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㊥ ㊥ 二尖弁及び三尖弁付き心外導管の機能についての実験的研究

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日本小児循環器学会雑誌 7巻2号 289〜298頁(1991年)

二尖弁及び三尖弁付き心外導管の機能についての実験的研究

(平成2年6月13日受付)

(平成3年2月12日受i理)

東京女子医科大学付属日本心臓血圧研究所循環器小児外科(主任:今井康晴教授)

       三 隅  寛 恭

key words:Rastelli手術, Extemal conduit, Valved pericardial roll,弁付き心外導管

      要  旨

 グルタルアルデヒド処理馬心膜(Xenomedica)を用いた二尖弁及び三尖弁付きの心外導管を作製し,

動物実験にてその機能を評価した.実験は左心室心尖部から下行大動脈に心外導管をinterposeしたバ イパスを作成し同じ条件下で二尖弁と三尖弁を切り替えて行った.逆流量は三尖弁より二尖弁の方が有 意に多く,特に低心拍出量時に顕著となった.狭窄に関しては,最大開口面積は二尖弁の方がやや大き かったが,圧差では両者に有意な差はみられなかった.心室の拡張末期圧(EDP)は逆流の影響で二尖 弁の方が高い値であった.弁の開閉様式では,二尖弁の方が弁の閉鎖に時間を要しており,このことが 逆流量が多いことに関与していた.弁の開放速度は二尖弁の方が著明に速く,弁へのストレスが強いも のと思われた.以上の結果より,現時点では臨床的には三尖弁付き外導管の使用が望ましいと考えられ

た.

 心外導管を使用した手術は,ファロー四徴症,完全 大血管転位症III型,肺動脈狭窄を伴う両大血管右室起 始症,総動脈幹症等の種々の手術に使用されている.

我々はこの心外導管の材質としてXenomedica心膜

(グルタルアルデヒド処理馬心膜)を使用して三弁付き の心外導管を作製し,臨床使用し良好な成績を得てい る1}一 4).一方,また二尖弁および三尖弁付きの心外導管 のシミュレーターを用いた実験的研究報告や臨床経験 の報告が散見されている5) 8).しかし,二尖弁付き心外 導管と三尖弁付き心外導管の実験動物を用いた血行力 学的検討は十分になされていない.シミュレーターを 用いた実験では種々の条件は設定できるが,心外導管 による心室への影響等の観察ができない点でやはり in vitroであり,必ずしも生体内現象を現していると はいえない.そのため,今回動物実験(in vivo)にて 弁付き心外導管の機能及びその心室への影響の解析を

行った.

        方法および手技  く心外導管の作製法〉

 心外導管の作製方法は図1に示す.二尖弁,三尖弁 とも噂管の直径は18㎜とした.二尖弁は全開放型 となるように導管の周径の半分の長さの半円形弁尖を 二枚使用し,弁尖の深さは18mmを縫着する時には14 mmまで短縮し,弁尖に膨らみを持たせバルサルバ洞 の効果を期待した.三尖弁は,閉鎖時の弁尖の長さを 考慮し導管周囲径58mmに対し25mmの弁尖を三枚使 用し二尖弁と同様に弁尖に膨らみをもたせて縫着し

2尖弁

58mm

3尖弁

58mm

別刷請求先:(〒162)東京都新宿区河田町8−1      女子医大心研循環器小児外科

       三隅 寛恭 図1 二尖弁および三尖弁付き心外導管の作製法

(2)

た.

 〈手術方法〉

 体重12〜15kgの雑種成犬8頭を用いた.左開胸にて 左心室心尖部より胸部下行大動脈にノミイパス路を作成

し,その間に二尖弁と三尖弁を並行させ切り替えがで きるように心外導管をinterposeさせ,その遠位部に 電磁流量計を装着した(図2).バイパスが完成した時 点で,上行大動脈を遮断しapico・aortic bypassとし た.心拍出量の変化は,急速しゃ血と急速輸血により 調節し,同じ血圧,心拍数,心拍出量の条件で二尖弁

と三尖弁を切り替え左心室圧(導管近位部の圧),大動 脈圧(導管遠位部の圧),流量の測定をおこなった.しゃ 血と輸血によって血圧,脈拍数,心室圧は変化し,血

図2 実験モデルの模式図

Xenemedlcaの導管

圧は20〜100mmHg,脈拍数は90〜150/min,心室圧は 20〜100mmHgの変化の中で測定をおこなった.電磁 流量計にて測定した血流波形で順行性の流量と逆流量 を面積計算し,その差でstroke volumeを算出した

(図3).また,生体内面積計9)1°)を用いて,real timeの 弁口面積を測定し,面積変化を測定した.

 〈測定の種類〉

 (1)逆流について

 ①同じ条件下で測定した二尖弁と三尖弁のstroke volumeを比較したが,必ずしも同じ値とならないも のもあるため,10%以内のstroke volumeの違いを同 じものと見たとき,二尖弁と三尖弁の逆流率を比較し

た.

 ②次に,stroke volumeの変化に伴う二尖弁,三尖 弁の逆流率をそれぞれの群で回帰直線を求め比較し

た.

 ③Stroke volumeを1mlごとに分け,そのstroke volumeを出すために必要な順行性の1回駆出量を二 尖弁と三尖弁で比較した.

 ④大動脈圧と逆流の関係をみるために,同じ

stroke volumeの間で,大動脈圧を10mmHgごとに変 化させ,逆流率の変化を二尖弁,三尖弁別にプロット

し大動脈圧による逆流率への影響を調べた.

 (2)狭窄について

ECG

Aortic Pressure

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 Regergitatlon Flow 1

    図3 実験時の二尖弁および三尖弁付き心外導管の圧測定と流量測定データ

(3)

平成3年7月1日 291−(41)

 心外導管の前後の圧較差について二尖弁と三尖弁を 比較した.心拍数による影響をなくすために,順行性 の拍出量をその拍出時間で除した値(dV/dt)を横軸

(X軸)とし,心外導管の前後の圧較差(mmHg)を縦 軸(Y軸)とし,二尖弁,三尖弁の分布をみた.

 (3)左心室拡張末期圧(LVEDP)について  Stroke volumeとLVEDPとの関係について  二尖弁と三尖弁をそれぞれの群で回帰直線をえがき 比較検討した.

 (4)弁口面積の時間的変化について

 弁口のreal timeの変化について,生体内面積計を 使用し二尖弁と三尖弁の開閉様式の違いについて検討

した.時相のずれを防ぐために右心室一肺動脈心外導 管バイパス(右心モデル)を作製し重ねて実験を行っ た(右心系モデルでは弁下のグラフトの長さがより臨 床におけるRastelli手術に近くなる).

 〈統計処理方法〉

 同じstroke volumeでの逆流率の比較には対応の あるT検定を用いた.二尖弁,三尖弁群間の逆流率の

比較およびLVEDPの比較は分散分析にて回帰直線

を比較した.左心室一大動脈圧較差の比較は回帰直線 を求め,その相関係数を表示した.また,順行性の一 回拍出量の比較には,対応のあるT検定を使用した.

      結  果  (1)逆流について

 ①Stroke volumeの差が10%以内に納まるデータ として比較しうる値が揃ったのは4組であった.これ らすべての組で有意に(p<0.01)三尖弁が逆流率が少 ないことが示された(図4).

 ②二尖弁,三尖弁ともに負の勾配を示す回帰直線と よく相関する.回帰直線は二尖弁の方が勾配がやや急 峻であり,三尖弁の方が比較的緩徐である.このため,

stroke volumeが少ない程,回帰直線間の距離が離れ,

stroke volumeが増加するに従い近づく傾向がみられ た(図5).また,2群の回帰直線を比較したところ,

有意に(p〈0.001〜O.05)三尖弁の逆流率が低値であ ることが示された.

 ③二尖弁と三尖弁の同じstroke volumeに対する 順行性の一回拍出量を比較すると有意に(p〈0.01)二 尖弁の方が多い(表1).つまり,二尖弁の方が逆流が

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図4 同じstroke volumeでの二尖弁と三尖弁の逆流率の比較.

 外導管.TL=三尖弁付き心外導管)

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(BL=二尖弁付き心

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10

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図5 Stroke Volumeと逆流率との関係.二尖弁群と三尖弁群との比較.(BL=二尖  弁付き心外導管.TL=三尖弁付き心外導管)

 (回帰直線式と相関係数:①BL;Y=−3.58X+76.66, R=0.954, TL;Y=−1.94  X+47.01,R=0.622.②BL;Y=−3.56X+64.87, R=O.827, TL;Y=−1.60X+

 35.80,R=0.704.③BL;Y=−7.12X+83.26, R=e.911, TL;Y=−3.93X+

 51.12,R=0.929.④BL;Y=−11.37X+98.07, Rニ0.915, TL;Y=−5.35X+

 62.67,R=0.976.⑤BL;Y=−3.32X+63.20, R=0.909, TL;Y=−2.10X+

 36.90,R=0.915.⑥BL;Y=−3.60X+72.26, R=0.990, TL;Y=−4.52X+

 64.34,R=0.983.⑦BL;Y=−4.10X+71.22, R=O.875, TL;Y=−4.48X+

 62.22,R=0.878.⑧BL;Y=−3.93X+56.13, Rニ0.938, TL;Y=−1.47X+

 32.57,R=O.855)

  (これらは,8頭の実験犬の同じ条件での二尖弁,三尖弁の比較である.)

(5)

平成3年7月1日 293−(43)

表1 Stroke Volumeと順行性一回駆出量の二尖弁  と三尖弁での比較

Forward Flow(ml)

  Stroke

Volume(ml) Bicuspid Valve Tricuspid Valve

3≦<4 8.17±0.17 6.87±0

4≦<5 9.88±0.43 7.67±0.39

5≦〈6 10.32±0.50 8.38±0.56 6≦<7 10.28±1.01 9.29±0.08 7≦<8 12.03±2.52 10.92±1.13

(p〈0.01)

多かった.

 ④二尖弁,三尖弁の間では統計学的には逆流率に差 はみられないが,二尖弁の方が高い傾向がみられた.

これに対し同じ弁どうしでは,今回行った実験の範囲 内で,圧による逆流率の差はみられなかった(二尖弁 表2,三尖弁一表3).

 (2)狭窄について

 データを採取しえた症例は,すべて二尖弁,三尖弁 ともにほぼ同じ回帰直線上をえがき,有意差はなかっ た(r=0.749,0.736,0.955,0.894).つまり,狭窄に 関しては二尖弁と三尖弁とでは有意差がなかった(図

6).

 (3)左心室拡張末期圧(LVEDP)について  Stroke volumeの変化では,特異な変化を示すこと はなく,症例によって分散の傾向はまちまちであるが,

すべての実験犬で三尖弁の方がLVEDPは低値で あった.回帰直線を比較したところ有意に(p<

0.001〜0.05)三尖弁の方が低値であった(図7).

 (4)弁口面積の時間的変化について

 ①当実験モデルにおいては,弁の開放開始時期は二 尖弁,三尖弁ともほぼ同時期であった.

 ②右心系モデルの場合,三尖弁では図8Bで示す様 に弁開放は右心室圧が肺動脈圧を凌駕する以前より始 まっていた(前方の点線は弁の開放開始を,後方の点

表2 二尖弁付き心外導管における大動脈圧と逆流率との関係 Ao Pressure

(mmHg) 20≦〈30 30≦<40 40≦<50 50≦〈60 60≦<70 70≦<80 80≦〜

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7≦<8 48% 37% 44%

u

8≦<9

M

E 9≦<10 32% 35%

ml 10≦〜 42%

表3 三尖弁付き心外導管における大動脈圧と逆流率との関係 Ao Pressure

(mmHg) 20≦<30 30≦<40 40≦<50 50≦<60 60≦<70 70≦<80 80≦〜

<3 52%

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3≦<4 25% 36%,39% 47%

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60 図6 順行性の拍出量をその拍出時間で除した値(dV/dt)と左心室大動脈圧較差との

 関係(BL・=二尖弁付き心外導管. TL=三尖弁付き心外導管)

線は凌駕した時点を示す).これに対し二尖弁では図8 Aに示す様に,右心室圧が肺動脈圧を凌駕した時点で はじめて弁開放が始まっていた(後方の点線が弁の開 放開始と凌駕した時点を同時に示す).

 ③弁の最大開口面積は二尖弁の方が三尖弁より大 きかった(二尖弁は1.13cm2,三尖弁はO.51cm2)(図

9).

 ④弁の開口速度は二尖弁の方が急峻で,三尖弁の開 口は緩徐であった(二尖弁の開放速度は38.9cm2/sec,

三尖弁の開放速度は6.5cm2/sec)(図9).

 ⑤弁の開いている時間を両者で比較すると,二尖弁 は(354msec±2)(mean±SD)三尖弁は(318msec±

6)で二尖弁の方が長く開放していた.また大動脈の圧 の減少する時を閉鎖開始時として,そこから弁が閉鎖 するまでを閉鎖時間とすると,二尖弁は(185msec±

17)三尖弁は(131msec±3)で,二尖弁の方が閉鎖し にくい弁であることが解った(図9).

      考  察  (1)逆流について

 逆流率では,二尖弁のほうが三尖弁より常に多く,

この差は特にstroke volumeの少ない時に顕著と なった.これは二尖弁と三尖弁の開口および閉鎖様式 の違いをみると明らかであるが,二尖弁の方が閉鎖開 始から閉鎖終了までに時間を要するためと考えられ る.弁の閉鎖時の状態を比較すると,弁口面積のreal timeの変化から解るように,二尖弁,三尖弁ともによ く閉鎖しており,二尖弁が閉鎖時のcoaptationが不良 で拡張期に弁の閉鎖不全を起こしている状態ではない ことが解った.弁付きの心外導管の場合,バルサルバ 洞の効果がほとんど期待できないため,逆流によって 弁の閉鎖が行われると考えられるが,より多くの慣性 力を必要とする二尖弁の方が閉鎖には時間を要するも のと思われる.

 また,二尖弁の方が逆流量が多いため,左心室拡張 末期容積(LVEDV)を増加させ,三尖弁に比較し順行 性の流量を増加させていた.このため,二尖弁は三尖 弁に比し,同じ量のstroke volumeを出すためにより 多くの仕事量を必要としていることが解った.

(7)

平成3年7月1日 295−(45)

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3 4       5       6  Stroke v●lurnt(ml)

図7 Stroke VolumeとLVEDPとの関係(BL=二尖弁付き心外導管. TL=三尖弁  付き心外導管)

 (回帰直線式と相関係数:①BL;Y=O.24X+7.87, R=0.819, TL;Y=0.38X+

 7.03, R=0.744.②BL;Y=−2.45X+19.46, Rニ0.911, TL;Y=−0.52X+9.47,

 R=0.929.③BL;Y=−0.99X+14.16, R=0.991, TL;Y=−0.40X+9.45, R=

 0.974.④BL;Y=−O.33X+16.50, R=O.909, TL;Y=0.12X+9.76, R=0.915.

⑤BL;Y=0.41X+9.71, R=0.194, TL;Y=−O.03X+5.43, R=0.012.⑥BL;

 Y=1.71X十11.18, R=O.640, TL;Y=0.71X十8.61, R=O.340)

7

:監

 圧による弁の逆流への影響をみたが,逆流率は同じ stroke volumeにおいては,圧による影響はうけてい

ないことがわかった.これは,逆流が弁尖のcoapta tionがうまくいかずに閉鎖不全が起こっているので

はなく,閉鎖自体に時間を要するために起こっている ことを示していると考えられた.

 (2)狭窄について

 心外導管の前後での圧測定の結果でわかるように,

二尖弁,三尖弁の弁前後の圧較差は有意差はなかった.

2群ともほぼ同じ回帰直線をえがき相関係数も高い.

弁口の面積を測定すると二尖弁の方が開放時に関して は立ち上がりが急峻で,最大開口面積も広い.これは 二尖弁は全開放性に作製されており,開放時には,弁 尖が弁輪に重なるためで,面積を計算すると半径をr とした場合3.14r2となる.これに対し三尖弁では,開放 時に弁尖の多少余剰部分があり弁は図9のように三角

(8)

ECG

Ao pressure    mmHg

P4 preSSure

   mmHg

RVρres5ure

  mmHg

Graft F∫OMt

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図8A,8B 右心系モデルにおける二尖弁(図8A)と三尖弁(図8B)の生体内面積計  によるreal timeの弁口面積の変化.(開放開始時間の差を示す.)

ECG

L v press ure    oo

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竹r㎞0屹ル●虜= 1.30・t

流μ綱吻 怜c舳it 図9 左心系モデルにおける二尖弁と三尖弁の生体内面積計によるreal timeの弁口  面積の変化.(閉鎖開始から閉鎖終了までの時間を点線で示す.)

(9)

平成3年7月1日

形に近い形をしているので,面積は1.30r2となり,生体 内面積計による実測値と比較しても三尖弁は二尖弁の 45%であり,値としては計算値とほぼ一致する.圧較 差としては両者に差がみられることはなく,少なくと

も臨床に使用されている状態での心拍出量では圧較差 においては二尖弁,三尖弁に差はみられないものと思 われる.しかし逆流に関してこの三尖弁の余剰部分が バルサルバ洞の役割をなし速やかな弁の閉鎖に関与し ていることを考慮すると,三尖弁の有用性が示唆され

た.

 (3)LVEDPについて

 二尖弁の方が三尖弁よりLVEDPが全例で高値で

あった.この原因は逆流量が多くなり,LVEDVも増 すとともに,EDPも増加したものとおもわれる.しか し,stroke volumeとLVEDPとは一定の相関はみら れなかった.Stroke volumeが減少した時点では,逆 流率としては増加するが,逆流の絶対量としては増加 せず,stroke volumeが増加し逆流率が減少した時点 では,逆流の絶対量も増加しないため,EDPとしては,

変化が少ないものとおもわれた.

 (4)弁尖に対するストレスについて

 左心系の実験モデルでは,左心室から弁口までの距 離が離れているため,弁の開口開始時間が遅かったが,

右心系でRastelli手術の様に右心室流出路と肺動脈 間に心外導管を使用した場合,心外導管の三尖弁は右 心室が肺動脈圧を凌駕する前より開放を開始している このことは,Thubrikarらユ1)ユ2)が述べた如く,本来の 肺動脈弁,あるいは大動脈弁と同じく,心室の収縮が 始まった時点で,伸縮性をもつXenomedicaの弁輪は すでに拡大をはじめており,三尖弁の場合その弁口も 開放しはじめている.このため,三尖弁では心室圧が 動脈圧を凌駕し血液が急速に流出する時期には,弁は すでに開放途中であり,弁尖にかかるストレスは軽減 されるものと考えられる一方,二尖弁の場合には,心 外導管の弁輪が拡大を開始しても両側の交通間が延長 するのみで,弁尖の開放には影響がなく,心室圧が動 脈圧を凌駕した時点ではじめて弁の開放がはじまるた め,弁尖の開放開始時の開口速度が急峻となり,弁尖 に対するストレスも高いことが想像される.

 以上のように,弁付き心外導管の機能について,二 尖弁,三尖弁を比較検討してきた.弁尖の形態につい ては,現在臨床に応用しているより生体に近い形の弁 尖に統一し作製した.今回,弁の形態として半円形の 弁尖を用いた理由は,生件の弁により近い形で,膨ら

297−(47)

みをつけバルサルバ洞機能をもたらせるためであり,

また長方形よりも半円形の弁尖の方が血栓の形成が少 ないためである.導管の大きさとしては,臨床で体重 10kg前後の子供に使用されているサイズの直径18 mmの導管を選択した. In vivoでは, in vitroに比べ 条件的に範囲がある程度限定されてしまう.このため に,in vitroでの実験における弁尖の深さや形態によ る機能の違いは比較できなかった.しかし今回は弁そ のものの機能だけでなく,心室に与える影響や,心室 圧で駆出される時の弁尖のreal timeな変化をとら え,逆流が拡張期のどの時点で,どのような差をもっ て生じてくるのかを比較するために,in vivoで実験を おこなった.現時点では,弁の機能としては,明らか に三尖弁のほうが優れており,臨床的には,術後急性 期の負荷を軽減する意味でも三尖弁付き心外導管を使 用することが望ましい.今後,問題として残るのは,

耐久性や弁尖の石灰化を含めた長期の遠隔の問題であ ろうが,今後検討をしていく方針である.

      結  語

 ①弁付に心外導管の機能を二尖弁と三尖弁で比較

検討した.

 ②逆流に関しては三尖弁の方が優っており,特に低 心拍出量時において二尖弁との差が顕著であった.

 ③狭窄に関しては,弁自体の最大開口面積はやや二 尖弁の方が広いが,圧較差では二尖弁,三尖弁に有意 な差はなかった.

 ④心室の拡張末期圧(EDP)は逆流の影響で二尖弁 の方が高い値をとった.

 ⑤二尖弁の方が三尖弁よりも弁の開閉に時間を要 しており,閉鎖しにくい弁であった.

 ⑥現時点では,臨床的には三尖弁の使用が望まし

い.

 稿を終えるに臨み,御指導御校閲を賜わった今井康晴教 授に心からの深謝の意を捧げると共に,御指導御尽力を賜 おった黒澤博身助教授並びに東館雅文助手,御援助をして 頂いた教室員各位,研究室職員各位に心より感謝します.

      文  献

 1)Harada, Y., Higashidate, M and Kurosawa,

  Imai, Y.:Anew valved conduit with commis・

  sures using a glutaraldehyde preserved equine   pericardium:An experimental study. Eur. Surg.

  Res.,20(Suppl.1):33,1988.

 2)原田順和,河田政明,石原和明,東館雅文,黒澤博    身,今井康晴:交連部を形成した弁つき心外導管    の開発.日外会誌,90:315,1989.

(10)

3)原田順和,河田政明,石原和明,東館雅文,黒澤博   身,今井康晴:弁係き心膜・一ルを用いたexter−

  nal conduit repair.日心血管外会誌,18:574   −576,1989.

4)原田順和,河田政明,石原和明,東館雅文,黒澤博   身,今井康晴:Glutaraldehyde処理馬心膜による   交連部を形成した弁つき心外導管の作用.胸部外   科,42:457−459,1989.

5)村上達哉,奥出 潤,大滝憲二,大場淳一,郷 一   知,松居喜郎,酒井圭輔,田辺達三:グルタルアル   デヒド処理ウマ心膜を用いた自作valved conduit   の弁機能に関する実験的検討,人工臓器,17(3):

  1121−1124,1988.

6)村上達哉,奥出 潤,大滝憲二,大場淳一,郷 一   知,松居喜郎,酒井圭輔,田辺達三:馬心膜を用い   た自作valved conduitに関する実験的検討.人工   臓器,18(2):740−743,1989.

7)深谷幸雄,八木原俊克,岸本英文,磯部文隆,山本   文雄,平石泰三,藤田 毅:External conduitに   用いるValved Pericardial Roll(VPR)の形態と   弁機i能一Simulatorによる実験的検討一.日胸外

  会誌,34:1346,1986.

8)岸本英文,八木原俊克,磯部文隆,山本文雄,藤田   毅,佐藤 勇,新垣義夫,高橋長裕,神谷哲郎:

  Valved pericardial roll(VPR)を用いたextemal   conduit手術.日胸外会誌,37:658−663,1989.

9)Tamiya, K., Higashidate, M. and Kikkawa, S.:

  Real time and simultaneous measurement of   tricuspid orifice and tricuspid anulus area in   anesthetized dogs. Cir. Res.,64:427−436,1989.

10)Higashidate, M., Tamiya, K., Kurosawa, H.,

  Takanashi, Y. and Imai, Y.:Real・time mea−

  surement of tricuspid valve area for annuloplas・

  ty. J. Thorac. Cardiovasc. Surg.,96:88−91,

  1988.

11)Thubikar, M., Bosher, P., Nolan, S.P.:The   mechanism of opening of the aortic valve. J.

  Thorac. Cardiovasc. Surg.,77:863−870,1979.

12)Thubikar, M., Harry, R. and Nolan, S.P.:

  Normal aortic valve function in dogs. Am. J.

  Cardiol.,40:563−568,1977.

AStudy of the Valve External Conduit Function in Dogs−Experimental Evaluation of       Bicuspid and Tricuspid Valved External Conduit一

      Hiroyasu Misumi

The Department of Pediatrics Cardiac Surgery, Heart Institute of Japan,

        Tokyo Women s Medical College, Tokyo, Japan       (Dir㏄tor:Prof. Yasuharu lmai, MD.)

   Apico・aortic bypass procedures were done to evaluate two types of valved conduits in dogs. One is abicuspid cunduit, and the other is a tricuspid valved conduit. The bypass consisted of double pathway, bicuspid valved conduit pathway and tricuspid valved conduit pathway. These two pathway were alternately used to flow the blood on the same hemodynamic condition in the same dogs.

Following findings were observed:1)the tricuspid valved conduit was superior to bicuspid one concerning valve regurgitation. Especially in the low cardiac output,1ess regurgitation occurred in tricuspid valved conduit;2)both type of conduits did not show stenosis in the condition of clinical use;

3)the bicuspid valved Conduit took longer time to close than the tricuspid valved conduit;4)the tricuspid valve opened earlier than the bicuspid valve, These findings suggest that the tricuspid valve could easily open and close. There was less stress on valve cusps in tricuspid valve than bicuspid valve. In consculusion, the tricuspid valved conduit is suitable for conduit operations than bicuspid valved conduit in clinical use.

参照

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