につ き各1
語 を空欄4
歯 とともに印刷 し (第1
図) ,表紙 をつ けて左端 を とじ,1冊 の 「小冊子」 としてお く。学 習条件一 意学,偶学両条件 とも予め配布 してあ る小冊子を実験 者 の合図 で■●●●
1頁づつ め くらせ,次 の合図が あ るまでの間に上欄 の言葉を下 の四つ の空欄 の いずれか一つを選 んで記入 させ る作業を行 なわせ る点 では共通であ るo しか し 意学 の場合 は. この作業を行 ないなが らそれ らの言葉 を記憶す る よ う数 示 し, 偶学 の場合には,学 習の意図を もたせ ないた めに, これは性格検査 の一種 であ
7
る旨の虚偽 の教 示を与 えた。 また ,第
1
,第2
両 リス Tlの学習条件が 同一 の場 合には,その条件 での教 示を く り返 して与 えた。 偶学条件 か ら意学条件 に変わ る場合には,今度は この作業 を記憶 の検査 として行 うか ら出て来た言葉 を覚え るよ う教 示 し,意学条件か ら偶学条件 に変わ る場合には,今度は この作業 を性 格検査 として行 うか ら言葉は記憶す る必要 はない 旨を述 べ, さ らに虚偽 の教 示 を加えて学 習意図を持 たせ ない よ うに努 めた。被験 者が実験 者 の合図に従 って小冊子 のあ る頁か ら次 の頁をめ くるまでの時 間,す なわち呈 示時間は,意学 の場合は
6
秒 ,偶学 の場合は8
秒 であ った。 ま た,意学 の場合には,第1
,第2
リス トも1
回呈示 され,偶学 の場合に は各 リ ス トとも30秒 の試行間隔 で 2回, リス ト内の呈 示順序を変えて呈 示 された ,従 って,実験群におい てOL
,I L
のいずれか一方が意 図的 , 他方が偶然的 に行 な われ る場合には,それぞれの条件に応 じて呈 示時間 と呈 示回数が変わ るこ とに な る。 なお,第1
リス トと第2
リス トとの間 の間隔はOL
また はPI
が意図 的に行 なわれた場合は約3
分,それが 偶然的に行 なわれた場合は約2
分 であ った 。
なお,上述 の学 習条件に よって,意学,偶学 とも習得 の程 度が等 しくな るこ とは,数回の予備実験 の結果見出 された。本実験 の際は,統制群か ら実験 を始 め,習得度が そ こで も等 しい こ とを確認 してか ら実験群を行 な っ た。 も ち ろ ん,統制群 での習得度が両学 習 とも等 しい ことを もって実験群 の各条件 での習 得度 も両学 習 とも等 しか った とす ることは出来 ない。 しか し,実験条件におけ る偶学 の習得度 を知 るこ とは,偶学 の もつ性 格上不可能 であ る。 従 って,結果 の解釈の際には この点が問題に な ることは否定出来 ない。
また ,偶学におけ る上述 の方 向づ け作業
( o r i e nt i n gt a s k) *
ほ既 に その有効性 伐)が認 め られ てお り (詳 細につい ては文献 を参照 されたい) ,本実験 に お い て
J「ヽ
半以下
.OT
と略す。ち,偶学 の際に再生を予期 して学習樹料 を記憶 しよ うと意図 した 者は,内省を 信頼す る限 りでは一人 もい なか った。
なお.教示 の際 ,学 習材料を記入す る時には空欄を各頁毎 出来 るだけでた ら めに選 んで記入す ること.記入を終 って も合図が あ るまで次 の頁をめ くらない こと,学習材料 を音読 しない こと,前の頁をめ くり返 さない こと,脇兄を しな い ことな どの細かい注意を与 えた。 そ して, これ らの注意を遵守 させ るた めに 大学生 1名を実験補助員 と した。
保持 テス 十一第●●●■●
2
1)ス 十の学 習終了後3 0
秒 してか ら,予め配布 してあ る用紙 を用いて3
分 間の 自由想起 テス 十を行 な った。 なお,被験 者には確実 に覚 えて い ると思 う言葉だけでな く,当 て推量 の もの も書 くよ う数 示 した。被験者‑被験者は青森市 内の‑ 中校 の
2
年生5 41
名で, 各群41 ‑48
名 (男女 ほ ど同数) でであ った。彼 らは これ まで この種 の実験 の被験 者 と しての経験 は 全 くない。実験 は 1クラス単位 の集団実験 と して行 な った。 なお,各 クラスの 被験 者 中知能指数が最下位 の ものか ら】tWy/こ数えた5
名の結果は,結果整理 の際 に省いた。各 クラス ともそれ らの5
名は大部分精薄児ない境界線級児であ る。結 果
RI ●
●と● PI
●●●●の程度‑ 各群 の平均再生量 お よびRI
とPI
の相対量 の百分率 は第3
表に示 した通 りで あ る。RI
,PI
各条件 とも統制群 の平均再生量は意学群 と 偶学群 との間に有意 な差 はな く,両群におけ る習得 の程 度は殆 ど等 しい。第
3
表 平均再生値およびR IとPIの量 逆 向抑
均JS
D
条 可 耳
前 向 抑 制 均 JS D I% PI
*統制群から・
0
1水準で有意考あり。ノ′〜.‑̀・∫ヽLJ.,、.,・.1..E・
9 RI
条件の実験群の平均再生量はいずれも統制群のそれより少なく.その差は有意であった。 PI
条件の実験群の平均再生量はいずれも統制のそれより少ないが,偶PL
一偶OL
群のみは有意差がなかった。 次に,相対的RI
量は, IL
の意偶に関係なくOL
が偶然的に行なわれた場合により大きかった。また,相対的PI
量はIL
の意偶とは関係なく,OL
が意図的に行なわれた場合により大きかった。なお.RI
量およびPI
量の差の統計的有意性の検査は.Pos
tman
とAdams(8 p. 325)
の採った手続に従って行なった。すなわち,各実験群における個人の得点の各々から該当する統制群の平均得点を引いて修正得点を求め,この得点を基に分析を行うことがそれである。結果は第4
表に示したように,RI
,PI
両条件ともOL
の条件間の差が1
%水準で有意であり, IL
またはPL
の条件間の差と交互作用はいずれも有意ではなく.OL
の効果はIL
またはPL
の意偶に関係しないことが知られる。 第4表保持損失( retentionlosses)
の分散分析#P<. 01
侵入反応‑ 各実験群 におけ る系列間侵入反応 の平均数 を示 した のが第
5
蓑 で 第5
表 系列 間侵入反応の平均数条 件
蔓 RI
IPI
あ る
。RI
条件 とPI
条件 の間お よび各条 件 内の各群 の間にはか な りの差が見 られ る 場合 もあ るが ,分散分析 の結果はいずれ の 条件差 も有意 ではなか った。考 察
RI
とPl
の量につい ての上 の諸結果は,その殆 ど全部が前述 の予想 とは一 致 してい ない。従 って上述 の二つ の仮説はいずれ も全面的に否定 され ることに な った。そ こで まず この点についてや ゝ詳 しく検討 してみ よ う。第一 の仮説 について言えば,そ こで立 て られたい くつか の予想 の うち一つを 除いた他 のすべ ては結果 と一致 しなか った。 すなわち,
RI
条件におけ る各実 験 の結果 の問には,意OL
一意I L
群 のRI
量>
(偶OL
一偶I L
群 のRI
量 ‑意OL
一 偶I L
群 のRI
量 ‑偶OL
一意I L
群 のRI
量) とい う関係が見 られ る筈であ るとい う がわれわれ の予想であ った。 しか し,結果は意OL
一意I L
群 のRI
量 <偶OL
一偶I L
群 のRI
量,意OL
一意I L
群 のRI
量 ≠意OL
一偶I L
群 のRI
量,意OL
一意I L
群 のRI
量 <偶OL憲一I L
群 のRI
量,偶OL
一偶I L
群 のRI
量 >意OL
‑偶I L
群 のRI
量 , 偶OL
一偶I L
群 のRI
量 ≠偶OL
一偶I L
群 のRI
量 ,意OL
一偶I L
群 のRI
量 <偶OL
一意I L
群 のRI
量 とな り,偶OL
一偶I L
群 のRL
量 ‑偶OL
一意I L
群 のRI
量 とい う 予想だけが結果 とほほ一致 したに過 ぎない。勿論, この よ うな結果 を も っ てunl e a mi ng
要因を考え ることの妥当性が裏づけ られた とす ることは出来 ない。従 って,上 の仮説 の設定が正 しい とすれば,
Me l t o n
らがI L
の際 の干 渉 機 構 としてu u n l e a mi n g
の存在 を主張す ることは,その根拠が薄弱であると言わ ざ るを得 ない。しか し, ここで,上 の よ うな結果 とそれに基づ くこの立言に対 して,次 の二 三 の異論が提起 され得 るであろ う。
その一つは,
OL
が偶然的,I L
が意図的に行 なわれ る場合,OL
が偶然的に 行 なわれた にせ よ学習が成立 してい ることは事実 であるか ら,I L
の際にOL
の反応を試み ることも少な くない と考え られ る。従 って, この場合に も原反応 のu nl e a mi n g
は起 り得 るのではないか とい う疑問である。 そ して, もしこの 立論が正 しければ,意OL
一意I L
群 のRI
の量は 偶OL
一意I L
群 のそれ とほほ等11
しくな る筈 であ る。 ところが,実際はかえ って後者 の方が
RI
の量 は大 きい と い う結果が得 られた。 しか し, この結果 を もって上 の立論 が正 しい ことの板拠 とす るこ とは出来 ない。 とい うのは.u n a e a mi n g
が全 く起 らない と考え られ る偶OL
一偶I L
群 のRI
の量 もまた意OL
一意I L
のそれ よ りもかえ って 大 き い か らであ る。そ して, これ らの結果は,RI
におい てu n l e a mi n g
の果たす 役 割 はMe l t o n
らが考え るほ ど大 きい ものではない こ とを示 してい る と思われ る。次に問題に な ることは,第
1
リス トを意図的に第2
リス トを偶然的に学 習す る群 では,第2
リス トの学 習は偶然的に行 なわれず,第1
リス トと同様意図的 に行 なわれた のが実際ではないか ,つ ま りそ こでは学習 の構え の変化 はなか っ た のではないか とい うこ と で あ る。 確かに,RI
条件 の意OL
一意I L
群 と意OL
群 と偶I L
群 の結果がほぼ等 しい ことを見れば, この疑問は一応 もっとも で あ る。 しか し, この よ うな関係はPI
条件 では見 られ ない ことは, この 疑 問 を否定す る間接 的証拠 で あ る し,た とえ上 の指摘が正 しい と して も,それは本 実験に おけ る他 の群 の結果 の信頼性 まで も否定す るものではない。従 って,級 に述 べ る結論 は十分 な妥当性 を もっと考え られ る。さ らに, この種 の実験 デザ イ ンにおい ては,
RI
とPI
の効果は, 学 習の終 結 と保持 テス トとの問の時隔が 同一 ではないか ら直接 比較 で きない。従 って, 上述 の第 一の仮説におけ る予想 の後半,す なわ ち,同一 の条件 でPI
の量 とを 比較す る と,OL,I L
とも意図的に行 なわれた場合 のRI
の量 は,PI
条件 の 各群 のPI
の量 よ りも大 きい ことを除 けば,PI
とRI
の量 の間には差が ない とい う予想 はそ もそ も成立 し得ない とい う異論 が考え られ る。 しか し.少 くと もMe l t o n
らの二要 因説か ら演緯 され る ところでは,PI
の量 とRI
の量 との 間に差が生 じると して も,その差 はわれわれ の結果に見 られ るよ うな判然 とし た もの とはな らないはず であ る。以上 を要す るに,われわれ の結果 は二要因説 を批判す るた めの十分 な根拠 と な り得 る ものであ る。 従 って, われわれは本実験 の結果か ら,
OL,I L
とも偶然 的に行 なわれ る場 合に も明 らか に
RI
は起 り, しか も同 じ条件 で のPI
との 比較 か ら, これ らの場 合において も,OL
へ の干渉はOL
,I L
とも意 図的に 行 なわれ る場 合 と同様,I L
の際 とOL
の再生時に起 ること, そ して,RI
条 件 におけ る各実験群 の 比較 か らI L
の際 の干渉をすべ てMe l t o n
ら の 言 うu n l e a mi n g
の作用 に慣す る ことはで きない こ とを指摘 し得 る0ところで ,
Me l t o n
らがI L
の際に起 る抑制 をすべ てu n l e a n i n g
の作用 に帰 す ることには既 に疑 問が抱かれ ていた ので あ るが,われわれ の実験結果は この 疑 問が明 白な事実 であ ることを示 した もの といえ よ う.\
次 に,第二 の仮説につ いて言えば,結果は この仮 説 の予想す る ところ とは全 然一致 しなか った。 この こ とは,意学 と偶学 では構えが異 な る ことか ら,両者 の間 の機能的孤立を想定す るだ けでは,
OL
とI L
の偶学 ・対 ・意学 のRL
効 果 を説 明 し得 ない こ とを意味す る. 従 って ,Po r t ma r
)らのOL
の感 受性 とI L
の相対的干渉効果 の意学 と偶学 に よる差異を考え ることがやは り必要 であろ う。 しか し, 本実験 の結果はPo s t ma l
lらの仮説 に よっては説明 で きない。 こ の点 で もわれわれ の結果は新 しい問題を提起 した ことにな る。そ こで,最後に,われわれ の結果は どの よ うに説明 され るかが 問題にな る。 しか し, ここでは この間題につい ての詳 細 な検討 は行 なわ ない。 とい うのは, 本実験 の結果 は
Po s
tma m
らの結果 お よびわれわれの以前の実験結果 とも異 な るので, これ らの結果を包括 して統一的 に説 明す ることに よっては じめて其 の 説 明が な され る と考え られ る し,そのた めには今後 なお組織的 な研究を必要 と す るか らであ る。参 考 文 献
1・小柳恭治 ・石川信一 ・大久保幸部 ・石井栄助 日本語三音節名詞の熟知偲 .心 研,1
9 6 0,30,3 57 ・ 3 6 5.
2.
小柳恭治 ・石川信一 ・大久保幸郎 ・志津野知文 ・石井栄助 偶然的学習につい ての研究(Ⅶ)一対連合適中予言学習後の順逆再生勿配の成立機構‑ ,大脇義1 3
‑教授在職
3 5
年記念心理学論文集.1 9 6 0,2
60‑27 2・
3.
石川信一 偶然的学習についての研究Ⅰ Ⅹ
‑系列 間干渉の機構 についての実 験的検討‑弘前大学 「人文社会」1 9 61.24,8 0 ‑9 5・
4. Mc Ge oc h ,∫ . A . ,a ndUnde r woo d
,B.∫ . Tes t soft h e t wo‑ f a c r ort he o r yof r et r oa c t i vei nhi bi t on. ∫ . e xp.Ps y c ho
lリ1 9 4 3,3 2,1 ・ 1 6.
5. Mc Ge oc h ,J .
A. ,a ndT r i on,A.
L.Th eps yc hol ogyofhuma nl e a r ni ng.1 9 52.
6. Me l t on
,A.W . ,a ndl r wi n ,J . M.The i nf lue n c e ofde gr e e ofi r ) t e r po l a t e d l e a ml n gOnr e t r oa c t i vei nhi bi t i o na ndt heover tt r ar ) s f e rofr e s pon s e s .Ame r . J . Ps yc ho
l.,1 9 40,5 3,1 73‑ 20 3.
7. Me l t on,A.W.a ndvo nLa c kum,W . J . Re t r oa c t i veandpr o a c t i vei nhi bi t i on:
e vi de nc ef orat wo・ f a ct or山e or yofr et r oa ct i vei nhi bi t i o n.Ame r . ∫ . Ps y c h o 1
.,1 9 41,5 4,1 5 7・ 1 7 3. ′
8. Pos t ma n
,L.,a ndAda ms ,P. A .St u di e si ni nc i de nt a ll e a r ni ng:
ⅠⅠⅠ . I nt e r s e r i a l i
nt e r f e r e nc e. J . e xp.Ps yc ho
l.,1 9 5 6,51,3 29‑ 3 33.
9. Pr e nt i c e ,W.C.H.Re t r oa c t i vei nhi bi t i on a nd 山emot i vat i onofl e ani ng.
Ame r . J . Ps yc ho1
.,1 9 43,56,2 83・ 29 2・
1 0. Sl a me c ka,N.∫ . ,a nd Cer a s o
,L Re t r oa c t i ve a l l d pr oact i ve i 血i bi t i on of ve r ba ll e ar ni ng.Ps y c ho l .Bul
l"1 9 6 0,5 7,4 49‑ 4 7 5.
ll
. Unde r wo o d
,B.∫ . Theef f e c tofs uc c e s s i vei n t e r po l at i ononr et r oa ct i vea nd pr oa c t i vei nhi bi t i on.Ps yc hol .Monogr . ,1 9 4 3,59,No.27 3.
1 2. Unde wood
,B. J . Ret r oa ct i veandpr oa c t i vei nhi bi t i ona f t e rf i vea ndf or t ye i ght hour s . J . e xp.Ps y c ho1 . ,1 9 48,3 8,29・ 3 8.
工,:・耳讃