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マウスガードの劣化挙動と構造物性変化に関する研究

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平成28年度 博士論文

マウスガードの劣化挙動と構造物性変化に関する研究

Deterioration mechanism of mouthguard from the perspective of the structural change

13802101 桒原 涼子

(2)

目次

1章 緒言

1-1 マウスガードの歴史と現状 1

1-2 MGの必要性と効果 2

1-3 MGの素材と製作法 4

1-4 これまでのMGについての研究 5

1-5 本研究の目的 6

2章 実験

2-1 材料 13

2-2 試料調製 13

2-3 測定法 14

2-4 統計処理 16

3章 マウスガードの構造変化とその原因

3-1 諸言 22

3-2 実験 22

3-3 結果と考察

3-3-1 MG材料の分析 23

3-3-2 MG使用前後での化学変化 27

3-3-3 MG使用前後での物理変化 27

3-3-4 熱処理による構造変化 30

3-3-5 圧縮サイクル試験による構造変化 32

3-3-6 フィルムの圧縮サイクル試験前後の唾液の影響 33

3-4 結論 33

4章 実使用マウスガードの物理変化の統計的検証

4-1 緒言 60

4-2 実験 60

4-3 結果と考察

4-3-1 複数の使用後のMGの物性変化 61

4-3-2 継続使用可否の感覚と結晶化度の変化 62

4-4 結論 63

5章 MG製作機で製作したシート状EVAサンプルの分析

5-1 緒言 73

5-2 実験

(3)

5-2-1 試料 73

5-2-2 熱処理及び圧縮サイクル試験 74

5-3 結果と考察

5-3-1 MGと急冷フィルム 75

5-3-2 MGへの熱処理の影響 75

5-3-3 MGへの圧力の影響 76

5-3-4 MGへのサーマルサイクルの影響 77

5-4 結論 77

6章 総括 87

参考文献 89

関連論文 94

(4)

1 1 1

1 章章章 緒章 緒緒言緒言言 言 1

1 1

1----1111 マウスガードマウスガードマウスガード(マウスガード(MG((MGMGMG))))の歴史と現状の歴史と現状の歴史と現状の歴史と現状

マウスガード(MG)はマウスプロテクターまたは口(マウス)の中に入れる小片(ピー ス)という意味でマウスピースとも呼ばれ、顎口腔領域の軟組織の外傷を予防あるいは 軽減することを目的として、現在、多くのスポーツで使用されている。

最初のMG の使用は、1892(明治 25)年頃の英国ロンドンの歯科医師が製作したプ ロボクサー用マウスピースである。100 年以上も前の話であるが、当時は試合ごとに選 手の口腔内でゴムを用いて直接MGを製作し、使い捨てであった1-3)。それまではプロ ボクサーは、マウスピースを装着せずに試合をしていたため、歯が折れたり、顎の骨が おれるといった外傷のみならず、繰り返しの脳震盪から脳障害を引き起こして命を落と すこともあったようである。日本では、1925 年に大久保信一氏がボクサー用の MG を 製作したのが最初である2)

2008 年に FDI(国際歯科連盟)が「スポーツマウスガード」の政策声明の発表以来、

数多くのコンタクトスポーツ(身体の接触の多いスポーツ)競技時に、口腔内の歯全体 を覆うような MG の装着が広まっている。MG は上顎歯列を被覆するものが主なもの であるが、場合によっては下顎、上下顎に使用することもある。一般的に MG は、コン タクトスポーツ時の外力、例えば衝撃力を MG の持つクッション効果により緩和し、口 腔内の外傷防止や頭蓋骨にその外力が直接伝達されることを防ぐことで脳震盪等の 軽減を行う。解剖学的にも上顎骨は頭蓋骨に連結されていることからも MG は上顎に 装着するのが一般的である2)

MGにはスポーツ用品取扱店で個人が購入可能である市販タイプ、歯科医師により MG使用者の歯列模型から口腔内にあわせて製作するカスタムメイドタイプが現在使 用されている。Table 1-1にMGの種類をまとめた。市販の製品にはストックタイプとボ イルアンドバイトタイプがある。ストックタイプは既にメーカーの歯列模型に合わせて成 形されているもので、購入者個人の歯列に合わせて調整することができないMGであ る。また、ボイルアンドバイトタイプは熱湯につけて軟化した状態で口腔内において材 料を咬合し、直接成形することで口腔内の状態に合わせるMGである。市販品は安 価であるが、成形が難しく、適切な維持や咬合の付与ができないことから、MG自体の

(5)

機能や安全性にも問題がある。

これに対して、歯科医師が製作そして調整するカスタムメイドタイプには適切な適合、

外形、咬合を与えることができる。カスタムメイドタイプには一枚の MG材から製作する シングルレイヤーMGと数枚のMG材から作るマルチレイヤーMGがある2,4)。カスタム メイドタイプのMGの一例をFig.1-1に示した。Fig.1-1のMGはマルチレイヤーのMG である。マルチレイヤーの MG では数枚のシートを積層することで部分的に厚みを増 したり、異なった色のシートを組み合わせたり、選手の名前やチームのロゴを入れるこ とが可能である2,4)。また、MGの機能面から考えると各個人にフィットしたカスタムメイド マウスガードが有効である。

日本では、ラグビーやテコンドー、ボクシング等のコンタクトスポーツにおいては MG 装着が義務化、または推奨されている競技が少しずつ増している。代表的なコンタクト スポーツ時のMG装着の義務化または推奨に関して2016年9月現在の状況をTable 1-2にまとめた5)。特に、人と人とが直接接触する可能性があるラグビー、アメリカンフッ トボール等では外傷発生頻度は高く、MGを装着してプレーをすることが義務化されて いる。

1 1 1

1----2 MG2 MG2 MG2 MG の必要性と効果の必要性と効果の必要性と効果の必要性と効果

コンタクトスポーツにおける衝突などによる外傷としては、歯の硬組織(歯の表面を おおうエナメル質、歯の歯根部をおおうセメント質等)にひびが入る、割れる、更に歯 が抜け落ちてしまう脱落、そして口唇の裂傷等がある。

歯の破折等のスポーツ外傷をいったん受傷してしまうと、例えば咀嚼といった食べる ことに関する口腔機能や、話す、表情を作るなどの働きに連動する口腔内の審美性、

さらには受傷したことによる不安や心配の憎悪等の心理面へも大きな影響を与え、選 手生命に影響を及ぼす可能性がある。

特に成長期である低年齢層におけるコンタクトスポーツ外傷は、歯列・咬合に成長 発育に著しい影響を与えるためMGの装着が重要視されている。成長期である児童、

生徒においては、乳歯のみの口腔内である乳歯列期から、乳歯と永久歯が混ざって 萌出している混合歯列期、そして永久歯のみの永久歯列期への移り変わりがある。長

(6)

期的にみると肉体的、精神的な問題は成人とは異なり、より大きな影響を与える。2008 年6月に「学校保健法」が「学校保健安全法」に改正され、子どもたちの安全の法的な 背景が明確になっている。しかしながら、中学生・高校生の歯・口の外傷が最も高い野 球やバスケットボールでの MG 装着率は低い状況である。文部科学省では、『「生きる 力」をはぐくむ学校での歯・口の健康づくり』(学校歯科保健参考資料)における第2章 第5節の歯・口の外傷とその予防の項において、MGによる外傷予防について記載し、

MGの理解を促している 6)。このように、学校安全のためのスポーツ歯科医学の面から こども達(低年齢層)のコンタクトスポーツ時においても MG の装着が重要視されてい る。

MGの使用効果には大きく分けて、外傷の予防・軽減、脳震盪の予防・軽減、運動 能力の向上等の3つのことが考えられる。

(1) 外傷の予防と軽減

MGを装着することで外傷の発生や受傷頻度を低下することが報告されている7-20)。 例えば、完全に歯が脱臼する様な外傷においても MG の装着で亜脱臼状態にとどめ ることが可能になり、相手の選手を傷つけることも少なくできる。

(2) 脳震盪の予防・軽減

激しく対戦相手と衝突すると、ぼんやりする・嘔吐する・意識消失する・ふらつく等の 所見がみられる脳震盪を引き起こす。ボクシングではこれによって相手をノックアウトす る。脳震盪は、コンタクトスポーツにおいて年間 20 人に 1 人の割合で経験するとも報 告されている4。しかし、脳震盪は場合によっては、繰り返すことによりセカンドインパク ト症候群、すなわち、一回頭部に打撲を受けて脳震盪を起こすと、二回目の頭部打撲 により再度脳震盪を起こす確率が約4倍になると言われており、この繰り返しが脳への ダメージを広げる 4)。これにより致命傷になる場合もあり、非常に危険である。そのため にもコンタクトスポーツではMGの装着が必要である。

(3) 運動能力の向上

MG を装着すると運動能力が向上するか否かについてはこれまで繰り返し報告がさ れてきたが、まだ十分な科学的な根拠は確立されていない。

(7)

1 1 1

1----3 MG3 MG3 MG3 MG の素材と製作法の素材と製作法の素材と製作法の素材と製作法

カスタムメイドMG製作に用いられる材料は、外力が加わり変形しても元に戻る性質

(弾性)を持った材料が用いられている。実際に用いられている MG 材料を Table 1-3 にまとめた。EVAはエチレンと酢酸ビニルの共重合体であり、成形加工が容易である。

オレフィン系は EVA と比較して変形、変色、劣化等の変質が少なく、耐候性が良いと いわれており、さらにスチレン系は柔軟性に富んでいる21)といわれている。それぞれの 材料の特徴があるがEVAが広く普及している。

EVAは加工性に優れており、MGの製作の際に大きな製作装置を必要としない。実 際に試合や練習等の現場で MG を製作する必要性が生じることがある。その際 EVA であれば製作装置を現場に持ち込み、競技場においてでも短時間に、その場で MG 製作が可能であり、機動性に優れている。また、価格面においても安価に製作するこ とができる。

MGの製作は以下の手順で行う。一連の流れをFig.1-2に示した。

① MG製作装置とMG用シートと歯型模型の準備

選手個人の歯型模型をえるために口腔内診査後、各個人の歯型の印象採得(型ど り)を行い、歯型模型を用意する。歯型模型に合わせてMGを製作する(サーモフォー ミング)ためのMG製作装置と市販MG用材料を用意する。

② サーモフォーミング

MG製作装置に市販MG用材料をセッティング後、加熱する。その後、市販MG用 材料が軟化してきたところで各個人の歯型模型に対し圧接し、徐冷する。

③ 歯型模型の取り出し

歯型模型とMG用材料が室温になったところで、歯型模型とMG用材料を取り外す

(分離する)。

④ MGの完成

③で分離した MGには使用しない部分、細部の余剰部分を切り出し、滑らかにする 等の形態修正後、最終咬合診査を行い、最終的にMG使用者に提供する。

(8)

1 1 1

1----4444 これまでのこれまでのこれまでの MGこれまでのMGMGMG についての研究についての研究についての研究についての研究

EVA(ethylene-vinyl acetate copolymer)は、MG の材料として一般に広く普及し、

様々な研究が行われている22-38)

2007年、Mengら39) は、市販EVA、EVA含有の市販MGシート、EVAに加えてポ リウレタン含有の市販MGシートの熱物性の検討を行っている。その結果、これらの材 料の融解は低温側と高温側に2つの吸熱ピークをもつ幅広い融点範囲を持つ材料で あることを明らかにしている。そして、ウレタン系 MG 材料では、特に高温側の融解挙 動に特徴があることを示している。このことから、MG シートは含有材料により融解に差 があることを報告している。

2001年、D. Tranら40) は市販EVA製MG材料を用いて硬度試験、吸水性の検 討を行っている。その結果、市販EVA製MG材料の厚みを変えても硬度に影響はな かったことを明らかにしている。更に吸水性に関しては、22 ℃、37 ℃において、24 h、48 hの吸水性試験を行い、密度に影響はなかったと報告している。

2012年、蟹江ら41) は市販のMG材料(EVA材料、オレフィン系熱可塑性エラスト マー、スチレン系熱可塑性エラストマー)において、37 ℃で水中3時間振盪後、乾 燥、除菌スプレー洗浄、大気中保管21時間を1, 7, 30, 90, 180日繰り返し、長期また は短期保存と熱サイクル下での弾性率、硬さ、表面粗さ、機械的性質を検討した。そ の結果、各材料間において大きな差はなかったと報告している。

一方で材料としてのEVAに関しては、1974年、奥居ら42)は、EVAの等温結晶化物 の融解挙動から、折り畳み結晶化が共重合単位の組成、共重合連鎖分布、結晶化温 度にも大きく影響されることを明らかにした。

1999年、A. Arsacら43)は、酢酸ビニル含有量5%~40%のEVA試料について、幅 広い融点範囲を持つ試料であることを報告している。

2008年、X. M. Shiら44) は、酢酸ビニル含有量の異なるEVAの融点と結晶化に

おけるAvrami指数を調べ、酢酸ビニル含有量が高いほど、幅広い融解領域を示し、

結晶化しにくいことを明らかにした。

上記の先行研究を総合すると、歯科臨床的観点では市販の MG製作用EVAシー トの融解領域や硬さ、そして水分の影響を調査しているが、材料的視点では検討され

(9)

てこなかった。一方で材料的な面では、EVA の酢酸ビニル含有量が結晶化や熱物性 に与える影響ついて報告されているが、それが医療現場でどのように反映されるかに ついては報告されていない。また、実使用した MG の使用過程における性能変化と MG材料の構造、物性変化を結び付けて議論された報告は無い。

1 1 1

1----5555 本研究の目的本研究の目的本研究の目的 本研究の目的

平成23年8月24日施行のスポーツ基本法第十六条(スポーツに関する科学的研 究の推進等)において、国は、医学、歯学、生理学、心理学、力学等のスポーツに関 する諸科学を統合して、実際的及び基礎的な研究を推進し、これらの研究の成果を 活用してスポーツに関する施策の効果的な推進を図ると謳っている 45)。コンタクトスポ ーツには MG は欠くことのできないものであり、MG の安全面に対して、材料面からの 基礎研究もスポーツに関する科学的研究の推進研究のひとつである。また、平成 24 年3月に出された「スポーツ基本計画」においては、子どもたちの歯・口の外傷予防に MGの大切さに言及している。2020年開催の東京オリンピック、パラリンピックに向けて 子どもたちのスポーツ人口は一層増加すると考えられるため、MG の安全性に関する 研究は重要である。

MGは安全にスポーツを行うための保護装置であるため、その性能劣化に関して把 握する必要がある。MGに用いられるEVAのガラス転移温度(Tg)は約-40 ℃であ る。室温でEVAはゴム状態(Tg以上)であるため、非常にゆっくりではあるが、構造変 化が予想される。MGが使用により構造が変化していくことは、物性変化を引き起こ し、保護装置としての機能が低下していく可能性がある。

現に、臨床現場において、MG使用者の多くが硬くなると感じている。しかしながら、

実際にMGが硬くなっていっているのかについての MG材料の物性解明は進んでい ないのが現状である。

MG が硬くなるということは弾性率の増加を意味しており、MG 本来の装着目的の1 つである衝撃吸収の低下につながることが示唆される。この様にMGの物性変化が生 じた状態での使用は競技者にとっては非常に危険であり、MG を交換すべきである。

しかし、これまで MG の交換時期(使用期限)については特に規定されておらず、MG

(10)

の性能変化も解明もされていない。そのため、MG の劣化機構の解明を行い、MG の 使用に伴う MG材料の構造・物性の変化を明らかにすることは MG を装着し、安全に スポーツを行う上において重要である。

そこで本研究では MG の使用に伴う構造、物性変化を明らかにし、MG の性能劣化 機構を明らかにすることを目的とする。さらに、これを基に MG の交換時期、取扱いに ついて提言することも目的とする。

(11)

Table 1-1 Classification of MG.

種類 使用法

市販タイプ

ストックタイプ 既製品をそのまま使用

ボイルアンドバイトタイプ 既製品を温水につけて軟化後口腔内に 合わせて使用

カスタムメイド タイプ

シングルレイヤー

タイプ 1枚のMG材を用いて製作 マルチレイヤー(ラミネー

ト)タイプ 数枚のMG材を用いて製作

(12)

Table 1-2 The sports obligated or recommended for the player to wear MG.

(As of September, 2016)

競技種目 対象 使用法

ボクシング 義務(国際・国内)

キックボクシング 義務(国際・国内)

空手 義務(一部団体/国際)

全日本空手道連盟(メ ンホー装着者以外), 国 際空手道連 盟 (極 真会館)等。

アメリカンフットボール 義務(国際・国内)

ラグビーフットボール 義務(国際・国内) U-19,U-15 は義務。U-

12は推奨。

総合格闘技 義務(国際・国内)

UFC(米国総合格闘 技),PRID,パン クラス, 修斗等。

ラクロス 義務(女子/国際・国内)

インラインホッケー 義務(18歳以下プレイヤー /国際・国内)

試 合 中だけ で な く練 習中の着用も推奨す る。

アイスホッケー 義務/推奨(国際)

20 歳以下プレイヤー は義 務,そ の他は推 奨。

モーターバイク

推奨(ロードレース、モトク ロス、トライアングル、スー パーモタード)

テコンドー 推奨(国際・国内)

競技エリアに入る前は 装用されているべきで ある。

ホッケー 推奨(フィールド・プレイヤ ー/国際・国内)

バスケットボール 許可(国際・国内)

硬式野球 許可(中・高・大学生,社会 人/国内)

(13)

Table 1-3 MG materials.

MG用材料 材料について 特徴

EVA (Ethylene-Vinyl Acetate Copolymer)

成 形加 工 容易

オレフィン系熱可塑性エラ ストマー

または 耐 候性良

スチレン系熱可塑性エラスト マー

柔軟性・弾 力 性 に優 れている

(14)

Fig. 1-1 Custom made type MG (Tokyo dental college).

(15)

Fig. 1-2 Processing of MG preparation : ①Processing device and MG sheet ② Melting ③ Take off

〔Photo:Tokyo dental university〕

Processing device and MGsheet

Melting ③ ③ ③ ③ Take off

Mouthguard

MG 製作装置 製作装置 製作装置 製作装置

MG 材料 材料 材料 材料 歯列模型 歯列模型 歯列模型 歯列模型

(16)

2 2 2

2 章章章 実験章 実験実験 実験

本論文で共通に用いた材料、試料作製法、測定法を以下に示した。特に記載が無 い限りは以下の通りである。

2 2 2

2----1111 材料材料材料 材料

MG用材料

MG製作には厚さ3 mmの市販のDrufosoft® EVAシート(Dreve Dentamid社製、

Lot.No.2012-1165、ドイツ)を用いた。

フィルム作製用材料

フ ィル ム 作 製 に は poly(ethylene-co-vinyl acetate) (EVA)、 (Scientific Polymer Products、 Inc. USA、酢酸ビニル含有量 28%、14%、9%)を用いた。以下、酢酸ビニ ル含有量(28%、14%、9%)に対応して各試料をEVA28、EVA14、EVA9と表す。

2 2 2

2----2222 試料調製試料調製試料調製 試料調製

MGの製作法

群馬県立前橋高等学校および桐生第一高等学校の男子高校生ラグビー選手に対 して、群馬県ラグビーフットボール協会メディカル委員会歯科医師らをはじめとした群 馬県歯科医師会歯科医師らが共同で歯型模型の印象採得(型取り)を行った。これよ り製作した個人個人の歯型模型を用いることにより、東京歯科大学口腔健康科学講座 スポーツ歯学研究室歯科医師らにおいて、Fig.1-2 に示した手順に従い、Drufosoft®

EVAシート、MG製作機Drufomat SQ(Dreve Dentamid社製、ドイツ)を用いて、サー モフォーミングにより MG を製作した。製作した MG を約 10 ヶ月使用し、研究用試料 とした。これらは、東京歯科大学倫理委員会の承認(承認番号 437)のもと実施した。

フィルム作製法

急冷フィルムはEVA28、EVA14、EVA9を用い、TESTER SANGYO TABLE TESTPRESSA-303を用いて作製した。縦3 cm、横7 cm、厚さ0.3 mm及び3 mmの

(17)

スペーサーを用い、230 °Cで5分間溶融した後、空気抜きを1分行い、45 MPaで圧 縮を10分行うことでフィルムを作製した。作製したフィルムを冷水(0 °C)で急冷するこ とで急冷フィルムを得た。

また、フィルムを作製後、25 °Cの恒温槽(M-230FN、Taitec Corporation、埼玉)中 で、徐冷することで徐冷フィルムを得た。

2 2 2

2----3333 測定法測定法測定法 測定法

溶液13C-NMR測定

試料を重クロロホルムに溶解し、Bruker 社製 DSX300WB により溶液 13C-NMR 測 定を行った。測定は1Hデカップリング下、30°パルスを用いて行った。

示差熱・示差重量同時(TG-DTA)測定

TG-DTA測定はRigaku製TG8120熱重量(TGA)測定装置を用いて行った。TG- DTAは、対照物質としてアルミナを用い、窒素雰囲気下、昇温速度10°C /minで

30 °Cから500 °Cまでの温度範囲で測定を行った。また、試料容器はアルミニウムパ

ンを用い、試料量を約10 mgとした。

13C CPMAS NMR測定

13C CPMAS NMR測定はAVANCE III DSX300WB(ブルカー・バイオスピン社製、

神奈川)を用いて行った。共鳴周波数は75 MHz、試料(約0.03 g)を外径4 mmのジ ルコニア製シリンダー型試料管に詰め、試料管の回転数を約4 kHz、接触時間および 繰り返し時間を、それぞれ2 msおよび5 sに設定した。測定はCross Polarization

Magic Angle Spinning(CPMAS)法を用いた。得られた信号をフーリエ変換してスペクト

ルとし、化学シフトの基準は外部標準としてアダマンタンの高磁場ピークを29.47 ppm とした。

測定したスペクトルは一般的な固体のNMRスペクトルのピーク形状であるガウス関 数を用いてピーク分離を行い、既に報告されている結晶相(33.0 ppm)と非晶相(31.0

ppm)の化学シフトを用いて、それぞれの相の割合46-48)の算出を行った。

(18)

1HパルスNMR測定

1HパルスNMR測定は、JEOL MU-25NMR分光計(日本電子社製、東京)を用い

て行った。試料は、固体高分解能NMR測定に用いた試料(約0.03 g)を外径10 mm のNMR試料管に詰め、Solid Echo法で行った。Solid Echo法は短いT2を求めるた めにデッドタイムを見かけ上取り除く手法で(90° x’-τ-90° y’-τ-[echo])のパルス系列であ る49)。90°パルスを2 µs、繰り返し時間を5 sとして室温で測定を行った。

得られた自由誘導減衰(FID)の解析はフィッティングにより行い、横緩和時間(T2)と その強度(A)を求めた49,50)。パルスNMRの減衰曲線は高分子の分子運動に依存し て様々な関数系に従う事が知られている51)。結晶化度の非常に高い結晶性高分子や Tgよりかなり低温のガラス状態にある高分子で分子運動が非常に束縛されている場 合には双極子相互作用の分布が矩形に近いためにガウス-サイン関数となる。また、

結晶性高分子の結晶相やガラス状高分子では双極子相互作用の分布が先の矩形か ら少し広がりガウス型になるのでその減衰曲線の多くはガウス型である49)。一方、結晶 と非晶の中間相においてはワイブル関数となることが知られている。中間相をフィッテ ィングする際にはワイブル係数が1~2の値をとり、このことが緩和時間の分布を意味 している。非晶相、溶液、液体では指数関数で減衰する。EVAは結晶成分を含むが、

結晶化度はそれほど高くなく、ガウス-サイン関数は必要ないと考えられる。このことか ら、これらの関数を組み合わせることにより、フィッティングを行い最適なフィッティング 式を検討した。

フィッティングは得られた自由誘導減衰の最大値(t=0)を1に規格化して、複数の 関数の強度、スピン-スピン緩和時間を変化させ、実測とフィッティングの差が最小にな ることで行った。

Fig.2-1にフィッティングの例(下)とフィッティングと実測の差(上)を示した。2成分の 指数関数でフィッティングを行うとFig.2-1(a)の様に、200 µsec以下のところで実測とフ ィッティングの差が大きいことがわかる。この部分を補うためにさらに指数関数を加え3 成分でフィッティングした例がFig.2-1(b)である。Fig.2-1(a)よりは改善されたが、わずか

に100 µsec以下の部分に差がある。そこで、ガウス関数と2つの指数関数でフィッテ

(19)

ィングした例をFig.2-1(c)に示す。実測とフィッティングの差はほとんど無く、非常に良く フィッティングされていることがわかる。

本論文の他の試料もこの関数がフィッティングに適していたので以下の(式1)を用い て3成分でフィッティングを行った。

Mሺtሻ= ܣ݁ି

೅మೝ ݁ି

೅మ೔݁ି

೅మ೘ (式1)

ここで、Aは成分割合、T2はスピン-スピン緩和時間である。T2は分子運動の速さと 関係しており、T2が短いほど分子運動性が束縛されていることを意味し、材料としては 硬いことを意味している。得られた3成分をT2の短い成分からRigid成分、

Intermediate成分、Mobile成分としてT2r T2i T2mをそれぞれの横緩和時間、ArAi Amを各成分の強度とした。

DSC(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量)測定51,52)

DSC 測定は Diamond DSC(Perkin Elmer 社製、横浜)を用いて行った。試料約 0.003 gに対して窒素雰囲気下、20 °C~110 °Cの温度範囲を昇温速度10 °C /min、

降温速度10 °C /minの条件で測定を行った。なお、DSC測定を行うにあたり、温度お

よび熱量の校正はインジウムおよびスズを用いた。

圧縮サイクル試験

圧縮サイクル試験は Strograph E3-L(東洋精機製作所社製、東京)を用いて室温で 行った。設定荷重150 N、 速度100 mm/min、約3秒に1回の頻度で行った際の、荷 重および歪量の変化の例をFig.2-2に示した。

22

22----4444 統計処理統計処理統計処理統計処理

臨床データ(アンケート等)の有意差を検証するために、統計処理による有意差検 定が広く用いられている。本研究においても臨床データを評価するために統計処理を 行った。

(20)

統計的有意差の検定には数多くの検定方法が使用されている。例えば、ノンパラメ トリック(正規分布しない)のMann-Whitney UtestやWilcoxon signed-rank test、そして パラメトリック(正規分布する)のStudent t-testやPaired t-testである53)

本研究においては、EVA製MG使用後の継続使用の可否について100mmVAS

(Visual Analogue Scale)スケールを用いてアンケート調査を行った。Fig.2-3に用いた

100mmVASスケールを示した。MG使用者は一番左端が継続使用できない、一番右

端を継続使用できるとして、これまで使用してきたMGの継続使用の可能性がどの程 度かを縦線を入れることで示す。このアンケート結果において、VASスケールの真中

(50 mm)を境に50 mmより右をMG使用後のさらなる継続使用可50 mmより左を

MG使用後のさらなる継続使用不可とした。このアンケート結果とEVA製MGの物性 評価値の相関を調べるために、統計処理をMann-Whitney U検定(p<0.05で有意 差ありとする)で行った。Mann-Whitney U検定はノンパラメトリック検定であり、2つの 集団の母集団が同じであるとした帰無仮説に基づいて2組の標本間の大小の有意差 を検定する手法である。

(21)

(a)

(b)

(22)

(c)

Fig. 2-1 (a) Curve fitting by two exponential functions.

(b) Curve fitting by three exponential functions.

(c) Curve fitting by one Gaussian and two exponential functions.

(23)

Fig. 2-2 Stress-strain curve during the press cycle experiment.

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180

0 0.5 1 1.5 2

Strain (mm)

S tr es s ( N )

(24)

Fig. 2-3 VAS (Visual Analogue Scale).

(25)

3 3 3

3 章章章 マウスガードの構造変化とその原因章 マウスガードの構造変化とその原因マウスガードの構造変化とその原因 マウスガードの構造変化とその原因

3 3 3

3----1111 緒言緒言緒言 緒言

MG はスポーツ競技中の衝撃などによる外傷を防ぐために有効であり、多くのコンタ クトスポーツにおいて使用が義務化されている。実際に、現在では多くの競技者が使 用している。一方で、使用者からは長期間使用することで硬くなると報告を受けている。

MG は軟く、変形することで衝撃を吸収し、使用者を外傷から守る。もし、MG が硬くな るとMGの機能としては低下し、機能劣化したことになる。しかしながら、MGの劣化に 関しての研究はこれまでになされていない。MG の機能劣化の原因としては化学変化、

物理的変化が考えられる。化学的変化としては一次構造が変化することであり、分子 間での反応や分子鎖の切断等である。一方、物理的変化としては凝集状態の変化、

結晶、非晶状態の変化が考えられる。本章ではこの点に着目してEVA製MGの機能 変化が生じる原因について明らかにする。

3 3 3

3----2222 実験実験実験 実験

MG用材料

MGおよびフィルム試料の調製は2 章に示した通りである。MG用の市販の材料の 酢酸ビニル含有量を決めるためにBioplast、Ercodent、Drufosoft、VFの4種類のMG 用EVAシートを用いた。

急冷フィルムの熱処理

EVA9、EVA14、EVA28の0.03 cm厚フィルムを恒温槽(EYELA製VOS 201D、 東京)を用いて、60 °C、80 °C、100 °Cで1時間熱処理後、冷水(0 °C)で急冷し、そ れぞれの熱処理後フィルムとした。

圧縮サイクル試験

0.30 cm厚急冷フィルムEVA28、 EVA14、 EVA9を縦×横×高さ2 cm×2 cm×0.30 cmに切り出し、設定荷重は咬合の際の平均的な力と同等である800 N、 速度100

(26)

mm/minで、 室温にて圧縮サイクル試験を行った。圧縮回数は5000回、10000回と した。

実際にMGに加わる最大の力は衝突時などであり、平均の力よりさらに高くなるの で試料に加わる力が変化した時の影響を確認するためにEVA28を縦×横×高さ(1.2 cm×1.2 cm × 0.30 cm)に切り出し設定荷重864 N、 速度100 mm/minで圧縮サイクル 試験回数を10000回行った。

唾液中の影響を調べるために唾液中に浸した状態での圧縮試験を行った。この際、

唾液(saliva)は帝人ファーマ製人工唾液サリベート®エアゾール54)を用いた。

高校生ラグビー選手の使用後のMG

MG の使用後、および、未使用部分を次の様に定義した。MG 製作で EVA シート の余剰部分(サーモフォーミング後の未使用部)を未使用部とした。Fig.3-1(a)に、歯列 中における歯番号を示した。Fig.3-1(b)に歯接触分析装置であるバイトアイ(ジーシー 社製、東京)の結果を示した。バイトアイとは咬合接触状態を可視化する方法であり、

Fig.3-1(b)において赤い部分が強く咬合されている部分である。一般に強く咬合される

16番歯に着目し、Fig.3-1(b)において赤く咬合が認められた部位を咬合部、16番歯咬 合面において咬合が認められない部位を非咬合部、そして16番歯に対応する頬側を 頬側部とした。測定試料は実使用されたMGの16番歯咬合部、非咬合部、頬側部お よび未使用部から切り出して測定試料として用いた。

ここで、測定に用いた MG の測定試料は、次のように名付けた。x 番の使用者の EVA製MGをMGxとし、咬合部、非咬合部、頬側部および未使用部は、それぞれ、- occ(咬合部)、-non(非咬合部)、-buc(頬側部)および-φ(未使用部)を付記した(例え ば、使用者1番が使用したEVA製MGはMG1で、その咬合部はMG1-occとした)。

本章では1番のMGのみを取り扱う。

33

33----3333 結果と考察結果と考察結果と考察結果と考察 33

3-3---3333--1 MG--1 MG1 MG1 MG 用材料の分析用材料の分析用材料の分析用材料の分析

Fig.3-2に市販の4種類の MG用EVAの溶液13C NMRスペクトルを示した。スペ

(27)

クトルはカルボニル基の強度で規格化を行っているため、エチレンの含有量が多けれ ば相対的にCH2のピークが強くなる。Fig.3-2(a)は、スペクトル全体図を示したものであ る。CH2 のピーク強度はどの市販の材料においても同じである。市販の材料は同程度 の酢酸ビニル含有量であると考えられる。Fig.3-2(b-d)に拡大図を示した。Fig.3-2(b)は カルボニル炭素の領域である。4 種類ともピーク位置、形状が似ている。Fig.3-2(c)は 酢酸ビニルの CH炭素(Cα)である(Fig.3-3(A))。この炭素の化学シフトは重合連鎖の 違いにより化学シフトが異なる。Fig.3-2(c)中に帰属を示した。例えば約 74.5 ppm のピ

ークはCα(EEVEE)と帰属されている。このピークは両側を2つのエチレンユニットに囲

まれた酢酸ビニルユニットの Cα 炭素のピークである。それ以外のピーク関しても下線 で示した酢酸ビニルユニットのCα炭素のピークを示している。この領域においても4種 類の MG 用 EVA の構造に差はほとんどないことがわかる。Fig.3-2(d)はメチレン炭素 のピーク領域である。メチレン炭素についても重合連鎖の違いにより化学シフトが変化 している。その帰属をスペクトル中に示した。例えば、約25 ppmのピークはC2(VEEV)

であり、Fig.3-3(B)に示すように VEEV という重合連鎖中の 2 のメチレンのピークであ

る。一方、C1(VEEV)は Fig.3-3(C)に示すように上矢印のついた酢酸ビニルユニットが 逆方向に結合した連鎖である。このように帰属された各ピークの強度を比較するとCH2

の領域においてもピーク位置、強度ともに同程度であり、4種類のMG用EVAのスペ クトルに差異はみられなかったことから、これら 4 種類の材料は同様の構造を持つ材 料であると考えられる。

Fig.3-4(a)は、EVA9、 EVA14、 EVA28およびDrufosoftの溶液13C NMRスペクト ル全体図を示したものである。このスペクトルにおいてもFig.3-2と同様にC=Oで強度 を規格化している。そのためエチレン成分が多い程、CH2のピーク強度が強くなる。実 際にCH2のピーク強度はEVA9>EVA14>EVA28となっている。これらと比較すると MG材料であるDrufosoftのピーク強度はEVA28とほぼ同じであることが分かる。ま た、各ピーク強度比もEVA28とDrufosoftは同程度であることから連鎖分布も同程度 であることがわかる。

Fig.3-4(b-d)に拡大図を示した。Fig.3-4(b)の約171 ppmに観測されるC=Oピーク について酢酸ビニル含有量が多いEVA28において一番S/Nが良く観測された。

(28)

Fig.3-4(c)においては約74 ppmのピークはCα(EEVEE)つまり、前後をエチレンユニッ ト2個に囲まれた酢酸ビニルユニットのCH炭素のピークであり、酢酸ビニル含有量が 少ないものほど強度が強く出ている。酢酸ビニル成分が少ないと、当然、孤立する酢 酸ビニル成分が多く存在するのでEEVEEの強度も強くなるはずである。また、約74 ppmの肩ピークはEEVEV連鎖中の中央の酢酸ビニルのCH炭素(Cα(EEVEV))と、

VEVEV連鎖の中央の酢酸ビニルのCH炭素(Cα(VEVEV))のピークである。更に約

70 ppmのピークはVVE連鎖のメソ体の中央の酢酸ビニルのCH(Cα (m, VVE))と VVE連鎖のラセモ体の中央の酢酸ビニルのCH(Cα(r, VVE))のピークであり、その強 度は酢酸ビニル含有量が多い程連続したVユニットの確率が高くなるためEVA28に おいて強度が高かった。

Fig.3-4(d)において CH2のピークは酢酸ビニル含有量が少ないものほどピーク強度

が強く観測された。このピークはC3(VEEV)とC3(EEEE)に帰属される。約34 ppmのピ ークは C1(VEEV)であり、約 34 ppm の肩ピークは C1(VEEV)に帰属され、約 25 ppm のピークは C2(VEEV)に帰属される。約 20 ppm のピークは CH3(V)由来のピークであ り、酢酸ビニル含有量が多いものほど強くピーク強度が観測された。また、約 20 ppm

前後の CH3(E-branch)由来のピークは酢酸ビニル含有量が少ないものほど、即ち、エ

チレン鎖末端の量が多いものほどピーク強度が強く観測されていた。

さらに、組成を検討するために、TG-DTA 測定を行った。それぞれのEVAにおける TG-DTAの結果をFig.3-5(a~g)に示した。Fig.3-5より、いずれにおいてもFig.3-5(a~ g)は約300 °C~400 °Cにおける第一質量減少と約400 °C~500 °Cにおける第二質 量減少を示した。Fig.3-5(a~g)において、約 300 °C~400 °C における第一質量減少 は、酢酸ビニルの酢酸部分の脱離によるものであると考えられる。また、約 400 °C~

500 °Cにおける第二質量減少は酢酸ビニルの主鎖およびポリエチレンの分解によるも

のであると考えられる55)

第一質量減少の割合は、4 種類の MG 用 EVA 間は大きな差異はなかった

(Bioplast: 23%、 Ercodent: 21%、 Drufosoft: 23%、 VF: 21%)。このことからも4種類 の MG 材料はほぼ同じ酢酸ビニル含有量であることが分かる。EVA28、 EVA14、 EVA9 については酢酸ビニル含有量が多い程、第一質量減少の割合が大きかった

(29)

(EVA28: 21%、 EVA14: 13%、 EVA9: 6%)。市販のMG材料とEVA9、 14、 28の第 1質量減少を比較すると、4 種類のMG 用EVAは EVA28と第一質量減少割合が類 似していることから、酢酸ビニル含有量も同程度含まれていることが示唆される。これ

は、溶液13C NMR測定の結果とも一致する。

次に、融解挙動を調べるためにDSC測定を行った。Fig.3-6に市販の4種類のDSC チャートを示した。DSC の結果においてもどの材料も同様の融解挙動を示しており、こ のことからも市販のMG材料は同様な組成であることが分かる。

Fig.3-7にEVA9、 14、 28とDrufosoftの融解曲線を示した。Fig.3-7において、

EVA14とEVA9昇温過程の融解曲線では30 °C付近からゆるやかに融解し始めてい

たが、その融解は約90 °C以降~100 °C付近まで続いていた。EVA28の融解は EVA9、 14と同様に30 °C付近から始まり、70 °C付近で終わっている。酢酸ビニル 含有量が少ないほど融解が高温まで続いていた。市販のMG材と比較すると、

EVA28が市販のMG材料と近い融解曲線を示している。EVA9、 14、 28および MG用EVAの融解は広い温度範囲で生じていた。一般に高分子の融点はラメラ厚に 依存しており、ラメラが厚い程、融点は高温になる。各種EVAにおいて融解温度範囲 が広いということは、酢酸ビニル成分が欠陥としてポリエチレンの結晶化を妨げる結 果、メチレン鎖により構成されるラメラが薄いものから厚いものまで幅広く分布するため である。更に、酢酸ビニル含有量の違いによる融解曲線の違いを比較すると、酢酸ビ ニル含有量が少ないほど融解ピークが強く、融解終了温度も高温である。これは酢酸 ビニル含有量が少ないほどエチレン連鎖が長く厚いラメラ結晶が成長し、結晶量が多 くなるためである。つまり、酢酸ビニル含有量が少ないほど結晶化しやすいことがわか る56,57)

Fig.3-8 に EVA9、 14、 28、Drufosoft sheet の冷却曲線を示した。結晶化温度は EVA9、 14、 28, Drufosoft sheetに対して80 °C、 70 °C、 48 °C, 51 °Cと酢酸ビニル 含有量が多い程低温に移動した。そして、EVA28 と Drufosoft sheet はほぼ同じ結晶 化温度であった。高分子の結晶化温度は分子鎖の分子運動性と結晶核の生成に依 存している。結晶化温度が高いということは高温で分子運動が束縛され核生成が多く なることを意味している。酢酸ビニル含有量が少ない、つまりエチレン成分が多い程、

(30)

高温で分子鎖同志の相互作用が強くなり結晶化し易くなることがわかる。逆に酢酸ビ ニル成分は結晶を生成するエチレン同士の相互作用を弱めていることがわかる。

以上、市販のMG用EVAとEVA9、 14、 28を比較すると、EVA28のものと類似し ている。これにより、MG 用 EVA は 28wt%程度の酢酸ビニルを含んでいることが示唆 された。

3 3 3

3----3333--2--222 MGMGMGMG 使用前後での化学変化使用前後での化学変化使用前後での化学変化使用前後での化学変化

MG の使用過程における劣化の原因には化学的および物理的要因が考えられる。

まず、化学的変化を検証するためにMGの使用前後の溶液13C NMR測定を行った。

その結果を Fig3-9(a~d)に示した。Fig.3-9(a)はピーク全体の結果を示した。ピーク位 置、強度ともに、ほとんど変化が無いことがわかる。さらに詳細に検討するためにFig.3-

9(b-d)にスペクトルの拡大図を示した。Fig.3-9(b-d)のいずれのスペクトルにおいてもピ

ーク強度の変化、化学シフトの変化は無く、更に新たなるピークも確認できないことか ら、化学的変化は無いことが確認された。

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3----3333--3--333 MGMGMGMG 使用前後での物理的変化使用前後での物理的変化使用前後での物理的変化使用前後での物理的変化

MG 使用前後での化学的変化は確認できなかったことから、次に物理的変化につ いて検討する。EVAは酢酸ビニル含有量に依存して結晶相と非晶相の割合が変化す る。酢酸ビニル含有量が50%を超えると結晶は存在しないが、それ以下であれば結晶 相は存在する 58)。MGに用いられるEVAは酢酸ビニル含有量が約28%であるので、

結晶と非晶が存在する。これらの割合が変化すれば弾性率も変化することから MG の 使用に伴う変化はこれに起因する可能性がある。そこで、使用前後のMGの固体高分 解能13C NMR測定を行った。

MG1 について、MG1-φ(未使用部)、MG1-non(16 番歯非咬合部)、MG1-occ(16 番歯咬合部)および MG1-buc(16 番歯頬側部)の 13C CPMAS NMR スペクトルを、

Fig.3-10 に示した。33 ppm のピークは EVA のメチレン(CH2)の結晶相に由来するピ ークである46-48)。31 ppmおよび 22 ppmのピークはそれぞれ、CH2の非晶相、アセチ ル基(Ac)のメチル(CH3)のピークである46-48)。27 ppm付近にピークが存在するが、こ

(31)

のピークは酢酸ビニルの結合した炭素から2つ目の CH2(Fig.3-3(B-D)の2の炭素)に 由来するピークである。

Fig.3-10 より MG1-φ においては結晶部のピーク強度は非晶部に比べてかなり小さ

いことが分かる。これに対し、MG1-non、MG1-bucではMG1-φに比べて少し結晶ピー クが増加しており、特に MG1-occ においては結晶ピークの強度が非晶ピークより強く なっている。ここで、13C CPMAS NMR スペクトルにおいて、ピーク強度の絶対値に定 量性はないが、相対的な量の目安になる。よって、MG1-φ に比べて MG1-non、

MG1-buc、MG1-occの結晶成分の割合が高いことを意味している。

これら 4 種の試料は MG 製作後の時間経過は同じである。そのため、仮に時間経 過によって結晶が成長していたとしても同程度のはずである。そのため、MG1-φ に比 べて MG1-non、 MG1-buc、 MG1-occ の結晶の割合が多いということは MG の使用 により結晶成長が促進されたことを意味している。また、中でも MG1-occ 咬合部の結 晶成分が最も多く、結晶成長が促進されたことが分かる。

MG1-occ は咬合により最も圧縮される部分である。これを考慮すると、MG1-occ の

結晶相ピーク強度が最も多いということは加わる圧力(咬合圧)により結晶化が最も進 行したと考えられる。また、気温が体温を上回ることはほとんどないことを考慮すると、

口腔内は室温より高い状態であり、非咬合部、頬側部でも結晶相が多いということは 温度変化が結晶相の増加を促進したと考えられる。

13C CPMAS NMR測定結果で得られた結晶成分の増加は、MGの硬い成分の増加

を意味しており、MG 全体の分子運動性の低下につながることが推測される。このこと を確認するためにパルス NMR測定を行った。パルスNMR測定の結果、全ての試料

(occ、 non、 bucおよびφ)において得られたFIDは3成分(Rigid成分、Intermediate

成分、Mobile 成分)でフィッティングをすることができた。フィッティングの結果、得られ

た MG1-occ、 MG1-non、 MG1-buc および MG1-φ の成分割合 A、緩和時間 T2 を Table 3-1 に示した。各試料とも T2r T2i T2mはそれぞれ約 10、 60~80、 数百 µs である。T2は分子運動の速さに関係しており、T2が短いほど分子運動が束縛されてい ることを意味している。Rigid 成分の緩和時間(T2r)に注目すると MG1-φ>MG1-buc>

MG1-non>MG1-occの順で短くなっており、この順で分子運動が束縛されていることが

(32)

分 か る 。 ま た 、 成 分割合 (Ar) も同じ 順で増 加し て お り(MG1-φ<MG1-buc<MG1-

non<MG1-occ)、咬合部のrigid成分の分子運動がより束縛され、その割合が増えてい

ることがわかる。これは13C CPMAS NMR スペクトルより得られた結晶成分の増加と一 致した。

一方、Intermediate 成分、Mobile 成分に注目すると MG1-φ に比べて MG1-occ の T2i T2mは増加しており、分子運動性が高くなっている。13C CPMAS NMR の結果で は結晶成分が増加していたので分子運動性が低下するはずであるので矛盾している。

一般にパルス NMR の結果を議論するときには T2だけに注目してしまうとしばしば間 違った解釈をしてしまう恐れがある。T2iT2mの成分比AiArに注目すると、occのAi

Arはφに比べて減少している。つまり、occのIntermediate成分とMobile成分のT2

は長くなるがその割合は減少している。これは次のように解釈することができる。結晶 は分子運動の束縛された Rigid 成分であり、その近隣の分子鎖は結晶成分のために 分子運動性が束縛されている。その部分が Intermediate 成分である。さらにその Intermediate成分の近隣に Intermediate成分よりも分子運動性の高い Mobile成分が 存在している。結晶が生長するためには結晶核が存在し、それに対して分子鎖が揃う 必要がある。結晶成分が近傍に存在するため Intermediate成分が Mobile 成分より結 晶化し易いと考えられる。一方、Intermediate成分が結晶化すると、その影響はMobile 成分にも及び、Mobile成分からIntermediate成分へ変化する成分も存在すると考えら れる。この様な変化により、Rigid 成分は大きく増加し、Mobile 成分は大きく減少し、

Intermediate 成分は少しだけ減少したという結果になったと考えられる。また、T2i に関

しては T2i の成分の中の比較的短い成分が結晶化することで T2iの平均としての値が 長くなったと考えれば解釈することができる。

この変化の概略をFig.3-11に示した。ここで、T2の値は実際には各成分において分 布があり、解析結果は各成分の分布の平均値を示している。Intermediate 成分と Mobile成分のT2が増加したのは結晶化による各成分間の移動により、Intermediate成

分およびMobile成分のT2の長い成分の割合が増加したためと解釈することができる。

このように考えると、結晶化によるMGの硬化と矛盾しない。

上述のように、パルス NMR の結果を成分分離することで解釈することは材料の物

(33)

性を議論する上で重要であるが、任意性が入ることがしばしば生じる。単に試料全体 の平均として硬いか柔らかいかの目安が必要であればパルス NMR より得られた信号 成分の面積を求める方法がある59,60)。これは単に面積を求めるだけであるので任意性 が入ることはない。パルス NMR より得られる FID の t=0 の値を 1 に規格し t=0~ 1000µsecのFIDと横軸(A=0)で囲まれた面積を求めた。その結果をTable 3-1の一番 右の列に示した。これをみるとMG1-occの値は明らかに他のものより小さい値であるこ とが分かる。つまり、MG1-occ は 1 シーズン使用後で試料がかたくなっていたことが分 かった。

13C CPMAS NMR 測定およびパルス NMR 測定の結果から、MG1-φ と比較して

MG1-occにおいては結晶相の増加と分子運動性の低下が確認できた。そこで、MG1-

φとMG1-occのDSC測定を行った。Fig.3-12 に、20 °C~110 °Cの温度範囲を昇温 速度10 °C /minの条件で行った結果を示した。Fig.3-12においてMG1-φとMG1-occ の両試料で30 °C以上で融解が開始し、80 °C 以上で融解が終了している。これらの 融解範囲は Fig.3-6、Fig.3-7 と同様である。また、MG1-occ では MG1-φ と比較して、

約50 °Cに新たな融解ピークが確認できる。MG1-φにおいても約48 °Cにピークが存

在するがそれよりも高温側に移動している。新しいピークが現れるということは、結晶成 分が生じたことを意味しており、NMRの結果と一致している。

以上の結果より、MG を使用することにより、結晶成分の増加および分子運動の束 縛された成分が確認された。つまり、結晶化が進行することが明らかになった。通常、

MG は口腔内で使用するため室温より高温にさらされる。さらに、咬合圧といった圧縮 も加わり、唾液の影響もあると考えられる。次に、これら結晶化の原因について検討す る。

3 3 3

3----3333----4444 熱処理による構造変化熱処理による構造変化熱処理による構造変化熱処理による構造変化

MG 使用による結晶化度の増加に対して、温度、圧力および唾液の影響が考えら れる要因である。また、MG 用材料は酢酸ビニル含有量が約 28%であるが、酢酸ビニ ル含有量を変化させ、それらの要因の影響を検討することで EVA の結晶化の一般的 な傾向を明らかにすることができる。そこで、結晶化に対する EVA の酢酸ビニル含有 量の依存性を明らかにするために、まずはフィルムの熱処理を行うことで温度の影響

(34)

を確認した。

EVA9、 EVA14、 EVA28フィルムの熱処理前後の 13C CPMAS NMR 測定結果を Fig.3-13(a~c)に示した。Fig.3-13(a)は EVA9、Fig.3-13(b)は EVA14 の 13C CPMAS NMR測定結果である。EVA9と EVA14は、ともに、unannealedフィルムの結果と比較 して、熱処理温度60 °Cおよび80 °Cでは、結晶相のピーク強度は増加した。そして、

熱処理温度 80 °C においては最大結晶ピーク強度が観測された。一方、熱処理温度

100 °C では unannealed フィルムの結果と似ているスペクトルが観測された。これは熱

処理温度100 °Cでは試料が融解しているためである。

Fig.3-13(c) においてunannealed フィルムの結果と比較して、熱処理温度 60 °C で は結晶相のピーク強度は増加しており、最大結晶ピーク強度であった。一方、熱処理 温度80 °C、 100 °Cではunannealedフィルムの結果と似ているスペクトルが観測され た。これは熱処理温度80 °Cおよび100 °Cでは試料が融解しているためである。

EVA9、 EVA14、 EVA28フィルムの熱処理前後のSolid Echo法でのパルスNMR 測定結果を Table 3-2 に示した。EVA9 の結果および EVA14 の結果は、熱処理温度

80 °CまではRigid成分は増加し、そして緩和時間が減少していた。熱処理温度80 °C

ではRigid成分が最大であり、さらに熱処理温度80 °CのRigid成分の緩和時間は最

小であった。しかし、熱処理温度 100 °C での Rigid 成分比と緩和時間は unannealed のものと類似していた。これは、熱処理温度100 °Cでは融点を越した状態においての 熱処理であり、溶融してしまう温度であるために、試料作製の際に溶融して作製した

unannealedの試料と類似した結果になったと考えられる。

EVA28 の結果では、全体的に熱処理前後で緩和時間、成分比に大きな差は現れ

ていない。ただし、60 °Cの熱処理ではT2が全成分において小さくなっている。そのた めに全体的に硬くなっていることを意味している。

EVA9、EVA14、EVA28フィルムの熱処理前後のDSCの昇温測定結果をFig.3-14(a

~c)に示した。Fig.3-14(a)は EVA9 の結果である。EVA9 の unannealed フィルムは約

90 °Cに融解のピークが存在する。融解は約 30 °C付近から開始している。低温付近

に観測されるピークはメチレン鎖長の短い、もしくは酢酸ビニル成分に囲まれている成 分のピークと考えられる。EVA9の60 °C熱処理では約70 °C 付近に融解ピークが確

(35)

認された。これは熱処理により生成した結晶の融点が約 70 °C 付近であると考えられ る。熱処理 80 °Cでは融解終了 90 °C付近に結晶の融解ピークがあり、これも80 °C で生成した結晶が 90 °C 付近に融解ピークとして観測されたものである。熱処理 100 °Cでは、unannealedフィルムの結果と類似していた。これは熱処理温度100 °Cで は溶融したためである。

Fig.3-14(b)は EVA14の結果である。EVA14の unannealedフィルムにおいては、約

80 °Cに融解ピークが存在する。熱処理60 °Cでは約70 °C付近に融解ピークが確認

された。熱処理 80 °C においても約 90 °C 付近に結晶の融解ピークがある。これらは 熱処理により、生成した結晶が現れたものである。熱処理100 °C では、unannealed フ ィルムの結果と類似していた。これは熱処理温度100 °Cでは試料が融解しているため である。

Fig.3-14(c)は EVA28 の結果である。EVA28 の unannealed フィルムにおいて、約

40 °C付近と約80 °C付近に幅広いピークが観測された。熱処理60 °Cでは約70 °C

付近に融解ピークが確認された。これは熱処理 60 °C により生成した結晶の融解と考 えられる。熱処理80 °Cおよび100 °Cでは、unannealed フィルムの結果と類似してい た。これは熱処理温度80 °Cおよび 100 °Cでは試料が溶融している状態になるため

にunannealed フィルムの結果とほぼ同じピークが観測されたたためだと思われる。

以上の結果より、熱処理により、EVAの結晶化が進行することが確認された。

3 3 3

3----3333----5555 圧縮サイクル試験による構造変化圧縮サイクル試験による構造変化圧縮サイクル試験による構造変化圧縮サイクル試験による構造変化

次に圧力に関して検討する。Table 3-3 に各酢酸ビニル含有量における 5000 回お

よび 10000 回の圧縮サイクル試験後の、Solid Echo 法でのパルス NMR 測定結果を

示した。印加した圧力は2 Mpa である。EVA9、14 では圧縮回数増加と共に Rigid成 分比は増加し、軟らかい成分は減少していた。EVA28 は圧縮回数が増加しても Rigid 成分比はほとんど変化がなかった。しかし、全成分の緩和時間は減少していた。これら のことは圧縮により分子運動が束縛されていることを意味している。つまり、EVA9、

EVA14、EVA28 ともに繰り返される圧縮と共に分子運動性が低下していた。その度合

いは酢酸ビニルの割合が増すほど小さくなり、EVA28 では酢酸ビニル含有量が多い

(36)

ために圧力の影響を受けにくいと考えられる。つまり、酢酸ビニルが増すに従い、圧力 による構造変化が小さくなると推測される。

EVA28では酢酸ビニル含有量が多いために圧縮の影響を受けにくい状態であるこ

とが分かった。しかしながら、MG使用時には荷重の少ない咬合時もあれば個人の体 重以上もの強い噛みしめ等の様々な咬合圧が加わることも考えられる。そこで、圧力を 増加させた状態での圧縮の影響についても検討した。印加圧力を6 Mpaの場合の結 果をFig.3-15に示す。Fig.3-15は3 mm厚急冷フィルムEVA28を用いて圧縮サイク ル試験10000回を行った前後の13C CPMAS NMR測定の結果である。Fig.3-15の圧 縮サイクル試験前の結晶と非晶のピークの高さの差∆aと比較して圧縮サイクル試験

10000回後の∆bではわずかに結晶ピーク強度が上昇していた。このことから圧力を

増加しても結晶相が増加することが明らかになった。

EVA28の圧縮サイクル試験を10000回行った前後のDSC測定結果を、Fig.3-16に

示した。3 mm厚急冷フィルムEVA28フィルムにおいては圧縮サイクル試験前後に大

きな変化は確認できなかった。13C CPMAS NMR 測定結果では結晶相が増加してい たが、DSC 測定で差がなかったのは、圧力により生成した結晶が不安定であるためと 考えられる。。

3 3 3

3----3333----6666 圧縮サイクル試験前後の唾液の影響圧縮サイクル試験前後の唾液の影響圧縮サイクル試験前後の唾液の影響圧縮サイクル試験前後の唾液の影響

Table 3-3の最も右の欄に人口唾液中での圧縮サイクル試験を行った試料の緩和

時間と強度を示した。唾液中におけるEVA9の圧縮試験後の結果は、唾液なしでの 圧縮試験のものと比較してRigid成分の成分比および緩和時間はほとんど変化がな

かった。EVA14および EVA28においても唾液中の圧縮試験は唾液なしでの圧縮試

験のものと比較してほとんど変化がなかった。以上より、本実験では唾液の影響は特 に確認できなかった。

33

33----4 4 4 4 結論結論結論結論

(1) 使用前後のMGを比較した結果、化学的変化は確認できなかった。

(2) 使用したMGの13C CPMAS NMR法およびパルスNMR測定およびDSC測定

(37)

を行い、物理変化を検討した。その結果、MGの継続的使用(1シーズン使用)に より、咬合部では結晶成分が増加し、分子運動性が束縛された成分の増加が進 行するが、非咬合部や頬側部では、その進行度は比較的小さいことが分かった。

(3) MG 使用時に物性変化に起因する因子として温度および圧力、唾液について検

討した。口腔内温度について熱の影響(熱処理)により、結晶が増加し分子運動 性も低下していることが明らかになった。圧力に着目して圧縮サイクル試験を行っ た。その結果、繰り返される圧縮と共に結晶の増加が確認できた。

(4) 唾液についても影響を検討したが、本実験では唾液による顕著な影響は確認で

きなかった。

(5) 以上のことから、MG 使用時に影響する因子は、温度および圧力が主に MG 材

料物性に影響していることが示唆された。

(38)

Table 3-1 The component fraction (A), spin-spin relaxation time (T2) and the integration of pulse NMR signal for MG1 obtained by pulse NMR

Sample Component A

(%)

T2

(µs)

Integration of pulse NMR

signal

MG1-occ

Rigid 30.6 8.6

198

Intermediate 52.5 77.5

Mobile 16.9 529

MG1-non

Rigid 23.1 10.1

219

Intermediate 55.6 66.0

Mobile 21.3 407

MG1-buc

Rigid 22.9 10.4

233

Intermediate 55.1 64.6

Mobile 22.0 384

MG1-φ

Rigid 22.7 11.4

214

Intermediate 55.0 63.8

Mobile 22.3 335

(39)

Table 3-2 Effect of temperature fluctuations verified using pulse NMR spectroscopy

Sample

Treatment Unannealed Annealed at 60°C

Annealed at 80°C

Annealed at 100°C Fraction, T2 Fraction

(%)

T2

(µs)

Fraction (%)

T2

(µs)

Fraction (%)

T2

(µs)

Fraction (%)

T2

(µs)

EVA9

Rigid 34.9 9.80 36.1 9.20 36.9 8.90 34.3 9.80 Intermediate 53.2 40.8 51.6 42.9 51.6 39.5 54.5 39.2 Mobile 11.8 216 12.3 242 11.5 221 11.2 214

EVA14

Rigid 29.5 11.0 30.4 10.0 30.6 9.90 28.8 12.0 Intermediate 56.4 45.4 54 47.8 55.8 43.4 59.0 41.9 Mobile 14.1 242 15.6 262 13.6 233 12.2 216

EVA28

Rigid 20.3 12.5 19.3 11.0 21.1 12.4 21.5 12.5 Intermediate 52.6 70.1 52.3 69.5 53.9 62.7 53.4 64.3 Mobile 27.1 379 28.5 375 25.0 329 25.2 335

(40)

Table 3-3 Press dependence of fraction and T2 for EVA9, EVA14 and EVA28

A% (T2/µs)

Sample Component Before 5000 press 10000

press 5000 press in saliva

EVA9

Rigid 34.2(9.3) 34.4(9.4) 34.7(9.4) 34.3(9.3) Intermediate 53(42.4) 53.1(41.6) 54.6(41.1) 53.5(40.6)

Mobile 12.8(239.6) 12.5(236.3) 11.7(239.7) 12.2(233.4)

EVA14

Rigid 28.5(10.3) 29.2(10.4) 29.1(10.2) 28.3(10.5) Intermediate 55.5(44.9) 55.5(45.7) 55.5(46.5) 55.6(47.31)

Mobile 16(240.5) 15.3(244.0) 15.4(255.9) 16.1(257.2)

EVA28

Rigid 19.6(12.4) 19.1(12.0) 19.5(12.3) 18.1(12.6) Intermediate 51.3(75.8) 50.6(74.6) 51.9(73.6) 51(77.5)

Mobile 29.1(414.6) 30.3(406.8) 28.6(402.9) 30.9(408.1)

Table 1-1 Classification of MG.  種類 使用法 市販タイプ ストックタイプ 既製品をそのまま使用 ボイルアンドバイトタイプ  既製品を温水につけて軟化後口腔内に 合わせて使用  カスタムメイド タイプ  シングルレイヤータイプ 1 枚の MG 材を用いて製作マルチレイヤー(ラミネー ト)タイプ 数枚の MG 材を用いて製作
Table 1-2 The sports obligated or recommended for the player to wear MG.  ( As of September, 2016 ) 競技種目  対象  使用法  ボクシング 義務(国際・国内) キックボクシング 義務(国際・国内) 空手 義務(一部団体 / 国際) 全日本空手道連盟(メンホー装着者以外), 国 際 空 手 道連 盟 ( 極 真会館)等。 アメリカンフットボール  義務(国際・国内)  ラグビーフットボール 義務(国際・国内)
Table 1-3 MG materials.    MG 用材料  材料について  特徴  EVA (Ethylene-Vinyl  Acetate Copolymer)  成 形 加 工容易 オレフィン系熱可 塑性エラ ストマー または 耐 候 性 良い スチレン系熱可塑性エラスト マー 柔軟性・弾力 性 に優 れている
Fig. 1-1 Custom made type MG (Tokyo dental college).
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参照

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