140 (46) 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
ヤマ モト ノブ カズ信和(昭和3
医学博士 乙第1124号平成2年10月19日
学位規則第5条第2項該当(博士の学位論文提出者)
Measurement of the mechanical properties of tLe tympanic membrane With a miCrOtenSiOn teSter
(ミクロテンションテスターを用いた鼓膜の機械的性質の測定) (主査)教授 石井 哲夫 (副査)教授 相川 英三,細田 瑳一
論 文 内 容 の 要 旨
目的 鼓膜は伝音機構に重要な役割を果たしているが,そ の機械的性質の直接の測定は対象器官の小ささのため 困難とされている.著者は微小荷重測定可能な引張試 験機を開発し,ミクロテンションテスターと名付け, これを用いてモルモットとヒト鼓膜の機械的性質を計 測した.今回はその破断限界について報告する. 対象および方法 (1)・・一トレー系白色モルモット50匹97耳を用い た.鼓膜を採取し前方・下方・後方の3つに分割し, それぞれを放射状線維に直角または平行に引張試験を 行った.引張速度は0.17×10-4,4.17×10 4,8.33× 10-4m・sec-1とし,室温常湿で測定した.この試験をホ ルマリン固定組織と非固定組織とで行った. (2)ヒト鼓膜は1例の剖検体より採取した2耳をホ ルマリン固定標本で使用し,引張速度4.17×10-4m・ sec 1で測定した. (3)ミクロテンションテスターは動力にDC servo・ motor,計測にload cellを用い,偏位をpotentiometer で測定するように設定し,0-200gの荷重を測定可能 とした. 結果 モルモット鼓膜の破断限界は放射状線維に平行に引 張ると引張速度4.17×10-4m・sec-1,非固定例で2.73 kgf・mm-2,直角に引張すると0.31kgf・mm-2であり,. 平行方向の方が8,8倍強くなっていた.引張方向を放射 状線維に直角とし,引張速度を変化さぜても破断限界 値は変化しなかった.しかし引張方向を放射状線維に 平行に設定すると,鼓膜後方が破断限界3.12kgf・ mm皿2,前方が2.45kgf・mm-2と後方が有意に強くなっ ていた(p<0.01).以上の測定ではホルマリン固定組 織より非固定組織の方が強くなっていた. ヒト鼓膜は破断限界が放射状線維に直角方向で1.06 kgf・mm 2,平行方向で1.99kgf・mm-2であり,両方向 の強度の比は1,9倍とモルモットより小さかった. 考察 鼓膜の破断限界を生物学的強度に換算した.鼓膜の 変形を円柱もしくは球形と仮定し,計算式をたてた. これに破断限界値,曲率半径,鼓膜の膜厚を代入し破 断に要する圧力を計算した.ヒト鼓膜の非固定例の破 断限界はモルモット鼓膜のホルマリン固定と非固定例 の測定値の比より算出し,放射状線維に直角方向が 2.56kgf・mm-2,平行方向は3.28kgf・mm一2とした.ま た鼓膜は常に放射状線維に直角方向の強度が平行方向 に比較して弱いため,計算には直角方向の破断限界値 を用い,鼓膜の膜厚は変形過程で変化しないと仮定し た.以上より,モルモット鼓膜の破断に要する最小圧 力は0.6gf。mm一2であり,ヒトでは20.5gf・mm-2で あった. 結論 ミクロテンションテスターを開発し,鼓膜の機械的 性質を測定した.これは鼓膜の虚脱・陥凹・圧外傷な 一750一141 どの病理学的過程の理解に役立つものと思われた.
論 文 審 査 の 要 旨
本研究では,微小な組織片の力学的特性を計測するために装置を開発しそれをミクロテンションテスターと 名付けた.この器械を用いてモルモットおよびヒト鼓膜の破断限界値を計測し,モルモット鼓膜の破断に要す る最小圧力は0.6gf・mm 2であり,ヒトでは20.5gf・lnm-2であることを報告した.鼓膜の虚脱,陥凹,圧損傷な どの病理学的過程の分析に役立つ価値ある論文である. 主論文公表誌Measurement of the mechanical properties of the tympanic membrane with a micro tension tester
(ミクロテンションテスターを用いた鼓膜の機械 的性質の測定) Acta Otolaryngalogica(Stockholm)Vol. 11085-91頁(1990年発行) 副論文公表誌 1)当教室における喉頭癌治療成績の検討 頭頚部腫瘍 16(2):109-112,1990 2)客観テストにおける正答率の高い基本問題の取 扱い方 医学教育 21(2):84-87,1990 3)ヒト膜迷路の力学的性質 Equilibrium Res(Suppl 5):46-50,1989 4)膜迷路の力学的特性 Equilibrium Res(Suppl 4):18-22,1988 5)舌咽神経痛 JOHNS 3(11):1701-1707,1987 一751一