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ドイ ツ法 にお ける宣誓要求制度 の意義 と機能(1)

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ドイ ツ法 にお ける宣誓要求制度 の意義 と機能(1)

証 明責 任 を負 わ ない 当事 者 の事 案 解 明義 務 を 考 察 す るた め の基 礎 的作 業 と して

伊 東 俊 明

目 次

第 一章 序 言

第二章 ドイツ民事 訴 訟法 にお け る宣誓 要求 制度 第一 節 宣誓 要求 の具 体例

第二 節 当事 者宣 誓制 度 の概観 第三 節 宣誓 要 求制 度

第 一款 宣 誓要 求 の法 的性 質

第 二款 宣 誓要 求 に対す る証 明責 任 を負 わ ない 当事 者 の応答 強制 第 三款 宣 誓要 求 の許容 要件

第 四節 小 括

第 三章19世 紀 中期 か ら1933年 まで の ドイツの議論 状況 第一 節CPO410条 の立 法沿 革

第 一款 ハ ノ ー フ ァー草 案(以 上,本 号) 第 二款 プ ロイセ ン草案

第 三款 北 ドイ ツ草 案 第 四款CPO成 立 第 五款 小括

第二節 裁判 例 ・学説 の状 況 第 一款 裁 判例

第 二款 学 説 第 三款 小括

第三節 宣 誓 要求制 度 の廃 止 の影響 第 四章 結語

〔185〕

(2)

第 一 章 序 言

一 本 稿 は ,1877年 に 成 立 し1933年 に 改 正 され る ま で の ドイ ツ民 事 訴 訟 法1) に お け る 「 宣 誓 要 求 制 度 」 の分 析 を通 して,ド イ ツ法 の 証 明 責 任2)を 負 わ な い 当事 者 の 「 事 案 解 明 義 務 に 関 す る議 論 」(以 下,「 事 案 解 明 義 務 論 」 とす る)の 制 度 的 背 景 や 基 礎 にあ る考 え 方 を 明 らか にす る こ と を試 み る も の で あ る。 本 稿 で い う と こ ろ の 「 証 明 責 任 を 負 わ な い 当 事 者 の 事 案 解 明義 務 」 と は,証 明 責 任 を負 う当 事 者 の本 証 が 成 功 して い な い に も拘 わ らず,証 明 責 任 を負 わ ない 当事 者 が 事 実 を陳 述 した り,証 拠 を提 出 し な け れ ば な らな い こ と を意 味 して い る3)。

二 事 案 解 明 義 務 論 を考 察 す る た め に,ド イ ッ民 事 訴 訟 法 の 宣 誓 要 求 制 度 を 検 討 す る こ とが 有 益 で あ る と考 え る理 由 を示 す と以 下 の とお りで あ る 。

1933年 以 前 の ドイ ツ民 事 訴 訟 法 に は2種 類 の 当事 者 宣 誓 制 度 が あ っ た 。 「 裁 判 官 宣 誓(DerrichterlicheEid)」 制 度 と 「宣 誓 要 求(Derzugeschiebene

Eid=Eideszuschiebung)」 制 度4)で あ る 。 い ず れ も,主 張 事 実 に つ い て の 真 偽 不 明(ノ ン ・リ ケ ッ ト)を 解 決 す る た め の 制 度 で あ っ た と一 般 に 理 解 さ れ て い る5)。

裁 判 官 宣 誓 制 度 とは,裁 判 所 が,そ の 心 証 の程 度 に応 じて,当 事 者 の い ず れ か に対 して 宣 誓 を命 じる も の で あ っ た6)。 主 張 事 実 の真 偽 につ い て確 信 を得 る

1)本 稿 で は,ド イ ツ 民 事 訴 訟 法 を,1877年 か ら1898年 改 正 ま で はCPO,1898年 か ら1933年 改 正 ま で はZPOa.F.,1933年 以 降 はZPOと 記 す 。 ま た,ラ イ ヒ 裁 判 所 はRG,ド イ ツ 連 邦 通 常 裁 判 所 はBGHと 記 す 。

2)本 稿 の 「証 明 責 任 」 と い う用 語 は,原 則 と して,「 客 観 的 証 明 責 任 」 の 意 味 で 使 用 す る 。

3)積 極 否 認 義 務(否 認 の 具 体 化 義 務),お よ び,証 拠 提 出 義 務 と い う形 で 問 題 とな る 。 4)な お,DerzugeschiebeneEidは,「 要 求 宣 誓 」 や 「押 し付 け 宣 誓 」 と も訳 さ れ

るが,本 稿 で は,当 事 者 が 相 手 方 当 事 者 に 対 して 宣 誓 を 課 す こ と を よ く表 現 す る

「宣 誓 要 求 」 と い う訳 語 に 従 う こ と に す る 。

5)竜 寄 喜 助 『 証 明 責 任 論 』(1987,有 斐 閣 出 版 サ ー ビ ス)16頁 以 下,谷 ロ 安 平=福 永 有 利 編 『 注 釈 民 事 訴 訟 法(6)』(1995,有 斐 閣)39頁 以 下 〔 福 永 有 利 〕 参 照 。 6)裁 判 官 宣 誓 は,証 明 責 任 を 負 う 当事 者 に 対 し て 宣 誓 を課 す か,あ る い は,証 明 責

任 を 負 わ な い 当 事 者 に 対 して 宣 誓 を 課 す か で,「 補 充 宣 誓(Erganzungseid)」(不 完 全 な証 明 力 を補 充 して 完 全 な 証 拠 と す る 宣 誓)と 「雪 冤 宣 誓(Reinigungseid)」

(不 完 全 な証 拠 を 排 除 す る 宣 誓)と に 区 別 され て い た 。

(3)

ドイツ法 にお け る宣 誓 要求 制度 の意 義 と機 能(1) ヱ87

こ とが で きな い 場 合,す な わ ち,心 証 度 が 証 明 度 に まで 達 して い ない 場 合 に, 裁 判 所 は,当 事 者 に 主 張 事 実 の真 偽 を宣 誓 させ る こ とに よ り,心 証 度 を証 明 度 に ま で 上 昇 させ る こ とが で きる の で あ る7)。

他 方,宣 誓 要 求 制 度 とは,主 張 事 実 に つ い て 証 明責 任 を負 う当事 者 が,証 明 責 任 を負 わ な い 当 事 者 に 対 して,宣 誓 を要 求 す る もの で あ っ た。 い ず れ の 当 事 者 が 宣 誓 義 務 者 で あ る の か は,裁 判 所 の心 証 の 程 度 とは 関 係 な く,証 明責 任 の 所 在 に よ っ て形 式 的 に確 定 され る 。 後 述 す る よ う に,宣 誓 は,主 張 事 実 に つ い て 「 完 全 な証 明 」 とい う形 式 的 証 拠 力8)を 有 して い た 。 そ の た め,証 明 責 任 を 負 わ な い 当事 者 は,主 張 事 実 に 関 し て,自 己 が 有 す る 情 報,お よび,収 集 し う る情 報 に基 づ い て,主 張 事 実 の真 偽 につ い て 確 信 を形 成 した うえ で 宣 誓 を履 行

しな け れ ば な ら な か っ た 。

従 っ て,宣 誓 要 求 を 許 容 す る こ と は,事 案 解 明 の た め に,証 明 責 任 を負 わ な い 当 事 者 に対 して,一 定 の 行 為 義 務(具 体 的 に は,「 情 報 収 集 義 務 」 ・ 「 確 信 形 成 義 務 」)を課 す こ と を 意 味 し て い た 。ま た,宣 誓 要 求 の 許 容 範 囲 を め ぐっ て,

「主 張 事 実 に 関 す る 情 報 」9)と証 明 責 任 を負 わ な い 当 事 者 と の 近 接 性 を考 慮 に 入 れ,証 明責 任 を負 わ な い 当事 者 に対 して 一 定 の行 為 義 務 を課 す べ き で あ る と い う議 論 が,CPOの 立 法 過 程,お よ び,当 時 の ドイ ツ の 学 説 ・裁 判 実 務 に お い て な さ れ て い た 。 こ れ は,裁 判 所 の 心 証 の 程 度 に よ って 宣 誓 義 務 者 を確 定 す る裁 判 官 宣 誓 制 度 に つ い て は み られ な か っ た 議 論 で あ る。

この よ うな 議 論 に は,裁 判 所 の 心 証 の 程 度 と は 関係 な く,証 明 責 任 を負 わ な い 当 事 者 に対 し て,一 定 の 行 為 義 務 を課 す とい う 点 に お い て,近 時 の 事 案 解 明 義 務 論 との 共 通 性 を見 出 す こ とが で きる 。 そ の た め,ド イ ツ法 の 事 案 解 明 義 務 論 の 制 度 的背 景 や 基 礎 に あ る考 え方 を 明 らか にす る た め に,宣 誓 要 求 制 度 を 検 討 す る こ とは 有 益 で あ る と考 え る。

7)高 橋 宏 志 『 重 点 講 義 民 事 訴 訟 法 【新 版 】』(2000,有i斐 閣)482頁 注(65)参 照 。 8)詳 し く は,後 述 第 二 章 第 三 節 第 二 款 参 照 。

9)主 張 事 実 の 存 否 を 推 認 す る の に 役 立 つ 間 接 事 実 や 証 拠 に 関 す る 情 報 な どで あ る。

(4)

三 もっ と も,本 稿 は,ド イ ッ法 の 宣 誓 要 求 制 度 の 検 討 か ら直 接 に,わ が 国 の 事 案 解 明 義 務 論 に 関 す る具 体 的 な解 釈 を導 き出 そ う とす る もの で は な い10)。

本 稿 の 主 眼 は,事 案 解 明 義 務 論 を考 察 す る た め の基 礎 的 作 業 と して,わ が 国 の 議 論 に対 して 影 響 を与 え た と考 え られ る ドイ ツ法 の 議 論 の制 度 的 背 景 や 考 え方 を探 る こ と に あ る。 結 論 を 先 取 りす る と,CPOの 立 法 担 当 者 は,証 明 責 任 の 分 配 だ け で訴 訟 にお け る 事 案 解 明 が で きる,す な わ ち,証 明責 任 を負 う当 事 者 の本 証 が 成 功 し ない 限 り,証 明 責 任 を負 わ な い 当事 者 は,事 案 解 明 に不 協 力 を 決 め 込 ん で も よい11)と は 考 え て い な か っ た の で は な い か とい う こ と を示 す 。

四 な お,1877年 か ら1933年 のZPO改 正 に 至 る まで,ド イ ッ で 盛 ん に提 唱 さ れ て い た,立 法 論 と して の 「当事 者 尋 問制 度 導 入 論 」 につ い て の 検 討 は,本 稿 で は行 わ な い。 宣 誓 要 求 制 度 を備 え た 民 事 訴 訟 手 続 の も とで,証 明 責 任 を負 わ な い 当 事 者 の事 案 解 明 へ の 協 力 が,ど の よ う に図 られ て い た の か とい う こ と が,本 稿 の 問 題 関心 で あ る か らで あ る 。

五 本 稿 は,以 下 の よ う に構 成 さ れ る。 まず,ド イ ツ民 事 訴 訟 法 に お け る宣 誓 要 求 制 度 の 内 容 ・機 能 を明 らか に す る(第 二 章)。 そ の 後 に,宣 誓 要 求 の 許 容 範 囲 を定 め た 規 定 に 照 準 を合 わ せ て,CPOの 立 法 過 程 を 跡 付 け る(第 三 章 第 一 節)。 そ し て,CPO制 定 か ら1933年 のZPO改 正 まで の,宣 誓 要 求 の 許 容 範 囲 に 関 す る 裁 判 実 務 ・学 説 の状 況 を 整 理 した 後 に(第 三 章 第 二 節),宣 誓 要 求 制 度 の 廃 止 の 影 響 に つ い て 考 え る(第 三 章 第 三 節)。 最 後 に,以 上 の 検 討 の ま とめ を行 い,わ が 国 に お い て事 案 解 明義 務 論 を考 察 す る た め に,ド イ ツ 法 の

10)日 本 法 は,か つ て 一 度 も,当 事 者 宣 誓 制 度 を採 用 した 経 験 が な い 。 い わ ゆ る テ ヒ ョー 草 案(明 治19年(1886年)6月)の 段 階 で,既 に,当 事 者 宣 誓 制 度 で は な く,当 事 者 尋 問 制 度 が 採 用 さ れ て い た(兼 子 一 「 民 事 訴 訟 法 の 制 定 」 『 民 事 法 研 究 第 二 巻 』(1954,酒 井 書 店)1頁,特 に13頁 参 照)。 そ して,明 治23年(1890年) の 民 事 訴 訟 法(明 治 二 三 年 法 律 第 二 九 号)に お い て 当 事 者 尋 問 制 度 が 採 用 さ れ て 以 来,現 在 に 至 る ま で,制 度 の 内 容 に つ い て は 改 正 が な さ れ た が,当 事 者 尋 問 制 度 自体 は 維 持 さ れ て い る(河 野 信 夫 「当 事 者 の 尋 問 」 竹 下 守 夫 ・石 川 明 編 『講 座 民 事 訴 訟 ⑤ 証 拠 』(1983,弘 文 堂)297頁,福 永 有 利 「 証 人 尋 問 と当 事 者 尋 問 の 改 革 」松 本 博 之 ・宮 崎 公 男 編 『 講 座 新 民 事 訴 訟 法II』(1999,弘 文 堂)219頁 参 照)。

11)高 橋 ・前 掲 注7)489頁 参 照 。

(5)

ドイ ツ法 に おけ る宣誓 要求 制 度の意 義 と機 能(1) 189' 検 討 か ら得 られ る手 が か りを 明 らか に す る(第 四 章)。

第 二 章 ドイ ツ民 事 訴 訟 法 にお け る宣 誓 要求 制 度

本 章 で は,宣 誓 要 求 の 許 容 範 囲 を め ぐ る 問題 を検 討 す る た め の 前 提 と して, ドイ ッ民 事 訴 訟 法 の 宣 誓 要 求 制 度 の 内容 を概 観 して お く。 宣 誓 要 求 の イ メ ー ジ をつ か む た め に,ま ず,若 干 の 具 体 例 を挙 げ る(本 章 第 一 節)。 そ して,当 事 者 宣 誓 制 度 全 般 の 内 容 を紹 介 した 後 に(本 章 第 二 節),宣 誓 要 求 制 度 につ い て み て い く(本 章 第 三 節)。 こ の よ う な考 察 に よ り,1877年 に 成 立 したCPOに は, 証 明 責 任 を負 わ な い 当 事 者 を事 案 解 明 に 協 力 させ る た め の 手 段 が 制 度 的 に 備 わ っ て い た こ とを示 す(本 章 第 四節)。

第 一 節 宣 誓 要 求 の 具 体 例

本 節 で は,当 時 の ドイ ツ民 事 訴 訟 法 の 体 系 書12)に 掲 載 され て い た具 体 例(貸 金 返 還 請 求 訴 訟)を 参 考 に して,宣 誓 要 求 の い くつ か の パ ター ン を挙 げ て お く。

な お,以 下 の 【 具 体 例 】 は,い ず れ の 場 合 も,他 の 証 拠 方 法 につ い て証 拠 調 べ が な され た に も拘 わ らず,係 争 事 実 につ い て 裁 判 所 が 確 信 を得 られ な か っ た場 合,ま た は,他 の 証 拠 方 法 が 存 在 し な い 場 合 を想 定 した もの で あ る13)。 次 節 以 下 で は,こ こで 挙 げ た 【 具 体 例 】 を参 照 しつ つ,宣 誓 要 求 制 度 の具 体 的 な 内 容 に つ い て み て い く。

【 具体 例1】 被 告 は,金 銭 の借 り入 れ を 否 認 した(金 銭 授 受 の事 実 につ い て は,原 告 が証 明 責 任 を 負 う)。 原 告 は,金 銭 の授 受 につ い て,被 告 に 対 して, 宣 誓 要 求 を した 。 裁 判 所 は,「 金 銭 を授 受 した こ と は真 実 で は な い 」 とい う 内 容 の 宣 誓 を被 告 に対 して 命 じた。 被 告 は宣 誓 を履 行 した 。 これ に よっ て,金 銭

12)FriedrichHellmann,LehrbuchdesdeutschenCivilprozeBrecht,1886,S.577.

13)当 事 者 宣 誓 制 度 の 「補 充 性 」 原 則 で あ る(後 述 本 章 第 二 節 参 照)。

(6)

の授 受 が な い とい う こ とが 完 全 に 証 明 さ れ た こ とに な り,原 告 の 請 求 は棄 却 さ れ た 。

【 具 体 例2】 被 告 は,「 原 告 は,10年 前 の 宴 会 の 席 で,私 に 対 して,支 払 を免 除 した」 とい う抗 弁 を提 出 した(支 払 免 除 の 事 実 につ い て は,被 告 が 証 明 責 任 を負 う)。 そ れ に対 して,原 告 は,宴 会 は か な り昔 の こ とで あ る た め 詳 細 に 思 い 出 す こ とが で きな い と して,被 告 の 主 張 を否 認 した 。 被 告 は,原 告 に対 して,宣 誓 要 求 を した。 裁 判 所 は,原 告 に対 して,「 入 念 な 審 査 と調 査 の 後 に, 被 告 に 対 して支 払 い を免 除 した こ とが 真 実 で は な い とい う確 信 を得 た 」 とい う 宣 誓 の 履 行 を命 じた 。 原 告 は宣 誓 を履 行 した 。 これ に よ って,支 払 免 除 の事 実 が な か った こ とが 完 全 に 証 明 さ れ た こ と に な り,被 告 の抗 弁 は退 け られ た。

【 具 体 例3】 被 告 は,原 告 の被 相 続 人 に 対 す る弁 済 の 抗 弁 を提 出 した(被 相 続 人 に対 す る弁 済 の事 実 につ い て は,被 告 が 証 明 責 任 を負 う)。これ に つ い て, 原 告 は,不 知 の 陳 述 を した 。 被 告 は,原 告 に 対 して,宣 誓 要 求 を した 。 裁 判 所 は,原 告 に 対 して,「 入 念 な 審 査 と調 査 の 後 に,被 告 が 被 相 続 人 に対 して,支 払 を な した とい う確 信 を得 る こ とが で き な か っ た 」とい う宣 誓 の履 行 を命 じた 。 原 告 は 宣 誓 を履 行 し た。 こ れ に よ っ て,被 相 続 人 に対 す る 弁 済 が な か っ た こ と が 完 全 に証 明 され た こ とに な り,被 告 の 抗 弁 は 退 け られ た 。

第 二 節 当 事 者 宣 誓 制 度 の概 観

一 ドイ ツ 民 事 訴 訟 法 の 当 事 者 宣 誓 制 度 は ,先 述 した よ うに,「 宣誓 要求」

制 度 と 「 裁 判 官 宣 誓 」 制 度 に 区 別 さ れ る14)。 本 節 で は,そ の 両 方 の 制 度 に共

14)ド イ ツ 民 事 訴 訟 法 の 当 事 者 宣 誓 制 度 に つ い て は,岩 澤 彰 二 郎 「 當 事 者 に よ る謹 振 方 法(一)」 法 曹 会 雑 誌6巻1号(1928)43頁,川 嶋 四 郎 「1877年 の ド イ ツ 民 事 訴 訟 法 に お け る 当 事 者 宣 誓 制 度(1)」 法 政 研 究66巻3号(1999)1342頁,同 「(2)」

法 政 研 究66巻4号(2000)1902頁,同 「(3・ 完)」 法 政 研 究67巻1号(2000)350

頁 が 詳 し い 。ま た,裁 判 官 宣 誓 制 度 に つ い て は,竜 嵜 ・前 掲 注5)16頁 以 下 参 照 。

(7)

ドイツ法 にお け る宣誓 要求 制度 の意 義 と機 能(1) 191 通 す る事 項 を 中心 に み て い く。

二 当 時 の 代 表 的 な ドイ ツ民 事 訴 訟 法 の 体 系 書 で は,当 事 者 宣 誓 とは,「 当 事 者 に よ る,当 事 者 の 主 張 の 真 実 性 の 儀 式 に 則 っ た 確 証(feierliche Bekraftigung)」 と定 義 され て い た15)。 当 事 者 宣 誓 が な さ れ る 場 合 に は,裁 判 所 で は な く,当 事 者 が,係 争 事 実 の 真 偽 を判 断 す る の で あ る。 こ の よ う な 当事 者 宣 誓 は,「 神 に よ る(g6ttlich)罰(宗 教 的 ・道 徳 的 な 罰),お よ び,世 俗 的

な(weltlich)罰(刑 事 罰)に 対 す る 畏 れ 」 に よ って 正 当化 され て い た16)。

当 事 者 宣 誓 は,「 証 言(Aussage)」 で は な く,宣 誓 す べ き文 言 が,あ らか じ め,裁 判 所 に よっ て,「 宣 誓 命 題(Eidesnorm)」17)と して 様 式 化 さ れ て い る (formulieren)点 に お い て,証 人 の 宣 誓 に よ る 証 言 と は 決 定 的 に 異 な っ て い た18)。 宣 誓 は,「 宣 誓 し た事 実 が 真 実 で な か っ た 場 合 に は不 利 益 を甘 受 す る」

とい う意 思 表 示 で あ る と もい わ れ て い た19)。

三 ドイ ッ 民 事 訴 訟 法 の 当事 者 宣 誓 は,一 定 の 「 事 実 」 問 題 に つ い て の み 認 め られ る,い わ ゆ る 「 事 実 宣 誓(Tatsacheneid)」 で あ っ た20)。 か つ て ロ ー マ 法 に お い て は,請 求 権 や権 利 関係 の 存 否 自体 に対 す る 「 権 利 宣 誓(Rechtseid)」

が 認 め られ て い た 。 しか し,当 事 者 宣 誓 が事 実 問 題 を確 定 す る た め の 証 拠 方 法

15)LeoRosenberg,LehrbuchdesDeutschenZivilprozeBrecht,1927,S.377;Kon‑

radHellwig,SystemdesDeutschenZivilprozeBrechts,Bd.1.,1912,S.718.

16)WilhelmKisch,DeutschesZivilprozeBrecht,Bd.2.,1911,S.111.証 人 の 宣 誓 に つ い て 論 じ た も の で は あ る が,当 事 者 宣 誓 制 度 と 「 超 自 然 的 ・宗 教 的 な 制 裁 」 と の 関 係 を 強 調 す る も の と し て,谷 口=福 永 編 ・前 掲 注5)338頁 以 下 〔 藤 原 弘 道 〕 参 照 。

17)例 え ば,【 具 体 例1】 で い う と,「 金 銭 を 授 受 し た こ と は 真 実 で は な い 」 が 宣 誓 命 題 で あ る 。 こ れ に 対 し て,宣 誓 要 求 す る 場 合 に 証 明 責 任 を 負 う 当 事 者 が 提 示 す る 事 実 は,「 宣 誓 主 題(Eidessatz)」 と い う(WilhelmEndemann,Derdeutsche

Civilprozess,Bd.2.1879,S.333)。 本 稿 も,こ の 用 語 法 に 従 う 。 18)Hellwig,aaO.(Anm.15),S.719.

19)JamesGoldschmidtは,こ れ を 「条 件 付 き の 自 己 呪 縛(bedingteSelbstver‑

fluchung)」 と い う 表 現 を 用 い て 説 明 す る(ders.,Zivilprozessrec比2.Aufl., 1932,S.148)。

20)Rosenberg,aaO.(Anm.15>,S.377;Hellwig,aaO.(Anm.15),S.719;Lotharvon

Seuffert/HansWalsmann,ZPO,12.AufL,Bd.1.,1932,S.673.

(8)

の 一 つ と して捉 え られ る よ う に な っ た こ とに 応 じて,宣 誓 の対 象 が 事 実 問題 に 限 定 され た 。CPOの 第 三 草 案 の 理 由書 に も,「 宣 誓 は,権 利 関 係 で は な く事 実 に つ い て の み 認 め られ る」 と記 され て い る21)。

四 当 事 者 宣 誓 は,事 実 確 定 の 「 最 終 手 段(ultimaratio)」 と して位 置 付 け られ て い た22)。 当 事 者 宣 誓 は,他 の全 て の 証 拠 方 法(書 証,検 証,鑑 定,証 人 尋 問)が 尽 きた 後 に初 め て 認 め られ た 証 拠 方 法 で あ る。す な わ ち,裁 判 所 が, 証 拠 調 べ の 結 果 や 弁 論 の 全 趣 旨 に基 づ き,主 張 の 真 実 性 また は不 真 実 性 につ い

て既 に確 信 を得 て い る場 合 に は,も はや 当事 者 宣 誓 を課 す こ と は認 め られ な い の で あ る。 これ は,「 補 充 性(Subsidiaritat)」 原 則 と呼 ば れ て い た。 この 「 補 充 性 」 原 則 に よ り,当 事 者 は,他 の 証 拠 方 法 を 申 し出 る こ と に よ り,宣 誓 が 課

さ れ る こ と を妨 げ る こ とが で きた の で あ る23)。

さ ら に,裁 判 官 宣 誓 と宣 誓 要 求 との 関係 につ い て は,「 宣 誓 要 求 は裁 判 官 宣 誓 を課 す こ とが で き な い場 合 に初 め て 許 容 さ れ る」 と考 え られ て い た よ う で あ る24)。 す な わ ち,証 明 責 任 を負 う 当 事 者 が 宣 誓 要 求 した 場 合 で あ っ て も,裁

21)CarlHahn,DiegesamtenMaterialienzudenReichs‑Justizgesetezen,Bd.2。

1881,S.331=Motive,S.275.

当 事 者 宣 誓 制 度 の 歴 史 的 変 遷 を 紹 介 し た 邦 語 の 文 献 と し て は,田 中 和 夫 『 証 拠 法 の 基 礎 理 論 』(1953,日 本 評 論 新 社),野 村 秀 敏 「ロ ー マ 法 に お け る 当 事 者 宣 誓 制 度 」 三 ケ 月 古 稀 『民 事 手 続 法 学 の 革 新(中)』(1991,有 斐 閣)451頁,ド イ ツ の 文 献 は,GeorgKleinfeller,DiegeschichtlicheEntwicklungdesTat‑

sacheneidesinDeutschland,1892;HeleneMaelzer,VernehmungderPartei undParteieidimreichsdeutschen,6sterreichischenundkUnftigenZivilprozeB, 1931,S.3ff.;AndreaMUnks,VomParteieidzurParteivernehmunginderGes‑

chichtesdesZivilprozesses,Diss.,1991;Hellwig,aaO.(Anm.15),S.721ff.を 参 照 。

22)Rosenberg,aaO.(Anml5),S。379.

23)ZPOa.E453条 「(1)宣 誓 の 要 求,承 諾,あ る い は,反 対 要 求 に よ っ て,い ず れ の 当 事 者 も,他 の 証 拠 方 法 を 申 し 出 る こ と は 妨 げ ら れ な い 。(2)他 の 証 拠 方 法 が 申 し 出 ら れ た と き は,そ の 申 し 出 が 成 果 が な い 場 合 に 限 り,宣 誓 が 要 求 さ れ た も の と み な す 」。Mttnks,aaO.(Anm.21),S.140ff.

24)RGUrt.v.24.11.1900(JW1900,873);RGUrt.v.7.6.1923(SeuffA78,S.104);

MUnks,aaO.(Anm.21),S.153f竜 寄 ・前 掲 注5)16頁 以 下 参 照 。Goldschmidt

は,裁 判 官 宣 誓 を 命 じ る た め に は,「 今 ま で の 弁 論 や 証 拠 調 べ の 結 果 が,証 明 責

任 を 負 う 当 事 者 に と っ て 有 利 な も の で な け れ ば な ら な い 」 と い う(ders.aaO.

(9)

ドイ ツ法 におけ る宣誓 要求 制 度の意 義 と機能(1) 193 判 所 は,裁 判 官 宣 誓 を命 じる こ とが で きた の で あ る25)。

五 宣 誓 命 題 は,宣 誓 義 務 者 と 宣 誓 主 題 と の 関 係 に 応 じ て,「 真 実 宣 誓 (Wahrheitseid)」26)と 「確 信 宣 誓(()berzeugungseid=Glaubenseid)」27)と

に 区 別 さ れ て い た 。

前 者 は,宣 誓 主 題 が,「 宣 誓 義 務 者 の 行 為,あ る い は,認 識 の 対 象 」(以 下, 本 稿 で は,factapropriaと す る)で あ る 場 合 の 宣 誓 で あ り,後 者 は,宣 誓 主 題 が,「 宣 誓 義 務 者 の 代 理 人(Vertreter)ま た は 前 権 利 者(Rechtsvortrager)

の 行 為,あ る い は,認 識 の 対 象 」(以 下,本 稿 で は,factaalienaと す る)で あ る 場 合 の 宣 誓 で あ る 。 い ず れ の 当 事 者 が 事 実 を 主 張 し た の か と い う こ と で は な く,宣 誓 主 題 と 宣 誓 義 務 者 と の 問 の 関 係 が 問 題 と さ れ た28)。 さ ら に,facta alienaに つ い て の 宣 誓 の 場 合 に は,宣 誓 義 務 者 に 対 し て,「 入 念 な 審 査 お よ び 調 査 義 務 」 が 課 さ れ た29)。

(Anm.19),152)。 こ れ に よ る と,裁 判 所 が 係 争 事 実 の 存 否 に つ い て 五 割 程 度 の 心 証 しか 得 て い な い 全 くの ノ ン ・リ ケ ッ トの 場 合 に は,裁 判 官 宣 誓 を 課 せ な い こ と に な る 。 宣 誓 要 求 は,こ の よ う な 場 面 で 特 に 問 題 と な っ た 。 もっ と も,裁 判 官 宣 誓 を課 す か ど う か の 判 断 は裁 判 所 の 裁 量 に 委 ね られ て い た と い う理 解(竜 寄 ・前 掲 注5)37頁 以 下)に 立 つ と,裁 判 所 の 心 証 の 程 度 と は 関 係 な く,宣 誓 要 求 が 許 容 され る 場 合 が あ っ た こ と に な る 。

25)裁 判 官 宣 誓 の 場 合 に は,宣 誓 義 務 者 の確 定 は 裁 判 所 の 裁 量 判 断 に 委 ね ら れ て い た 。 当 事 者 の 知 識,誠 実 性,信 頼 性 な ど を 考 慮 要 素 と して 判 断 され て い た よ うで あ る

(Rosenberg,aaO.(Anm.15),S.387)。

26)ZPOa。E459条1項 。 宣 誓 命 題 が,「 主 張 が 真 実 で あ る,あ る い は,真 実 で な い 」 と い う文 言 の 宣 誓 で あ る(【 具 体 例1】 参 照)。 た だ し,例 外(ZPOa.F.459条

2項)が 認 め ら れ て い た(【 具 体 例2】 参 照)。

27)ZPOa.E459条3項 。 宣 誓 命 題 が,「 主 張 が 真 実 で あ る と い う確 信 を得 た,あ る い は,主 張 が 真 実 で あ る とい う確 信 を得 な か っ た 」 と い う 文 言 の 宣 誓 で あ る(【 具 体 例3】 参 照)。

28)Endemann,aaO.(Anm.17),S.329.川 嶋 ・前 掲 注14)「(2)」1896頁 参 照 。 29)こ れ が,普 通 法 に お け る 「確 信 宣 誓 」 と 異 な る 点 で あ る(MUnks,aaO.(Anm.

21),S.138)。ZPOa.F.459条 の 草 案 で あ る 第 三 草 案410条 の 理 由 書 に は,「 宣 誓

の 形 式 と して 調 査 義 務(Erkundigungsp且icht)を 採 用 す る こ と に よ り,調 査 の

実 施 が 保 証 され る 限 り に お い て,確 信 宣 誓 は,真 実 宣 誓 に ま で 高 め られ る 。 裁 判

官 は,釈 明 権 を行 使 す る こ とに よ っ て,宣 誓 を す る 前 に,宣 誓 義 務 者 が 実 際 に 調

査 し た こ と に 関 す る 情 報 を 提 出 さ せ る こ とが で き る」 と記 さ れ て い た(Hahn,

aaO.(Anm.21),S.338=Motive,S.284)。

(10)

六 以 上 の よ う な 宣 誓 は,原 則 と して,「 条 件 付 き終 局 判 決 」 に よ っ て,宣 誓 義 務 者 に 対 して 課 され た30)。 も っ と も,一 定 の 要 件 を 充 た す 場 合 に は,裁 判 所 の 裁 量 で,「 証 拠 決 定(BeweisbeschluB)」 に よっ て 宣 誓 を命 じ る こ と も 認 め ら れ て い た31)。

条 件 付 き判 決 が 確 定 した 後 の 宣 誓 期 日(Schwurtermin)に お い て,宣 誓 が 履 行(あ る い は 拒 絶)さ れ,そ れ に 応 じて,い わ ゆ る 「 終 局 判 決(Purifikati‑

ons‑oderLauterungsurteil)」 と呼 ば れ る 判 決 が 言 い 渡 され た32)。 他 方,証 拠 決 定 に よ っ て 宣 誓 が 命 じ られ た場 合 に は,原 則 と して,即 時 に 宣 誓 期 日が 定 め

られ て,宣 誓 が 履 行(あ るい は拒 絶)さ れ た 。

七 宣 誓 の履 行(あ る い は拒 絶)の 効 力 は,先 述 の 宣 誓 命 題 の 違 い に 関係 な く,宣 誓 主 題 で あ る事 実 の 真 偽 に つ い て 「 完 全 な証 明」 とい う形 式 的 証 拠 力 で あ っ た33)。す な わ ち,宣 誓 義 務 者 が 証 明 責 任 を負 わ ない 当事 者 で あ る場 合 に は, 証 明責 任 を負 う当 事 者 の 主 張 事 実 が真 実 で な い こ とが,裁 判 所 の心 証 と は 関係 な く,完 全 に証 明 され た こ と に な っ た 。 他 方,宣 誓 義 務 者 が 証 明責 任 を負 う当 事 者 で あ る場 合 に は,そ の 者 の 主 張 が 真 実 で あ る こ とが,裁 判 所 の 心 証 とは 関 係 な く,完 全 に 証 明 さ れ た こ と に な っ た34)。 そ れ に対 し て,宣 誓 義 務 者 が,

30)ZPOa.E460条 「(1)宣 誓 の 履 行 は,条 件 付 き判 決 を も っ て 言 い 渡 す 」。

31)ZPOa.F.461条 「(1)当 事 者 が 宣 誓 の 重 要 性 お よ び 宣 誓 命 題 に つ い て 合 意 し た 場 合,宣 誓 が 中 間 の 争 い の 処 理 に と っ て 有 用 で あ る 場 合,ま た は,宣 誓 の 履 行 が 個 別 的 に独 立 した 攻 撃 ・防 御 方 法 に つ い て の 判 断 に よ る場 合 に は,宣 誓 の 履 行 は, 証 拠 決 定 に よ っ て,命 じ る こ と が で き る。(2)460条 に よ っ て 言 い 渡 さ れ た 終 局 判 決 の 異 議 の 要 件 が 明 らか に 存 在 し な い 場 合 に も,同 様 の こ とが あ て は ま る 」。

MUnks,aaO.(Anm.21),S,150£ 川 嶋 ・前 掲 注14)「(2)」1892頁 参 照 。

32)ZPOa.F.462条 「(1)条 件 付 き判 決 に お い て,宣 誓 命 題,お よ び,宣 誓 の 履 行 あ る い は 不 履 行 の 効 果 が,事 案 の 状 況 が 許 容 す る 限 り詳 細 に 確 定 さ れ な け れ ば な ら な い 。(2に の 効 果 は終 局 判 決 に よ り生 じ る」。

33)ZPOa.F.463条 「(1)宣 誓 の 履 行 に よ っ て,宣 誓 し た 事 実 の 完 全 な 証 明 が 根 拠 付 け られ る 」。

な お,ZPOaF.141条 に 基 づ く当 事 者 聴 聞(Parteianh6rung)を 実 施 す る の が, 当 時 の 裁 判 実 務 で あ っ た と の 指 摘 も あ る(L.Levin,RichterlicheProzeBleitung undSitzungpolizeiinTheorieundPraxis,1913,S.134f.)。

34)Rosenberg,aaO.(Anmユ5),S。380.

(11)

ドイツ法 にお け る宣 誓 要求 制度 の意 義 と機能(1) ヱ95 宣 誓 を拒 絶 す る陳 述 を した 場 合,何 の応 答 も しな い場 合,お よび,宣 誓 期 日 を 慨 怠 した 場 合 に は,主 張 事 実 の 反 対 事 象 が 完 全 に証 明 され た こ とに な っ た35)。

第 三 節 宣 誓 要 求 制 度

本 節 で は,当 事 者 宣 誓 制 度 の う ち宣 誓 要 求 制 度 に特 有 の 事 項 に つ い て み て い く。 まず,宣 誓 要 求 の 法 的性 質 を 明 らか に す る(本 節 第 一 款)。 そ して,宣 誓 要 求 に 対 す る証 明 責 任 を負 わ な い 当 事 者 の応 答 強 制 に つ い て み た 後 に(本 節 第 二 款),宣 誓 要 求 の 許 容 要 件 を 整 理 す る(本 節 第 三 款 〉。

第 一 款 宣 誓 要 求 の 法 的 性 質

一 前 節 で もみ た よ う に ドイ ツ民 事 訴 訟 法 で は ,宣 誓 要 求 は,裁 判 官 宣 誓 と同 様 に,「 証 拠 方 法(Beweismittel)」 の 一 つ と し て位 置 付 け られ て い た 。 宣 誓 要 求 と裁 判 官 宣 誓 との 最 も大 き な違 い は,以 下 の 点 で あ る 。

先 述 した よ う に,裁 判 官 宣 誓 と は,証 明 責 任 の所 在 と 関係 な し に,裁 判 所 が そ の 裁 量 に よ っ て,当 事 者 の い ず れ か に対 して 課 す 宣 誓 で あ る。 そ れ に 対 して,宣 誓 要 求 は,証 明 責 任 を負 う 当事 者 が,証 明 責 任 を負 わ な い 当事 者 に 対 して 宣 誓 を課 す とい う 「当事 者 の イ ニ シ ア デ ィブ(Parteiinitiative)」36)に 基 づ く宣 誓 で あ る37)。 証 明 責 任 を負 う 当事 者 は,証 明 責 任 を負 わ な い 当 事 者 に 対 して,「 主 張 事 実 を 宣 誓 した う え で否 定 す る こ と」38),換言 す れ ば,「 否 認 の 真 実 性 を宣 誓 す る こ と」 を要 求 す る こ と に な る 。 当 時 の学 説 の 多 くは,

35)ZPOa.F.464条 「(1)相手 方 に よ る 宣 誓 の 免 除(Erlassung)は 宣 誓 の 履 行 と 同 様 の 効 果 を 有 す る 。(2)宣 誓 の 履 行 の 拒 絶 は 宣 誓 す べ き 事 実 の 反 対 事 象 が 完 全 に 証 明 さ れ た と み な さ れ る 」。

36)AdolfWach,VortrageUberdieReichscivilprocessordnunggehaltenvorprakti‑

schenJuristenimFruhjahr,2.AufL,1879,S,219.

37)な お,宣 誓 要 求 す る 当 事 者 は,「Deferent」,宣 誓 要 求 さ れ る 当 事 者 は,「Delat」, さ ら に,宣 誓 要 求 に 対 し て 反 対 要 求 さ れ る 当 事 者 は,「Relat」 と 称 さ れ る の が 一 般 的 で あ っ た(DeferentとRelatと は,原 則 と し て 同 一 人 物 で あ る)。 な お,「 反 対 要 求 」 に つ い て は,後 述 本 節 第 二 款 参 照 。

38)Rosenberg,aaO.(Anm.15),S.383.

(12)

宣 誓 要 求 制 度 を,当 事 者 に 対 し て,一 定 の事 実 問 題 につ い て の 「 処 分 権 能 (Dispositionsbefugnis)」 を認 め た もの と して 捉 え て い た39)。

二CPOの 立 法 担 当 者 も,宣 誓 要 求 を証 拠 方 法 と して 位 置 付 け る一 方 で, 宣 誓 要 求 が 「 和 解 的性 質(Vergleichsnatur)」 を 有 す る こ と を認 め40),そ れ を 当事 者 の 処 分 行 為 と して 理 解 し て い た 。 この こ と は,CPOの 立 法 担 当 者 が,当 事 者 間 の 合 意 に よ り,宣 誓 要 求 の 許 容 要 件(後 述 本 節 第 三 款 参 照)を 外 す こ と を認 め る 規 定41)を 採 用 した こ とか ら もみ とる こ とが で き る42)。 な

お,宣 誓 要 求 が 当 事 者 の 処 分 行 為 と して の 法 的性 質 を有 して い た こ とは,宣 誓 要 求 の ル ー ツが,一 定 の 権 利 関 係 の確 定 を 当事 者 の 処 分 に 委 ね る,ロ ー マ 法 に お け る 「 和 解 的 宣 誓(Schiedseid)」 で あ る こ と に 起 因 す る と一 般 に 理 解 され て い る43)。

第 二款 宣誓要 求 に対 す る証明責任 を負 わない 当事者 の応答強制

一 証明責任 を負 う当事 者 の宣 誓要求が 許容 される場 合 には,証 明責任 を

39)Endemann,aaO.(Anm17),S.309f.;Kisch,aaO.(Anml6),S.113;Wach,aa() (Anm.36),S.164;JakobWeismann,LehrbuchdesdeutschenZivilprozeBrechtes, B(1.1.1903,S.170;Kleinfeller,LehrbuchdesDeutschenZivilprozeBrechts,3.

AufL,1925,S.376;RichardSchmidt,LehrbuchdesdeutschenZivilprozeBrechts, 2.AufL,1910,S.529f.;JuliusWilhelmPlanck,LehrbuchdesDeutschenCivil‑

prozessrechts,Bdl.1891,S.292;Heilfron/Pick,LehrbuchdesZivilprozeBrechts Bd.1.,3.AufL,S.801;MoritzFierich,UberdieEideszuschiebung,GrUnhuts Zeitschrift16(1889),Sl55;GustavBohn,DerParteieidundseineMangel,Diss.

1914,S.5f.

40)Hahn,aaO.(Anm.21),S.331・Motive,S.275.

41)ZPOa.F.450条 「裁 判 所 は,両 当 事 者 が 宣 誓 に つ い て 合 意 を な し,か つ,宣 誓

が 事 実 に 関 係 し て い る と き は,445条,448条,449条 で 規 定 さ れ て い る,宣 誓 要

求 お よ び 反 対 要 求 に つ い て の 制 限 を 適 用 し な い こ と を 命 じ る こ と が で き る 」。

42)Hahn,aaO.(Anm.21),SS.659,1095;Hellwig,aaO.(Anm.15),S.720;Weismann, aaO.(Anm.39),S.175f.;FriedrichStein/MartinJonas,ZPO,14.AufL,1928,vor

§445皿.川 嶋 ・前 掲 注14)「(1)」1338頁 参 照 。

43)Hellwig,aaO.(Anm.15),S.721ff.;Kleinfeller,aaO.(Anm.39),S.377f.ロ ー マ 法 で

は,宣 誓 は 和 解 契 約 の 一 種 と 考 え ら れ て い た よ う で あ る(野 村 ・ 前 掲 注21)462

頁 参 照)。

(13)

ドイツ法 にお け る宣誓 要求 制度 の意 義 と機 能(1) 197 負 わ な い 当 事 者 は,「 宣 誓 を 履 行 す る(annehmen)」,「 宣 誓 を 拒 絶 す る

(verweigern)」,「 宣 誓 要 求 に 対 し て 反 対 要 求 を す る(zurUckschieben)」

と い う 応 答 の う ち の い ず れ か を 行 わ な け れ ば な ら な か っ た44)。 な お,先 述 し た よ う に,宣 誓 要 求 に 対 し て 何 も 陳 述 し な い 場 合 に は,宣 誓 は 拒 絶 さ れ た も の とみ な さ れ た45)。

証 明 責 任 を負 わ な い 当 事 者 が 宣 誓 を履 行 し た場 合 に は,主 張 事 実 が 真 実 で な い こ とが完 全 に証 明 され た こ と に な っ た 。 そ れ に 対 して,証 明 責 任 を負 わ な い 当 事 者 が 宣 誓 を拒 絶 した場 合 に は,宣 誓 命 題 の 反 対 事 象,す わ な ち,主 張 事 実 が 真 実 で あ る こ とが 完 全 に証 明 され た こ とに な った 。

二 説 明 を 必 要 とす る の は,「 反 対 要 求(ZurUckschiebung)」 で あ る46)。

「 反 対 要 求」 と は ,証 明 責 任 を負 わ な い 当 事 者 が,証 明 責 任 を負 う 当事 者 に 対 して,主 張 事 実 の真 実 性 の 宣 誓 を 要 求 す る こ とで あ る47)。 この よ う な 反 対 要 求 が 許 容 さ れ る場 合 に は,今 度 は,証 明 責 任 を負 う 当事 者 が 応 答 しな け れ ば な ら な く な る(反 対 要 求 に 対 す る 応 答 強 制)。 そ し て,反 対 要 求 に応 じ て 宣 誓 を履 行 した場 合 に は,証 明 責 任 を 負 う 当事 者 の 主 張 事 実 の 真 実 性 が, 完 全 に証 明 され た こ と に な っ た 。

こ の よ う な 反 対 要 求 は,宣 誓 主 題 が 証 明 責 任 を 負 う当 事 者 のfactaprop‑

ria,あ る い は,そ の 者 の代 理 人 や 前 権 利 者 のfactaalienaに 該 当 す る場 合 に

44)応 答 「義 務(P且icht)」 で あ る の か,そ れ と も,応 答 「責 任(Last)」 で あ る の か に つ い て は 争 い が あ っ た 。 こ れ は,当 事 者 は,相 手 方 の 主 張 に 対 して,陳 述 「義 務 」 を 負 う の か,そ れ と も,陳 述 「責 任 」 を負 う の か と い う 形 で,ZPOaF.138 条1項(ZPO138条2項)の 解 釈 を め ぐ っ て 議 論 が 展 開 さ れ た よ う で あ る が,本 稿 で は,そ の 内 容 を詳 らか に で き な か っ た 。 も っ と も,当 時 の 代 表 的 な コ ンメ ン

ター ル で は,「(こ の 論 争 は)単 に 理 論 的 な 意 義 を 有 して い る に す ぎな い 」 と理 解 され て い た(Stein/Jonas,aaO.(Anm.42),§13811.)。

45)ZPOa.F.452条 「(2)当 事 者 が 何 も陳 述 し な い と き,ま た は,反 対 要 求 が 許 容 さ れ な い 場 合 に 宣 誓 を条 件 付 き で 受 け 入 れ る こ と な く反 対 要 求 を し た と き は,宣 誓 は 拒 絶 さ れ た もの とみ な さ れ る 」。

46)ZPOa.E452条 「(1)宣 誓 を 要 求 さ れ た 当 事 者 は,た と え 宣 誓 要 求 に 関 して 異 議 を 申 し立 て て い る 場 合 で あ っ て も,宣 誓 を受 け 入 れ る か,ま た は,反 対 要 求 す る か と い う 陳 述 を しな け れ ば な ら な い 」。

47)Rosenberg,aaO.(Anm.15),S.383.

(14)

限 っ て 許 容 さ れ た48)。 も っ と も,宣 誓 主 題 が,証 明 責 任 を負 わ な い 当 事 者 に と っ てfactapropriaで あ る の に 対 し,証 明 責 任 を負 う 当 事 者 に とっ て は factaalienaで あ る 場 合 に は,反 対 要 求 は 許 容 され な か っ た 。 こ の こ と は,

ドイ ッ民 事 訴 訟 法 の 宣 誓 要 求 制 度 が,「 確 信 宣 誓 」 よ り も 「 真 実 宣 誓 」 を優 先 す る制 度 で あ っ た こ と を示 して い る49)。 反 対 要 求 が 許 容 さ れ る の は,証 明 責 任 を負 う 当事 者 の ほ うが,証 明責 任 を負 わ ない 当事 者 よ り も,宣 誓 主 題

に 関 す る 「 最 善 の 情 報(besteKunde)」 を有 して い る と判 断 さ れ る 場 合 な の で あ る50)。

三 以 上 の よ う に,主 張 事 実(宣 誓 主 題)が 真 実 で あ る こ とが 完 全 に証 明 され る か,あ る い は,そ れ が 真 実 で な い こ とが 完 全 に証 明 され るか は,証 明 責 任 を負 わ な い 当事 者 の 応 答 の 態 様 如 何 にか か っ て い た。こ の意 味 にお い て, 証 明 責 任 を負 わ な い 当 事 者 は,一 定 の事 実 問 題 の真 偽 の確 定 に つ い て,負 担 が 非 常 に大 きか っ た とい え る で あ ろ う51)。

第 三 款 宣 誓 要 求 の 許 容 要 件

本 款 で は,こ れ ま で の 記 述 と重 複 す る と こ ろ もあ るが,宣 誓 要 求 の 許 容 要 件 を 整 理 す る 。 宣 誓 要 求 が 認 め られ る た め に は,次 に 挙 げ る要 件 が 充 た され な け れ ば な らな い 。

【1】 宣 誓 要 求 す る 当 事 者 が,宣 誓 主 題 に つ い て,証 明 責 任 を 負 っ て い る こ と52)。

48)ZPOa.F.448条 「(1)宣 誓 に 対 す る 反 対 要 求 は,445条 に よ り 宣 誓 要 求 が 認 め ら れ る 場 合 に 限 っ て,許 容 さ れ る 。(2)相 手 方 当 事 者 で は な く,宣 誓 要 求 さ れ た 当 事 者 が,自 己 の 行 為 あ る い は 認 識 に つ い て,宣 誓 し な け れ ば な ら な い と き は,反 対 要 求 を す る こ と は 認 め ら れ な い 」。

49)MUnks,aaO.(Anm.21),S.137f.

50)Bohn,aaO.(Anm.39),S.9.こ の よ う に,ド イ ツ 民 事 訴 訟 法 の 宣 誓 要 求 制 度 が,「 主 張 事 実 に 関 す る 情 報 を 有 し て い る 当 事 者 が 宣 誓 す べ き で あ る 」 と い う 考 え 方 に 基 づ い て い た こ と は,後 述 第 三 章 参 照 。

51)Kisch,DiebestimmteBezeichnungderEidestatsache,in:FSPaulLaband, 1908,S.172.

52)ZPOa.F.447条 「証 明 義 務 を 負 わ な い 当 事 者 は,宣 誓 要 求 に よ っ て,証 明 義 務

(15)

ドイ ツ法 にお ける宣 誓要 求制 度の 意義 と機 能(1) J99

【2】 宣 誓 主 題 が,判 決 に とっ て 重 要 で あ り,か つ,証 明 の 必 要 性 が 認 め られ る こ と53)。

【3】 宣 誓 要 求 さ れ る 当 事 者 が,訴 訟 能 力(ProzeBfahigkeit)を 有 し て い る こ と54)。

【4】 宣 誓 主 題 が 事 実 問 題 で あ る こ と。 この 要 件 を め ぐっ て,「(宣 誓 義 務 者 の)判 断 」,「法 律 概 念 」,お よ び,「 内 的 事 実 」 に つ い て の宣 誓 要 求 が 許 容 さ れ る か 否 か が,当 時 の ドイ ツ の裁 判 実 務 ・学 説 にお い て 問 題 と され た55)。

を 引 き 受 け る こ と は な い 」。Mttnks.aaO.(Anm.21),S.145£ 川 嶋 ・前 掲 注14)

「(1)」1327頁 参 照 。

53)ZPOa.E446条 「宣 誓 要 求 は,裁 判 所 が 反 対 事 象 に つ い て 証 明 さ れ た と 判 断 す る 事 実 に つ い て は,許 容 さ れ な い 」。

54)訴 訟 無 能 力 者 の 場 合 に は,そ の 者 の 法 定 代 理 人 に 対 して 宣 誓 要 求 しな け れ ば な ら な い 。こ の 要 件 が 必 要 と さ れ る の は,前 述 し た よ う に,宣 誓 要 求 の 前 身 で あ る ロ ー マ 法 に お け る和 解 的 宣 誓 が,証 拠 調 べ の 回 避 を 目的 とす る 一 種 の 和 解 契 約 で あ っ た こ と に 起 因 す る(Mttnks,aaO.(Anm.21),S.110)。 す な わ ち,和 解 契 約 を締 結 す る能 力 を 有 す る 当 事 者 に 対 して の み 宣 誓 要 求 す る こ とが 認 め られ る と解 さ れ て

い た の で あ る。

ま た,普 通 法 に お い て は,第 三 者,と りわ け,係 争 債 権 の 譲 渡 人(Zedent) に 対 して,宣 誓 要 求 す る こ とが 認 め ら れ るか 否 か が 議 論 さ れ て い た 。 こ の よ う な 第 三 者 に対 す る 宣 誓 要 求 の 問 題 は,当 時 の 「証 人 能 力(Zeugnisfahigkeit)」 の 考 え 方 と 密 接 に 関 係 して い る 。 譲 渡 人 は,訴 訟 の 勝 敗 の 帰 趨 に よ っ て,譲 受 人 に 対 して 求 償 義 務 を 負 う こ と に な る た め,訴 訟 の 結 果 に 対 して 自 己 の 利 益 を有 して い る と して,証 人 能 力 が 否 定 さ れ る 場 合 が あ っ た 。 そ して,こ の よ う な 場 合 に,譲 渡 人 の 有 す る情 報 を 利 用 す る た め に,譲 渡 人 に 対 す る 宣 誓 要 求 が 許 容 さ れ る と考

え ら れ て い た の で あ る(MUnks,aaO.(Anm21),S.112f.)。

55)こ こで,「 事 実 」 概 念 に 関 す る 当 時 の ドイ ツ の 裁 判 実 務 を整 理 して お く。

「宣 誓 義 務 者 の 単 な る 判 断(Urteil)や 推 論(SchluBfolgerung)は ,宣 誓 の 対 象 と な ら な い 」 と し た も の(RGUrt.v.28.6.1904(JW1904,475))や 「 推 論 の 必 然 性 や 正 当 性 は,宣 誓 の 対 象 と は な らず,裁 判 官 に よ っ て 判 断 さ れ ね ば な ら な い 」 と し た も の(RGUrt.v.20.9.1888(RGZ21,402))が あ っ た 。 しか し,事 実 に つ い て 宣 誓 す る 場 合 で あ っ て も,一 定 の 範 囲 で 宣 誓 義 務 者 の 判 断 や 推 論 が 問 題 と な る。 い わ ゆ る 「事 実 判 断(Tatsachenurteile)」 で あ る 。 「事 実 」 と 「判 断 」 ・

「推 論 」 と を 厳 密 に 区 別 す る こ と は 困 難 で あ る 。その ため,先 に挙 げ た裁判 例 は, 宣 誓 義 務 者 が 事 実 判 断 を す る こ とが 困 難 で あ る 場 合 に は,宣 誓 要 求 が 認 め ら れ な い とい う意 味 で 理 解 す べ き で あ ろ う。

こ の こ と は,RGUrt.v.20,10.1881(RGZ7,1)が 明 確 に 述 べ て い た 。「CPO410

(16)

【5】 宣 誓 主 題 が 特 定 し て い る(bestimmt)こ と56)。 こ の 要 件 は,も っ ぱ ら,「 模 索 的 宣 誓(Erforschungs‑oderAusforschungseid)」 が 許 容 さ れ る か 否 か と い う 形 で 問 題 と な っ た57)。 も っ と も,本 稿 で は,

条(ZPOa.F.445条)は,法 律 概 念 や 判 断 を 宣 誓 命 題 とす る こ と を 絶 対 に 認 め な い と い う 意 味 で 理 解 さ れ る べ きで は な い 。 事 実 と法 律 概 念 ・判 断 と を 区 別 す る こ と は 非 常 に 困 難 で あ る 。 個 別 的 な 当 事 者 につ い て,特 定 の 法 律 概 念(を 理 解 す る 能 力)や 特 定 の 判 断 をす る能 力(Befahigung)を 前 提 と して も よ い 場 合 に は, 法 律 概 念 や 判 断 を,CPO410条 に い う 『 事 実 』 と解 し,そ れ に つ い て 宣 誓 要 求 す

る こ と が 許 容 さ れ る と理 解 す べ きで あ る 」。

こ の 判 決 を 前 提 と し て,RGは,例 え ば,「 合 意(Vereinbarung)」(RGUrt.

v.3.12.1891(Gruchots37,387)),「 雇 傭 関 係(Dienstverhaltnis)」(RGUrt.v.

13.2.1903(JW1903,124)),「 契 約 締 結 」(RGUrt.3.11.1893(JW1893,136)),「 委 任 」(RGUrt.v.10.3.1895(JW1895,295))に つ い て の 宣 誓 要 求 を 認 め た 。 ま た, RGは,宣 誓 主 題 の 内 容 に よ っ て 画 一 的 に 宣 誓 要 求 の 許 容 性 を判 断 し て い た の で は な く,個 別 具 体 的 な 宣 誓 義 務 者 の 能 力 に応 じて,そ の 許 容 性 を 判 断 し て い た 。 例 え ば,「 所 有 権 」 に つ い て の 宣 誓 要 求 を,RGUrt.v.15.12.1884(JW1885,26)

は 認 め た が,RGUrt.v.27.3.1898(JW1898,415)は 認 め な か っ た 。

「内 的 事 実 」 に つ い て ,RGは,「 各 人 の 知 識,信 頼,目 的,意 図 は,た しか に, 外 的 に知 覚 し う る 事 実 で は な い が,内 的 な 認 識 の 対 象 とな る事 実 で あ る」と して, 宣 誓 要 求 を 認 め た(RGUrt.v.20.9.1888(RGZ21,402))。RGは,例 え ば,「 書 類 に 署 名 し た 時 点 に お け る 被 告 の 意 思 」(RGUrt.v.27.10.1892(JW1892,506))

や 「原 告 が 違 法 性 を 知 っ て い た こ と」(RGUrt.v.13.4.1904(RGZ57,390))に

つ い て の 宣 誓 要 求 を認 め た 。 も っ と も,こ の よ う な 内 的 事 実 に つ い て の 宣 誓 要 求 が 許 容 さ れ る た め に は,内 的 事 実 に 関 す る事 実 が 客 観 的 に 存 在 し,か つ,そ れ を 認 識 で きた こ と を要 件 とす る よ う で あ る(RGUrt.13.6.1906(JW1906,475))。

そ の 他,例 え ば,「 錯 誤 者 は,事 実 を 知 っ て い れ ば,取 消 の 意 思 表 示 を し た で あ ろ う」 と い う よ う な 「仮 定 的 な(hypothetische)内 的 事 実 」 に つ い て の 宣 誓 要 求 が 許 容 さ れ るか も 問 題 と な っ た 。

以 上 の 問 題 を 扱 う 論 文 や モ ノ グ ラ フ ィー と し て,Kleinfeller,DerThat‑

sacheneidnach§410derDeutschenCivilprozessordnung,ZZP16(1891),227ff.;

SiegmundGeorgPick,DerParteieidUberinnereTatsachen,Diss.,1909;Kisch, aaO.(Anm.51),S.229ff.な ど を 参 照 。

56)ZPOa.F.451条 「証 拠 の 申 し 出 は,特 定 して 示 さ れ た 事 実 に つ い て の 宣 誓 を 相 手 方 に 要 求 す る 陳 述 に よ っ て 行 う」。

57)例 え ば,「 妻 が 夫 以 外 の あ る男 性 と性 的 な 関 係 を結 ん で い た 」 と い う よ う な概 括 的 な 主 張 に つ い て の 宣 誓 要 求 が 許 容 さ れ る か と い う 問 題 で あ る 。 当 時 の代 表 的 な 体 系 書 で は,宣 誓 要 求 をす る 当 事 者 は,「 場 所 的 ・時 的 ・人 的 ・客 観 的 状 況 に よ っ て,(宣 誓 主 題 を)一 定 の 歴 史 的 な 出 来 事 と し て 示 し,そ れ を 証 明 責 任 を 負 わ な い 当 事 者 に 認 識 さ せ な け れ ば な ら な い 」 と 説 明 さ れ て い た(Rosenberg,aaO.

(Anm.15),S.381)。

(17)

ドイ ツ法 にお け る宣誓 要求 制度 の意 義 と機能(1) 20ヱ 宣 誓 主 題(主 張 事 実)が 特 定 され て い る こ と を前 提 と して 検 討 を 進 め

て い く。

【6】 宣 誓 主 題 が,「 証 明 責 任 を負 わ な い 当 事 者 自身 の行 為,あ る い は, 認 識 の 対 象(factapropria)」 に 該 当 す る か,ま た は,「 証 明 責 任 を 負 わ な い 当 事 者 の 代 理 人 や 前 権 利 者 の 行 為,あ る い は,認 識 の 対 象 (factaaliena)」 に 該 当 す る こ と58)。

第四節 小 括

一 以 上 の こ とか ら ,宣 誓 要 求 制 度 は,一 定 の事 実 問 題 の真 偽 の 確 定 を 当 事

そ れ に 対 し て,RGUrt.v.&3.1894(JWI894,197)は,特 定 性 の 程 度 に つ い て,次 の よ う に 判 断 し た 。

「(宣 誓 主 題 の)内 容 は

,完 全 な 良 心(Gewissenhaftigkeit)と 確 信 (Uberzeugungstreue)を も っ て 応 答 で き る 」 程 度 に 特 定 さ れ て い な け れ ば な ら な い 。 「ZPOa.F,451条 に い う 特 定 性 は,宣 誓 義 務 者 が 宣 誓 主 題 の 内 容 に つ い て 疑 念 を 抱 く 余 地 が な い,す な わ ち,(宣 誓 主 題 と)他 の 事 実 と を 区 別 す る こ と が で き,宣 誓 を 完 全 な 責 任 の も と で 行 う こ と が で き る か 否 か を 判 断 し う る 程 度 で 充 た さ れ る 」。 同 様 の 判 断 を す る も の と し て,RGUrt.v.14.12.1903(Gruchots48,

361)が あ る 。

さ ら に,た と え 宣 誓 主 題 が 特 定 さ れ て い て も,そ れ が 「当 て ず っ ぽ う の 」 主 張 で あ る 場 合 に は,宣 誓 要 求 は 認 め ら れ な か っ た(RGU沈v.&11.1897(JW1898,

8);RGUrt.v.26.7.1898(JW1898,539);RGUrt.v.10.1.1907(Gruchotssl,

1064))。 そ の 他,「 客 観 的 な 手 掛 か り(Anhaltspunkte)が あ る 場 合 に は,特 定 性 は 過 大 に は 要 求 さ れ な い 」 と し て,特 定 性 の 要 求 を 一 定 の 範 囲 で 緩 和 す る 裁 判 例 も あ っ た(RGUrt.v.5.7.1913(Recht1913,Nr.2901))。 模 索 的 宣 誓 を 詳 細 に 論 じ た も の と し て,畑 瑞 穂 「民 事 訴 訟 に お け る 主 張 過 程 の 規 律(一)」 法 協112巻4 号(1995)510頁 以 下 参 照 。 ド イ ツ の 論 文 や モ ノ グ ラ フ ィ ー は,Kisch,aaO.

(Anm.51),S.165ff.;Bohn,aaO.(Anm.39),S.29ff.;GerdChudoba,Derausfors‑

chendeBeweisantrag,Diss,,1993,S.21ff.を 参 照(Chudobaの モ ノ グ ラ フ ィ ー の 紹 介 と し て,畑 「紹 介 」 民 訴 雑 誌40号(1994)256頁 が あ る)。 ま た,模 索 的 宣 誓

に 関 す るRGの 一 連 の 裁 判 例 は,HansWalsmann,ReichsgerichtundEides‑

beweis,in:OttoSchreiber(hrsg.),DieReichsgerichtspraxisimdeutschen Rechtsleben,Bd.6.,1929,S.257ff.に 整 理 さ れ て い る 。

58)ZPOaF.445条 。 本 条 の 立 法 沿 革,お よ び,「 前 権 利 者 」 ・「 代 理 人 」 概 念 の 解 釈 に つ い て は,後 述 第 三 章 参 照 。 な お,宣 誓 義 務 者 の 認 識 可 能 性 を 争 う 場 合 に は, 宣 誓 要 求 を す る 当 事 者 が 宣 誓 義 務 者 の 「認 識 能 力(Wahrnehmungsfahigkeit)」

を 証 明 し な け れ ば な ら な い と 解 さ れ て い た よ う で あ る(Walsmann,aaO.(Anm.

57),S.261;Planck,aaO.(Anm.39),S.306)。

(18)

者 の イ ニ シア テ ィブ に基 づ く処 分 に委 ね る 「当事 者 主 体 の事 案 解 明 手 続 」 と し て 捉 え る こ とが で き るで あ ろ う。 証 明責 任 を負 う当 事 者 の宣 誓 要 求 が 許 容 さ れ る こ と に よ り,一 定 の 事 実 問題 につ い て,自 由心 証 に基 づ く裁 判 所 の事 実 認 定 権 限 が 排 除 され る こ と に な っ た の で あ る59)60)。

も っ と も,「 当事 者 主 体 の 事 案 解 明 手 続 」 と い っ て も,証 明 責 任 を 負 う当 事 者 の 主 張 事 実 の 真 偽 の確 定 は,も っ ぱ ら,証 明 責 任 を負 わ な い 当 事 者 の応 答 の 態 様 如 何 に か か っ て い た。 宣 誓 要 求 が,宣 誓 主 題 に つ い て,「 完 全 な 証 明 」 と い う形 式 的 証 拠 力 を有 す る こ と に鑑 み る と,主 張 段 階 に お け る 応 答 強 制61)と 比 べ,宣 誓 要 求段 階 で は,証 明責 任 を負 わ ない 当事 者 は 負 担 が大 きか っ た とい え る 。 す な わ ち,証 明 責 任 を負 わ な い 当事 者 は,宣 誓 を履 行 す る た め に,主 張 事 実 に関 して,既 に情 報 を有 す る 場 合 に は,そ れ に 基 づ き,ま た,情 報 を 有 し て い な い 場 合 に は,情 報 収 集 した 後 に そ の情 報 に基 づ き,宣 誓 主 題 の 真 実性 に つ い て確 信 を形 成 しな け れ ば な らな か っ た の で あ る(情 報 収 集 義 務 ・確 信 形 成 義 務)。 本 章 第 一 節 で 挙 げ た 【 具 体 例3】 で い う と,弁 済 の 事 実 につ き証 明 責 任 を負 わ な い 当事 者 は,被 相 続 人 の 行 為 に つ い て調 査 した 後 に,被 相 続 人 が 本 当 に被 告 か ら弁 済 を受 け た か 否 か を 判 断 しな け れ ば な らな い こ とに な る。

二1877年 に成 立 し たCPOに は,主 張 事 実 に 関 して,証 明責 任 を負 わ な い 当 事 者 が 有 す る情 報,お よ び,収 集 し う る情 報 を事 案 解 明 の た め に使 用 させ る た め の 手段 が 制 度 内 在 的 に備 わ っ て い た 。 そ の 手 段 とは,す な わ ち,証 明責 任 を負 う当 事 者 が行 う宣 誓 要 求 で あ る 。

59)畑 ・前 掲 注58)510頁 は,こ の こ と を,「 一 種 の 当 事 者 支 配 を 認 め る も の 」 と い う 。 ま た,近 時,ド イ ッ に お い て,当 事 者 の 処 分 権 能 と い う 観 点 か ら,自 白 法 理 と 宣 誓 要 求 制 度 と の 連 続 性 を 指 摘 す る 見 解 が あ る(JoachimP.Schmidt,Teilbarkeit

undUnteilbarkeitdesGestandnissesimZivilprozeB,Diss.1972,S.96ff.)。Paul Oberhammer,Parteiaussage,ParteivernehmungundfreieBeweiswUrdigung

amEndedes20.Jahrhunderts,ZZP113(2000),295,306f.も 参 照 。

60)宣 誓 要 求 の 場 合 に 裁 判 所 が し な け れ ば な ら な い こ と は,宣 誓 要 求 の 許 容 性 を 判 断 す る こ と,お よ び,当 事 者 の 主 張 に 基 づ い て 宣 誓 命 題 を 作 成 す る こ と で あ る

(Bohn,aaO.(Anm.39),S.6)。

61)主 張 段 階 に お け る 応 答 拒 絶 の 効 果 は,主 張 事 実 に つ い て 擬 制 自 白 が 成 立 す る こ と

で あ る 。

(19)

ドイ ツ法 にお け る宣誓 要 求制 度の 意義 と機 能(1) 203 この よ う に,宣 誓 要 求 制 度 は,ノ ン ・リ ケ ッ トを解 決 す る とい う機 能 だ け で な く,証 明 責 任 を負 わ な い 当事 者 か ら主 張 事 実 に 関 す る情 報 を引 き出 す とい う 機 能 も有 し て い た と理 解 す る こ とが で きそ うで あ る62)。 なお,CPOの 立 法 担 当 者 が 考 え て い た宣 誓 要 求 制 度 の 機 能 に つ い て は 次 章 で考 察 す る。

三 以 上 の よ う に 宣 誓 要 求 制 度 を理 解 した うえ で,次 に検 討 しな け れ ば な ら な い 問 題 は,証 明責 任 を負 わ な い 当事 者 に対 して,事 案 解 明 の た め の 一 定 の 行 為 義 務(情 報 収 集 義 務 ・確 信 形 成 義 務)を 課 す こ とが,ど の よ う に正 当 化 さ れ て い た の か,ま た,そ の よ うな 行 為 義 務 を課 す こ とが,ど の よ う な範 囲 で 許 容 され て い た の か とい う こ とで あ る。 こ れ は,宣 誓 要 求 の 許 容 範 囲 を 定 め た 許 容 要 件 【6】 と関 連 す る。 そ こで,次 章 で は,許 容 要 件 【6】 をめ ぐる 立 法 過 程 に お け る議 論,お よび,当 時 の ドイ ツ の 裁 判 実 務 ・学 説 に つ い て検 討 す る。

第 三 章19世 紀 中期 か ら1933年 ま での ドイツ の 議論 状 況

本 章 で は,宣 誓 要 求 の 許 容 範 囲 につ い て 定 め た 条 文(CPO410条=ZPOa.F.

445条)の 立 法 過 程 に お け る 議 論,お よ び,そ れ に 関 す る 当 時 の ドイ ツ の 裁 判

実 務 ・学 説 にお け る 議 論 を跡 付 け る 。 まず,ハ ノー フ ァー 草 案,プ ロ イセ ン草

案,北 ドイ ッ草 案,お よ び,第 一 草 案 ない し第 三 草 案 の 審 議 過 程 に お け る議 論

を検 討 す る(本 章 第 一 節)。 そ こ で は,証 明 責 任 を負 わ な い 当 事 者 と主 張 事 実

に 関 す る情 報 と の 関 係 に 着 目 した 議 論 が 展 開 さ れ て い た 。 そ して,CPOが 制

62)先 述 し た よ う に,宣 誓 要 求 が 問 題 と な る 主 な 場 面 と は,裁 判 所 が 主 張 事 実 の 真 偽

に つ い て 全 くの ノ ン ・リ ケ ッ トの 場 合 で あ る(前 掲 注24)参 照)。 宣 誓 要 求 制 度

が 存 在 し な い とす る と,証 明 責 任 を負 わ な い 当 事 者 は何 ら 反 証 す る必 要 は な く,

証 明 責 任 法 理 に よ り,証 明 責 任 を 負 う 当 事 者 が 敗 訴 す る こ と に な る で あ ろ う。もっ

と も,宣 誓 要 求 制 度 の も とで も,例 え ば,【 具 体 例1】 で,証 明 責 任 を 負 わ な い

当 事 者 が 金 銭 の 授 受 に つ い て 宣 誓 を履 行 す る と,結 果 的 に は,証 明 責 任 を 負 う当

事 者 は敗 訴 す る こ とに な る。 こ の よ う に,宣 誓 要 求 制 度 は,証 明 責 任 を負 う 当 事

者 の 勝 訴 と い う 結 果 を常 に もた らす もの で は な い の で あ る。 以 上 の こ と か ら,宣

誓 要 求 制 度 は,主 張 事 実 の 真 偽 が ノ ン ・リケ ッ トで あ る 場 合 に,証 明 責 任 を負 わ

な い 当事 者 が 事 案 解 明 の た め に何 も し な い で い る こ と を 認 め な い 制 度 で あ っ た と

い え る で あ ろ う。

(20)

定 され た1877年 か ら1933年 のZPO改 正 に至 る ま で の 裁 判 実 務 ・学 説 にお け る 議 論 の 状 況 を整 理 した 後 に(本 章 第 二 節),宣 誓 要 求 制 度 の 廃 止 の 影 響 に つ い て 考 え る(本 章 第 三 節)。 こ の よ う な 考 察 か ら,CPOの 立 法 担 当 者 が 宣 誓 要 求 制 度 に期 待 して い た 機 能 を示 す と同 時 に,ド イ ツ法 の事 案 解 明 義 務 論 の基 礎

に あ る 考 え方 を 明 らか に す る。

第 一 節CPO410条 の 立 法 沿 革63)

‑CPO410条 は ,宣 誓 要 求 の 許 容 範 囲 に つ い て,次 の よ う に 規 定 し て い た 。 な お,CPO410条 は,1898年 の 改 正 に よ っ て,内 容 は そ の ま ま で 条 数 が, ZPOa.F.445条 と な っ た 。

【CPO410条(ZPOa.F.445条)】

「宣 誓 要 求 は ,相 手 方,お よ び,相 手 方 の 前 権 利 者 ま た は 代 理 人 の 行 為,あ る い は,認 識 の 対 象 で あ る 事 実 に つ い て の み 許 容 さ れ る 」。

二 こ の 条 文 は,前 章 第 三 節 第 三 款 で み た宣 誓 要 求 の 許 容 要 件 の うち 【4】

と 【61に つ い て 規 定 して い た 。 前 章 第 二 節 で もみ た よ う に,当 事 者 宣 誓 が 証 拠 方 法 の一 つ と して位 置付 け られ る こ とに よ り,宣 誓 の 対 象 は,請 求 権 や 権 利 関 係 自体 で は な く,そ の 基 礎 と な る 事 実 問 題 に 限 定 され た 。CPOの 立 法 過 程 で は,当 事 者 宣 誓 を証 拠 方 法 と して 捉 え る こ と 自体 に 関 して は 争 い が な か った た め,宣 誓 の 対 象 を事 実 問題 に 限 定 す る こ との 当 否 は,ほ とん ど議 論 さ れ な か っ た よ うで あ る 。 これ に対 し て,ど の よ うな事 実 に つ い て 宣 誓 要 求 が 許 容 され る の か と い う宣 誓 要 求 の 許 容 範 囲 を め ぐっ て は,CPOの た た き台 とな っ た 各 草 案 の 審 議 過 程 に お い て議 論 が 展 開 され て い た 。そ こで,本 節 で は,許 容 要 件 【4】

に つ い て は簡 単 に 言 及 す る に止 め て,許 容 要 件 【6】 をめ ぐる議 論 を 中心 に 検

63)CPOの 立 法 過 程 を 簡 潔 に 示 す 年 表 が,WernerSchubert,EntstehungundQuelle

derCivilprozeBordnungvon1877,Erst.Halbband,1987,S.35f.に 掲 載 さ れ て い

る 。

(21)

ドイ ツ法 に おけ る宣誓 要 求制 度 の意義 と機 能(1) 205 討 を 進 め て い く64)。

第 一 款 ハ ノ ー フ ァ ー 草 案65)

一 ハ ノ ー フ ァ ー 草 案408条 は ,次 の よ う な 規 定 で あ っ た 。 一

【 ハ ノ ー フ ァ ー 草 案408条 】

「宣 誓 要 求 の 対 象 は ,重 要 で あ り(erheblich),か つ,十 分 に 特 定 さ れ た (bestimmt)事 実 だ け で あ る 。 例 外 は,同 法 が 定 め る 」。

こ の 条 文 は,「 重 要 で あ り,か つ,十 分 に特 定 さ れ た 」 事 実 の み が 宣 誓 要 求 の 対 象 と な る こ と を 定 め た に 止 ま り,ZPOa.F.445条 の よ うに,「 相 手 方 の代 理 人 また は前 権 利 者 の行 為,あ る い は,認 識 の 対 象 」 とい う要 件 を設 け て い な か っ た 。 ハ ノ ー フ ァー 草 案 は,factaalienaに つ い て の 宣 誓 要 求 を無 制 限 に 認 め て い た こ と に な る66)。 す な わ ち,同 草 案408条 に よ る と,証 明 主 題 と な り う る事 実 は,ど の よ う な事 実 で あ っ て も,宣 誓 要 求 の 対 象 とな りえ た の で あ る67)。 なお,諸 ラ ン トの 訴 訟 法 に も,ハ ノ ー フ ァー 草 案 と 同様 に,

64)な お,各 草 案 の 内 容 を 相 対 化 す る た め,諸 ラ ン トの 訴 訟 法 や 普 通 法 の 規 律 も随 時 紹 介 す る 。 ま た,許 容 要 件 【6】 は,宣 誓 の 履 行 形 式(前 述 第 二 章 第 二 節 参 照) に も 関 連 す る と考 え られ る た め,各 草 案 を検 討 す る に 際 して,宣 誓 の 履 行 形 式 の 規 定 に つ い て も,行 論 に必 要 な 限 り に お い て 言 及 す る 。

65)EntwurfeinerallgemeinenCivilproceBordnungfUrdiedeutschenBundes‑

staaten.こ れ は,G.J.Dahlmanns(hrsg.),NeudruckezivilprozessualerKodifika‑

tionenundEntwurfedes19.Jahrhunderts,Bd.2,1971に 所 収 。

66)こ れ は,普 通 法 の 影 響 を 受 け た と さ れ る。 普 通 法 の 宣 誓 要 求 制 度 に つ い て は, Mttnks,aaO.(Anm.21),S.105ff.を 参 照 。

67)ハ ノ ー フ ァ ー 草 案414条 は,factaalienaに つ い て の 宣 誓 の 履 行 形 式 と して,「 確 信 宣 誓 」 を 認 め て い た 。 た だ し,ZPOa.F.459条 の よ う に,宣 誓 義 務 者 に対 し て 「入 念 な 審 査 お よ び 調 査 義 務 」 を 課 して い な か っ た(前 述 第 二 章 第 二 節 参 照)。

同 草 案 は,factaalienaに つ い て の 宣 誓 要 求 を 無 制 限 に 認 め る代 わ り に,「 確 信 宣 誓 」 を広 く認 め る こ と に よ り偽 証 を 防止 し よ う と した の で あ る 。 も っ と も,同 草 案414条 の 原 案 で あ る 報 告 委 員 草 案406条 は,宣 誓 義 務 者 に 対 し て,「 入 念 な 審 査 お よ び 調 査 義 務 」 を課 し て い た 。

【 ハ ノ ー フ ァー 草 案414条 】

「(1)宣 誓 義 務 者 は ,自 己 の行為,あ るい は,認 識 の対 象 が問題 とな る限 り,係 争

(22)

宣 誓 要 求 の 対 象 と な る 事 実 に つ い て,ZPOa.F.445条 の よ う な 制 限 を 課 さ な い も の が あ っ た68)。

ハ ノ ー フ ァ ー 草 案 を め ぐ る 審 議 過 程 で は,factaalienaに つ い て の 宣 誓 要 求 を一 定 の 範 囲 で 制 限 す べ きで は な い か と い う反 対 意 見 が 多 く提 出 され た。

以 下 で は,ハ ノ ー フ ァー 草 案 の 起 草 過 程 に お け る議 論 の 内 容 を審 議 録69)の 検 討 を通 して 明 らか に す る。

ニ ハ ノ ー フ ァ ー 草 案 の 原 案 で あ る 報 告 委 員 草 案(EntwurfderReferen一 ten)は,宣 誓 要 求 の 許 容 範 囲 に つ い て,次 の よ う に規 定 して い た。

【 報 告 委 員 草 案398条 】

「 宣 誓 の対 象 は ,訴 訟 の 結 果 に と っ て 決 定 的 で あ り,特 定 され た事 実 の み で あ る 」。

事 実 が 存 在 す る こ と,あ る い は,存 在 し な い こ と を 宣 誓 し な け れ ば な ら な い 。 (2)そ の 他 の 場 合 で,宣 誓 主 題 の 証 明 責 任 を 宣 誓 義 務 者 が 負 う と き に は,宣 誓 義 務 者 は,次 の よ う な 宣 誓 を 履 行 す る 。

(そ の 事 実 が 存 在 す る,あ る い は,存 在 し な い と い う こ と)に つ い て,確 信 が あ る 。

そ の 事 実 の 証 明 責 任 を(宣 誓 義 務 者 の)相 手 方 が 負 う と き に は,

(そ の 事 実 が 存 在 す る,あ る い は …)に つ い て,確 信 が な い 」(括 弧 内 は 筆 者)。

【報 告 委 員 草 案406条 】

「 宣 誓 義 務 者 は ,自 己 の 行 為,あ る い は,認 識 の 対 象 が 問 題 と な る 限 り,係 争 事 実 が 存 在 す る こ と,あ る い は,存 在 し な い こ と を 宣 誓 し な け れ ば な ら な い 。 そ の 他 の 場 合 に は,宣 誓 義 務 者 は,次 の こ と を 付 加 し て 宣 誓 を 履 行 し な け れ ば な ら な い 。

真 実 性 の 入 念 な 調 査 の 後 に,(係 争 事 実 が 存 在 す る こ と …)に つ い て 確 信 を 得 た 」 (括 弧 内 は 筆 者)。

68)例 え ば,1850年 ハ ノ ー フ ァ ー 訴 訟 法288条,1868年 ヴ ュ ル テ ン ブ ル ク 訴 訟 法571条, 572条 を 参 照 。1850年 ハ ノ ー フ ァ ー 訴 訟 法 の 条 文 は,Dahlmanns,Neudrucke ZivilprozessualerKodifikationenundEntwurfedes19,Jahrhunderts,Bd.1.

1971に 所 収 さ れ て い る 。 ま た,1868年 ヴ ュ ル テ ン ブ ル ク 訴 訟 法 に つ い て は,W.

Schubert(hrsg.),DieCivilprozeBordnungfUrdasK6nigreichWUrttembergvon

1868,Bd.1.1997に 条 文 が 所 収 さ れ,そ の 草 案 と 理 由 書 は,ders.,Bd.2.1997に 所 収 さ れ て い る 。

69)ProtocollederCommissionzurBerathungeinerallgemeinenCivilprozeBord‑

nungfUrdiedeutschenBundesstaaaten,1862‑1866i以 下,Hannover‑Protokolle

と 記 す 。

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