Hokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokuriku University
1
医 薬
品
製
造
者 責 任
の
展
開
←)
一
ア メ リカ にお
け る製 造者 責任
の法 的
構
成 を中心
と
して一
三浦
泉
The
Developments
ofEthical
Drug
Manufacturer
’sLiability
(
1
)
−
With
爭
peclal
referencetQ
legal
construc 七ion
ofmanufacturer ’
s
li
鼻bility
in
the
United
States
一
Izumi
MIURA
・
目
次1
は じ め に9
序 説 皿 製造 者責任におけ る過 失理論の展 開囚
Winterbottom
v.
Wright
(1848
)事件 〔B} Thomas v.
Winchester
(1852)事 件{C}Mac Phason
「
v、
Buick MoterCo ..
(1916)
事 件IV
医
薬
品 製 造者の 過 失 責任 1.
ネグリジ弄 ン ス と は 囚 過 失の要 件〔1) 医薬 晶 製 造者の注 意 義務
開
発上の注 意 義 務 回 製 造 上の注 意 義務 警 告 上の注 意 義 務 (a} 警 告の方 法(B)
渾
朱
の立 証 責 任’
(d
} 情況 証拠{可
レ ス ノ イブサ
・
・
ロ クィ トゥー
ル原則
法 律違反
即
過失 自体(以 上本号)
1
は じ
.め
にわが
国
にお け る医薬
品に よ る事
件を注
視 す れ ば, そ の法 的 責 任につ いて検 討されな げ ればな らない 状 況に 至 っ て い る といえよう。
しか しそれは わが国の 問題だけでな く , 世 界 的傾 向で も あ る。 そζ
で本 稿で は製 造物
責任
訴
訟の激増
を一早
く経験
したア メ リカ法
を通 じて, その法的
31
N工 工一
Eleotronio LibraryHokuriku University
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2
三 浦 泉 (1) 展 開 を 概 観して,
問 題の 所 在 を 求めてみ たい。
(2>そ こで
,
以 下で は,
製 造 者責
任の 類 型 的 分 析はさて おき,.
ア メ リ カ に お け る医薬
品製
造者
の t 法 的追 求が どめよ うな状 況で ある か に関 心 をむ け,」
その点に的を絞
り論 旨を展 開 すること に し.
た。さて, 製 造 物 責
任
な る法 理 論 が 問 題と な る に 至っ た時
代的背
景
を概観
すれ ば,
それは18
世 紀 の産業革命後
の経 済的発展
と技術
的 発 達 による複雑
な社 会形
成にあ る と言
わ れて いる。私
企業
か ら大 企 業へ の移
行が,少
量消費
か ら大 量 消 費へ と転
換して いくの である。 その こ とは 同 時に,
社 会 的, 道 徳 的,
宗 教 的 価 値 観 を変 化させ ること は もと よ り, 法及 び法
制 度を変 更さ せてき た の で ある。 こ うし た状
況の変
化 と共IC,
新 しい 法の形 成 を促 がし、
製 造 者に厳 しい責任
を課す
た
めの法理論の模 索が続けられてきた と言え るの で あ る。ア メ リカに おけるこの
製
造者責
任の法理の 発 展は,
消 費 社 会の国と して,
製 品に よ る被害
者 (人体
な どの被 害 )か らの損 害 回 復 を 求め る訴 訟の 増 加に対 応 して 展 開 させて きた。 ζの展開 のな かで,
大 別 して,
そ の法理 は, 過失責任
’
(negligence ),
保
証責任
(Warranty
liability
),
厳 格 責任
(Strict
liability
) とい う形 をとっ てきて い る・
。 ところで現 在, ア メ リカの裁 判 所は, 製 造 者に対して,
厳 格 責 任 法 理において責 任 を課 してい く傾向
に あり, 判例
もま た多
くはこ の理論に基づ いて いる。
本
稿
で は, 医 薬 品 製造者
の法的責
任を論ず
ることを 目 的と しつ つ,
前述 し たごとく,
過失責
任 (本号
一
本
稿におい て は,
筆 者に与
え られた執筆紙面
に限
りが ある ため,用
意 したV ..
判 例一
つ,
Ilo
圭fman
v.
Sterling
Drug
Inc.
(485F
2d
132
(3dCir
1973
))の分析
を予定 しつ つも続
稿
に譲 るが),
保 証 責任 ,厳格 責任
と,順次
ア メ リカ にお ける躍
薬 品 製 造 者 責任の判 例を 引 用しつ つ,
そ の法 的理論 的 展 開を明 確に し てい き たいと考えて い る。 (1)1960
年 代になっ て製 造 物 責任訴 訟 が 増 加 した背 景に檍,
消 費 者 運 動の影 響があると言 われて い る。 土 井 輝 生,
「プロ ダク ト・
ラ イ ア ビリ ティ」,
同文 館, 昭 和53年7
月1
日初 版, 3〜
4 頁参 照。
近 来,
製 造 物 責 任な る語が,
「商品の欠 陥に よっ て惹 起さ れる人 身上の事 故が め だち,
製造者にその 責任 を負わ せる ため学説 が構成する法理 」 と して用い られてい るが, これ は法 令 上 認められてい るもの では ないと 述べ られてい る。
(川 井健,
「製 造 物 責 任の研 究」,
日本 評 論 社,1979
年4月20
日第一
版,
3
頁 参照。 本稿で は, 「製 造者貢任 」の語を 用いて論 旨 を 展開す ること に し た
。
なお, こ の問 題につ い て, アメ リカ法の理 論 及 び 判例の研 究 が, わ が 国においても数 多 く発 表 されてい る。 以 下 主な参 考 文 献と して
,
植 木 哲,
「医 薬 晶 と製 造 物 責 任 ←うD
」,
民 商66− .
2
一
一35
。 膿 川 浩二, 「製 造責
任 (プロ ダ ク ト・
ライ ア ビ リ ティ)(→D
」民商64− 4− 20
,64− 5 − 34。
小林 秀文,
「ア メ リカにおける製造 物 責 任 」,
法 政 法 学 3。
4。
有田喜十 郎, 「米国製造 品責任法にお け る過失責 任につい て 」,
近 代 比 較6 ,1975
年。 執 行 秀 幸,
’
「ア メ リカにおける製 造 物 責 任の法 的 構 成 」, 早 稲田法 学 会誌,
24,
1973年。
ジョー
ジ・D ・
ビロ ック
,
有田喜 十郎訳,
「米 国 製 造 品 責 任事件にお ける損 害 賠 償 請 求 法理の展 望 」, 近代法 学, 第26巻, 第三号。 森 島 昭 夫
,
厂薬 品の製 造者責 任一
ア メ リカの判 例 を 中心 と して一
」ジ; リス ト, 1969年 7月10日427
号。・
論 文を集め たもの として,
「米 国のプロ ダ ク ド・
ラ イア ビ リテ ィ」,
国 際商事 法研究所 編 昭和 53年
3
月30日第
二版。
皿序
説
薬
の革命
は 「1806年
, ド イツ の薬剤 師
フ リー
ド リヒ,
ウィル ヘ ル ム ・ ア ダム ス ・ゼル テ イル32
N工 工一
Eleotronio Libr 猷 ryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokuriku University 医 薬品製 造者責 任の展開
e
3
c3) ナー
がアヘ ンか ら苦
い無
色
の結 晶
モ ル ヒネ」 を抽出
して か ら は じ まっ たと言
わ れ てい る。 これ 以後,
合 成 化 学の製 品 が ド イ ツ を中
心 と して1941
年 まで世 界の医 薬 品 生 産 を支 配 し,
第一
次 大 戦の勃 発と ともに, イ ギ リス , フ ラン ス , ア メ リ カで は独 自の合 成 化 学工業が発 達 するこ と に なるご
’ 新 勦 大騨
用と巨大 鱸 伝の開 始1
ま,
・93
・年轍
半の サ・・フ ア剤と とも}9
は じ まり,
〈5)1940 年代半
ばのペ ニ シ リン導
入に よっ て飛
躍的
に増
大 していっ た と考
え ら れ る。 医薬
品の製
造 物 責任の 問 題 も,
この 時 代 か らは じまっ たと言っ て よい であろう。 その 理由 は, 1938 年 以後,
{s)新薬
は科学者
の チー
ム に よっ て, ア メ リカの企業
の研究
所に おい て研究
がな.
さ れ, 開 発さ れ て いっ たの である。 こうした 開発 さ れ た 医薬
品 が,
大 量に製 品 化 され,
薬 学 技 術の影 響 を受 けて,
消費
者 (患者
)に投 薬さ れ,有
害な副作
用 を 惹起して き た と 思 わ れ る。 し た が っ て, 医 薬品製 造 者へ の法 的 責任の追 及 もな されてきた 。 それは, 同 時 的に,
他の製 造 物 (特に自動 車 事 故に おけ るメー
カー
の 責任 )の 訴 訟増
加 も進 行して い くの である が,
就 中 医 薬 品は他の製 造 物 と異 な り,入 間
の生命 ・
健
康
に重 大な傷害
をも
た らす
基本
的製
造物
で ある。
した が っ て, その持づ 意 味は深 刻で あ る。さて, 前述 し た ご と く, アメ リカ に おける医 薬 晶
産業
の発達 は, 薬の革 命 といわれた頃よりx 高 度 大 資 本の肥 大 化 な らびに蓄 積 と, 時 を 同 じ く して展 開 されてき たことは 言 を ま た ない。 そ れは同 時に売 薬の宣 伝の 拡 大に端 を発
す
る横
行時代
と な り,薬
の 眼 に あ ま る インチ キ性を許し, 効めのない薬
を, い か にも効 くかのよ う に宣伝す
ること からの弊害
を生み出す
こ と に なっ たのである。 そ う
,
し た状 況の 反 省か ら,1906
年, 連 邦 食 品 医 薬 品 化 粧 品 法 (Federal
Food
,Drug
andCosmitics
Act
:以下 FDA
と略
称
)が制定
さ れ,薬
の世 界に も科学的
医薬
晶時代
越まじまる (7) の である。そこで現
在
, ア メ リカの医薬
品の製造,販売
は,当
然の こ と な が ら,FDA
の規
則の 下にお ける認 可に よっ て な さ れて い るの で あ る。 それ は厳 格な 認可基準に従っ て行なわ れ,
もっ とも (B〉 安 全な製 品 と して市 販 さ れることは言 うまで もない。 医 薬 分 業 が 実 施 さ れているア メ リカ にお いて, 医薬
品 (Ethical
drug
曾
と は , 医師
の処方
箋に従っ て調
剤
さ礼 投薬
さ れ る製品の こと であ る。特
に大衆薬
(Over
thg
Counter
)か ら分離独
立 して 認可さ れてい るこ と は, わが 国に おい て も また同様
である。 医薬
品 め特
徴
は,
医師
の処
方
に もと づき 薬 剤師
が薬 を調剤
す るこ と に.
与
っ て,
より安 全な製 品 として患 者の健 康 回 復 を は か る という ところに意 味 が あ る と思 わ れ る。 した が っ て医薬 品
製 造者
が 認可
を 得て製 造 した医薬品
につ い て は, 医師
に医薬
品の責
任を 課 すの ではな く,
医 薬 品 製 造 者にそ れ を課
すことに その意 味 が あるといえよう。 その際に注 目 され なけ ればな らない の は,医師
と の密接
な 関わ り合
い に おい て 医薬
品の 法 的 責任が論 ぜら れ (10)・
(11) る点で ある。 勿 論, 医 薬 品 製 造 者 が製 造 する物, すなわ ち, 医 薬 品 自体
に欠 陥 あ りや否 や とい っ た点に (製 造 物 責 任 ) 問 題の所 在がある の である。 〔3
}.
ウォル ター ・
モー
ドル, ア ル フ レッ ド・
ラ.
ン シェ ング,
宮 本 高 明 訳, 「薬の話」,
タ イムライフ,
インター
ナ シ ョ ナル,
昭 和43年12月23日発 行,23
頁 参 照p (4
}M .
シ ル バー
マ.
ン,PR ・
リー
共著, 平澤正夫訳, 「薬 害 と政 治」, 紀伊
国屋書 店,1978
年7
月31
日第一
刷, 8 頁参照。
原著, 「Pill
,Profit
’
s &Politics」,University of
Califo.
rniaPres.
slt974
,
at4 。
本文引 用は,
訳書に よ る。
平 澤 訳
・
前 掲 書,8
頁参 照。 薬の革 命 と言 わ れてい る1eo6
年 以 前 は,
極 言すれ ば, 薬の効 果が あ るか否か
,
』
』
分らないまま に放 置 さ れていた と言っ てもよい であ ろ う か。
.
33
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4
三 浦 泉 (6
) 平澤・
前 掲 書,
8頁 参 照。 {7) 宮 木 訳・
前 掲書,224
頁参照。
この食品 医 薬 品 化粧品 法 が, 「特に売 薬の レ ッ テル にアル コー
)vやアヘ ンやコ カインの ような成分の名 称と含 有量 を 記 載 しなけれ ば な らないとい う規 則 を 成 立させ るこ とによ り. 売薬 時代が終 結され た 」 と言 わ れてい る。
(8
) アメ リ カ の大部分の州で は法制的に は任 意分業で あ る が, 実 際に は完 全 分 業に なっ て い るとい わ れて い る。
日本薬剤師会編 「諸外国の 医薬分業 」 同 会出版,
1971年, 5 頁参照。
〔9
} 医薬品 とは, 連邦食 品 医 薬 品 化 粧 品法 (FDA
)で は,
〔1
)合衆 国 薬 局 方,同
種 療 法 薬 局 方, 国 民 医 薬 品 集に収め られて い る物,
人 また は動物の疾病の診断, 治 療ま た は予防に使用さ れ る こ と が目的と さ れ てい る物であっ て用 具でない もの,
C3
)人 また は動物の身 体の構 造 また は機能に影響を 及 ぼすこと が 目的 と さ れて い る物で用 具で ない もの, (4
}〔1
}・
{2
)ま た は〔3
}の成分として使用さ れることが 目的と ざ れ て いる 物であっ て, 用 具 また は その部分で ない もの (FDA
法 2・
01
条 {9))と定 義付られて い る。 引用は, 吉田 勇,
「連 邦 食 品 医 薬 品 化 粧 品 法の内 容」,
月 刊 薬事,Vo1 .18,
No .5,1976
年,
97頁の訳 文 を 参 照した。GO
) 医 師 が 医薬品製造 者に損害賠償を請求し た事 件として ,Sterling
Drug
Inc
V.
Ma
’
xin F.
Cornish
(370F.2d
82 (8th
Cir.
1966))がある 。 こ の事 件は,
被告が製 造 した 医 薬 品により,
患 者が眼に障害 を蒙ったとい う もの で , 被 告は少数の グル
ー
プの人にも副 作 用が存在する こ と を知 り,
あ るい は知 り得 るべ き 立 場に あるに も か か わ らず,
原 告の医師に対 して警 告 することの懈 怠に よ る過 失があると,
医 師 が訴 訟 を 提 起し たもの で あ る。、
さQti
一
般 的に ア メ リカの論 文で はFdefect
」の用語を 用い られて いる が,z’
わ が国で は 「欠 陥 」と訳して い るよ うである。 欠 陥に対 し 「瑕 疵」とい う語が,
医 薬 品の場合適 当であ ろ う と思 わ れるが,
本 稿で は,
「欠 陥」 を 用い る。
なお 医 薬 品の瑕 疵論 にっ い て は,
拙 稿 「医 薬品の製 造 物 責 任一 医薬 品の 瑕 疵 の 問 題 を 中 心に一
」北 陸 大学紀要 第三号,
197g
年,87
頁 以 下 を 参 照 さ・
れ たい。 〆 皿製
造者責任
に おけ
る 過失
理論
の 展開
Neglig6nce
(過 失 )における製 造 者 責 任の 歴 史は,Privity
(契 約 関 係) の要 求に 対 する ゆ る (12) やかな除去
の歴史
であるといわ れて い る。 それは当 事 者 間におい て契約
関 係が要 請さ れて いた とい う事で ある。こ れ は
18
世紀
後の産業革命
の結
果,個
人対個
人の経済
的原則か ら責任 範 囲が拡
大 し,
個 人 的 契 約 関 係 者の みに製 造 者が法 的 責 任 を 持つ とい う原 則を打 破し なけれ ば ならない経 済 的 社会的 理 由が存
在 した か らである。 産業革命
は周 知の通 り, 機械
的, 技 術 的 発 達が大 量 生 産,
大 量 消 費の時 代 を 迎 え ざるを 得 ず, 個 人 間の契 約 関 係に おい て のみ製造者
に責
任を課 すこ と は, 当 然 の こと なが ら製 造者
の 責任
回避にっ なが らざるを 得ない の で ある。 製 造 者 対 消 費 者め図 式か ら, 当然の こ となが ら よ り複雑
な製
品の 流通 過程 を作
り出
して来る。 また製 造 者と消 費 者の間に中 間業者
が介在
して, その責任
の範
囲が不明
確 な もの と なる。
それ と同 時に, 消費
者 が 製 品 か ら 蒙っ た損 害に対して,
最 終 的な責 任を明 確に しなけれ ば な ら な くな?て きたので あ る。 その こ と は,
そ う した 社 会 的 状 況の下で は,
法 的 道 徳 的 価 値に変 化を呼び起こし, 製 造 者と消 費者
と の聞の契 約 関 係の ない者
に法 的 責任を課す
べく
要 請さ れ る に 至っ た ことを 意 味す
る。不 法 行 為 と して の negligence は
,1825
年の 初 期に分 離 独 立して認 め ら れ, 産業
社 会か ら現 {Is) 出して くる事件
の増 加 を 処理するた め に展 開さ れて きたの で ある。当
時,特
に交通鉄道機 関の (14) 発達 が,
過 失の概 念と結 びつ けられて きた と考
え ら れてい る。
こ うした社会状
況の 変化
と共に, (15) 過 失責任
の考
え方
は,特
に経 済 的要
素に基づ くこと は 勿 論で あ るが,
むしろ文 化 的 影 響に背
景34
N工 工一
Eleotronio LibraryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokurlku Unlverslty 医 薬 品 製 造 者 責 任の 展 開 (
一
)5
を 持つ と考
え ら れ, 個 人 的 責 任 (individual
responsibility )とい う概 念との連関 性の な かで定 (16)義
が な さ れて い る。
c17)おそ ら く
,
それ は西 欧 個 人 主 義 的 倫 理 思 想の展 開のな かで 影響
を受
け,
法 慣習
と して,法的
概 念の 中心的 問 題で
あっ たであろうと 思 わ れ る。 その こと は, 個 人 責 任 と公 共 的 責 任の法 的 概 念,
道 徳 的 責 任 と して の人 間の概 念 が 考 察 され,
こうし た論 点を展 開 しつ つ,
製 造者
の責任
の 法 的 側 面 が 論 じ られて き た もの と思 わ れ る。さ て
前
述し たごと く, 過失責任
に お け る製
造者
の歴
史
は,
契 約 関 係のゆ るやかな除去である といわ れて い る。 そ こ で その歴 史 的 過 程を論 述 する にあたっ ては,
アメ リカの 製 造物
責任
の論 文に登 場 する判 例の 分 析 を 注 目 しつ つ 論及 したい。 言うまで もな く,
こ の論 旨の基 礎と しては,
(18)W
・
プロ ッサー
教授
の 著 書を は じめ とする その他
の研 究 者 達の論 文を参 考と して い る。 (19)(
A
)Winterbottom
v。
Wright
事 件 (1842
年)さて製 造 物 責 任 法は, イギ リス に お ける
1842
年の上 記の判 決に よ りは じまっ たと説 か れて い (20) る。 な ぜ なら製 造者
は,契約
関係
の ない最終購
買者
に責任
を保有
しない とい う一
般 的
原則
の先
CZI) 例 と して位 置す
る か らで あ る。
こ の事 件は
,A
(被 告 )が郵 便 物を
運送 するた め,
郵 便 馬 車を提 供 する ことを契 約 した。B
は,
馬 車 を 引 く馬 を郵 便 長 官 と 契 約 し,B
と共 同契約
者は,
郵 便 馬 車 を 運 転 するC
を 雇 っ た。 事 件 の結論
は,C
(原告)
が 運転中
に馬車
の欠 陥で座 席か ら放 り出
さ れ, 重 傷を負っ た こと に対し,
A
に損 害 賠 償 請 求 を 提 起し た が,
裁 判 所は,
こ の 原 告の主 張は支 持で きない と した。 な ぜ ならA
とC
との間に契 約 関 係が結ばれて いな い ためで ある。 被 告は郵 便 馬 車の提 供者
であ り,郵
便 プ 長 官か ら賃 料 と報 酬 を得る た めに契約
し たので あ り, その目
的に対して, その 契約
は,
郵 便 馬 車 を事
後適 切 かつ安 全な状
態 に修理すること が独 占 的 義 務の 下に あ る とい うことである。 し か る に郵 便 長 官に雇 わ れ た 者で ない原 告に対 して は, 責 任 を 課 しえないと して, 契約
に基づ かな い者
に損害賠償請
求権
を 否 定 し たの で あ る。 これ は 契 約 当 事 者 間にの み 責 任 が あ る という一
般 (22) 的 原 則 で あ り, こ の原 則は, 契約
責任
と 不法 行為 責任
とを混同 した もので あ る と学説
は述べ て い る ようである。 この こと は学 説に よ ると 当 時の時 代 的 社 会 的 状 況に基づ く判 決で あ り,
それ は 産業保護育成
のた め,製
造者
と消費者
との間
に契約
関係
がある場合
のみ,責
任 を 課 した
もの (23) で,
不 法 行 為 法の過失 責 任に対し訴 訟を提 起できない社 会 的 事 情を考 慮 しな け れ ば な らない で あ ろ う。 (24)(
B
)Thomas
v.
Winchester
事 件 (1852
年
)当事
者 間の契 約 関 係が な くとも過失
責 任を課した判 決が,
こ の トー
マ ス対
ウ イ ンチェ ス ター
事 件で あると言 わ れて いる。 これは例 外 的 原 則の判 例であると述 べ られてい髦
1
こ の判
決
は, 原 告の妻が医 師か ら与え られた薬が, 猛 毒 薬 (belladona
)で あっ て,
医 師 は薬 剤 師 か らタン ポ ポエ キス (dandelion
)の ラベル を附
したビ ンを購
入 して , そ れを 原告
の妻に投
薬し た結 果, 同 女が障 害を蒙っ た とい う事 件に関 するもの で原 告は, 製造者に損 害 賠 償 を 提 起 したわけである。 こ の事 件の主な法 的な要 点は,
被 告の過 失を求め たもの で ある が , 被 告は使 用 人 が 誤 まっ て ビ ン に附し た ラベ ル を本 来dandelion
のエ キスに付 け るべ き ところbelladorna
・
1に附
した た め,医師
は薬剤師
か ら薬剤
師は被
告か らdandelion
と信
じて購
入 し,投
薬の結 果,
35
N工 工一
Eleotronlo LlbraryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokurlku Unlverslty
6
三 浦 泉 原告
に障害
(精 神さ くらん状 態 )を与えて しまっ たの で ある。 被 告の弁 護 人は,
原 告の主張の 却 下 を 求 めて次
のよ う な申
立 を した。 (1
} こ の訴 訟 は, 問題の薬の売主 は遠 隔の者であ り, そ れ らは 原 告との間に商 取 引が ない か ら正当
な責 任 は ない。原
告
は 医師
と薬剤師
に責任
を求
め た ものであ り, それゆえに こ の訴 訟 は維持
で きない 。 〔3
) こ の 訴訟 は, 医 師と薬 剤 師の 過失
の 結 果であ り, 被 告が彼 等に責
任を 求 めた もの で あ る。被
告は お お む ねこ の よ うな抗 弁を し たの で あるが, 裁 判 官は,特
にこ の 事 件の問 題 点と して,
従 来の過 失 構 成 要 件 と して の契 約 関 係 を 排 除 する新しい視 点 を 明 示して,
「こ の問 題 点 は,
薬 を 遠 隔の買 主に対 する被 告の立 場,
被 告 と原 告 との間にお ける契 約 関 係の 存 否 とい うことで ある が, この訴
訟は維持
で きる 」 と述べ , 契約
関係
がな くと も, 「人 間の 生 命に差し迫っ た危 険 (imminetly
dangero
囎to
hu
珥anlife
)」を生じせ し め る行 為であれ ば,被告
の過失
を 認め ると したのである。 こ の判決
が, その後
意味
を与
えたこと は,被害者
と加害
者 との契 約 関 係 を 排 除して,
例 外 的 原 則 を作 り,
そ の根 拠 を 「人 間の生 命に差 し迫っ た危
険な もの 」 を製 造・販売
する者
に責 任を課 し た点で,製
造 物責
任め法
理論に重要な位置
を占め た判 例と言 わ れて い るの で ある。(26)
(
C
)Mac
Pharson
v.Bui
¢h
Moter
Co
.
事 件 (1916
年 )こ の事
件
の事実
の関係等
を概 略
すれば,被告
(自動
車 製 造 業 者 ) が, 小 売 販 売業
者 (retaildealer
)’
に売
っ た車
を原告
が購
入 し, 原告
が一
時
間8
マ イル の ス ピー
ドで運転
して いた ところ突
然, 木 製の車 輪が欠 陥のた め崩 壊 (collapsed )して原告
が負傷
を負
っ た とい う もの で あ る。
木
製の車輸
は,評
判 な製 造者
か ら被告
が買
っ た もので ,検
査の義 務 は要 求 さ れないが, 最 終 製 品につ い て は貲 任がある と判 示して い るの で ある。 こ の判 決の注 目すべ き 点は,
前 述の トー
マ ス対
ウ イ チェ ス ター
事件
の判 例 を分 析 しなが ら, その 自 動 車が 「差 し迫っ た危 険 物 」 か 「内 在 的 な危険物
(inheren
七1y
danger
)」である かを問
い,一
応自動車
は 「内在的
な危険物
」で は ない と しな が ら, ユー
ザー
に検 査な しに市 場に販 売さ れ た最終製
品の製造者
の責任
を認め たの で ある。 もし被 告に過 失があるとす れ ば, 危 険を予 見 し え た はずで ある, とい う点に求め られ る。 不 完 全に作
られた製 品は危
険が予 見で きるもの で ある と し たの である。 もし その構 造に欠 陥 が あるな ら可 能な危 険 性につ い て 警 告 すべ きであ り,
自動 車 は一
時 間50
マ イル で走る ように デ ザ イン されて いるので
車輪
が強
固で あれ ば傷害
を与え ること が な かっ た もの で あ り,被
告は,
その危険
性 を 知 り得る立 場に あっ た と判 示 して い るの である。さて
,
こ の事 件の要約
を記し た が, こ の判 決が その後ア メ リ カ製造物責
任 法の展 開の な か で 意 味 を 与 えた とい う点で , 研 究 者の論 文 は 次の ような意 義 を 提 示して い る。従来
の契約
関 係の一
般 原 則 か ら例 外 原則
であ る 「差 し迫っ た危 険
な物
に 過失
責 任を問
う原
ま 則,
不 完 全に作 られた欠 陥 ある製 品 が,
消 費者 (第三者 )に危 険が生 ず るこ と溶 不可避である こと を 予 見で きる黝
を 製 造した 製 造 者に責 任を課 す と して, 例 外 原 則が拡 大き
れ,一
般 原 則 (28) へ と移 行して いく
の で ある。
こ の 判決
以 後, こ の原則
はア メ リカ全州
で採
用され
, 不法
行為
の (29) 過失 責 任を契 約 関 係で制 限し な くて もよくな っ て い くの で ある。
膕
John
W .
Wad
θ,
Strict
Tort
liability
ofManufactures ,
SWL .
J ,
(1965
)a無5.
Willian
L.
prosser,
Law
ofTorts
(Fourth
edition ),West
publishing
Co .
(三971)at140.
36
Hokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokuriku University
医薬品 製 造者責 任の展開
e
7
個 廣 川 浩二
,
「製 造 者 責 任 (プロ ダクツ・
ライア ビ リテ ィ)H
」, 民 商64−
4−
20,614
頁 参 照。
圃
John
G .
Fleming
,The
Role
ofNegligence
inModern
Tort
Law ,
Vlrginia
Law
Review
Vol .53 ,
at 815.
Ibid
。
望 月礼二郎
,
「ネグリ ジェ ン スの構造口完」,
法学37
巻 2 号,
268
頁参照。矼
8
}ProsSer , sgPra note 13, at
641〜650・
tt9
}10.
M
&W .109,152
Eng
Rep
402.
以下本文 判例翁
析は判例集に よっ た。
Pr
().
sser,
supra note 13,
at.
641.
Dix
W
,Noel
,ManUfacturers
of Products− −
The DriftToward
Strict
Liability,Tennessee
LawReview
Vol .
24 (1957), at 963.
小林秀文
,r
ア メリカにおける製 造物責 任 法 」,
法 政 法 学3, 4,
19頁参照。.
・
小林・
前 掲 論 文,
19
頁s6NY 39757Am ,
Dec .
455.
.
・
一
、
Noe1 , sUpra note 21, at
964.
囲
2
ユ7N .Y .382
,111N .E .
1050.
執行秀幸
,
「ア メ リカ にお け る製 造 物 責任の法 的構 成」, 早稲田法学会誌,24
, 1973年,189
頁
参照。Prosser,
supra note 13,
at1641.
廣 川
・
前 掲 論文,617
頁参 照。W
犀
薬
品 製 造
者
の過 失 責 任
「
1
.
ネ グ リジ ェ ン ス と は,
(3o)Negligerice
とい う語は, わ が国
で は, 「過失
i
とい う訳
語 をあては め られて い る。 そ しセ
こ の 過失は民 法709
条に規
定して い る不 法 行 為に お け る 「過 失」に相 当 するもので ある。ネ
グ リジェ ンス とは,
現 在 「被告
が原 告に対 する注意義務
(duty
of care )に違 反 し, その cg1) 結 果 と して原 告に損 害 を 蒙 ら しめること」 と定 義 付 られて い るの で ある。 いわ ゆる民事事件
に おい て損害
賠償
を 請 求 する
法理論 的 根 拠 として コ モ ン・
ロー
の展 開のな か から隼
ま れて きた法 的 要 件で あ る。ところ で
本稿
で主 題 とす
る医薬品製
造 者の責任
も,
ア メリカの裁判
所の判例
の展 開 を通 して,
過失
賈 任に よ る損害賠償
の責
任 を 課さ れて きたの であ る。
そ れ は現 在, 法理論の 発 展 的 展 開の なか か ら不 法 行 為 類 型 と して の 厳 格 責 任 を 医 薬品
製 造 者に課して い る方
向
に あ るが,
過失
理論 c32) が,
その基礎に あ るので ある。
その理論
の拡 大か ら厳 格 責 任 法 理に至っ たこ とを考 慮 されるな らば,
過 失 理 論は重 要な位 置 をし めて い る と考え られる。 (33)製 造物責
任につ いて,『
一
般的
に,製
造者
の過失
の問
題 と して,次
の 二つ の論点
が ある。・
第一
は , 製 品の予
想 される使 用に関 して不 合 理な危 険があるかどうか。第二 に, 製 造 者が
合
理的な注意行 為に おい て不合
理な危険
を 防 ぐ、
こと が でき たか どうか, で ある。1
:』
』
第 「 につ い て は, 医 薬 品の使 用 (本
稿の 場合は,
医 薬 品の製造者か ら医 師へ 販 売 する薬を指す
)〜に対 して,・
医 薬 品 製 造 者 が,
その使 用につ い て適切に 指示 し た か どうか,
もしくは,
そ の使角
が医薬
品の使
用に安全
に耐えうる薬で ある か どうかの点
が注視
さ れ る。37
N工 工一
Eleotronio LibraryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokurlku Unlverslty
8
三 浦 泉第二 につ い て は
,
医 薬 品 製 造 者の 製 造・
販 売 した薬
が,
製 造 上 も し くは 品 質 管理上・
販 売 上 におい て,
合理的な手 順に従っ て な さ れ, 医 薬 品 製 造 者 が, そ れ らの行 為に,
合理 的 な注 意 義 務の下で,危険
を防
ぐことが で きた か どうか, の点
を問 題とす
るの で あ る。 そ うし た行為
に懈 怠が なかっ た か 否 かによっ て法 的 評 価が与え られ, 過失
問 題 が 論 じ られ る と考
え られるの であ る。
(
A
)過 失 の 要
件
過
失
の要 件と して ア メ リカ法におい て は, 製造者に高 度な注意義 務の基睾
) (Higher
s七andard ofCare
) を 要 求 されて い る。 それ は人 間の生 命・
健 康に直 接 関 与 する医 薬 品 製 造 者におい て も厳 格な基準
が適 用される こと ま た同様
であ る。 その 基準
は, 通 常,
同 業種
の製造
者がとっ た であろう処 置に達 して いるか否
か に よっ て判 断 さ れ,
達 して いない場 合に責 任 を 負 う と さ れて・
(35) い る。 それ は裁 判 所が通 常の製 造 者であ れ ばなすで あろう行 為を基 準と して認 定 して い ること で も分か るので あ る。 した がっ て医薬品 製 造者は, 他の医薬 品 製 造 者の行 為基準の一
般 的 処 置 が評価
の対
象にされるとい うことで肉
ろ う。 (36)一
般
的に,
その 注意義
務の内 容につ い て は、
次の よ うに説か れてい る。
第
一
に,
該 当 する製 品の設 計ノ(design
),
製 造工程 (manufac 七tiring),
検 査 (七esting ),修
理(reparing )におい て合 理 的 注 意 義 務が要 求されること
。
第二 に,
消 費者は該 当 する製 品の使用におい て危 険の存 在 を知 っ て い たか,
知り得べ きで あ り, 通 常その危 険を全く知 らない消 費者
に対
して警
告 する合
理的
注意義務
が要 求さ れ ること で ある。さて 医 薬 品 製造
者
にお け る注 意義
務と は なにか。 こ の 論点を前
述の←)
に)
を反復
しな が ら検 討 して みたい。言
う までも
な く医薬
品は,製造物
のなかで も,特殊
な カテ ゴ リー
(そ れ は食
品と ともに) 入 り,
特に人 聞の生 命・
健 康に重 大なる 影 響 を 与え るこ と言をまた ない。 その意 味で,
注 意義務
も また,
法 的に厳 格に求め られ ている と言え るであろ う。 ア メ リカ におけ る数 多 くの医 薬 品製 造 者に責 任 を 課 した 判 例の 存在 が そ れ を 証 明 して い る。(
1
) 医薬品製 造 者の 注 意義務 {ij
開 発 上の注
意義務
新薬
を 開発す
る医薬品製造者
は,結
果 的に有害
な 副作
用 を惹起す
る薬
を 開発 した場合
,新薬
開 発にお ける注 意 義 務 を 充 分に履 行 して いな けれ ば,
当 然なが ら,
過 失 責 任 を 負 わされるこ と にな る。 この医薬品
の開発
上の義務
につ いて は,FDA
規則505 条
{b }におい て 明細
に規定
さ れて い る望疾
薬 品 製造者が, こ う し た規則 に定め ら れ た方 法を 遵守
し な かっ た場 合,
注 意義務
違 反tー
t
ヨ’
4 と な るの で ある。 またFDA
に認 可 された後,
市 場 (医 師 ・ 薬 剤 師 等 )に販 売 さ れた医 薬 品に 欠 陥が あ り, 有 害 な 副 作 用に よっ て患者
に傷害
を与
え た場
合に も, 制 定 法 上の必要
条件
に従っ た か ら とい っ て,
医 薬 品 製造者は責 任を回獸
き ない と思わ れ る。 その 理 由は,
コモ ン・
ロー
の原 則に より.
重い注 意義務
を課
してい ると考
え られ
るか らであ窺
その ことは現実
に起 こる ことである。FDA
が新 薬 認 可に当っ て, 新 薬テス トを 自らするの では な く, 医 薬 品 製造者
の (40) (41) 資 料に頼
より,薬
の安 全 性 と有効性
を認 め認可 するため である。 認 可 後,市
場におい て傷 害の38
N工 工一
Eleotronlo LlbraryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokurlku Unlverslty 医 薬 品製造者責任の展開
e
9
(42) 原 因と なっ た有害
性の あ る薬を回 収さ せ た判 例がある。しか しなが ら新 薬の 開 発が厳 格な基
準
に従っ て い る こ と が,新
薬の 開発の 遅 れにつ な が り, 人 間の生命
・健 康 を 治 癒で きる道 が閉
ざ される といっ た指
k3
)6
なさ れてい るこ と も事
実である。 有害
な副 作 用 を恐 れて,
そ の危 険の ため消 極 的に な るの も事 実で あろ う。
その 判断
基 準は,
有 効 性 と有害性
の比較衡
量 (科学的
疫学
的 ) を 含めて,
公 共 的,
政 策 的,
客 観 的な状 況 を踏 ま え て判 断 され ね ばならない困 難な問 題 なのである。
法 的 問 題 と現実
的 問 題 との交
差 を慎
重に検
討 されねばな らない こ とを 指 摘 してお き たい。 {U)製
造 上の注 意義務
この
製
造上
の注 意義務
は,勿論
,医薬
品の製
造に 関しての注 意義
務の 問 題であり, 製 造工程,
(44) 検 査,
品質管
理 を含
む もの と考 え られ る。 医 薬 品の製 造 上の問 題につ い ては,
特に,
製 造 中に 異 物 (特に注 射 薬 )が混 入 することのないよ う相 当の注
意をす
るこ と で あ り,検
査 及び試 験の 義 務 が 課せ られ る とい うこ とで ある。 た と えば原
体 (原 末 )の安 全 性 試 験 (動 物 試 験 ), (1
)’
規
格
がア メ リカ合 衆国薬局方「
(United
States
Pharmac
σpoeia
)及び国 民 医 薬 品 集 (National
Formulary
Certification
)}こ合
格 した方法
でな さ れ, 〔2
) 化 学 者 (薬 剤師
も含
まれ ると考え ら れる)の管 理の下で,
化学物質
の混合
が な され,
(3
}成分
の品質
検
査
等につ い て は,雇
用者
の 二人以 上 に よ る二重の チェ ッ ク が要
求さ れ てい るの であ
る鯉
こうし た要 件に違 反
す
れば, 過失
の素
材 と し.
(責
任が課せ られ る の である。 警 告 上の注 意 義 務医薬
品の過失
の中
心 的問題として論ぜ
られ, 判例
に現わ れそ
い るの が, こ の 警 告 上の 注 意 義務
で ある。 それは新薬,大衆
薬 を 問 わず
問 題にな るの で ある。 医薬
品における警
告上
(用 法 指 示 を含 めて)の注 意 義 務 は,
医 療 専 門 家 (medicalprofession
)に対 して, 適 切 な 警 告 が なさ れてい た か どうか が 問 題 となるの で ある。 医 薬 品製
造者
は,
その専
門家
として の職務
か らい っ て,
自 己の医
薬 晶の危 険の存 在 を 知 り得る立 場にある とい うことが前 提で あ り,
それ が ために 高度な義 務が要 求されて い るのである。さて, 警
告
義 務の多 くは, 医 薬 品製 造 者 から医師
に対 して警 告 がな され なけ れば ならない の であ り,
医 師が その警
告に従
っ て処方
し, 薬 剤 師が調 剤 する とい うの が医薬 分 業 制 度の建 前で ある。 それゆえ に, 医薬
品 製 造 者に, 医薬
品が
, いかに適切 に警 告された かの基準
を 明確に さ れ ね ば な らず
, こ の ことに よっ て法 的評価
を課
せら
れることになるあであ
る。 それ らの警 告に は どのようなものがあるであ ろ うか,
次に 述べ てみ たい。(
1
) 医 薬 品 製 造 者 は, その処 方 薬に潜 在 する危
険 を 医 療 専 門 家に適 切に知 らせ るべ き 警 告 義務
鯉
医 療 専 門 家 は,
薬
の安 全 性に関して医薬 品 製 造 者に頼 るが ゆ えに,
有 害な副 作 用 を 知 っ 〔4の た なら, 予 想 さ れる使 用者
に適 切な警告
を する義務
。{
3
} 医 薬 品 製 造 者は,
その薬の潜在
的 危険
性が,少
数の アレ ルギー
体質
の グルー
プ に持た ら さ (48) れるもの で あっ ても警
告す
る義務
。 〔4
} 医 薬 品 製 造者 は,
科 学 的 進 歩と知 識か ら有 害な副 作 用につ い て医 薬 ジャー
ナ ル 等に発 表き
れたこと を知っ た ら, その こと を 医師
に警 告 す る義 務 49)医薬 品製 造 者 は,
薬
が市販
され続
けてい る限
り,有害
な副作用
を知
っ た時点
で警告す
る39
N工 工一
Eleotronlo LlbraryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokurlku Unlverslty
10
三 浦 泉 こ と はもと よ り, 常に継続
して警 告 する義 務。
例 外 的に
,
も し薬
の潜
在 的 な 危 険の適 切 な警 告 が 医 師になされる なら,医薬
品製 造者
(らe) は 患者
に警告す
る義務
は ない。 これは医 師 が 患者
に警告
する とい うこと が前 提であ り,
その責 任を医 師に負 わせ るとい うことである。 また患 者 は,
薬の専 門 的 知 識 を持
た ない と同時
に 理解
で きないとい うの が 理由で あ ろ う。 (a)警
告
の方
法
」
(51)ω
FDA
規 則 が 要 求 して い るラベ ル , 包 装に適 用 量.
投 与 方 法 等 を明
記す
るこ と。回
医 薬 品 製 造
者
は,
アメ リ.
カの全 ての 医 師に有 害な副 作 用 等 を 詳 細に手 紙 等の伝 達方
法 に よっ て警 告する こと。 (52)困
医
薬雑
誌一
定
期 的に発行
されている専
門雑
誌 (約
300 種
あるといわ れてい る)
一
,広
(53)告
颶
の年報,
特にPhysician
Desk
Reference
に掲 載 し警 告 すること。(54)
同
Detail
皿 an が医 師 を 訪 問 し,
自社の 医薬
品につ い て詳
細に説 明 した か ど う か。特
に こ のDetai1
血
an の役 割 は, 医 薬 品の販 売 (宣 伝 促 進 ) 及 び使 用方
法につ いて重要
な立場
に ある。 い わ ば医 薬 品 製 造 者の 顔で あ り, 企 業 存 亡を か けて い る とい っ て もよい で あろう。 し かるに医師
へ の医薬品
の情報
,伝
達に つ いての専
門職
と して の責任
は重い の で あ る。 その内
容に つ い ては, 医 薬 品の 開 発た
関する文 献 (薬理学, 生理学 ),薬
の使
用の た めの 投与計画
, 禁 忌,
極 量 基 準に関 する臨床 か ら得た最 新の情韆
宏
ど を医 師に口頭で効菓
的に伝え る仕 事で
ある。Detail
man の こ の仕 事は, 薬の宣 伝 促 進の面より も学 問 的 内容に重 点 が 置 か れなけ れば な らない。 こ のDe
七ail man は,
種々な薬に関して特殊
な 訓練
を受 け, 医 薬 晶の知識
を 高 度に有 すべき
者である。 医師
は,
彼等
か ら正 確な情 報 を 期 待 して い るの で ある が,
改 善 す べ き点が多
々 あ る ら しい。 こ の 点で一
つ の提案
が な さ れて い るのである が.
そ れによ る と,
「すべ て のDe
七ail man は訓 練を受 け , 薬 学部
の卒業者
の うちか ら採
用し, また持
続的
な教
育 を 受 け, 政府
が免 許を与
え,’
FDA
の認 可 を 与え た者チ
旗
すべ きであるとい う主 張である。 こ の こ とはDetail
man に医師
が 期 待 と同 時に不 安 を 持っ て い るとい うことであろう。筆
者 には,
医 薬 品の 有害
な副 作 用 等の事 故を防
ぐた め に, ま た 正 しい薬
の在
り方
とい うこ とを考
え る時,
こ のDetail
man の存 在 意 味を無 視で きないように 思 わ れ る。 ア メ リ カの医 薬 品 製 造者
の 判鴇
1
こ,
こ のDetail
man の行 為 を 法 的 責 任の判 断の一
つ として い ること も問 題め
重 要 性を指摘
してい る と言っ て よい であ ろう。
(B
) 過 失 の 立 証 責 任過
失
の立 証 とは, 製 造 物 責 任 訴 訟におい て は,
欠陥
も しく
は危険
を内在
さ せ る製品
を製造販
売 した 製 造 者 (加 害 者 )に対
し,
被害
を受 けた者 (被害者
)が, その 製品
に欠
陥の あっ た こと の立証 をす
ること で あ る。 そ れ は製品
が, 製 造 者の手 を 離 れ た 時に,
製 品に欠 陥 が あっ たこと を 原 告 が 立 証 す るこ とで あ り15
覧
の立 証 は.
原 告自
身に おい て ,陪審
の評決
を待
る た め に必 要 とするの であ る,
9簡
題なの は,消費者
が製 品によっ て受
け た 傷 害 を,
被 告たる 製 造 者の過 失に よ っ て発 生し たこ と を立 証 し なけれ ば ならない点
にある (lo
塘
に医薬
品の場 含
“
危険
が潜在
す る製
品”
で あ る とい い, ま た“
内 在 する有 害な副 作 用”
を有す
る製品
は, その欠陥
の立 証 に 関 して 消 費 者 (患 者 ) 側に困 難な点 が あ る とい うこと なの で ある。 その困難
につ い て考え られる40
N工 工一
Eleotronlo LlbraryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokurlku Unlverslty 医薬品製造者責 任の展 開 ←
1
11
点 は,
{1
>有 害な副 作 用が製 品に内 在したこ とを 立 証 す るには,
医 薬 品製 造 者 側の開 発 文 献資料
を入 手し,製
造の工程
に 至 る まで を知
らね ば な らない とい う点にあ り,
原 告 側が立 証 をな し う るに は, 相 当の学 問 的 研 究 上の 知 識 を 要 するとい うこと。 それらの立証の たあに は, 多 額な 金銭
と時
間を要し,消
費
者側
に対
して重い負担
を強
い ること になる とい う点にある。、
過 失の立 証の具 体 的 方 法としては
,一
般 的に次のよ う な方塞渉
あ ると述べ ら れてい る。
〔1
) 製 造工程 中に おける ミス に よっ て 製 品に欠 陥 が生 じた こと。これを
医薬
品に当てはめれば,医薬品
の製
造中
に原料
(原未
)等
に誤 っ て異物
が混入 し, 品質管
理 に おい て晶質
の保管
, 在 庫に 不手際
が あっ た か ど う かの聞
題な どである。勿
論 大切 なの は,
製 造 中の品 質 検 査,
動 物 試 験 (安全
性 試 験 ) 等の研 究 姿 勢が問 わ れるべ きことで ある。
(2
) デ ザ イン ミス によっ て製品に欠 陥が生じ た こ と。 これ を 医 薬 品の開 発 上の問 題と して と らえる な ら,
開 発の企 画の段 階で,
な ん らかの隠 違い によ り,’
医薬品 自体
が有害
な もので ある と い っ た場合
で あ ろう。 そ れ は開 発の時点
に おい て基 本 的な誤 ま りが あっ た とい っ たことなので ある。 〔3
} 指 示。
警 告の ミスこれは
特
に, 医 薬 品の場
合特
に新薬
で問 題に な る ミスで あ り,前
に言 及し た ように (tr
“ 一 (1
)一
) 医 師・
薬剤 師 等の医療 専 門 家に対 する医薬
品 製 造 者の用 法 指 示・
警 告の問 題 と して論 じ られるの である。 過 失 を立 証 する にあた り,
消 費 者 (患 者 ) 側に とっ ては,
他の 二 点より も立 証の容
易な点があるので は ない か と思 わ れる。それにし
て
も,
こ の ような過 失の立 証は.
消 費 者 (患 者 ) 側に とっ てか な り困難
で あ るこ と が 明 瞭で あろう。 (/) 情 況 証 拠 (Circumstantial
evidence ) 前 述し た ように, 消 費 者 側の過 失の立 証 は,
困 難で あるこ とは論 を また ないが,
通 常,
過 失 の立証の場 合,
アメ リ カ法}ぴおい て,
原 告は, 情 況 証 拠か らの推 理 (inference
)に頼 るの が普
(62) 通で ある。 それ は,
原 告 が 製 造 者の持つ 複 雑で 高 度な技 術, 専 門 的 知 識 を 取 得 するこ と は困難
で あり,製
造者
の 過失
につ いて直接
証拠
(dirict
.
evidence ) を保 有
すること が ほ と ん ど ないと いっ でよい か らである。直接
証拠
を保
有
し ない,
そ しゼ情
況証拠
か らの推理 にも頼
れない原 告 (患 者 )の場 合,
特に 医 薬 品 (食 品 とは や や異な るが )は, 人 間の生 命・
身体
に直接傷害
を与 え, かつ その傷害
の 原 因を証 明す
るこ と な ど,素
人 に は,直接
的原因
か ら情
況 的 証拠
を見つ け 出 すの はほとん ど不 可 能 と言っ てよい で あ ろ う。 医薬 品 製 造 者が製 造 した 医 薬 品に過失
の結
果 と して,医薬品 自体
に欠 陥があっ た か否
かの 証明
を立 証す
ることは, 原告側
で は困 難がある か もしれない。情
況 証瓢
ま,医
薬 品製
造者
の過失
の立 証においL
(r
困 難な問 題なので あろ うか。@
レ スノ イ プ サ, ロ ク イ トゥ
ー
ル原 則 (Res
ipsa
loqui
七ur)
前 述の情 況 証 拠の弱い場 合 (