(様式第9号)
学 位 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
氏 名
THU HA NGUYEN
審 査 委 員
主 査 進藤 晴夫 ◯印 副 査 横山 和平 ◯印 副 査 増永 二之 ◯印 副 査 藤山 英保 ◯印 副 査 藤間 充 ◯印
題 目 EFFECT OF CONTINUOUS COMPOST APPLICATION ON QUALITATIVE AND QUANTITATIVE CHANGES OF ORGANIC MATTER IN PARTICLE SIZE FRACTIONS OF SOILS – IN THE CASE OF A FIELD SUBJECTED TO MAINLY DOUBLE CROPPING
審査結果の要旨(2,000字以内)
土壌有機物の主要な構成物は、腐植物質と非腐植物質の炭水化物および含窒素化合物(有機態窒素)
である。土壌の肥沃性に及ぼす各種の有機質肥料とそれらの施用量の効果に関しては、多くの研究が 行われ、土壌有機物レベルと窒素肥沃度が増大すること、また、土壌の物理性、化学性および生物性 も改善することが示された。しかしながら、二毛作田土壌における有機質添加物の役割に関してはい まだ不明な点が多く、研究を進展させることが必要である。本研究は、長期間の堆肥連用が土壌(主 として二毛作田)とその粒径画分の腐植組成、有機態窒素組成および糖組成に及ぼす影響について知 見を深めることを目的としたものである。圃場試験は、山口県農業試験場(山口市)で 1975 年から実 施され、土壌は、Gray Lowland soil (FAO-UNESCO: Eutric Fluvisol)に分類されている。土壌試料は、
3 試験区から得られた。F 区には化学肥料の N,P,K だけが、F+LC 区には化学肥料と低いレベル(5 Mg ha-1) の堆肥が、F+HC 区には化学肥料と高いレベル(15 Mg ha-1)の堆肥が施用されてきた。これらの区では、
2001 年6月まで夏作に水稲、冬作にビール麦を栽培した。N, P2O5 と K2O は、各作物に対して、100 kg ha-1施用した。6 月と11月の作物の収穫後に、前述の量の牛ふん稲わら堆肥を施用した。しかしなが ら、2001 年 6 月以降、各試験区は水稲のみの栽培となり、化学肥料と堆肥の施用量は半減した。2007 年 4 月と 2008 年 10 月に、1 区あたり5カ所の作土層(0-15 cm)から土壌を採取した。これらの土壌 は、風乾し、軽く砕き、2mm の篩を通した。土壌試料は、水中篩別と沈降法により、それぞれ組砂サ イズ粒団画分(CSA)、細砂サイズ粒団画分(MSA)、微砂サイズ粒団画分(FSA)、シルトサイズ粒団画 分(SIA)と粘土サイズ粒団画分(CLA)に分画した。さらに、CSA、MSA および FSA については、比重 分画法で鉱物粒子(MP)と腐朽植物(DP)画分に細分した。
土壌とその粒径画分における腐植の量的および質的変化については第二章に記載した。腐植組成は、
堆肥施用量によって影響を受けた。堆肥施用によって、土壌と粒径画分、特に SIA 画分の全腐植(TH)
量、腐植酸(HA)量、フルボ酸(FA)量が増加した。この増加は F+HC 区で顕著であった。CSA と MSA 両画分の場合、TH、HA および FA の量はいずれも、CSA-DP と MSA-DP の方が CSA-MP と MSA-MP 比べて はるかに高い値を示した。F+LC と F+HC 区の場合、TH、HA および FA の量は CLA よりも SIA 画分の方 が多かったが、F 区では逆の結果が得られた。土壌と多くの粒径画分において、腐植酸の腐植化度は、
堆肥連用によって低下し、この傾向は SIA 画分で明らかであった。F+HC 区における腐植化度の低下 は、他の試験区に比べて顕著であった。
堆肥施用量が、土壌と粒径画分の形態別有機態窒素量および画分における窒素の分配率に及ぼす効 果については第三章で述べた。土壌と粒径画分の全窒素量と形態別窒素量は、一般に、堆肥施用量の 増加によって増加した。堆肥連用によって、土壌の非加水分解性窒素とアミノ糖態窒素の分配率は増 加したが、逆に加水分解性アンモニア態窒素と未同定態窒素の分配率は低下した。堆肥連用はアミノ 酸態窒素の分配率には影響を与えなかった。粒径画分の場合、CSA-DP, MSA-DP と FSA-DP への形態別 有機態窒素の分配率は、ほとんどの有機態窒素で堆肥連用によって増加した。CLA 画分の形態別有機 態窒素の量と分配率は、画分間で最大であった。
土壌と粒径画分の糖成分(ヘキソース、ペントース、ウロン酸)の量および画分におけるそれらの 分配率に及ぼす堆肥施用の効果を調べた(第四章)。土壌のヘキソース、ペントースおよびウロン酸含 量は、堆肥連用量の増加とともに増加したが、その分配率にはほとんど影響を及ぼさなかった。各糖 量は、多くの粒径画分において、堆肥連用によって増加し、F+HC 区で顕著であった。しかしながら、
CSA, MSA, FSA (MP と DP も含む) および SIA 画分においては、堆肥施用量とヘキソース、ペントース あるいはウロン酸の分配率との間で規則性は示されなかった。CLA 画分の場合、各糖含量は増加した が、それらの分布率は低下した。つまり、各試験区において、ヘキソースとペントース量およびそれ らの分配率が最も高かったのは、SIA 画分で CLA 画分が続いた。一方、ウロン酸では、その順序が逆 になった。
TH, HA, FA,殆どの有機態窒素および各糖成分は、それぞれの量の50%以上が SIA と CLA の両画 分に濃縮されており、両画分が土壌の各種有機成分の重要な貯蔵庫として注目に値することが明示さ れた。各腐植成分量、ヘキソース量、ペントース量は CLA 画分よりも SIA 画分の方が多いが、ウロン 酸量と各種有機態窒素量は、逆に CLA 画分の方が多かった。
以上のように、本論文は、堆肥連用が土壌と粒径画分の腐植、窒素および糖組成に及ぼす影響に関 して新知見を与えるとともに、堆肥施用を伴った肥培管理の技術的指針に関して有用な情報を提供す るものであり、博士(農学)の学位論文として十分な価値を有するものと判断した。