• 検索結果がありません。

JJSLM Vol.31 No.1(2010) はじめに 皮 膚 は 体 全 体 を 覆 う 大 きな 組 織 で, 特 に 顔 面 は 加 齢 変 化 が 一 番 顕 著 に 見 える. 加 齢 にともなって, 肌 はさまざ まなトラブルを 抱 えるようになる. 本 項 では, 美 容

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "JJSLM Vol.31 No.1(2010) はじめに 皮 膚 は 体 全 体 を 覆 う 大 きな 組 織 で, 特 に 顔 面 は 加 齢 変 化 が 一 番 顕 著 に 見 える. 加 齢 にともなって, 肌 はさまざ まなトラブルを 抱 えるようになる. 本 項 では, 美 容"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

総 説

REVIEW ARTICLE

肌のアンチエイジングに対するレーザー治療

山下 理絵,松尾 由紀,近藤 謙司,遠山 哲彦

湘南鎌倉総合病院 形成外科・美容外科 (平成21 年 11 月 9 日受理,平成 22 年 1 月 12 日掲載決定)

Laser Surgery for Aging Skin Problems

Rie Yamashita, Yuki Matsuo, Kenji Kondo, Tetsuhiko Toyama

Department of Plastic and Reconstractive Surgery Shonan Kamakura General Hospital (Received November 9, 2009, Accepted January 12, 2010)

要旨  美容医学でのアンチエイジング治療の中で,レーザー治療の進歩はめざましい.顔面には,加齢とともに多種のシ ミやシワが生じる.シミの治療は,診断をつけ,疾患ごとに治療を行い,シワは部位別に治療を選択することが重要 である.今回,シミの中でも多い,老人性色素斑,肝斑,雀卵斑,遅発性太田母斑様色素斑,日光角化症のレーザー 治療およびシワ・タルミのレーザーおよび類似機器治療の現況に関して報告する. キーワード:老人性色素斑,肝斑,Q スイッチルビーレーザー,Q スイッチ Nd:YAG レーザー,アンチエイジング, ノンアブレイティブリジュビネーション Abstract

 Progress of laser Treatment made recently in aesthetic anti-aging therapy is remarkable As people age, various forms of facial skin pigmentations and aging wrinkled skin occur. It is importance of appropriate diagnosis and treatment in accordance with the diagnosis when treating pigmentation and the wrinkle is treated according to a part of face. In this paper, we will report the laser treatment of facial skin pigmentation, senile lentigo ,melasam, freckles, acquired dermal melanocytosi and actinic keratosis and for aging wrinkled skin.

Key word:Isenile lentigo, melasma, Q switch ruby laser, Q switch Nd:YAG laser, anti-aging, non-ablative rejuvenation

〒247 − 8533 神奈川県鎌倉市山崎 1202 − 1 TEL: 0467 − 46 − 1717 FAX: 0467 − 45 − 0190 (1202 − 1 Yamazaki, Kamakura city, Kanagawa, 247 − 8533, Japan)

(2)

のあるものは,炭酸ガスレーザーを使用する場合もある. また,光治療が用いられることも多い.レーザーが一波 長であるのに対して,光治療器の波長は560-1200 nm な ど,ブロードバンド(広帯域)である.レーザーより効果 は劣るため,数回の治療を要することが多い. ほとんどの症例は無麻酔で行っている.実際の治療 に用いたQ スイッチルビーレーザーのエネルギー密度 は,現在4 種類 5 台の Q スイッチルビ ― レーザーを有 しているため,機種によっても異なるが,使用する出力 4.0 J/cm2から5.8 J/cm2までで,症例ごとに適宜変更し たが5.0-5.2 J/cm2を最も多く用いている.照射部の被 覆はステロイド含有軟膏を使用している. ・副作用 筆者が経験した副作用は,炎症後色素沈着,毛細血管 拡張,感染などである.色素脱失および瘢痕形成の経験 はない.最も多発するのは,炎症後色素沈着であり,レ ーザー治療を行う場合には,十分なインフォームドコン セントが必要である4).プレトリートメントを行う前は 48% に炎症後色素沈着を生じていたが,行うようになっ てからは,30%程度となり,症状も軽度になった.炎症 後色素沈着は早い症例で10 日後より,多くは 2 週後より 生じ,3 ~ 4 週後で最も濃くなった.ほとんどの症例は, 5% ハイドロキノン含有軟膏を使用後 1 ヶ月で色素沈着が 軽快傾向となり,6 ヶ月までに,消失,消退した.レー ザー治療を行う際は,照射後の経時的変化およびそれに 対する対処,美白剤なども熟知しておく必要がある2,3) また,照射3 ヶ月の時点では,色素が取りきれてい ないのか,炎症後色素沈着が継続しているかの判断も重 要である. 1. はじめに  皮膚は体全体を覆う大きな組織で,特に顔面は加齢変 化が一番顕著に見える.加齢にともなって,肌はさまざ まなトラブルを抱えるようになる.本項では,「美容医 学のアンチエイジング」1)の中で最も,患者が多い,シ ミ,シワ,タルミのレーザー治療に関して述べる. 2. シミのレーザー治療 2.1 シミの疾患別治療方法 シミは後天性のメラニン色素の増強であるが,いく つかの疾患が存在し,さらに混在している場合も多い. 実際にシミを主訴に受診する患者の臨床診断は,多種 にわたる.このため,正しい臨床診断そして適切な治療 を選択することが重要である2,3).多くの患者は,シミ =レーザー治療であとかたもなく消えると思い受診され る.しかし,疾患ごとに治療方法および治療経過は異な る.筆者は,太田母斑や扁平母斑などの色素異常疾患 を除いた,後天性の加齢に伴うシミを,Aging Complex Pigmentation(ACP)と称して,治療プロトコールを作り 行っている.内服,外用などのプレトリートメントを行 った後に,レーザーやIntense Pulsed Light(IPL)などの機

器を使用した治療を導入する.今回は,5 疾患の治療に 関して説明する. 2.1.1 老人性色素斑 老人性色素斑は,20 歳代以降の男,女性の顔面手背 および前腕などの紫外線露光部に多発する.境界明瞭の 円形で淡褐色~茶褐色の色素斑である.大きさは,数 mm 程度の小斑から,5-6 cm 台の大斑まで様々である. また,一部が角質隆起を伴う脂漏性角化症になっている 場合もある.表皮のケラチノサイトの老化に伴う異常で, メラニン顆粒は,表皮に限局していることが多い.老人 性色素斑の第一選択は,レーザー治療と言ってよいが, 最近では,プレトリートメント:内服薬(ビタミンC, E, トラネキサム酸),外用薬(ビタミンC,トラネキサム酸, ハイドロキノン)を2-3 ヶ月行った後に,レーザー治療 を行っている.プレトリートメントだけで,色素が消失 することもある(Fig.1a,b).老人性色素斑は,1 回のレ ーザー治療で効果が得られることが多い(Fig.2a,b).メ ラニン顆粒を有するケラチノサイトを破壊し,表皮を剥 離することにより新生表皮が再生し軽快する.ただし, スキンタイプや光老化の状態により,レーザー治療まで の経過が異なる. ・使用するレーザー機器 現在,メラニンに対する治療には,ルビーレーザー, アレキサンドライトレーザー,Nd:YAG レーザーが使用 されている.メラニンに対する吸収率は,ルビー,アレ キサンドライト,Nd:YAG の順番である.波長が 600 nm 以下であるとヘモグロビンにも吸収され血管傷害を起こ す.しみ治療に使用されているレーザーはメラニンを標 的とするQ スイッチおよびノーマルパルスのルビーレー ザー(波長694 nm),Q スイッチアレキサンドライトレー ザー(波長755 nm,)半波長 Q スイッチ Nd:YAG レーザー(波 長532 nm)などがある.脂漏性角化症のように角質肥厚

Fig.1 Ointment of hydroquinone, kojic acid and vitamin c improve senile lentigines. (a) before, (b) 3 month after treatment.

Fig.2 Q switch ruby laser treatment of senile lentigines. (a) before (b)3 month after irradiation.

(3)

2.1.2 肝斑 肝斑は,30 歳以降の女性の頬部(頬骨上),前額部, 口周囲(鼻の下)にほぼ左右対称にみられる.眼周囲すな わち下に骨がないところには生じない.黄体ホルモンの 影響を受け妊娠中および排卵日以降生理までの間,経口 避妊薬(ピル)内服時,子宮筋腫,子宮内膜症などの治療 時などに色素増強が見られる.原因はホルモンや紫外線 などによることが大きいが,好発部位からは外的刺激, 洗顔などによる摩擦なども増強因子になっていると考え られる.さらに,最近は20 代でも見られることがある. ストレスなどによるホルモンバランスのみだれ,および 避妊のためのピルによるものと考えられる.基底層のメ ラノサイトの数は正常であるが,メラノサイトの増大お よびメラニン顆粒の増加が基底層およびその上層に見 られる.肝斑の治療は,内服薬(ビタミンC, E,トラネ キサム酸),外用薬(ビタミンC,トラネキサム酸,ハイ ドロキノン),そして紫外線予防である(Fig.3a,b).1994 年Taylor, Anderson らの報告5)以降,肝斑に対するレ ーザー治療は禁忌であると言われ,筆者もそれにならい レーザー治療を控えてきた.肝斑にレーザー照射を行う と,治療前より色素が増強したり,炎症後色素沈着が長 期に残存したり,高頻度に再発し改善が見られないから である.しかし,これは,老人性色素斑や太田母斑など の治療と同様な機器設定で,メラニンに吸収する波長で 高出力を用いていたからである.表皮を剥離させ,メラ ニンを破壊する方法では,肝斑の炎症を悪化および遅延 させていたと考えられる.筆者は,波長1064 nm の Q スイッチNd:YAG レーザーを低出力で照射する方法(Q ヤグレーザートーニング)を考案し,肝斑に対するレー ザー治療の新プロトコールを作成し,この方法により, 内服,外用を行っても残存する難治性肝斑などの治療も 可能になってきた(Fig.4a,b). ・使用するレーザー機器と治療方法 Q スイッチ Nd:YAG レーザー(アメリカ,HOYA 社製: MedLite C6))を使用し,波長 1064 nm,出力 2.8-3.2 J/ cm2,スポットサイズ6 mm,照射スピード:10 Hz で, 皮膚面から2 cm 程度離し,中空照射を行った.治療の エンドポイントは,顔面全体に発赤腫長が生じる5 パス 程度とした.照射は無麻酔で行い,1 週間の間隔で,色 素の消失状態を診察しながら,4 - 8 回の照射を行った. 照射後は,アイスパックで5-10 分クーリングを行うの みで,軟膏塗布やガーゼでの被覆は行っていない. ・副作用 過度な照射による色素脱失や,一過性の皮膚炎を起 こすことがあるが,炎症後色素沈着を起こすことはほと んどない. 2.1.3 雀卵斑 雀卵斑(そばかす)は,日光露出部位に生ずる淡褐色の 不整形小色素斑で散在性,遺伝性素因優性遺伝が強い. UVB の照射により発症し小児期 3-5 歳が初発で,小学校 4 年生頃,2 次成長,思春期少し前より目立つようにな る.その後,加齢とともに増強する.UVB 照射,日焼け により増悪するため,夏季に増悪,冬季に軽快すると言 われている.好発部位は,顔面,鼻背部,両頬,前額部 に対称性に出現する.手背,肩などに出現することもあ る.色素性病変は,ほとんどがメラニン量の増加もしく は減少によるものである.色素増加症では,メラニンの 増加部位により肉眼的色調が異なる.雀卵斑のメラニン は,表皮基底層から上の角質層に存在すると言われてい るので褐色調を示す.1980 年代までの教科書には,雀卵 斑の治療にはUV ケアしか載っていないことが多い. 治療は,レーザー治療が第一選択されるが,日本の 教科書で,雀卵斑に対するレーザー治療が記されるよう になったのは最近,2000 年に入ってからのことである. ・使用するレーザー機器 メラニンをターゲットしたQ スイッチルビーレーザ ー,Q スイッチアレキサンドライトレーザー,半波長 Q スイッチNd:YAG レーザーの 3 種のレーザーを使用する ことが多い.ほとんどが,1 回の治療で色素斑は消失す る(Fig.5a,b).治療範囲が広範囲の場合は,1 週間のダ ウンタイムがあることを考え,数回にわけることもある. また,肝斑治療と同様な方法で,Q ヤグレーザートーニ ングも有効であるが(Fig.6a,b),ダウンタイムはほとん どないが,治療回数は増える.雀卵斑は,現在ある色素 斑は治療できても,日光照射により再発および新たに出 現する可能性が高い.このため,再発防止には,メラノ サイトのチロシナーゼを阻害し色素産生を抑える効果を もつ各種美白剤の外用,UV ケアの啓蒙は十分に行う. ・副作用 10 代,20 代の場合は,雀卵斑患者はだけを治療ター ゲットにすればよいが,加齢により多種の色素斑が混在

Fig.3 Ointment of hydroquinone, kojic acid, vitamin c and oral intake of tranexamic acid improve melasma on her face. (a) before, (b)3 month after treatment.

Fig.4 Low fluence Q switch Nd: YAG (1064nm, 10ns) laser treatment of melasma. (a) before treatment, (b)3 month after irradiation.

(4)

してくるため,鑑別診断をした上で治療の適応を考慮す る.雀卵斑のレーザー治療で合併症が起こることはない. 一時的な炎症反応(発赤,浮腫)のあと,起こる痂皮形 成のインフォームドコンセントを行うだけである. 2.1.4 遅発性太田母斑様色素斑:   後 天 性 真 皮 メ ラ ノ ー シ ス(acquired dermal melanocytosis:ADM)太田母斑の亜型と言われていたが, 現在では,一疾患として扱われることが多い.発症は 20 歳以上,両側性で左右対称に頬部,下眼瞼,前頭部, 鼻根部などに点状あるいは局面型に灰褐色から淡紫色の 色素斑が分布する.眼球メラノーシスは認められない. 病理組織学的には,真皮上層部にメラノサイトを認める. また,表皮基底層にもメラニンの増加を認めることもあ る.後天性のため,ほとんどの患者が,シミ治療を主訴 に来院するため鑑別が重要になる. ADM の治療では, 色素斑の状態,他の疾患が合併していないかを診断する. 筆者は,ACP の治療,すなわち内服,外用の治療を 2-3 ヶ月行う.その後,残存した色素斑に対してレーザー治 療を行っている. ・使用するレーザー機器 3 種類,すなわち,Q スイッチルビーレーザー,Q ス イッチアレキサンドライトレーザー,Q スイッチ Nd:YAG レーザを使用してみたが,治療回数は,ルビーが一番少 ないため,筆者はQ スイッチルビーレーザーを使用して いる.太田母斑より治療回数が少なく,1-3 回で消失す る(Fig.7ab).治療間隔も 4-6 ヶ月をあけて行っている. ・副作用 ADM の場合,炎症後色素沈着を生じる可能性が高く, 色素斑も徐々に軽減してくる.このため,次のレーザー 治療までの間は,美白剤を使用するように指導している. 2.1.5 日光角化症 日光角化症は,前癌状態のひとつであり,有棘細胞 癌に進展する可能性がある.高齢者の顔面,耳介,手指背, 前腕などの紫外線曝露部に生ずる表皮内癌である.日光 角化症は高齢化に伴い最近非常に増加している.臨床的 には,紅色から褐色角化性紅斑から光沢がある角化性小 結節として認められることが多く,単発性のこともある がしばしば多発する.老人性色素斑と類似していること も多く,しみ診断時には注意深い診察が必要である.症 例によってはかゆみがある.筆者の統計では,シミのレ ーザー治療を希望する患者の中の約2.5%が日光角化症 であった.病理組織学的は6 型に分類されるが,老人性 色素斑に類似したものとの鑑別を臨床所見だけでつける のは難しいため,必ず,病理組織検査を行う.多くの患 者は,通常のシミの性状と違うことを自覚していること が多い.治療は扁平上皮癌同様に手術による切除が原則 である.しかし,高齢化に伴い,多発例が増え,また若 年発症例で腫瘍が大きい場合は,大きな傷跡を残す可能 性があるなど切除のみでは対応しにくくなってきた.こ のような場合には,患者と十分話し合い,表皮性病変で あるため,レーザー治療を選択することもある. ・使用するレーザー機器 表皮を完全に除去する必要がある.筆者は顔面の若 返り治療,レーザーリサーフェイシングの手法を用い, 炭酸ガスレーザーを使用している(Fig.8a,b).また,病 理組織結果で,色素沈着型でメラニンの増生が見られる 場合は,炭酸ガスレーザー照射後にQスイッチルビーレ ーザーを照射する.治療は,局所麻酔下に行う. ・副作用 炎症後色素沈着を起こす可能性が高いため,術後のケ アは老人性色素斑と同じに外用剤を使用する.再発の可能 性があるため,日光角化症をレーザーで治療した場合には, 長期に経過観察を行う必要があることを患者に説明し,さ らにUVケアの指導を行う.再発した症例の経験はまだない. Fig.5 Q switch ruby laser treatment of freckles. (a)before

treatment(b) 6 month after irradiation.

Fig.6 Low fluence Q switch Nd: YAG (1064nm, 10ns) laser treatment of freckles. (a) before, (b) 3 month after irradiation.

Fig.7 Q switch ruby laser treatment of acquired dermal melanocytosis (ADM). (a) before, (b)One year after irradiation.

(5)

2.2 シワ・タルミの治療  従来,シワ,タルミに対する治療は,手術方法が主 であった.1990 年代後半より facial rejuvenation(手術 以外の方法を用いた顔面の若返り術と理解されるとよ い),がブームとなり,多種の方法が開発および見直さ れた.ケミカルピーリング,マイクロダーマルアブレー ジョン,コラーゲン,ヒアルロン酸などの注入,ボツリ ヌス毒素,メソセラピー,ハイドロキノンやトレチノイ ン酸などの外用剤,そしてレーザーや光などの機器を用 いた治療方法などがこれに含まれる.シワ・タルミへ のアプローチは,顔面の部位別(Fig.9)に治療方法を説 明,さらには組み合わせの必要性などを含め,患者の要 望および適応を十分に吟味した上で治療計画をたてるこ とが重要である.シワ・タルミのためのレーザー治療 は,従来は炭酸ガスレーザーなどのablative 治療が行わ れていた6).現在でも米国では,フェイスリフト手術と 同日に行っている画期的な治療で,十分な効果が得られ るが,患者に対する侵襲は大きい.黄色人種に行った場 合は,炎症後色素沈着の合併症は約70%に生じ,長期 ダウンタイムを要した.特に,日本人女性は,ダウンタ イムのない治療を好む.また,また,十分な経験も必要 であるため,本邦で積極的には行われていないのが現状 である.1990 年代後半になると,表皮を温存する non-ablative レーザー7,8)へと移行した.現在は,レーザー, 高周波(RF),光治療などが使用されているが,ダウン タイムもリスクも少ないが,効果はablative レーザーに は劣る.また,ごく最近では,fractional photothemolysis (FP)と言い,皮膚に無数の細かいレーザーを照射し, microscopic treatment zone という孔を作る Micro-bowling

 ablative 方法が開発された.熱ダメージを受けた周辺 は正常組織に覆われた状態になり,病理組織学的には, 無数の穴が開いているablative な所見であるが9,10),照 射後は,ablative より non-ablative に近い状態である.一 番初めに開発されたのが,波長1550 nm のフラクセルで, その後数種のレーザーが相次いで登場した.

2.2.1 Ablative Laser :Laser resurfacing(LRS)

 主に,炭酸ガスレーザーを使用し,老化した皮膚を均 一に剥削し,熱傷を起こし,その創傷治癒機転を利用し た方法で,Laser resurfacing と称し,コラーゲンやエラ スチンなどの線維組織の再構築を起こす. ・使用レーザー機器  現在,種々のパルス波炭酸ガスレーザーが販売されて いるが,米国Lumenis 社製 UltraPulseTM 5000 CR は,通常 の連続波の他にウルトラパルスといわれる可変式高エネ ルギーの短パルス波が照射される.パルスエネルギー量は 1-500 mJ/pulse で周波数との調整が可能である.パルス 幅が314 μs と短いため,照射した周囲に熱が拡散されに くく,またコンピュター制御スキャナーUltraScanTMCPG

(Computed Pattern Generator)が装備されているため,laser resurfacing には一番向いている.しかし,本機種は現在生 産中止になっているため,同社のUltrapulse 炭酸ガスレー ザーENCORE 使用により照射出力はやや弱めに設定され ているが,同様な効果は得られる. ・副作用  LRS は,画期的な治療で,十分な効果が得られる反面, 患者に対する侵襲は大きい.紅斑,毛細血管拡張,稗粒 腫,色素沈着,色素脱出,瘢痕,創感染(ヘルペス,黄色 ブドウ球菌)などが起こる可能性がある.最も問題なのは, 黄色人種の場合は炎症後色素沈着であり,程度の差はあ るが高頻度(60% ~ 70%)に出現する.多くの症例は術後 1 ヶ月までは,照射部は赤く,その後色素沈着が出現する. しかし,術後の適切な処置により1 ~ 2 ヶ月で消退傾向を 認める.さらに紅斑はほぼ全例に生じ,長期のダウンタイ ムを要した.このため,効果があり筆者は好んで行ってい る治療であるが,残念ながら本邦では定着していない.

Fig.8 Actinic keratosis on his face. (a) before treatment, (b) Ablative laser resurfacing with ultrapulsed carbon dioxide lasers.

Fig.9 Treatment method according to the part of the face.

Fig.10 Appearance. (a)before, (b) 5 year after non-ablative lasers, bipolar rediofrequency, intensive pulse light and injection of hyaluronic acid, Botox.

(6)

2.2.2 Non-Ablative Laser  多くのNon-ablative 機器が販売されているが,1 度で有 効な方法でないことを,十分に説明する.レーザー,高周波, 赤外線,光,超音波,発光ダイオード,そしてこれらの混 合機は,ヒアルロン酸やボツリヌス毒素など,早期の効果 が出る手法と組み合わせることが必要である(Fig.10). 3. まとめ  皮膚のアンチエイジングのためのレーザー治療に関し 述べた.  シミ治療は,診断が重要であり,疾患ごとに治療を行 うことが重要であるが,最近では,レーザー治療が禁忌 と言われてきた肝斑に対しても,有効なレーザー治療方 法があることがわかってきた.  シワ・タルミのレーザー治療は,ablative から,non-ablative に移ったが,そこにジレンマを感じる外科系の医 師たちは,効果を求める方法へと戻っている.有効性を求 めるのであれば,ある程度のダウンタイムは必要である. 患者個々のプログラムを提供することが大切である.最後 に,筆者が,保険診療外,美容医療のアンチエイジングの レーザー治療を行う時の安全心得10 か条を述べる. • 適応であるか • 機器の選択は正しいか • 十分に機器を理解しているか(説明書) • 自信を持って設定できるか • 機器トラブルを発見できるか • 機器操作のテクニックの取得 • 効果・限界・副作用を理解しているか • 副作用 ・ トラブル時の対処の知識 • 効果がない時の他治療の説明 • 担当業者(営業・技術)の知識・敏速な行動 参考文献  1)山下理絵:美容医学とアンチエイジング:シミ,シワ治 療からボディーコントロール,キレーションまで:文光 堂,2008.  2)山下理絵:美容外科でのレーザー治療:aging に対するレ ーザー治療,日形会誌24:13-22, 2002.  3)山下理絵:皮膚レーザー治療のコツ:しみ.PEPARS7: 50-57, 2006.  4)山下理絵:レーザー治療後の炎症性色素沈着に対するス キンケア:老人性色素斑に対するレーザー治療前後のス キンケア. 日美容外会報 20: 1-7, 1998.

 5)Tatlor CR, Anderson RR: Ineffective Treatment of Refractory Melasma and Postinflammatory Hyperpigmentation by Q-switched Ruby Laser:J. Dermatol Surg Oncol: 20, 592-597, 1994.  6)山下理絵:顔面の若返り治療,非手術的治療 ―LASER  RESURFACING の現況,形成外科 2005. 47(12)1311-1318  7)山下理絵:Non-ablative laser とその類縁治療:オリエン テーションーなぜrejuvenation レーザーには多くの種類 があるのか?:皮膚科診療プラクティス17, 文光堂 , 128-131, 2004.  8)山下理絵:ノンアブレイティブレーザー : クールタッチ, アラミス,ゼオAdvanced Cosmetic Dermatology シリーズ:

№2. しわ,たるみを取る(宮地良樹編集),南江堂,東京, 122-125, 2006.

 9)Manstein D, Herron GS, Sink RK, Tanner H, Anderson RR.Fractional photothemolysis:A new concept for cutaneous remodering using microscopic patterns of thermal injury. Laser Surg Med.34: 426-438, 2004.

10)Laubach HJ, Tannous Z, Anderson RR, Manstein D.:Skin responses to fractional photothemolysis. Laser Surg Med, 38: 142-149, 2006. −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 著者紹介 山下 理絵(Rie Yamashita) 北里大学医学部卒業,北里大学形成外 科美容外科チーフ,救命救急センター 形成外科チーフなどを経て,湘南鎌倉 総合病院 形成外科・美容外科部長, クリニーク・ラ・プラージュ葉山 抗 加齢美容医学センター長兼務,北里大 学・横浜市立大学 形成外科非常勤講師,日本形成外科 学会専門医 日本美容外科学会理事 日本美容医療協会 認定専門医,日本レーザー医学会指導医・専門医,日本 抗加齢医学会専門医 日本熱傷学会専門医など 松尾 由紀(Yuki Matsuo) 大分医科大学卒業,大分医科大学皮膚 科形成班,国立呉病院 兵庫こども病 院、大分アルメイダ病院などを経て, 湘南鎌倉総合病院 形成外科・美容外 科入局,日本形成外科学会専門医,日 本抗加齢医学会専門医 近藤 謙司(Kenji Kondo) 琉球大学医学部卒業,岸和田徳州会病 院を経て,湘南鎌倉総合病院 形成外 科・美容外科入局 遠山 哲彦(Tetsuhiko Toyama) 杏林大学医学部卒業後,湘南鎌倉総合 病院にて初期研修後,形成外科・美容 外科入局

参照

関連したドキュメント

Windows Hell は、指紋または顔認証を使って Windows 10 デバイスにアクセスできる、よ

次に、第 2 部は、スキーマ療法による認知の修正を目指したプログラムとな

   遠くに住んでいる、家に入られることに抵抗感があるなどの 療養中の子どもへの直接支援の難しさを、 IT という手段を使えば

本事業を進める中で、

以上の基準を仮に想定し得るが︑おそらくこの基準によっても︑小売市場事件は合憲と考えることができよう︒

となってしまうが故に︑

2) ‘disorder’が「ordinary ではない / 不調 」を意味するのに対して、‘disability’には「able ではない」すなわち

VREF YZのQRは Io = 30 mA になりま す。 VREF ?を IC のでJKする./、QR のæç でJKするような èとしてGさ い。をéえるQRとした./、