九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
比文の十年が残したもの
日下, みどり
九州大学比較社会文化研究院 : 教授
http://hdl.handle.net/2324/16793
出版情報:比文創立十周年記念文集, pp.150-152, 2004-02. Graduate School of Social and Cultural Studies, Kyushu University
バージョン:
権利関係:
I50
比文の十年が残したもの
日
下 み ど り
比較社会文化研究科(現︑学府)が成立して十年が過ぎた
︒決して短い時間ではない ︒
その問︑多 くの院生がここを巣立ち︑社会に旅立っていった
︒
最近韓国に行った時に︑その成果の一端を身近に
体験することがあった ︒
たいそう嬉しく感じたので︑ここに紹介してみたい
︒
日本語教育の先生方と︑釜山での学会に参加したときのこと︒釜山大学の日本語科にここの卒業生
が日本語教師として赴任しており︑彼女︵仮にA先生としておこう︶に何かと世話になった︒日本語
科の学生達は︑皆真面目な生徒達で︑中国漫画に関するの私の発表にも熱心に耳を傾けてくれた︒後
の質問タイムでも︑何人かの学生が質問をしてくれ︑中には﹁とても面白かったです︒ありがとうご
ざいました﹂とわざわざお礼を言う学生もいて︑こちらを喜ばせてくれたものであった︒A先生は︑
かなり人気があるようで︑学生と親しく話し合う様子も︑のびのびと楽しそうで板についていた︒
発表が終わったあと︑皆で食事をしながら話し合ったが︑そのとき私達の通訳としてついてくれた
大学生のユンミさんも︑大変良い人であった︒彼女は流暢な日本語を話すスリムな美人であったが︑
しっかりとした性格で︑敬語の使い方などは日本人顔負けの出来︒過不足の無い距離の取り方で︑私
達外国人への気配りを示してくれた︒釜山は始めてであったが︑彼女のおかげですっかりファンにな
り︑またぜひ来たいものだといいあつたものであった︒A先生もすっかり韓国通となっていて︑休み
の日には︑あちこちを案内してくれたものであったが︑その様子はすっかり韓国に溶け込んでおり︑
いかにも仕事を楽しんでいる風であった︒ああ︑卒業生がここでこんな風に頑張っているのだな︑と
心強く思ったものであった︒
十年たった今︑多くの卒業生がこのように︑いろんなところで活躍している︒それを思えば︑この
学府の存在は決して小さくはなかったのである︒
また︑私自身のことで言えば︑マンガの研究などという︑従来の学問の枠に入りきらぬものを始め
る事ができた事は大きな意味を持っていた︒最初は冷たい目で見られるのでは︑と覚悟していたのだ
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が︑思いのほかに好意的な反応をいただき︑かえって驚いたものであった︒新しい大学院の長所は︑
既成概念にとらわれない︑新しい試みができることだろう︒他所にはない分野を自由に作れることは︑
ここの有利な点ではないかと考えている︒私自身に限って言えば︑自由で居心地がいい︑ということ
になるだろうか︒
もっとも︑学際が売り物ということは︑一方では指導が大変ということになる︒指導する学生の研
究テーマも様々であったが︑私についた学生は︑皆良く頑張って勉強してくれた︒そのため︑予習に
追われる事もあったが︑その分こちらも勉強になった︒
孟子は﹁君子に三論あり﹂と言った︒一は︑父母共に存し︑兄弟事故なく一家団樂を得ること︒二
は︑天に悦じず︑公明正大であること︒三は天下の英才を教育すること︒以上である︒優れた人材を
得︑それを教える事は君子の楽しみであるらしい︒私はもちろん君子でないが︑それでも学生に教え︑
良い反応が返ってくることの嬉しさは︑幾分かでも味わう事が出来た︒
新しい研究・活躍する卒業生・教えがいのある学生一それが私にとっての︑比文のこの十年置成
果である︒
︵くさか みどりアジア社会講座・教授︶
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