窒素定量
著者 田崎 和江
著者別表示 Tazaki Kazue
雑誌名 地球科学
巻 21
号 1
ページ 21‑24
発行年 1967‑01‑30
URL http://doi.org/10.24517/00061686
doi: 10.15080/agcjchikyukagaku.21.1_21
ミ
ク
囗・
ケルダ ー
ル法
に よ る縄 文 貝塚 産
の貝 殻 中
の窒 素 定量
*田
崎 和
江**1
ま え が き
1883
年に C.
KJELn,
xl−
II.
の論 文 が 公 表されて か ら, ケ ル ダー
ル法は,
きわめ て有用性に富んでいた ため,
各 種の窒 素 化 合 物の定量に適用さ れて きた
,
筆老は,
こ の方 法を コ ンキ オ リン ⊂貝殻 中の有機物)に適用し, 炭酸カル シ ウムが多量に入っ た試料に も, 十分こ の方 法 が使え
ることを明らか に した
.
化 石 の 貝 殻で は もちろ んの こと
,
現 生の 貝 殻で も,
そ れ を 脱 灰 液につ けて脱 灰 する と,
コ ンキ オ リン の
一
部は と けて,
完 全に回収 する こと ができない
.
そこで貝殻の主成分である炭酸カル シ ウムが,入っ た まま分 析 する方 法を とっ た
,
こ の方 法は,
貝 殻中の有機物含有量を迅速に決め る の に
,
きわ め て有 効であ る.
筆 者は, こ の 分 析 法をつ かっ て, 縄文 貝 塚 か ら産 出し た貝 殻 中の窒 素 量を定 量し た
,
その結果, 年代が古くな る につ れて,
窒 素の含 有 量に減 少が認め られ,
とくに,2000 年以 内に
,
い ち じる し く失 なわれる こと が,
明らか’
に なっ た
.
ま た,
貝殻 構 造のちがい に対 応して窒 素 含 有 量 も異 なるこ とが わか っ た.
H
分 析 法につ い て各 種ア ミノ酸の 標 準 試 料 や 卵 白ア ル ブミンを使 用し
,
各 種の 触媒で分解し た ところ,
“水 銀触媒と, 蒸留時に 亜 鉛末を使 用する方 法”** * (金 子 他,
1965
)がもっ とも一
定した値を 示 し たの で,
こ の方 法を採 用し た,
A
基 礎 実 験炭 酸カル シウムの混 入が窒 素 量の分 析 値に, 影 響 する
か どうか を検討するため に
,
貝 殻の 脱 灰 剤と して,
硫酸,
酢 酸
,
塩 酸の 三つ を使 用した と仮 定し, 次の三方 法を試み た
.
イ) 卵 白アル ブミソ 十 硫酸カル シウム ロ ) 卵 白アル ブミン 十 酢 酸カル シ ウム ハ ) 卵 白アル ブ ミ ン 十 塩化カル シウム
只 殻 中の有 機 物の含 有 量は
,
数%以下であ るか ら,
卵σb
. 8
. 7
. 6
. 5
. 4
12111098765
xloomg
第
1
図シジミ (現生
・
生 貝)に おける試 料の質量と含 有窒素 量との関係 横軸:分 析 試 料の質 量 縦 軸:貝 殻 中の窒素 含有 量
白アル ブ ミ ン と 無機塩を
,
1 :99の割 合で まぜて分 解し た.
その結果,
イ)と ハ )は安 定し た値を示し た が,
卩)は値がぼ らつ いた
.
し たがっ て,
貝 殻 中の窒素を分 析する際に は,
硫酸ま た は 塩酸で脱灰 すれば,
その脱灰液を含ん だ ま ま, ミ クロ
・
ケル ダー
ル法で分析するこ とがで ぎる
.
しか し,
塩 酸 脱 灰 法を現 生シジ ミに適用 し た ところ,
分 解 時に, コ ン ベ ル中で の突 沸が ひ どく, 不適 当であるこ とがわ かっ た.
硫 酸 脱灰法は, 比較的ゆるやかな沸と うで
,
最も適し て い る.
有 磯 物を 十分 分解する の に要す る 時 間は
,
多くの予 備 実験の結 果,130
分 間ときめ られた.
ミ ク P
・
ケ ル ダー
ル法で分斬できる案 素 量は,
0.
2〜2
mg である
.
し た がっ て, 貝殻に含 ま れるア ミノ酸 総 量は
,
只 の種 類に よっ て こと なる こ と を考慮して, 試 料の:$:を決め る必 要 が ある
.
ホ タ テガ イ に おい て は,
2632631mg
をつ かえ ば よ い†.
しか し,
試 料1
)量 が少ないと, 実験 誤 差が大 き くな り
,一
方,
あま り多い と, 分解コ ル ベ ン (
50cc
)中では,
十 分 分 解 さ れ ない の で,
約 *1966
年10
月 地 質 学会 年 会 講 演** 東 京 支 部 東 京 学 芸 大 学 教 育 学部 化学 教室
* **
主 として ユα蔽 の分 析に用い られ る
.
文 献を お 匱話下 さっ た東 京 医科 歯 科大 学の坂 本 征三 郎 氏に 感 謝 する.
†
秋 山 (
1964b
)は,
北海 道 産の現生ホ タ テ ガ イの 貝殻に ふ くまれる ア ミ ノ醸
総 量は・
殻 100 mg 中に 384 r で ある と して い る.
22
600
〜1700
皿 g が適 用範囲である (第1
図).
筆者は, 常 に1000mg
前 後を とっ て分 析 した.
B
採用 し た実 験 方 法i
) 貝 殻 処 理殻 皮 を けずり取 る (現生 貝の み)
・
*洗浄 (中 性 洗 剤
,dil.
HCI
, メ チ ル アル コー
ル ) 乾燥後 粉 末にする.
秤 量 (19 前後
,
コ ル ベ ン に とる),
脱 灰 (試料の量に応 じて
,
conc.
H2SO
, を入 れる).
ii> 分 解{
分 解 用 conc
.
H2SO41cc
K2SO4
:CuSO4 − 3
:1
粉 末 約0. 19
硫 酸 水 銀 溶液O, 5cc
を コ ル ベ ン に入 れて
,
約130
分間加熱. iii
> 蒸 留分解混 合液に
,
アェ ン末 0.
2g と,10N −NaOH
7 cc を 流し込み蒸 留.
iv) 滴 定
end point カナ リア黄 色 (メ チル レ ッ ド使 用 ) 含 有 窒 素 量 計 算
貝 殻 中に含まれる窒素量の百分 率 を
N
とす れば0, 14613
× VN
〔%)=×100 検 休 量
・ ・瀧 觚
[
、言
。HC ・量一 斎
…H
量] .
X
●o
,
ー厂
μ
軍
ー
チ 角 ρ 厚
,
「
! 殉↓ , ,
〃/
』 ’ ,
1 ’
!
ノ
r
’
!
ん
’ r
/
/
!
/
’ 广
・
/
’
〆
じ ド
ド ノ
ノ
ダ
!
!
、
/
・ 、
て
へ
/
/ ・
一
”
ゴ
コ
韆
%
D. 10
O . 05
ur 分 析 試 料に つ い て
分 析試 料に は, 関 東地方の縄 文貝塚か ら産 出し た 旦殻
を使用 した
.
種 名, 産 地,
絶対年数 (YAMAsAKI et al. 1966
)は,
第1
表に 示 し た.
また,
そ れ らと比 較 する た め に,
同一
種の生貝の分 析 もあ わ せて お こなっ た
. 1
試 料は,
数 個の貝殻を ま ぜて粉 末に し,
そ れか ら1g 前後 をとっ て,
使用し た,
なお,
貝殻は構造の異なっ たもの が層状に集まっ て い る た め,1
個 体の全 層に わ た る ように試料をつ くっ て分析し た
.
IV
分析 結
果1
試料につ い て,
3〜15
回の分 析 をお こない, そ れらの平均値を
,
その 試 料の 分析 値とし た.
第1
表の値 を,
グラ フに表わすと
,
第 2図のと お りである.
10000
5GOO
O
Years
第 2 図
縄 文貝 塚 産の貝殻と現生の 貝殻の中に 含ま れ る窒素 量
× マ ガ キ 〔Ostrea 8igas〕
○
ハ
マ グリ 〔il4/eretrixlusoria
〕●
{
マ
シ ジ ミ 〔C・rbiculaleana
) ヤ マ トシ ジ ミ 〔CO7biculaj
σPonica
〕願
{
ア カ ガ イ 〔
Anadara
brOU8htonii〕 サル ボ ウ 〔Anadara
subcrenata 〕▲
ツメ タ ガ イ 〔
Neverita
didyma 〕・
十 オ オ ノ ガ イ 〔Mya ゴ曜》onica
〕横 軸 :絶 対年数
縦 軸 :貝 殻 中の 窒素の含 有百分 率
V
考 察i) 第 2図は
,
貝殻埋没 後, 約2000年 以 内に,
窒 素 含 有 量が,
急 激に減 少 するこ とを示 し てい る.
さ らにそ れ 以前は, ほ と ん ど減 少が認め られ ず 直線に近 くなる* *.
これは
,
貝殻 中の窒素を含 む 物 質の大 部分 が, 2000年以 内に,
分 解 するこ と を示 して い る.
ii)
含 有 窒 素 残 存 曲線と
,
員 塚の貝殻 中の ア ミノ酸 残 存 曲線 (秋 山・
藤 原,
1966
)とは相 関 閨係を 示 し てい る.
第2,3
表は,
窒 素 含 有 量 とア ミ ノ酸 総 量 (AKIYAMA, 1966,
秋 山・
藤 原,1966
)を, 現 生 と化 石の貝殻につ いて, 比 較した もの である
.
この
2
表におい て, い つ れ も,
コ ンキ オ リン量 ボア ミノ酸 総量に比べ て多 くなっ て いる
.
これ は,
コ ンキ オ リ ン中に,
タンパ ク質以 外の窒 素 化 合 物が存 在 する こと を,
* 化 石の 貝 殻で は普 通 識 皮が 保存さ れて い ない
.
し た がっ て同一
条 件にする た め に,
こ の処理 を お。 な う.
**
T
・N
・−Y
・NH
・ は・
淡 水 産の 嬾 と S・ ・ci… の 貝殻〃・
》 黷 鮪 量を,
・ ク ・・
ケ.
曜一
・レ灘 よって定量し た結果
,
現 在か ら鮮 新世 前 期に か けて,
貝殻タ ン パ ク窒 素 含 有 量は 漸 移 的に 減 少 して い る こ と を報告 し てい る、
* **
保田他 (1957)は
,
= ソ キ オ リン の窒素量を約17
% と してい る.
し たがっ て,
貝 殻 中の コ ソ キ オ リソ量は,
匚
・黔 樋 (Y
・)・翌 ]
・示 ・楓第
1
表 分 析試料と その産地・
絶対年数・
含 有窒 素 量試料 番 号
1234R
り 戸
0789012 11134匚U678Q
》 1111111
種 名
マ シ ジ ミ*1 ヤ マ トシ ジ ミ*2
ヤマ ト シ ジ ミ ヤマ トシ ジ ミ ヤマ トシ ジ ミ
ハ
マ グ リ*3ハ a グ リ
ハ
マ グリハ
マ グリハ
マ グリハ マ グ リ
ハ
マ グ リ キ組キ キ キ キ キ キ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ
マ
マ
マ マ
マ
マ
マ
5
臼
*
*
イ ウ ウ ウ ウ ウ ガ
ボ ボ ボ ボ ボ カ ル ル ル ル ル ア サ サ サ サ サ
019 臼 345 229 自 29 側
2而
り78222
オ オノ ガ イ*7 オ オ ノ ガ イ オ オ ノ ガ イ
*8 イ ィ イ ィ ガ ガ ガ ガ タ タ タ タ メ メ メ メ ツ ツ ツ
ツ
Q
ゾ
2012
り り 003
採 集 地
Cl4
に よ る絶 対 年 数
駘 懿 継 芻
…産地不 明
千 葉 県成 田 市 荒海 千 葉 県 香 取 郡 大 栄町奈土 茨 城 県北 相馬県 取 手 町 向山
千葉 県 香 取 郡 佐 原 市 鴇 崎 産地 不 明
千 葉 県 成 田 市荒 海 千葉県 香取郡大栄町奈土 千 葉 県香 取郡佐 原 市三郎 作 茨城県稲 敷 郡 桜 川 村 浮 島 貝ガ窪 千 葉 県 香 取 郡 神 崎町 植房 干葉県香取郡 佐原市鴇 崎
現 生 生 貝
2330
− t −
1303220
≡E135
4660
±130
9450±210 現 生生 貝2350t:120
3140一
ト135
4670 ≡≡1505050
:ヒ1305490
→−160 9000≡ ≡ 200
含 有 窒 素 量 %
産地不明
千 葉 県香取 郡 小 見川 町 白井 雷 千葉県 香 取 郡 佐 原 市 三 郎 作 茨 城県稲 敷郡美浦 村興 津 荻 城県稲 敷郡桜川制 浮 島貝ガ窪 千 葉 県 香 取 郡 神 崎町 植房 千 葉 県 香 取 郡 佐 原 市鴇崎
0
. 064090
.
023730. 020780
. e15770
.
020860.
077660.
016740. 02234
10
.
019260. 021560
. 018560
. 01760
現 生 生 貝
4410
一
ト130 4670:ヒ1505020
±130
5050±130
5490−
←160 9000
≡E200
産地 不明
千葉県 佐原市 大倉
千葉 県香取 郡 小 見 川 町 白井雷 千 葉 県 香 取 郡 小 見 川 町 五郷内 阿 玉 台 千葉 県香取郡 佐原市三 郎作
茨城県 稲 敷 郡 桜 川 村 浮 島 貝ガ窪
現 生 生 貝
3430±
125
4410±130 4520±110 4670±150
5050:ヒ
130
千葉 県成田市荒 海
千 葉 県香取郡 小 見 川 町 白 井 雷 千 葉 県 香 取 郡 佐 原 市三 郎 作 千 葉 県 富 津海 岸
千葉県 佐 原 市 大倉
千葉県 香 取 郡 小 見 川 町 白 井 雷 千 葉 県 香 取 郡小見川町 五郷内 阿玉台
2860
±110
4410±13D
4670±:150現 生 生 貝
3430
+125 4410
≡≡130
4520±1100
. 114060
.
026670.
025920. 025930
.
027030.
025780. 03199O
. 035190
.
011110.
015040. 012320
,
011460,
009890. 015670
.
020970.
01905. 0 . 024270
.
07690
. 007470
,
00631 第 2 表 現 生 貝 殻中の コ ンキ オ リン量とア ミノ酸総 量 (%)*1
Corbicula
l
θanu*2Corbicula ゴ砂onica
*呂 Me プ
etrix
lzzsoria
*40strea gigas
*4
∠肋
adara
b
γozaghtonii
*6
Anada
γa
subcrenata
*7Mva ゴaPonica
*8 ヱ〉廨 γ犲
adidyma
あっ て (小 林新二郎
, 1964
),貝 殻 中の コ ン キ オ リン量がア
ミ ノ酸総量よ り多い の は
,
ムコ 多 糖 類か ら由来し た窒素が 存在 するため であ ろ う と考え ら れ る
.
ペー
パー
ク ロ マ トグ ラフに よ るア ミ ノ酸分 析に おい て は
,
この多糖類が未確 認の ため少ない値を 示すと考え ら れ
,
今後の問 題 として, この多 糖 類の研 究が望ま れ る
.
iii) 現 生 の カ キ (Ostreagigas)
,
ハ マ グ リ(LVeretrix tttsOγia),
シジ ミ (マ シ ジミCOPtbicur
αleana
とヤマ トシジ ミC
.
ゴψo痂σα),
ア カガ イ(
An
αdara brOU8htonii),
サル ボ ウ (ノ
Lsubcrenata
),
ツメ タ ガ イ (
Neverita
didPtma
)[
マ ガ キConchi.
A
.
Acids0. 670
.
47〜O.
99ハ
マ グ リ0
.
46シ ジ ミ
0
.
32 0. SI 〜
O.
40i
O.
20】
ア カガ イ
0
.
21
.
14 第3
表化 石 貝 殻 中のコ ンキオ リン量 とア ミ ノ酸総量 (%)
Conchi.
A .Acids
マ ガ キ
0. 15〜O. 19 0. 07〜0. 11
ハ マ グ リ
0. 10〜0. 13 0. 02〜0. 08
シ ジ ミ
0, 09〜O. 14
0. 04〜O. 08
サルボウ
0. 06〜
0.
09O.
03〜
O。
061
Conchi
. ……
コ ソ キオ リソ 量A .
Acids……
ア ミ ノ酸 総 量の窒素含有量 は
,
第2図の ように,
そ れぞれ た がいに,
いち ぢ る し く異っ て い るが,
同一
貝塚産の異 なる種にみられる窒 素 含 有量 の ち がい は, 現 生のそ れ と相関関係 が ある
.
すな わち,
第
2
図で,
現 生の窒素 含 有 量の多い もの は , 化 石で も多く なっ て い る.
な お,
オ オ ノ ガイについ て は, 現生々貝 が得られ な かっ たの で, 化 石
のみ扱っ てい る
.
iv
)こ の よ うに,
種に よっ て,
窒素 含 有 量が 異 なるの はその貝 殻 構造のち がい に,
起因すると考え ら れ, ア ミノ酸と貝殻構 造 との関係* が 密接で ある こと が 予 想 さ れる
.
v)巻 貝は 二 枚 貝に比ぺ て
,
非 常t・ a
窒 素 含有暗 示してい る
.
す なわち,
貝 殻 中の窒 素 化 合物は タン パ量 が少ない
.
こ の結 果は,
HAREand
ABELsoN
(1965
)ク質 (ア ミ ノ酸)と, グル コ サ ミソを含むム コ 多糖類で
や 橋 本 (
1966
>の巻 貝中の ア ミノ酸 含 有量 の研 究と矛盾*
AKIYAMA
(1966 )は,
ア ミ ノ酸 総量が,
カ キ の外 層稜柱 構造に 多 く,
ア カ ガ イ,
シ ジ ミ の 外 層 (交 叉 板構 造 )に少 な く
,
ハ マ グ リ の 外 層 (後 合 稜柱 構造)や内 層 (均 質 構造)では そ れ らの 中間の値 を示す, との べ てい る・
24
しない
.
巻貝は,
二枚貝に く らべ て有機物の含 有最 がき わめ て少 ない と結 論できよ う.
vi) 第2図に は記 入 さ れて い ない が
,
ツ メタ ガ イ の現生の死 貝(淡路島州本 海岸に う ちあ げら れ ていた 呉殻)
を分 析し たところ
,
現 生 生貝の窒 素 含 有 量の ヲ2以一
ドで
,
O.
01024% の値を 示 し てい る ことか ら,
海 岸に うちあ げ られて い る場 合に は,
きわめ て短 期 間に貝 殻に含ま れ て い る有 機 物が失われる こと が予 想される,
ト キ
vii) 鴇崎貝 塚の貝 殻の窒 素含有 量が
,
他の場 所に く らべ て多い の は,
こ こ で は,
比 較 的 保 存 条件がよ か った もの と考え ら れ る.
将 来,
他の只 塚の保 存 条 件と の ちがい の検討が必要であろ う
,
VI
あ と が きあっか っ た試 料が
,
只 塚の只とい うこ とか ら, 当然保 存 条 件 が,
他の一
般の化 石の試 料 標 木と異 なっ て い ること が予 想される
.
貝塚の試 料 慓 本は, 地 層の中に貝 殻が 密 集し た形で保 存されてい る とい うこと や, 人為的な作 用を受け ている とい う,
化石 との 相異 点があることは,
考 慮 さ れ な け ればな
.
らなL
・ .
今回 は
,
貝殻の全 層を処理 し て分 析した が,
ア ミノ酸の 分 析 値に見ら れ るよ うに
,
貝殻 構 造ごとに,
その ア ミノ酸 量 がこ となる の で
,
窒 素 曷:に おい ても,
貝殻の内層・
外 )曽を区 別して分 析 する 必要がある.
今 後,
貝 殻構造 ご との分析値を出し,
巻 貝の分析値につ い ても実 験例を 多 くし てい くつ もりで ある.
vr
謝 辞こ の研 究に あた り
,
東 京 教育大 学理学部地質学 鉱物学 教 室の, 大 森月衛助 教 授,
秋山雅彦博士に, 終始ご指導をいた だいた
.
厚 くお 礼申しあげる.
また,
貴重 な 標 木 を提 供し てい た だ い た,
理化学 研 究 所の浜田達二 氏 な ら びに早 稲田大 学の西村正衛 氏に深 く謝 意を表 する.
さ ら に,
筆者を化石の研 究に導いて下 さっ た資 源 科 学 研 究所の藤 原 隆 代博士
,
な らび に,
討論や助 言をいた だい た,
化石 研 究 会の 諸氏に深 く感謝する.
文 献
秋「[1雅 彦 (1964a)化石ホ タ テ ガ イ に残存す るア ミ ノ酸
.
」也球平}学
,
72
号・ ,
11−
16.
(
1964b
) 化石ホ タ テ ガイ の殻に ふ くま れ るア ミ ノ酸の定 量 分 析.
地 質 雑,
70巻,
828号,
508−
516.
AT〈TYAMA,
M.
(1966) CQnchielin−
CorrstituentAmino
Acids
andShel1 .
Structures
ofBivalved
Shells,
Proc
.
ノ σ π Acad.
,Vol,
42,
No ,7,800−805.
秋「
.
L「雅 彦・
藤 原 隆 代 〔1966
)縄 文 貝 塚の貝 殻に残っ ている ア ミ ノ酸
.
資源 研 彙 報,67
号,
67−
72.
藤 原 隆 代 〔
1965
) 関 東地方 貝 塚の貝 化 石の ア ミノ酸の時 代に よ る変 化.
文 部省科学 研 究費 (総合)に よ る1964
年 度 巾問報 告,33−36.
HARE ,
P. E .
andABELsoN ,
P. H .
(1965
) AminQAcid
Composition
of
Some
Calcified
Proteins.
Ann.
Rep
.
GeoPliJ, .
∠認 西.
Caγne. g2
σ Jnst.
(1964−
1965),
223
−
232.
橋 木 儒子 (
1966
) 本邦産 7励’
蜘 妬 に残存するア ミノ酸 (亅也質 雑 寸殳
’
Kf , 1
中),
保田正 人
・
土 屋穣・. E
田泰司 (1957 )アー
= ヤ ガ イ貝殻 及 び養 殖真珠の真珠層蛋白質溝成ア ミ ノ酸に っ い て
,
長 崎 大 学 水 産 学 部 研 究 報 告, 第5
号, 41−52・
堀田 進 (1965) 化石 タマ キ ガイに残 存 する ア ミ ノ酸
,
ミク卩
,No .2,7−11.
. . . . . . . .
(1965
)化石 タマ キ ガイ に残 存 するア ミ ノ酸.
地質雑 71巻,842
号,
554−566.
金 子 外 (1964)キエ ル ダ
ー
ル 法の諸 条 件の研究.
口腔 生 化 学の研 究,5
号.
小林 巌雄 (
1964
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地 球 科 学,
73 号,1−12.
一 . . . . . . .
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ミク卩,No ・
2
,19−22.
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,
酸性 粘液多糖類及びPAS 一
陽 性 物 質にっ い て.
硬組織形成機構 研 究グルー
プ会報,1
号.
ToNG
−
YuN Ho (1966) Stratigraphicand
Paleoeco−
logic
Applications
ofWater −lnsoluble
Fraction
ofResidual
She
]】−Proteirls
in Fossil Shells,
Bull.
Geoi
,
Soc,
Amer. ,
Vol,
77,
375−
392.
YAMAsAK 【
,
E ,
HAMADA,
T. ,
and FuJIYAMA,
C. ,
(1966
)
RIKEN
Natural
Radio
CarbDn
Measure
皿 ents ;(
II
).
Radio
Carbon,
No .
8,
324−
339, Nitrogen
analyses
by
micro ・ Kjeldahl
method
ofthe
fossil
shells
yieldedfrom
the
Johmon
shell ・
moundsof
the
Kanto
district
,Japan
by
Kazue
TAZAKI
(Abstract)
NitrogeD both in
the
recent and fossil shells were analysed by 皿 icro−
Kjcldahl method,
the
latter be・ ing
fro
皿 theJoh
皿 on shell−
moullds (2000−
9000 years B.
P.
)inthe
Kanto district,
Japan.
It
is didicult toseparate the organic
metrials
from
calcium
carbo−
nate without any loss especially in
. the
fossilshel
正s ,
so
the I〕itrQgen
analysis
of the shell should becarried out with much calcium carbonate
,
notto
re
皿o
▽e it.
The
writer
is
successful
in
quantita−
tive nitrogenanalysis
of the organic materials with]nuch calciu 皿 carbonate (Fig
.
1).
Both the fQssiIand recent sa皿 Ples analysed are Anadara brough
・
toni,
A .
subcrenata,
Oslreagigas ,
Corbicula ioponica,
C,
leana,
iW /eretrix lusoria,
Mya ゴaPonica and N6尠rita
didyma,
which
are
shown
in
Table
l
withplaces
of occurrence,
absolute ages,
andweight
percentsof
nitrogen
in
the she11.
In
so
far
as
thefossil
shells ofthe
Johrnon
she11−
mounds are concerned