博 士 ( 薬 学 ) 西 亦 豊 希
学 位 論 文 題 名
兀―ア1J ルパラジウム錯体を用いたCrinine 型アルカロイド類 の全合成及びその錯体形成過程の解明
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
有機合成化学の進歩は、一昔前には不可能と考えられてぃた巨大分子や複雑な天然物の合 成も可能としてきた。しかしその成功によって小分子の合成法が飛躍的に進歩したとは言い 難い。それは、医薬品の製造に於いて等量得られる、不必要な鏡像異性体を全て廃棄してい るとぃう現状が表している。
crinine型ヒガンバナアルカロイドは、ヒガンバナ科の植物のみから得ることのできる種 特有の希有な天然物であり、様々な生理活性を有することが報告されていることから、医薬 品のり―ド化合物として注目されている。例えばpretazettineについては、ペブチド結合生 成阻害に基づくHeLa細胞の成長阻害活性やC型ウィルスのDNA逆転写酵素阻害活性などを有 しており、現在臨床的にも用いられている。しかし植物中の含有量は極微量であるため、大 量に得るためにfま有機合成に頼らざるを得なぃ。これまでにもcrinine型アルカロイドの合 成例は多数報告されてきたが、それらの多くは不必要な鏡像異性体を等量含有するラセミ体 で の 合 成 で あ |J、 ま た 工 程 数 や 収 率 の 面 で 問 題 を 残 す も の が 多 か っ た 。 以上の背景から、申請者はcrinine型アルカロイドを光学活性体として合成するための経 路を確立することは、医薬品等の探索研究に非常に重要な意味を持っと考えた。申請者が計 画したのは、7rーアリルパラジウム中間体を経由するアリル位の不斉アミノ化反応で得られ たキラルシントンを出発物質とし、分子内カルボニルエン反応により重要な骨格部分を構築 するとぃう方法である。これにより、合成上、これまで問題とされてきた6員環上2重結合 の位置選択的導入、5員環上水酸基の立体選択的導入、及び光学活性体の合成とぃう難問を 完全な形で解決出来ると考えた。
その結果、当初の目的通り光学活性なcrinine型アルカロイドの幾つかの全合成を初めて 達成するとともに、未だもって解明されてぃなぃ″一アリルパラジウム中間体の錯体形成過 程 に おけ る 種 々 の重 要な知見 を見出 すことに 成功した 。以下 に箇条書 きで記 す。
1.汀一アリルパラジウム中聞体を経由するアリル位置換反応におぃて、反応機構に基づぃ た考察から脱離基として高い反応性を有するエノール炭酸エステルの開発に成功し、これに より触媒的不斉アミノ化反応を高い鏡像異性体過剰率で進行させることを可能とした。
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2.本 系 に お ぃ て は 不 斉 ア ミ ノ 化 反 応 以 外 に 、 基 質 の 速 度 論 的 光 学 分 割 が 同 時 に進 行 し て ぃ る こ と を 見 い だ し た 。 更 に、 各 々 の 反 応 にお け る 選 択 性は 、 同 一 の7r− ア リ ル バラ ジ ウ ム 中 間 体 を 経 由 す る に も 関 わ らず 全 く 別 個 の 反応 で あ る と ぃう 興 味 あ る 知見 を 見 い だ すこ と が で き た 。
3. ア リ ル 位 置 換 反 応 の 求 核 剤 と し て 水 を 用 い る こ と が 可 能で あ る こ と を見 い だ し 、 速度 論 的 光 学 分 割 に よ ら な ぃ 光 学 活 性ア リ ル ア ル コ― ル の 合 成 法 とな る こ と を 示し た 。 ま た その 手 法 を 用 い て 通 常 の 手 法 で は 得 るこ と が 難 し ぃ、 光 学 活 性 な 同位 体 標 識 化 合物 を 得 る こ とに 成 功 し た 。
4.襾 ― ア リ ル パ ラ ジ ウ ム 中 間 体 モ デ ル と な る 錯 体 の 合 成 に 成 功 し 、 そ の構 造 を エ ッ クス 線 結 晶 解 析 に よ り 明 ら か と し た 。 ま た溶 液 中 で の 挙動 に つ い て 、温 度 可 変 に より だ ― ア リ ル パ ラ ジ ウ ム 錯 体 が 配 位 子 に よ っ て 規 制さ れ 、 不 斉 場に お け る 挙 動と そ の エ ナ ンチ オ 選 択 性 の 関 係 を 明 ら か と し た 。
5.不 斉 ア ミ ノ 化 反 応 で 得 ら れ た キ ラ ル シ ン ト ン に 対 し て 、 加 熱 条 件下 で 分 子 内 カ ルボ ニ ル エ ン 反 応 を 行 う こ と に よ り 、 光学 活 性 な ハ イド ロ イ ン ド ー ル骨 格 を 得 る 新た な 方 法 論 を確 立 し た 。 ま た ( − ) ―mesembr aneの 形 式 的 全 合 成 に 成 功 し た 。
6.代 表的 なCrinine型ア ルカロ イドで ある( 十)‑crinamine、( −)‑haemanthidine及 び(十 )−
pretazett ineを 、光 学 活 性 体 とし て 全 合 成 す るこ と に 初 め て成 功 し た 。 これ は 既 知 の 手法 と 比 較 し た 場 合 に お ぃ て も 収 率 、 工 程 数、 立 体 選 択 性等 に 極 め て 優 れた も の で あ る。 ま た 光 学 活 性 体 と し て 初 め て の 合 成 を 、 遷 移 金属 触 媒 に よ る不 斉 合 成 で 得 られ た キ ラ ル シン 卜 ン を 用 い て 達 成 し た こ と は 、 自 然 界 に 依 ら な ぃ 不 斉 源 の 重 要 性 を 立 証 す る こ と が 出 来 た 。
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以 上