NII-Electronic Library Service 1
医 薬
品 製 造
.
者 責
任
の
展 開 口
ア メ リ カに お け る
製 造
者
責 任
の法 的構 成 を 中心 と
して浦
泉
The
Developments
ofEthical
Drug
Manufacturer
’sLiability
(
2
)
冖
With
special referencetq
legal
construc 七ion
ofmanufacturer
’
sIiability
in
the
United
States
一
Izumi
MIURA
J 員 次 f1
は じ め にll
序 説 皿 製造者 責任に おけ る 過 失 理 論の展 開囚
Winterbottom
v,
Wright
(1848)事 件 rCB
)Thoiiias
v.
Winchester
(1852)事 件〔C)
MacPherson
v.
Buick
Moter
Co .
(1916)事件IV
医 薬品製造 者の 過 失責任 1、
ネ グリジェ ンス と は (A) 過 失の要 件 〔1〕 医 薬 品 製 造 者の 注 意 義 務 開発 上の注 意 義 務 回 製 造 上の注 意 義 務 警告 上の注 意 義 務 同 警 告の方 法 1 {B) 過 失の立 証 責 任(イ) 情 況 証 拠
∫
ヒス ノイ プサ
・
ロ クィ トゥー
ル 原則 法 律 違 反 即 過 失 自体 (以 上 本 学 紀 要 第 5号に掲 載 )V
判 例一
つ :Ho
實皿 an v,
Sterling
DrugInc.
(485 F 2d 132 (3d.
Cir
1973))事件 {
1
} 事実の概要 事件の争点と分析VI
製 造者 責任における保証 理 論の展 開〔A)
Maze
むti’
v.
Ar
皿 our &Co ,
(1931) 事 件〔B} Baxter v
.
Ford MoterCo
.
(1932)事件〔C}
Henningsen
v,
Bloomfield
Moters
。Inc.
(1960
) 事 件/
9
2
三 浦VH
医薬品 製造者の保証責任1.
保証責任 と は (A) 明 示 保 証 責 任.
{B}、
黙 示保証責任 泉 (以 上本号 )V
判
例
一
つ :Hoffman
v.
Sterling
Drug
Inc
.事 件
(
1973
年)
(
485F2d
・
132
(
3d
Cir
1973
)
)前 稿において は
,
ア メ リカ にお け る医薬
品製
造者の過失責
任に関 する法 理 論 的 展 開 を 分 析 し た。 それ らの分 析に従 っ て,
医 薬 品における事 件の 二 判 例 を検 討 し,本稿
の 研 究 目的を 進 め る ことと し た。こめ 判 例 は
,
州 間相 違 訴 訟で,
原告
(Hoffman
)が 上訴
U
皮
対側
(Sterling
Drug
Inc
) も上 訴 したもの である。 それは商 標 名 厂
Aralen
」 (製 造者
,Sterlipg
Drug
Inc
.
とWinthrop
Lab
.
)で市
販さ れ た クロ ロ キ ン燐
酸 塩 (Phosphate
) を原告
に注射
し た結 果,
重 大な永 続 的 障 (79)害
を被
っ た と して原 告が損害賠
償
を請 求 した事 件で ある 。 〔1
} 事 実 の 概 要こ の事 件 は
,
医 学 的 歴 史 的 閤 題 と して19SO
年 初め ご ろ からは じま る。 原告は, その頃
, 胃 腸 の 状 態がお
もわ し くな く,
また関 節 炎 痛の た めDr .
K
に診 察 を 受け た ところ,Dr
:
K
・
は原告 の顔
に発 疹が出て い るの で, 皮 膚 科へ 行 くよ う勧あ
た。 そこで原 告は,Dr .
M
(皮 膚 科の整 骨術
の専
門家
)へ 行き,
紅斑性 狼 瘡 症の病気
と診 断さ れ,1957
年5
月 治 療の た め 「Aralen
」が処 方 された。Dr ,
M
は,
原 告 を 1957 年4
月か ら1958 年5
月 まで加 療 し,
その 後 皮 膚 科の 専門医・
で あるDr .
C
が,1958
年6
月 から原 告に加 療 したの で あ る。 そこ でDr .
C
は,
ま た1964
年3
月 までrAralen
」を 処 方したの であ る。Dr
.
C
は 証 言 して い るので ある が, クロ ロキン薬の長 期 間の 使 用が 眼 に障害
を及ぼすこ と に気づ き, 原 告に 「あ り うる か もしれ ない」と教え た。 そし’
て原 告に眼 科へ 行 ?て slit−1amp
検 査 を 受 けるよラ
に忠 告.
L
たの である。 しかしDr .
C
は∫ 眼 の障害
が治癒
できな いこ と は知ら な かっ た と述べ てい る。
原 告は
,1964
年3
月に,Dr .
C
か ら直接
治療
を受けるのを
やめ, その 後は1965
年6
月まで,
Dr
.
C
の 発行す
る処方
箋で 「Aralen
」を服 用 しつ づけ た。
そこで原 告 が,Dr
.
L
に相 談 した と ころ,
こ の関 節炎痛
に対
してDr
,
L
は,
原 告に対
して 「Aralen
」の服
用 を中止
する よう忠告
し たの であ る。ところで
Dr
.
G
に よれ ば,
原 告 は1965
年〜66
奪頃,視力
り 異変
を感
じて 原 告の眼 科 医Dr
.
C
に相談 に き た。 そ して検 査 し た と ころ,1966
年以前に原 告の視覚
は,20
/20
視 界で 正常で あっ たが,
その後1967
年6
月には両 眼 と もおよそ20
/30
に低 下 しst 視 界 が かな り悪
化 した,
と証 言 してい るの である。.
・
な お
Dr .M
(眼科
医 )に よれば, 同 医 師が原 告を1965 年 12 月
に検
査し た とこ ろ,
原告あ視
力は両 眼20
/30
であ り,
それ を2Q
/20
に規 整 するこ とはで きなかっ た。 そ こ で,1970
年Dr .
M
は,
原告
が クロ ロ キン網膜
症で
ある と結論付
けたので あ る。 そ してつ いに彼の両
眼の視
界は,NII-Electronic Library Service 医 薬品製造者 責 任の展開(⊃
3
10
/200
にまで低下
して しまっ た (この状
態はペ ン シ ル ベ ニ ア州
法では盲 目
の範
疇であ
る)。
とこ ろで クロ
F
キ7
網 膜 症と は,
クロ ロ キ ン薬の長 期 間の使 用か ら生 ずる網 膜の障 害 状 態で ある。 こうした永続的網膜障害
の可能
性は,1946
年
「Aralen
」 が市販
さ れ は じめ た頃}と十分
予 測さ れ たこと
で あ る。「
Aralen
」は,.
マ ラリア の治療
薬と して,FDA
が 認可 したもの で あ る。 そ してすで に1940 年
〜1950
年 初 期におい て,
通 常 的な副作
用 と して,
ロ区気,
異 常の 痙 攣,
視 力のく も り,
数 症 例が知
見さ れて いた。 しか しなが ら その当時
,視力
の障 害につ い ては, ク ロ ロ キン 薬 治 療では一
一
時
的な もの で ある と.
結 論 付け られてお り,
研究
者 がクロ ロ キン薬 治 療 を しなか っ た時は知見 されな かっ た もので ある。 そうし た状 況の も とで1953 年 まで,
原 告の リウー
マ チ関 節 炎,
紅 斑 性 狼 瘡 症,皮膚
病等
の 治 療に対
し てrAralen
」の使
用の効果の報
告が現
わ れて いたの であ る。
1955
年,
被 告Winthrop
Lab
社は,
紅 斑 性 狼 瘡 症の治 療 薬と して の 「AralenJ
に関 する論文 を 出 版 発 行 した。 また同 じ年, 同
禄
は上解
ρ
治 療の際の 「Aralen
」の使 用に関
する情報
をPhysician
’s
Desk
Reference
に発表
し た。 最後
に,1957年 7 月25
日,被告
はFDA
に対
してリュ
ー
k
チ関 節 炎, 紅 斑 性 狼 瘡 症の、
「Aralenll
使 用の た めの 宣 伝・
販 売の 認 可 を 求め,
さらに新
薬と して申請
手続
を し たの であ
る。 これに対
してFDA
は,条件
的で あ るが
1957年
10 月 2 日か ら 三 週間 後, 最 終認 可 を与え た。
とこ ろ で1957
年頃, クロ ロ キン薬の 使用の 結果,
網 膜の永
続 的障害
を引き起こすとい う疑
念 が一
部
の学者
(Dr
.
G
)の論
文に よっ て 発表さ れ た り し た。 これ らの論 文 を要 約 す れ ば, 関 節 炎は クロ ロ キン薬
の 成 分か ら生 ずる もの であ る と説 か れた が,
被
告の 証 人 (Dr
.
R
)に よれ ば , こ の論 文
の 記 述は “ ありそ うなことだが, まっ た くそ うで もない と も言 える” , クロ ロ キン薬は関 節 炎を生 じさ せ る か もし れ ない が, 彼等
の使用
した薬がWinthrop
I
、
ab社
か ら販
売さ れ た クロ 1コ キ ンPhosphate
で は な く,毒
性の 異な る sulfate であると考 え られる
』
そこで
1960
年, 被 告は,
自社の商
品の 力 タ ロ グlctw
人の学 者の論 文 を 参熈
し,
医学 文 献には 網 膜 障 害が クロ ロ キン薬 治 療で不 可 避 的に引 き起こされる 旨を 報 告 し,
1962 年の商 品 文 献に は,
“
クロ ロキ ン薬で治 療後,数
ケ 月 ない し数 年内
に網 膜 障 害が まれに 起 こ る との 報 告を含め て警 告 し たの である。 加 えて,
被 告は長 期 間の ク ロ ロ キ ン薬の治 療の間に;
’
初 期の変 化を検 査 する た め 「Periodic
visualfield
exam 」検
査 をす
る必 要 性 を 指 摘 し,
1963
年2
月,248
,000
人 の医 師に対
して クロ ロキ ン薬 使用 の初期
の患者
に 眼の合併
症と 「Periodic
OphthalmologiG
exa 皿 」の検査
をする必 要 性を警 告し た書 面 を, 送っ たの である。 {2
}事 件の争点
と 分 析、
前述の よ う な
事件
の概要
の もと で原告 と被 告の間に お け る事 実 上 及 び法律 上の争点
は,次
の よ うに要 約さ れて い る。ま ず 第
一
審 裁 判 所 (ペ ン シ ル ベ ニ ア地 方 裁 判 所 )か ら上 訴裁
判 所へ の 提訴
理 由 を 考 察 して,
原 告の訴答
と被
告の上訴
理由 を 述べ れば ,(
d
)原告
の主 張(
1
) 薬 (クロ ロ キン)が市 販 さ れる前にな されるべ き検 査が不 十 分で あ れば 過失
がある。ま た薬に内在 する危 険 性につ いて, 薬の使 用
者
又 は医
療 専 門職
(medicalprofession
) に適 切な警 告を し ない 懈怠に して も, 過 失がある。211
N工 工一
Eleotronio Library4
三 浦 泉ζ
れは,FDA
規 則301
条,501
条,502
条に違反で ある。
被 告は
,
不法
行為法
の下}こおける厳 格 責 任 を 負 うべ きである。
〔4
} 被 告は,
クロ ロ キ ン薬の安 全 性にっ い て の 知 識 と特 性 をめ ぐる故 意 的な 間違え,
虚 偽的な不 実 表 示 と陰 蔽, また は
薬
の有害
な特性
に対
する不 実表
示 的 報 告につ い て も, 責 任.
がある。 こう
した訴
答に対
して第
一
審裁判所
は,長期
間審
理後,
陪審
が損害
賠 償 金につ いで評 決 し,
総 額 437 , OOO ドル を 認 め,
原告 勝訴の 判 決を 示 し た。 これに対し被 告は,
原審 裁 判 所の誤審 を 主張 して上 訴.
し たの で ある。回
被告
の上 訴理由〔
1
) 被告
がFDA
規 則に違 反し た か否かの問 題を陪審
に具 申1
.
FめA ’
に対 し,
クロ ロ キ ン薬に関 する医師
か らの質問と情 報の手 紙を 提出
し な かっ たとい う
申
立に被 告は 証拠を提出
。』
、
{
3
}被
告が
rAralenj
の有 害な副作
用に関 して適 切 な検 査 をせず 販 売 した 問題にっ いて陪
審
に具申
。〔
4
}陪審
が裁定
し た損害賠償
金437
,000
ドル の金額
は法 外であ
ると主 張。そこで前 記の 原 告の 訴 答 と被 告の 上
訴
理 由を考 慮 しなが ら,両
者の 主張 抗 弁を検 討 し,
問題点
を列挙
しつ つ , 以下
では 主要
な論点
を筆者
な りに分析
しだい。 第一
の 論 点「
Aralen
」 はFDA
の 認 可の下で市 販 さ れたが,
その 認 可 条件
がFDA
規 則 違 反であっ た か否
か が まず
問 題で ある。証 拠に よれ ば
,
FDA
の 認 可 は,
「Aralen
」 に対 し,
マ ラリア治 療 薬の 新 薬と して認 可 さ れ た もの で南
っ た が,
実 際 こ の事件
の指 示 使 用に際 しては,
紅 斑 性狼 瘡症
に用い られ,
い わ ゆる マ ラ リア の 治 療 薬の新 薬 とい う認可 目的
以外
の病 状に使用 さ れ たことが,
EDA
規 則に違反 し た, と述べ ら れて い る。 そ れ はこ うで あ ろ う。 もし 「Aralen
」が 認可 目的 以外
の他の病気
に使
用 されるな らば, それ は新 薬 と して改め てFDA
に認 可 を 求め るべ き ものであ り, その手 続 き を踏
ま ないな ら指示使
用上の義務
違 反である とい う・
こ とで あ る。 なぜ な ら 「Aralen
」はすで に新薬
で は な くな っ てい るの である。
原 告の 主張は こ う した点
に第
一
の 論点
を持
ち評 価さ れて い るもの で あろ う。 新薬
の他の症 状に対 する使 用 上 投与
上の変 更につ い ては,
原 告の主 張の よ う に公衆
lc
指 示 警 告される前に,FDA
の新 薬 と しての認 可 を 取得
すべ きで あ り.
, 薬の成 分の変 更,投
与量 及 び方法
, 期間,
その他
の使
用 上の条件
な どの使用上の適 切 な 変 更は,FDA
の指 示に従 うべ きであ ろ う。こ の件に関 して当 該 裁 判 所 は 証 拠 物 件 を考 慮 して,
FDA
の認 可 以 前に, マ ラリァ 治 療薬
で ある 「Aralen
」 を紅
斑性 狼瘡
症の治療
に使
用 し たこ と は法 規 違反 であると判
示し
, そ れ は同時
にFDA
法
違反が被告
の 主張 する法
違反 即ち障害
の 近因では ない とい う弁論
に対
して も当
該裁
判 所は,
FDA
認 可 数ケ月 前に原 告の紅 斑 性 狼 瘡 症に 「Aralen
」 を処 方 して い る証 拠に よ り,
薬 と障害
との間の近因関係
あ り と判
示 し たの であ る。
この近 因 (Proximate
Cause
) とい』
う用 語 は, アメ リカの 法貍論
によ く現わ れて く るもの で , 近 因と は 「近い原因によ る損害
, 逆に いえ ば,
原因
か ら近い結 果に対 して は,
賠 償 する」 と』
い う因 果 関 係 (通 常,
因 果関
係には事 実 上のNII-Electronic Library Service 医 薬品製 造 者 責 任の展開口 5 (8o)
因
果関係
と法律
上の因 果 関 係に分 けて論 じ られて い る)の一
般 原 則であ ると述べ られている。 第 二 の論
点第
二 の 問 題は, 被 告が抗 弁 するrAralen
」の 副作
用に関 する 適切
な検 査の後
,市
販された か 否か で ある。 被 告は原 審裁判 所におい て 「Aralen
」を紅 斑 性 狼 瘡 症の 治 療に使
用する段 階で,
有
害 な 副作
用 に関 して適切
な検 査 を し, 販 売 した旨証 拠 を 提 出 したのであっ た。
被 告 側の 証人に よ れば
,
クロ ロ キン薬
の 副作
用 に関 する テス トを一
年
以上の長期
間動物
で テ ス トを した。 最 初 はラッ トで1953
年〜
54
年に行 ない, その結 果 注 目すべ き ものが な く網 膜テス ト は しな か っ た。 第二にモ ンキー
を使
っ て1958
年3
月〜59年 8
月まで74
週聞行なっ た。r
このテ ス ト に対し原 告の 証 人は 「Aralen
」 と 「Aspirinj
の 評 価を求め る方 法に基づ い たもの であ り,
不適 切で あ り,
「Aralen
」の みの 評 価を基 礎 と した もの で有効性を解
明 する方 法で はない と証言
して い る。」第三の テス ト は
,
(「Aralen
」の長期
間使用 か らの副 作用 を知るために)ネ コ で行な わ れ た。
すな わちこ の テス トは,
「Aralen
」 が網 膜 症を起こすの では ない か との 予想の も とに,1965
年 ま で行
なわ れた が,事件
が法廷
の審
理期間中 (
1968 年〜
69
年
まで)
は行
な わ れ なかっ た。被告
の 証 人は, 人 聞に (12
人 か ら15
人 を 対 照 と して)短 期 間に一
般 的テス トと して眼 又は網 膜 症テス トを行なっ た。被
告の証人が陳述 してい る これ らの 問題 に対U
て原告の 証 人 は,一
つ の研 究を し た (1964
年〜65
年 )。 その研 究に よれば,
ラッ ト に綢 膜 変 質が現 わ れ,
1963 年〜
68 年にわたっ て,
他の研 究方法
を用
いて行 なっ た結
果, クロ ロ キン注射
薬 が動
物の網
膜変化
,網
膜障害
を及 ぼ した と証
言 し, 同 時に, こ の研 究 方法
は10
年 前で も技術
的に可 能な方 法であ っ た と 述べ て い る。 これ らの 要 点 を端 的に述べ れ ば,
問 題 となっ てい ることは, 第一
に,
「Aralenj
の長 期間の使用か ら潜 在 的な有 害な副 作用が適切なテ ス ト で現 わ れる か ど うか。
』
第二 に,
実際
には 被 告の 研 究が適 切で あっ た か否か。 陪 審におい て正確に問 題と なっ たか 否 か。こ の論
点
に対して当 該 裁 判 所は, まず 被告
が 「クロ ロキン薬 を人 間に長 期間
投 与 してい る間,
問題 が起こ ら な かっ たの であ る か ら, た と え そ れ らの 因 果 関係
につ いて動物実験
を行な わ な か っ た と して も過 失 が あると はいえない」と 陳 述 して い ること}ζ対 して,
1953
年のDalehite
対 (81)United
States
事 件のJackis
裁 判 官の判旨
を 加え て, 「我々人 間 (かつ て な く増 加 して い る)が
,
食 品と飲 物,
治 療 剤 と合 成剤,
衣 類と装飾
品を大量生産
にた よる。
これ は総
合 合 成的生 活 の 時 代で あ る、
もは や自然で単 純 な製品
の ない 時 代である。 成 分 や 性 状 とい う もの が複 雑で あ り,
それ らは しばしば秘密
で ある。 こうし た依存社会
では,単純
な時代
よりも
正確
な厳格
な注
意 が な さ れ なけれ ば な らない。 その安 全 と注 意 力の努 力におい て のみ,
製 造者
,
生 産 者は, 安全
と警告
が要求
さ れな ければな らない。購買者
は殺す
ものか,治
癒す
るものか決
めて薬
を飲
む こ と はで きない。……
実 験 又 は 調 査 は,
危 険の存 在 と程 度を決 定 する必 要がある。 これ らの製 品 を製造
す る者
は,
研 究設備
を備
えて,
内在
する潜在的
危
険
を 見つ け出
す技術
的 知 識 を公 衆 か ら期
待さ れ ねばならない 。 危 険が予 見されな か っ た とい う 主張
は, その企業
の製
品へ の 配 慮が な さ れ な か っ た とい うことで あり評価
しえ ない 」こ の 判旨
を 引用 し述べ た後
,当該裁
判所
は,23
N工 工一
Eleotronlo Llbrary6
三 浦 泉 被 告 医 薬 品製
造者の 予 見 性 あ りや否やの 問 題として,
証 拠を採 用して,
1956
年 初 期の医 師か らの手 紙により「
Aralen
」を 用い た 患者
が視
力障害
と網 膜変化
の呈 し たこと を 知 らせてお り,1960
年
初 めの医
学 文 献にその こ とが 示さ れてい た,
と判断
して被
告に過失
あ りと判 示 して い る。 第 三 の 論 点被 告が主 張 する
rAralen
」で治 癒 する た め処 方 する医師
が患 者に警 告 す る義 務 が ある か否
か の問 題で あ る。この論
点
の第
一
は,原審
裁 判所 が陪 審に不 適切な指
示か ら問題 が は じ ま る と 思わ れる。 その 理 由 は,
被 告が 処方と治 療を 行 な う医 師に対 して薬の有害性
につ い て警
告 する義 務があるとい (B2) うことで ある。 ま ず 第一
につ い て当 該 裁 判 所は,
Incollingo
対Ewing
事 件の判旨
を 引 用 して い るのである が, こ の判 旨
で は,
ペ ン シ ル ベ ニ ア州法
は,警告
をなす
こと を処方
する医 師に の み要 求 して い るが
,
当 該 裁 判 所で は同 意で ぎない とし,
またltncollingO
事 件で述べ て いる警 告 義務
の要請
は,
正当な免許
医 師にのみ有効
で あ り,
公衆
又 は患者
に警
告 する義
務は ない と して い る。 要 するに処 方 医のみに警 告 す れ ばよいとい う意 味であ ろ う。 当 該 裁 判 所は,
、
こ の警 告 義 務 問 題 にっ い て医 薬 品 製 造 者の警 告が最も よ く伝 達さ れ る というこ と が重 要な 点で あ り,’
A°
ン シ ル ベ ニ ア州 法 は処 方 す る 医 師で
あるか , 又 は治 療 す る 医 師で あ るか はそれほど重 要 な 問 題では ない と述べ , 処 方 薬の使用 につ い て は, 医薬 品製造者
の警 告が消 費者
まで 達する (ラベ ル 又 は直接
の伝 達 方法
を用い て)
こと は困難
である。 医 療専
門職
へ の警
告が有効
的な方法
(最 も有効
9 な方法
は,Detail
man によ る警 告義
務
の問題が あ る。
内 容につ い ては,前 稿 (第5
号 )40
頁を 参 照 されたい),
におい てのみ 患 者 を 助 ける ことにな る と述べ て い る。 それは医薬 品 製 造 者が処 方 医 及 び 治 療 医の両 方に警 告 す る義務 が求め られて い る。 しかる に,
こ の事 件に おい て は, 治 療医師に警
告が な さ れて いれ ば 悲劇
は避
け られたであ ろ うと判 示して い るの である。さて
警
告 問題 につ い て, さ らに当該裁
判 所の 結 論を要約
して み たい。まず 当 該 裁 判 所は
,
この 問題 につ い て原 告 側の 主張で ある技術
的 状態 (た とえ ば医 学 的 知 識 の状
況 )の故 意 的で不 注 意 な点に対
して被告
に責任
を 課 すべ きで あ る。
その{1
)と して, 被告
が 「Aralen
」の有害
性を知
っ た時,
FDA
に申告 すべ き にもか か わ らず懈
怠 し たこと。 〔2
)クロ ロキ・
(83) ン網膜
症につ い て医療専
門 職に知 らせ ること。 〔3
跛 告によ る警 告の妥 当性 が あ りや否やの問 題。これ らの問 題につ い て証 拠に より被 告ら は, 「
Aralen
」の 危 険な作
用 に 関 して,
販 売 方 法 並 びに 職 務 上の不 注 意に責 任 を負 わされる。 その不往
意と は, 網牒
症障害
の警告義
務が
医療専
門 職に警
戒 させ る方 法 が と られ た か 否かの問 題で ある。 そ の警 告 を効果 的に医 療 専 門 職に できるもの は,The
Physician
’
sD 聞k
Reference
が その一
つ である。被
告らは,1963年
まで にThe
Physician’
sDesk
ReferenceJ
に網
膜 症 障 害の副作
用につ いて言
及す
ることに懈 怠 が あっ た。
ま た 医 師に有害な副 作 用 を警 戒 させ る に役 立つ もの と して
“
1
皿portant
Drug
Precautions
”とマ
ー
クし た手紙
を送付す
る ことも
一
つ である。 しか し な が ら被告
は1963年
2
月
まで こ のマー
ク付
の手紙
を 送 付 しな かっ た。 それに加えて1963
年2
月に248
,OOO
人の医 師に送 付 したマ L ク付の手 紙で さ え, “ あいまい ” であっ た。
この こと は, クロ ロ キ ン網
膜 症の危
険につ い て知っ ている被 告が, こ の 警 告の 形 式が医 療 専 門 職に効 果 的に伝 達されてい な かっ たこ と を知っ た か,
知 り得るべ き で あっ た かの証拠
が提 示さ れ るべ きで ある。 重大
な危険
を 医師
に警 告 する との合
理的
な行 為の懈
怠が,
公衆
の健
康
に不注意
で あっ た か否か とい う点
につ い て陪審
へ具申
されるべ きも
の で あNII-Electronic Library Service 医 薬 品 製 造 者 責 任の展 開 口
7
っ た。 第 四 の 論 点懲 罰 的 損
害
賠償
額につ い て,
原 告 が 再審
理 を 諳 求 し, 被 告 は 陪 審の損害賠償
#fi
437
,
OOO
ドル が法外
である, と主張し た 問題であ る。ア メ リカ
法
におい て は,裁判所
は損 害 賠償
に関す
る判 定に際して,補
償 的損害賠償 (
Compen
−
satorydamages
) と懲罰的損害
賠償
(Punitive
damages
)に大 別し課 して い る。 前 者は, 主に精 神 的 損 害 (今日 で は慰 藉
料
も含まれて いる), すなわ ち無 形の損害
を現実
の損害
と して認 め るもの である. ・れ鵬
し磯
者 は測 産 的 及び肉 体 的 儲 に対 して認め ら卿
ど ちらかe
.
(s5) 言 え ば,
被 告の悪 性に対 して懲 罰 を 加え,一
般的
予
防に資そ うとするものである,
と説か れて い る。 現 在でぽ
ほ と んどの州がこ の法
理 を採用 してい る よ うであ る が,
民 事 事 件におい て懲 罰的
損害賠
償法
理 を採
用す
るこ と に反 対 する考え方もある。 な ぜ な ら,
その主な理 由は,
こ の法 理 が 「民 事 責 任と刑 事 責 任とを 混 淆 するち
の で あ り,
民 事 訴 訟にお ける損 害 賠 償の目 的 は 発 生 (86) し た損害
の補 修である」,
し かる に 「処 罰 を 目 的とする懲 罰 的 損 害 賠 償を 認め るの は変則で あ (s7)・
っ て不 当である 」とい う 反対 説 もあ る。 確かに民事責
任 と刑事責
任と は 異 な る性 質を もっ て お り,
内 容 的にも積
極 的た権
利 侵害
を 意図 するものと,
不 法 行 為に おける ように精 神 状 態 (過 失 ) が重 視されるものと, その 損 害に対して は おのず か ら差 異があるであ ろ う。 しか しなが ら賛 成 論によれば,
「不 法 行 為の 損 害 賠 償 責 任一
それが補 償 的なもの であっ て も一
訓 戒 的 作用を営
ま せ るこ と を意味
す る 」の であっ て,
「懲罰 的 損害
賠 償 も訓 戒 的 作 用をよ り強 化さ せ る もの (88) で ある 」 と説 か れて い る。 ムこう した両 論 を
踏
まえな が ら当 該事件
の損害
賠 償 問 題につ いて考察
して み たい。原 告 (建 築 設
計
士 (archteceuraldraftsman
))は,
将 来26
年3
ケ 月 労 働が可能
であ
り, そ の期 聞 年6
% 給 与 上 昇 率 を 含め た金額
を主張 し た。被 告
縁,
第一
審 陪 審の 評 決 が金 額 的に法 外であ り,
予 測 的であ り, 将 来の所得
の 損失
に対
す る報
酬を含
ん で い る限 りにおい て は支 持 し得
ない と 主張 した。原 告は経 済 学 者らを 証 人 と して 立て, 将 来 金 銭 取 得の 予 想 損 失 を 統 計 的 計 算か ら推測 して全 生 涯の稼 動 能 力 (
26
年3
ケ 月 )680
,000
ドル , 現 在の貨
幣 価 値に概
算 す れ ば,306
,
000
ドル の損失
を 主張し たの で あ る。 当該裁
判 所は,
証 人経
済学者
S
の 説明 に基づい て考 慮 す れば,
賃 金上 昇 率は妥 当. (2
)この 地域 (New
York
)の同種業
に おい て は年6
%上 昇 率,
(3
}建 築 設 計 士 はこ の地域
で過去 5 年
以上 年6
%上昇
して き た, {4
}過 去5 年
内6
%以上 上 昇 してい たこと を原
告が将来
26年
間,年
間6
%昇給
を受
けるで あ ろ う か とい う十分
な根極
の 証拠を形 成 するであろ う か, 将来
にわ た る増 収は推 定な り算
定な りを 現わ し う る だ ろ う か と 述べ,
次の よ うに問題 点 を指摘
し たの である。 {1
}見込まれる将来
の給料
の問題,
将来
の経済
的 動 向にっ い て で ある。 (1
)につ いては 前 述 した が, 〔2
}につ いて裁 判所
は, ω ドル の価 値の下 落,’
回 イン フレー
シ ョ ンを考
慮, 生 命 期 間 (寿 命 )の問 題の三点 を 考 慮 して い るの で ある。Cd
}につ い て}さ
第一審
裁 判所
は 「原 告の主 張 する一
生 を通 しての ドル価
格下
落に 関する証N
の提 案 を 拒 絶し た。 回につ い て は将来
のイン フ レ傾向
の蓋 然性
又 は規模
に関 して証拠
を導
入 せず
, 長期
間に わ た る イン フ レー
ショ ンの影 響 も証 明し な かっ た。に
つ い て は 保 険 的 問 題であ り,
計 算 不 可 能で でき ないと したの であ・
る。」。 当 該 裁 判 所は, 第一
審
裁判所
の判 示に対 して同 意 しつ つ も ,上
記の問 題 を含
め て,25
N工 工一
Eleotronlo Llbrary8
三 浦 衆 年6
%の 所 得 増加 を予測 し, 懲罰 的 損 害 賠 償 問題 を含めて , 損 害 賠 償 額の 争 点につ い て は再 審 理 すべ きであるとし差 戻 したのである。 当該 裁判 所は本 件の上訴を棄 却し,
原 判 決を確 認,
法 律 説 示一
部 破 棄 差 戻 とした。 わが国で は,
この クロ ロ キン製剤の事 件につ いて は,
昭 和57年 2月1 日,
東 京 地 方 裁 判 所において判 決 が な された。 原 告 ら患者88
名 は,
クロ ロ キン製 剤 を服 用し た結果 網 膜 症に罹 患した もの で,
被告 製薬会 社
6
社に損害 賠 償 する義 務 が あると した。
’
詳細につ いて は,判
例タ イム塔,458
号,
昭和 57年 3月5 日発行,187
頁〜298
頁を参照されたい。 加 藤一
郎,
「不法行為にお ける過失と因 果 関係」,
ジュ
リス トr
英米判 例百ec
ll
私法』No .
60,
1.
978年,
29頁 参 照。tl1
)346
U.S.
15 ,51’
−
52,
73 。
S , Ct.
956, 976.
, 97 工、
.
Ed.
1427 (1953)。 圃444Pa .
263,
282,
A ,
2d 206 (1971) 。 これ らの原 告の主 張は補 足 資 料に説 明が なさ れて い る。 補 足 資 料 囚 ω は, 「クロ ロ キ1網 膜 症に関 する医 学 的 研 究の展 開につ いて」
,
被 告は1
「医 師から患 者の網 膜 障害
に関 する情 報 (被 告ic
対 す る注 意め 問 題に関 連し て)」を列 挙,補 足資料〔B}「網膜 障害の危 険性につ いて の被 告に よる警 告に関 して」
。
(B4 田中 英 夫, 「英 米における懲 罰 的 損 害 賠 償」, 『損 害 賠 償 責 任の研 究 (中 )』, 昭 和39年 4月30日初 版 第三 刷,有 斐 閣,892
頁 参 照。高柳 賢 三
,
末 延 三 次・
前稿掲載 書 (30
),391
頁参照。’
田中・
前 掲書,
897
頁参照。
〔瞰 田中・
前 掲 書,897
頁 参 照。’
田中・
前 掲 書,897
頁参照。
(89)VI
製造者責任
にお・
け る保
証 理論
の展開
製 造 者 責 任にお け る過 失 理 論の展 開で指 摘 したが,
過 失の要 件には原 告 側の立 証 責 任が要 求 さ れ,
こ の 立証は原告
に とっ て困難
な 問題であ
っ た。』
しか し その後 過 失の存 在の立 証 を被 害 者 か ら救 済 する法 的 理 論 的模 索がア メ リカ の裁 判 所に おい てな さ れ, 過失の 立証を必 要と し ない (ge) 保証責
任法
理を生み出 したのである。一般
的に,
こ の保 証 責 任の法
理 は,従来
コ モ ン・
ロー
上契約関係
が要求
さ れ,契約当事者間
’
(91) におい て の みの保証 違 反に対し損 害 賠 償の責 任が発 生 しうるとされて い たの である。 すなわち 契約
は約束
であ り,
』
約東
に対す
る違 反の結
果に責任
を 課 す とい うこ とで ある。
しかるに契 約 関 係の ない 第三者に は保 証 責 任 が 及ば ない。 もと
より,
この契約
関係
を当事者
のみ に制
限し得
た のは,商品
の市場
が単
純であ り, 買 主 側で不 完 全な商 品で ある か ど うかの検 査が可 能であ り, (92) 購 買 商品
を買 主側で評 価の で きる “ 古 きよ き時代・
t7 に 発展 してきた時 代 的背
景 を 考え ねば な ら ない 。こう した契 約 関 係 当事 者 間に おいての み販 売者が
消費
者に責
任を負担
するという原 則が,
ゆ る や かに除去
さ れて い くの で あるが,そ
れはア メ リカ における産羃
の 発 達と消費者
運動
に よる も のだ と言 わ れて い る。 すな わ ち1905 年初期
,欠陥
食 品の市 場にお け る激 しい国
家 的 運 動か らは (93) じ ま るの で あ る。 ふ りか え っ て みれ ば, 1860 年 以前,
ア メ リカの経済
は,
工業 化 とい うよりも (94) 農業
と商
業に よ.
っ て発達
し,19世紀半〜20世紀初期
に か けて 工 業 化 され たことによ り, 消 費 者 が被 むる被 害の増 加に対 し裁判 所 が 彼 等の利 益 を 保 護 する た め に法
理論
を新
展開さ せね
ばな ら’
NII-Electronic Library Service 医 薬 品 製造者 責 任の展 開 に〕
9
ない状 況IC
あっ た と思わ れ る。 それは高度資本
主義
の 発 達か ら生 じる弊 害の一
つ と して , 製 造 者 (も し くは 販 売 者 )の製 品の大 量 生 産に対 し,
い かに大 量 消 費へ と導 くかの 重 大な 問題に直 面して い くの で あ る が,
その方法
と して自
己の製 品を宣 伝・
広 告 (マ ス メデアを媒
介して)に よ っ て 購 買 力 を煽っ て い く。 それ らの製 品の保 証か直 接の購買
者に の み保 証 されて い る時 代で はな く, 遠 隔の消費
者にまで宣 伝・
広 告の威 力 を 増 して い っ たので あ る。 必 然 的に契 約 関 係は, 遠隔
の消費者
に達す
るこ と はで き ない 。 契約書
,製
品の 内容説
明に基
づ く契約
は,
遠 隔の消
費者
に は締 結 出来ない こ と当然であ る。こ う した
状
況 を踏
ま えて , ア メ リ カの 裁 判所
は保 証 責任
の 法理を 展 開さ せ, 契約
関係
の排除
の方 向に判 断 が 示されて きた。
以下 リー
デン グケー
ス と 思 わ れ る判例
を要 約し,
契 約 関 係の排 (95) 除と現 在の そ の動 向を探っ てみ たい。 言 うまで もな く,
ア メ リ カの製
造物 責 任に関 する学 者の 論 文が指 摘 す る判 例を参 考 と して いる。 (96) (A
}Mazetti
v,
Armour
&Co
.
事件
(1931
年 〉 こ の事 件 は, 食 品の製 造 販 売において 当事 者 間に契 約 関 係が存 在せず と も黙 示 保 証 責 任があ る と し た事例
であ り, り一
デ ン0
ケー
ス と な っ たもの で ある 。事 件 を 要
約
す れ ば,
原 告 (シア トル 市で有
名な レス トランの 経営者
)が被 告 (Armour
&Co
.
,
食 品に使 用される肉 製 品を製 造, 販 売 者 )で製
造された加工食
肉 (tongue
)i
カー
トンを卸 売 人か ら購 買 し た。 その食
肉は調理 せずと も使
用 できるもの であっ た。被
告の 証言に よれば, そ の 食 肉は食 品と して純 良で安 全で適 正 なもの で あっ た と 述べ て い る。 原 告は その食 肉を 正常な 流 通 経 路で 購 買し,料
理 して顧客
に供し た ところ顧客
は嘔 吐し た。顧客
はこの事実
を公衆
の 面 前で非 難 し, 原 告の レ ス トラ ン の信 用 を 落 す 結 果 とな っ た。 原 告はこ の食 肉の内 容と特橡
を知 る知識
も方法
も持
ち合
わせて い なかっ た。 それ は顧 客に供 するまで知ることがで きなかっ たの である。 そ こ で原 告は商 売 上の 損 失 (従 来の評 判を落
す )と損失
利益の損害
賠 償を求めて告 訴 し たのである。被
告は妨 訴 抗 弁 を 認め られ,
原 告 は 上 訴 し,
ワ シ ン トン州 最 高 裁 判 所におい て 判 示されたのが こ の判 例で ある。
当
該裁判所
は まず 従 来の一
般 原 則 を確認 した。 製 造 者は直 接 買 主以外の人に責 任 を 負わせ な い 。 すなわち,
明 示 黙 示 保証の訴 訟に おい て必要
と し ない とい う原則
であ り,契約
関係
のない 当事者
間におい て は訴 訟 を維 持で きない という原 則であり,購
買者
は直接
売主 に訴え ね ば な ら ない とい う原 則で あ る。 しか しなが らこ の原 則には 例 外が あ り, 〔1
膓 害 を 惹 起 する物が有 害な 危 険な物であるかど うか,
{2
)被 告が販 売 し た経 路で商 品に 不実表
示 的 詐 欺 (fraud
)又は不 法 行 為 法 上の詐 欺 (deceit
)の罪があるか 否 か,
〔3
)被 告は直 接 危 険で ない物の販 売 又 は製 造 (con−
struction )に関 してある点
で過失
力『
あ
るかどうか,等
を確
認 し た。 前 述の原 則に従 っ て 当 該 裁 判 所は,
現 代 社 会の 食 品の 製造販 売に おける流通経 路を配 慮 し な 1 が ら論旨
を展 開す
るの で あ る が, その論旨
を要約す
れば, 現代
の状
況 を踏
ま え る な ら,購買者
は食 品の 純 良性
につ い て製 造者
の 名称
と評判
を 信 頼 して購 入 するの で あ り, その 食 品 を卸
売 人 を通 して購買
した と して も, 食 品 は個 人 的 顧 客に供 され る もの で あ り,
購 買 者に とっ ては 検 査 その他の方 法によっ て 不純 品で ある か否か を確認するこ と がで き ない。
そ れ は 包装に ラベ ル を 表 示 し, 効 果 的 方 法 を 用い ることで市 場に販 売 さ れる商 品は,
使 用 目 的に適 合 さ れて い ると明 示さ れて い るの である。 し か る に食品製 造者
は,
包 装 品 (ariginal package )を 施す時,
黙 示27
N工 工一
Eleotronlo L− brary10
三 浦 泉 保 証 を したことに な り, その 保 証 は,
最 終 消 費 者, 購 入 者 が 販 売 品 を正当
な流通経 路か ら購 入 し傷害
を被
っ た な ら ばすづ
ての人に有効
な もの である。さ
らに例 外 (1
)に示さ れ る通り,傷害
を 惹 起 した物が危 険 物であ る場
合 とあるが,
本 事 例の食品 はそれに該 当す
るt
もの で あ り,
最 終 消費者
に食 品 が 使 用 され る もの である か ら,契約関係
が存在
せずと も直接
製 造者
を訴
え るこ とを 認容 すべ きである と判
示し たの である。
cgz)(B}
Baxter
v.
Ford
M
・ter
Co .
etaL 事件
(1932
年 )前 記 (
Mazetti
対Armou .
r &Co
.
)にお ける判 例におい て,
食 品に関 して危険
な身 体 的 傷 害 を被む る製 品IC
は,当事者
間の契約
関 係 を必要
と し ない と し た判 決,す
なわ ち 直 接 購 買 者,
最 終 消費者
が直 接 製 造 者 を 訴 えることがで きるとい う裁 判 所の判 断 は,
その後 欠 陥 飲 食 物 関 係 事 (98) く「
件
に おいて維受
さ れ ていく
。』
そ の影 響が他
の製
造 物に採
用された判例
と して重 視 されるのが こ の事件
で ある。.
一
この 事 件 を 要
約
す れ ば,
原告
は1930
年
5
月
にFord
M6ter
Co
.
の代
理店
か ら車を購
入し た が, 同 年10
月12
日,・
車を 運転 中 他の 車あ
は ね と ば し た小 石が ウ イ ン ドガラス.
(Windshield
)に 直 撃しガ ラス が こな ご なに な り原 告の左 眼が失 明し右 眼を損 傷 し た。 被 告は,
その ウ イン ドガ ラ、
ス は決 して こなごなにならな いよう に設 計されてい たと主 張 した。 事実審
で は, 原 告が敗 訴し,
ワ シ ン トン州 最高
裁 判 所へ 上訴 し たとい う事件
であ る。
こ の事 件の基
本
的な問 題 点 と しては,次
のよ うに要約
で きる と 思われ
る。{
1
} 被 告 (Ford
Moter
Co .
)が カタ ゴグと印 刷 物に明 記 したFord
車の フ ロ ン トガラス は,
強い衝 撃を受 けて もこな ごな に な ら ない特 性 を 持つ と明示 した こ と が最終 消
費
者に対 し て保証責
任
を負 うか否 かとい う 問 題で ある。(
2
)被告
は直 接 契 約関係のない 購買者に明示 又 は黙示の保証責 任 を負わ ないと 主 張 して い る点
であ る。これ ら の問 題につ いて当 該 裁 判 所は
,
前 述の食 品に関 する判 例を引 用 し・
な が ら,〔1
}につ いて, 現 代の交通事情
の視
点 か ら言
えば,自
動車事故
の多
くはこのフ ロ ン トガラ ス の聞題
に集約
され て い る と考え ら れ る。 そ れ ゆ えにTriplex
glass の 使 用が 必 要で あ る。
そ こで被 告製
造者 は,
当 該 製 品が要請
に応じて作ら れ た もの で あり,
カダロ グ又 は印 刷 物に絶対
に安 全で あ る と明 示 し た。 また一
方,
商品の宣 伝・
広 告の状 況が変 化 し, ラジ オ, 立看 板な ど最 終 消 費 者へ 商 品の販
売の拡大
が も た らさ れる状
況に至っ ている。 〔2
)に表 示 され たTriplex
non shatorableglass
の特 性につ い て通 常の経 験 者 も し く は 消 費 者 は, その欠 陥の
有
無につ いて の検 査 な どす みや かに で き ない立 場に置かれてい る。 ゆえ に製 造
者
は宣伝 ・広告
で明 示 し た特
性にっ い て信,被告
が
製
品の品質
につ い て保有
して い るので ある か ら,消費者
は製 造 者の明示
を信頼す
る権 利を
持つ
と
し,
原 告 と被 告 間に契 約 関 係 が な くて も明 示 保 証 責 任 を 負 う と認容
したの で ある。{99)
〔C)
Henningsen
v.
Bloomfield
Motors
Inc.
事 件 (1960
年 )前 述の
Baxter
対Ford
Moter
Co
.
事 件は,
明 示 保証責 任 を課 し た事 件 の判 例で ある が,
当 該 事 件 は,商
品 性の黙 示保
証責
任
を 被 告に負 わせた 判例
で あ る。 こ の事
件
は, 過失
に お け る当
事 者
間
の契約
関 係 排 除の判 例(
M
・・Phers
・n ・.
B
・i
・k
M
・ter
C
・,
事
件
(1916
年 ),
髞
皿一
(C
)1
(NII-Electronic Library Service 医 薬品製造者 責 任の展 開 口
11
aoe) 判 決であると述べ られて い るもの で ある。
そゐこ とは食 品,
薬 品,
飲料水
などの人 間に直接消
費
さ れ,身体的
傷害
を及ぼす
製 造物
以外
の侮
の製 造物
に契約関係
を排除拡
大されて い く基
本 的 判 決 となっ たもの として注 目されて い る からである。 さ て事 件の概 略 を記 述し,
判 決の 要 点を明 確に し たい。原 告 (
Henningsen
)は, 被 告 (Bloomfleld
Moters
Inc
,
製 造 者 はQhrysler
corporation ) から
Plymouth
車を購
入 し た。事
実は1955
年5
月17
日,原
告 夫妻
が自動 車を購 入 する た め, デイラ