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韓国における生命保険規制・監督の 新しい方向性に関する考察

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韓国における生命保険規制・監督の 新しい方向性に関する考察

崔 桓 碩

■アブストラクト

韓国における生命保険産業は,伝統的に政府による護送船団方式の規制・

監督が行われてきた。1980年代からは,米国からの市場開放の要求を受け,

1987年から米国系保険会社の参入を認めている。その後,1996年の

OECD

への加入,1997年の

IMF

金融危機を通じて,規制は大幅に緩和され,自由 競争が促進された。

その後,2012年には韓米

FTA

が発効した。韓米

FTA

では,保険産業に 関して保険市場のさらなる規制緩和措置とともに,隣接業界との規制・監督 の一元化,すなわち保険産業と隣接業界との対等な競争条件を図ることを求 めている。

規制・監督の一元化は,生命保険市場の競争を促進する効果がある。一方 で,隣接業界も生命保険会社の経営目標と同じように選別的保険引受と超過 利潤分配を優先すると,すべての消費者の需要と期待を充足させない可能性 がある。その解決策としては,生命保険市場の範囲内のみではなく,社会保 障との連携性も考慮しながら新しい対策を進める必要がある。

■キーワード

韓国の生命保険産業,規制緩和,監督の一元化

関東部会報告による。

/

*平成25年9月13日の日本保険学会 6年3月17日原稿受領

平成2

● ●● ●●●●●●

(2)

1.はじめに

1.1 研究の背景

韓国における生命保険産業は,1970年代まで,政府による護送船団方式の 規制・監督が行われてきた。1962年には生命保険会社が国民貯蓄機関として 選定されて以来,国の 経済開発5カ年計画 のような政策的目標に従い,

生保6社体制 で成長した。最初は,団体保険市場を中心に急速な成長を遂 げ,1970年代からは個人保険を中心に成長してきた。外資系生命保険会社の 参入については,1968年に初めて,外国籍を保有している人,または外国法 に基づいて設立された法人を営業対象とした外国保険事業者の国内進出を

外国保険事業者に関する法律 に基づいて許可した 。

1980年代に入ってからは,米国から市場開放の要求を受け,韓国の保険産 業は1987年から韓国人を対象にする外資系保険会社の参入を認めた。これを きっかけとして,韓国の生命保険産業は自由化・開放化・国際化の時代を迎 えることになった。なお,新しい保険会社による市場参入が容易になり,既 存の6社体制は市場参入が解禁された1987年をきっかけに終わりを告げ,会 社数は1990年には33社まで増加し,市場シェア獲得のための競争が激しく展 開された。

その後,韓国は1996年の

OECD

への加入,1997年の

IMF

金融危機を通じ て,保険産業に対する規制を大幅に緩和し,自由競争を促進させる方向に変 わってきた。2012年には韓米

FTA

が発効され,さらなる規制緩和措置が行 われた。

1.2 問題意識と研究目的

韓国における生命保険産業の規制緩和については,生命保険の特性から

韓国における生命保険規制・監督の新しい方向性に関する考察

1) 当時の生保6社は,大韓生命,第一生命,三星生命,興国生命,大韓教育,

東亜生命であった。

2) 朴承 (1988),p.205参照。

(3)

様々な議論が展開されたが ,①既存の規制・監督が厳しく保険産業の質的 な発展が難しかった,または②急変する国外環境に対応する必要がある,と いう理由で進められてきた。すなわち,生命保険産業における規制緩和の主 な論点は,保険産業の 効率性 を高めることであった。したがって,規 制・監督の方針は,既存の護送船団方式から業界の自主規制に変更されてき た。規制緩和により,事前監督から事後監督に代わっていくと,財務健全性 の強化や消費者保護のような問題が提起され,それに対する対策としてソル ベンシー基準や預金保護制度などが導入された。

ところが,2012年3月15日に発効された韓米

FTA

において,保険産業の 規制・監督をめぐる新しい方向性がみられた。その主な論点は,今まで規制 緩和の主な目的であった 保険産業における効率性の向上 と隣接業界との 監督の一元化 である。まず,保険産業における効率性の向上の面では,

保険サービスがより迅速に行われるような措置が取られている。次に,監督 の一元化の面では,今まで保険産業において隣接業界として取り扱ってきた 国有企業(郵政事業本部の保険 )と共済が,同一の監督官庁から監督され るべきであるということである。

保険と国有企業,保険と共済の間では,1980年代から同一の監督官庁・法 律の下で監督されるべきであるという問題をめぐって長い間,議論が続いて きた。それに対して韓米

FTA

の内容は,1つの結論を出していると言え る 。言い換えると,韓米

FTA

での規制緩和策は,保険産業のみでの自由 化ではなく,隣接業界も含んだ自由化であるとも考えられる。一方で,保険

保険学雑誌 第 625号

3) このような規制緩和および自由化の政策は長期的には保険会社の経営効率性 および国際競争力の強化に寄与する。その反面,国内外の保険会社間の競争を 促進するなど,将来へのリスクおよび不確実性が増大するとともに,保険会社 の財務的健全性の悪化が憂慮されるという指摘がなされてきた。

4) 日本の かんぽ生命 に該当する。

5) 韓EUFTAにも4大共済に対するソルベンシー監督の内容は規定されて いるが,韓米FTAには,それに加えて,郵政事業本部の保険に対する詳細な 規制が追加されている。

(4)

と共済に対する監督が一元化される過程に先立って,共済の中でも最も規模 の大きい農協共済が2012年3月2日付で株式会社に転換し,保険業法の適用 を受けることとなった。

韓米

FTA

における隣接業界との監督の一元化と,農協共済の事例のよう な共済団体の保険株式会社化の現象は,生命保険産業や消費者にどのような 影響を与えるのだろうか。

本稿の目的は,今までの規制緩和とは性質を異にする韓米

FTA

での内容 を踏まえ,隣接業界との監督の一元化と共済団体の保険会社化,または共済 団体の保険市場への進出が,生命保険業や消費者 にどのような影響を与え るのかについて分析することである。

本稿の構成は,第2章では,規制緩和に関する韓国での先行研究を調べる ことにより,規制緩和の目的を明らかにする。第3章では,生命保険産業に おける規制緩和の歴史を調べることにより,規制緩和がどの程度まで行われ ているのかを確認する。第4章では,韓米

FTA

の内容の中でも 監督の一 元化 に焦点を当て,さらに共済団体の保険会社化,または共済団体の保険 市場への進出が生命保険産業や消費者にどのような影響を与えるのかを考察 する。第5章では,以上をまとめた結論と今後の課題について述べたい。

2.規制緩和に関する先行研究

趙海均(1993)は,規制緩和に対する政策を立案するときに,①国が保険 事業を政策的および制度的に,どのような経営活動の自律性を規制,または 規制緩和するのか,②保険市場で業者相互間の競争行為に対する規制をどの ように緩和するのか,が重要であると述べている。まず,政策的および制度 的側面からの規制緩和は,保険事業の創意力と経営能力を極大化するための ものとして,保険会社自らの努力で競争能力を高め,市場の効率性を図る必 要があると主張している 。そのためには,支払能力(ソルベンシー)に対

6) ここでいう消費者とは,保険契約者,共済契約者を指す。

7) 趙海均(1993),p.17参照。

韓国における生命保険規制・監督の新しい方向性に関する考察

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する規制を強化する代わりに,他の監督手段を緩和することが要求される 。 次に,競争行為に対する規制緩和については,自由競争が与える肯定的な影 響を最大化し,否定的な影響を最小限に抑える必要があると主張している。

その理由として,保険市場は不完全市場の性格をもっており,保険商品の生 産と供給が容易で,無限である反面,保険需要の創出は難しく,限界性をも っている。そのため,保険市場では常に激しい販売競争が発生する可能性が あると指摘されてきた。したがって,保険市場の中で完全自由競争の原理を 導入・実施するには制約と限界があるため ,望ましい競争である 有効競 争 の効果が生じるための政策的な配慮が要求される 。保険市場での有効 競争を発生させる要因としては,①事業許可に対する規制緩和,②保険料に 対する規制緩和,③保険商品に対する規制緩和,④営業活動および販売組織 に対する規制緩和,⑤サービス活動に対する規制緩和,⑥資産運用に対する

8) 趙海均(1993),p.18参照。

9) 趙海均(1993)によると,一般的に市場の中で完全自由競争の効果が出るた めには,次のような前提条件を満たさなければならない。

①物的,人的,場所的,そして時間的側面から優越性が存在してはならない。

また,同質性が存在しなければならない。

②供給者と需要者両方が,市場監視力を持たなければならない。

③市場関係者が合理性の原則と極大化の原則に従って行動しなければならない。

④市場への参入と市場からの撤退が自由でなければならない。

⑤供給者と需要者が意思決定をする際に,それを制約し妨害するあらゆる干渉 や規制も存在してはならない。

⑥供給者と需要者は市場条件および環境変化に伴う無限な適応能力をもたなけ ればならない。

⑦市場の中で供給者と需要者がそれぞれ多数であり,1社が単独で価格決定に 影響を与えてはならない。

上記7つの条件の中で,1つ以上の条件を欠如している場合を 不完全市 場 ,または 不完全競争市場 と称する。もちろん, 完全市場 は経済理論 上の理想的な概念であり,実際には, 不完全市場 のみ存在している。保険 市場は,他の市場に比べても,不完全市場の性格を強くもっている。

10) 趙海均(1993),p.18参照。

険学雑誌 第 625

文のところの上付きが入るため強制送りします

(6)

規制緩和,が取り上げられている 。すなわち,これらの要因に関してどの ような政策的措置が行われるのかにより,有効競争が発生する。

申東昊(1997)によると,保険産業における規制緩和は,料率の自由化と 保険商品の多様化をもたらす。それに伴い,新しい保険会社の設立が容易に なり,外資系保険会社や国内保険会社の市場参入も可能になる。これらの要 因から,保険市場での競争が激しくなることにより,破綻する保険会社が発 生する可能性も増大すると指摘している。特に,政府による規制が強かった 国では,規制緩和の規模が大きいほど,競争は激しくなる 。したがって,

保険会社の破綻のような市場の不安定を減少させるために,保険会社におけ る利益の重要性と資本収益率を強調するなど,資産運用の健全性を強化する 必要がある。なお,消費者保護の観点から,信用格付機関,公認会計士,保 険計理人などを通じた自主監視機能を増大し,保険会社の経営の安定性も強 調する必要がある。それは規制緩和による事前監督から事後監督への転換を 意味する。すなわち,既存の料率と商品に関する事前認可制度などは規制が 緩和される反面,保険会社の財務健全性に関する監督機能および消費者保護 に関する監督などは強化される (図1)。

11) 趙海均(1993),pp.19‑20参照。

12) 申東昊(1997),pp.312‑313参照。

13) 申東昊(1997),pp.312‑313参照。

(出典)Sigma(1996)“Deregulation and liberalization of market access” p.31参照。

図1 保険市場の競争強化

韓国における生命保険規制・監督の新しい方向性に関する考察

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言い換えると,OECD加入や

IMF

金融危機のような国外の環境変化,保 険産業の再編のような国内の環境変化にもとづく金融環境の変化に伴い,

様々な規制緩和措置が行われる。そこでは,自由競争が促進されるとともに,

企業の創意力と国際競争力が引き上げられるなど,市場の効率性を高め,持 続的な成長要因をもたらす肯定的な面がある。その反面,競争が激化するこ とにより,様々な経営上のリスクや保険会社の破綻の可能性も増大し,市場 の安定性が減少する否定的な面がある。したがって,監督官庁による保険産 業の規制・監督は,保険会社の財務健全性の強化と消費者保護に焦点を合わ せることになる(図2)。

韓国における保険産業の規制・監督は,1970年代までは政府主導で行われ ており,そこでの市場競争は極めて制限的であった。その後,1980年代末か らは保険市場の開放とともに,規制緩和措置が行われ,市場の効率性向上に 焦点を当ててきた。それに伴い,安定性の確保に関する必要が高まっており,

規制・監督は,保険会社の自主性を守りながら,保険会社が安定的な環境の

(出典)柳建植(1997) 保険規制緩和に伴う生保経営と保険監督政策の方向 , P.47参照。

図2 保険産業における規制緩和の影響

保険学雑誌 第 625号

る め強 送りします

本文のところの上付きが

(8)

下で,健全な経営ができるような方向に変化してきている 。

3.生命保険産業における規制緩和の歴史

韓国における生命保険産業の規制緩和(自由化・開放化・国際化)の歴史 については,大きく5つに分けることができる。それは,①1962年の経済開 発計画,②1986年の韓米保険協議,③1996年の

OECD

への加入,④1997年

IMF

金融危機,⑤2012年の韓米

FTA

である。以下では,それぞれの詳 細な内容について述べたい。

3.1 経済開発計画(1962年)

韓国における生命保険に関しては,1962年1月に初めて 保険業法 , 保険募集取締法 , 外国保険事業者に関する法律 の3つの法律が制定さ れた 。その後,1977年12月31日にはこの3つの法律を統合して,1つの保 険業法としてまとめられた 。なお,1962年には第1次経済開発5カ年計画 が推進され,この一環として生命保険会社が国民貯蓄機関として選定された。

それをきっかけとして生命保険が団体保険市場を中心に急速に成長し,1970 年代からは個人保険を中心に成長してきた。

外資系生命保険会社の参入については,1968年に初めて,外国籍を保有し ている人,または外国法に基づいて設立された法人を営業対象とした外国保 険事業者の国内進出を 外国保険事業者に関する法律 に基づいて許可し た 。当時の外資系保険会社の参入形態は,代理店形態であり,設立許可の ための供託金は2千万ウォン(約200万円)であった。参入できる会社数は,

最初は3社に制限されたが,すぐに緩和され,10社が営業許可を得た。なお,

14) 鄭曇燦(1994),p.5参照。

15) その前には,日本の保険業法を適用していた。なお,この3つの法律も日本 の保険関係法令をほぼそのまま適用したものである。

16) 金 奇(1988),p.144参照。

17) 朴承 (1988),p.205参照。

い方向性に関する考察 生命保険規制・監督の新し

韓国における

が入るため強制送りします 本文のところの上付き

(9)

1974年には,競争激化を理由で新規参入が禁止されている 。

3.2 韓米保険協議(1986年)

1980年代に入ってからは,米国による保険市場開放の要求が強くなってき た。そのきっかけになったのは,1985年7月15日に

AIG

が韓国の保険市場 の中で不公正取引行為が行われていると

USTR(米国通商代表部)に提訴

したことである。そこで当時のレーガン政府は同年9月に韓国の保険市場が 米国通商法301条 に違反しているか否かに関する調査を

USTR

に指示し た 。同年10月には,韓国の生損保業界の代表が米国を訪問し,USTR 意見書を提出し,協議を行った 。

2回に亘る協議の後,両国は1986年7月にその結果を発表した。韓国は米 国通商法301条による調査撤回を求め,1986年末まで米国の生命保険会社1 社を支店形態での進出を容認,また,その他に条件を満たしている他の生命 保 険 会 社 の 進 出 も 原 則 的 に 認 め た 。そ の 後,LINA(Life Insurance

Company of North America

)生命 (1987年4月23日),ALICO

 

生命 (1987

年10月 2 日),AFLAC生 命(1989年 2 月 4 日),GEORGIA生 命(1989年 10月2日)が韓国の生命保険市場に参入した 。なお,韓国大手企業との合 弁形態の米国生命保険会社も登場した。

3.3 OECD への加入(1996年)

韓国の

OECD

への加入は29番目であり,アジアの国の中では日本に次い で2番目である。OECDに加入することにより,韓国の保険産業は世界各 国と同様に公正な競争を行うため,規制を緩和しなければならなくなった。

政府は

OECD

への加入のような保険市場の国外開放に備え,すでに1992年 18) 朴承 (1988),pp.205‑206参照。

19) 李京龍(1990),p.111参照。

20) 朴承 (1988),p.206参照。

21) 李京龍(1990),p.111参照。

22) 李京龍(1990),p.133参照。

保険学雑誌 第 625号

(10)

に 保険市場の開放に関する自由化案 を発表し,①生保の無配当商品の導 入,②外国保険会社の業務用不動産取得許可,③再保険の自由化,④独立代 理店および保険ブローカー制度の導入,⑤クロス・ボーダー取引の許可,⑥ 外国保険会社の生損保協会への正会員加入,⑦全国的な損害調査事務所網を 持たない保険会社にも自動車保険の取扱を許可,の7つの内容について段階 的に規制を緩和していくことにした。

これを踏まえ,OECDとの協議を経て,1997年1月までにクロス・ボーダ ー取引の認容種目を拡大し,経済的需要審査制度 (Economic Needs

Test

)を廃止した。さらに,保険仲立人制度については,損害保険は1997

 

年4月,生命保険は1998年4月までに導入されると同時に国外にも開放した。

その他に,再保険市場は1997年4月までに自由化し,アクチュアリー業と損 害査定業は1998年4月までに開放することにした 。

3.4 IMF 金融危機(1997年)

韓国は

OECD

に加入して間もなく,1997年に

IMF

金融危機に陥った。

1995年に1万ドルであった国民平均所得は6千ドルまで急減し,1998年には 経済成長率−5.8%という深刻なデフレ状態になった。そこで政府は,金融 構造改革 ,企業構造改革,労働市場改革,公共部門改革といった 4大経 済構造改革 を実施した。それに伴い,金融監督機構も改編され,以下のよ うな追加規制緩和政策を行った 。

23) 新しい外資系企業が国内市場に参入する際,それが国内の経済的な基盤に基 づいて妥当であるかどうかを政府・業界・協会が統制する制度である。しかし,

この制度は不明確であり,透明性に欠けるとの指摘を受け,1997年1月から廃 止された。すなわち,これは外資系企業による国内の保険市場への参入時,支 店や子会社などの営業拠点を通じた方式,または事業者の本社から直接営業を 行う方式のすべてが認められることを意味する。

24) Lee, Sang Hee(2011),p.61参照。

25) 金融構造改革には,不良金融機関の整理・不良債権の整理,BIS比率基準な どの資産健全性強化の内容が含まれている。

26) Lee, Sang Hee(2011),pp.62‑70参照。

韓国における生命保険規制・監督の新しい方向性に関する考察

(11)

① 5大企業の生命保険市場への参入を制限(従来は15大企業の参入を制 限)(1996年5月)

② 5大企業についても生命保険市場への参入を許可 (1997年8月)

③ 生・損保両業界による第3分野商品の取扱いを許可(1997年7月)

預金者保護機構 を 預金保険公司 に統合 (1998年4月)

⑤ 保険会社の経営実態評価制度を導入(1998年12月)

⑥ 保険会社のコーポレートガバナンスを改善 (1999年3月)

⑦ 生命保険会社の支払余力制度を改善(1999年5月)

⑧ 生命保険の経営統一公示基準を制定(1999年5月)

3.5 韓米 FTAの内容(2012年)

韓米

FTA

の中で,保険産業に関する内容は, 第13章金融サービス の ところに定められている。さらにその内容は,大きく 民間保険分野 , 国営保険分野 , 共済分野 の3つの分野に分けられている。以下では,

それぞれの内容について述べたい。

⑴ 民間保険分野

まず,民間保険分野における規制緩和策の措置は,①保険商品およびサー

27) 1987年から外資系生命保険会社による国内生保市場への参入は認められたが,

国内の大手企業15社に対しては市場競争の激化を理由に生保市場への参入を認 めなかった。その後,1996年5月30日からは,大手企業5社に対しての参入制 限になった。さらに,1997年8月には保険業法を改正し,資本力のある生命保 険会社の育成と少数の生保会社による市場集中の現象を防ぐために,大手企業 5社に対しても生保市場への参入を認めた。

28) 金融の国際化・自由化により,金融機関同士の競争が激しくなり,金融機関 の破綻の可能性が高くなるにつれ,預金者保護法に基づいて個別に運営されて きた預金保険基金,保険保証基金,信用管理基金,安全基金の預金者保護機構 を1998年4月から預金保険公司に統合した。

29) IMF金融危機を克服するための4大改革課題の1つとしてコーポレートガ バナンスの改善が取り上げられた。それに伴い,総資産2兆ウォン以上の保険 会社は社外取締役制度と監査委員会制度の導入を義務化し,すべての保険会社 は遵法監視人制度を導入することになった。

保険学雑誌 第 625号

(12)

ビスの提供,②監督の透明性,③自主規制機構,④苦情処理,⑤保険の迅速 な利用可能性,⑥保険ワーキンググループの設置,の6つに分けられている。

①保険商品およびサービスの提供は,内国民待遇により,相手国の国境間 金融サービスの供給者が貿易関連保険商品の国境間取引を行うことを許 可した。そして,保険コンサルティング,リスク評価,損害査定,保険 計理業務といったサービスも許可した。

②監督の透明性については,認可審査期間を従来の150日から120日に短縮 し,監督規定を改正する際の意見募集期間を従来の20日から40日に拡大 した。

③自主規制機関が内国民待遇と最恵国待遇の義務を遵守することを規定し ている。現時点で,韓国は保険開発院 が保険自主規制機関として定 められているが,米国には,自主規制機関は存在しない。

④苦情処理は,すべての苦情について各保険会社の相対的規模を考慮した 上で開示することに定められた。その際,苦情指数の割合およびレベル,

または他の合理的な形態による透明な方式で開示されなければならない。

⑤保険の迅速な利用可能性に関しては,保険サービスを迅速に提供するた めに,発効後1年以内に,例外リストアクセスに基づいた商品届出手続 を採択する。もし,その商品が規定の基準を満たさない場合,韓国の金 融監督委員会は新商品を販売する前に事前商品届出を要求することがで きる。

⑥保険ワーキンググループは,各当事国の金融サービス監督組織に関連す る公務員で構成される。グループの主な協議内容は,透明性,郵政事業 本部,保険を販売する業種別協同組合と民間保険事業者間の同等な競争 を保障するための措置,金融監督,政策等を行うことになっている。

30) 保険開発院は,政府機関ではなく,社団法人である。

韓国における生命保険規制・監督の新しい方向性に関する考察

(13)

⑵ 国営保険分野

国営保険分野(主に郵政事業本部の保険)に関する内容としては,他の保 険会社と公平な競争が行われていなかったという理由の下に,FTA発効後,

変額保険,損害保険,退職保険等を含む新商品の販売が禁止されるようにな った。そして

FTA

発効後2年以内に,金融監督委員会は郵政事業本部が提 出する財務上の各種書類を確認することになった。なお,同じく2年以内に,

付属書13−B 第6節 付属書13−D,

確認書簡 付属書13−C 付属書13−B

第9節 付属書13−B

第5節 第13.12条 第13.11条,

付属書13−B 第4節 第13.5条,

付属書13−A

・支払能力(ソルベンシー)の導入(3年以内)

・金融監督委員会は,郵政事業本部が提出する財務上の各種書類を 確認し,必要なときに意見を提出(2年以内)

・郵政事業本部が行う保険商品の広告について,民間保険会社と同 一の規制を適用(2年以内)

・変額保険,損害保険,退職保険等を含む新商品の販売禁止

・保険商品販売の限度額を引き上げる前に金融監督委員会と協議

・各当事国の金融サービス監督組織に関連する公務員で構成

・毎年1回会合し,その結果を共同委員会に報告

・例外目録アクセスに基づいた商品申告手続を採択(1年以内)

・すべてのバンカシュランス商品について商品届出を要求する。

・各当事国はすべての苦情情報について保険会社の相対的規模を考 慮した上で開示

・各当事国は自主規制機関が内国民待遇と最恵国待遇の義務を遵守 すること

・監督規定を改正時の意見募集期間を20日から40日に拡大

・認可審査期間を150日から120日に短縮

・貿易関連保険商品の国境間取引許可

・保険仲介業に関する国境間取引許可

・保険コンサルティング,リスク評価,損害査定,計理業務の国境 間取引許可

・現地法人や支店を通じた新保険商品およびサービス提供

4大共済 郵政事業本部の 保険 保険ワーキング グループの設置 保険の迅速な利 用可能性 苦情処理 自主規制機関 監督透明性 保険商品および サービスの提供

(注1) 公的退職年金制度および法定社会保障制度の一部を構成する活動やサービ スに対しては適用されない(第13.1条)。しかし,当事国が自国の金融機 関に対して公共機関または金融機関間の競争を許可した場合には例外的に 適用される。これにより,韓国の退職年金,米国の民間保険会社が取扱う 健康保険と労災保険は規定が適用される。

(注2) 自主規制機関について,韓国では 保険開発院 が定められているが,米 国では定められていない。

(注3) 韓国における4大共済は,農業協同組合中央会,水産業協同組合中央会,

セマウル金庫連合会,信用協同組合中央会である。

(出典) 崔桓碩(2013) 韓国における生命保険市場の再編と構造分析 ,p.182参照 表1 韓米 FTAにおける保険・共済分野の主要内容

区分 主要内容 詳細内容・規制事項 条文

保険学雑誌 第 625号

(14)

郵政事業本部が行う保険商品の広告について,民間保険会社と同一の規制が 適用される。

⑶ 共済分野

共済分野に関する内容としては,韓国において4大共済といわれている農 業協同組合中央会,水産業協同組合中央会,セマウル金庫連合会,信用協同 組合中央会について,FTA発効後3年以内に金融監督委員会が4大共済の 支払能力(ソルベンシー)を監督することである。

4.保険産業と隣接業界との 監督の一元化 に関する考察

4.1 韓米 FTAの特徴

保険産業における規制緩和の歴史から考えると,既存の規制緩和の目的は 保険産業における効率性の向上であった。すなわち,護送船団方式がもつ非 効率的な部分の効率化(自由化)と,国外からの圧力による保険産業の開放 が主な関心事であった。そこで,1987年の韓米保険協議,1996年の

OECD

加入,1997年の

IMF

金融危機を経て,韓国の保険産業は大幅に自由化され てきた。ところが,2012年に発効された韓米

FTA

の中で,民間保険分野に ついては,大きな規制緩和はみられない。その理由は,外資系生命保険会社,

特に米国系の生命保険会社の参入についてはすでに1987年に開放されており,

その他の料率,商品,資産運用,健全性基準,クロス・ボーダー取引などの ような規制緩和部分もすでに幅広く自由化されているためである。したがっ て,民間保険分野に関する韓米

FTA

の規定は,認可審査期間の短縮,保険 商品審査制度の改善のような規定に止まっている。

その他に,今まで隣接業界であった郵政事業本部の保険と共済については 新しい規制・監督方針が定められた。郵政事業本部の保険の場合は,取扱商 品の制限,保障金額の制限などの措置を通じて今までの市場拡大戦略に歯止 めが掛かられた 。なお,4大共済については金融監督委員会によるソルベ ンシー・マージン監督が定められた。これをもって民間保険会社との公正な

31) Jung,Young Seok(2012),p.20参照。

韓国における生命保険規制・監督の新しい方向性に関する考察

(15)

競争環境が整備されたとの認識が強い

すなわち,韓米

FTA

の目的は,市場の効率性より,国営企業の競争条件 の制限,共済事業との監督一元化などを通じて,保険と隣接業界との対等な 競争条件(レベル・プレーイング・フィールド)を図ることであるといえる。

韓米

FTA

の発効後,その目的を達成するために,韓国では保険ワーキング グループを設置し ,2013年5月にその結果が発表された 。その内容は,

32) Jung,Young Seok(2012),p.20参照。

33) 保険と郵政事業本部の保険,保険と共済の間で,監督の一元化に関する議論 は,長い間続いてきた。郵政事業本部の保険は国営企業として,共済事業は協 同組合の保険として,それぞれ異なる出発点から始まってきた。そして,この 3つの業界は国の経済成長とともに大幅な成長を遂げてきた。しかし,市場シ ェアの獲得のために激しい競争が行われ,郵政事業本部の保険は従来の 小 口 保険から,保険金の金額を増やしていく 大口 保険の戦略へと転換した。

また,4大共済は事実上組合員以外の人も対象に保険販売を行ったり,生命・

損害共済を兼営したり,協同組合の本来の業務,たとえば,農協の場合,農民 と直結する保険制度ではなく,民営保険の生命保険,火災保険などに注目して きた。そのため,民間保険会社からは批判の声が高くなり,保険と共済が同一 の規制の下で監督されなければならないという主張がなされてきた(申守植

(1986),pp.33‑36参照)。

34) 保険ワーキンググループは,金融委員会(信協共済の監督官庁),金融監督 院,安全行政部(セマウル共済の監督官庁),海洋水産部(水協共済の監督官 庁),未来創造科学部(郵政事業本部の保険の監督官庁)の担当者から構成さ れている。

35) 2013年5月に金融委員会が 郵便局保険および共済に関する規制改善案 を 発表した。その概略は以下のようである。

1.類似保険に対して保険会社水準の規制を適用

⑴ 保険(共済)営業に関する内部統制を強化

①支配構造の改善:原則的に,社外取締役および監査委員会の構成など,

支配構造に関する部分は共済団体の特殊性を認める。ただし,共済団体の 順法監視人の選任および内部統制については,保険業と同一水準の規制が 必要,②生・損保兼営:共済団体において生・損保事業の分離は中長期課 題にし,生・損保間の会計分離体系を構築,③保険専門人の制度関連:保 険業と同一に,各共済団体の監督基準に保険専門人に関する内容を反映

⑵ 財務健全性および支払能力に関する管理強化

①資産運用の規制:資産運用の規制方式については,各共済団体の特殊性 保険学雑誌 第 625号

(16)

大きく①類似保険に対して保険会社水準の規制を適用,②類似保険に対する 健全性監督の強化にまとめられている。さらに,保険会社水準の規制の適用 については,内部統制,財務健全性,販売チャネル,商品,のような幅広い 範囲まで検討が行われている。

以下では,保険産業と隣接業界との監督の一元化が生命保険産業と消費者 に与える影響について考察する。

4.2 生命保険産業への影響

保険産業と隣接業界との監督の一元化は生命保険産業にどのような影響を もたらすのか。対等な競争が目的であれば,民間保険,郵政事業本部の保険,

を認めながら,不公正な貸出禁止などは保険業と同一の水準に規制,②財 務健全性の監督:郵便局保険,共済団体は,財務健全性の基準として RBC(Risk Based Capital)制度を2014年から適用,RAAS(Risk Assessment and Application System)制度は猶予,③責任準備金積立 

の強化およびCFP(Cash Flow  Pricing)制度の導入:各共済団体の特 殊性を反映し,一部の責任準備金の差異は認めるが,基本的に積立基準を 同一に適用,なお,CFP制度を導入,④国際会計基準(IFRS)の導入:

IFRSの導入については,各中央会および監督官庁により決定,ただし,

RBC比率に影響を与える一部の勘定については,IFRS基準に基づいて 算出することを規定

⑶ 販売チャネルおよび営業規制

①募集従事者の教育および登録:各共済団体の特殊性に鑑みて,各共済団 体の募集従事者の登録(申告)制度は認めながら,報酬教育,資格要件,

募集従事者に対する不公正行為の禁止などは保険会社と同一の規制を適用,

②募集方式に関する規制:原則的に,すべての募集規制に関する内容は保 険業と同一の規制を適用

⑷ 保険商品に関する規制

①商品開発基準(基礎書類):基礎書類の作成時,外部の検証を必須にし,

記載事項の順守を義務化,②商品の公示:商品別の比較公示は現段階では 難しいが,保険案内資料による公示は保険業と同一に適用

2.類似保険に対する健全性監督の強化

⇒郵便局保険と共済団体は,毎年決算後,財務健全性の指標および主要の経 営実績を金融委員会に提出

韓国における生命保険規制・監督の新しい方向性に関する考察

(17)

共済団体は,今後同一のフィールドの中で競争することを意味する。たとえ ば,共済団体の中でも最も規模の大きかった農協共済は2012年3月2日付で 組織形態を 協同組合 から 株式会社 に転換した。それと同時に,生・

損保兼営の体制を分離し,監督法規も既存の 農業協同組合法 から 保険 業法 に変わった。その理由は,世界的に広がる貿易障壁の撤廃の流れの中 で,組織の非効率性を削減し,競争力を高めるためである 。

その他に,農協共済の次に規模が大きかったセマウル共済は,損害保険会 社を買収して子会社にするなど,保険市場への進出を積極的に行っている。

韓国において,以上のような共済団体の保険会社化,または共済団体の保 険市場への進出は,今後,さらに進められるものとして予想される。この現 象が生命保険産業に与える影響としては,市場規模の拡大,競争の促進の2 つが考えられる。まず,市場規模の拡大としては,既存の生命保険市場の規 模に郵政事業本部の保険と農協共済を加えると,2010年度基準で,総資産は 4,166,519億ウォンから4,815,500億ウォンまで13.5%増加し,収入保険料は 830,074億ウォンから996,772億ウォンまで16.7%増加する。次に,生命保険 市場に郵政事業本部の保険と農協共済の2つのプレーヤーが加わることによ り,市場シェアの獲得のため,競争が激しくなると思われる。

今まで韓国の生命保険市場は大手3社 による独・寡占状態が続いてき た。しかし,1996年の

OECD

加入,1997年の金融危機などの規制緩和時代 を経て以来,2000年から2010年にかけては,大手3社の市場集中度現象は逓 減している(図3)。このような環境の中で,郵政事業本部の保険と共済事 業まで生命保険市場に進出すると競争はさらに激しくなると予想される。

36) 崔桓碩(2013),p.175参照。

37) 生命保険大手3社は,サムスン生命,ハンファ生命,教保生命である。

保険学雑誌 第 625号

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韓国における規制緩和の歴史,または他国の事例からみると,護送船団方 式のように,政府が効率性より安全性を重視するならば,官主導型の寡占市 場になる。その結果,韓国の生命保険市場は,1986年まで生保6社体制で成 長した。一方で,安全性より効率性を重視するならば,市場競争の結果,少 数の大型生命保険会社と多数の中小型生命保険会社で構成される,いわゆる 少大多小型市場が形成される特徴がある。現在は生保大手3社,中堅・中小 20社体制に変わってきている。しかし,監督の一元化による隣接業界の保険 会社化,または保険市場への進出は,限られた市場の中での競争を激化させ,

市場の新しい再編可能性を内包している。

4.3 消費者への影響

保険産業と隣接業界との監督の一元化は,農協共済の事例のように共済団 図3 生命保険市場における市場集中度変化の推移

(注)グラフの左側はHHI,右側はCR3である。

(出典)崔桓碩(2013) 韓国における生命保険市場の再編と構造分析 ,p.187参照

38) 市場構造を測定する指標としては,CR(Concentration ratio:集中度)と HHI(Herfindahl-Herschman Index:ハーフィンダル指数)が使われている。

韓国における生命保険規制・監督の新しい方向性に関する考察

(19)

体の保険会社化や保険市場への進出という現象を発生させ,生命保険市場に おいて規模の拡大と競争の促進という影響を及ぼす。それが消費者にはどの ような影響をもたらすのか。一般的に,市場の中で競争が促進されると有効 競争の結果,価格の引下げやサービス質の向上のような効果が発生するため,

消費者はそれを利用することができる。その反面,競争が激しくなると市場 の不安定は高くなり,それに伴って保険会社の破綻の可能性も高くなるため,

消費者保護の対策が必要であることは規制緩和に関する先行研究のところで も説明した。

激しい競争が行われる市場の中では,効率性を追求するために,生命保険 会社の経営目標として選別的保険引受と超過利潤分配を優先する可能性が高 いと認識されている 。この2つの経営目標を共済団体が採択することにな ると,今までの共済の理念,すなわち,経済的に困難な人々のための助け合 い組織が崩れる可能性がある。

なお,共済団体は,保険市場の不完全性(すなわち,供給者数の制限と 独・寡占的な価格形成,産業に対する参入の制限と情報の不完全など)に基 づいており,保険産業と相互補完性をもって成長してきた 。しかし,共済 団体の保険会社化の現象は,市場の不完全な部分を放置してしまう結果を招 きやすい。特に,今まで共済団体のサービスを利用してきた一部の消費者,

経済的貧困層の場合は,保険への加入ができなくなる可能性がある。その結 果,生命保険の保障を受けることができない 保険死角地帯 が形成される。

保険と隣接業界との監督の一元化を通じて,公正な競争環境を作ることには 意味があるとはいえ,そこから生じる問題,たとえば,すべての消費者の需 要と期待を充足させない問題などに対処していかなければならない。

5.おわりに

韓国における生命保険産業の規制・監督は,政府主導の護送船団方式から

39) この現象は主に外資系生命保険会社から見られる。

40) 鄭洪周(2004),pp.1‑3参照。

保険学雑誌 第 625号

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業界の自主規制に変わってきた。その理由は,生命保険産業の効率性を高め,

保険産業の質的な発展と急変する国外環境に対して競争力を備えるのが主な 目的であった。そこでは,財務健全性の強化と消費者保護のような問題が提 起され,ソルベンシー基準や預金保護制度などを導入することにより,対応 してきた。

しかし,韓米

FTA

をきっかけとして,生命保険産業の規制緩和措置は 効率性の向上 の他に,隣接業界との 監督の一元化 が主な関心事とし て取り上げられている。韓国の場合,4大共済は,事実上組合員以外の人も 対象に保険販売を行ったり,協同組合の本来の業務,たとえば,農協の場合,

農民と直結する保険制度ではなく,民営保険の生命保険,火災保険などに注 目してきた。そのため,保険と共済の境界が薄くなり,保険会社からの批判 の声は長年続いてきた。このような状況に鑑みると,監督の一元化は保険産 業と共済団体との間で公正な競争の環境を作ったことに意味があるといえる。

ただし,保険と共済は,相互補完性をもっている団体であるため,共済団 体の保険会社化,または共済団体の保険市場への進出といった結果は,新し い問題を発生させる可能性が高い。それは,経済的の貧困層の無保険化の問 題である。このような保険死角地帯の問題が発生しないよう,国民多数の福 祉増進のために,新しい保険制度が求められている時期であり,それをどの ように解決していくべきなのかは今後の課題である。

(筆者は早稲田大学商学学術院助手)

【参考 献】

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保険学雑誌 第 625号

参照

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