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ライティング・ワークショップの秘密
‐選択理論を通してライティング・ワークショップを眺めてみる‐
影山陽子
要旨
ライティング・ワークショップは、高い教育効果を持った書きの実践的な活動だといわ
れているが、その実態は伝わりにくく、また、なぜ高い教育効果があるのかを経験知以外 で示すことが難しい。
本研究ノートでは、ライティング・ワークショップとはどんな実践であるのか、なぜ学
習者は書くことが好きになるのか、その秘密を探ることにつとめる。
考 察 の 結 果 、 ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ は 、 意 図 せ ず 、「 選 択 理 論 」 と い う 心 理 学 の理論の知見が用いられた、継続的な学習活動である可能性が高く、ライティング・ワー クショップにおいては、学習者が、仲間と教師を「上質世界」という自分の理想の世界の 中に存在させ、自分の書きたいものを書き上げた状態(「上質世界」)を目指して、それぞ れが最適な選択をし続けることが可能であるため、学習者がその実践を好きになり、自律 的な学び手に育っていくのではないかと考えられた。
キ ー ワ ー ド
ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ 、 選 択 理 論 、 人 間 関 係 、 好 き 、「 上 質 世 界」
1.はじめに
1.1
ライティング・ワークショップとは?
ライティング・ワークショップとは「米国において 1980 年代から普及し始めた『書く」こ とのきわめて効果的な教え方・学び方である(フレッチャー&ポータルピ 2007)」。
ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ に お け る 授 業 の 流 れ は 、 通 常 の 一 斉 授 業 と は 少 し 異 な る 。
従 来 の 一 斉 授 業 に 近 い 時 間 が 最 初 の 10-15 分 間 に 設 け ら れ る 。 こ れ は 「 ミ ニ ・ レ ッ ス ン 」 と 呼 ば れ る 時 間 で 、 教 室 全 体 が 一 つ と な り 、 教 師 が 学 習 者 に と っ て 有 用 な 「 書 き 」 の 知 識 や ス キ ル を 紹 介 す る 。 た と え ば 、 書 く こ と が な い と 感 じ ら れ た 時 に ど う す れ ば い い か 、 ア イ デ ア を 絞 る に は ど う す れ ば い い か 、 効 果 的 な 書 き 出 し と し て は ど ん な も の が あ る か 等 の 「 書 き 」 に 関 す る 困 難 へ の 対 処 か ら 、 主 語 と 述 語 の 呼 応 、 話 し 言 葉 と 書 き 言 葉 、 文 末 表 現の統一について等の文や文章作成の決まりについての知識等を幅広く扱う。
そ の 後 は 学 習 者 個 別 の 時 間 と な る 。 そ れ ぞ れ が 自 由 に 、 書 き た い も の を 書 き た い よ う に 書 く 時 間 と な る 。 事 前 に 行 っ た ミ ニ ・ レ ッ ス ン と 関 連 し て い る こ と を 書 く の で は な い ( も ち ろ ん 関 連 内 容 を 書 い て も よ い 、 そ こ は 学 習 者 に 任 せ ら れ る )。 ま た 、 書 い た も の お よ び 、 書 き に 関 す る 取 り 組 み は 、 各 人 に よ っ て 記 録 さ れ 、 作 品 と 取 り 組 み の 記 録 は ポ ー ト フ ォ リ オ の よ う に 保 存 さ れ る 。 ま た 、 こ の ひ た す ら 書 く 時 間 に は 、 教 師 に よ る 個 別 指 導 ( カ ン ファランス)も行われる。最後の約 10 分間程度に、また教室は一つとなり、誰かの作品を
( そ れ が 書 き の 途 中 で あ っ て も ) 発 表 し 、 そ れ を 皆 で 共 有 し 、 気 づ き や 内 省 を 得 る 。 作 品
に関して、皆で質問をしたり、意見を交換したりする。
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こ の よ う に 全 体 ( 知 識 や ス キ ル の 獲 得 ) → 個 別 ( 実 践 ) → 全 体 ( 共 有 と 内 省 ) と い う 流 れとなっている。
ま た 、 フ レ ッ チ ャ ー & ポ ー タ ル ピ ( 2007) は ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ を 考 え る 上 で参考となる例としてスキーのクラスを挙げて、以下のように説明している。
ス キ ー の レ ッ ス ン が 始 ま る と 、 早 々 に 子 ど も た ち は ス キ ー を ハ の 字 に 開 い て 滑 れ る よ う に な り 、 お 昼 に は 中 級 者 用 の コ ー ス を 滑 り 降 り て き ま し た 。 子 ど も た ち が あ っ と い う 間 に ス キ ー ヤ ー に 変 身 し た こ と に 驚 き ま し た 。 子 ど も た ち は 、 ど の よ う に し て ス キ ー ヤ ー に 変 わ っ た の で し ょ う か 。 こ の と き の こ と を 振 り 返 っ て ス キ ー の 指 導 者 の こ と を 思 い 起 こ す と 、 強 く 印 象 に 残 っ て い る こ と が 四 つ あ り ま す 。
❶ 指 導 者 自 身 が ス キ ー ヤ ー で す 。 指 導 者 は 、 な ん と も か っ こ い い ス キ ー ウ ェ ア を 身 に 着 け 、 ス キ ー 仲 間 の 言 葉 で 話 し て 、 自 分 た ち が も っ て い る ス キ ー へ の 情 熱 を 余すところなく伝えていました。
❷ 指 導 者 た ち は 、 ス キ ー に つ い て 「 説 明 す る 」 よ り も 実 際 に ス キ ー の 「 練 習 を す る 」 ほ う が よ い と 考 え て い ま し た 。 ス キ ー に つ い て の 講 義 、 ビ デ オ 、 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン は せ ず に 、 子 ど も た ち に ス キ ー 靴 の 止 め 具 を 締 め て あ げ る と す ぐ に ス キ ー の練習に入りました。
❸ 子 ど も た ち が た く さ ん 転 ぶ と 分 か っ て い ま し た 。 一 人 の 指 導 者 が 、 ニ ヤ ッ と 笑って言った言葉は印象深いものでした。
「 今 日 は 何 度 も 転 ぶ こ と に な る よ 。 誰 で も 転 ぶ ん だ 。 今 晩 は 打 ち 身 で 痛 い と 思 う よ 。 で も ね 、 今 日 の 終 わ り ま で に は ス キ ー が 滑 れ る よ う に な っ て い る と 保 証 で き るよ」
❹ほめ方がうまく、ほめることで次の成長へとつなげていました。
「 滑 れ て る じ ゃ な い 。 本 当 に ス キ ー を す る の は 初 め て な の ? 信 じ ら れ な い よ ! ま るでプロのスキーヤーみたいだよ」
(ラルフ・フレッチャー&ジョアン・ポータルピ 2007)
ス キ ー の 例 で わ か る よ う に 、 ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ に お い て 、 教 師 は 教 え る と い う よ り も 、「 書 く 」 こ と が 好 き な エ キ ス パ ー ト と し て 、 教 室 に 存 在 し 、「 実 践 を 通 し て 学 び続ける」学習者たちをほめ、励まし、育てていく。
ま た 、 ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ に 不 可 欠 な 要 素 と し て 、 ス キ ー レ ッ ス ン と の 類 比 を参考にしつつ、私は次の4つを挙げたいと思う。
① 「 教 師 が 実 践 者 」 と し て 共 に あ る こ と
② 実 践 を 行 う 「 仲 間 」 が 存 在 し て い る こ と 、
② 実 践 を す る う え で 「 自 由 と 選 択 の 保 証 」 が さ れ て い る こ と ( た と え ば 、「 題 材 」 や 書 き 方 な ど の 選 択 が 学 び 手 側 に あ る と い う こ と )、 そ し て ④ 実 践 を 「 楽 し む 」 こ と が 推 奨 さ れ て い ることである。
こ れ ら 4 つ の 要 素 は 、 ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ を 実 践 し て い る 教 員 数 名 と 、 ラ イ
ティング・ワークショップの実践報告について協議する過程で抽出したものである。
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① 「 教 師 が 実 践 者 」 と し て 共 に あ る こ と は ス キ ー の イ ン ス ト ラ ク タ ー の 例 が 示 す と お り よ き ロ ー ル モ デ ル と な る こ と 、 お よ び 、 実 践 者 と し て の 生 き た 知 識 を 学 習 者 に 届 け る 効 果 が 期 待 さ れ る 。 ま た ② 実 践 を 行 う 「 仲 間 」 が 存 在 し て い る こ と は 上 述 の サ イ ク ル の 中 の 共 有 と 内 省 を 可 能 に し 、 ③ 実 践 を す る う え で 「 自 由 と 選 択 の 保 証 」 が さ れ て い る こ と は 学 習 者 が 好 き な こ と を 自 由 に 書 く 際 に 必 要 な 要 素 で あ り 、 さ ら に 、 選 択 権 が 与 え ら れ て い る こ と は 内 省 に よ る 学 び を 実 践 に 生 か す 土 壌 を つ く る 。 ④ 実 践 を 「 楽 し む 」 こ と が 推 奨 さ れ て い る こ と は 、 実 践 の 無 理 の な い 継 続 を 支 援 す る も の で あ る 。 こ の よ う な 場 づ く り が ラ イ ティング・ワークショップではなされる。
また、現在、日本で出版されているライティング・ワークショップの実践に関する書籍は、
前 述 の フ レ ッ チ ャ ー & ポ ー タ ル ピ ( 2007) と 岩 瀬 他 ( 2008) の 2 冊 で あ る が 、 そ れ ら の タ イトルと副題は、次のとおりである。
タイトル:ライティング・ワークショップ
副 題 :「 書 く 」 こ と が 好 き に な る 教 え 方 ・ 学 び 方
( フ レ ッ チ ャ ー & ポ ー タ ル ピ 2007)
タイトル:作家の時間
副題:「書く」ことが好きになる教え方・学び方【実践編】
帯(表):子どもたちが本物の「作家」になれる!書くことが大好きになる画期的な 学び方
(岩瀬他2008)
こ れ ら を 見 る と 、 学 習 者 ( 子 ど も た ち ) が 「 書 く 」 こ と が 好 き に な る と い う こ と が 、 ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ の 特 色 で あ る こ と が わ か る 。「 好 き こ そ も の の 上 手 な れ 」 と い う 諺 に も あ る よ う に 、 学 習 者 が そ の 活 動 を 「 好 き 」 に な る こ と か ら も た ら さ れ る 教 育 効 果 は 、 教 室 に 立 つ 者 と し て 、 実 感 で き る も の の 、 教 育 実 践 を 報 告 す る 際 に は 、 無 視 さ れ る こ と が 多 い 。「 好 き 」 や 「 満 足 」 と い っ た 個 人 的 な 感 情 は 、 数 量 的 に 測 っ た り 示 し た り す る こ と が 難 し い か ら で あ る 。 ま た 、 な ん ら か の 方 法 で 情 意 的 な 変 化 を 示 す こ と が で き た と し て も、それらと「書く」力との関連を示すことは困難だともいえる。
し か し な が ら 、 ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ が も た ら す こ の 効 果 、 つ ま り 、 学 習 者 が 書 く こ と を 好 き に な る こ と は ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ の 核 心 と も い え る 点 で あ る た め、本稿では無視せず、取り上げていく。
1.2
本稿の目的:ライティング・ワークショップの秘密を探る
本 研 究 ノ ー ト の 目 的 は 、 ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ は こ れ ま で の 教 育 実 践 と 何 が 異 なるのか、つまり、ライティング・ワークショップの秘密について説明することである。
ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ と は ど の よ う な 授 業 な の か 、 な ぜ ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク ショップを実践する中で学習者は書くことを好きになるのか。
ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ に つ い て 聞 い た 教 員 の 頭 に は 多 く の 疑 問 が よ ぎ る こ と だ ろう。本稿では、その問いに答えてみたいと思う。
早く書きたい!
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筆 者 は 2009 年 か ら 、 大 学 の 学 部 留 学 生 授 業 に お い て 、 ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ に 準 じ た 書 き の 実 践 を 行 っ て い る ( 影 山
2010) 。 1 節 で 述 べ た ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ と の 大 き な 違 い は 、 大 学 生 の 書 く 文 章 は 長 い た め 、 共 有 の 時 間 を 短 時 間 内 に 、 教 室 で 行 う こ と は 不 可 能 で 、 そ れ ら は 自 宅 で 行 う こ と ( つ ま り 、 仲 間 が 書 い た 作 文 は 自 宅 で 読 ん で く る こ と が 前 提 と な っ て い る )、 ま た 、 実 際 に 「 書 く 」 時 間 も コ ー ス が 進 む に つ れ て 、 教 室 の 中 か ら 自 宅 に 移 っ て い く こ と で あ る 。 し か し 、 ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ に 必 要 な 4 つ の 要 素 、 ① 「 教 師 が 実 践 者 」 と し て 共 に あ る こ と
② 実 践 を 行 う 「 仲 間 」 が 存 在 し て い る こ と 、 ② 実 践 を す る う え で 「 自 由 と 選 択 の 保 証 」 が さ れ て い る こ と 、 ④ 実 践 を
「楽しむ」ことが推奨されていることは満たされている。
こ の 実 践 を 通 し て 、 教 師 と し て の 筆 者 は 、 学 習 者 の 活 き 活 き と し た 「 書 き 」 の 実 態 や 、 一 人 ひ と り が 持 つ 個 性 な ど を 存 分 に 知 る こ と が で き 、 教 育 効 果 の 高 い 「 書 き 」 の 実 践 を 行 え て い る と 自 負 し て い る 。 ま た 、 学 習 者 が 書 く こ と を 楽 し ん で い る こ と 、 好 き で い る こ と も 感 じ ら れ て い る 。 し か し 、 こ の 活 動 に つ い て 他 者 に 説 明 す る こ と の 難 し さ も 感 じ て き た 。
そ の よ う な 時 に 出 会 っ た の が 、 次 章 で 取 り 上 げ る 「 選 択 理 論 」 で あ っ た 。 こ の 心 理 学 は 、 従 来 の 心 理 学 と は 異 な っ た ア プ ロ ー チ で 、 私 達 が 抱 え る 問 題 を 説 明 す る 。 そ こ で 重 要 視 さ れ て い る の は 、 諸 問 題 を 単 に 原 因 分 析 し た り 、 解 決 に 導 く と い う の で は な く 、 身 近 に あ る 人間関係をよくするという視点である。
ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ を 、 選 択 理 論 を 通 し て 見 て み た ら 、 何 か が 見 え て く る か もしれない、直感的に感ずるものがあった。
それは私自身の作文教育に関する興味関心および実践に基づく。
筆者が作文教育に関わり始めたのは、今から約 17 年前の日本語学校の教員時代であった。
そ の 頃 、 作 文 の 授 業 は 苦 痛 で あ っ た 。 書 く と い う 苦 役 を 学 習 者 に 課 し 、 書 き あ が っ た 物 に 対 し て 、 添 削 と い う 多 大 な エ ネ ル ギ ー を 使 う も の の 、 そ れ が 有 効 に 活 用 さ れ て い る 様 子 は 見 ら れ な か っ た 。 時 に 、 添 削 に よ っ て 学 習 者 を 傷 付 け 、 あ る い は 、 添 削 し た も の が そ の ま まゴミ箱に直行することさえあった。
そ の 問 題 を 解 決 し た い と 考 え 、 大 学 院 に 進 学 し 、 出 会 っ た の が 、 ピ ア ・ レ ス ポ ン ス と い う 協 働 学 習 方 法 で あ っ た 。 こ れ は 、 お 互 い の 作 文 を 良 く す る と い う 目 的 を 持 っ て 、 書 き 手 で あ る 学 生 同 士 が 作 文 に 関 す る 話 し 合 い を 行 う と い う も の で 、 筆 者 の 問 題 に 解 決 の 手 掛 か り を 与 え る 部 分 が あ っ た 。 ま た 、 ピ ア ・ レ ス ポ ン ス と 教 師 フ ィ ー ド バ ッ ク を 連 続 し て 行 っ た 教 室 活 動 に お い て 、 筆 者 自 身 の 研 究 で は 、 教 師 フ ィ ー ド バ ッ ク よ り も ピ ア ・ レ ス ポ ン ス の ほ う が 、 作 文 の 内 容 に 関 わ る 推 敲 を 促 し た ( 影 山
2001) に も 関 わ ら ず 、 同 じ 手 順 で お こ な っ た Pulus(1999)で は 、 教 師 フ ィ ー ド バ ッ ク の ほ う が ピ ア ・ レ ス ポ ン ス よ り も 、 作 文 の 内 容 に 関 わ る 推 敲 を 促 し た と い う 反 対 の 結 果 が 出 て い た 。 そ し て 、 そ れ ら の 要 因 と し て 、 教 室 内 の 人 間 関 係 、 学 習 者 が 仲 間 の こ と を ど う 考 え て い る か 、 教 師 の こ と を ど う 考 え て い るか、が関わっているという考察が行われた。
こ の よ う に 、 作 文 学 習 に お い て 、 人 間 関 係 は 活 用 で き る 余 地 が 多 分 に あ り 、 か つ 、 そ の 関係性において異なった影響を与えることがわかっていた。
そ の 意 味 で 、 人 間 関 係 を 良 く す る と い う 視 点 を 持 っ た 心 理 学 で あ る 選 択 理 論 の 知 見 を 作
文 教 育 に 当 て は め て み る の も 一 つ の 手 で は な い か と 感 じ ら れ た 。 ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク
ショップの教室では、約 17 年前の日本語学校の教室で見られた光景はなく、学習者は、書
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か さ れ る の で は な く 、 書 き た い も の を 書 い て い る 。 ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ の 教 室 で は 従 来 と は 異 な っ た 人 間 関 係 が 存 在 す る の で は な い か 、 選 択 理 論 を 通 し て 、 そ れ を 考 え てみたいと思った。
こ れ ま で の 先 行 研 究 で は 、 ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ を 理 論 立 て て 説 明 し た も の は なく、もちろん、そこに選択理論を適用したものはない。
この試みは、萌芽的な考察であるため、研究ノートとして扱いたいと思う。
2.選択理論
2.1
選択理論とは何か
選 択 理 論 と は 、 米 国 の 医 学 博 士 で あ る ウ イ リ ア ム ・ グ ラ ッ サ ー ( William Glasser) が 提 唱 し た 心 理 学 で あ る 。 彼 の 言 葉 を 借 り れ ば 、 選 択 理 論 は こ れ ま で の 心 理 学 と は 一 線 を 画 し て お り 、 こ れ ま で の 心 理 学 は 「 外 的 コ ン ト ロ ー ル 心 理 学 」 で あ り 、 選 択 理 論 は 「 内 的 コ ンロトール心理学」と表現されている。(ウイリアム・グラッサー
2000)
選 択 理 論 が 注 目 す る の は 、 人 間 関 係 で あ る 。 そ れ は 、 多 く の 不 幸 な 人 々 の 原 因 が 人 間 関 係 に 由 来 し て い る か ら で あ る 。 お 金 が あ っ て も 、 地 位 が あ っ て も 不 幸 な 人 が い て 、 そ の 人 た ち は 、 自 分 の 不 幸 の 原 因 は 他 人 に あ る と 信 じ て い る 。 そ の た め 、 エ ネ ル ギ ー を 使 っ て 他 人 を 変 え よ う と 試 み る が 、 う ま く い か な い ば か り か 、 よ り 人 間 関 係 を 損 な い 、 状 況 を 悪 く させている。
選 択 理 論 の 核 心 は 、 他 人 を コ ン ト ロ ー ル す る こ と を や め 、 自 分 を 適 切 に コ ン ト ロ ー ル す る(最善な選択をする)ことにある。
また、選択理論には 4 つの基本概念がある。「5 つの基本的欲求」「上質世界」「全行動」
「 創 造 性 」 で あ る 。 以 下 、 選 択 理 論 を 説 明 し た ホ ー ム ペ ー ジ ( 選 択 理 論 .jp) を 参 考 に 、 こ れら 4 つの基本概念を説明する。
2.1.1「5 つの基本的欲求」
「 5 つ の 基 本 的 欲 求 」 で は 「 生 存 の 欲 求 」、「 愛 ・ 所 属 の 欲 求 」、「 力 の 欲 求 」「 自 由 の 欲 求 」
「 楽 し み の 欲 求 」 で あ る こ の 中 で 最 も 満 た す の が 難 し い の が 、「 愛 ・ 所 属 の 欲 求 」 で あ る と 言 わ れ て い る 。 そ れ は 、 他 の も の は 一 人 で も 満 た す こ と が 可 能 で あ る が 、 こ の 「 愛 ・ 所 属 の 欲 求 」 だ け は 一 人 で は 満 た す こ と が で き な い も の だ か ら で あ る 。 ま た 、「 力 の 欲 求 」 に も 注 意 が 必 要 だ 。 多 く の 人 ( 特 に 男 性 ) が 、 こ の 欲 求 の 使 い 方 を 誤 っ て 人 間 関 係 を 壊 し て し ま う 。
2.1.2「上質世界」
「 上 質 世 界 」 は 上 述 し た 「 5 つ の 基 本 的 欲 求 」 を 最 も 満 た す イ メ ー ジ 写 真 で あ り 、 私 た ち
は 、 こ の 「 上 質 世 界 」 に あ る イ メ ー ジ に 自 分 を 近 づ け て い く た め に 、 そ の 時 最 善 と 思 っ た 行
動 を 取 る 。 ま た 、 私 た ち は 「 上 質 世 界 」 に あ る も の に は 強 い 関 心 を 持 つ が 、「 上 質 世 界 」 に
あまり関係のないものに対しては関心を払わない。「上質世界」にも 3 つの要素があり、「一
緒 に い た い 人 」「 最 も 所 有 し た い ・ 経 験 し た い と 思 う も の 」「 行 動 の 多 く を 支 配 し て い る 考
え・信条」がそれに当たる。
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ま た 、 人 は 外 的 コ ン ト ロ ー ル で あ る 「 致 命 的 な 7 つ の 習 慣 」 を 用 い る 人 を 「 上 質 世 界 」 か ら 外 し て し ま う 。「 致 命 的 な 7 つ の 習 慣 」 と は 批 判 す る 、 責 め る 、 罰 す る 、 脅 す 、 文 句 を 言 う、ガミガミ言う、目先の褒美で釣る、の 7 つである。
一方、この「致命的な 7 つの習慣」をやめ、それに代わるものとして「身につけたい 7 つ の 習 慣 」 と し て 、 傾 聴 す る 、 支 援 す る 、 励 ま す 、 尊 敬 す る 、 信 頼 す る 、 受 容 す る 、 意 見 の 違 いを交渉する、の7つがあげられている。
上 質 世 界 に 入 る も の は 全 て 、 自 分 に と っ て 肯 定 的 な も の で あ り 、 た と え ば 、 配 偶 者 や 最 も 親 し い 友 人 、 好 き な 食 べ 物 や 欲 し い も の 、 行 き た い 場 所 や 趣 味 、 宗 教 や 哲 学 な ど が 入 る 。 し か し 、 上 質 世 界 は 固 定 し た も の で は な く 、 常 に 作 り 変 え ら れ て い く 。 そ の た め 、 た と え ば 夫 婦 は 結 婚 当 初 は 通 常 お 互 い を 上 質 世 界 に 入 れ て い る が 、 お 互 い に 外 的 コ ン ト ロ ー ル を 使 い 続 け る と 、 徐 々 に 上 質 世 界 か ら お 互 い を 取 り 除 い て し ま い 、 顔 を 見 る の も 苦 痛 な 関 係 に な る こ ともある。
2.1.3「全行動」
選択理論では、人間の行動を「全行動」という概念で説明する。「全行動」は次の 4 つの 行 動 、「 行 為 ( 歩 く 、 話 す 、 食 べ る な ど の 動 作 )」「 思 考 ( 考 え る 、 思 い 出 す 、 想 像 す る な ど 、 頭 を 働 か せ る こ と )」「 感 情 ( 喜 怒 哀 楽 と い っ た 感 情 )」「 生 理 反 応 ( 発 汗 、 心 拍 、 あ く び 、 呼 吸 、 内 臓 の 働 き な ど )」 を 指 す 。 私 た ち の 行 動 は こ れ ら の 4 つ が 絡 み 合 っ て 構 成 さ れ る 。 4 つ の う ち 、 私 た ち が 自 ら の 意 思 で 直 接 コ ン ト ロ ー ル で き る の は 、「 行 為 」 と 「 思 考 」 だ け で ある。
2.1.4「創造性」
選 択 理 論 で は 、 創 造 性 と は 整 理 さ れ た 行 動 と 求 め て い る も の が 得 ら れ な い と き に 、 新 た な ア イ デ ア を 生 み 出 す た め に 、 脳 が 情 報 を 再 整 理 し て い る 状 態 の こ と で あ り 、 ど ん な 人 に も 備 わ っ て い る 能 力 だ と し て い る 。 創 造 性 が 発 揮 さ れ る メ カ ニ ズ ム と し て 、 あ る 情 報 が 脳 に 入 っ た 場 合 、 そ の 情 報 は 個 々 の 善 悪 や 好 き 嫌 い な ど の 基 準 に よ っ て 、「 快 適 感 情 ・ 積 極 的 価 値 」 を 伴 う か 、「 苦 痛 感 情 ・ 否 定 的 価 値 」 を 伴 う も の と し て 知 覚 さ れ る 。「 快 適 感 情 ・ 積 極 的 価 値 」 を 伴 う 場 合 、 脳 は ど の よ う に そ れ を 手 に 入 れ ら れ る か と い う こ と や 、 ど う し た ら も っ と う ま く で き る か と い う こ と を 考 え 始 め る 。 一 方 、「 苦 痛 感 情 ・ 否 定 的 価 値 」 を 伴 う 場 合 は 、 問 題 を 解 決 し た り 、 直 面 し た く な い 状 況 を 避 け る た め に 何 が で き る か を 考 え た り し 始 め る 。 こ の 創 造 シ ス テ ム に は 二 面 性 が あ り 、 プ ラ ス 面 と し て は よ り 高 い レ ベ ル で 欲 求 を 満 た し た り 、 複 数 の 欲 求 を 同 時 に 満 た そ う と し た り す る 。 マ イ ナ ス 面 と し て は 、 思 い 通 り に い か な か っ た 場 合 に 、 落 ち 込 ん だ り 、 暴 飲 暴 食 を し て 憂 さ を 晴 ら し た り す る 。 こ れ ら の 憂 さ 晴 ら し は 、 傍 か ら み る と 無 意 味 に 見 え て も 、 本 人 に と っ て は ス ト レ ス 解 消 を 狙 っ た 最 善 の 行 動 の 場 合 が あ る。
3.選択理論とライティング・ワークショップ
2 章 で 説 明 し た 選 択 理 論 の 4 つ の 基 本 概 念 の う ち 、 主 に 「 上 質 世 界 」 に 焦 点 を 当 て 、 ラ
イティング・ワークショップという実践を分析・考察していきたいと思う。
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まず、ライティング・ワークショップの流れにおいて、最初の部分(初めの 5-10 分)に 行 う ミ ニ ・ レ ッ ス ン に つ い て 考 え る 。 こ の 時 間 は 従 来 の 教 師 主 導 の 一 斉 授 業 に 最 も 近 い 部 分 と 言 わ れ て い る 。 ミ ニ ・ レ ッ ス ン を 行 う 際 の 注 意 事 項 と し て 、 フ レ ッ チ ャ ー & ポ ー タ ル ピ
(2007)は次のように述べている。
従 来 型 の 教 え 方 に 近 い 時 間 は ミ ニ ・ レ ッ ス ン で 終 わ り で す 。 こ の ミ ニ ・ レ ッ ス ン は 、 ワ ー ク シ ョ ッ プ の 残 り の 時 間 の 進 め 方 を 方 向 づ け る も の で は あ り ま せ ん 。 ミ ニ ・ レ ッ ス ン は 大 切 な ス キ ル ( た と え ば 効 果 的 な 動 詞 が も た ら す 効 果 ) を 教 え る時間ではありますが、残りの 40 分間はその時に学習したスキルの練習時間では ありません。
い っ た ん ミ ニ ・ レ ッ ス ン が 終 わ る と 、 子 ど も た ち は そ れ ぞ れ の 作 品 の 続 き に 戻 り ま す 。 そ れ は 、 子 ど も た ち が 自 分 で 決 め た 目 的 や 狙 い が 大 切 に さ れ る 時 間 で す 。 子 ど も た ち が す ぐ に 使 う か ど う か わ か ら な い ス キ ル や 効 果 的 な 書 き 方 を 、 ミ ニ ・ レ ッ ス ン で 教 え る こ と に 違 和 感 を 覚 え る 教 師 も い る か も し れ ま せ ん 。 し か し 、 ミ ニ ・ レ ッ ス ン で の 学 び が 書 き 手 と し て の 子 ど も た ち の 視 野 を 広 げ て 、 そ れ が 子 ど もたちの作品に生きてくるのです。
選 択 理 論 を 理 解 し て か ら 、 ミ ニ ・ レ ッ ス ン を 眺 め る と 、 従 来 の 教 え 方 に 最 も 近 い 時 間 で あ っ て も 、 教 師 の コ ン ト ロ ー ル の も と 学 習 者 が 知 識 を 練 習 し た り 、 身 に つ け た り す る 時 間 は 設 け ら れ な い こ と が わ か る 。 ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ は 学 習 者 が 自 分 自 身 で 、 選 択 す る そ の 余 地 が 最 大 限 に 保 証 さ れ て い る の で あ る 。 し か し な が ら 、 未 熟 な 書 き 手 は 、 作 文 を 書 き 始 め る 際 に 、 何 を 題 材 と し て 選 ん だ ら い い の か 、 ど の よ う な 書 き 方 が 最 適 な の か 、 わ か ら な い こ と が 多 い 。 そ れ ゆ え 、 学 習 者 の 視 野 を 広 げ 、 選 択 で き る 力 を つ け る た め に ミ ニ ・ レ ッ ス ン が 行 わ れ る 。 教 師 は 常 に 学 習 者 の 選 択 を 支 援 す る 側 に 立 つ 。 教 師 が 「 致 命 的 な 7 つ の 習 慣 」 を 使 っ て 、 学 習 者 に 書 か せ る の で は な く 、「 身 に つ け た い 7 つ の 習 慣 」 を 使 っ て 、 書 き 手 自 身 が 何 か を 選 び 取 る こ と を 支 援 し 、 励 ま し 続 け る 。 ミ ニ ・ レ ッ ス ン は 従 来 の 教 え 方 に 似 ているように見えても、その位置づけが異なるのである。
ミニ・レッスンに続く「書く時間」についても、フレッチャー&ポータルピ(2007)では 以下のような注意がされている。
ワ ー ク シ ョ ッ プ の 大 半 は 、 子 ど も た ち が 実 際 に 書 く 時 間 で す 。 こ の 時 間 が 教 師 の 与 え た 課 題 を 終 わ ら せ る 時 間 に な ら な い よ う に 注 意 し て く だ さ い 。 教 師 が 課 し た 作 文 も 「 書 く 」 学 習 活 動 で あ り 。 そ れ な り の 価 値 が あ る か も し れ ま せ ん が 、 ラ
イティング・ワークショップでの「書く」学習活動とは異質のものなのです。
ま た 、「 書 く 時 間 」 の 学 習 者 の 様 子 に つ い て 以 下 の よ う な 記 述 が 、 岩 瀬 他 ( 2008) に あ る。
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机を自由にしてもいいようにしてから、活発に話す子どもも多く見られるよう に な り ま し た 。 自 由 に 移 動 で き る こ と で 話 し や す い 友 達 と 隣 同 士 に な る こ と が で き、こちらが意図しない自由な会話が生まれるようになりました。
活 発 に か わ さ れ る 会 話 は 一 見 雑 談 の よ う に 見 え て も 、 次 の 瞬 間 に は 、 何 か 閃 い た か の よ う に 鉛 筆 を 走 ら せ る 姿 を し ば し ば 見 か け ま し た 。 静 か に 取 り 組 ん で い る 子 ど も も い ま す が 、 そ う し た 自 由 に 話 す 雰 囲 気 の 教 室 の な か で も 周 り の 声 が じ ゃ まになっていないようで、集中して書く姿が見られました。
こ の よ う な 教 室 の 様 子 は 、 ピ ア ・ レ ス ポ ン ス を 行 う 教 室 で は し ば し ば み ら れ る 。 し か し な が ら 、 そ の た め に は あ る 程 度 の 時 間 が 必 要 な こ と も 筆 者 の 経 験 で わ か っ て い る 。 岩 瀬 他
( 2008) か ら は 、 学 習 者 自 身 が ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ と い う 活 動 を 続 け る 中 で 、 適 切 な 行 動 を 選 択 で き る よ う に な っ て い く 様 子 が 観 察 さ れ る 。 ま た 、 選 択 理 論 が 最 も 重 要 視 す る 人 間 関 係 が 豊 か に 育 ま れ て い る 様 子 も 見 受 け ら れ る 。 同 じ 岩 瀬 他 ( 2008) か ら 、 共 有 の 時 間の様子も見てみたい。
最 後 の 10 分 間 は 「 共 有 の 時 間 」 と 言 っ て 、 作 家 の 椅 子
* 注 1に 座 っ て 作 品 を 読 み 上 げ る 時 間 で す 。 初 め は 、 子 ど も た ち が 「 え っ 、 座 っ て も い い の ? 」 と 戸 惑 っ ている様子でしたが、回を重ねるにつれ、人気の椅子に変わっていきました。
子どもたちは、この共有の時間を本当に楽しみにしています。子どもたちの話 を 聞 い て い る と 。「 僕 も 、 私 も 、 い つ か は 作 家 の 椅 子 で 読 み た い 」 と い う 思 い が 共通してあるようです。
こ こ で 見 ら れ る 光 景 は 、 選 択 理 論 で い う 「 上 質 世 界 」 を 体 現 し た も の で は な い か と 私 は 考 え て い る 。「 作 家 の 椅 子 に 座 っ て 自 分 の 作 品 を 読 み 上 げ た い 」 と い う 「 上 質 世 界 」 の イ メ ー ジ が 学 習 者 の 中 に 芽 生 え 、 そ し て 、 そ こ に 一 緒 に い て ほ し い 人 物 と し て 、 教 師 や 仲 間 を 入 れ る こ と に 成 功 し た 場 合 、 学 習 者 は 「 書 く 時 間 」 を 自 分 の 目 標 達 成 の た め に 、 自 分 を コ ン ト ロ ー ル し な が ら 、 つ ま り 自 律 的 に 使 う こ と が で き る よ う に な っ て い く 。 ま た 、 そ の よ う な 「 上 質 世 界 」 を 築 き 上 げ る こ と に 成 功 し た 場 合 、 学 習 者 は 書 く こ と を 重 要 な 行 動 で あ る と 位 置 づ け 、 ま た 、 書 く と い う 活 動 お よ び 授 業 実 践 に 好 意 を 持 つ 状 態 に な っ て い る と 考えられる。
4.まとめ
本研究ノートの目的は、ライティング・ワークショップはこれまでの教育実践と何が異 なるのか、つまり、ライティング・ワークショップの秘密について選択理論を通じて説明 することであった。
ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ と は ど の よ う な 授 業 な の か 、 な ぜ ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク ショップは楽しいのか。学習者は書くことを好きになるのか。
その答えを私なりにまとめたい。
ライティング・ワークショップは、意図せず自然に、選択理論の知見が用いられた、学
習者と教師による継続的な学習活動である可能性が高い。
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学習者は、自分の書きたいものを書き上げた状態、それを皆に発表(あるいは提出)し ている状態を「上質世界」において、そこに近づくために、それぞれが最適な選択をし続 ける。
ま た 、 書 き 手 と し て の 自 分 に 「 自 由 と 選 択 の 保 証 」 と 「 楽 し む 」 こ と を 与 え て く れ る
「 仲 間 」 と 「 実 践 者 と し て の 教 師 」 を 、 学 習 者 が 彼 ら の 「 上 質 世 界 」 に お く 可 能 性 も 高 い 。
つ ま り 、 学 習 者 の 「 上 質 世 界 」 に は 、「 仲 間 」 や 「 実 践 者 と し て の 教 師 」 が 存 在 し 、 と もに「楽しみ」ながら「自由と選択の保証」のもとで、書きたいものを書きあげた自分自 身の姿があるのではないか。このような「上質世界」に導かれて、学習者は自分自身をコ ントロールし、自律的な書き手に育っていく、そういった継続的な学習活動である可能性 が高い。
最後に、先にライティング・ワークショップでは、意図せず自然に選択理論が用いられ ていると述べた点について、少し説明をしたい。
ウ イ リ ア ム ・ グ ラ ッ サ ー ( 2000 ) に 、 こ の よ う な 記 述 が あ る 。「 ハ ー ブ ・ ケ レ ハ ー
(Hearb Kelleher)はサウスウェスト航空の卓越した最高責任者であった。彼は会社経営 に選択理論を実践していたのである。彼は恐らくそのことには気づいていない。」
このように、選択理論は、実は私達の日常生活の中で自然に使われていることがある。
ライティング・ワークショップが実践されている教室では、自然発生的に選択理論が用 いられた状況が起こっているのではないかと私は考えている。教師と学生という関係性に おいては、外的コントロールを使用することが一般的、常識的だと思われている(ウイリ アム・グラッサー 2001)が、この実践においては、従来の常識の型を破ることで、そう いったことが起きているのではないかと思う。
従来までの方法でうまくいかなかったのであれば、ライティング・ワークショップのよ うなオルタナティブを試してみる価値があると考える教師も増えてきている。
昨今、大学生が幼稚になったと言われて久しい。私も同様の感想を持っている。そのた め、現在の大学の教育現場では、外的コントロールがより強く用いられようとしている。
出席チェックの IT 化や、課題提出の管理等、IT 技術の進化に伴い、外的コントロールが より精緻に強固に行われている。しかし、そこで本当の学びは育つのだろうか。最も創造 性 を 必 要 と さ れ る 「 書 く こ と 」 の ク ラ ス に お い て 、 学 生 た ち が 発 揮 し て い る 創 造 性 が 、
「どうやって効率よく、とりあえずこの苦しみから解放されるか」といった方向に傾きつ つあることに、私は危機感を抱いている。
ライティング・ワークショップという実践が、大学のアカデミック・ライティングの教 室でも用いられれば、学生たちが書くことを好きになり、自律的な学習者として立ちあら われるようになるのではないという可能性を感じている。
今後の課題としては、ライティング・ワークショップのような実践を、どのような物差 し で 測 る こ と が 適 切 か 、 ま た 、「 好 き 」 や 「 楽 し み 」 と い っ た 感 情 と 学 び と の 関 連 を ど の ように明示的に示すことができるのか、教育効果測定に論点を移して、考察していくこと が必要だろう。
(影山陽子 かげやまようこ・日本女子体育大学・[email protected])
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注
1.「作家の椅子」というのは、ライティング・ワークショップで用いられる工夫の一つ であり、「書き手」である子どもたちが自分の作品をクラス全体に読みあげるときに 座るという目的で置かれた椅子を指す。
参考文献
岩瀬さやか・岩瀬直樹・甲斐崎博史・金子文昭・菊地博之・本田陽志惠・吉田政晃・小坂 敦 子 ・ 吉 田 新 一 郎 ( 2008)『 作 家 の 時 間
「 書 く 」 こ と が 好 き に な る 教 え 方 ・ 学 び 方
【実践編】』新評論
ウ イ リ ア ム ・ グ ラ ッ サ ー ( 2000) /柿 谷 正 期 訳 『 グ ラ ッ サ ー 博 士 の 選 択 理 論
幸 せ な 人 間 関係を築くために』アチーブメント出版
ウ イ リ ア ム ・ グ ラ ッ サ ー ( 2001) /柿 谷 正 期 訳 『 あ な た の 子 ど も が 学 校 生 活 で 必 ず 成 功 す る法―なぜ、この学校には落ちこぼれが一人もいないのか―』アチーブメント出版 ウ イ リ ア ム ・ グ ラ ッ サ ー
カ ー リ ー ン ・ グ ラ ッ サ ー ( 2003) /柿 谷 正 期 訳
『 結 婚 の 謎 』
アチーブメント出版
影 山 陽 子 ( 2001)「 上 級 学 習 者 に よ る 推 敲 活 動 の 実 態 -ピ ア ・ レ ス ポ ン ス と 教 師 フ ィ ー ド バック-」お茶の水女子大学人文科学紀要第 54 巻,pp.107-119
影 山 陽 子 ( 2010)「 大 学 学 部 留 学 生 授 業 に お け る ラ イ テ ィ ン グ ・ ワ ー ク シ ョ ッ プ の 試 み 」 アカデミック・ジャパニーズ・ジャーナル 2,pp.41-55
ラ ル フ ・ フ レ ッ チ ャ ー & ジ ョ ア ン ・ ポ ー タ ル ピ ( 2007) /小 坂 敦 子 ・ 吉 田 新 一 郎 訳 『 ラ イ ティング・ワークショップ「書く」ことが好きになる教え方・学び方』新評論
Pulus,T.M.(1999)The
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student Writing.Jornal
of Second Language Writing,8.(3),265-289選択理論.jp http://www.choicetheory.jp(2011 年 5 月 23 日アクセス)