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水面形の時間変化を用いた氾濫流量ハイドログラフの計算法

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Academic year: 2022

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水面形の時間変化を用いた氾濫流量ハイドログラフの計算法

中央大学大学院      学生会員  ○塚本  洋祐 中央大学研究開発機構  フェロー会員    福岡  捷二 国土交通省富山河川国道事務所        正会員    安部  友則  1.序論  

堤防決壊により堤内地に流出する氾濫流の進行を予測するには,まず氾濫流量を求めることが重要である.

しかし,従来の氾濫流量の計算方法は,誤差の大きい堤防決壊幅・決壊点近傍の河道水位を用い,堰の越流公 式から求めているため,氾濫流量を精度良く見積もることは難しい.本研究では,氾濫流出する影響を含んだ 本川の水面形の時間変化と二次元非定常流解析から,氾濫流量ハイドログラフを精度良く評価する解析方法を 構築し,常願寺川で行われた大規模実験に適用することで本解析手法の有効性を示す. 

2.常願寺川現地実験 

  著者らは,

2005

1)から

2006

年にかけて,常願寺川河川 敷につくられた水路において堤防決壊の実験を行った.本 文では,2006 年に行われた実験結果に基づき検討を行う.

図-1に実験水路平面図を示す.実験水路は常願寺川

11.1km

地点の河道内砂州を掘削することにより,長さ

120m,幅 6m

の蛇行水路を作成した.氾濫水路は,水衝部となる

W13

地点右岸側に設置されている.まず,実験水路に堤防決壊 実験のピーク流量に相当する流れを通水し,この流量規模 に見合った安定状態の河床を作成する.次に,この実験水路に 洪水流を模擬した非定常流を通水し,ピーク流量に達する前に,

重機により河岸を掘削することで決壊を生じさせ,氾濫水路に 流れを導く.測定項目は,水位,流量,河床縦横断形状,河床 材料粒度分布であり,特に水位は時空間的に密に観測を行って いる.実験ピーク流量は

14.7m

3

/s,氾濫流量は 4.6m

3

/s

であり,

全流量の約

30%が氾濫流出している.

3.解析方法

  福岡らは,観測された水面形の時間変化を解とした二次元非 定常流解析から流量ハイドログラフを高精度に求めている2). 本解析法は,この方法を応用し,越流公式や決壊点近傍の水位 を用いずに,氾濫時の本川の水面形の時間変化から氾濫流量を 求めるものである.図-2に解析フローチャートを示す.本川上 下流に仮想の池と堰を設置し,堰により池の水位を調節するこ とで,各時間の解析水面形が観測水面形を再現するように粗度 分布を決める.初期の粗度分布は,河道形状,河床材料と流れ の状況から設定し,水面形を説明できるように調整する.堤防

決壊後は,決壊点を挟む上下流域において水位観測断面を数箇所選定し,各断面における観測水位と計算水位 の差が全体的に小さくなるように,かつ,本川の解析水面形が観測水面形を全体的に再現するように氾濫水路 下流端に設けた堰の高さを調節することで氾濫流量を決定している.

キーワード  堤防決壊,現地実験,水面形の時間変化,氾濫流量ハイドログラフ,二次元非定常流解析  連絡先  〒112-8551  東京都文京区春日 1-13-27-31214  中央大学研究開発機構  TEL 03-3817-1611 

図-1  実験水路平面図

W22 

W01  W04 

W08  W10 

W13  W16  水位(レベル測量)  W19 

河床横断形状  流量観測断面  水位(圧力式水位計)

120m  氾濫水路 

flow 蛇行部① 

蛇行部② 

地形データ 平面形状 断面形状

解析メッシュ

水位(流量)解析

粗度分布 水面形時系列

データ

境界条件

上流側設定水位時系列 下流側設定水位時系列 決壊点の最終決壊幅

上流側設定水位時系列 下流側設定水位時系列

上流端堰高(池水位)調整 下流端堰高(池水位)調整

解析結果 水面形の時間変化

抵抗分布の調整 決壊影響箇所の本川水位時系列 氾濫水路下流端堰高調整

:決壊後の 作業を示す 本川のみ

氾濫流量(決壊点上下流の解析流量の差)

流量データ (参考値)

流速分布の時間変化

本川全体の解析流量ハイドログラフ 観測水面形との比較

河道状況 地形データ

平面形状 断面形状

解析メッシュ

水位(流量)解析

粗度分布 水面形時系列

データ

境界条件

上流側設定水位時系列 下流側設定水位時系列 決壊点の最終決壊幅

上流側設定水位時系列 下流側設定水位時系列

上流端堰高(池水位)調整 下流端堰高(池水位)調整

解析結果 水面形の時間変化

抵抗分布の調整 決壊影響箇所の本川水位時系列 氾濫水路下流端堰高調整

:決壊後の 作業を示す 本川のみ

氾濫流量(決壊点上下流の解析流量の差)

流量データ (参考値)

流速分布の時間変化

本川全体の解析流量ハイドログラフ 観測水面形との比較

河道状況

図-2 解析フローチャート  W02

Ⅱ-064 第35回土木学会関東支部技術研究発表会

(2)

4.解析条件 

解析対象区間は,図-1に示すW01からW22の120mであり,上流側境界条件設定箇所はW22,下流側境界条 件設定箇所はW02である.決壊点近傍の堤防決壊影響箇所として,W08,W10,W12,W14の4断面を用いて いる.仮想の氾濫水路の決壊幅には,実験終了後に得られた最終決壊幅を用いている.粗度係数は,直線部で あるW01〜W03,W06〜W11,W17〜W22の区間では0.018を,蛇行部であるW03〜W06,W11〜W17の区間で は0.040を用いている.蛇行部では,流路の曲率により流線が曲げられることで壁から大きな力を受けること から,大きな粗度係数値が用いられている.

5.解析結果と考察 

図-3(a)〜(c)に観測水面形と解析水面形の比較を示す.流量上昇期,ピーク流量付近,流量下降期の各時間 において,解析水面形は観測水面形を全体的に再現することができている.流量ピーク付近では,蛇行部①に おいて解析水位が観測水位と比べ低くなっている.蛇行部では3次元性の強い流れ場になっており,圧力分布 が静水圧分布と異なるため,静水圧分布を仮定している二次元浅水流方程式では流れを十分に再現できないた めである.図-4に観測流量と解析流量の比較を示す.全体的に解析流量は観測流量を高い精度で再現している.

流量下降期は,堤防が決壊することで生じた河床変動により,河床形状と粗度分布が想定した値と異なるよう になったため,解析流量の精度が低くなっている.

6.結論

堤防決壊の影響を含んだ本川の水面形の時間変化を与え,二次元非定常流解析を行うことで,決壊断面形状 や堰の越流公式等を使わずに氾濫流量ハイドログラフを求めた.実験結果と計算結果を比較することで,本計 算方法は氾濫流量を精度良く評価していることを示した. 

参考文献  1)福岡捷二,山崎憲人,黒田勇一,井内拓馬,渡邊明英:急流河川の河床変動機構と破堤による氾濫流量算定法の 調査研究,河川技術論文集,第 12 巻,pp.55-60,2006.2)福岡捷二:洪水の水理と河道の設計法,森北出版,2005.

0 4 8 12 16

13:30 14:00 14:30 15:00 15:30 16:00

上流側解析流量 上流側観測流量

下流側解析流量 下流側観測流量

破堤流量解析値 破堤水路観測流量

図-3(a) 観測水面形と解析水面形の比較(流量上昇期)

縦断距離(m) 

図-3(b) 観測水面形と解析水面形の比較(ピーク流量付近)

標高(m)  標高(m) 

縦断距離(m) 

標高(m) 

縦断距離(m) 

図-3(c) 観測水面形と解析水面形の比較(流量下降期) 図-4 観測流量と解析流量の比較

流量(m3/s

時間  57.5

57.8 58.1 58.4 58.7 59.0 59.3 59.6

15 35 55 75 95 115 135

13:40 解析水位 13:40 観測水位 14:00 解析水位 14:00 観測水位 14:20 解析水位 14:20 観測水位

57.5 57.8 58.1 58.4 58.7 59.0 59.3 59.6

15 35 55 75 95 115 135

14:40 解析水位 14:40 計算水位 14:50 解析水位 14:50 観測水位 15:00 観測水位 15:00 観測水位

57.5 57.8 58.1 58.4 58.7 59.0 59.3 59.6

15 35 55 75 95 115 135

15:20 解析水位 15:20 観測水位 15:40 解析水位 15:40 観測水位 15:50 解析水位 15:50 観測水位 16:00 解析水位 16:00 観測水位

Ⅱ-064 第35回土木学会関東支部技術研究発表会

参照

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