翻刻『本朝斑女』
著者 翻刻の会
雑誌名 同志社国文学
号 40
ページ 51‑133
発行年 1994‑03
権利 同志社大学国文学会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000005099
翻刻 ﹃本朝斑女警﹄
︑底本には刷りが比較的よいと思われる︑早稲田大学演劇博物館所蔵の七行九十六丁本︵二−一〇1二四六︶を用いた︒ 作者 為永太郎兵衛 奥書 豊竹越前少稼 版元 西沢九左衛門︵底本では﹁九左衛門﹂が破損︶ 丁付 ﹁斑 一﹂−﹁斑 九十六終﹂ 上演 寛保元年︵一七四一︶三月四日大坂豊竹座初演二︑底本を忠実に翻刻することを原則としたが︑次のような校訂方針に拠った︒
1 本文は文字譜を手掛かりにして︑適宜改行を施した︒ただし︑道行・景事の類等では改行しなかった︒ 2 各丁の表.裏の終わりは︑丁数の数字とオ・ウの略号を︵︶で示した︒ 3 仮名は現行の字体に統一した︒ただし︑感動詞︑送り仮名︑捨て仮名の類以外の︑本文中の﹁二﹂﹁ハ﹂﹁ミ﹂
﹁に﹂﹁は﹂﹁み﹂とした︒ 4 漢字は︑一部の異体字を除いては︑原則として通行の字体に統一した︒ 5 漢字・仮名ともに︑誤字︑脱字︑当て字︑仮名遣い︑清濁は底本の通りとした︒ 6 特殊な略体︑草体︑合字等は現行の表記に改めた︒・畳字は︑平仮名は﹁こ︑片仮名は﹁・一︑漢字は﹁々一に統一した︒ただし︑﹁く一はそのまま残した︒
8 文字譜の類はすべて採用し︑本文の右傍の適切と思われる位置に翻字した︒ 9 底本の不明箇所は適宜同板の他本で補ったが︑特に断らなかった︒三︑本文の翻刻は︑次に掲げる翻刻の会︵学部学生の研究会︶の会員によってなされた︒
清水唯由︑砂山由起江︑山崎薫子︑米澤 史︒
文字譜︑改行︑本文の最終確認は山田和人が担当した︒なお︑早稲田大学演劇博物館には︑翻刻の許可を御快諾いただきました︒記して感謝申し上げます︒
︵山田和人︶
翻刻 ﹃本朝斑女警﹄ 五一 は
五一一 ﹁本朝斑女簑−
ナヲス地中 ウ 詞
貫つ餓に・癒らならぶる雰う一・鰍し鎧まの掌がらも蟻の幾とのみ︒茜の離聾の濠に灘ある︒辞の姑
聯つ悔歳つ・騨の邸の嬢り・嬢の轟擦ど・窟に篭の籔贈・康敦にかはる轟犠む難きの蝕ふかく︒議楓
れい だいくじん な たかヲロシさと ゐくはう一 ハル ︒麗の御ン物ずき︒大々尽と名に高きへ里に威光ぞ︒か︑やけり
地色中そのころポかはのいんボんぢぐはんねん婁ら享一 はるいとゆふハル や多さ−ら むめにほ うつ中いで其比は堀河院︒寛治元年二月末っかた︒春の糸遊のどやかに︒ 柳桜をこきまぜて︵一オ︶梅の匂ひを移すなる︒
ウ 一ル 本フシ 鍔書て・: 〃そほかざゐ 雰や
禦饗の麸し嚇く奮にか脇き奉れは・一つ劾の轟雛も︒都それくのく帳︒禿鴇手に茅迄粧ひ飾り居ながれて昼夜︒御きげんとりく\也︒
ハル ウ 中 ま︑ しげまち あんしやう たんざく めはちぷん辞て茸のち鼠つが驚・織まため付ヶう術しく・毒に魂を灘て議れば︒柾子が母の藩町︒案上に短冊取リのせ目八分︒
フシ コぜんいづれも御前になをしおく︒ 詞せんねんおうしうく寄 しゆく すじつとうりうきのふ やう はや はる雲みち姑将見給ひ帖ア難.ぐ︒我レ先年奥州下の折から︒此野上の宿に数日の逗留︒昨日けふの様に思ひしが︒早十二年の春秋を陸 このたびしやうらく こ︑たち吉 錦りう雪び ほども麦し ウねがひ しゆ蛾にくらし・此度の上洛又もや髪に立寄しに︒風流優美の此程の饗応に引かへ︒何か願と有ツてかたづまつたるけふの趣
か・つ フシ向︒いぶかし︵一ウ︶さよと有けれは︒
影ははっと蹴らをさげ・穣君・騒へ御ン原の購︒斑女といへる名によせて記念に給はったる扇︒又もやあふぎのかい 地色中 ウ
ウたび そばちか一ル 焔げ 詞 ねや 言て た︑︑ はれ
もなく・此度はすさめられて御ン側近く召れぬを歎き︒扇をもって閨の中チに引こもり人に面を合さず︒只とこやみの晴. フ一ンま ︑レ わび 一︐一ぜん おそ のぺ間なき︒心をさっしお俺のため︒御前へ召っれ侯と恐れ入ツて述ければ︒地色ウ 色 詞 きよく うちちけ あやまり とが 地ウ ニとハル斑女御前もさしよつて︒ノフ曲もない我君︒せめてお心打明て何が誤何が科と︒たつた一ト言おつしやつて下さんせと︒
ウ 中 ウ ハル ウかこちねが は︑︑かり みづから あねぢよらう かな 中 ふるさと託願へは花子のまへ悼 なく︒自 ゆへに姉女郎の斑女さんを︒秋の扇と人にいはる・悲しさはいか計リ︒古郷より母の
むかひ さいわい ウ いとま ウ 色 詞てうあい と︐・ま すじつ迎に見へしを幸︒此身に暇を給はれと申上れば母は御前に打︵ニオ︶向ひ︒御寵愛娘一人に止り︒数日都へ帰り給は
きんり うらみ たかしな うだいしやうちかひら りやうふんねば︒禁裏おもてへの聞へはどう有ふと思し召ス︒此野上はかねて君に恨ある︒高階の右大将親平の領分︒もし御ン大事
おや二 わけ けらい 地ハル 色に及び︒花子ゆへじやと人にいはれなば︒わたしら親子が心すまぬ其訳は︒もと吉田の御家来と︒いふをせいしてコレか︑
詞 いとま ねが ため ぎ りさん︒それを麦でいはんす事かいな︒此程より御暇給はれと願ふは︒第一は君の御ン為︒斑女様への義理も有リ︒都にまし ウ ほんさいききやう おそ 地色ウ な二ります御本妻桔梗の前様へ義理を立テると︒申は恐れおほひ事ながら︒いふにいはれぬわたしが心名残おしいは山々なれど︒
ウ 司この わか いつしゆ うた フシ 地中 たんざく色 あさ ちぎり なをざり好んで別る・心の悲しさ︒一首の歌にと計リにて打しほるれば︒少将殿短冊を取上ヶ︒浅からぬ契も今は等閑に︒いかに成 地ウ わかれ ぎん よみ ウ ま・行身の別︵ニウ︶かも吟じかへし詠かへし︒扱は花子が此儘麦に有リたきも︒かなたこなたの義理にせまってあかぬ中の一 色いとま ウそれがしミ ハルすて しさい 詞 っま き︑やう なんし うぷがほ暇を願ふよな︒又某カ斑女を見捨し其子細は︒十二年いぜん都にて︒妻の桔梗の前は梅若といふ男子をもふく︒産顔を
ちよくめい おうしう にんこく とうりう なれそめ くはいにん見るや見ず︒勅命によって奥州へ任国の折から︒此所に逗留してあの斑女に馴初しが︒其月より懐妊せしと聞キし計リ︒ ウ のち うはさ もふけ みちのく つげ 地ウ ゆくへ かく と・き いくたび其後人の峰には斑女は男子を設しといへ共︒陸奥へは告しらさず︒けふの今迄我子の行衡をふかく隠す不届もの︒幾度
いふても叶はぬ願イと︒っれなき仰に野上の長︒ホ︑︑其儀についての御不興なれば︒此長が申訳︒太夫職の斑女御前の設
わかぎみ くらい なづけおや くるよ わる二うなかま てんられし若君なれば︒松の位をかたどりて松若様と私めが︵三オ︶名付親︒それを廓︑の悪口仲問が申には︒吉田のお家は天
まんぐう しんかう そうりやう むめわか うま なづけ ほんさいばら満宮を御信仰有によって︒御惣領を梅若様と申スは聞へたが︒斑女の産れし子を松若殿と号しは︒御本妻腹の︒梅はちる
﹃本朝斑女警﹄ 五三
五四 ﹃本朝斑女警﹄ ウ
共松は鯵のよ鞭をたもち・お家を我子にっがせん城みと人の磁りを霧がり︒婁の内より松若様を晋やられ︒断行衛が
一レ 司しもく せがれ 地中 青か ウ ウ すて言しれざれは・申諦もなき仕合セと︒パひもあへぬに吊ア下々の紛のごとく︒里にやり在家がしれぬとて其ま︑に捨置かと︒
ズノけしき御気色かはって見へけれは︒
ウ おとうと とうだ 色 詞艘如はJ卿にかきくれて里にやりし其さきは︒あれなる長の弟野上の藤太と申スもの︒わらはが引舟とっれ立のき︒今は
ふうふ 地中 ウ ウ あやまり もふけ
いづくに夫婦に成ツている共しれず︒十一年が其間︒︵三ウ︶松若君の行衛のしれぬはわたしが誤︒数ならぬ身に設しお ウさほどたいせつハル中 フシ がた
子を︒先程迄御太切に思し召て給はる︒君が心の︒有難さよ︒ 地ウ と・ミ 蕎 とも君 呈うしす︑︑りふで綱・斑女が枇厨聞うへはしいて不届共いひがたし去ながら︒松若が行衛しれる迄は都へ供は叶ふまじと︒料紙硯の筆くいボがくれ ゑがき ・レうらウ ゆ余ほ 7ン かたみしめし︒雲隠の月を画し此副の裏に今又花夕貞を書キそへて︒斑女におくる記念ぞや︒
地色中 ウ すヘ ウ フシいかにもして松若にあひに扇を手にふる・︒末のちぎりを待ツベしとたびければ︒
Jハ酎の側寧々に・ゲあ螺した扇の緊夕寒りや・つい嚇かたに若君の︒お顔見さんす簸と︒幟び苧めく折からに︒ ウ
雛ポ警所一の・お塾として・蔽箪の丘一衛譲勢ン上と欝して・郁っと出たる譲つの出立一︒嚢に藤だ郭一四
オ一畿をた鶴ヘヘて・卸前も人目もは徽る蝕なく立一たる有様︒ハ一ル座の人・撃め︒てこそ見へにけれ︒
碁に載たか松井の兵衛・此少将が目通り共悼らず・緊る姿驚い千万・織か有一︒沸れ珊立よと雌ての榊なる御ン誠︒︒
司 らん まなこ しゆしよく 冬け まこと 書め あ隻が・此松井の兵衛を老にほれしと︒御覧有はあきしい眼︒酒色の外はなんにも見へぬか情なや︒誠に蔵を侮るものは ウ ハル 色
鰻に撚一・繋は戯に瑞つじて凡︐聾り・群奥州にましますを幸上離の右大将響が︒警票に鶉れ共︒瓢と議戯
色 詞みちきやう地 きんていしゆびハルっくろ ウ しの もはや やぷ通卿︒是迄は禁庭の首尾︒取繕ひ給ふといへ共︒中々忍びず︒最早此たびが破れ口と相見へたり︒コレ︒御台所梅若君御
しんし けらい せっしや きも おし 地ウ ハル ゥ 色 詞 ちが親子の物思ひ︒家来の拙者迄肝をけづる口惜さ︒御いけん申御供し︵四ウ︶て︒都へ帰らんと来て見れは︒右大将が詞に違
しゆく はうらつ せがれ す ど かんげん もち はらはぬ其御身持チ︒先年此宿にて︒まっ此ごとき御放博を︒扮源五が数度の諌言︒御用ひなきによって御目通りに腹切て相
地ウ 色 ウはて かれ しがい とうしよ ほうむ けいせい ハル ニんりう ウ だう 色 中 ひと二と ちうせつ果し︒彼が死骸を当所中山に葬り︒傾城斑女とやらんが一宇を建立有しより︒斑女堂と名高く︒世の人言に源五が忠節︒ 色ウ たび ハル ウ ウ わらんべ あだ ウ おろか 詞斑女が情をいふ度に︒こなたの身持放埼の取さた︒京童の仇口のはに︒か・り給ふとしろし召れぬ愚さよ︒たつた今右
大将が隷試にて・侮かにJ属る吉田の嵌留・都北白河の御ンや餓には・勲郭しげって雄ねト麟きのす榊︑とならん・激ましや・ 地 ハル 詞 かりかま みの あめ した ふせぐ ひやうへ かたち あら いコレ︒其時の草刈鎌︒簑は則チ美濃の国︒此野上の取ざた天が下にひろまる共︒防は此笠此兵衛が︒︵五オ︶形に顕はす異 色けん あらため しやうらく ちやうぐ せういん ウ はら もんじ見は是切リ︒サァ後共いはさぬ︒今さっぱりと御心を改られ︒上洛有レば重畳︒承引なけれは此鎌て腹十文字にかっさば スエテ うきウ かくニ ハル ヘんとううけた一まは つめより ウ つく いかつ ない いさむ中 ウ ハルき︒憂つらきめを見ぬ覚悟︒サァく返答承ら章く聞ふと詰寄く︒詞を尽し理を尽し怒っ泣っ諌れば︒少将はっと
色 詞 はじめ ふ し しゆきやう きんじう おとり理にふくし︒ホ︑今に始ぬ其方父子が酋言︒用ひざるは我レながら酒狂とやいはん︒禽獣にも劣し身のうへ︒是なる二人
ゆうくん まよ しやう二 地中 ウ あづけ ウ いつしゆ ハル かん ウ いとま ウの遊君に迷はぬ讃拠︒斑女は此ま・野上の長に預おく︒花子は一首の歌の心を感じ︒母が願イに任せ暇をとらす︒早々
古郷へ帰るべし︒某も是より上洛取急ん︒兵衛はさきへ都に帰り︒桔梗の前︒扮梅若にも此趣を告しらせよ︒ハ︑︑はつと
ウ しらが ウ フシお計リに松井の兵衛︒頓あたまを︵五ウ︶地にすり付︒悦び涙諸共に︒早御暇と立出れは︒ 中地色中 ウ な二り そで みき ひだり ハル うきわか ウ ウ花子親子も打つれて︒古郷へ帰る名残の袖︒右と左に嬉しさと︒悲しさこめし憂別れ︒跡に残れど斑女は君に︒別れ悲し
かたみ ウ ちやうもんきう うち こもり ためし い二くほんちやう あふぎさ記念の扇手にふれて︒我子の行衛尋扇の末長く︒長門宮の裏に籠し秋の扇の色ふかき︒例は異国本朝の︒斑女が婆︒
﹃本朝斑女簑﹄ 五五
﹃本朝斑女警− 五六
ウ ユリ是なれや君が︒情ぞ三重へ名にしあふ︒地ウ ・レ 芸しよ紳ため けつ二く号しゆ一一 ウ かしん肘うむしやのすけ焔したかウ と 一月こそ灘ね概び嚇し・不破の関所を固しは︒当国の領主高階の右大将親平の家臣︒高の武者之介義隆︒関が原の半途より ︑ レ中 乞ぐいがきひやうぐ たて考 とをみものみ やく 婁こ ひか一 フシげ会う中山の手に乱株高垣兵具ひっしと立並べ︒遠見斥侯の諸役人︒眼をくばって加しは︒事厳重に見へにける︒ 詞地色ハル うぢひろ つれ 色 ︑レ 中 くれ醸が枠の械轍よりが大将の靴樹︒榊記左衛門氏廣けらい引連入リ来れは︒︵六オ︶劃者之介出向ひ︒暮に及ンであはた︑しき
かね きでん しうしん 竺 くわくしつ曾故に来られしぞ︒さればく︒兼て貴殿も存の通り主君右大将は︒少将の御台彊の前に︒御執心より発つて確執と 詞
成雌度少将都一帰るさ・馳上の里にて鐵蔀・撚脇の身持を議一譲評しに︒幾域にせよとのち驚を幸イに︒倣が
呈しゆくかしわばらおし 書 地ウうち お・つしう ウ ハル旅宿柏原へ押よせ︒少将を亡す思し立チなれ共︒もし討もらさは奥州の方へ落行クまい物でなし︒此不破の関にて討とれ 色 司 ふせが きでん かせい のがとの仰によって来ツたり︒が・其儀は此武者之介一人承ツても防んに︒貴殿を加勢に給はる事︒もし少将に志有て︒見遁す
はな めぐみ ひと︑なりべきかと御疑か・りしな︒こは我君共覚ぬ仰︒某は幼少より父母の手を放れ︒主君の︵六ウ︶御ン恵にて成長︒則チ高階
じ なのる かうおん わすれ ざんげん いさめの一字を給はり︒高の武者之介と︒名乗ほどの御厚恩いかでか忘ん︒少将を謹言なさる︑を︒是迄お諌申シたは皆君の御
緒うやく にがたと一むつ うたがい肋書 ウ 中 ウ 一ル しやうこ
為・良薬口に苦き職︒却て御疑を蒙りしは我不運ン︒あはれ少将此所へにげ来らは︒召とって二心ンなき護拠を ︑ レ色 ノj考は ウ きでんゑんろ つかれ︒しぱらく葦そく フシ やくしよ ︒顕さん︒先々貴殿は遠路の労 暫 休足有べしと打つれ役所に入にけり欝れ一一一シ 中 一洲し婁 汀 ウ ウ ウまぢか 色 一澗レ良・
住馴し野上の里を︒たちいで・ 柏.原まで送り道︒古郷へ帰る傾城花子母の藩町打連レて︒関所問近く立とまり 女 いとま二いちとた胤なめや一そなたは古郷へ帰るといふて︒少将様に暇乞迄してべんくと跡を追イ︒付まとやる程お為にならぬ︒サア︒ がてん 簑 いんぐわ 地ウ ハル ウ ウ そりやよふ合点してゐれど︒放れともないが因果︒︵七オ︶もぎどうなおまへにせっかれ︒いひ残した事も有リ︒ま一とお色 フシ 色 ウ ゆふまぐれ ハルフシ これさだ ウ かつぱ ハル りよしん顔がヲ︑嬉しやそれそこ一︒見一るくと夕問暮︒いそがせ給ふ少将惟貞︒じゆりん合羽に大小圭たへ︒人目を忍ぶ旅人
ふうぞくの風俗︒
テモ扱もお前も未練な︒麦迄したふて御出かいの︒今も今とて此娘に︒ホゥ異見かそりや皆尤︒そこで我等も︒ふっっり思ひ
地ハル ウ 色 ウ けらいおかざききんニハル くろ 色 ノリ詞切て都へのぼる︒名残にちよっと顔見に来たとの給ふ所へ︒ふだいの家来岡崎金吾まっ黒に成ツてかけ来り︒扱も我君野上
はうらつ ちやう たつ ついたう ちよくぢやう かふむ ほんぢん おし はうにて︒御放埼の御身持チ天聴に達し︒急ぎ追討有べしとの勅詫を蒙り︒右大将親平︒只今柏原の本陣へ押よせ侯故︒朋 フシばいなるかは かはり 地ハル ウ お・いき輩鳴川宇内を︒君の代に残し置︒多勢を切ぬけ是迄︵七ウ︶参上︒とく何ツ方へも御立のき有て然るべう侯と大息っいで
うつたふ訴 れば︒
地ウ ハル げうてん おとろ 色 詞 ちか かね ざんげん も花子灌町はっと仰天︒少将も驚き給ひ︒扱は松井の兵衛がいひしに違はず︒右大将が兼ての襲言よな︒かく成くだれば最
はや のか 地ウ ハル やかた はせつき ウ早都へは帰られず︒ 一ト先奥州へ立退ん︒汝は是よりすぐ京の館へ馳着︒桔梗の前梅若へ此通りをいひ聞せよ︒早とく
フシくとの仰に︒はっと打ツたつ金吾飛一がごとくに急行︒
詞 地ウ地色ハルかさね 色 ゆかり きのどく ウ ゥ ハル かため少将重てコレ両人︒由縁ある国なれば︒是より奥州へ下らんとは思へ共︒気毒は此ふはの関︒右大将か家来武者之介が固
たやす ウ 色 詞たれは︒軟く通る事叶ふまじ︒いかはせんとの給へは花子はっと心付︒よい事が有お気っかひ遊ばすな︒其武者之介が
かはぐま もの つとめ ふみ こし へんじ家来︒川隈甚平といふ者︒わたしが野上に一八オ一勤て居る時︒たびく文を越たれ共︒っいに返事もせなんだが是幸イ︒
地ウ とお フシロでちよっぽりだましてどうぞ︒通しませんと関所の内を︒うかへは︒
地色ウ あぷら あんど すか 詞 きのふ甚平も油さし行燈にか・り透し見て︒ヤァそちや花子じやないか︒昨日此関を通りしが今野上へいぬるのか︒見ればくさり
﹃本朝斑女警﹄ 五七
﹃本朝斑女警﹄ 五八 あ合一た男敵・うまいなく︒ヲ・めっそふな事いはしやんせ︒跡なは兄様ン︒こちらはか・様ン︒連立ツて国へいぬはいな︒明
服此関を通ればよけれど・謡な事畝どうぞおまへを頼ンで︒通してもらをと思ふてきやんした︒ほんの情じやはいな︒イヤ是
わる おがみ かんにん花子︒情といふ事見ン事知ツてか︒ヱ︑あたどうよくな︒サ︑︑︑︑其時は皆わしが悪かった︒是拝ます︒ム︑堪忍してくれか︒
地ウ まか ハル 色そして今通してやったら︒ハァテ此身はどうなりと︒おまへ︵八ウ︶に任すと手を取て︒じっとしめれはヲ︑こりやたまらぬ︒
司 きづかひ とお よふけ あいづ いつぞや扱はぞっこんきおったな︒気遣しやんな通すく︒夜更人しづまって何ンぞ相図がヲ︑それよ︒おれが日外やった文に︒歌
あんま すきがみ よん やくが有ルそれ覚てか︒ホンニ其文に書イて有たが︒饒り大事にかけて︒っい杭紙にしてのけた︒ホ︑ウこりや尤︒読だ跡が役に立
いちど かすみ かたうくひす︑ ︒慧 二てまあ嬉しい︒そんならま一度いふてきかそ︒不破の関︒朝こへゆけば霞たっ︒野上の方に鶯ぞなく覚やったカ是
にどうなと襟ていふたがよい・一アそれ迄敵ふの嚢に待ツて居て・よい整にふはの関︒アィ︒餅でごデすと︒別れて
ウ フシ三人急き行︒跡見送ツて甚平は関所の内へ入にけり︒
・レ 色洲賠し さそは そつき 乞のこ一らんてう かねたいこ ひ︑ミ妻ろないき一ル かけ 色 詞 ︑折節風に誘れて︒耳を突ぬく鯨波︒乱調に打ツ鉦太鼓ほらの︵九オ︶響に驚く内記︒つ︑いて欠出る武者之介︒ア︑ラ︑心
さんせいきう いん しやうり 地ウ ハル フシ おりふし得ず︒三声宮の音に入レば味方の勝利なき道理︒ハレ心もとなしいかはせんと気をもむ折節︒ ︑ レ楚将のつ卿として・螢簾あわた毒ボ来り・唄レー内記武者之介・只今主君右大将︒柏原のし師に糀よせ︒少将悔 ウ蛾討とり給ふとい一共・撃の家来が穣硝し今た戦ひまっ轟・梯も関所を討しかため︒霧きたらは一・に討どられよ︒
ウ ふせ フシ我レは是より引かへし︒敵の多勢を防がんといひ捨てかけり行︒
司 あんど いよく かため 地一ル 色つれ ハルフシ邦レ聞れたか武者之介︒少将を討とられしとは先ツ安堵︒コリャく家来共︒弥気を付木戸を固よ︒イザこなたへと打連て入ルさ
中 ハル ふけわたりかね ウ じぷん 歌 ウキン 入 かすみ ウの月も︒更渡鐘につれたつ三人連レ︒時分はよしと花子は関所︵九ウ︶に立寄て︒不破の関︒朝こへ行ヶば霞たっ︒野上
ナヲス ハル うぐひす 地ウ かてん あんど ともしび ふきけすウフシのかたに︒ 鶯ぞなく︒ヲット合点と甚平がさし足ぬき足行燈の灯火︒ふっと吹消まっくらやみ︒
さぐりよって木戸押ひらけは少将灌町︒足のふみとも危きせごし︒なんなく通ればっ・いて花子︒行をちらりと武者之介︒
地ハル 色詞 のが とび ウ がみ にぐ ひやうし ハル くし ぼう色見付ヶた女め遁さぬと︒飛か・ってたぶさ髪︒引ヶと逃るがとたんの拍子︒手に残ツたは櫛かんざしなむ三宝にがせしと︒ フシ ゥ うしろ ないき わざ追ツかけ行クを甚平木戸口ぴっしやりさすを︒後げさに内記が早業︒ 色地色ハル ニヘ さし ひかげ びつく 詞 ニヘん けらい あいづたまぎる声に家来共︒差出す火影に見て悔り︒ヤァうぬは甚平︒コレ武者之介︒御辺が家来今の歌を相図に︒此関を通せし
うたがい まつすぐ 地ハル いきたゆ せんぎ たね しん ばうぜん フシ はては疑もなき少将︒サァ真直に白状と︒︵十オ︶せちがふ内に息絶れば︒詮義の種も内記が不審︒武者之介は忙然とあきれ果
たる折こそ有レ︒
地色ウ くつわ いちはやくりげ またが かけたて ちかひら ウ 色 詞 かしはばら しゆくまぢかく聞ゆる轡の音ト︒逸栗毛に打跨り蒐立けたっる右大将親平︒くらかさにっ・立ヤァく両人リ︒今柏原の宿にお
なる にせもの こしらへ おちうせ 二れさだ かた とつしよせ︒少将と心へ討ツたるは家来鳴川宇内︒似者を栴おき︒落失たる惟貞︒此道ならで行べき方なし召捕たるか何ンと
地ハル 色 詞 あいづ とお おちくと︒せきにせけば内記左衛門誓そく︒たった今女が相図で此関を通せしは︒武者之介が家来甚平︒落行キしは大か
地ハル 色 詞 おのれ かんげん こ・ろざし めいはくた少将と︒聞クより親平くはつとせき上︒ヤィ武者之介︒日比僚が謹言だて︒少将に志有ル事明白︒イヤそれはお情なし︒
すで くしかんざし しやうこ せきやぷ既に女を引ツとらへし時︒手に残たる櫛替︒是覚なき讃拠といはせも立ずヤァくらい一十ウ一く︒関破りの女めを︒さ
くしかんざし つらはち かんどう なんぢがし出す迄其櫛替あたまにさし︒面恥さらすがよいこらしめ︒勘当じや立一てうせふ︒ヤァ内記左衛門︒汝はいよく此
きび かた一め 地ウ おし つま ききやう うばひ ウ け はら もの こま関にとゴまり厳しく固よ︒我は是より都へ押よせ少将が妻︒桔梗の前を奪取リ︒一家残らずぼっ払はん者共っ・けと駒
﹃本朝斑女警﹄ 五九
﹁本朝斑女警﹄ 六〇
むち フシに鞭︒打立てこそ急キ行︒
地色中 ・レ い童書色 ウ こん誓 ハルてき かく てんち あいだクル 言跡見送って雲之介︒ヲ・御憤尤く︒此上は我カ根限り︒関破リの不敵女︒にげ隠る美天地の問尋出さて置べきかと︒
くしかんざし やまぢ取上ヶ持し櫛響︒さして行衛はいづく共しらぬ山路を三重へしたひ行︒ウキン 中 地色中 これさだ ゴやう ゼせ雲 ・レるすずま・ウ ほんじよ松耕の・抑似春を・熾づらに︒吉田の少将惟貞卿の御台所︒桔梗の前は十年鎗りの御ン留主住思︒北白河の本所には︒早近
ウ 中 ウ 色 ︑ きらく まつま ながろうか そば こしもと よりあつま 詞 わかとの カらうヵ々に御帰洛とて︒待問もとけし長廊下︒お傍づかひの秘 共寄集り︒けふは若殿︵十一オ︶梅若様︒御家老の兵衛殿を
ち︑ やしろ さんけい 地ウお供につれられ︒御父少将様早ふ御帰洛なさる・様にとの︒御願にて北野の社へ御参詣︒それ共思し召ぬ殿様︒美濃の国
くるわ 色司 まよ ゑんにん お︑つちおもて
野上の廓の二人リの傾城︒斑女花子の色に迷ひ︒お帰り延引するを幸イに︒高階の右大将殿の大内表への醤言︒とうでも よめり棟の有ル事とは思やらぬか︒ハテしれた事︒御台所桔梗の前様︒此館へ嫁なされぬ先キから右大将殿のほれて︒こちの殿様に恋を隻けた蟹・十二年ぶりにはらすのじやはいの・隷様奥州ヘギーの時︒概警つの梅群丸様︒ごし十二にお
地ウ成−なさる︑迄・撃卸の御畿さへ遊さぬ・殿様のお居ぐさりもぎほと︒澗・そなたのいやる通り︒追付御帰洛なされた 詞 地ウ ハル ウ みつめぎり 色 これさだら︒御台様にもお久しぶり︒其上に斑女花子三人の手に︒きりくくもまれ一十一ウ一もまる︑三目錐の少将様︒惟貞で フシ 地色ウ これづよ 地ハル ゑん呈 ︑ 詞 かたくつま ウ 色はない是強様じやと︒いふといのふと︒遠慮もなげな高咄し︒ヤレはしたない妾︒夫の少将殿野上の宿に御逗留なさる︑司 いとこ たくみ 地ウ るすとて すいふんウを︒斑女花子の色に迷ひ給ふと︒あしさまな取沙汰は皆わらはが従弟︒右大将殿の巧︒最早君の御留守連も今少︒随分物 竈事ひそやかにと制しおはする折からに︒
麟口の御父譲嚢卿・﹂家の磁た議に及す・議んよりしづくと入せ絆一は︒審の前磁ねを評がり︒習はく御篇
ウ せつく フシ あいさつ 詞 祭 るす 地中 みつくの切々の留守見舞︒御くらう様やと挨拶あれは︒ヲ︑十二年の長の留主も今少し︒それに付キ︒ちとおことに密々一大事を語
色 詞 地ウ かつてリたしとあたりを見廻し給ふにぞ︒コリャく秘共︒梅若兵衛の帰を待受ヶ知せよと︒女中を残らず勝手へ一士一オ一た・せ︒
一大事とはいか成ル御事︒心元なふ存じますと尋給へは︒ヤァ桔梗の前︒おことが幼少より︒従弟の右大将に︒終に対面させ
しうしん めあはせ いきどお かれ たくみ とうりう おちた事はなけれ共︒見ぬ恋に執心とて少将に妻しを憤り︒彼が多年の巧にて︒野上の宿に此度の逗留を︒以の外なる越
度に取なし護奏して︒則チ右大将討手を蒙り向ふたり︒ヱ︑すりや我夫は︒ヲ︑まだしも運に叶ひ︒落延しとは聞ヶ共心元ト ウ 地中こんい くぎやう ウ いとまコい 中 ウ しらかなく︒某懇意の公卿を頼み歌枕一見の願イをたて︒知耳少将の行衛を尋んと思イ立暇乞に来つたり︒又逢迄の父が形見と碩
もと︑・り ハル ウ おしいた︑・き ウ あんま 詞 おろかの髪一ふっっと切て渡し給へは︒桔梗の前は涙と共に押戴き︒いかに知耳の為じやとて鹸りな思し切︒ヤァ歎くは愚︒あ
地ウ けしき みとり かみ ふく ちり ハル すぐ りうようこれなる柳の一ト木を見よ︒春の気色︵十ニウ︶の若やかに緑の髪としげれ共︒秋吹風に散はっる心を直に我法名︒柳葉居
士と改メて諸国を廻り︒知耳にカラを添ん事方寸の内に有リ︒それに付キ江州高島郡の与惣といふ猟師︒元トは奥村前司といふ
せがれ もの まね 地色ウ まづ 中 詞武士の掛にて︒才智有ル若者︒折々右大将か招くといへ共︒不道の主には仕へじと貧しき世渡り︒何とぞ彼レを松井の兵衛
が養子とせば︒吉田の家相続の基と思ひ︒最前より其与惣を玄関に待せ置イたり︒ハァそれは何よりお嬉しゃ︒家の為と有
たいめん ウ ウ フシからは︒自ラも対面し︒兵衛の養子にす・めませふ︒ヲ︑然らばこちへと柳葉居士も諸共に︒打っれ玄関に出給ふ︒ 地ウハルフシ みたち っいぢ そとハル 中 ウ っぼみ ウ折から御館の︒築地の外北野より御下向ある梅若丸︒ことし十二の苔の花お供は︵十三オ︶老木の松井の兵衛︒刀取持チ
フシ引そふて立帰る︒
地色中 ウ ハルニし 色 詞 きんたち 地ウ もみで跡よりしたひくる男小腰か一めて申く︒偉ながら此お館の公達︒梅若様と見奉り︒ひそかにお願イ申上度キ事有と椚手で
﹃本朝斑女警﹄ 六一
﹃本朝斑女警﹄ 六二
かえば・棉アこいつ轍はづみな・御露あらは益たへ参ツて申上いさ︒イヤなふ兵衛願イと有レは轟とて聞キ捨がたし︒ま
あそちは何者ぞと・僻はっと頭をさげ・櫛めは山田の三郎と申もの︒御父少将さま御襲の傾城︒斑女殿の腹に誕生なさ
きりやう かつかうれた松若丸様を・戴の上より預りかくまひまして最早十一才にお成リなさる︒御器量といひ恰好物ごし︒丁とお前に其儘︒
うもれぎ おやこ あにきみ静じ幟つたしき吉田のお家の若君様︒いっがいっ迄埋木の御住居させまするもいたはしし︒松若様も親御様兄君に︵士ニ
ウ一御対面なされたきお願−にて近江一つ臥の神々様一御隷んの露議・含はお家の御麟北野天神宮一︒私を蟻に
地ハル ひとへ立られし所に︒梅若様と見受ヶ是迄参上︒御台様へ此通りを︒仰上られ下さりませい御からう様︒お取なし偏に願上ます フ一ン スエテ ヘつらは しんじつしんと︒詞遣イも諸ぬ︒真実心の願イ也︒︸しう 色 詞 はうぜん そば ぐはんしゆ始終を聞て松井の兵衛︒扱は今日宝前にて︒梅若君のお傍へ落たりし絵馬に︒願主吉田の松若丸と有しをふしぎと思ひし ︑ レ 地中 ノ︐ まきれ ウ つれゑた ウ ︑が・今山田の三郎か物語リを承れは︒紛もなき君の御弟︒天満宮の御引合セの梅と松︒連枝の両若君はやく御対面有レカし
と申ぜれは・澗・兵衡のいやる通り・欝若の在家のしれしは神の部・母様一申上都一鎧を取急き︒彬面瀦たき炉なれ共︒
詞 たいりう ざんげんのが 地ウ
父上には︵十四オ︶御病気とて野上の宿に御滞留ましますを右大将の護言︒遁る・は天満宮の御利生と︒参詣したれはこそフ一ンウ山田の三郎に廻り合たれ︒父の帰洛なさる・迄ノゥ兵衛と有けれは︒ ︑ レ 地色中 ウ ノ︐祁・いかにも・事さ麟がしき折からなれば︒松若様の御入部は延引なさる・共︒忠義ふかき山田の三郎︒武士に取立っかはされ
色 詞 いよく 髪冨 よういく しうぐ 地ウよと・心を付クれば梅若君︒けふよりは三郎我カ家来と成︒ 弥弟松若を等閑なふ養育頼む︒主従の印シにはそれ兵衛︒其一
繍をと仰にはっと・︐鋪傭︒の御鱗渡せは影椛い難きく・身に鹸一たる御一た賊の︒緊様の御けらいに成たる様子︒緊
しうとめ 色ハルフシ
様を始め女房や姑に悦はせたふござります早お暇と︒一礼のぶれは︒ヲ︑追付御親子御兄弟お揃なされて御対︵十四ウ︶面︒其時傍輩因の参会それ迄は︒先さらばと松井の兵衛︒梅若君の御
フシ供申表門へと別レ行︒
江戸 ウキン中キン はいくはい 下 こま ハル おに 下 カイなかま 色 き・ ナヲス フシ ちとり此頃都に俳個する︒名に奥州の駒太郎︒ゑぞが島の鬼四郎とて人買仲問の口利共︒酒きげんの衛足︒
地色ウ 色 詞三郎にへつたり行合︒一リャ山三ぶか︒ホィ又出合一たかい︒二人リ共にうまいめに合一たかしてまつかいにてるはく︒イヤこ
のん ねこ せけん ひるりやごうがわいて呑だのじや︒此四五日はふのわるい猫の子にも出くはさぬ︒世間にがき共を大事にかけるか昼中でもへち
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のみ すね かた やす とり二人リは呑すへて脚がた・ぬ︒太義ながら肩にかけていんてくれ︒ヲそりや安い︵十五オ︶こっちやが︒しる通りおりや雀
め ま けつく せ わ 地色ウ よい目︒もふ日のくれるに問かなけれは︒うぢついて居りや結句わいらが世話に成ル︒そこらでぐっと一トねいり︒酔さまして
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地ウ表玄関に人音ト建奥御殿へにげ込ムは︒近江のふな売リ高島ノ与惣︒跡を慕て御台若君兵衛もっいて追かけ出︒コレく
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﹃本朝斑女警 六三
﹃本朝斑女警− 六四
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アレまだおっしやる︒忠通様のお差図といひ︒松井の家督を継ますれば︒私が身に鹸ツて気疎仕合なれ共︒それを世問で申
いもうと しにあと よくづら うしろゆび 地ウさふには︒あれ見よ︒高島の与惣めが妹斑女がお影で︒松井の源五の死跡へ付ヶ込ンだ欲頬と︒後指をさ︑れふより︒や
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のぼ ばひ ハル 色 ちうしん と︑︑け ハツ︑︑︑フシ すぐへ登り桔梗の前を奪とらんと︒手勢引ぐしおっ付是へ御用心の為御注進︒又我カ君の御行衛見届申スといひ捨直に引かへす︒
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てい ︑ かうせき かろ ちくてん ぢうざい そせう庭へ恐レざる不行跡其罪科軽からず︒我ヵ領内江州柏原にて討取べきを︒逐電せし重罪大内裏は︒願イも訴訟も叶ぬ様に此親
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涌 よば・ ひかノ︑くく︒ても身勝手な宣旨呼り︒御台所を渡せとはのぶといせんさく︒松井の源五兼俊が加へたれは︒ゑこそは渡し侯
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地ハル ま せんざいウ ウ ウ ウ やしろ のき兵衛はよき問と梅若君を前載に伴ひ出︒やうすは一ト間で申せし通り︒是なる見越シの柳をつたふて︒北野の杜へ御立退と
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﹃本朝斑女警﹄ 六五
←ハ←ハ ﹃本朝斑女警− フ一ンくと切合イくおふて行︒ ウ激︑徹に若君はこは蚤しさ身もふるはれ・騎の帷一となびきたる︒機にうっればしいわりしはく掌きり折レ︒下一
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てか一してどうど打す一膏に雛付・一−一右大将がてがいの犬上︒我父の戯ある内︒駄に敵を討せまするか灘てバの御腹 まつ二 ていせと・平馬が両手を後へぐっと秤わげ・押ア乳仁様︒絆存分にとさし付れは︒プっ込ム首をすっぽんと切も切たり末期の手
麟・ヲ︑がぞ遊したり扱・緊様はいづかたにと深手の父をズはれは︒桐レ源五︒梅若君は先達て北野へ落し参らせた︒我事
︑レ ウは打やつて・撃所を帖なひ片時も早く若君に追付キ︒ぎ少将殿に側とぞ廻り奥州へ︒一ト先御供仕れ︒是に付ても思へば
はかなや・たった蕃子と成−すぐに別予灘き縁・舟キだっ父一の箒に昏主一十九オ一人達の御事を︒頼むくとい クル わづか ゑしやぢやうりふ声も・緊くなき老木の花ちりて螢しく成ければ︒はっと主従三世と一世も綾の契り︒会者定離とはいへ共ほいなき別 ボ とりで色 詞ふなうり 二み どけはかやと・樽.にむせぶ秤こそあれ︒弱みへ付込ム捕人の雑人︒アレ鮒売めが跨にゑふた体なるぞ︒く︑し上て毒気吐し桔梗の前を
ウうぱひ 地ウ てがら とりなわ むかふが・り むらが ウ からだ てうづぱち フシ奪取リ︒親平公へ差上手柄にせんとてんでに傲績︒向挽に群る大勢風に木の葉の侍供︒骸は飛石手水鉢打つけく
籔︑.ろし・
地ハル けとぱ 色 ハルフシ 地ウ ハル あやうけころし蹴飛しよせくる雑人又むらく︒ちりくはっとぼっ払ひ︒御台を伴ひ出て行︒水の流や定なき︒北白川の危き
ヒロイ御所を︒遁れくて︒忠信義士の道すぐに陸奥︒さして急ける一十九ウ一
第一一
地中 ハルフシ 中いほざきすみだがはら 中 さい ハル ウ がんどう象ま こかを むらが 色庵崎や隅田川原を︒いっの間に寮の川原と迷ひ子を︒やつさにかける贋盗仲間︒子買くと群りて︒どの子がほしいこり ウ ウ ハル かどはし さるぐつわ つなぎ めいく やよい ウ フシやなんぼ︒いくら共なき人の子を︒勾引取て猿轡猿繋︒銘々持よる弥生の十五夜空おそ︒ろしき世利分ヶ也︒
三下リセツキヤウハル いたは ハル やかた 中 ウ ね 入 ヲクリ フシあら︒痛しや梅若丸︒過キし館の乱レより︒うき寝も長の旅の空へ泣クも︒なかせぬ猿轡︒
江戸地ウ ゥうしろで ハル ゑぞ ウ しつへいフシ 詞後手にいましめ︒奥州の駒太郎︒蝦夷が島の鬼四郎︒柳の箆ふり立く追来り︒コリャく仲問の者共︒今夜の市にさまた
地ウ ︑レ 色らしいめすが有ラは︒こんなわっぱとばくろしていなふかいと︒梅若君の顔押上れば︒皆凡影にすかし見て︒ヲ・︵二十オ︶
こりやよいわっぱじや︒ドリャかたづけて談合せふと︒我レ一チ子供を引連く立ならべは︒
蝸・榊共はもふ是計−か︒一−ヤ鬼四郎︒どいつもくよふ擁ふたがらくた共・思はしい偽物もなし・恥秋して則そふな・
地ハル相人もないとけこなせば︒コリャやいく︒人買して喰もの共が子供の目利せいでよいかい︒買がなんぼにして売ぞ︒一テ目
かう 地ウ かほ フシ しやうばい利するなら付てか一︒ヲっけ買イにせふ市にふれ︒ふらふが買か︒かをくと顔赤らめる商買づく︒
皆立か︑れば駒太郎︒若君をひっさげ出︒サア付てかへ︒やっちやくくと︒ソレなんぼ︒発句は壱貫︒一貫くく︒二
﹃本朝斑女隻﹄ 六七
六八 ﹃本朝斑女簑﹄
百よく・三百四衷百よ・くくくア・いやもふおけく︒此蝶は綴ながら小判道具︒マアはした銭では談合がな
地ウ あつかう・レ 色 司 しろもの 地ウらぬと・鬼四郎が︵二十ウ︶悪口に伸問の者共腹を立テ︒仰ヤ銭で売ラぬ代物なら市へ持ツて出さらぬがよいわい︒エ︑ほつこしもない郁をふかした︒何一と皆いなぬかい︒ヲいのく︒あんなやっらが代物は︒干付ケてこますがよいと口くわめき立
帰る︒ ︑レ フ一ンゲる所︑イーと聡かけ・影の山田の一二郎︒織野を女にポきせ︒彫にすがって来りしは雀目病とぞしられたり︒
しろ カ・棉イ思ひがけない三郎︒人買仲問の夜市に迄︒ほてくろしい女房をだかへあるくかい︒イヤこいっは代物じや︒嗅めは此跡の
かどわかし めす徹くで蜘滅つおこし寝てけっく︒女房をおとりにかけ︒女連レと思はせたでこんなやつを勾引た︒何ンとよい比な雌子ではな 蒙 色 司 ね 地ウ ことは くるわいかと・織彫うし脱すれは︒サッテモ見事︒﹃﹂いっはしっほり直打が︵二十一オ︶有ルと︒見込ムも理り︒野上の廓で名高き 長地 ウ ふくみうつく中 色 詞楓子・戯りたがられ猿轡っらやにくやの目元トさへ色を含て美しき︒地ウ顔を二人はためっすがめつ︒ヤイ山三ぶ︒此めろは
きりや・つどふするつ瀞川じや・ヲ今仲間の者共にし徹一はづれて逢フて聞イた︒わいらふたりの手に器量のよいわっぱが有ルげな︒其ころ 詐も そろ ・レ うつりフシ あ皇な代物が入用・ヲ・此めろとならかへてやろ︒連の事顔の道具揃へて見よかと醐太郎︒とく猿轡に梅花の移ぱつと薫ば︒ 地ウ一・うまくさやと俄に畿搬なし・貯よぢらしてとろく目・ひったり構キ一−ヤ女・奥州一連一て下る︒瀧︒・はおれがい
ハル しんど おふ フシたはりだいてねる︒道も辛労か負てやろ︒やいのくとしなだれか︑る︒ ハル 色搬ポ男の一二士ウ一欝を・ざ鰍たる花子は聾・ゲれなふもいひ撚さず︒撃らぬ身におこ栽さしは嬉しけれ共︒わ ハル 地ウ はたこたしは深ふいひかはした殿御がござんす︒それにさへ引わかれ︒親子づれで江戸の町へいぬるもの︒駿河の府中の旅籠屋に
上 ウ ムちう 中ノル ハル 地ウ じやまて︒母様は俄の病気︒せめてま一度お情に︒府中へ帰してくださんせとくどき︒歎くを︒ヱ︑かしましい談合の邪魔と鬼四
ハル 色 一 詞 つら郎︒又猿轡ほうばらせ︒ナント三ぶ︒こちのわっぱとかへてくれるか︒ヲ︑かへてはやろが︒そっちのわっははどんな頼︒見
とりめ らちあか きりやうたけれどおりや雀目で埼明ぬ︒ハテたった今仲問のやっらに︒器量の様子聞たでないかい︒サァ︒それじやによって談合す
る︒先此注文と引合してくれと︒︵二十ニオ︶さし出す書付鬼四郎ひっ取て月にすかし︒ヱ︑何ンじや︒年の比十二一︒すう
しろはりとして顔おも長に︒色白な男のがき︒イヤもふ此注文にすって付ヶたこっちの代物︒其めろさいとむずがへにしてくれん
︑ ︑O あきない ひやうし のみしろ き ま 二まかカレ ヲ︑注文に似寄たやっなら談合せふが︒まんざらむづでは商に拍子がない︒呑代程ても規樽っけい︒テモきめ細に
損せぬやっ︒よいはきっさり︒是じやくと銭書︒渡せば受取リまっとないかい︒一アテ打て置ヶ︒さらりく三人手を打︒
詞 きづ しつへい 地中 ウ ・レヤィ三郎わっばめを受とれ︒代物に疵付ヶまいと︒都から追てきた柳の箆そへて置クと︒梅若丸を山田に渡し︒楓子をひつ
ヲクリ ゥ みちのく フシたて二人の人買陸奥へさして立帰る︒ ウ地色中 とりめ しう ハル なで色 詞 地ウ むな おこ跡には雀目の三郎が︵二十ニウ︶主共しらず︒梅若君を撫廻し︒ホ︑よい比なわっぱめじや︒サアうせいと胸ぐら取て引起す︒ スェテ ハル ウ ウ もだへ時しも三月十五夜の月の光リに若君顔見て︒ヤァ三郎かといはんも叶はぬ猿轡︒物いひたげに悶給ふを︒
詞 しつへい 地ウィヤびこくと何ひろぐ︒身を大体の人買と思ふか︒なまぬるこい柳の箆くらふたとはあてが違ふ︒山田の三郎がだんび
ウら針の味見せふかと柄に手をかけ︒サァくどうじやくと︒見へぬ雀目をぐっとむき出し︒手強ふおどす詞と形相︒稚心 ウ にんぐはい ひだうはたら げろう ウ ぷるに誠と思ひ︒ヱ︑人外の三郎め︒非道働く下繭としらず家来となし︒あの一ト腰あたへし事のくやしやと︒無念の身振ひが
フシたくく︒手にこたゆれば︒
﹃本朝斑女警﹄ 六九