九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
近代日本監獄史の研究
赤司, 友徳
https://doi.org/10.15017/1931669
出版情報:九州大学, 2017, 博士(文学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
(様式6-2)
氏 名 赤司 友徳
論 文 名 近代日本監獄史の研究
論文調査委員
主 査 九州大学 准教授 岩崎 義則 副 査 九州大学 教授 高木 彰彦 副 査 九州大学 教授 折田 悦郎 副 査 東京大学 准教授 山口 輝臣
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
上記の論文は、近代日本における監獄のうち、明治10年代半ばからの約20年間に起きた制度変 化について考察を加えたものである。この時期は、監獄の費用を国と府県の双方で負担していた時 期であり、その制約に行政の当事者が対応していくなかで、国庫が一元的に支弁する仕組みへと移 行していく。その過程に焦点を当てたものである。論文は本論7章に、序章と終章とからなる。
序章では、先行研究とその問題点を整理した上で、上述した時期について、財政問題と教誨問題 を主たる対象に、監獄行政の主体性に着目して検討するとの課題を設定する。
第1章は財政問題を正面から扱う。監獄費を国と地方とが負担していた状態から、どのように国庫 支弁へと移行したかについて、行政の動きと帝国議会における審議を中心に検討する。その過程で、
監獄改良の必要性が社会に共有される一方、監獄行政の自立化が模索されていくこと、そしてその 成果として国庫支弁が理解できることが示される。
教誨問題については、まずは第2章で明治憲法以前の様相を俯瞰し、真宗を中心とする仏教勢力が 不可欠な存在であったことが示される。しかし仏教による教誨は効果に乏しいなどとして、監獄行 政の当局者は不満を抱くようになる。第5章では、北海道を舞台に展開されたキリスト教が主導し た教誨事業の展開とその内務省への影響が考察される。さらに第7章では、巣鴨監獄において東本 願寺の僧侶に代えてプロテスタントの留岡幸助を教誨師に任命したことから発生した巣鴨監獄教誨 師事件とその収束過程を詳述する。事件によっても教誨に関する監獄行政の方向に変化はなく、む しろ教誨を通じて宗教勢力を監獄行政のなかに取り込むことに成功し、監獄行政の自立が果たされ たと評価する。
こうした監獄行政を支えた官僚については3つの章で扱う。お雇い外国人ゼーバッハの来日によっ て監獄改良が動き出すという先行研究の見方に対し、すでにドイツ監獄学を受容していた官僚たち が、実務担当教員としてかれを招聘したとの見解を提示する(第 3 章)。ついで教誨師事件の舞台 となった東京府の巣鴨監獄の成立過程を追う。監獄官僚たちは機能面からそれを評価せず、かえっ て監獄行政の自立の必要性を確信していく(第 4 章)。かれらは監獄改良を目指す国際的なネット ワークのなかで思考し活動していた。小河滋次郎と留岡幸助を軸に、ドイツ側の史料などを用いつ つ、その実態を復元する(第6章)。
終章は、本論を要約し、その含意を提示する。
タイトルからすると対象とする時期が短いなどの難点はあるものの、監獄行政の自立という明快な 視角に立ち、19世紀後半の監獄をめぐる制度変化を説明することに成功しており、監獄史への寄与
はもちろんのこと、日本近代史全般に示唆に富む内容となっている。
よって、本調査委員会は、本論文の提出者が博士(文学)を授与されるのに十分な能力を持つこと を認めるものである。