平成28年度 修士論文
鋼板接着補強 RC 床版の弾性波モニタリング による損傷過程評価
首都大学東京大学院
都市環境科学研究科 都市基盤環境学域
学修番号 15885433 韮澤 洋平 指導教員 博士(工学) 宇治 公隆
目次
第一章 序論
1.1 研究の背景 ··· 1
1.1.1 社会的背景 ··· 1
1.2 研究目的 ··· 2
1.2.1 鋼板接着補強 RC 床版への輪荷重走行試験 ··· 2
1.2.2 AE モニタリングによるコンクリートの損傷過程の把握 ··· 2
1.3 論文の構成 ··· 3
参考文献 ··· 4
第二章 既往の研究 2.1 鉄筋コンクリート(RC)床版の疲労劣化機構 ··· 5
2.1.1 RC 床版の設計基準とその変遷 ··· 5
2.1.2 RC 床版の疲労破壊機構 ··· 9
2.1.3 土木学会による RC 床版の疲労劣化指標 ··· 10
2.1.4 国土交通省による RC 床版の疲労劣化指標 ··· 11
2.2 RC 床版の補修・補強工法 ··· 12
2.2.1 補修工法 ··· 12
2.2.2 補強工法 ··· 13
2.3 道路橋床版の疲労耐久性評価に関する既往の研究 ··· 14
2.3.1 研究の概要 ··· 14
2.3.2 輪荷重走行試験方法 ··· 14
2.3.3 RC 床版の輪荷重走行試験 ··· 16
2.3.4 鋼板接着補強 RC 床版の輪荷重走行試験 ··· 17
2.4 コンクリート系床版の維持管理に資する非破壊検査手法 ··· 20
2.4.1 AE 法による輪荷重走行を受けるバックルプレート床版の 破壊機構に関する研究 ··· 20
2.4.2 AE 法の RC 床版劣化度検査方法への適用に関する研究 ··· 22
2.4.3 重錘落下たわみによる RC 床版の健全度評価法 ··· 25
まとめ ··· 32
参考文献 ··· 33
第三章 鋼板接着補強 RC 床版の輪荷重走行試験 3.1 実験概要 ··· 35
3.1.1 供試体概要 ··· 35
3.1.2 実験方法 ··· 36
3.2 実験結果 ··· 38
3.2.1 走行回数 ··· 38
3.2.2 鋼板接着補強および樹脂再注入の効果 ··· 38
3.2.3 コンクリートのひび割れ状況 ··· 39
3.2.4 コンクリートと鋼板の剥離 ··· 41
3.3 断面調査 ··· 42
3.4 まとめ ··· 45
参考文献 ··· 45
第四章 静的載荷試験 4.1 実験概要 ··· 46
4.1.1 試験体概要 ··· 46
4.1.2 試験方法 ··· 50
4.3 実験結果 ··· 51
4.3.1 床版たわみ ··· 51
4.3.2 鉄筋ひずみ ··· 52
4.3.3 鋼板ひずみ ··· 53
4.4 静的載荷試験における AE 計測結果 ··· 54
4.4.1 載荷プログラムおよび AE ヒット数 ··· 54
4.4.2 AE の振幅規模別頻度分布 ··· 58
まとめ ··· 64
参考文献 ··· 64
第五章 輪荷重走行試験下の鋼板接着補強 RC 床版の AE 計測 5.1 実験概要 ··· 65
5.1.1 供試体概要 ··· 65
5.2 実験結果 ··· 69
5.2.1 AE ヒット数 ··· 69
5.2.2 振幅値別 AE ヒット数 ··· 70
5.2.3 b 値 ··· 72
5.2.4 AE イベント数 ··· 76
5.2.5 AE 源位置標定 ··· 78
5.2.6 振幅値別 AE 源位置標定 ··· 85
まとめ ··· 92
参考文献 ··· 92
第六章 鋼板接着補強 RC 床版の疲労破壊機構
6.1 AE ヒット数と鋼板剥離面積率 ··· 93
6.2 AE 源位置標定と鋼板剥離面積率、床版たわみの関係 ··· 94
6.3 鋼板接着補強 RC 床版の疲労破壊機構 ··· 106
参考文献 ··· 108
第七章 まとめ ··· 109
第一章 序論
1.1 研究の背景 1.1.1 社会的背景
我が国では,昭和39年の東京オリンピック以降に整備された首都高速1号線など,高度 成長期以降に整備されたインフラが多く,今後20 年間で,建設後 50 年以上経過する施設 の割合が加速度的に高くなる見込みである。例えば、道路橋は,その割合が平成25年3月
の約18%から,10年後には約43%、20年後には約67%と急増する(表1.1)このように一
斉に老朽化するインフラを戦略的に維持管理・更新することが求められる1)。
道路橋において,交通荷重を直接受ける部材である床版について,過去より疲労現象が主 要因と疑われる様々な損傷が生じてきた。特に,昭和39年鋼道路橋設計示方書により設計 されたRC床版(以下,39床版) では,鉄筋量や床版厚の不足,また,交通量の増大や車両 の大型化等により供用開始数年で陥没が起こるなど,多数の損傷事例が報告された2)。この ようなことから,39床版には様々な補修・補強がなされてきた。補修・補強工法の中でも,
鋼板接着補強工法は,床版下面に鋼板をエポキシ樹脂で接着することにより,曲げ耐力およ び押抜きせん断耐力を向上でき,また,床版下面から施工するため交通規制を必要としない 利点を有することから,昭和40 年代後半から昭和 60年代にかけて多数採用されてきた。
しかしながら,橋梁の維持管理において,道路橋RC床版の劣化度は床版下面のひび割れ密 度で評価されるが3),現行の鋼板接着補強RC床版では,床版下面からコンクリートの目視 が不可能となり,コンクリートの劣化状態を把握することが困難となる課題が生じている。
現状の維持管理では,鋼板の浮きを打音検査で調査しているが,鋼板の浮きと床版の疲労耐 久性の低下度合には明確な相関が認められないため4),鋼板の浮きだけでは床版の劣化度を 評価することは難しいと考えられる。以上のことを踏まえると,鋼板接着補強RC床版の劣 化度を適切に評価するには,床版コンクリート自体の損傷を把握することが重要である。
表1.1 建設後50年以上経過する社会資本の割合1)
1.2 研究目的
1.2.1 鋼板接着補強RC床版の輪荷重走行試験
鋼板接着補強RC床版の研究は現在までに数多く実施されてきており、鋼板接着補強によ り耐荷力および疲労耐久性が向上することが報告されている5),6),7),8),9)。しかしながら、既往 の研究の多くは鋼板接着補強工法が採用された昭和 40年代後半から昭和 60 年代にかけて 実施されており、補強効果およびその信頼性に関する研究が多く、鋼板接着後の維持管理に 関する研究は比較的少ない。現時点で、鋼板接着補強RC床版の損傷率は極めて低いが、補 強後の経過年数が30年を超える床版も存在し、僅かずつではあるが劣化進行が報告されて おり4)、今後、その数が増えることが予想される。したがって、鋼板接着補強RC床版の適 切な検査手法の確立が急務である。
現状の維持管理では、打音検査によりRC床版と鋼板の剥離(以下、鋼板剥離)を中心に 漏水、アンカーボルト部の損傷など、主に鋼板とRC床版の一体性に影響を及ぼす損傷に着 目した点検を実施している。しかしながら、鋼板剥離と床版の疲労耐久性の低下度合には明 確な相関が認められないため、鋼板剥離だけでは床版の劣化度を評価することは難しいと 考えられる。以上のことを踏まえると,鋼板接着補強RC床版の劣化度を適切に評価するに は,床版コンクリート自体の損傷を把握することが重要である。
本研究では、39 床版の鋼板接着補強後の疲労損傷過程を明らかにすることを目的とし、
鋼板接着補強RC床版に輪荷重走行試験を実施し、荷重状態が実際の供用下比較的近いとさ れる疲労損傷を与えた。実験では、次項で述べる、非破壊検査手法の一つである、アコース ティック・エミッション法(以下、AE法)を輪荷重走行試験中に適用し、床版コンクリー ト内部の疲労損傷過程を考察した。
1.2.2 AEモニタリングによるコンクリートの損傷過程の把握
近年、コンクリート構造物の維持管理においてAE法を用いた構造物の健全性診断が注目 を集めている。アコースティック・エミッション(AE)とは「固体が変形あるいは破壊す る際に、それまで蓄えていたひずみエネルギーが解放されて弾性波が生じる現象、またはそ のようにして発生する弾性波動」と定義される。この原理を利用するAE法は、マイクロク ラックの発生に伴う弾性波を検出する技術であり、微細レベルでの破壊現象に対して高い 検出能力を持つ。また、AE法の優れた特徴の一つに、AE発生位置の標定(以下、AE源位 置標定)が挙げられる。AE源位置標定は、AEが欠陥の進展部から発生することを利用し、
AEセンサを2個以上設置することにより、各センサに到達したAE信号到達時間差を利用 して発生位置を算出する方法である。
本研究では、AE源位置標定による鋼板接着補強RC床版の損傷過程の把握を目的とし、
輪荷重走行下にある鋼板接着補強RC床版に対してAE計測を実施した。
1.3 論文の構成
本論文は全六章で構成されている。
「第一章 序論」では、研究の背景および研究目的について述べている。
「第二章 既往の研究」では、我が国におけるRC床版の設計指針の変遷、RC床版の疲労 劣化機構、RC床版の補修・補強方法をまとめた。また、道路橋RC床版の疲労耐久性評価 に関する既往の研究についてまとめている。
「第三章 鋼板接着補強 RC 床版の輪荷重走行試験」では、39床版供試体に鋼板接着補強 工法を適用し、輪荷重走行試験を行った実験結果を示している。鋼板接着補強前に実施した 予備載荷で発生したたわみは、鋼板接着補強により大幅に回復し、鋼板接着補強によりRC 床版の曲げ剛性が向上することが確認できた。鋼板接着補強後は、たわみは緩やかに増加し、
荷重を引き上げるとそれに伴いたわみも増加する挙動を示した。走行回数が増すと、床版上 面コンクリートのひび割れ密度,鋼板の剥離面積も増加した。その後、鋼板の剥離部に樹脂 の再注入を実施した結果、たわみは回復し樹脂再注入前と同程度の輪荷重走行回数に耐え たことから、樹脂再注入は耐久性の向上に一定の効果があることが示された。
「第四章 静的載荷試験」では、鋼板接着補強RC床版に対して静的載荷試験を実施すると ともに、載荷中にAE計測を実施した結果についてまとめている。実験の結果、走行回数が 増え疲労損傷が蓄積されるとたわみ、鋼板剥離面積は増加するが、静的載荷試験中に得られ るAEヒット数およびAEイベント数とたわみ、鋼板の剥離面積には有意な相関は認められ なかった。
「第五章 鋼板接着補強RC床版のAE計測」では、輪荷重走行試験中のAEヒット数、AE イベント数、AE 源位置標定結果について述べている。鋼板接着補強後の載荷初期から AE 源の発生位置には偏りが生じており、また、床版下面と上面を結ぶようにAE源が発生し、
微細ひび割れが床版内部に進展していることが確認された。その後は、最終的に床版が押抜 きせん断破壊する位置にAE源が集中していた。樹脂再注入後はタイヤ走行直下から離れた 箇所においてもAE源が集中しており、それまで損傷していなかったコンクリート部に新た なひび割れが発生したと推察される。その後は、床版下面と上面を結ぶように振幅値の比較 的大きなAE源が発生し、床版下面と上面を結ぶひび割れが形成されたと考えられる。
「第六章 鋼板接着補強RC床版の疲労破壊機構」では、各試験から得られた知見を基に鋼 板接着補強RC床版の破壊過程についてまとめている。鋼板接着補強後のRC床版では、床 版全体の曲げ剛性および耐荷力が向上し、たわみが著しく回復する。一方、補強後初期段階
では、コンクリート内部には初期疲労が蓄積しており、これらが疲労損傷の起点となりコン クリートの微細ひび割れの発達は局所的に進行する。この時点では、目視およびたたき検査 では異常は検出できず、AE法により疲労の進行を捉えることができる。その後、たわみや 剥離面積が増大することで、床版の疲労劣化が顕在化し、樹脂の再注入が実施される。再注 入後は、再びたわみが回復するが、内部コンクリートの微細ひび割れは著しく累積し、最終 的には押抜きせん断破壊を呈する。これら一連の破壊過程は、既往のたわみ測定や鋼板のた たき検査だけでは把握できず、AE法に代表されるような非破壊検査手法の導入が不可欠で ある。
「第七章 まとめ」では,本研究で得られた知見をまとめて示している。
参考文献
1) 国土交通白書2016第2章第2節,pp.155-pp.158
2) 国土交通省 国土技術政策総合研究所:道路橋床版の疲労耐久性に関する試験,国土技 術政策総合研究所資料,第28号,p1,2002.3
3) 土木学会:2013年度制定コンクリート標準示方書【維持管理編】,pp232-247,2013.10 4) 前川敬彦,久利良夫,佐々木一則,飛ヶ谷明人,青木康素:鋼板接着補強RC床版の維
持管理に関する検討,第七回道路橋床版シンポジウム論文報告集,pp13-18,2012.6 5) 園田恵一郎,沖野真,林秀侃,喜田浩:道路橋RC床版に対する鋼板接着補強工法の信
頼性に関する研究,土木学会論文集第398号,Ⅰ-10,1988.10
6) 堀川都志雄,加藤暢彦,古川紀,山口良弘,園田桂一郎:鋼板接着工法で補強されたひ び割れを損傷RC床版の耐久性について,構造工学論文集,Vol.44A,pp.1083-1094 7) 平塚慶達,佐野正,山下幸生,藤山知加子,前川宏一:浮きを有する鋼板接着補強RC
床版の解析的検討について,第七回道路橋床版シンポジウム論文報告集,pp.275-280,
2012.
8) 村越潤,田中良樹,長屋優子:コンクリート床版の補強設計法に関する研究,土木研究 所成果報告書,2009.
9) 田中良樹,村越潤:繰返し移動荷重を受ける鋼板接着補強された鉄筋コンクリート床版 の挙動,構造工学論文集,Vol.59A,2013.3
第二章 既往の研究
2.1 鉄筋コンクリート(RC)床版の疲労劣化機構 2.1.1 RC床版の設計基準とその変遷1),2)
道路橋に関する技術基準では、過去より疲労現象と思われる損傷への対応と自動車荷重 の引き上げへの対応の2つの観点から規定の内容が繰り返し見直されてきた。
RC床版については、大正15年の「道路構造に関する細則案(内務省土木局)」から設計 荷重や鉄筋の許容応力度等に関する規定がなされているが、現在の道路橋示方書に近い内 容となったのは、「鋼道路橋設計示方書(昭和31年 建設省道路局)」(以下、S31鋼道示)
以降である。当時より設計に用いる外力として、自動車輪荷重の軸重の影響に着目して等方 性を有する弾性版の理論解に近似させた床版設計用の断面力を規定するとともに、最小床 版厚の制限規定、配力筋の量を主鉄筋の量に対する比率で配置させることなどが規定され た。また、材料、設計、製作技術の進歩と高度経済成長における多数の橋梁建設という経済 的要請から、昭和39年鋼道路橋設計示方書(以下、S39鋼道示)において許容応力度の引 き上げ等が行われた。
ところが、この当時建設された RC 床版にひび割れ損傷事例などが見受けられたことか ら、RC床版の疲労損傷機構の解明に関する研究が始められた。研究の進展に合わせる形で 設計基準も見直され、設計曲げモーメントの増強、床版厚の増厚、鉄筋の許容応力度の引き 下げ、配力鉄筋量の増加、等の設計基準の強化がなされた。
また近年の交通量の増大、車両の大型化に対応するため、平成6年道路橋示方書(以下、
H6道示)では設計荷重の引き上げが行われた。
表2.1にRC床版の技術基準の変遷の概要を示す。
以下に主要な項目の変遷を示す。
(1) 設計荷重および設計曲げモーメント
RC床版の設計荷重は、昭和14年鋼道路橋設計示方書(以下、S14鋼道示)で設計自動車 荷重が1等橋13tf、2等橋9tfと規定され、昭和33年制定の道路構造令から20tf、14tfと大 幅に増加し、平成5年の道路構造令の改正で25tfまで引き上げられた。
RC床版の設計曲げモーメントは表2.2に示すように、大正15年の内務省「道路構造に関 する細則案」(以下、T15細則)、S14鋼道示では版の有効幅を考慮した梁としてモーメント を算定している。S31道示では、一方向版として設計曲げモーメントを規定し、支間長に応 じて算定する衝撃係数を乗じている。昭和46年鉄筋コンクリート床版の設計について(以 下、S46通達)以降は主筋方向および配力筋方向の曲げモーメントを各々規定し、衝撃荷重 も曲げモーメント式の中に含まれる形となった。昭和55年道路橋示方書(以下、S55道示)
では、計画交通量のうち大型車が1日1方向1000台を超える場合にはT荷重による設計曲 げモーメントに1.2倍の割増係数を乗ずることとなった。H6 道示では橋の等級が廃止され
表2.1 RC床版の基準の変遷1)
A活荷重、B活荷重が導入され、B活荷重の輪荷重は10tfに引き上げられ、さらに主筋方向 の床版の設計曲げモーメントには床版支間に応じた割増係数を乗ずるようになった。
(2) 許容応力度
鉄筋とコンクリートの許容応力度の変遷を表2.3に示す。鉄筋の許容応力度はまずT15細 則、S14鋼道示で規定された。S39鋼道示では当時の土木学会コンクリート標準示方書に準 拠する形で鉄筋の材質に応じた許容応力度が定められ、結果として鉄筋の許容応力度は以 前より引き上げられた。しかし、その後床版の損傷が顕著に見られるようになったため、床 版の破損の原因となるコンクリートのひび割れの発生を防止することを目的として、昭和 43年鋼道路橋の床版設計に関する暫定基準(以下、S43基準)以降はその材質を問わず鉄筋 の許容引張応力度は1400kgf/cm2に引き下げられた。
コンクリートの許容応力度は、T15細則では45kgf/cm2と現在より相当に低い値であった が、その後、コンクリートの品質および強度の向上に伴い引き上げられた。設計基準強度の 最低値もS31鋼道示の160kgf/cm2から平成2年道路橋示方書の240kgf/cm2まで段階的に引 き上げられた。
(3) 鉄筋量および床版の最小厚
当初の設計基準では、床版は一方向版として主筋方向の曲げモーメントに対してのみ鉄 筋の許容応力照査を行っていたため、配力鉄筋量は構造細目中で主鉄筋に対する比率とし て規定されていた。その後、S31鋼道示では主鉄筋量の25%以上であったものが、S46通達 により主鉄筋量の 70%以上に引き上げられた。これは配力鉄筋量の不足により主鉄筋に平 行な方向にひび割れが生じたことに対する対策と考えられる。S46通達以降は配力鉄筋方向 の曲げモーメントに対しても応力度照査を行い、配力鉄筋量を決定するように設計基準が 改定された。
表2.2 設計曲げモーメントの変遷2)
床版の最小厚の変遷を表2.4に示す。床版の最小厚はS31鋼道示で14cm以上と規定され たのが最初であり、その後S43通達により引き上げられて16cm以上(支間長による)とな った。H5通達以降はこれに交通量と負荷曲げモーメントの係数を乗ずることとなり、床版 の最小厚をさらに厚くするように改定された。
なお、鋼橋の設計においては、上述の「昭和31年鋼道路橋設計示方書」において、それ までのたわみ規定が諸外国に比べて厳しすぎるなどの理由から大幅に緩和され、「昭和39年 道路橋設計示方書」においてさらに若干の緩和が行われた。その後、昭和48年に出された
「道路橋示方書Ⅰ鋼橋編」において制限が強化されるまでの間に鋼橋について支間長にも よるが鋼桁のたわみが設計上大きくなる傾向にあり、昭和40年代より本格的に採用され始 めたポンプ車によるコンクリート打設の施工品質とあわせて床版の耐久性に影響を及ぼし た可能性も疑われる。
表2.3 許容応力度の変遷2) 表2.4 床版の最小厚の変遷2)
(kgf/cm2)
2.1.2 RC床版の疲労破壊機構3)
RC床版の疲労破壊機構は以下に示す通りである。現場打ちコンクリート床版では、輪荷 重の載荷によって直交 2 方向の曲げモーメントが発生し、床版下面では格子状のひび割れ が発生する。ただし、支持桁が床版コンクリートの自己収縮・乾燥収縮を拘束するため、橋 軸直角方向に最初に発生する傾向にある。その後、図2.1(a)のような格子状になる。同時に、
床版上面にも図2.1(b)のような橋軸直角方向のひび割れが大きな間隔で発生する。この上面 ひび割れはねじりモーメントに起因するもので、支持桁付近から床版中央へと進展する。ひ び割れ開始点で表面の引張主応力が交番し、輪荷重走行の繰り返しによって発生するため、
疲労ひび割れであると説明できる。さらに繰返し回数が進むと、これら上下のひび割れがド ッキングして貫通ひび割れとなる(図 2.1(c))。この結果、床版の異方性化が進み橋軸方向 への荷重分配効果は低下し、主鉄筋断面の荷重負荷が増加する。さらに継続して輪荷重が走 行すると、ひび割れはあまり増加しない状態が継続するが、たわみは徐々に増加する。これ は貫通ひび割れに作用するせん断力とねじりモーメントが交番断面力で、それらの繰り返 し作用によってひび割れ面の摩耗が進行するためである。この後、図2.1(d)のように配力鉄 筋のみが連結しているだけの、主鉄筋方向のはり状となる。このはり幅は40~50cmである ので、この断面には過大な断面力が作用することになり、この断面はせん断疲労を受け、急 速で脆性的に破壊する。これが最終破壊である(図2.1(e))。
図2.1 RC床版の疲労破壊機構3)
(a) 床版下面の格子状のひび割れ発生 (b) 床版上面の橋軸直角方向ひび割れ発生
(c) 上下面ひび割れの連結
(d) 主鉄筋方向のはり状化
(e) 主鉄筋断面のせん断破壊
2.1.3 土木学会によるRC床版の疲労劣化指標4)
土木学会では、床版の疲労により重大な劣化に至った事例とその原因究明結果に基づき、
疲労による床版の劣化過程を、表2.5および図2.2に示すように、潜伏期、進展期、加速期、
劣化期に分けている。
表2.5 床版の疲労劣化過程4)
図2.2 床版下面のひび割れ進行4)
潜伏期 進展期 加速期 劣化期
2.1.4 国土交通省によるRC床版の疲労劣化指標5)
表2.6に国土交通省橋梁定期点検要領(案)に示されている、コンクリート床版の損傷度 の評価区分を示す。この評価区分は、鋼橋のコンクリート床版を対象としたひび割れであり、
床版下面に一方向または二方向のひび割れが生じている状態を示している。
また、コンクリート橋のT桁橋のウェブ間(間詰め部を含む。)、箱桁橋の箱桁内上面、中 空床版橋および箱桁橋の張り出し部のひび割れも対象としている。
表2.6 床版の損傷度の評価区分5)
2.2 RC床版の補修・補強工法6)
既設RC床版の補修・補強工法を図2.3に示す。既設RC床版の補修・補強の検討にあた っては、補修・補強時の設計、破壊メカニズムに応じた補修・補強、および作業空間の制限 や通行車両の安全の確保および経済性等を考慮し、最適な工法を選定する必要があり、それ らを考慮して数多くの工法が開発されている。図は、補修工法と補強工法に大別し、さらに、
補強工法ではその特徴から、床版下面から補強を行う工法と上面から補強を行う工法とに 分類することができる。
2.2.1. 補修工法 (1) ひび割れ注入
床版のひび割れ内にエポキシ樹脂またはセメント粒子を注入し、コンクリートの一体化 を図る工法である。
(2) 断面修復工
床版の豆板、空洞、剥離などコンクリートの断面を修復する工法である。断面修復材料に はセメントモルタルや樹脂モルタル等がある。
(3) 防水工
床版コンクリートへの雨水等の浸入を防止するために、防水層を設ける工法である。防水 層の種類はシート系と塗膜系に大別される。他の補修・補強工法と併用すると、床版の耐久 性確保を図ることができる。なお、防水工自体は床版の直接的な補修工法ではないがその有 無が床版の疲労耐久性に大きく影響する。
RC床版の補修・補強工法
補修工法
補強工法
上面からの補強
下面からの補強 ひび割れ注入工 断面修復工
防水工
床版厚さを増加する
鉄筋量不足を補う
床版支間を短くする
上面増厚工法 鋼板接着工法 炭素繊維シート接着工法
縦桁増設工法 下面増厚工法
図2.3 既設RC床版の補修・補強工法の例6)
2.2.2 補強工法
(1) 床版下面からの補強工法 (a) 鋼板接着工法
最も施工実績の多い工法で、既設RC床版の下面の下地処理を行った後で、鋼板(一般に
は4.5mm厚が用いられる)をアンカーボルトで止め、その後エポキシ樹脂を注入し、一体
化させる工法である。これは、鉄筋としての断面効果を期待し曲げ剛性を向上する工法であ り、鉄筋量が不足している床版に適している。問題点としては鋼板が腐食することやアンカ ーボルトの抜けの心配および施工後の損傷の追跡調査が難しくなることが挙げられる。ま た、雨水の浸入や繰り返し受ける交通荷重等の影響により鋼板の浮きが生じることがある。
なお、鋼板の分だけ死荷重が増加する。
(b) 縦桁増設工法
既設床版の支持桁間に1~2本の縦桁を増設して、床版支間を短くすることにより、輪荷 重による曲げモーメントを軽減する工法であり、縦桁、横桁を増設し、縦桁の上フランジと 床版の間にエポキシ樹脂を注入して一体化させる工法である。床版のたわみ抑制に効果が あるため従来から用いられている。つまり床版のそのものを補強するのではなく、その支間 を短くし発生する曲げモーメントを低減する工法で、その結果、たわみを抑制することによ り劣化損傷を遅らせることができる。増設した桁の分だけ死荷重が増加する。
(c) 炭素繊維シート接着工法
近年、施工実績が増えている新しい補強工法で、既設床版の下地処理を行った後、エポキ シ樹脂を含浸させた炭素繊維シートを床版に接着させる工法である。炭素繊維シートの積 層数を変えることにより補強量を調整できる。補強の考え方は鋼板接着工法と同じである が、炭素繊維シートは鋼板に比べて軽いため死荷重の増加が小さく、また、施工が容易でか つ腐食の心配がないといった長所がある。問題点としては施工後の損傷の追跡調査が難し くなることが挙げられる。
(d) 下面増厚工法
既設床版の下面の下地処理を行った後、床版下面に補強鋼材をアンカーボルトにより取 り付け、モルタルにより既設床版の下面から 3cm 程度増厚し一体化する比較的新しい工法 である。増厚した分だけ死荷重が増加する。同工法に使用するモルタル、補強鋼材、アンカ ーボルトには補強効果、施工性、防錆防食を考慮した特殊な材料を用いる。
(2) 床版上面からの補強工法 (a) 上面増厚工法
1)コンクリート系:アスファルト舗装をはがし、床版コンクリート上面を切削機により
1cm程度切削し、この面にショットブラストを行い、この後、鋼繊維入り超速硬コンクリー
トを約7~8cm打設し、増厚する工法である。増厚することで床版の剛性が高まり、曲げお
よびせん断耐力が向上する。また、上面に打設するために防水工の機能も一部負担させるこ とができる。死荷重の増加に関しては、増厚コンクリートの死荷重の増加分を、アスファル ト舗装を薄くすることによって小さくなるように配慮するのが一般的である。施工時には 交通規制が必要となる。
2)プレキャスト版接着系:アスファルト舗装をはがし、床版コンクリート表面にエポキ シ樹脂モルタルを敷き、この上に繊維補強コンクリート等からなるプレキャスト版を敷き 並べ、さらにこの上にエポキシ樹脂モルタルを敷き、再びプレキャスト版を敷き並べる工法 である。施工時には交通規制が必要である。
2.3 道路橋床版の疲労耐久性評価に関する既往の研究1) 2.3.1 研究の概要
道路橋示方書では、コンクリート系床版の自動車荷重の繰り返し載荷に対する、疲労耐久 性を要求水準に応じて定量的に、自由に設計できるような規定とはなっていない。現在のと ころ過去に実績が多数ある一般的な床版形式について、適用範囲を限ったうえで設計供用 期間において、所要の耐久性が得られるだろうと考えられる経験的設計手法が規定されて いるのみである。このためプレストレストコンクリート床版や鋼コンクリート合成床版な どの様々な構造や形式の床版についても、基準で要求される水準の疲労耐久性を満足する ことを合理的に評価・検証できる手法の確立が望まれ、各方面で検討が行われてきた。
これらの取り組みの一つとして、自動車荷重の移動を模擬して床版供試体に繰り返し載 荷を行う疲労試験方法(輪荷重試験法)が開発された。
2.3.2 輪荷重走行試験方法
移動する輪荷重が直接載荷される版構造である床版では、荷重の移動に伴う応力状態の 変化が疲労耐久性に大きく影響しているものと考えられる。過去の床版の疲労耐久性に関 する研究では、床版の定点で繰返し載荷を行う疲労試験が多く実施されてきたが、ひび割れ 状態などの損傷形態が実橋でみられるものとは大きく異なり、現象の再現ができない状態 が長く続いた。その後、大阪大学の松井らによって輪荷重走行試験機が考案され、実橋で見 られるものにより近い破壊形態が実験的に再現できるようになり、それ以後は多くの実験 が様々な条件に対して行われてきた。
実際の床版では、載荷位置が移動するため、床版下面のひび割れは放射状には発達せず、
床版全体に格子状で拡大していくことが多く、さらに損傷が進行すると鉄筋が破断するよ りも前に、ブロック化したコンクリート塊が床版から抜け落ちることが多い。これに対し、
一点での載荷を繰り返した場合には、床版下面の載荷点を中心とした放射状のひび割れが
発生した後、コンクリート部分の破壊に先立って主鉄筋の疲労による破断が生じる場合が ほとんどであり、破壊の形態は乖離している。
定点載荷試験については、一点のみで載荷を繰り返すのではなく、複数の載荷点を設けて それらに順次載荷していくことを繰り返す方法が試みられた例もある。その場合に、載荷点 が一点ではないため床版下面に発達するひび割れは単純な放射状にはならず、実橋に近い 格子状のひび割れパターンが得られているが、一点での定点載荷試験と同様にコンクリー トの破壊に先行して、鉄筋が疲労で破断する結果が得られており、実橋の破壊パターンとは 一致しない。
このように離散的に載荷を行う定点載荷試験では、一点載荷、複数点載荷のいずれの方法 によっても実橋の床版の疲労損傷過程は破壊形態からも再現されているとは言いがたく、
それらを改善するために、載荷条件を限りなく実橋床版に近づけた輪荷重走行試験方法が 考案された。
輪荷重走行試験方法は、実物大に近いスケールの床版供試体の上を、接地圧(載荷荷重)
を制御しながら車輪を移動させる疲労試験方法であり、鉛直力が維持されたまま、連続的に 床版を移動していくために、実交通下での輪荷重によって生じていると考えられるものと 比較的近い応力状態が供試体に対して実現できると考えられる。特に、鉄筋コンクリート部 材である、コンクリート床版では、疲労による劣化損傷の進行メカニズムがひび割れの発達 と密接に関係していると考えられ、床版コンクリート各部における応力履歴を大きさのみ ならず、その方向やその変化などもより忠実に再現することが実橋の疲労現象の再現には 必要と考えられるため、輪荷重試験は定点載荷に比べて現象再現性の点ではより適当な方 法と考えられる。
写真2.1に輪荷重走行試験機の概観を示す.
写真2.1 輪荷重走行試験機の外観1)
輪荷重走行試験の結果は、載荷荷重の大きさと回数によって疲労環境が定義され、疲労損 傷の進行の程度についてはコンクリート部材としての変状によって評価することが一般的 である。疲労損傷程度の評価で通常着目される主な項目は、
①床版のたわみ
②内部鋼材(鉄筋)のひずみ
③コンクリート表面のひずみ
④ひび割れ性状(延長・幅・方向など)
2.3.3 RC床版の輪荷重走行試験1)
輪荷重走行試験を行ったRC床版では、載荷荷重の固定、漸増に関わらず、初期よりひび 割れが発生する。その後、全体に進展して最終的には床版コンクリートの一部が台形(四角 錐)状に踏み抜かれるように破壊する押抜きせん断破壊の状態を呈し、破壊に至る。また、
内部の鉄筋は最終段階まで破断することはほとんどなく、この2つの特徴は、実際の床版で 抜け落ちを生じた床版の多くに共通する特徴と同じである。
土木研究所(旧建設省土木研究所)ではRC床版の輪荷重走行試験(一定荷重の繰り返し)
を実施してきた。一例として、S39鋼道示で設計されたRC床版の結果を以下に示す。表2.7 に供試体の諸元を示す。図2.4には床版中央の活荷重たわみ、主鉄筋ひずみ、配力筋ひずみ を示す。
床版中央の活荷重たわみは、初期段階で急速に増加し、ある値に達すると、以降はその増 加速度は極めて緩やかになり徐々に増加しながら長く推移する。そして最後にたわみは急 増し破壊に至る。
鉄筋ひずみは、引張り側にある主鉄筋、配力筋はともに、載荷初期段階で床版たわみの増 加と連動するようにひずみが急増するが、その後はほぼ一定の値で推移しており、そして最 後のたわみが急増する段階でこれに連動するように挙動が不安定化となる。
表2.7 RC床版供試体の諸元1)
2.3.4 鋼板接着補強RC床版の輪荷重走行試験
(1) 鋼板接着工法で補強されたRC床版の耐久性について7)
堀川らは、損傷を受けた RC 床版に対する鋼板接着工法の補強効果を確認するため、RC 床版に輪荷重走行を与え実橋と同程度のひび割れを導入し、その後鋼板接着工法で補強を 行い、再び輪荷重走行下で床版に破壊をもたらす走行実験を行った。これらの実験より以下 の結果が示されている。①鋼板接着補強後のたわみは、補強前に比べて1/3以下に回復した。
②無補強の床版が15万4000回(9.2~10.8tf)で破壊したのに対し、ひび割れ損傷の著しい RC床版に鋼板接着補強を行ったものは、51万1000回(11.0~21.0tf)で破壊した。③走行 回数を増加させるに伴い、鋼板の剥離が徐々に進行した。剥離現象は、添接版近傍や鋼板端 部等の不連続部から進行し、最終的には床版上面コンクリートの砂利化を伴う、押抜きせん 断破壊の形式で床版が崩壊したと報告している。
(2) 浮きを有する鋼板接着補強RC床版の疲労耐久性および樹脂再注入の評価8)
鋼板接着工法は、1960 年代から RC 床版の補強対策として注目されはじめ、多くの施工 実績がある。しかしながら、経年に伴い鋼板の浮きが打音検査で発見されている。鋼板の浮 きは、活荷重の繰り返し作用により剥離先端で応力集中が生じ、これによる浮きの拡大が懸 念されている。鋼板の浮きに対しては、低粘度のエポキシ樹脂を再注入し床版との一体性の 回復を図る手法もあるあるが、その効果については不明な点も多い。
(a) 床版中央の活荷重たわみ
図2.4 RC床の輪荷重走行試験結果の一例1)
(b) 主鉄筋ひずみ (c) 配力鉄筋ひずみ
佐野らは、人為的に浮きを設けた鋼板接 着補強 RC 床版を作製し、輪荷重走行試験
(ゴムタイヤ式)を実施した。実験では、鋼 板の浮きの拡大と破壊過程を観察するとと もに、樹脂の再注入も行いその効果を評価 した。供試体は昭和39年鋼道路橋設計示方 書 に 準 じ て 設 計 し た 長 さ 3500mm、 幅 2800mm、厚さ 160mmのハンチ付きRC床 版である。図 2.5 に供試体概要を示す。表 2.8には鋼板接着供試体の種類を示す。
図 2.6 に鋼板接着後の輪荷重走行回数と 床版支間中央たわみの関係を示す。荷重と 走行回数の増加につれて、PL-1(鋼板面剥離 型)およびPL-2(コンクリート面剥離型)
の活荷重たわみは、PL-3(完全接着)に比べ て大きくなっている。PL-2 と PL-1 のたわ みを比較すると、活荷重たわみはほぼ同じ であるが、残留たわみについては、載荷初期 の段階からPL-2 のそれはPL-1よりも大き くなる傾向が見られた。これは、コンクリー ト面に非接着位置を作る際に塗布した剥離 剤がひび割れを埋めてしまい、ひび割れへ 樹脂が注入されなかったことに起因してい ると考えられ、特にPL-2については、補強 前の影響を受けているものと考えられる。
また、破壊時の走行回数にも影響を及ぼし ており、PL-1は走行回数924,602 回で破壊 したのに対し、PL-2 は675,373回で破壊し ている。
一方、PL-3の活荷重たわみの傾きは緩や
かに増加したものの、浮きの進行がほとんど確認できなかったことから走行回数32万回の 時点でハンマーで鋼板面を叩き、人為的に浮きを作った。人為的な浮きを図2.7中に青色で 示す。その後の浮きの拡大は、人為的に設けた浮きを中心に拡大し、走行回数112万回で鋼 板接着面積の52%に達した。浮きへの再注入はこの時点で行った。
図2.8に輪荷重走行試験全過程における走行回数とたわみの関係を示す。再注入からの走 行回数が 30 万回となった時点で、床版中央のたわみは再注入前とほぼ同等の値に達した。
表2.8 鋼板接着供試体の種類8) 図2.5 供試体概要8)
最終的には、再注入後44.5万回(累積走行回数156万4936回)で試験機のリミッターが 作動し、試験を終了した。その時点でのたわみは1.88mmであり、供試体上面には、破壊の 前兆として、広範囲な砂利化現象がみられた。このように、鋼板の浮きが約50%になった場 合でも、エポキシ樹脂を再注入すると、その後、約45万回の輪荷重走行に耐えることが確 認された。
図2.6 床版支間中央たわみ8)
(樹脂再注入前) 図2.7 浮きの拡大過程8)
図2.8 床版支間中央たわみ8)(破壊までの全過程)
2.4 コンクリート系床版の維持管理に資する非破壊検査手法
2.4.1 AE法による輪荷重走行を受けるバックルプレート床版の破壊機構に関する研究9)
菊池らは、実物大モデルのバックルプレート(BP)床版に対し輪荷重走行試験を行い、
AE法を適用し、BP床版の疲労耐久性、破壊機構について検討を行った。BP床版とは、凹 みのある鋼板(BP)の上に、コンクリートが直接打設された形式の床版である。図2.9に菊 池らが試験に用いたBP床版の概要を示す。
図2.10に輪荷重走行試験における振幅値別AE源位置標定結果を示す。載荷初期では、
床版全域に多数のAE 源が発生しているが、75~84dB のAE 源は比較的全面に広がってい るのに対し、85dB 以上のAE 源は局所的に集中していることが分かる。特に95dB 以上の AE 源が供試体底面に集中している。載荷初期の振幅値が大きい現象として、コンクリート とBP の剥離が考えられ、走行初期に床版外側で剥離が生じたことと対応している。10~30 万回走行時には、走行初期ほど AE 源は発生していないが、供試体底面中央部で AE 源が 集中する領域(図2.10(b)中の○の部分)がある。これは、走行初期にコンクリートとBP の 付着切れが生じたため、両者の一体性が失われ、供試体底面に曲げひび割れが形成されたと 考えられる。これは、BP 床版に静的載荷試験を実施した際のひずみ分布と対応している。
また、底面のせん断スパンから上面中央に向かって斜めに進展する AE 源も確認でき(図
2.10(b)、(c)中の-の部分)、この時点で主要なせん断ひび割れが形成され始めたと考えられ
る。
図2.9 BP床版の供試体概要9)
コンクリート上面にひび割れが確認 できた30 万回走行以降、コンクリート 上面から発生する AE 源(75~84dB)
も多くなり、40~50 万回走行時は、再 びコンクリート内部から発生する比較 的振幅値の大きい AE 源も多くなる。
既往の研究 10)によると、橋軸方向のひ び割れの断面は、いくつかのコンクリ ート塊に細分化することが分かってお
り、これらを形成するひび割れの進展が40~50 万回走行のうちに急激に進展したと考えら れる。
輪荷重走行試験の結果から、BP床版の破壊形態は以下に示すととおりである。はじめに、
輪荷重走行により微細なひび割れがコンクリート内部に発生、蓄積すると共に、コンクリー トとBP 間に剥離が生じ、床版の一部で一体性が失われる。ここで、剥離は先に床版の外側 と中央部から発生し、その後、せん断スパンで生じ、全面剥離に至る。コンクリート内部の ひび割れは中央部の剥離発生後、供試体底面に曲げひび割れが発生し、走行を重ねるにつれ てせん断ひび割れが発生し始める。その後、床版底面で発生したひび割れは上面に進展する と共に、コンクリート内部にブロック化したひび割れが形成される。最終的にはコンクリー トの押し抜きせん断破壊を呈すると考えられる。
(a) 0~10万回走行 (b) 10~20万回走行
(c) 20~30万回走行 (d) 30~40万回走行
(d) 40~50万回走行 図2.10 AE源位置標定結果9)
2.4.2 AE法のRC床版劣化度検査方法への適用に関する研究11)
橘らは、AE発生頻度、周波数分布に着目し、その利用法について基礎実験による検討を 行い、さらに実況RC床版の劣化度検査への適用性についても検討を行った。図2.11 に基 礎実験に用いたRC床版供試体を示す。載荷方法は、中央1点載荷と、中央点を含む3点移 動載荷とし、中央1点載荷では60tまで静的載荷を行った。図2.12に載荷点およびAEセ ンサ位置を示す。移動載荷は、輪荷重による疲労を想定したものであり、表2.9に示す要領 で繰り返しおよび静的載荷を行った。
図2.13に移動載荷時における各疲労段階での荷重増加時のAE累積発生頻度を示す。図 2.14には荷重除荷時のAE発生頻度を示す。これらの図から、疲労を受けるとAE発生頻度 が変化することがわかる。特に、ひび割れが十分に出尽くした第16段階においても、載荷 時および除荷時にAEが発生しており、RC床版供試体では、ひび割れ開閉時にもAEが発 生することが確認された。
図2.11 RC床版供試体11) 図2.12 載荷点およびセンサ位置11)
表2.9 移動載荷方法11)
中央1点載荷時に発生したAEの周波数分布を図2.15に、疲労段階第17段目に発生した AEの周波数分布を図2.16に示す。いずれの場合についても40~70kHz付近で卓越周波数 が見られる傾向にあった。なお、150kHz付近で卓越周波数がみられるのは、センサの共振 周波数を検出しているためである。この 40~70kHz の周波数帯は、でひび割れの生じてい る実橋RC床版を対象にAE計測を行い、ひび割れから発生するAEの卓越周波数帯として 報告されている 40~50kHz とほぼ一致しており、上述した卓越周波数帯が床版ひび割れか ら発生するAEの1つの特徴であると言える。
以上の基礎実験の結果を踏まえ、橘らは実橋における適用可能性を把握するために、実橋 RC床版のAE計測を試みた。対象とした橋梁は、昭和47年に架設された単純鋼I桁橋であ る。このRC床版の損傷状態としては、0。1mm程度の亀甲状ひび割れが数多く発生してい た。図2.17に周波数分布を示す。検出されたAEの卓越周波数帯は50~60kHzであり、基 礎実験から得られた床版ひび割れから発生する AE の卓越周波数帯とほぼ一致する結果と なった。
図2.13 移動載荷時の各疲労段階での AE累積発生頻度11)
図2.14 荷重除荷時のAE累積発生頻度11) 図2.15 中央1点載荷時のAE周波数分布11)
図2.16 移動載荷時のAE周波数分布11)
図2.17 実橋RC床版のAE周波数分布11)
2.4.3 重錘落下たわみによるRC床版の健全度評価法12)
関口らは、フォーリングウエイトデフレクトメータ(FWD)や当所が開発した RC 床版 衝撃加振試験機(IIS)など、重錘落下式のたわみ測定装置を活用したたわみ量調査による 劣化診断を提案しており 13),14),15),16)、また、輪荷重走行疲労試験機を使用して鋼板接着補強 床版に疲労損傷を与え、鋼板の剥離や浮きの劣化の進行過程とたわみの関係から健全度評 価手法を検討するとともに,健全度評価法を提案している。
関口らのRC床版供試体の概要を図2.18に示す。供試体は昭和47年道路橋示方書に準じ て設計された長さ4.5m、幅2.92m、床版厚0.2mのRC床版である。コンクリートの設計基 準強度は、やや強度の小さいf’ck =21N/mm2(試験終了時コア強度25.6 N/mm2)床版No.23 と合成桁床版相当のf’ck =30N/mm2 床版No.24 の2 種類各1 体である。
図2.18 供試体概要12)
試験には大型航空機用ゴムタイヤ式の疲労試験機を使用した。支持条件は、床版支間2.5m 単純支持とし,長辺方向に 2 体の供試体を突合せ横桁で弾性支持した。走行範囲は中央横 桁を中心に片側3.25m とし、タイヤ接地面積は157kN 載荷時で幅330×長さ 380 mm、走 行荷重パターンは、設計輪荷重の約2 倍の 157kN で 70万回+196kN で 70 万回+235kN で破壊まで載荷する方式とした。
計測は基本的に1,10,100,1000・・で走行を止め、たわみと鉄筋ひずみを静的載荷(20kN ピッチ)、157kN 動的走行載荷、重錘落下式衝撃荷重の各方式で計測、併せて鋼板の剥離(浮 き)面積を打音法で床版上面ひび割れ密度を格子密度法(125×125 mmメッシュ)で測定し た。重錘落下式は、図2.19に示す床版中央点に100kg のウエイトを落下高さ 300mmで3 回測定した。速度計センサの位置は、床版中央載荷点と両支持桁上とし、支持桁の変位を考
慮した15)。静的載荷のたわみ測定は、ゴムタイヤで載荷し、床版下面に設置したレーザ変位 計を使用した。
鋼板接着補強は、157kN 載荷で東京都の床版補強の目安であるひび割れ密度が約10m/m2 のダメージを与えた時点を目標とした17)。床版 23 の補強は走行回数 100 回、ひび割れ密 度11.62m/m2に進展した時点で補強をした。また、床版24 は走行回数200 回時点でひび割
れ密度11.43m/m2となった時点で補強をした。鋼板接着補強方法は、実橋の補強工事と同一
仕様の 4.5 ㎜厚の鋼板をエポキシ樹脂で圧入接着補強をした。補強後 1 週間程度養生を行 い試験に供した。
図2.19 重錘落下式試験12)
鋼板の剥離状況を図2.20に示す。床版23 では75万回に合せ面端部と添接部で剥離が確 認され、タイヤ接地幅内の直下は剥離せず、タイヤのエッジ部から支持桁方向に進展するパ ターンが確認できた。一方、床版24 は床版23 が破壊した150 万回までは全く剥離しなか ったが、試験を打切った161 万回時には図2.20に示すように合せ面の端部にごく一部の剥 離が確認された。
鋼板の補強効果は、母材のコンクリートの品質が劣ると接着強度が劣るため、コンクリー トの品質が疲労耐久性に大きく影響する。したがって、鋼板接着補強工法の補強効果は床版 のコンクリートの品質に強く依存する。
図2.21に鋼板の剥離面積率と走行回数の測定結果を示す。なお、剥離面積率は鋼板接着 面積のうち走行範囲の鋼板接着面積に対する面積率である。床版 23 は、75 万回以降は走 行回数とほぼ比例関係に剥離面積率が増加しており、剥離面積率 50%を越えた時点で押し 抜きせん断破壊した。このことから剥離面積率30%(破壊時剥離面積の約60%)、130万回
(破壊回数の約80%)あたりを使用限界と見なすのが妥当と判断される。
(a) 床版23 (b) 床版24 図2.20 鋼板剥離図12)
図2.21 鋼板の剥離面積12)
静的載荷と重錘落下試験の床版中央点の100kN 換算たわみ測定値および異方性版計算値 の関係を図2.22に示す。静的たわみと衝撃たわみの関係は、高い相関関係が認められる。
鋼板は支間方向支持桁支点から約 10cm 内側まで 5 mm 厚のエポキシ樹脂で接着されてお り、補強直後は鋼板を鉄筋と見なした完全合成の40%(α=0.4)の換算有効断面の計算値に 一致する18)。走行疲労打切り161 万回まで鋼板の剥離がほとんど生じなかった床版24 は、
静的および衝撃たわみいずれも剛性低下がほとんどなく両者はよく一致した。一方、品質の 劣る床版23 は、鋼板の剥離が確認された70 万回以前の早い段階からたわみが増加し、走 行回数と比例関係が認められ剛性が徐々に低下している。この原因は、上面ひび割れの進展 によるものと推察される。また、70 万回以降はひび割れの進展と鋼板剥離の両者が剛性を 低下されているものと思われる。以上のことから、たわみを維持管理の指標にした場合には、
RC 断面計算値を越えると劣化が相当進行していると評価できる。
(a) 床版23 (b) 床版24 図2.22 100kN換算たわみ12)
多くの道路管理者の現行の床版健全度評価手法は、床版下面に発生するひび割れ、漏水、
鉄筋腐食などの損傷要因や劣化の状況を定性的に評価する方法が一般的に用いられている。
東京都では 5 年間隔の頻度で橋梁の定期点検(目視調査)を行い、床版に著しい損傷が発 見された場合や急速に進行すると思われる場合には詳細健全度調査を行うことになってい る。詳細健全度調査は下面に足場を設け接近して調査を行うものであり、下面のひび割れに 着目した健全度評価ランクは、表2.10に示す5 段階で評価を行っている。通常、健全度ラ ンクC の状態はできるだけ早い段階に補強や補修を行う対応を要求し、ランクD では各種 補強対策をとることになっている。図 2.23 は試験に供した床版と同じ基準(道示昭和 47 年)の環状8 号線高井戸陸橋の床版の 30 年間の追跡調査結果18)であり、下面のひび割れ 密度と大型車交通量の実測値である。図中の健全度ランクは表2.10と同じであり、e ラン クの実測値で陥没が生じている。したがって、現行のひび割れ密度による健全度は妥当な評 価結果が得られる。一方、東京都の場合ランクC に劣化すると鋼板接着工法による補強対 策が多用されてきたことから、鋼板接着補強床版の健全度評価は、経年にかかわらず通常一 義的にランクC に評価される。
表2.10 現行の床版健全度評価法12)
図2.22 高井戸陸橋RC床版の健全度ランク12)
松井らは、実橋の載荷試験によるたわみ測定値と損傷の関係から導き出した、たわみに基 づく劣化度の式(2-1)を提案している 19)。この評価法は、床版にひび割れが入る引張側を無 視した時のたわみの理論値(引張側無視理論値)を劣化度1.0 と定義し、使用限界状態を示す ものである。逆に、供用開始前のひびわれが全くない健全な時の理論値(全断面有効理論値) は劣化度 0 となる。そして、実測値が引張側無視理論値と全断面有効理論値の間でどのよ うな位置関係になるかで劣化度を評価するものである。
Dδ = ( W-W0 ) / ( Wc-W0 ) (2-1)
ここに、
Dδ:たわみに基づく劣化度
W0:ひび割れがない健全なときのパネル中央の計算 たわみ(全断面有効理論値)
WC:引張側断面を無視したときのパネル中央の計算たわみ(引張側無視理論値)
W:パネル中央の実測たわみ
松井らのたわみに基づく劣化度の評価法は、東京都の健全度の関連付けがなされていない。
ここでは、重錘落下たわみに基づく新しい評価法の式(2-2)を提案する。
HId= (δt)/(δm) (2-2)
ここに、
HId:重錘落下たわみに基づく健全度
δt:RC 床版の引張側断面を無視したときの計算た わみ
δm:RC 床版の実測たわみ
供用開始時の HId は1 以上の値となる。供用開始後の輪荷重の繰返しによって引張側コ ンクリート断面に曲げひび割れが発生すると、HId は1 近傍の値となる。この時点のRC 床 版の状態は、設計で想定している状態である。さらに輪荷重の繰返し回数が増大して疲労損 傷が累積して設計で想定している状態を超えると、コンクリートに貫通ひび割れが発達し、
HIdは1 以下の値をとるようになる。図2.23は、式(2-2) に基づいて計算した衝撃荷重に基 づく健全度と走行回数の関係を示す。走行回数0は全く健全であり、床版23(f’ck=21)の健 全度は HId=1.3 から補強時には HId=1.0 に低下、コンクリートの品質の良い床版 24 は HId=1.6 から 補強時には HId=1.2 程度に悪化している。補強時の現行ひび割れに基づく健 全度ランクは C~D である。鋼板補強直後は、床版 23 では HId=2.2程度まで健全度が改善 され、床版24ではHId=2.5 まで改善された。補強後の健全度の推移は、安定期をへて徐々 に補強効果が低下するパフォーマンスを描く。
図中の右端のランクは、ここで提案する鋼板接着床版の補強後の評価ランクの暫定案で ある。ただし、対象とする床版のレベルは、道示昭和39 年から昭和47 年度版の設計基準 で造られている床版に限定する。提案するランクの意味付けは、表2.11に示すとおり、鋼 板剥離面積率、上面ひび割れ密度および劣化進行過程と関連付け、判定内容としてどの様な 状態にあるかをできるだけ具体的に例示した。また、表2.12は未補強床版の場合について、
同様な観点で整理した暫定案を示した。
図2.23 重錘落下たわみに基づく健全度評価結果
表2.11 鋼板接着補強床版の健全度評価ランク
表2.12 未補強床版の健全度評価ランク
まとめ
本章では、RC床版・鋼板接着補強RC床版の既往の研究およびAE法を用いたコンクリ ート系床版の損傷把握に関する研究について取りまとめた。
以下に得られた知見を示す。
(1) 我が国では、昭和30年代~昭和40年代後半にかけて建設されたRC床版にひび割れ損 傷事例が見られたことから、RC床版の疲労損傷機構の解明に関する研究が開始され、、
研究の進展に合わせる形で設計基準も見直されてきた。
(2) RC床版の疲労損傷機構は、1)乾燥収縮または載荷による主筋に沿った一方向のひび割 れが数本確認できる潜伏期、2)曲げひび割れが発生し、下面には二方向のひび割れが確 認できる進展期、3)ひび割れの毛細化が進み、ひび割れの開閉やひび割れ面のこすり合 わせが始まる加速期、4)床版断面にひび割れが貫通し、床版の連続性が失われ、最終的 にはコンクリート塊の抜落ちが生じる劣化期に分類される。
(3) 輪荷重走行試験を行ったRC床版では、載荷荷重の固定、漸増に関わらず、初期よりひ び割れが発生する。その後、全体に進展して最終的には床版コンクリートの一部が台形
(四角錐)状に踏み抜かれるように破壊する押抜きせん断破壊の状態を呈し、破壊に至 る。また、内部の鉄筋は最終段階まで破断することはほとんどなく、この 2 つの特徴 は、実際の床版で抜け落ちを生じた床版の多くに共通する特徴と同じである。
(4) ひび割れ損傷を受けたRC床版に鋼板接着工法を適用すると、補強後のたわみは、補強 前と比較し大幅に回復し、疲労耐久性も向上する。走行回数を増加させると鋼板の剥離 が進行し、最終的には床版上面コンクリートの砂利化を伴う、押抜きせん断破壊に至る。
また、鋼板剥離部に樹脂の再注入を実施すると、たわみは再注入前とほぼ同等の値に回 復し、その後も輪荷重走行に耐えうることから、鋼板剥離部に対する樹脂再注入は疲労 耐久性の向上に一定の効果がある。
(5) 輪荷重走行下の床版供試体にAE法を適用しAE源位置標定を行うことで、床版コンク リート内部で発生するひび割れの発生位置、発生時期および進展状況などを把握する ことができ、床版の疲労損傷機構の把握に有意である。
参考文献
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6) 国土交通省 国土技術政策総合研究所:道路橋床版の疲労耐久性評価に関する試験,国 土技術政策総合研究所資料,第28号,pp.1,2002.3
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13) 阿部忠行,関口幹夫,小原利美(1996):土木構造物の維持更新と機能向上技術開発,平 8.都土木技研年報,115-126.
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15) 関口幹夫(2003):FWD による床版たわみ測定手法の検討.土木学会第 58 回年次学術 講演概要集,CS6-051,253-254.
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18) 関口幹夫,宍戸薫,今里光夫(2000):供用30 年間のRC 床版追跡調査結果,平12.都土
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第三章 鋼板接着補強RC床版の輪荷重走行試験
3.1 実験概要 3.1.1 供試体概要
図3.1に供試体寸法および配筋図を示す。鋼板接着補強を施す供試体は、昭和39年鋼道 路橋設計示方書に準じて設計した、長さ3500mm、幅2800mm、厚さ 160mmの鉄筋コンク リート(RC)床版である。コンクリートは設計基準強度18N/mm2の普通コンクリート(粗 骨材最大寸法20mm、スランプ8cm)であり、封緘養生後の材齢28日における圧縮強度は 24.4N/mm2、弾性係数は29.8kN/mm2である。
主鉄筋にはD16を使用し、上段は300mm間隔、下段は150mm間隔で配筋した。配力鉄 筋は上段にD10を300mm間隔、下段にD13を300mm間隔で配筋した。
図3.2に鋼板接着補強の詳細を示す。鋼板にはSS400を用い、1150×2000×4.5mmを2枚
(図3.2中のS1、S2)、1200×2000×4.5mmを1枚(図3.2中のS3)、さらに添接板として 400×2000×4.5mmを2枚(図3.2中のJ1、J2)をアンカーボルトおよびエポキシ樹脂にて 接着した(図3.2(b))。エポキシ樹脂の平均厚は4mmである。また、鋼板の浮きの促進を目 的として、図3.2(c)に示すように所定の位置にあらかじめ人為的な付着切れ(100×100×2mm)
を設けた。
図3.1 供試体寸法および配筋図
3500
上主鉄筋D16 10@300=3000 2@100 2@100
50 50
下主鉄筋D16 20@150=3000
2@100 2@100
50 50
160 4344.5
160 30 30
2800
上配力筋D106@300=18002202@10080802202@100
下配力筋D136@300=18002@10080802202@100 50
単位 (mm)
2800 下段配筋上段配筋