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論 文 審 査 の 要 旨

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Academic year: 2021

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別紙1

論 文 審 査 の 要 旨

報告番号 乙第2960号 氏 名

藤田 温志

論文審査担当者

主査 教授 井上 富雄 副査 教授 中村 雅典 副査 教授 美島 健二

(論文審査の要旨)

学位申請論文「Identification of TPD54 as a candidate marker of oral epithelial carcinogenesis」につ いて、上記の主査1名、副査2名が個別に審査を行った。

口腔扁平上皮癌(以下 OSCC)の早期診断を目的として、プロテオミックスの手法を用いて新規 OSCC 腫瘍 マーカーの検索を行った。OSCC 患者のパラフィン包埋組織からレーザーマイクロダイセクションにより OSCC、異型上皮、正常粘膜組織を回収してタンパク質抽出後、液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析 法(LC/MS/MS 分析法)を用いて質量解析を行った。種々のタンパク質について発現を定量的に解析した結 果、Tumor Protein D54(以下 TPD54)は OSCC および異型上皮において正常粘膜よりも高い発現を認めたた め新規 OSCC 腫瘍マーカー候補とした。次に、正常粘膜、過形成上皮、異型上皮、OSCC の組織および細胞を 用いてリアルタイム PCR、ウエスタンブロット、免疫組織学的検索を行い、TPD54 の新規 OSCC 腫瘍マーカー としての有効性を検討した。リアルタイム PCR では TPD54 の発現は正常粘膜よりも OSCC が有意に高かった。

さらにウエスタンブロットでは TPD54 の発現は OSCC 細胞において高く、角化細胞や線維芽細胞では発現を 認めなかった。また、免疫組織学的検討では正常粘膜、過形成上皮では TPD54 発現を認めなかったが、異型 上皮では異型性が強くなるに従い TPD54 の発現を認め、OSCC ではほとんどの症例で TPD54 の発現を認めた。

以上の結果から TPD54 は新規 OSCC 腫瘍マーカー候補であるとともに口腔前癌病変をも評価しうるマーカー 候補であることが示唆された。

本論文の審査において、副査の中村委員および美島委員から多くの質問があり、その一部とそれらに対す る回答を以下に示す。

中村委員の質問とそれらに対する回答:

1.TPD54 がどのように癌化に関与しているのか。

(SiRNA にて TPD54 をノックダウンした OSCC 細胞株において細胞増殖能が抑制され、アポトーシスが誘導 された報告があるため癌化を促進する因子であると思われる)

2.TPD54 の発現は口腔重層扁平上皮癌で特異的なことであるのか。

(同じ TPD52 ファミリータンパクである TPD52、TPD53 の OSCC における発現について、今回の研究では特異 的ではなかった。OSCC に関する他の研究報告でも TPD52、TPD53 についての報告がなく、TPD54 については 散見されることから TPD52 ファミリータンパクの中では TPD54 は OSCC に特異的な可能性があると考える) 3.他の癌腫では TPD54 の発現はどのように報告されているか。

(乳癌、膵臓癌、大腸癌において過剰発現の報告がある)

(2)

美島委員の質問とそれらに対する回答:

1.TPD54 はホモマー、ヘテロマーとして complex を形成しているようだが、complex の構成要素には何が 考えられるか。

(complex の構成要素としては乳癌細胞株において TPD52 ファミリータンパクおよびタンパク脂質 MAL2 が、

肝癌細胞株において ATP 結合カセット輸送体タンパク hABCF3 が complex を形成しているとした報告がある。

このため OSCC においても同様の構成要素が考えられる)

2.TPD54 は異形成上皮及び癌細胞に発現上昇がみられるが、癌化を促進する因子なのか、あるいは癌化を 抑制するため 2 次的に発現誘導が生じているのか。

(SiRNA にて TPD54 をノックダウンした OSCC 細胞株において細胞増殖能が抑制され、アポトーシスが誘導さ れた報告があるため癌化を促進する因子であると思われる)

3.TPD54 のノックアウトマウスの表現系解析報告はあるか。

(知る限りでは報告は無い)

両副査は、上記を含めた質問に対する回答が、いずれも満足のいくものであることを確認した。

主査 井上委員の質問とそれらに対する回答:

1.LC/MS/MS 分析法とは何か。類似の方法と比較した時の利点、欠点をあげて説明せよ。

(LC/MS/MS(液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析法)は高速液体クロマトグラフ(HPLC) と三連四重極 型質量分析計(MS/MS)を組み合わせた分析法である。LC/MS(液体クロマトグラフ質量分析法)は単純に LC で分離した成分をそのまま質量分析器に導入し、イオン化した後、質量分析するが、LC/MS/MS はある特定 の質量成分のイオンのみを選択してアルゴン等でさらに分解し、質量解析するものである。このため特定の 化合物を選択性高く、且つ高感度で分析することができ、またより細かい化学構造情報が得られる) 2.口腔扁平上皮癌において、TPD54 以外で発癌と関連する因子はあるか。それらと比べた TPD54 の特徴は 何か。

(口腔扁平上皮癌において腫瘍抑制遺伝子P53遺伝子の変異やcyclinの過剰発現が知られている。cyclin は細胞周期に関連するタンパクであり、TPD54と同様に前癌病変の異形成の程度に応じて発現することが 報告されているが、正常細胞にも発現する。一方、TPD54は本研究からでもその発現はわずかであるか、

またはほとんどないと考えられる。このためOSCCにおいて特異的なマーカーとなりうると考える)

主査の井上委員は、両副査の質問に対する回答の妥当性を確認するとともに、本論文の主張をさらに確認 するために上記の質問をしたところ、明確かつ適切な回答が得られた。

以上の審査結果から、本論文を博士(歯学)の学位授与に値するものと判断した。

参照

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