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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 福 井 知 範

学 位 論 文 題 名

baPWV を指標とした動脈硬化度と 腎機能指標としてのeGFR の関連

ー一般集団における2008 年推算式を用いた検討一

学位論文内容の要旨

【背景と目的】2002年に米国K/DOQI (Kidney Disease Outcomes Quality Initiative)が 出したガイドラインによりCKD (Chronic Kidney Disease)という疾患概念が初めて提唱さ れ広く普及した。近年CKDが増加し、かつ心血管イベントの危険因子であることが報告さ れ 注目 さ れ てい る(Alanら ,2004)。CKDは 腎 機能に よりstage I〜stageVに 分類され る。腎機能はGFR (Glomerular Filtration Rate:糸球体濾過率)を用いて評価されるがそ の推算方式は本邦において2008年まで統一されたものはなかった。一方、心血管疾患の危 険 因子 で あ る動 脈 硬 化 を測 定 す る方 法 と してbaPWV (brachialーankle Pulse Wave Velocity:上腕―足首間脈波伝播速度PWV)法があり、eGFR (estimated GFR:推算糸球体 濾過率)との関連は病院べースや地域べースで報告されているがいずれも対象者は数百人 規模に過ぎず、十分な検討がされていない。そこで本研究の目的は日本人に合わせたeGFR 推算式 を用い 、健康で 大規模 な男女の 集団を 対象にeGFRとbaPWVの関連を明らかにする ことである。

【対象 と方法 】対象者 は2003年4月から2004年3月までの 間に健 康診断を 受けた35歳以 上の地 方公務 員で男性3518名、女 性863名 、計4381名である。健康診断時に病歴、家族 歴、喫煙習慣、飲酒習慣、運動習慣、教育歴、職種、職位、閉経の状態とホルモン補充療 法、職業性ストレスについて自記式調査票を使用して測定した。自記式調査票は健康診断 に先立って対象者に配布されて健診時に直接回収された。自記式調査票への記入漏れなど デ ー タ 不 完 全 に よ り 最 終 的 に 対 象 者 は 男 性3518人 , 女 性863人 と な っ た .   eGFRは2008年 日本腎 臓学会から発表された以下の式を用いて算出した。血清Cr(クレ アチニン)値とage(年齢)を使用した。

    男性:eGFR=194X sCrー0.1094X ageーO.287

    女性:   eGFR=194XsCr−o.1094X age―0.287XO.742

  baPWVはオムロンコーリン社製BP―203RPEIIを用いて測定し左右の平均を用いた。同時 に足首関節収縮期血圧と上腕収縮期血圧の比であるABI (Ankle−Brachial Index)を測定 し、ABI 0.9未満の参加者はこの分析から除外した。

  職業性ストレス指標は広く利用されているKarasek(1979)による要求度自由裁量度モデ ル(DCM)に 加 え てSiegrist (1996)の 努 力 報 酬 不 均 衡 モ デ ル(ERI)を 使 用 し た 。   解析 はPeason相関分 析、重 回帰分析 を実施 し交絡要 因を明 らかにし た。共分散分析 (ANCOVA)で三分位に分けたbaPWV三群間の比較を行い、さらに交絡要因を調整するために eGFRを説明変数とし、三分位に分けたbaPWVを従属変数としてロジスティック回帰分析を

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実施した。p値く0. 05(両側)を統計的に有意であるとした。

【結果】男性では平均baPWVは1372cm/s (SD 208)、eGFRは82. 4ml/min/l. 73m2 (SD 13.6) だった。女性では平均baPWVは1252cm/s (SD 181)、eGFRは88. Oml/min/l. 73mz (SD 15.2) だった。CKD stage III以上となるeGFR〈60ml/min/l. 73m2は128名(2.9%)だった。

eGFRとbaPWVのロ ジス ティ ック 回帰 分析 ではeGFRが増 加す るとbaPWVが有 意に 低下 し 負の相関を認めた。男性ではオッズ比O. 76(p〈O.001)、女性では0.80(p〈0.001)であ った。

【考察】腎機能 であるGFRを推算する方法は これまでもいくっかの計算式が示され、かっ 民族に応じた換 算式の必要性が指摘されていた。本研究では2008年に日本腎臓学会より発 表 され たeGFR推算式を 用いてbaPWVとの関連を検討 した。Imaiら(2009)は30〜  59歳の 日本人でGFR〈 60ml/min/l. 73m2を4.8%と推定したが本研究では2.9%とより低かった。

その理由として 公務員の集団は民間企業労働者と比較し健康的であると 思われる(Nishi ら,2004)。一方、職業性ストレスが健康に 悪影響を与え心血管疾患のりスクを高めてい ることが報告さ れている。そのメカニズムは副腎皮質系や交感神経系刺激を介していると いう報告(Fujiwaraら,2004)や、職業ストレスが凝固線溶系アンバラン スに関連があっ たとする報告(Tsutsumiら,2001)たどがあ るが詳細は明らかになっていない。そこで本 研究では血圧な ど古典的な危険因子に加えて職業性ストレスを含む交絡要因で調整した結 果、eGFRが増加 するとbaPWVが有意に低下し ており、.日本人により適した推算式を用い た こと でeGFRとbaPWVで表される動脈硬化度との負 の関係があることが、健康な集団に おいても明らか になった。女性に比べ男性でより強い関連を認めた理由として、高血圧、

高脂血症、糖尿 病など動脈硬化を促進する疾患の有病率が男性の方が高かったことが考え られる。

  透析 患者 は年間1万人の割合で増加し、Imaiら(2009)によれば成人日本人の約13%が CKDと推定されている。腎機能悪化を抑制す るのみたらずCVD発症を予防 することが公衆 衛生学的に重要 である。特に本研究の強みは第一は4381名という大規模な集団を対象とし ていることであ る。第二に日本人に合った2008年度の換算式を用いて検討していることで ある。第三に一 般の集団を対象としていることである。その結果得られた知見はより日本 人に一般化しやすく有益なものと考える。

  しかし本研究 にいくっかの限界がある。第ーは横断研究であることである。本研究は単 年度での研究で ありCrはべースライン時での採血のみを採用した。第二 に公務員の単一 集 団で ある ことである 。最後に本研究ではべースライン時に測定したCrからGFRを推定 し たた め一 回のeGFR測 定によりCKDと診断すること は出来ない。検尿検査は行っていた が 今回 はeGFRとbaPWVの相 関を 見て おりCKDとbaPWVと の相 関 は検 討していない。この 点は今後の課題 である。いずれも今後このコホート集団を前向きに追跡することにより明 らかにできると 考える。またCKDのりスク要 因を前向き研究で明らかにすることも今後の 検討課題である。

【結論】日本人 に合わせた新たなeGFR推算式を用い,高血圧,脂質,BMIなど古典的な動 脈 硬化 因子 で調整して もeGFRとbaPWV間に有意な負 の関連を認めた,2008年推算式で算 出されるeGFRは動脈硬化の指標となる.

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨

主 査   教 授   小 池 隆 夫 副 査   教 授   筒 井 裕 之

副 査    教 授    玉 城英・ 彦 副査    特任教授   岸   玲子

学 位 論 文 題 名

baPWV を指標とした動脈硬化度と 腎機能指標としてのeGFR の関連

一一般集団における2008 年推算式を用いた検討ー

  2002年に米国K/DOQI(Kidney Disease Outcomes Quality Initiative)ガイドラインによ りCKD (Chronic Kidney Disease)という疾患概念が初めて提唱された。近年CKDは増加し、

かつ心血管イベントの危険因子であることで注目されている。腎機能は一般に血清Cr値を基 にした推算式にて推定糸球体濾過量(eGFR:estimated Glomerular Filtration Rates)と し て算 出 さ れる。CKDは腎 機能に よりstageI〜Vに分 類される がその 推算方式 は本邦 に おいて2008年まで統一されたものはなかった。一方、CVD(Cardiovascular Disease)の危険 因子である動脈硬化を測定する方法としてbaPWV (brachialーankle Pulse Wave Velocity) 法がある。PWVとGFRの関係は先行研究でいくっか報告されているが、関連を認めなかった とする報告や、サンプルサイズが小さく、病院受診者を対象としたものであり、一般集団で 十分な検討がなされていない。

  本研 究の目的 は2008年に 日本腎臓 学会よ り発表された新しいeGFR推算式を用い、大規 模 な 男 女 の 集 団 を 対 象 にeGFRとbaPWVと の 関 連 を 明 ら か に す る こ と で あ る 。   対象者は2003年4月から2004年3月までの間に健康診断を受けた35歳以上の地方公務員で 男性3518人,女性863人である。健診時には一般的な測定項目の他に高感度CRP、baPWV、心 血管疾患既往の有無を測定した。同時に白記式調査票を用いて病歴、家族歴、喫煙習慣、飲 酒習慣、運動習慣、教育歴、職種、職位、閉経の状態とホルモン補充療法、職業性ストレス を 測 定 し た 。eGFRは 血 清Cr値 とageを 用 い て 以 下 の 式 に よ り 推 定 し た 。     男性:eGFR=194X sCr‑o・l。¨X age−。・2

    女性:  eGFR=194XsCr―。,t。¨Xage−。 X0.739。

baPWVは左右測定し平均を用いABI (AnkleーBrachial Index)0.9未満の参加者はこの解析か ら除外した。職業性ストレス指標は広く利用されている要求度自由裁量度モデル(DCM)、及 び努力報酬不均衡モデル(ERI)を使用した。解析は男女別に行い単変量解析、重回帰分析を 実 施し 交 絡 要 因を 明 ら かに し た 後、 三 分位に 分けたbaPWV三群 問の比 較を共分 散分析 (ANCOVA)で行 った。p値く0.05(両側)を統計的有意とした。解析の結果男性ではbaPWV 1372cm/s、eGFR 82. 4ml/min/l. 73m2、女性ではbaPWV 1252、eGFR 88.0だった。eGFR<60 は128名(2.9%)だった。baPWVが増加するとeGFRが有意に低下しており、日本人により適 した 推算式を 用いたことでeGFRとbaPWVで表される動脈硬化度との負の関係があることが

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大規模な集団においても明らかとなった。先行研究では30〜  59歳の日本人でGFR< 60を4.8cYo と推定されており、本研究で割合が少なかった理由として公務員の集団は民間企業労働者と 比較し健康的であることが考えられる。また職業性ストレスがCVDのりスクを高めているこ とが報告されているが詳細は明らかになっておらず、本研究ではbaPWVで表される動脈硬化 とストレス因子との関連は認めなかった。

  申 請 者 は 、 平 成22年5月17日午 前11時20分 から15分間 、 上 記の 学 位 論文 内 容 の発 表を 行った 。その後 副査の 玉城教授 から喫煙 がbaPWVと単変量 解析で は有意な関連を認 めたが、多変量解析では有意ではなかったことに対しその理由や生物学的な機序や経路に つい ての質 問があっ た。次 いで副査 の筒井教 授からCVD既往 のある 対象者を 解析に含め なかった場合の結果にっいて、また含めることの妥当性についての質問があった。最後に 小池 主査か らbaPWV測 定法の妥当性についての質問、頸動脈エコー法による動脈硬化度判 定の有無についての質問があった。いずれの質問に対しても、申請者は自身の研究結果お よび 文献的 知識を引 用し、 誠実にか つ概ね適 切に回答した。質疑応答の時間は15分であ った。

  この 論文は ,日本人 に合わ せた新た なeGFR推算 式を用い 、一般 集団でeGFRとbaPWV間 に有意な負の関連を認めた点で高く評価された。eGFRは動脈硬化の指標となることが示唆 されたので、今後CVD発症を予防する一助として期待される。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども 併 せ 申請 者 が 博士 (医 学)の学 位を受 けるのに 充分な資 格を有 するもの と判定 した。

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参照

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