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0 0 1   ホウ酸エステルの熱中性子照射について

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(1)

Vol.  16. (1979) 

│研究論文│

0 0 1   ホウ酸エステルの熱中性子照射について

中 村 勝 一 , 杉 林 卓 也 , 後 藤 昇 松 本 唯 明

Thermal Neutron Irradiation on Borie Esters 

by Katsuichi NAKAMURA

, 

Takuya SUGIBA Y ASHI

, 

Noboru GOTO

, 

Tadaaki MATSUMOTO 

(Received September 21. 1979) 

When an organoboron compound is  irradiated under the  thermal neutrons, the energy pro‑ duced by lOB(n,α)7Li reaction  can  produce the radiation chemical reactions on the compound.  This time, tri‑alkylborates (1. trimethyl‑borate, II. triethyl‑borate, III. triisopropyl‑borate)  were synthesized, and irradiated under the  thermal  neutron  flux  of UTR‑Kinki.  The results  were examined by means of GC, GC‑MS and IR spectra.  Hydrogen, methane, carbon monoxide,  alcohols and carboxiric esters were recognized. 

From the reaction mechanisms estimated, RO. radical  was seemed to  play a very important  roles. 

KEYWORDS 

thermal neutron irradiation, boric ester, organoboron compound, lOB(n,α)7Li reaction, tri‑alkyl‑ borate, GC‑MS spectra, gas chromatograph, IR spectra. RO・radicaI.

一 吉

lOB (n,α) 7Li反応を内部総班、として用いる有機化 合物の放射線化学的研究の一環として,線源物質自身 がホウ素を含む有機ホウ素化合物である場合,その物 質が如何なる変化により,如何なる物質を生ずるかを 検討する。

今回は三種のホウ酸エステルを合成し,それらを近 畿大学原子炉 UTR‑Kinkiの熱中性子束下に照射し,

その結果について検討したので報告する。

1  .  ホ ウ 酸 エ ス テ ル の 合 成

ホウ酸エステJレの合成法にはいくつか報告14)があ るが,ととでは文献(1)にしたがい,ホウ酸1モルに対

し,アルコーノレ4.5モノレを用いてホウ酸エステノレを合 成した。

合成したホウ酸エステノレはホウ酸トリメチノレ、ホウ 酸トリエチノレ,ホウ酸トリイソプロピノレであり,それ らは蒸留,乾燥をくり返して,純度96パーセント以上 のものを得た。 とれらはいずれもガスクロマトグラ フ,赤外線吸収スペクトノレ, NMR, GC‑MSにより 確認した。

n .   熱 中 性 子 照 射

試料をポリエチレン製照射用容器(容量10ml)に封 入し,熱中性子照射した。照射線量 (φt)はTABLE1

のとおりであった。

‑ 1 ‑

(2)

Table 1 Irradiation dose  Sample  Doseφt (n/cm2

グラムを Fig.1 ζI示す。乙こで生成物であるピーク 1および2は保持時間から,それぞれメタンおよび一 酸化炭素であることが認められた。

(CH30)3B  (CH3CH20) 3B  ((CH3) 2CHO) 3B 

Jn.結

m‑l 

ホウ酸トリメチル

2.45 1012  5.89XI012  2.28X 1012  3.31X1012 

液体部分のガスクロマトグラムを Fig.2に示す。

このピーク 1のマススペクトルを Fig.3 I乙,ピーク 2のマススペクトルを Fig.4Iと示す。また液体部分 を蒸習により低沸点分(1)と ï~~1~l\点分(2) に分別し,亦外 線吸収スペクトノレをとったところ,(1)では3250cm‑1 に,(2)では 1190cm1に析らしい吸収が現われた。

m‑2 

ホウ酸トリエチル

ホウ酸トリメチJレの照射試料雰囲気のカゃスクロマト 照射後のホウ隈トリエチルの雰四気のガスクロマト

① 

~J

Fig. 1 Gas chromatogram  of gaseous part of ir‑ radiated  tri‑methyl‑ borate. 

100 

50 

10 min 

Fig. 2 Gas chromatogram of liquid part of irradiated  tri‑methylborate. 

50  100  150 m/e 

Fig. 3 Mass spectrum of 1iquid product ① formed by irradiation of tri‑methylborate. 

. . .  

(3)

Vo 16.  979) 

100 

50 

50  100  150町l/e

Fig."  Mass spectrum of liquid product ② formed by irradiation of tri‑methylborate. 

min 

Fig. 5 Gas chromatogram of gaseous part of irradiated tri‑ethylborate. 

グラムを Fig.5に示す。ピーク1, 2, 3はその保 持時間より,それぞれ水素,メタン,一酸化炭素であ るととが認められた。

計算によると, 0.2モノレのホウ酸トリエチルから,

9.3 10‑6モルの水素,1.7 10‑5モルの一酸化炭素 が生じたことになる。

照射前後の液体部分の赤外線吸収スペクトルを比較 してみると,照射後 3250cm‑1に新らしい吸収が見ら

れ,アルコールの生成が示唆された。

m‑3 

ホウ酸卜リイソプロピル

ホウ酸トリイソプロピjレに 3.31x 1012n/cm2熱中 性子照射した後の照射容器内雰囲気のガスクロマトグ ラムを Fig.6 I乙示す。生成物のピーク1, 2, 3は 保持時間からそれぞれ水素,メタン,一酸化炭素と認 められた。液体部分のガスクロマトグラムは Fig.7

‑ 3 ‑

(4)

min, 

Fig. 6 Gas chromatogram of gaseous part  of irradiated tri‑isopropylborate. 

100 

50 

。 。

50  100 m/e  Fig. 8 Mass spectrum of liquid product ① 

formed by irradiation  of  tri‑isopro‑ pylborate. 

100 

50 

50  100 

① 

min, 

Fig. 7 Gas chromatogram of liquid part of  irradiated tri‑isopropylborate. 

100 

50 

50  100 m /e 

Fig. 9 Mass spectrum of liquid product ②  formed by irradiation  of  tri‑isopro‑ pylborate. 

150  200 m/e 

Fig. 10  Mass spectrum of liquid product ③ formed by irradiation of tri‑isopropylborate. 

(5)

Vo1.  16. (1979)  100 % 

50 

50  1ω  150  2ωm/e 

Fig. 11  Mass spectrum of liquid product ④ formed by irradiation of tri‑isopropylborate. 

に示す通りであり, 4種の生成物が認められた。それ ぞれの質量スペクトノレをFigs.8~1l I乙示す。

また,照射試料を蒸留により低沸点分(3)と高沸点分 (4)に分割し,それぞれ赤外線吸収スペクトjレをとった ところ(3)には‑OHの存在を示す 331Ocm‑1に新ら しい吸収が見られ,(4)では 1700cm‑1と1215cm‑1に 新らしい吸収が現われた。

とれらの結果からピーク 1はプロピjレアノレコーノレ,

ピーク2はイソプロピjレアルコーノレであると認められ る。また,ピーク3,4のMSはいずれも m/e 172  1

ζ親イオンピークを持つ CloH2002に相当し,亦外線 吸収スペクトJレばカJレボン酸エステノレであるととを示 しており,ピーク3,4は R‑C‑OR'の形を持つ

異性体であると思われる。

1 1  

I V . 反 応 機 構

以上の結果から,ホウ酸エステjレの熱中性子照射に よる放射線化学的反応機構はつぎのように考えられ る。

(RO)310Bー→n  3RO・十α+7Li(+2.35MeV) 

(1)  (α, 7Li) 

(RO)3 B R・+・OB(OR)2 (2‑1)  (22) RO.+B(OR)2

H.+・ROB(OR)2 (23) CH3.+・R'OB(OR)2 (2‑4)  (RO)aB +RO・一→・ROB(OR)2+ROH (3‑1) 

(RO)3B +H.  一→.ROB(OR)2+H2  (RO)3B +R.  一→.ROB(OR)2+RH  (RO)3 B +CH3. ‑→.ROB(OR)2 +CH

, 

CH3.  +H.  一→CH4

R.  +H.  ‑→RH  H.  +H・ 一→H2 2RO・ 一ー争 R'CHO+R"OH  R'CHO  ‑ N N R'・+H・+CO R'CHO+.OR 

ー ‑

R'COOR+H.

アノレデヒドの生成は(5)のほかに

RO.  ‑ M N R'CHO +H. 

RO・+R・ーー争 P'CHO+RH  なども考えられる。

量五回目

(3‑2)  (33) (3‑4)  (4‑1)  (4‑2)  (43) (5)  (6)  (7) 

(8)  (9) 

三種のホウ酸エステJレを熱中性子照射したととろ,

水素, メタン, 一酸化炭素の気体生成物, アルコー ル,エステノレの液体生成物を得た。乙の結果より反応 機構を推定したが, 乙乙では RO.ラジカノレの作用が 特に重要であることがわかった。

lOB (n,α) 7Li反応lとより生ずるエネノレギーは2.35 MeV/崩壊とされているが,炉内ではとの他にγ線 の吸収,速中性子により生ずる反跳陽子エネノレギー,

速中性子の減速などのエネルギーも作用する。とれら のエネノレギーを見積るととは極めて困難であるため,

G値の評価が出来なかった。

‑ 5 ‑

(6)

REFERENCES 

1)  J. R. JOHNSON, S.  W. TOMPKINS,Organic  Syntheses", col1.  vol.  II, p.  106, John Wi1ey  (943). 

2)  H. I.  SCHLESINGER, e .ta  ].1 .  Am. Chem.  Soc, 75.  213 (953). 

3)  H. C.  BROWN, E. J.  MEAD, C. J.  SHOAF, ].  Am. Chem. Soc., 78, 3613 (956). 

4)  L. H. THOMAS

, よ

Chem.Soc.

, 

820 (946). 

Table 1 I r r a d i a t i o n  dose  Sample  Doseφt (n/cm 2 )  グラムを F i g .1  ζ I 示す。乙こで生成物であるピーク1および2 は保持時間から,それぞれメタンおよび一 酸化炭素であることが認められた。 (CH30)3B  (CH3 CH20) 3B  ((CH3) 2CHO) 3B  Jn.結 m‑l  ホウ酸トリメチル 2

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