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生命保険の金融化現象

武 田 久 義

■アブストラクト

1980年代以降,生命保険の商品・資産運用・販売面に大きな変化が生じた。

この変化を金融化現象という点から考察している。商品面では一時払い養老 保険と変額保険について,資産運用面では資金の増大に伴う資産運用の変化 について考察した。そして販売面では,窓販の実施にいたる経緯と生命保険 買取の金融的側面について検討を行った。なお,本稿では販売面における金 融化現象を中心に考察を行っている。

■キーワード

金融化現象,窓販,生命保険買取

1.はじめに

本稿は,1980年代以降に大きな変化が生じ,今なお進行しつつある日本の 生命保険事業における商品・資産運用・販売面の変化ついて,これを金融化 現象という点から考察しようとするものである。1980年頃から,日本の社会 には大きな変化が生じた。そしてそれは,現在もなお進行しつつある。それ は,生命保険事業においても様々なかたちであらわれている 。

情報化社会において金融化現象が不断に見られるようになることは,一般

/平成19年12月25日原稿受領。

1) 損害保険の領域においては,とくに1990年代から商品面での保険と金融の交 錯現象が現れている。これについては,吉澤卓哉, 保険商品と金融商品の交 錯 ( 保険学雑誌 第572号所収)を参照。

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的に認められることだろう。それは,基本的に情報と貨幣との類似性に由来 していると筆者は考えている 。生命保険においても,これは例外ではない。

否,生命保険においては,金融化現象はより顕著に見られるかもしれない。

生命保険の本質的機能が保障にあることは,万人が認めるところである。そ して,副次的機能として金融機能があることも,誰も否定しない。しかし,

1980年頃から日本の金融における生命保険の役割が増大し,生命保険の金融 機能が大きく前面に出てきた。そしてこれらの背景となったものが,短満期 の 一時払い養老保険 の販売による膨大な保険料収入であった。このよう な背景のもとで,日本の生命保険会社は金融機関としての地位を築きつつあ った。そして1990年6月,保険審議会は中間報告 保険事業の役割につい て において, 金融仲介機能 について記すまでにいたった。

生命保険の金融化現象は,それ以前から目に見えないかたちで進行してい たかもしれない。しかし,それが比較的明瞭に意識されるようになったのは,

この一時払い養老保険の積極的販売以降であったと考えてもよいだろう。こ の一時払い養老保険の積極的販売を契機として,商品面,資産運用面におい て金融化現象が一挙に進行することとなったのである。これについてはすで に一定の考察を行ったことがあるので ,本稿においては,商品面および資 産運用面での金融化現象に関する記述は簡単に行い,販売面における金融化 現象について紙幅の許す範囲で詳しく見ていくこととする。そして1990年代 の後半に至ると,販売面における金融化現象が本格的に進行するようになっ たのである。

販売面における金融化現象を前もって述べておくならば,おおよそ次のよ うになるだろう。

生命保険の販売面における金融化現象の一つは,銀行等の金融機関の窓口

2) また,高齢化社会が生命保険の金融化現象を促すという指摘もある。(庭田 範秋, 環境変化と生命保険 昭和58年,東洋経済新報社,第7章。)

3) 拙稿, 生命保険事業における質的変化 ( 桃山学院大学総合研究所紀要 第31巻第2号,2005年,11月)。

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において生命保険を販売すること(以下,窓販と記す。)であった 。日本 における最大の金融機関である銀行の窓口で生命保険が取り扱われる場合,

生命保険商品そのものに基本的な変化は無くとも,販売の経路に根本的な変 化が生じたことで,生命保険そのものに金融的性格が付与されたと言うこと ができるものと思われる。そしてまた,現在,日本の生命保険事業に関連す る大きな問題の一つとして,生命保険の買取が進められようとしている。

2004年には,日本で最初の生命保険買取会社が設立され,生命保険の買取を めぐって訴訟が発生した。生命保険会社の側が勝訴したとはいえ,生命保険 の買取がすでにアメリカでは広範に行われていることや判決で示された様々 な見解を考慮した場合,生命保険買取現象が日本でも進行するおそれは十分 にあり得ることである。生命保険買取に伴う金融化現象もまた,きわめて重 要な問題である。

2.商品面における金融化現象

1973年の第一次石油危機後,日本経済の低成長とインフレーションの進行 の中で個人の金融資産は増大し続けた。そして1980年代以降,生命保険事業 を取り巻く環境は,金融の自由化・国際化,高齢化,情報化へ向けて急速に 変化した。このような環境の変化,とくに金融自由化の流れの中で,国民の 生命保険に対するニーズは貯蓄機能を重視したものに変化した。そして生命 保険会社は,このニーズに対応した。そして生命保険の伝統的な保障機能ば かりでなく,貯蓄機能を重視した一時払い養老保険や変額保険等の金融的性 格が強い商品が販売されるようになったのである。

⑴ 一時払い養老保険

昭和50年代になると,以前から存在していた保険料の 一時払い を代表 的な商品として大規模な販売が行われた。保険期間を短期に設定して,この

4) 銀行等の窓口における生命保険の販売としては,1987年に提携によって個人 年金保険が販売された。しかしそれは,短期間で終息した。

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時期に大規模に販売することとしたのは,保険料収入の減少をカバーすると いう目的のためであった。そして,5年満期を中心とした短満期の一時払い 養老保険は,1980年以降脚光を浴びるようになり,1982年度には収入保険料 は前年度比246.4%,そして翌1983年度には148.2%,さらに1984年度には 208.9%と,爆発的な売れ行きを見せるようになった。この背景には,国民 の金利獲得志向が存在していた。生命保険会社は国民の広範な金利志向ニー ズに適合的な商品を設計することによって,膨大な保険料収入を得ることが できたのである。

事実,一時払い養老保険の金利相当分は他の金融商品のそれよりも高かっ た。1984年4月時点における他の金融商品と年間利息を比較した場合,一時 払い養老保険(5年もの)が約8.8%であったのに対して,定期預金(同)

が3.4%,相互掛金(同)が4.6%,抵当証券が約6.8%(1年もの)から約 7.4%(3年もの)等というように,一時払い養老保険はかなり有利であっ た。このように,短満期の一時払い養老保険は,保険商品というよりはきわ めて金融商品としての性格が強い商品であった。

⑵ 変額保険

一時払い養老保険の後に,誰の眼にも明らかな金融商品として登場したの が,変額保険であった。

戦後の激しいインフレーションに対応するための一つとして変額保険の知 識が日本に最初に紹介されたのは,1950年代の後半であった。しかしその当 時は,基本的に変額保険の知識を紹介する段階に止まっていた。しかし,

1967年頃から生命保険事業多角化の一つとして,変額保険についての検討が 進められてきた。そして変額保険を日本に導入するか否かについては,賛否 両論の激しい議論が続けられていた。そしてアメリカのエクイタブル社の日 本における変額保険の発売の申請を一つのきっかけとして,1986年10月から 日本の生命保険会社が変額保険を販売することとなった。

新たに導入された変額保険においては,その保険にかかわる蓄積保険料部

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分の積立金を他の定額保険と分離区分し,貯蓄保険料とその累積である保険 料積立金だけで特別勘定を設けて管理するものであった。そしてその資産の 運用実績に応じて保険金額が変動することとなっていた。このような内容の 変額保険が金融商品であることは,明白である。そしてこの変額保険は,そ れが販売される過程において生命保険会社の金融機関としての性格をより一 層強めていくこととなったのである。しかし最初に日本で変額保険について の議論がなされたときは,インフレーションに対応する保険の開発が基本的 な目的であった。それが日本に導入されるようになったときには,変額保険 には二つの側面があった。一つはインフレーションに対応する 保障機能 を主とする保険であり,もう一つは投資収益による金銭価値を高めることを 目的とした 金融商品 としての保険であった。そして,変額保険は金融商 品としての性格を強く発揮するようになるのであるが,それは,次のような 原因によるものであった。

その一つは,変額保険の資算運用に関連するものであった。すなわち,変 額保険を販売する生命保険会社は,運用業績が白日のもとに晒されるが故に 自らが積極的に金融機関として行動することは必然的であった。本来,変額 保険は短期的商品ではない。つまり短期的値上がりではなく,本来,長期に わたる元本の値上がりを実現することが目的である。しかし,現実はそのよ うにはいかなかった。変額保険においては,4半期ごとにディスクロージャ ーがなされることになっており,現実にはそれで資産運用の成果が問われる ことになっていたからである。

二つ目の原因は,生命保険会社の営業上の姿勢に関連している。生命保険 契約においては,伝統的に販売部門の力が強い。販売の第一線の営業職員と 顧客との対応の中で,変額保険の金融商品的性格が強められていった。それ は,顧客の金利指向ニーズの存在・強化であり,そしてまたそれに対応する ことが販売に有利であるという営業職員の意識の相乗作用によるものであっ た。

第三の原因は, 短満期 の一時払い養老保険の影響である。一時払い養

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老保険は1988年夏以降,利回り面での優位性は失われていた。そして金利を 指向する顧客は,その運用対象を変額保険に移した。そして生命保険会社も また,それを積極的に推進した。金融商品であった一時払い養老保険の加入 者が変額保険に投資の対象を移したことにより,変額保険が金融商品的色彩 を帯びることは運命付けられていたと言うべきかもしれない。

3.資産運用面における金融化現象

高度成長期を通じて順調に展開を遂げてきた生命保険事業における資産運 用は,1973年の第一次オイルショックを契機として大きく変化した。このオ イルショックを経て,日本経済は安定成長に移行した。金融・資本市場を取 り巻く環境は,大きく変化した。株式の時価発行や転換社債の発行が増大す るとともに,金融の自由化・国際化,証券化が急ピッチで進行した。そして このような変化は,資産を大きく増加させた生命保険会社の資産運用に大き な影響を与えることとなった。

ところで,生命保険の資産運用に関しては,従来から強い公的規制が存在 していた。しかし,この公的規制が時代の変化に対応して大きく変化した。

この時期の公的規制における最大の変化は,質的・量的な両面において大幅 な規制緩和が進められたことである。そしてそれは,一時払い養老保険等に よる保険料収入の増大とあいまって,生命保険の資産運用における金融的性 格を著しく増大させることとなったのである。

全金融機関に占める生命保険会社の資金力は,1977年度には4.6%であっ た。それが,1980年度に5.2%へと増大した後,毎年増加を続けた。すなわ ち1984年度は6.0%,1986年度は7.0%,1988年度は8.4%,翌1989年度は9.1

%,1992年度10.2%と顕著な増加を続け,1994年度には10.7%にまで至った のである。

大幅な規制緩和と資産の大規模な増加という未曾有の環境変化の中で,資 産運用もまた大きく変化した。そしてその変化は,生命保険の資産運用にお ける金融化を促進することともなったのである。それが最も明白なかたちで

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あらわれたのが,有価証券投資の増大・多様化であろう。

有価証券投資における変化を,本稿では次のように整理しておきたい。

①有価証券投資の量的拡大:運用資産の増大と貸付の相対的減少により,

資金が有価証券投資に集中した。有価証券投資は急速に増大し,生命保 険にとって最大の投資分野となった。

②有価証券投資における多様化:有価証券投資における多様化が進展した。

公共部門の資金調達の拡大を背景に,国債,地方債,政府保証債といっ た公共債が増加した。また,海外の金利情勢の展開を反映して外国有価 証券,とくに外国債券への投資が増大した。

③有価証券投資における質的変化:キャピタルゲインのインカムゲイン化 を可能とする特定金銭信託の枠の拡大によって,生命保険会社の有価証 券投資は質的に変化した。すなわち,純投資の観点から総合利回りベー スで本格的な株式投資が行われることとなった。

④政策投資的な側面の強化:以前は貸付が担っていた生命保険会社と企業 との関係を株式が肩代わりするようになった 。

以上のように,生命保険は資産運用の面においてはとくに,金融化現象が 著しく進展したのである。

4.販売面における金融化現象

⑴ 窓販

販売面における金融化現象の一つは,保険会社以外の金融機関が保険を販 売することに見られる。この窓販は,一般的にはいわゆる 製造と販売の分 離 であり,それ自体は金融化現象とは直接の関係はない。それを金融化現 象としてとらえるのは,以下のような理由からである。

まず第一に,窓販が日本における金融改革という大きな流れの一つとして 実現したということである。日本において金融改革が正式に取り上げられる

5) 出口治明, 大きな変貌を遂げる生命保険業務 (関要編, 変貌する生命保 険 昭和62年,金融財政事情研究会)140頁。

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こととなったのは,1985年9月に金融制度調査会が制度問題研究会を設置し てからである。その後,幾多の討議の後,1991年6月の 新しい金融制度に ついて が答申され,翌年6月の 金融制度改革法 として結実した。そし て周知のように,このような大きな流れと連動して1995年に 保険業法 の 抜本的改正が行われたのである。以上のような変化は,1996年の金融ビッグ バン構想によって,さらに明白かつダイナミックに進行することとなった。

窓販は,何よりもこのような大きな変化の中の一つとして位置づけることが 重要である。

ここで,窓販に至るその後の経緯を簡単にまとめておこう。1996年の金融 ビッグバン構想が出されて以来,議論が重ねられてきた。そして1997年6月 13日,保険審議会第64回総会において,保険審議会報告 保険業の在り方の 見直しについて⎜⎜金融システム改革の一環として⎜⎜ が明らかにされた。

報告の総論における保険業の在り方の見直しに当たっては,①利用者の立場,

②国民経済的立場,③国際性という三つの立場から制度を構築することが重 要であると指摘されている。そして各論の 銀行等における保険販売等 に おいて,次のように述べられている 。

2001年度を目処に,銀行等がその子会社又は兄弟会社である保険会社 の商品を販売する場合に限定したうえで利用者利便の向上等のメリットと 弊害を比較考量しメリットが大きいと考えられる住宅ローン関連の長期火 災保険及び信用生命保険を認めることが適当である 。

そして,これに関して 保険業法上の規制が適用されるべき こと,そし て 実効性ある弊害防止措置を講ずるとともに適切な商品情報提供義務を課 すべき ことが述べられている。

その後2000年5月24日,に 保険業法 の改正案が国会を通過し,2001年 4月から弊害防止措置(弊害防止措置については後述する。)を講じたうえ で,次の商品を対象として窓販を開始することとなった。これが,窓販の第

6) インシュアランス損保版 1997年6月26日号,9頁。

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一歩である。

①住宅ローン関連の長期火災保険・債務返済支援保険・信用生命保険,(信 用生命保険は,窓口販売を行う銀行等の子会社・兄弟会社である保険会 社の商品に限定)

②海外旅行傷害保険

その後2002年10月1日,窓販は次のように改定された 。窓販の第二次解 禁である。

①窓販対象商品として次のものを追加。個人年金保険(定額,変額),財 形保険,年金払積立傷害保険,財形傷害保険

②住宅ローン関連の長期火災保険・債務返済支援保険・信用生命保険につ いては,従来の専用住宅だけでなく店舗併用住宅を付け加える。

③住宅ローン関連の信用生命保険について,窓口販売を行う銀行等の子会 社・兄弟会社である保険会社の商品に限定していた規制を撤廃する。

なお,この規制緩和に併せて,弊害防止措置等の充実が図られた。

2004年3月,金融審議会は 2005年から段階的に解禁し,遅くても2007年

7) インシュアランス損保版 2002年4月18日号,8‑9頁。この場合の弊害 防止措置は,次のとおりである。

①銀行等が保険商品を販売する際に,保険商品を購入しないことが他の取引に 影響を及ぼさないことについて,顧客への説明がなされるための措置を講じ る。

②銀行等が変額個人年金保険を販売する際に,融資を受けて保険料に充てた場 合,当該商品が元本割れすると,借入金が残ることについて,顧客への説明 がなされるための措置を講じる。

③銀行等が住宅ローン関連の信用生命保険を販売する際に,住宅ローンの返済 に困ったときの相談窓口について,顧客への説明がなされるための措置を講 じる。

④銀行等の内部でマニュアルを策定して研修を実施するとともに,内部検査を 行うなど適切な募集体制を整えることを求める。

⑤銀行等による保険商品の窓口販売の際に発生したトラブルについて,保険業 界に設けられた紛争処理の場で解決を図る場合には,募集を行った銀行等に もその場への参加が義務付けられるようにする。

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には全面解禁することが適当 という旨の答申を行った。そしてその後,

2004年度末に出された金融改革プログラムにおいて,銀行窓販決着が示唆さ れた。そして2005年12月22日から,一時払い終身保険等が解禁された。銀行 窓販の第三次解禁である。

そして2007年10月24日,第40回金融審議会金融分科会第二部会および第38 回保険の基本問題に関するワーキング・グループの合同会合において,2007 年12月22日から銀行等による保険販売の全面解禁が了承され,銀行等の金融 機関の窓口における保険商品の販売が全面的に行われるようになったのであ る。

以上見てきたように,窓販そのものの展開が日本における金融制度のあり 方・変化と深く関連していることがわかる。

窓販を金融化現象ととらえる第二の理由は,窓販が生命保険の経営に大き な影響を及ぼし,ひいてはそれが金融化現象に関係してくるということであ る。それは,窓販が生命保険の業績に一定の影響を及ぼしていることに関係 している。たとえば,2002年に窓販が解禁された変額個人年金保険の保有契 約高は,2002年度の1兆3000億円から2003年度には3兆1600億円に急成長し た。自前の販売網を持たない外資系生保等が,銀行窓販に力を入れたのが一 因とみられている。また,変額個人年金保険の銀行窓販では,銀行サイドが 積極姿勢をみせており,このことが契約の急増に結びついているとされてい る 。欧米では銀行窓販は保険の販売チャネルの大きな柱となってきている のであるが,日本においても 営業職員のチャネルが細ってきている以上,

銀行チャネルに頼るしかない という見解もある 。そして,将来もし窓販 が生命保険の主要な販売チャネルとなる場合には, 製・販分離 は一層進 み,販売側が全面に出てくる可能性が強い。それは,国民のイメージにおけ る金融化現象だけでなく,商品面における金融化現象も促進することとなる

8) インシュアランス生保版 2006年3月16日号,2頁。

9) インシュアランス生保版 2006年12月28日号,3頁。

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だろう 。

生命保険会社はその商品設計において,当然のことながら販売する銀行等 の意向を考慮するようになる。生命保険会社は,銀行等の金融機関が販売し やすいような商品を開発するようになるのである。そしてそのような動きは,

すでに現実のものとなっている 。これは,生命保険商品における新たな分 化をうながすことにつながる。それまでにも一部進行しつつあったとはいえ,

商品面における区別は,基本的に保障機能の強い商品と貯蓄機能の強い商品 という相違であった。しかし,窓販が進行すると,それだけでなく銀行等の 窓口での販売に適した商品とそうでない商品とに分化する。窓販に適した商 品を敢えてあげるとすれば,それはシンプルな商品と販売手数料が高い商品 であろう。そして現状に照らした場合,販売手数料が高い商品は変額年金や 外貨建て定額年金のように一般的に金融商品的性格が強いものが多いと思わ れることである 。このように,少なからず保険商品それ自体の金融化現象 があらわれることとなるのである。

なお,ここで生命保険の金融化現象と直接の関連性は薄いと思われるが,

窓販に伴うリスクについて,一言述べておきたい。それは,変額個人年金保 険等の金融商品は,資金吸収面では有力な商品ではあるが,これらは負債性 金融商品である。したがって,急激な増減は,資金の不安定化につながる 。 すなわち,資金ショートのおそれがあるということである。すでに述べたと ころであるが,窓販は,製・販分離でもある。製造部門である保険会社が販

10) 国民の側からすれば,保険が銀行等の金融機関で購入することができるよう になれば,保険商品そのものが金融商品として意識されるようになることは否 定できない。

11) たとえば,2005年9月の東京海上日動安心生命,そして2005年11月の日本生 命による新型の積立利率変動型一時払い終身保険等の窓販対応商品の開発を初 めとして,2006年の初めから行われた国内の主要生保各社による,窓販の全国 解禁をにらんでの銀行における保険販売の活発化等である。( インシュアラン ス生保版 2005年12月22日号および同誌2006年12月28日号,3頁。)

12) インシュアランス生保版 2005年12月22日号参照。

13) インシュアランス生保版 2007年11月15日号,3頁。

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売部門である銀行等の金融機関をコントロールできないと,リスクをコント ロールできないことになる。1990年代に,生命保険会社は,同様の原因によ る経営破綻を経験しているのである。金融商品の取引は,目に見えない商品 を扱うばかりでなく,リスクが伴っている。保険会社が主導権をとって,銀 行を指導する形で保険を販売していくことが理想である。現実にはかなりの 困難が伴うが,そのような体制を構築することが絶対に必要である。

⑵ 生命保険の買取

生命保険の買取対象となる保険は死亡保障の保険であり,これ自体には金 融的性格は存在しない。しかしそれが売買の対象となるとき,金融的性格が 付与されることとなる。

生命保険の買取については,すでにアメリカで広く行われているほか,オ ーストラリア,シンガポール,香港等で実施されていると言われている。た とえば,1980年代の末に生まれたアメリカの生命保険買取事業は,生活およ び主としてエイズ患者で医療費の支払いのために困窮している者を対象とし ていた。そしてそれは,生命保険の売却を希望する者から,それぞれの余命 に応じて割り引いた価格で死亡保険金を受け取る権利を買い取るというもの であった。この生命保険買取事業は,その後その仕組みと対象を拡大し,現 在では①買取型,②完全転売型,③複数投資家型,④信託利用型等の事業が 存在している 。

そして2004年,日本でも最初の生命保険買取会社である株式会社リスク・

マネジメント研究所が誕生した。そして同社は,保険金受取人の変更を拒否 したエイアイジー・スター生命保険株式会社に対して訴訟を起こした。周知 のように,この訴訟は2006年3月東京高裁によって原告敗訴の判決が下され,

最高裁の控訴棄却により結審した。しかし生命保険会社にとっては,この勝 訴によってすべてが解決したのではないことは明らかである。それは,次の

14) 古澤優子, アメリカで拡がる生命保険買取事業とわが国における展望 (

“ Business & Economic Review”

2005年8月,所収)を参考とした。

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ように生命保険の売買事業に一定の合理性や可能性があることが判示された ことからも判断できる 。

多くの癌患者が,生活費や多額の治療費の捻出に困難を抱え,生活の 困窮に苦しんでいて,この生活の困窮から救済される方法を切望している ところ,このような患者の救済のため,生命保険契約における保険契約者 の地位の売買を認めるべきであるとの意見があり,この意見は世間の注目 を浴びつつある。

その上,米国においては,既に,有効な商取引として,生命保険契約に おける保険契約者の地位の売買が行われている。また,わが国においても,

簡易保険契約については,約款において,保険契約者の地位の譲渡につい て,保険者の同意を要件としていないので,結果として,保険契約者の地 位の売買が可能となっている。

そして, 生活困窮する癌患者らにとっては,生命保険契約における保険 契約者の地位の売買が必要資金取得のための有効な方法となり得ることもう かがわれるので,今後,その是非については議論が尽くされることが望まし いものと考えられる と付言されているのである。

筆者は,生命保険買取がビジネスとして行われることには反対である。そ れは,大きなモラルハザードを誘発するおそれがある。それは,生命保険会 社にとってきわめて大きなリスクとなる。そして,それが現実のものとなる 可能性は否定できない。それが現実となった場合には,生命保険に対するダ メージは決定的である。とくに日本人にとっては,生命の商品化という,厭 うべき現象が目の前に突きつけられることになるのである。平成18年3月22 日の東京高裁判決は,次のように記している 。

一般的に生命保険契約における保険契約者の地位が売買取引の対象と なることによる不正の危険の増大や社会一般の生命保険制度に対する信頼 の毀損が実質的な理由として存在する 。

15) 平成17年11月17日,民事第15部判決。東京地裁平17(ワ)第2406号。

16) 判例タイムズ1218号 (2006年11月1日)。

(14)

生命保険契約の譲渡を自由放任とすれば,買取会社が,窮乏した契約 者,高齢者,判断能力の不十分な者,死期が迫った者等から不当に廉価で 生命保険契約を買い取る等の暴利行為を招きやすいこと(中略),詐欺的 取引や暴力団の資金源とされる等の危険性が危惧されること… 。

生命保険契約における保険契約者の地位が売買取引の対象となること は,場合によっては人命が売買の対象となることに等しい事態もあり得る のであり,ひいては社会一般の生命保険制度に寄せる信頼を損ねる結果に なる 。

しかし,生命保険買取がビジネスとしてアメリカで盛んに行われているこ と,そして日本でも一部とはいえ,これに対するニーズが存在することを無 視することはできない。そしてこのニーズは,決してモラルハザードに関係 するだけではなく,純粋に治療や生活のために必要なものである場合がある ことも考慮しなければならない。このようなことを総合的に判断した場合,

将来の日本で,生命保険買取が実現する可能性は決して少なくはないと思わ れる 。

それでは,生命保険買取はいかなるかたちで金融化現象と関連するのか。

まず第一に,保険契約者が生命保険買取会社に買い取ってもらうとき,金融 化現象が生じる。そして,保険契約者が最初から買い取ってもらうことを前 提として保険契約を結ぶような場合,それはほぼ完全な金融化現象と言うべ きものであろう。しかし金融化現象は,保険契約を買い取った生命保険買取

17) 東京高裁判決もまた,次のように記している。 生命保険契約の被保険者の 死期が切迫したとまではいえないものの,重篤な疾病のために死の危険があり,

その治療費や生活費等の捻出に困難をきたしており,そのために当該生命保険 契約を使用するしか方途がない場合について,今後いかなる救済を図るべきか,

同生命保険契約の買取の効力を認めるためには,生命保険買取業者の規制をも 含めて法令によるべきか,その場合の要件はどうすべきか,保険業界の自主的 規制に委ねるとした場合は,今後本件のような事案をも踏まえて,保険業界と して保険契約の譲渡の同意の可否の規準について更なる検討が必要となろう

(後略) 。

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会社がそれを複数の投資家に売買したりそれを証券化する場合に,特徴的に 現れる。そしてこのような場合には,保険契約そのものが金融化現象のなか に包摂されてしまうというべきかもしれない。

5.むすび

生命保険の本質的機能は,保障である。それを補完・強化するものとして,

金融機能が存在する。そして生命保険商品は,そのいずれかの機能をより強 調したものとして設計される。金融機能をより多く有した商品は,生命保険 の金融化現象を促進させるように作用する。かつては,一時払い養老保険,

そして変額保険がその代表的な商品であった。これを,生命保険会社の金融 機関化現象の第一ステップと見ることも可能であろう。第一ステップは,商 品面における金融化現象であった。しかしそれは,次のステップに繫がるも のであった。

金融機能を有した商品とくに一時払い養老保険の驚異的な販売によって,

生命保険会社は膨大な収入保険料を得ることができた。そしてその増大した 保険料を背景とした資産運用によって,生命保険会社は日本の経済における 金融機関の一つと見なされるようになった。この変化を,生命保険会社の金 融化現象の第二ステップと見ることができるだろう。第二ステップは,資産 運用面におけるものであった。しかしそれは,生命保険会社が金融制度改革 の流れに入っていく一つの原因ともなるものであった。

1980年代に表面化した金融制度改革は,現在なお進行している。窓販はそ の一つである。これによって,生命保険会社の金融化現象はさらなる第三の ステップに踏み込んだと考えられる。第三ステップは,生命保険の販売面に 関係するという特質がある。しかしすでに見てきたように,それは単に販売 面に限定されるものではない。商品面における影響をはじめとして,経営上 のリスク等,様々な面に関係してくるのである。

そして我々は今,これまでとは異質の問題に直面している。それは,生命 保険の買取という問題である。それは表面的には販売面と関係するが,それ

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以外の様々な局面に多大な影響を及ぼすものである。本来は金融的側面とは 縁遠いと考えられる 保障 そのものが,売買の対象とされるのである。そ して,証券化が行われるような場合には,金融化現象はさらに促進されるこ ととなる。

以上のような生命保険の金融化現象の原因は,一体どこにあるのだろうか。

冒頭に述べたように,筆者はその根本的背景として情報化社会の進行がある と考えているのであるが,それについての考察は今後の課題としておきたい。

(筆者は桃山学院大学教授)

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  予定利率は保険料、解約返戻金等の保険価格算出のための計算基礎の一

・また、商品面でも、健康な人の保険料を割り引く「健康体割引制度」を早くから導入するな ど、先進的かつ積極的な開発を行なってきている。

すなわち, 終身である保険期間 に亘って解約返戻金がゼロ( 無解約1 という), 保険料払込期間