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Citation 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 72(1): 457‑463

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Title 女子短大生が季節に対して抱く色彩イメージについて : 春と秋における 傾向

Author(s) 川部, 大輔; 李, 知恩

Citation 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 72(1): 457‑463

Issue Date 2021‑08

URL http://s‑ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/12075

Rights

(2)

女子短大生が季節に対して抱く色彩イメージについて

―春と秋における傾向―

川部 大輔・李  知恩

北星学園大学短期大学部生活創造学科

北海道教育大学札幌校デザイン研究室

SpringandAutumnColorsImaginedbyFemaleJuniorCollegeStudents

KAWABEDaisukeandLEEJieun

DepartmentofLifeandCreativeSciences,HokuseiGakuenUniversityJuniorCollege

DepartmentofArtEducation,SapporoCampus,HokkaidoUniversityofEducation

概 要

先行研究において,季節から連想される色には特定の傾向があり,時代により変化が見られ たと言及されたことから,本研究では2009年度から2019年度まで北星学園大学短期大学部専門 科目「生活学基礎演習Ⅰ」で授業実践として行ってきた課題のデータを基に,学生が季節(春 と秋)のイメージに対して抱く色の傾向を明らかにし,さらにその傾向が時代によって変遷す るかについて調べた。本調査では学生が季節に対して自分がイメージする色を3枚のカラー シールで提示する課題のデータを11年分集計し,分析を行った。集計後,秋と春の色彩イメー ジにばらつきがあったため,色を群にまとめて傾向をはっきりと掴むことを目的とし,色彩を グループ化する追加調査を行った。そのほかに一般的に春や秋からイメージされる色について 自由記述の追加調査も行い比較したところ,先行研究と追加調査の結果を尺度として求めた一 般的な春および秋の色と本学学生がそれらの季節を強く感じる色の間に差異が認められた。そ のほか,時代による春や秋からイメージされる色が変化してきたことを明らかにした。

Ⅰ はじめに

北星学園大学短期大学部生活創造学科は「生活 学」をキーワードに文化・福祉・経済など様々な 分野に渡る科目群(履修モデル)を持つ学科であ

る。そこには視覚伝達スキルを学ぶ「クリエイティ ブデザイン履修モデル」も含まれ,『生活を知的 に創造する』ことのできる人材育成を目指して美 術・デザインを主軸としない全学生に視覚伝達の 基本を学ばせている。その一環として1年次必修

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川部 大輔・李  知恩

科目「生活学基礎演習Ⅰ」において,「季節のイメー ジを色でアウトプットする」という課題を2009年 度から現在まで課してきた。この課題は,学生が 大学に入学する前までに日常生活,身の周りに溢 れている色について触れていながらもその色につ いて意識して生活したことの無い大学生を対象 に,季節に対する色のイメージをテーマとして無 数の色に触れることで今まで気づいていなかった 自分の好みや傾向に気づける体験的な学びであ る。以上が本研究の前提となった。

Ⅱ 調査:季節のイメージを色でアウトプット

Ⅱ−1 背景および調査方法

「季節のイメージを色でアウトプットする」と は,季節(春・秋)に対して,全332色から学生 それぞれが持っている色のイメージを3枚のカ ラーシール(図1)で表す課題であり,様々な色 に触れる中で形成されてきた季節などに対する色 のイメージを通して,自分を発見する体験を目的 とした。

中村ら(2006)は,学生が春,夏,秋,冬の季

節に対し,カラーサンプルとして日本色彩研究所 の新配色カード199cを使用し1,それぞれ各季節 として連想される自然の色が色の季節感に影響す ることを示唆した。詳しくは以下のようである。

春…色相:ピンク系,黄緑系,緑系 夏…色相:青,青紫系

秋…色相:暖色系 冬…色相:青紫系,紫系

また,和泉(2019)は,大学生を調査参加者に ディスプレイ色に対する〈赤〉〈緑〉〈青〉と異な る色相で季節感を調査し,10年前の調査結果と比 較することで,〈青〉に対する季節感に大きな変 化が見られたことを含め,時代による色の季節感 の変化についても言及した。

そこで,これまで行ってきた「季節のイメージ を色でアウトプットする」11年間の結果を比較す ることで,季節(春・秋)に対する色のイメージ を明らかにするとともに,時代による色の季節感 の変化があるか調べることとした。

この課題で使用するカラーシールを準備するに あたっては,色のバリエーションをある程度網羅 する必要があった。そこで,(財)日本色彩研究 所によるPCCSに定義されたトーンから,シール 印刷した際にある程度差がはっきり出るものとし て,ペール・ライト・ブライト・ビビッド・スト ロング・ディープ・ダーク・グレイッシュ・ライ トグレイッシュの計9種を採用した。そして,色 相環は36分割した。これは,学生にシールを選ば せる際に色数が少ないと同じ色に集中してシール がすぐになくなってしまう可能性があったこと,

学生が頭でイメージする色に少しでも近い色があ ることが望ましいと判断したことから,中村ら

(2006)同様にPCCSの色相環をさらに細分化し

1  カ ラ ー サ ン プ ル は 大 き さ は12×17.5cmで あ り,

PCCS(日本色研配色体系)201系に準じて特殊印刷紙 にマット調印刷インクで製作された高品質カラーカー ドである。PCCSの色相一トーンシステムで構成されて おり,色相は,24色相(1番~24番)で,有彩色のトー ンとして12あるが,この色票にはstrongトーンを除い た11のトーンが使われている。また,1トーンのうち,

vividトーンは,24色すべて揃っているが,他のトーン は,偶数番の12色である。また,このカードは,より 広範囲の配色演習に活用されるように,トーン別の色 系統の他に,特に使われることの多い色系統から,ピ ンク系(10色),ブラウン系(7色),オフニュートラ ル系(15色),肌色系(6色)が加えられてある。

図1 カラーシールと台紙

(4)

たものである。それに無彩色8段階を加え,全 332色となっている。(図2)

こうして用意したシールから学生がそれぞれ3 枚を選び,並べて貼ることによって自分が季節に 対してどのような色彩イメージを持っているかが 他者に明示される。このような教育を11年に渡っ て続け,蓄積してきたものが本研究の材料である。

Ⅱ−2 調査対象

「季節のイメージを色でアウトプットする」で 学生が選んだカラーシールを集計し,傾向を分析 する。なおこの実技課題を含む授業は,毎年4月

~5月に実施した。対象は本学の過去11年の学生 合計1003名とする。各年度の内訳は以下である。

なお,男子学生は全体の1%にも満たなかったた めデータから省き,女子学生のみを対象とする。

2009年度:95人 平均年齢18.14歳(標準偏差0.36)

2010年度:101人 平均年齢18.15歳(標準偏差0.37)

2011年度:99人 平均年齢18.28歳(標準偏差0.68)

2012年度:88人 平均年齢18.18歳(標準偏差0.38)

2013年度:68人 平均年齢18.26歳(標準偏差0.44)

2014年度:99人 平均年齢18.23歳(標準偏差0.55)

2015年度:98人 平均年齢18.14歳(標準偏差0.35)

2016年度:96人 平均年齢18.19歳(標準偏差0.40)

2017年度:91人 平均年齢18.09歳(標準偏差0.30)

2018年度:88人 平均年齢18.19歳(標準偏差0.47)

2019年度:80人 平均年齢18.23歳(標準偏差0.42)

Ⅱ−3 調査結果

「季節のイメージを色でアウトプットする」で 学生が春・秋に対してイメージする色を3枚のカ ラーシールで提示してきたデータを11年間集計 し,該当する色にその数を記録し,色調ごとにも 合計を表した結果を以下の図3(春),図4(秋)

に示した。さらに年度ごとの集計も行い,変化を 明らかにするためのデータとした。

Ⅲ 追加調査1:色の群分け

Ⅲ−1 調査目的および調査方法

カラーシールの集計の結果,季節をイメージす る色にばらつきがあったため,色を群にまとめて 傾向をよりはっきりと掴むことを目的に,「季節 のイメージを色でアウトプットする」調査の対象 学生とは別な学生を対象に,図2のカラーテーブ ルを提示し,主にシールの数が特に多かった部分 に対して色を言葉でエリア分けするグルーピング をしてもらい,過半数の学生が選択した範囲を求 めた。

Ⅲ−2 調査対象

対象者は,本学の2020年度1年次女子学生24名 図2 シールの元としたカラーテーブル(下表はCMYK変換時の数値)

(5)

川部 大輔・李  知恩

(平均年齢18.8歳,標準偏差0.73)であった。なお,

この調査は2020年10月に実施した。

Ⅲ−3 調査結果

色の群分けの集計結果を調査2の群(図5)ご とにまとめた結果は,表2に示した。図5で色の 群分けの範囲を線で示したように,色の群は「ピ ンク色」「桜色」「黄色」「黄緑色」「赤色」「オレ ンジ色2」「茶色」「黄土色」の8つにまとめるこ とができた。表1には色の群分け別に各色群の内 訳とCMYK変換時の数値を示し,表2には色群

ごとのシール数集計を示した。さらに,図6では 表2に示した各色群の内訳年ごとの数値を色群で まとめ,その変化を示した。

これらのデータを分析した結果,以下のような ことが明らかになった。

1 参加者が選んだ色を示した表2のうち「春」

のイメージについてカイ二乗検定を行った結 果,有意な差が得られた(χ2⑺=1080.577,p

<.01)。残差分析の結果,桜色群が最も多く,

次が黄緑色群と黄色群で,この2群の間には 統計的な差は見られなかった。残るピンク色

2 色の名称にPCCSなどで一般化されていないものを使 用しているのは,調査対象となる18~20歳の大学生に

とって「橙色」という言葉が身近でなく,色を想起し にくいと考えられたためである。

図5 色の範囲分け結果 図3 カラーシール集計結果(春)

図4 カラーシール集計結果(秋)

(6)

図6 学生が選んだカラーシールの年ごとの変化 表1 各色群のCMYK変換時の数値

表2 色群ごとのシール数集計

(7)

川部 大輔・李  知恩

群,オレンジ色群,赤色群,茶色群,黄土色 群が選ばれた数は非常に少なかった。

2 参加者が選んだ色を示した表2のうち「秋」

のイメージについてカイ二乗検定を行った結 果,有意な差が得られた(χ2⑺=1293.030,p

<.01)。残差分析の結果,茶色群が最も多く,

次にオレンジ色群,続いて黄土色群が多かっ た。次が黄色群と赤色群で,この2群の間に は差が見られなかった。残る黄緑色群,桜色 群,ピンク色群が選ばれた数は非常に少な かった。

3 11年間の変化で「春」は桜色群の増加が顕著 である。5年間の移動平均で23.55%から 28.65%へ増加した。

4 11年間の変化で「秋」は茶色群の増加が顕著 である。5年間の移動平均で25.63%から 29.08%へ増加している。他にも黄土色群が 増加傾向にある一方で,赤色群・黄色群はゆ るやかに減少する傾向にあった。

Ⅳ 追加調査2:季節をイメージする色につ いての自由記述

インターネットを介して,季節に対する色のイ メージを1人につき3つずつ回答してもらう簡易 的な予備調査(男性36人・女性34人・その他1人 の計71人,平均年齢19.92歳,標準偏差3.84)を実 施したところ,「春」に対しては「ピンク色(回 答数51,全体の31.5%)」「緑・黄緑色(回答数 34,全体の20.1%)」「黄色(回答数24,全体の 14.8%)」およびそれに類する言葉が多く,「秋」

に対しては「赤色(回答数43,全体の25.3%)」「茶 色(回答数39,全体の22.9%)」「黄色(回答数 34,全体の20.0%)」「橙色(回答数29,全体の 17.1%)」およびそれに類する言葉が多かった。

参加者が選んだ「春」のイメージ色自由記述に ついてカイ二乗検定を行った結果,有意な差が得 られた(χ2⑵=10.258,p<.01)。残差分析の結果,

ピンク色が最も多く,緑・黄緑色と黄色,この2 群の間には統計的な差は見られなかった。次に,

参加者が選んだ「秋」のイメージ色自由記述につ いてカイ二乗検定を行った結果,有意な差が得ら れた(χ2⑶=3.055,ns)。残差分析の結果,4群 の間には統計的な差は見られなかった。

Ⅴ 考 察

中村ら(2006)はPCCSカラーサンプルを用い た調査から「春」をイメージする色がピンク系,

黄緑系,緑系であり,「秋」をイメージする色は 暖色系と言及した。それに対し,今回のPCCSカ ラーサンプルを用いた調査・分析結果からは,

「春」をイメージする色について桜色群が最も多 く,次が黄緑色群と黄色群であり,「秋」をイメー ジする色について茶色群が最も多く,次にオレン ジ色群,続いて黄土色群が多かった。以上のこと から,両者の研究結果を比較すると「春」のイメー ジする色では大体同じと言えるがピンクと桜色,

緑と黄緑の違いが見られた。

まずピンクと桜色の相違については,今回季節 に対する色のイメージについて自由記述による追 加調査を注目する必要があると考える。その結果 でも中村ら(2006)と同様に,ピンク色が最も多 かった。つまり,カラーサンプルから春をイメー ジする色として「桜色」群を選ぶのに対し,言葉 から色彩を想起する際「ピンク色」と回答するズ レが見られた。そこで,中村ら(2006)の分析に 使われたピンク系を確認したところ,その多くが 今回の「桜色」群と重なっていた。また,中村ら

(2006,p.40)の調査の中から春から浮かぶイメー ジで圧倒的に「桜(95%)」が多いのにも関わらず,

「ピンク色」と記載していた。つまり,一般的に 用語として「ピンク色」と「桜色」を明確に区別 できない反面,色彩の面では明確に区別するズレ があることが言える。このことから春がイメージ する色として最も代表的色は「桜色」であること が明らかになった。

また,「秋」のイメージする色では中村ら(2006)

では暖色系と言及されたのに対し,今回の調査で は茶色群が最も多く,オレンジ色群,続いて黄土

(8)

色群などより詳しく分析することができた。さら に,言葉から「秋」を想起する色では「赤色」「茶 色」「黄色」「橙色」と回答したことについては,

中村ら(2006,p.40)の調査の中から秋から浮か ぶイメージで「紅葉(82%)」が最も多かったこ とから,カラーサンプルから秋をイメージする色 として「茶色」群を選ぶのに対し,言葉から色彩 を想起する際には「紅葉」という固定観念にとら われることからズレが生じると考えられる。

次に,時代による春や秋からイメージされる色 が変化するのかについては,11年間の変化で「春」

は桜色群が顕著に増加し,「秋」は茶色群が顕著 に増加したことから,時代による季節をイメージ する色が変化してきたことを明らかになった。和 泉(2019,p.175)は,時代による季節をイメー ジする色が変化した要因としてライフスタイルの 中心にスマートフォンやタブレット端末があり,

SNSや動画共有サイトとの接点が多くなったこと から,自分で自然に触れる機会より,極彩色や彩 度の高い加工を施したカラフルな写真を見慣れて たことを挙げている。

Ⅵ おわりに

本稿は,北星学園大学短期大学部生活創造学科 の基礎関連科目の教育効果向上を目指した研究実 践である。本研究では,女子短大生を対象に季節

(春・秋)に対して抱く色彩イメージについて検 証し,一般的に季節からのイメージと11年間集計 した学生が季節を強く感じる色の間に差異が認め られた。そのほか,時代による春や秋からイメー ジされる色が変化してきたことを明らかにした。

本研究を通して得られた新たな知見は,今後の 教育に生かし,授業内容の改善にあたっては,こ れに対応する内容を検討していきたい。

引用文献

大井義雄・川崎秀昭「カラーコーディネーター入門『色彩』

改訂増補版」日本色研事業株式会社,2007

中村妙子ら,高齢者施設における色彩環境について―色 と季節感との関係,奈良佐保短期大学研究紀要⒁,

2006,p35

和泉志穂,ディスプレイ色に対する季節感の時代変化,

武庫川女子大学生活美学研究所紀要㉙,2019,pp163- 175

(川部 大輔 北星学園大学短期大学部准教授)

(李  知恩 札幌校教授)

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