固定支間長の長い PRC 多径間連続ラーメン 2 主版桁橋の構造検討
川田建設(株)東京支店 事業推進部 技術課 正会員 ○石橋 亜希子 西日本高速道路(株)関西支社 建設事業部 構造技術課 正会員 福田 雅人
川田建設(株)東京支店 事業推進部 技術課 正会員 村上 賢二 川田建設(株)大阪支店 事業推進部 技術課 正会員 大久保 孝
1.はじめに
新名神高速道路 猪渕西第一橋他 4 橋(PC 上部工)工事は,
多径間連続ラーメン構造の第一橋(上下線),多径間連続桁構 造の第二,三,四,五橋の全 6 連で構成される.各橋梁とも,
固定支保工上で 1 径間毎の分割施工により架設される 2 主版桁 橋である.その内,第一橋の下り線(以下,本橋と記す)は,
ラーメン構造部分の固定支間長が 220.5m を有する.
本稿では,本橋の詳細設計における技術的課題とそれに対し て実施した検討並びに技術的解決策について報告する.
2.橋梁概要
本橋の断面図を図-1に,側面図を図-2に示す.支承条件は,
橋台側の側径間となる A1,P1,P10,A2 が分散(E)構造で他の橋脚は剛結構造(R)である.ラーメン橋脚間(P2
〜P9)の固定支間長(LF)は 220.5m であり,固定支間の端部橋脚高さ(H)は,P2 が 19m,P10 が 26m である.
3.設計上の課題
連続ラーメン橋は,温度変化,クリープ・乾燥収縮,
プレストレス 2 次力等の不静定力の影響が大きい.特に,
固定支間長に対して端部橋脚の高さが低いと無視し得な い過大なアンバランスモーメントが発生する(図-3).本 橋は,固定支間長と橋脚高の関係
1)
が,ラーメン構造成 立限界の推定限界値を超えるため(図-4),固定支間端部 橋脚の柱頭部で過大なアンバランスモーメントが生じて いた.また,詳細設計条件では,耐久性向上の観点から,主桁上縁での PRC 構造としての制御方法が,基本設計の 方法 A から方法 B に変更となった.
上記背景から,設計上の課題は,①不静定力に起因するアンバランスモーメント低減のため,その大きな割 合を占めるプレストレス 2 次力を抑制する PC 鋼材配置,②温度変化や地震時慣性力の正負交番断面力による アンバランスモーメントに対して,柱頭部付近の曲げ制限値を満足させる主桁断面性能の改善,であった.
キーワード PRC 構造,ラーメン橋,2 主版桁,カップラー接続,分割施工,不静定力 連絡先 〒114-8505 東京都 北区 滝野川 6-3-1 川田建設(株)東京支店 TEL03-3576-5321
図-1 断面図
図-2 側面図
図-3 連続ラーメン橋のモーメント図
固定支間:LF 伸縮長
変形の不動点
H
300
400 2000 2501501900 2300
Z-CL GCL K-CL
580 1795
5330 4580
445 9910
445
10800
GL
2700 5800
1855
175 10355
270
3002300
GR
1800
1001900
200
1255 200 1300 2300 200800200 2100
柱頭部 標準部
桁 長 橋 長 333000
2300
27100
23600 28600 8@31500=252000
250 600
250 332500
600
19000 75002500300013000
30003000
265002500
260002500
215002500
185002500
180002500
190002500
260002500
13500250016000 28500 21500 20500 21000 24000 28500 29000 25000
R R
P1 A1
P4 P3 P2
P5 P4 P7 P6
P10 P9 P8
A2
土木学会第70回年次学術講演会(平成27年9月)
‑307‑
Ⅴ‑154
図-6 柱頭部付近の下床版 4.技術的解決策と効果
課題①に対して,分割施工の PC 鋼材配置手 法を基本設計で計画されていた「たすき掛け定 着」から,「カップラー接続」に変更した(図-5). たすき掛け定着は,柱頭部横桁を交差するよう に PC 鋼材を定着するが,ケーブル形状がプレス トレス 2 次力の発生を助長する形状となる.ま た,設計条件により PRC の制御方法が方法 B に 変更となったが,これは配置 PC 鋼材の増加を招 き,プレストレス 2 次力の抑制とはトレードオ フの関係になる.一方,カップラー接続は,力 学性状に即した橋軸方向に連続する PC 鋼材配置 が可能となる.そのため,たすき掛け定
着に比べプレストレス 2 次力の発生を低 減でき,PRC 制御方法の変更による PC 鋼 材本数増加も,たすき掛け定着を採用し た場合に比べ少なくできた.
課題②に対して,柱頭部付近の 2 主版 桁断面に部分的に下床版を設けた箱桁断 面形状(図-6)を採用した.これにより,
曲げに対する主桁断面性能の向上が図れ るとともに,下床版部分に PC 鋼材を配置 することも可能となり,正負交番断面力 に対する主桁上下縁の効率的なプレスト
レス導入が図れた.なお,下床版の設置範囲は,2 主版桁断面と箱桁断面で断面が急変する箇所において,プ レストレス等の主桁に作用する軸力がウェブから下床版に
100%伝達されるような有効伝達長とした(図-7)
.5.おわりに
カップラー接続の採用は,鋼材の過密配置となる柱頭部横桁付近で PC 鋼材配置形状を簡素化でき,コンク リートの充填性など施工性の向上,品質向上にも有効であった.また, PRC2 主版桁ラーメン橋の柱頭部に下 床版を部分的に設置する手法は,限界固定支間長を超える本橋の条件下では,最適解であったと再評価してい る.本報告が類似工事の参考となれば幸いである.
参考文献
1) (財)高速道路調査会:PC 多径間連続ラーメン橋に関する研究報告書 昭和 63 年 5 月 図-7 柱頭部付近下床版設置範囲 図-4 ラーメン構造成立の固定支間長と脚高の関係
図-5 たすき掛け定着とカップラー接続の PC 鋼材配置比較
GCL
GL GR
10355
1800 990
200
1255 1500 2310 200 2300
1855 2900 2900 2700
2300 2300
450
柱頭部 施工目地
下床版 下床版PC鋼材
下床版延長区間 箱桁
下床版延長区間 軸力の広がり
2主版桁 2主版桁
33 ° 40 '
先行シース 施工目地旧施工区間 新施工区間
カップラー接続 たすき掛け定着
施工目地 旧施工区間 新施工区間
土木学会第70回年次学術講演会(平成27年9月)