日本小児循環器学会雑誌 7巻3号 382〜389頁(1991年)
小児期心疾患の肺動脈弁輪径
(平成2年11月5日受付)
(平成3年6月27日受理)
近畿大学心臓小児科
砂川晶生 横山達郎
近畿大学心臓外科
城 谷 均
key words:肺動脈弁輪径,肺動脈径,先天性心疾患,心血管造影
要 旨
小児期心疾患の肺動脈弁輪径を計測し,その大小を規定する要因を検討した.対象は,川崎病既往児 からなる正常対照群41例と各種小児期心疾患213例であり,疾患群の内訳は,心房中隔欠損35例,心室中
隔欠損53例,非チアノーゼ性ファロー四徴8例,ファロー四徴77例,肺動脈弁狭窄25例,大血管転位 Jatene術後6例,原発性肺高血圧3例,大動脈弁上狭窄症候群5例である.肺動脈弁輪径は,心血管造
影の側面像で,拡張末期において計測した.正常対照群では,肺動脈弁輪径と体表面積の間に,肺動脈 弁輪径=19.3×体表面積゜・385(r=0.92,p〈0.01)の関係を認めた.疾患群の肺動脈弁輪径は,上記の回 帰式から求めた体表面積あたりの正常予測値に対する百分率で表し,正常対照群と比較した.この結果,肺動脈弁輪を増大する要因としては,①左右短絡による右室の拡大(心房中隔欠損,心室中隔欠損),② 右室機能低下による右室の拡大(原発性肺高血圧)等が挙げられ,縮小する要因としては,③漏斗部中 隔の前方への偏位による右室流出路の低形成(ファ・一四徴症),④肺動脈弁狭窄,⑤肺動脈Valsalva洞 への手術的侵襲(大血管転位Jatene手術後)等であった.肺動脈弁輪の大きさは,肺動脈の大きさとは,
必ずしも一致せず(心室中隔欠損,原発性肺高血圧等),むしろ,右室(右室流出路)の大きさに関連が あると考えられた.
はじめに
肺動脈径が,各種の小児期心疾患において,その血 行動態を反映して変化することは,臨床上,日常的に 経験する.また,ファロー四徴修復術やフォンタン型 手術では,肺動脈径が,肺血管床の発育を反映すると の前提を基に,手術適応決定の際の条件の一つとして 重要視されている1).
肺動脈弁輪径は,ファロー四徴修復術においては,
肺動脈弁輪を越えるパッチを使用するか否かの手術術 式を左右する2).さらに,その大小は,術後の残存肺動 脈狭窄や続発性肺動脈弁逆流の程度と密接な関係があ
り,術後の予後を規定する重要な因子である3).
別刷請求先:(〒589)大阪府大阪狭山市大野東 377の2
砂川 晶生
従来,肺動脈径と肺血行動態の関係については,多 くの報告4)−1°)があるが,肺動脈弁輪径に関しては,十 分な検討がなされていない.また,Sieversら7}は,正 常小児例で肺動脈弁輪径,肺動脈径を検討し,肺動脈 弁輪は,肺動脈ではなく,右室流出路と機能的単位を 構成すると報告している.このことは,各種心疾患に おける肺動脈径の変化と肺動脈弁輪径の変化が必ずし も一致しない場合があることを示唆していると考えら れるが,このような観点から,心疾患児における肺動 脈弁輪径を検討した報告はない.そこで,小児の各種 心疾患における肺動脈弁輪径を計測し,その大小を規 定する要因を検討した.
対象と方法
肺動脈弁輪径(PAD)計測の対象は,正常対照群41 例と各種小児期心疾患213例である(表1).正常対照
日小循誌 7(3),1991 表1 対象
川崎病の既往(正常対照)
心房中隔欠損 心室中隔欠損(1型)*
心室中隔欠損(II型)*
非チアノーゼ性ファロー四徴 肺動脈弁狭窄
ファP一四徴 大血管転位Jatene術後 原発性肺高血圧 大動脈弁上狭窄症候群
41例 35例 21例 32例 8例 25例 77例 6例 3例 5例
* 1型,II型は, Kirklinによる分類
群は,心奇形や心機能低下のない川崎病既往児で,男 女比は,25対16,年齢は,7ヵ月から17歳0ヵ月,平 均6歳6ヵ月である.疾患群は,男児110例,女児103 例で,年齢は,6ヵ月から16歳4ヵ月,平均4歳1カ 月である.非チアノーゼ性ファロー四徴とは,右室流 出路の形態はファロー四徴に合致するが,肺対体血流 量比(Qp/Qs)が1を越え,動脈血酸素飽和度が92%
以上の症例である.大血管転位Jatene手術
(Lecompte変法)後の症例の手術年齢は,6ヵ月から 1歳5ヵ月,平均9ヵ月で,手術から術後検査までの
期間は2ヵ月から3年3ヵ月,平均1年8ヵ月であっ
た.病型は,1型3例,II型3例である.術後,いず れも,軽度から中等度の肺動脈弁上狭窄(右室一肺動 脈圧較差:17〜43mmHg)を認めている.PADは,右室造影或は上大静脈造影(60〜70コマ/
分)の側面像において,拡張末期の径を計測した(図 1).また,一部の症例では,右肺動脈径(RPA),右 室拡張末期容積(RVEDV),右室駆出率(RVEF),右 室一回拍−出量(RVSV)を求めた. RPAは,シネフィ ルムの正面像において右肺動脈の第一分岐直前の最大 径を計測し,体表面積あたりの正常予測値1)に対する 百分率で表した.右心室容量は,既に報告した方法11)に 基づいて計測し,これも,体表面積あたりの正常予測 値1 )に対する百分率で表した.さらに,PAD計測の妥 当性を検討する目的で,心血管造影後3ヵ月以内に修 復手術を行ったファP一四徴の22例について,心血管 造影上の計測値と術中計測値を比較した.術中の計測 は,1mm刻みの円筒型のサイザーにより行った.
結 果
ファロー四徴の22例における心血管造影上の計測値 と術中計測値の間には,Y=0.92X+O.51(r=0.93,
p<0.01)の比較的良好な相関を認めた(図2).
図1 心血管造影による肺動脈弁輪径の計測.側面像 の拡張末期において,矢印で示した部位の距離を計 測した.
ロ ベ 5 0 5
」£Φ∈句古g言⁝︿﹀﹂讐o互£
唱Φヨω8芝≧o︾=巴且8﹂葦
10 15 20 Cineangiographically Measured Putmonary AnnulUS Diameter(mm)
図2 ファロー四徴における心血管造影から求めた肺 動脈弁輪径と術中に計測した肺動脈弁輪径の比較
正常対照群では,PADと体表面積の間に, Y=19.3 Xo・38s(r=O.92, p<0.01)の関係を認めた(図3).
疾患群のPADは,上述の回帰式から体表面積あた りの正常予測値を算出し,これに対する百分率で表し た.各疾患のPADを図4,5に示した.
心房中隔欠損のPADは,平均127±20%(平均±標 準偏差)と増大を認めた(対正常,p<0.01).また,
Fick法から算出したQp/QsとPADの間には, r=
0.73(p<0.01)の正相関を認めた(図6).RPAも同 様に,128±19%と増大し(p<0.01),Qp/Qsとの間に
384−(30)
25
(∈∈︶
0 5 0 52 1 1
」2ΦE句己ω三コ巨︿﹀﹂栢=oE言江
0 0.5 1.0 1.5
Body Surface Area(m2)
図3 正常対照例における肺動脈弁輪径と体表面積の 関係
言200
=
歪
是δ呈
三10。
<言言
亘 三
●
●
︷1
D−●6
0●●●●●
●●●●● ●●●●●●1●●●8 ●●−
●
●
1
●●8受
1
127:…:20 106t12 110:1:12 95 t 12 n:35 n=21 n:32 n:9
ASD V︷
企01Dー
VSD ●¢yenotic(2} TOF
図4 各種心疾患における肺動脈弁輪径(1).ASD:
心房中隔欠損,VSD:心室中隔欠損, TOF:ファ P一四徴.1,2はKirklinによる心室中隔欠損の分
類を示す.
r=0.73(p〈0.01)の相関を認めた.
心室中隔欠損II型のPADは,正常に比べ有意に増 大していた.1型においても,軽度増大していたが,
統計的有意には至らなかった(表2).心室中隔欠損全 体で,PADとQP/Qsの関係をみると,r=0.64の関係 を認めた(p<0.01)(図7).RPAは,正常に比べて 有意に増大し,Qp/Qsとの間には,1型ではr=0.80,
II型ではr=0.71の相関を認めた(p<0.01). RVEDV
日本小児循環器学会雑誌 第7巻 第3号
言200芸三
三 亘
妄言100
言εξ
ユ
84t10 Tlt16
n=25 n=77
鞠‖
PS
75 t15 n:6
112±:29 93±17
n=3 n=7
TOF TGA/P PPH SAS 図5 各種心疾患における肺動脈弁輪径(2).PS:肺 動脈弁狭窄,TOF:ファロー四徴, TGA/P:大血管 転位のJatene手術(Lecompte変法)後, PPH:原 発性肺高血圧,SAS:大動脈弁上狭窄症候群
200
§
0 15
」●一〇宗工一⇔
oo
●●三コ==<﹂〜oエoε百亀
r:0.73 n:35 PくO.Ol
.・・t
1.0 2.0 3.0 4.O
Qp/Os
図6 心房中隔欠損における肺動脈弁輪径と肺対体血 流量比の関係
表2 心室中隔欠損,非チアノーゼ性ファロー四徴に おける諸指標
Qp/Qs PAD(%) RPA(%) RVEDV
(%)
VSD(1型) 1.71±0.75 106±12 113±18軸 123±27**
(21) (21) (21) (21)
VSD(II型) 2.10±0.60 110±12 120±14** 145±30牟*
(32) (32) (30) (24)
acyanotic TOF 1.87±0.74 95±12 97±14 130±28°*
(9) (9) (9) (8)
VSD;心室中隔欠損, TOF;ファロー四徴,
();症例数,他の略語は,文中を参照
* :対正常p<O.Ol
も同様に増大し,Qp/Qsとの間にそれぞれr=0.70,
r=0.66の相関を認めた(p〈0.01).
心室中隔欠損と心房中隔欠損において,Qp/Qsに対 するPADとRPAの増大の程度を比較した(表3).
Qp/Qsが1から2未満の症例(A群)において,心室
平成3年10月1日
三
芸15。
,皇
三
三= ξ1。。亘
星
1.o
r:0.64 n:35 PくO.Ol ●▲
● ●●
●●●
2.o 3.o
Qp/Qs
4.0
図7 心室中隔欠損における肺動脈弁輪径と肺対体血 流量比の関係.●:1型,▲:II型
表3 心室中隔欠損と心房中隔欠損における肺動脈 弁輪径の比較
症例数 Qp/Qs RPA(%) PAD(%)
VSD(A)
ASD(A)
35 14
L54±0.28 1.53±0.24
110±12 115±17
103±9 113±14
ns ns p<0.01
VSD(B)
ASD(B)
16 16
2.60±0,28 2、48±0.27
130±9 132±13
118±8 132±10
ns ns p<0.01
A:肺対体血流量比が1から2未満の症例 B:肺対体血流量比が2から3未満の症例 略語は文中参照
中隔欠損群と心房中隔欠損群のQp/Qsは有意差はな く,RPAにも差はなかったが, PADは心房中隔欠損 群で有意に大であった.Qp/Qsが2から3未満の症例
(B群)においても同様で,PADは心室中隔欠損群で 有意に大きかった.
非チアノーゼ性ファロー四徴では,Qp/Qsは,平均 1.87±0.74であり,RVEDVは増大していたが, PAD,
RPAともに正常範囲内にあった(表2).
肺動脈弁狭窄のPADは,平均84±10%であり,正常 に比べて,有意に小であった(p〈0.01).PADと右室 収縮期圧の間には,r=−O.44(p<0.05)の関係を認 めた(図8),また,右室収縮期圧が75mmHg以上の8
例のPADは,76±6%であり,75mmHg未満の18例
のPAD,87±10%に比べ,有意に小であった(p<0.05).
ファロー四徴では,平均71±16%と正常より小で
あった(p<0.01).
Jatene手術後の大血管転位症例では, PADは,75±
15%と正常以下であった(p<O.Ol).図9は,手術前
_100≡三
宣芸
ξ,。
言
ξ告言工
r:−0.44 n:25 pく0.05
50 100 15e
RVP(mmHg)
図8 肺動脈弁狭窄における肺動脈弁輪径と右室収縮 期圧(RVP)の関係
㏄ 50
{
S一
」巴Φ∈oδ臼︒三言=<ご口忘E三ユ
Preope Pos{ope
図9 大血管転位におけるJatene手術(Lecompte変 法)前後の肺動脈弁輪径の変化.Preope:術前,
Postope:術後
表4 原発性肺高血圧における諸指標
症例
PAD
(%)RPA
(%)
RVEDV
(%)
RVEF RVSV
(%) Pp/Ps Y.A.Y.K.
T.H.
144 104 88
150 112 188
201 70 93
0.16 0.48 0.46
51 55 71
0.82 0.87 0.63 Pp/Ps;肺対体収縮期圧比
他の略語は文中を参照
後のPADの変化を示したものである.ここで言う肺 動脈弁輪とは,本来は,大動脈弁輪である.術前の大 動脈弁輪径を,PADの正常予測式で,正常に対する百 分率で表すと,術前は,正常範囲にあった.
原発性肺高血圧(表4)では,右室機能の著明な低
386−(32)
表5 大動脈弁上狭窄症候群における諸指標
症例 Age
(years)
PAD
(%)
RPA
(%)
RVEDV
(%)RVSV
(%)
Y.F. 0.9 77 40
5.6 113 71 114 104
H.0. 3.7 78 103 93 89
8.9 78 105 112 104
M.0. 8.3 114 83 127 120
K.K. 0.8 101 49 123 113
M.F. 6.7 89 59 96 93
略語は文中を参照
下を示し,RVEDVの増大を認めた症例(YA)で,
PADの増大を認めた. RVSVは,いずれの症例でも,
低値であったが,RPAは,2例で,増大を認めた.症 例T.H.では, RPAは著明に増大していたが, PADは 正常範囲であった.
大動脈弁上狭窄症候群のPAD(表5)は,若干低値 を示した症例があったが,平均的には,正常範囲内に あった.SVは全例,正常範囲内にあったが, RPAが 小さい症例が認められた.
考 案
本研究におけるPADは,心血管造影写真の一方向 からの計測であるが,ファロー四徴において,心血管 造影から求めたPADと術中計測値は比較的良好に一 致し,計測の信頼性が確認できた.
正常肺動脈弁輪径について
心血管造影によるPADの正常値については,岸本 ら12),Sieversら7)の報告がある.岸本らは,心室造影 側面像における収縮早期の弁尖開放時の,弁付着部の 最大径を計測し,PAD=16.5×BSA°・45(r=O.90, p<
O.OOI)の回帰式を示している. Sieversらは,側面像 において,PADの収縮期の最大径と拡張末期の径を計 測し,それぞれ,PAD=18.3×BSAo・416(r=0.843),
PAD=17.5×BSA°・338(r=0.873)の回帰式を報告して いる.心血管造影による肺動脈弁輪の計測においては,
我々の経験上,収縮期には弁付着部位が不明瞭になり,
弁輪を同定することが困難なことが多い.拡張末期に 比べ,収縮期の計測では,主肺動脈近位部を弁輪部と 誤認する可能性が高いと考え,本研究では,拡張末期 の径を計測した.
従来から,房室弁,半月弁の弁輪径の正常値として,
Rowlattら13)の死体心の計測値が頻用されている.彼 らの回帰式は,PAD=11.42×log(BSA)+15.29であ り,我々の心血管造影から求めた計測値に比べておお
5 0 5 0 5ウロ ウロ ロ
(∈∈︶﹂£Φ∈6旧Oω三⊃⊂⊂︿Φ﹀■口﹀Σ編=o∈言江
0
日本小児循環器学会雑誌 第7巻 第3号
.Y.19.3♪・38モS、n。k。w。)
O.416▲Y=18.3X {Sleve「s}
■Y=11.4210g(X)+15.29 (Rowlatt}
0.5 1.0 1.5 Body Surface Area(m2}
図10 各報告における体表面積あたりの肺動脈弁輪径 の正常予測値
よそ8割と小さい(図10).死体心においては,ホルマ リン固定により収縮した状態の計測であり,病理標本 から求めた正常値を臨床応用する際には注意が必要で
ある.
小児期心疾患における肺動脈径,肺動脈弁輪径の変 化について
先天性心疾患における肺動脈径の変化については,
古くから報告4ト6)9)がある.これらの報告によると,心 房中隔欠損,心室中隔欠損,動脈管開存等の肺血流量 の増加する疾患においては,右肺動脈径が増大す
る4) −6).また,心房中隔欠損では,主肺動脈径の増大の 程度が,肺対体血流量比に相関する9}.一方,ファロー 四徴,三尖弁閉鎖等の肺血流量の減少する疾患では,
右肺動脈径が減少する4)6).また,肺動脈弁逆流におい ても,肺動脈を通過する血流量の増加によって,右肺 動脈径が増加する6)とされている.その他,肺動脈弁狭 窄では,乱流による肺動脈壁へのストレスの増大に
よって,また,肺高血圧においても,右肺動脈径が増 大するとされている5).本研究においても,心房中隔欠 損,心室中隔欠損,原発性肺高血圧等で,右肺動脈径 は,上述したのと同様の変化を示した.しかし,非チ アノーゼ性ファロー四徴では,肺血流量が増加してい るにもかかわらず右肺動脈径は増大していなかったこ と,大動脈弁上狭窄症候群では,右室一回拍出量が正 常範囲にあるにもかかわらず右肺動脈径の小さい症例 があったことかどから,肺動脈径の大小には,肺動脈
平成3年10月1日
内の血流量や圧の変化等の血行動態の変化以外の先天 的な要因(おそらく,肺動脈壁の性状等)も関与して いると思われる.
先天性心疾患におけるPADについて, Gussen−
hovenら14)は,心エコーによって(PAD)2/(大動脈弁 輪径)2値を検討し,心房中隔欠損,心内膜床欠損では増 加,ファロー四徴,三尖弁閉鎖では減少,心室中隔欠 損,肺動脈弁狭窄では正常範囲であったと報告してい
る.
PADの大小を規定する要因を考える際に,肺動脈弁 輪が肺動脈と同様の変化をするものかどうかを検討す る必要がある.
Sieversら7)は,正常例において,体表面積に対する PAD,左右肺動脈径,右室容積の指数回帰式の指数を 比較し,肺動脈弁輪における指数は,左右肺動脈にお ける指数と明らかに異なり,右室容積における指数の おおよそ1/3であったと報告している.彼らは,この結 果を基に,肺動脈弁輪は,肺動脈ではなく,右室と機 能的単位を構成すると述べている.このことは,肺動 脈弁は,右室流出路の筋肉に支持されているだけであ り,肺動脈弁輪としての線維性の組織はないという解 剖学的所見15)16}からも納得できる.すなわち,肺動脈弁 輪は右室流出路の一部と考えるべきであり,その大き さは肺動脈径ではなく,むしろ,右室流出路の大きさ と関連しているということである.
今回の研究対象の中で,原発性肺高血圧の症例T.H.
では,PRAは著明に増大していたが, PADは正常範 囲にあった.また,大動脈弁上狭窄症候群のK.K., M.
F,では,RPAは小さかったが, PADは正常範囲に あった.これらの症例では,明らかに,肺動脈径と肺 動脈弁輪径の変化が一致しない.いずれの症例におい
ても,RVEDVはPADと正常範囲にあり, Sievers
ら7)の主張と予盾しない.また,心房中隔欠損と心室中 隔欠損においては,共に,肺血流量に応じたPAD,
RPAの増大を示し, RPAの増大の程度は両疾患にお いて差がなかったが,PADの増大の程度は,心房中隔 欠損に比べ,心室中隔欠損では小さかった.心房中隔 欠損における右室は左右短絡量に比例して拡大す る 7).心室中隔欠損においても拡張期の左右短絡に よって右室の拡大を認めるが,心房中隔欠損ほど拡大 しない11).これらのことを考慮すると,Sieversら7)の 述べるように,肺動脈弁輪の大きさは,肺動脈ではな く,むしろ右室の大きさと関連しており,右室が心房 中隔欠損ほど拡大しない心室中隔欠損ではPADの増
大も軽度であるとすることが妥当と考えられる.右室 が均等に拡大するとすると,PADは,右室拡大分の三 乗根分増大するはずであるが,心室中隔欠損において,
体積としての右室の拡大の程度と,径としてのPAD の増大の程度を比較すると,必ずしも一致しない.従っ て,心室中隔欠損における右室流出路の拡大の程度に は,拡張期の左右短絡量の多少だけでなく,欠損口の 位置や肺高血圧の有無等の影響も考えられる.Gussen−
hovenらの報告では,心室中隔欠損のPADは正常範 囲にあったとしているが,彼らも,考察しているよう に,左右短絡量の少ない症例を対象としていることに 原因があると考えられる.実際,今回の検討において も,Qp/Qsが2未満の症例のPADは平均的には正常 と差がなかった.
肺動脈弁狭窄のPADについて, Gussenhovenら14)
は正常であったと報告しているが,本研究では,右室 収縮期圧に逆相関して小さかった.彼らが対象とした 肺動脈弁狭窄の程度が明かではないので,この結果の 違いが何によるものかは不明である.PADが小さい原 因としては,元来小さい,右室後負荷の増大による右 室流出路の求心性肥大に続発した,弁の癒合によって 弁輪の発育が阻害された,等が考えられる.
ファロー四徴においては,円錐部中隔の前方偏位に よる右室流出路の低形成があり,PADが小さい.これ は,本症の基本的な解剖学的特徴である.非チアノー ゼ性ファロー四徴のPADは,(チアノーゼ性)ファ ロー四徴例とは異なり,ほぼ正常範囲にあったが,こ れは,肺血流量が減少していないことによる二次的な 結果というよりも,PADに代表される右室流出路の低 形成の程度が肺血流量を規定した結果と考えられる.
大血管転位のJatene手術後のPADは,平均的に正 常より小さかった.術前は,PADとしては正常範囲に あったので,手術を契機として,発育が阻害されたも のと考えられる.術後の肺動脈狭窄に対する再手術例 の経験と,いずれの症例も,肺動脈吻合部や異種心膜 によって補填されたValsalva洞欠損部と思われる部 位に狭窄を認めていることから,動脈壁への手術侵襲 に続発する炎症性変化等が波及して,肺動脈弁輪の発 育が阻害されたものと考えている.
以上をまとめると,PADを増大する要因としては,
①左右短絡による右室の拡大,②右室機能低下による 右室の拡大等が挙げられ,縮小する要因としては,③ 漏斗部中隔の前方への偏位による右室流出路の低形 成,④肺動脈弁狭窄,⑤肺動脈Valsalva洞への手術的
388−(34)
侵襲等であった.肺動脈弁輪の大きさは,肺動脈の大 きさとは,必ずしも一致せず,むしろ,右室(右室流 出路)の大きさに関連があると考えられた.
文 献
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日本小児循環器学会雑誌 第7巻 第3号
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平成3年10月1日
Pulmonary Annulus Diameter of Various Heart Diseases in Infants and Children Akio Sunakawai), Tatsuo Yokoyamai} and Hitoshi Shirotani2)
1)Division of Pediatric Cardiology, Kinki University Hospital
2)Department of Cardiovascular Surgery, Kinki University School of Medicine
Pulmonary annulus diameters were measured in 41 patients with history of Kawasaki disease
(control group)and 213 infants and children with heart disease including atrial septal defect,
ventricular septal defect, tetralogy of Fallot, pulmonary valvular stenosis, transposion of great arteries
(postoperative), primary pulmonary hypertension and supravalvular aortic stenosis syndrome. In some patients, right pulmonary artery diameters were also measured. In control group, there was a close power relation between body surface area(BSA)and pulmonary annulus diameter(PAD),
expressed as PAD=19.3×BSAo・385(r=0.92). Using this equation, pulmonary annulus diameters of various heart diseases were expressed as percent of normal value, and compared with control.
Pulmonary annulus diameter and right pulmonary artery diameter were increased and correlated well with pulmonary to systemic flow ratio in patients with atrial septal defect, and also in those with ventricular septal defect. The degree of enlargement of pulmonary annulus diameter was however smaller in patients with ventericular septal defect than those with atrial septal defect. In a case of primary pulmonary hypertension and severe right ventricular dysfunction, pulmonary annulus diameter was increased. Pulmonary annulus diameter was decreased in patients with pulmonary valvular stenosis, those with tetralogy of Fallot and those with transposion of great arteries undergoing Jatene s operation.
All these observations indicate that the size of pulmonary valve annulus is influenced by various pathological conditions and its change is not necessarily parallel to that of pulmonary artery. We consider that its size relates to the size of right ventricular infundibulum rather than that of pulmonary artery.