第7章 ベンチャーキャピタリストのケーススタディ
第7章 要旨
1.第6章で、第二次仮説「投資手法の中でも育成方法を選択的に実行すれば日本でも高い IRRは達成できる」を最終仮説「育成方法の中でも特に利害関係者との協創関係を構 築すれば日本でも高いIRRは達成できる」と修正した。これを、第7章では、具体的 なベンチャーキャピタリストのケーススタディを通して分析してみたい。ここにおける 協創とは、「協調した組織間関係に基づいて価値創造を目指す戦略構造」と定義し、協調 した組織間関係とは、「組織間の共通の目的・利益を達成するため、組織同士が相互に不 足する経営資源を補完する関係にある状況」を指している。
2.ベンチャーキャピタルが利害関係者―出資者、ベンチャー企業、市場及び顧客―
との関係性のとり方についてはケース毎にそれぞれ異なっていたものの、ベンチ ャーキャピタリストの村口、赤浦のようにベンチャー企業と近い関係を構築する ケースと、ベンチャーキャピタリストの山口、仮屋園、関野のように中立的関係 を構築するケースの2つに分けられた。ベンチャーキャピタルが出資者に近い位 置、ベンチャー企業に近い位置、市場及び顧客に近い位置のどこに位置取るかは ベンチャーキャピタルの選択である。ただ、ベンチャー企業に近い位置に立った 場合にも、時価総額のつけ方など、利害関係者のコンフリクトが出る局面におい てベンチャーキャピタルは適正な時価総額をつけ、中立的な評価になるように配 慮していた。
また、ベンチャーキャピタルの関係性は、ベンチャー企業の発展段階によって 微妙に変えるべきだと考えていることが興味深い。
① シード段階では、ベンチャー企業(経営者)と極めて近い距離で動いて いた。その過程を経ることによって、ベンチャーキャピタリストと、経営陣 との間の信頼性が次第に醸成されていった。
② 会社が設立されて半年ほど経過し、第三者割当増資を実行するスタート アップ段階になると、それまでのベンチャー企業(経営者)寄りの位置づけ から、出資者との距離を近づけることにシフトさせた。具体的には、バリュ エーションを決定するに際して、ベンチャー企業(経営者)のニーズである 少しでも高い時価総額を取るわけでもなく、一方、出資者のニーズである少 しでも割安な時価総額を取るわけでもなく、あくまでもその時点での適正な 時価総額で双方を納得させることが重要であると考えた。
③増資が完了してからは、事業計画どおりの事業推進を行う段階となる。日々 の事業については、ベンチャー企業の経営者に任せているが、投資時に潜在 ユーザーとしてヒアリングに行った顧客のところに投資後も市場の動向や ベンチャー企業のサービスの満足度などを自ら聞きに行く。またベンチャー
企業の投資先や関係の深い大企業の中で、ベンチャー企業の顧客になりそう な企業にインタビューし、ベンチャー企業の紹介とともに、市場や潜在顧客 のニーズを汲み取ることに注力している。
④その後は、ベンチャーキャピタルは出資者、ベンチャー企業、市場及び顧客 の中立的な立場を保っている。
全体戦略の構想
VC 出資者
市場 顧客
ベンチャ ー企業
①
②
③
④
3.ケーススタディの結果、最終仮説「育成方法の中でも特に利害関係者との協創関係を 構築すれば日本でも高いIRRは達成できる」は、「育成方法の中でも出資者、ベン チャー企業、市場及び顧客との協創関係を構築すれば日本でも高いIRRは達成 できる。」と修正でき、その戦略的行動は、①投資システム全体の戦略構想、②革 新的プラットフォームの提供、③市場および顧客に対する付加価値創造支援活動、
④出資者およびベンチャー企業に対するイノベーション支援活動、⑤組織間学習 による知識創造の活性化の 5 つであると確認された。
全体戦略の構想
VC
組織間学習
革新的 プラットフォーム
フィードバック
出資者 イノベーション
支援
市場 顧客 付加価値創造支援
ベンチャ
イノベーション ー企業
支援
第7章 ベンチャーキャピタリストのケーススタディ ・・・・・・ 130 第1節 最終仮説の立案 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 130 第2節 ケーススタディの概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 135 第3節 ベンチャー企業と近い関係を構築するケース(1)・・・・・・・・ 137 第1項 沿革と事業内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 138
(1)沿革 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 138
(2)事業内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 139 第 2 項 経営陣 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 146 第 3 項 ベンチャーキャピタリスト 村口和孝の経歴 ・・・・・・・・・・・ 147 第4項 投資に至る経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 148 第5項 支援時の問題点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 149 第6項 関係性について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 150 第4節 ベンチャー企業と近い関係を構築するケース(2)・・・・・・・・・ 154 第1項 沿革と事業内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 155
(1)沿革 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 155
(2)事業内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 156 第2項 経営陣 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 158 第3項 ベンチャーキャピタリスト 赤浦徹の経歴 ・・・・・・・・・・・・ 159 第4項 投資するに至った経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 159 第5項 投資後の経営支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 161 第6項 関係性について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 162 第5節 3者の中立的関係のケース(1) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 165 第1項 沿革と事業内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 166
(1)沿革 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 166
(2)事業内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 167
第2項 経営陣 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 173
第3項 ベンチャーキャピタリスト 山口哲史の経歴 ・・・・・・・・・・ 173
第4項 投資するに至った経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 174
第5項 山口の投資の考え方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 176
第6項 投資後の関与 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 177
第7項 関係性について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 177 第6節 3者の中立的関係のケース(2) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 182 第1項 沿革と事業内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 183
(1) 沿革 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・183
(2) 事業内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 185 第2項 経営陣 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 190 第3項 ベンチャーキャピタリスト 仮屋園聡一の経歴 ・・・・・・・・ 191 第4項 投資に至る経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 192 第5項 投資後の問題点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 192 第6項 その解決策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 193 第7項 仮屋園のハンズオン手法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 194 第8項 関係性について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 195 第7節;3者の中立的関係のケース(3) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 198 第1項 沿革と事業内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 199
(1)沿革 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 199
(2)事業内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 200 (3) 海外展開 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・202 第2項 経営陣 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 205 第3項 ベンチャーキャピタリスト 関野正明の経歴 ・・・・・・・・・・ 206 第4項 経営アドバイスに至る経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 206 第5項 増資後の問題点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 208 第6項 関係性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 210 第8節 ケーススタディを基にした考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 213 第1項 2 つの関係性の作り方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 213
(1)ベンチャー企業と近い関係を構築するケース ・・・・・・・・・・・・ 213
(2)中立的関係を構築するケース ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 214
(3)当初の想定の確認 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 216
(4)最終仮説の修正 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 220
第7章 ベンチャーキャピタリストのケーススタディ
第1節 最終仮説の立案
第6章で、第二次仮説「投資手法の中でも育成方法を選択的に実行すれば日本でも高いI RRは達成できる」を最終仮説「育成方法の中でも特に利害関係者との協創関係を構築すれ ば日本でも高いIRRは達成できる」と修正した。これを、第7章では、具体的なベンチャ ーキャピタリストのケーススタディを通して分析してみたい。そのケーススタディを通し て、その行動特性を洗い出し、出資者及びベンチャー企業とベンチャーキャピタルとの「協 創関係の構築仮説」を構築していきたい。
図表7-1は、第 4 章の先行研究において検討した流通業における生産者、中間流通と しての卸売り企業、小売企業の関係における「協創関係」に関する先行研究(図表7-2)
を応用して作成した、出資者及びベンチャー企業とベンチャーキャピタルとの「協創関係の 構築仮説」である。
ここにおける協創とは、「協調した組織間関係に基づいて価値創造を目指す戦略構造」と 定義し、協調した組織間関係とは、「組織間の共通の目的・利益を達成するため、組織同士が 相互に不足する経営資源を補完する関係にある状況」を指している。
卸売企業の協創関係を出資者及びベンチャー企業とベンチャーキャピタルとの協創関係に 当てはめる場合に、以下のように修正する。
まず、ベンチャーキャピタルを取り巻く利害関係者として、出資者、ベンチャー企業、市 場及び顧客の3つとした。図表7-2の卸売企業の場合には、仕入先及び生産ネットワーク、
販売先及び販売ネットワーク、消費者または最終ユーザーの3つである。ベンチャーキャピ タルの関係の対象は、ベンチャー企業のつくる付加価値の対象相手であり、必ずしも最終ユ ーザーではない、という意味と、既存市場ではなく新規市場を創造する場合が多いというこ とを強調するために、卸売業の場合の「消費者または最終ユーザー」を「市場及び顧客」と した。
更に、先行研究である卸売業における「協創関係」では、①流通システム全体の戦略構想、
②革新的プラットフォームの提供、③最終顧客に対する需要創造活動、④取引先など関係す る組織のイノベーション支援、⑤組織間学習による知識創造の活性化、が戦略的行動が重要 であるとしている(図表7-2)。
これに対して、ベンチャーキャピタルにおいては、①ベンチャーキャピタル投資システム 全体の戦略構想、②革新的プラットフォームの提供、③市場および顧客に対する付加価値創 造支援活動、④出資者およびベンチャー企業に対するイノベーション支援活動、⑤組織間学 習による知識創造の活性化、の5つであると修正した。特に、卸売業における「最終顧客に 対する需要創造活動」については、ベンチャーキャピタルの場合には、最終顧客に対してベ
ンチャーキャピタルが直接活動を行うことはなく、ベンチャー企業が顧客に対して付加価値 を創造する活動を支援するという意味で「市場および顧客に対する付加価値創造支援活動」
とした。これによって、ベンチャーキャピタルが利害関係者である出資者、ベンチャー企業、
市場及び顧客のすべてに対して「支援活動」を行うべきであることを示していることになる。
また、出資者、ベンチャー企業、市場及び顧客の3つの利害関係者を結ぶ三角形のうち、
出資者と市場及び顧客との間を結ぶ線を点線としている。これは出資者がベンチャー企業の ために顧客開拓支援や提携支援など数々の協力をすることによって市場及び顧客の付加価値 向上に努めることは想定されるが、関係性は弱いものと考えられる理由からである。
図表7-1 ベンチャーキャピタルの協創仮説
全体戦略の構想
VC
組織間学習
革新的 プラットフォーム
フィードバック
出資者
イノベーション支援
市場 顧客
付加価値創造支援
ベンチャ
イノベーション
ー企業
支援
( 出 典 ) 筆 者 作 成
図表7-2 協創モデル~卸売企業の戦略行動分析のフレームワーク~
全体戦略の構想
消費者または 最終ユーザー
仕入先 及び生産ネッ トワーク
販売先 及び販売ネッ トワーク
需要創造活動
卸売企業 組織間学習
イノベーション 支援
イノベーション 支援 革新的
プラットフォーム
フィードバック
(出典)下村37、2004
「ベンチャーキャピタルの協創仮説」における 5 つの戦略的行動は具体的には以下のように 想定される。
① ベンチャーキャピタル投資システム全体の戦略構想について、具体的にはⅰ)ベンチ ャーキャピタル投資なのか、バイアウト投資なのかといった投資戦略、ⅱ)出資先、ベンチ ャー企業、市場及び顧客の 3 つの利害関係者の中で、どのような位置づけにベンチャーキャ ピタルが身を置くのか、などが想定される。ベンチャーキャピタルが出資者に近い位置に立 つこともあろうし、ベンチャー企業に近い位置に立つことも、市場及び顧客に近い位置に立 つことも選択できる。どのような関係を保つのか、というのも投資システム全体構想である。
② 革新的プラットフォームの提供、
ベンチャーキャピタル業界での革新的プラットフォームとしては、民法上の任意組合から 有限責任投資組合や有限責任事業組合(LLP)、海外のLP法に基づくファンド形式を活用 することによって、出資先、ベンチャー企業、市場及び顧客の 3 つの利害関係者とベンチャ ーキャピタルとの関係を形づくることが想定される。また、優先株の活用や、投資時に結ぶ
37下村博史「協創的企業間関係を基軸とする流通の形成に関する研究」早稲田大学大学院学位論文、2004 年、180 頁
株主間契約の規定において革新的な条項を入れ込むことによってベンチャーキャピタルの取 るべきリスクの度合い、出資先、ベンチャー企業、市場及び顧客の 3 つの利害関係者のリス クの負担の仕方を革新的に変えることなども想定できる。
③ 市場および顧客に対する付加価値創造支援活動、
出資者がベンチャー企業の顧客になったり、あるいはベンチャー企業が顧客に付加価値を つける活動をすることの協力(例えば顧客開拓など)を実施することなども想定される。ベ ンチャーキャピタルは、ベンチャー企業の活動を出資者に詳しく説明したり引き合わせたり するが、これも有効な付加価値創造支援活動であると考える。
また、市場及び顧客に対する付加価値創造活動は、本来、ベンチャー企業自身が行うもの であるが、ベンチャー企業は自分で設定した開発目標やマーケティング戦略を実行するのに 必死になるあまり、市場や顧客のニーズが変化していることに気づくのが遅くなりがちであ り、ベンチャーキャピタルがその修正の支援をすることが大きな役割である。その場合、ベ ンチャーキャピタルがベンチャー企業に市場及び顧客のニーズを適切につかみ、動的に対応 することが重要であることを強調しながらベンチャー企業の付加価値活動を支援することが 想定される。
④ 出資者およびベンチャー企業に対するイノベーション支援活動
出資者に対するベンチャーキャピタルのイノベーション支援活動とは、出資者の資産運用 において従来とはことなるリスク、リターンの金融商品としてのベンチャーキャピタル投資 の機会を提供することである。さらには、ベンチャー企業への何らかの支援をしたいという 個人の社会貢献活動において、その具体的な手法を提供することも想定される。更にはコー ポレートベンチャーキャピタルとして活動することで、出資者としての企業の新規事業の開 発においてベンチャーキャピタルを活用して新規技術や新市場へのアクセスプロセスを確保 するということも出資者のイノベーションとなることも想定される。
ベンチャー企業に対するベンチャーキャピタルのイノベーション支援活動としては、ベン チャー企業が技術またはビジネスモデルにおいて、何らかのイノベーションを起すことを支 援することである。具体的には、経営幹部候補者の採用、事業計画のまとめにおいてアドバ イス、製品やサービスの開発完成度を高める、マーケティングプランをまとめる、生産状態 などをモニタリングする、経営者の動機付けをするなどが想定される。
⑤ 組織間学習による知識創造の活性化における「組織間学習」とは、ⅰ)ある組織体が 持つ情報及び知識を用いて独自に知識形成を行う組織学習、ⅱ)各組織体が持つ情報や知識 の組織間に亘る双方向な移転、ⅲ)それらを受け入れた組織体が独自に組織学習をして新し
い知識を形成する、という一連のプロセスと定義する38。組織間学習は組織間に相互作用 を生じさせる。組織と組織との間で知識が連鎖して、相互の組織に知識が浸透するこ とを意味している。
具体的には、出資者とベンチャーキャピタルとの間の組織間学習としては、継続的 にベンチャーキャピタルに出資することが如何に出資者の投資パフォーマンスを向上 させ、それが上場株投資よりも有利な点が多いことや、投資して数年は「J カーブ効果」
で投資評価減が発生すること、ベンチャーキャピタルのなかでもパフォーマンスに格 差があり、そのなかでも上位ベンチャーキャピタルに投資をしないとパフォーマンス はよくないこと、出資者の中でも個人、事業会社、金融機関、年金資金・財団ごとに 期待リターンに対する思いが具体的に違うこと、などが想定できる。
また、ベンチャーキャピタルとベンチャー企業との間の組織間学習としては、ベンチャー キャピタリストから経営者および経営幹部に対する各種の知識の提供、知識の流通、知識の 解釈、知識の記憶というプロセスを経てベンチャー企業の組織に根付いてゆく。個人学習で 得られた知識は、組織構成員によって広く共有・評価・統合されるととなり、個人の知識が 組織の知識となっていく。これはベンチャー企業の企業理念や価値観、戦略の立て方や取締 役会や経営会議の議論の進め方、PDCA方式の徹底や顧客志向経営の意味など、経営陣や 構成員が変更になっても組織内部に蓄積された学習成果を継承してベンチャー企業の付加価 値活動の根幹に根付いてゆくことになる。一方、ベンチャーキャピタルもベンチャー企業の 業種、成長ステージ、経営者及び経営チームの性格、能力、技術優位性のレベル、マーケッ トへの切り込み方、企業理念、企業カルチャーの状況によって、その後の成長スピードがど のように違うかという経験を得、また、どのようなタイミングでどのようなアドバイスをす ればどのような結果がでてくるか、という得難い学習をすることができる。企業は人間の集 まりで出来上がっており、また仕入先や顧客などの反応もあるため、ベンチャーキャピタル は非常に動態的な育成をする必要がある。ベンチャーキャピタルはベンチャー企業と係わる ことで学習し、その結果をベンチャーキャピタル内部で共有し、フィードバックして次回の 投資時の全体戦略の構想を構築するときに生かすものとなる。
ベンチャーキャピタルと市場及び顧客との間の組織間学習としては、ベンチャー企業が如 何に市場及び顧客のニーズに従った活動をすることが会社の成長および成功にとって重要で あること、特にベンチャー企業は自分で設定した開発目標やマーケティング戦略を実行する のに必死になるあまり、市場や顧客のニーズが変化していることに気づくのが遅くなるとい う経験値が重要である。ベンチャー企業が行う市場及び顧客に対する付加価値活動を支援す るためにどのようにベンチャーキャピタルが市場及び顧客のニーズを直接的につかみ取り、
それをベンチャー企業に伝えてゆくかという学習をすることが想定される。
38松行彬子「戦略的提携における組織間学習と企業変革」『経営情報学会誌』第 8 巻第 2 号、pp61-77、
経営情報学会、1999 年
また、この章では、ベンチャーキャピタリストをベンチャーキャピタルの具体的な活動 主体として位置づけ、出資者、ベンチャー企業、市場及び顧客との関係性の検証においては 同類として扱っている。もちろん、ベンチャーキャピタルとベンチャーキャピタルとの関係 も必ずしも同一でなく、むしろ日本のベンチャーキャピタルにおいては、その方向性がずれ ていることが多いことも十分、認識している。しかし、この章では、「育成方法の中でも特に 利害関係者との協創関係を構築すれば日本でも高いIRRは構築できる」という最終仮説を 確認することを目的にしており、ベンチャーキャピタルとベンチャーキャピタリストの方向 性がずれていないと考えられるケースを取り上げることで、ベンチャーキャピタルを取り巻 く利害関係者との関係性に焦点を当てた議論をしてゆくこととする。
第2節 ケーススタディの概要
第7章では、この様に導出した最終仮設及び5つの戦略行動の想定を具体的なケーススタ ディを用いて確認する。ベンチャー企業に対してベンチャーキャピタリストがどのような局 面でどのように利害関係者との協創関係を構築していったか、最終仮説および5つの戦略的 行動の想定がどのようになされているかを確認したい。それにはベンチャーキャピタリスト の具体的な行動を捉える必要があるが、今回はそのうちで日本を代表するベンチャーキ ャピタリストに複数回・長時間にわたるインタビューを行うことでその仮説を確認す ることにした。従って、ケーススタディの対象としたベンチャーキャピタリストとし ては、①ベンチャーキャピタリストとして行動し、その内容をディスクローズするこ とが出来る人、つまり会社の方針に従っているだけでなく、独自の投資理念及び投資 戦略を持っている人、②単に資金提供だけでなく、育成など投資先のベンチャー企業 に積極的に係わっている人、③投資企業のうち、株式公開など成果の出た企業と失敗 した企業の両方の投資経験を持ち、その比較が出来る人、④ベンチャー企業の経営者 からのコメントが聞くことが出来、しかもそのベンチャーキャピタリストの貢献が大 きいものと予め推定できる人、などの条件を設定して選抜した。ベンチャーキャピタ リストの年齢や投資業種、所属するベンチャーキャピタルの属性については制限を設 けなかった。
その結果、日本にはベンチャーキャピタル会社は約200社程度、ベンチャーキャ ピタリストは1000名程度~2000名いると推定されるが、上記4条件から以下 の5名の代表的ベンチャーキャピタリストを選抜した。そしてインタビューからそれ ぞれのベンチャーキャピタリストが利害関係者との関係をどのように構築していった のかを分析した。その結果、ベンチャー企業と近い関係を構築するケースと、中立的 関係を構築するケースの2つに分けられた。以下、それぞれのケースについて詳説す
る。
第3節 ベンチャー企業と近い関係を構築するケース(1)
氏名・所属 村口和考 日本テクノロジーベンチャーパートナーズ パート ナー
生年 1958 年 11 月(47 歳)
主 な 担 当 ベ ン チ ャ ー 企 業
ディー・エヌ・エー、ノース、インフォテリア
主な経歴 1984 年㈱ジャフコ 入社
1998 年㈱日本テクノロジーベンチャーパートナーズを設立し、
同社代表取締役に就任 ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル
での役員の有無
役員
投資決定委員会の参加 参加 ファンドへの個人出資 出資あり 成功報酬の分配 分配あり
会社名 株式会社ディー・ エヌ・エー
所在地 東京都渋谷区笹塚2-1-6 笹塚センタービル 設立 1999年3月 4日
役員 代表取締役社長 南場智子
取締役 川田尚吾 春田真 小川善美 近藤幸直 監査役 伊藤昭三 村口和孝 渡辺武経
従業員 152名
事業内容 ネットオークション『ビッダーズ』を中核に電子商取引事業を展開。オー クション、ショッピングが拡大。分社した携帯オークションが大きく伸び る
沿革 1999年 3月 有限会社ディー・エヌ・エイ設立 1999年 8月 株式会社ディー・エヌ・エイ設立
1999年 11 月 オークションサイト「ビッダーズ」のサービスを開始 2005年2月 東京証券取引所マザーズ上場
時価総額 1,427億円(2005年12月 26日)
(単独)(百万円、円) 2003/3 2004/3 2005/3 2006/3(予) 売上高 965 1,563 2,870 4,900 経常利益 -213 227 443 1,120 当期利益 -277 203 439 1,120 1株あたり利益 -2,100 1,535 3,249 2,471 1 株あたり純資産 5,267 6,812 30,931
株主資本比率 75.6% 65.8% 84.3%
ROA -27.33% 17.71% 12.74%
ROE -33.23% 25.39% 15.86%
(業績予想は会社四季報による)
図表7-3 ディー・エヌ・エーの資本政策
単位;円、千円、倍
増資単価 時価総額 売上高 当期利益 純資産 PSR(倍)PBR(倍) VCラウンド
1999/3/4 会社設立 50,000
1999/11/ 第三者割当増資 1,500,000 5,220,000 0 0 N.A 第1回NTVP
2000/3/23 第三者割当増資 4,000,000 15,220,000 568 △ 170,094 699,905 26,796 21.7 第2回NTVP 2000/8/27 分割(1:8) 500,000 15,220,000 613 △ 59,656 1,940,248
2000/9/14 有償株主割当 100
2001/3/30 第三者割当増資 100,000 12,743,600 175,584 △ 1,010,267 1,509,110 73 8.4 第3回NTVP 2001/11/30 第三者割当増資 100,000 13,081,600 175,584 △ 1,010,267 1,509,110 75 8.7
2005/2/17 IPO 682,000 90,024,000 2,870,000 439,000 904,000 31.4 99.6 2005/8/1 840,000 126,000,000 2,870,000 439,000 4,649,000 43.9 27.1
(注)ワラント、ストックオプションの発行、増加がこの他にある
(出典)筆者作成
第1項 沿革と事業内容
(1)沿革
当社は創業者である南部智子がECビジネスの将来性に注目し、インターネット上 のオークションサイトの企画・運営を行うことを目的として、1999 年3月に東京都世 田谷区下馬四丁目 20 番6号に有限会社ディー・エヌ・エーを設立した。1999 年8月に は株式会社に組織変更し、株式会社ディー・エヌ・エーとなっている。南部がマッキ ンゼー・アンド・カンパニー・インク ジャパンにいた頃から人脈があったことから、
会社設立時からソニーとリクルートが出資し、提携戦略を進めることで事業推進を図 っていることが特徴である。
1999 年 11 月にはオークションサイト「ビッダーズ」のサービスを開始した。
2000 年7月には提携サイトに対し電子商取引(以下「EC」)のプラットフォームを
提供する「ビッダーズECプラットフォーム」のサービスを開始、2004 年3月には株 式会社インデックスと提携し、携帯電話専用オークションサイト「モバオク」のサー ビスを開始するなど、順調に会員数、取扱高を伸ばしている。
2005 年 2 月 17 日に東京証券取引所マザーズに株式公開した。
(2)事業内容
当社は、インターネットを活用した消費者向け電子商取引(以下「EC」)の分野を 中心に事業を展開している。当社の事業は、①パソコンでアクセスするオークション 及びショッピングサイト「ビッダーズ」の運営を中心とした「Webコマース事業」
並びに②携帯電話専用オークションサイト「モバオク」等、携帯電話でアクセスする
「モバイル事業」③EC関連のソリューションサービスの提供を行う「その他の事業」
から構成されている。そのうち「Webコマース事業」はの当社設立以来の事業であ り、それ以外の「その他の事業」は第6期から開始した新規事業である。(図表7-4)
図表7-4 ディー・エヌ・エーの事業内容
事業区分 主要サイト 事業内容
(マッチングサービス)
売 り 手 と 買 い 手 の マ ッ チ ン グ サ ービスの提供
(会員制EC支援サービス)
法人(注2)に対する月会費制の EC支援サービスの提供
Webコマース事業 ・オークション&ショッピングサイト
「ビッダーズ」
・ 携 帯電 話 向 け 総 合シ ョ ッ ピ ン グサ イ ト
「ポケットビッダーズ」(注1)
・旅行予約総合サイト 「ビッダーズトラベル」
・リサイクル総合情報サイト
「おいくら」
(広告サービス)
広 告 掲 載 及 び メ ー ル 広 告 配 信 サ ービスの提供
モ バ イ ル サ イ トの運営
・携帯電話専用オークションサイト
「モバオク」
・ 携 帯電 話 専 用 ア フィ リ エ イ ト ネッ ト ワーク(注3)
「ポケットアフィリエイト」
モ バ イ ル サ イ ト の 運 営 及 び 広 告 サ ー ビスの提供
そ の 他 の 事 業
ソ リ ュ ー シ ョ ン
サービス
―
E C 関 連 の ソ リ ュ ー シ ョ ン サ ー ビ ス の提供
(注)1.「ポケットビッダーズ」は携帯電話向けのサイトだが、商品データベースを「ビッダーズ」と 共有し、 同一 のユーザ ID で利用で きる など、パ ソコ ンからア クセ スする「 ビッ ダーズ」 と連 動したサ ービスであるため、「Webコマース事業」に分類している。
2.個人事業主を含んでいる。
3.アフィリエイトとは、Webサイトやメールマガジンの管理者が広告主のサイトへのリンクを貼り、
そのWe bサ イト等を 訪れ た人がリ ンク を経由し て広 告主のサ イト で商品の 購入 等を行っ た場 合に、W ebサイト等の管理者に報酬が支払われる仕組みのサービスである。
(出典)有価証券届出書
① Webコマース事業
ⅰ)マッチングサービス
当社は、インターネット上でオークション及びショッピングサイト「ビッダーズ」
を運営している。「ビッダーズ」は、個人間または法人と個人の間で売買が行われるW eb上のマーケットである。当社は売買取引の当事者とはならず、マーケットの運営 者として売買の場を提供し、売買が成立した場合に利用料を徴収している。売買の方 法としては、①入札により価格を競り上げていく競売方式、②通常の固定価格による 販売方式、③購入希望者数が多いほど価格が下がる共同購入方式の3種類がある。サ イトの運営に当たっては、安全性の確保に重点を置き、偽ブランド品等の違法な商品 の出品及び詐欺行為等の違法行為が行われないように、出品物の審査や取引の監視を
行うとともに、メールによるカスタマーサポートを行っている。また、盗難品の売買 防止措置等に関し、東京都公安委員会の審査を受け、古物営業法に基づく認定を平成 15 年 10 月に受けている。
当社の属するオークションサイト市場の競合会社には、Yahoo オークション、楽天フ リマ・楽天スーパーオークション、WANTED、ぐるぐるオークション、Give You、アイ オークションネット、ジャスニコなどがある。世界 No1 オークションサイトとして有 名な米国の eBay は、一時期、日本へも進出し、サービスを行なったが、今では既に撤 退し日本での活動は現在行っていない。
図表7-5は、2006 年 1 月 26 日から 2 月 4 日までの10日間の出品数比較をしたも のである。
楽天フリマ・楽天スーパーオークションの数字が不明であるが、ほぼビッターズと 同数であると推定される。従ってオークションサイト市場は Yahoo オークションが約 シェア 70%、楽天フリマ・楽天スーパーオークションが 14%、当社が 14%という 3 社 の寡占状態になってきたものと推察される。
図表7-5 オークションサイト比較 (2006/1/26 から 2/4 まで の10日間)
出品数 推定シェア
Yahoo オークション 9,044,901 69%
ビッターズ 1,882,274 14%
楽天フリマ 不明 14%
WANTED 124,683 1%
ぐるぐるオークショ
ン 98,316 1%
Give You 1,899 0%
アイオークションネ
ット 1,899 0%
ジャスニコ 589 0%
合計 11,154,561 100%
(出典)オークション統計ページhttp://www.aucfan.com/
また、当社は「ビッダーズ」の運営に加えて、「ビッダーズ」で構築したオークショ ンシステムのプラットフォームを、マイクロソフト株式会社が運営する「MSN」やソニ
ーコミュニケーションネットワーク株式会社が運営する「So-net」等、日本国内の主 要なポータル(玄関)サイト及びインターネットサービスプロバイダーが運営するサ イトに対し提供している。2004 年 12 月末現在、当社はこの「ビッダーズECプラット フォーム」のサービスを 33 サイトに対して提供し、運営している。商品データベース の共有により、どのサイトから出品された商品でも、すべてのサイトから入札できる 仕組みになっているため、「ビッダーズ」へのアクセス数が当社単独の場合に比べて増 加している。
更に 2004 年6月からは、携帯電話向け総合ショッピングサイト「ポケットビッダー ズ」のサービスを開始し、携帯電話からも「ビッダーズ」の商品を購入できるように なった。ユーザIDや商品データベースを「ビッダーズ」と共有するなど、パソコン でアクセスする「ビッダーズ」と連動したサービスになっているが、携帯電話のみで 会員登録及び商品購入を完結することも可能である。
また、当社はリサイクル総合情報サイト「おいくら」の企画・運営を行っている。
2004 年 12 月末現在、「おいくら」には 2,672 店のリサイクルショップや質屋が加盟し ており、ユーザは自宅近隣の加盟店を検索したり、同時に複数の加盟店に対し不用品 買い取りの見積依頼を出すことができる。「おいくら」は「ビッダーズ」にもコンテン ツの一つとして組み込まれており、不用品を処分したいユーザは、ニーズによって「ビ ッダーズ」のオークションサービスと「おいくら」の不用品買取サービスを使い分け ることが可能となっている。
図表7-6 ディー・エヌ・エー主要指標
2003.3 2004.3 2005.3 2006.1
総会員数 万人 163 233 309 393
総取扱高 億円 112 146 398
( 出 典 ) 筆 者 作 成
2006 年 1 月末現在、以上のサービスを含む「ビッダーズ」の会員数は393万人、
月末出品数は189万品となっており、順調に伸びている(図表7-6)。会員数は3 年前の 2003 年 3 月末の約 2、?倍に増えている。
ⅱ)会員制EC支援サービス
当社は、「ビッダーズ」で商品を販売している法人(個人事業主を含む)のうち、月 会費制の会員組織「クラブビッダーズ」に参加している会員に対し、EC支援サービ スを提供している。「クラブビッダーズ」の会員は、「ビッダーズ」が提供するシステ ムにより、販売機能、受注・顧客管理機能、広告出稿機能、ダイレクトメール配信機
能等を利用することができるほか、当社の専任担当者により販売方法等に関するアド バイザリーサービスを受けることができる。2004 年 12 月末現在、クラブビッダーズ会 員数は 1,889 社となっている。
また、2004 年5月からは、モール連動型インターネットショップ構築サービス「ビ ッダーズコマースエンジン」のサービスも導入した。当サービスを利用してインター ネットショップを開設すると、自社サイトを構築すると同時に「ビッダーズ」及び「ビ ッダーズECプラットフォーム」の提携サイト並びに「ポケットビッダーズ」にも自 動的に出店できる仕組みになっている。これにより、インターネットショップは集客 力の向上が期待できるとともに、「クラブビッダーズ」の各機能を自社サイトでも利用 することが可能である。商品データベースの共有により複数のインターネットショッ プを一元的に管理し、容易に運営できるようになっている。
ⅲ)広告サービス
当社が運営する「ビッダーズ」等のサイト上へのバナー広告及びテキスト広告の掲 載並びにユーザ宛のメール広告配信サービスを行っている。当サービスでは「クラブ ビッダーズ」や「ビッダーズコマースエンジン」の会員のほか、外部の一般企業から も広告の出稿を受けている。
また、単なる広告枠の販売にとどまらず、より付加価値の高いサービスとして、ユ ーザに対するアンケート調査や広告主の運営するサービスへの顧客誘導を組み合わせ た複合サービスの提供も行っている。
②モバイル事業
当社は、2004 年3月より株式会社インデックスとの共同事業として携帯電話専用オ ークションサイト「モバオク」を運営している。当サイトは、個人間で競売を行う場 を提供しており、利用料等と広告収入により運営している。「モバオク」はECサイト の運営ノウハウを「ビッダーズ」と共有する一方、パソコンでサービスを提供する「ビ ッダーズ」とはシステムを完全に分離することにより携帯電話向けに特化したサービ スを提供している。会員登録や入札等、オークションに参加するためのすべての手続 きを携帯電話で完結できることが特徴で、出品もカメラ付携帯電話で行うことが可能 である。携帯電話で操作しやすいように複雑な機能は省略し、使いやすさを重視した サイト構築が他のオークションとの差別化である。主なサービス利用者は、10 代後半 から 20 代前半の若い女性が中心となっている。。2005 年1月からは、KDDI株式会 社の携帯電話によるインターネット接続サービス「EZWeb」上のモバイルオーク ションサイト「auオークション」に対し、「モバオク」で構築したオークションシス テム のプ ラ ット フォ ー ムを 提供 し てい る。 プ ラッ トフ ォ ーム の共 有 によ り、「 モバオ
ク」会員と「auオークション」会員は相互に取引することが可能となっていること も他のオークションとの差別化となっている。
この様は活動の結果 2006 年 1 月末現在、会員数は 54万人、商品の月末出品数は 194 万品となっている。
また、2004 年7月からは、携帯電話専用アフィリエイトネットワーク「ポケットア フィリエイト」のサービスを開始している。携帯電話のホームページやメールマガジ ン運営者が、当サービスで紹介している広告を掲載し、これを経由して会員登録や商 品購入等、あらかじめ定めた行為が行われた場合、成功報酬が支払われる仕組みとな っている。
③その他事業(ソリューションサービス)
当社は、大企業及び中堅企業を対象に、EC関連のソリューションサービスを提供 している。当社は、競合他社との競争の中で「ビッダーズ」「モバオク」等、パソコン 及び携帯電話を利用したECサイトを立ち上げ、育成、強化し、それらのサービスを 支えるシステムもすべて自社で内製してきた。ソリューションサービスは、そのよう な経験を通じて蓄積してきたサイト構築、集客、広告、競合対策等のノウハウを活用 することによって、他社のEC事業を支援するサービスである。
このうち「eコマース支援サービス」としては、EC戦略の立案支援から、集客力 や購入率の向上、ランニングコストの低減等の個別サイトの問題解決まで、クライア ント企業のニーズに応じたサービスの提供を行っている。Webコマース事業でサー ビスを提供している「ビッダーズECプラットフォーム」や「ビッダーズコマースエ ンジン」を利用したECサイトの構築支援も行っている。
以下の関係を示すと図表7-7 のようになる。
図表7-7 ディー・エヌ・エーの業務フロー
(※1) 非連結子会社である株式会社ディー・スタイルを含んでいる。
(※2) 個人事業主を含んでいる。
(※3) 「ビッダーズECプラットフォーム」の提携サイトに、その他の関係会社であるソニーコミュニ ケーションネットワーク株式会社が運営する「So-net(ソネット)」が含まれている。
(※4) モバイルサイトのうち携帯電話専用オークションサイト「モバオク」は、その他の関係会社であ る株式会社インデックスとの共同事業である。
(出典)有価証券届出書
図表7-8 には、2005 年第三四半期の売上高内訳を示している。①のWEBコマ ース事業が 724 百万円と全体の 41.3%を占めているが、②モバイル事業が 816 百万円と 全体の 46.6%を占めるまでに急成長している。2005 年第三四半期では前年同期比 686%
と高い成長率を示している。規模の利益を享受し、経常利益も 2004 年3月期から黒字 化して、2006 年 3 月期の経常利益は 1120 百万円が予想される。ROE(2005 年 3 月期)
も 15.8%と高水準である。
図表7-8 2005 年度第三四半期(2005 年9月から 12 月期)
売上高(百万円) 構成比(%) 前年同期比(%)
①WEBコマース 724 41.3% 147%
②モバイル 816 46.6% 686%
③ソリューション 210 12.0% 116%
合計 1751 100.0% 221%
( 出 典 ) 筆 者 作 成
第 2項 経営陣
2005 年 2 月の株式公開時の取締役は以下の通りである。
①南 場 智 子;代表取締役社長(1962 年 4 月生)
1986 年 4 月マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク ジャパン入社、1990 年 6 月ハーバード大学経営大学院修士号取得、1996 年 12 月マッキンゼー・アンド・カンパ ニー・インク ジャパン パートナーに就任、1999 年 3 月 有限会社ディー・エヌ・エー 設立、取締役就任、1999 年 8 月 株式会社ディー・エヌ・エーに組織変更、代表取締役 就任。
②川 田 尚 吾;取締役サービス開発部長(1968 年 9 月生)
1996 年 4 月 マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク ジャパン入社、1999 年 3 月に有限会社ディー・エヌ・エー入社、平成 11 年8月取締役就任。
③春 田 真;取締役総合企画部長(1969 年1月 5 日生)
1992 年 4 月株式会社住友銀行(現 株式会社三井住友銀行)入行、2000 年 2 月 当社入社、2000 年 9 月、当社取締役総合企画部長(現任)。
このほか、株主代表として以下の 2 名が非常勤取締役に就任している。
④吉田 憲一郎;取締役、ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社執行役員 (1959 年 10 月生)
⑤小 川 善 美;取締役、株式会社インデックス社長(1965 年 11 月生)
第 3項 ベンチャーキャピタリスト 村口和孝の経歴
村口は 1984 年慶応大学経済学部を卒業後、在学中よりベンチャーキャピタリスト を志しジャフコに入社した。1987 年に子会社であった北海道ジャフコに出向した。当 時の北海道ジャフコは、ジャフコと北海道銀行の合弁会社であり、また本社とは距離 が離れていたため、比較的自由に投資活動ができたことと、2~3年での転勤が多か ったジャフコの中では7年という長期間にわたり投資活動ができる環境であった。第 一臨床検査センター(94 年 3 月店頭公開)、松本建工(95 年 12 月店頭公開)、ジャパン ケアサービス(97 年 10 月店頭公開)等を担当した。1994 年には東京投資本部に転勤、
パルテック(98 年 7 月店頭公開)等を担当した。
1992 年には当時、実質売上が15百万円、実質35百万円赤字の介護サービスのベ ンチャーであった「ジャパンケアサービス」に投資した。ジャフコ社内での投資に対 する批判の中、当時はきわめて珍しかった額面の4倍の価格で総額1億円という投資 を強行した。
入社してから 14 年後にイスラエルを訪問し「ベンチャーキャピタルは組織ではない」
と強く思い、1998 年ジャフコを退社し。1998 年 11 月、日本初の投資事業有限責任組 合(NTVPi-1 号)を設立した。同時に株式会社日本テクノロジーベンチャーパートナ ーズ(NTVP)を設立し、同社代表取締役に就任している。
NTVPの 4 文字は 4 つのコンセプトが掛け合わせたものである。
1)日本からベンチャーを生み出す。
2)テクノロジー型ベンチャーで世界に出る。
3)スタートアップ段階から投資する。
4)会社ではなくパートナーシップでやる。
村口は数字よりも数字に表われないもの、特に「メンタリティ」を極めて重視する 投資手法をとる。
ベンチャービジネスに投資する際の基準で一番大事なのは、経営者をよく観察する 事であると考えている。
例えば「良い経営者としての指標には、根性・未来に対する真面目さ・金銭感覚、
この 3 つがある。根性は、人をまとめてあるプロジェクトを導いていけるような、仕 事をやっていくための力である。シリコンバレーではアントレプレナーシップとか言 われているが、日本語に当てはめて一番近いと思われるのは根性である。2 つ目の未来 に対する真面目さとは、胸に手を当てて、来るべき将来に対して真面目に取り組んで いると言えるかという事である。ベンチャービジネスの経営者に必要なのは勇気とい う人がいるが、多くの経営者は臆病である。未来に起こる事・実現したい事を考え、
その上で今何をすべきか考えている経営者には信頼がおける。最後の金銭感覚が必要 な理由は、容易に想像がつくと思う。」39と発言している。
また、「ベンチャーキャピタリストには「大和魂」という言葉に集約される「思い詰 めた」「根性を振り絞る」ようなメンタリティーが求められている。息を詰めた状態で 1000 日間勝負する。そのときには数億円規模で思い切って「先行投資」をしなければ ならない。なぜ、苦しい中で必死に頑張らなければならないのか。それは「お金」の ためだけではない、心因性のものに由来する。ベンチャーキャピタルをしていて、こ の辺の勘が悪い人はベンチャーキャピタルとしての才能がないと思う。」とも述べてい る。 これらの言動に代表されるように、村口は非常に熱く信念を語り、そのことでベ ンチャー経営者を鼓舞するメンターとしての役割が大きい。
NTVPは堀場製作所の掘場雅夫会長や店頭企業のオーナーなどから資金を集め、
現在までに4つのファンド(運用額は 2005 年末段階で合計で約 80 億円)を設立して いる。NTVPは日本では珍しく個人の責任で資金を集め、ファンドを運用している。
「ベンチャー投資はベンチャーキャピタリストが責任を持ち、個人の判断で行うべき だ」との考えからである。出資者は村口の投資手法に賛同している個人が中心である ため、スタートアップ段階の企業 1 社に平均 3 億円から5億円という規模の資金を投 じ、村口個人が取締役としてベンチャー企業の経営に深く係わっていく投資スタイル を続けられるものと思われる。
第4項 投資に至る経緯
村口と社長の南場智子とは 1999 年 7 月頃に共通の知人を通して紹介された。当時、
南場は 1999 年 3 月にインターネット上のオークションサイトの企画・運営会社として 有限会社ディー・エヌ・エーを設立したばかりであった。南場はマッキンゼー・アン ド・カンパニー・インク ジャパンの経験でインターネット上のオークションサイト
39 carinavi( http://www.carinavi.org/career/100/)インタビューより。一部修正。
の将来性を感じてビジネスを立ち上げることを決意していた。事業モデルの立て方は よくわかっていたが、実際の会社組織の立て上げ方や資本政策に関するアドバイスを してくれる人を探していたのである。
村口は最初、今のままで事業化は難しいと思い、一度支援を断っているが、南場の 再度の依頼に応じてマーケットリサーチを独自で実施し、その手ごたえから出資する ことを決めた。当時は南場社長のほかには、マッキンゼー・アンド・カンパニー・イ ンク ジャパンの後輩である川田尚吾取締役(技術開発を担当していた)と、マーケ ティングを担当する渡辺雅之、サーバー周りの技術者であった茂岩祐樹の 4 人が働い ているだけの状態であった。ただ、海外での eBay の成功や日本でのインターネット 市場の拡大の予想、及び会社設立当初から株式会社リクルートおよびソニーとの関係 ができていたことを高く評価して村口は支援することに決めた。2001 年 8 月からは監 査役にも就任している。
1999 年 11 月及び 2000 年 3 月の合計でNTVPは約4億円の第三者割当増資を他社 に先駆けて引き受けた。1999 年 11 月時点で増資後時価総額を52億円、2000 年 3 月 時点では増資後時価総額を152億円と評価する大胆なものであった。当時、オーク ションサイト「ビッターズ」は 1999 年 11 月のサービス開始からまもなく、2000 年 2 月期決算でも売上高は 56 万円、税引後利益は 1.7 億円の赤字という状況であった。
NTVPは 2001 年3月の第三者割当増資にも 3 回目の資金提供として 4 億円を投資 している。合計として当社1社に約8億円の投資額を実施することとなった。
結果としてディー・エヌ・エーは 2000 年 2 月に時価総額約900億円で株式公開し、
ロックアップ契約が解けた 2005 年 8 月には 1260 億円の時価総額をつけるに至った。
NTVPは投資額の10倍以上のキャピタルゲイン、IRRで年56%程度をあげる こととなった。
第5項 支援時の問題点
1999 年 11 月からインターネット上のオークションサイトをオープンする予定の 1 ヶ月前の10月になってもシステム開発が進んでいないことが発覚した。テスト版を 試作したときにはスムーズに動いたので、誰もがシステム開発を依頼したベンダー担 当者の話を信じ込んでいた。毎日朝から夜までシステムの仕様について会議を行い、
要件定義書を変更しベンダーに送っていたが、実際の開発は進んでいなかった。
会社中がパニックになる中、南場は村口に電話して事情を説明したところ、村口は 朝一番で会社に来て対応に駈けずり回った。南場は当時のことを、「村口さんが天才エ ンジニアという人に電話をかけ始めました。その日は確か土曜日でしたが、朝の9時 くらいにたたき起こされても怒ることもなく、村口さんに呼ばれると皆来てくれる。
不思議だなと思いました」と述べている40。
会社にやってきたエンジニアのなかで、村口の投資先であるインフォテリアの北原 淑行は用件定義書全てに目を通し、2 つの条件が揃えばシステムは稼動できると診断し た。
第一は、システム開発の責任者を今すぐ外して、ゼロから自分がリーダーシップを とること、第二は 1 ヵ月後のオークションサイトのオープン時には使える機能を絞り 込み、当初計画していた機能が使えなくなることを許可することである。具体的には、
重要な出品機能をあきらめ、落札機能のみでスタートすることになった。本来、ネッ トオークションは出品があり、入札があり、落札されて始めて成立する。そのうちユ ーザーがオークションサイトのオープン時に使えるのは単なる落札機能だけで、出品 登録は社員が総出でデーターベースへの登録作業をし、入札もこちらで一部作業する ことになる状態を意味していた。
これに対して南場はこの 2 つの条件を受け入れ、インフォテリアおよび村口のアド バイスにかけることを決断した。
その後、村口は丸2日会社に泊まりこみ、会社の危機を乗り越えるところまでイン フォテリアの北原淑行と作業をした。村口は会社を出てすぐに以下のようなメールを 南場に送っている。「48時間経ちました。ディー・エヌ・エーの経営陣は徐々に落ち 着きを取り戻し、正しい意思決定をし始めています。この事件は起こるより起らなか った方が良かったと思います。ただ起こってしまいました。後はこの事件をディー・
エヌ・エーの経営陣がどう乗り越えていくかがリクルートやソニーに対し自立した経 営陣として認められるかの大きな試金石である。投資家はそうゆう目で見ていること を片時も忘れず対処してください。4」ディー・エヌ・エーの役員、社員はこのメール を皆で読んだ。
南 場と 一 緒に 仕事 を 始め た取 締 役の 川田 尚 吾は、「誰 かの 責任 と する こと で 投資家 を引き止められるのであれば自分を切ってほしい」と訴え落ち込んでいたが、村口か らのメールを読んで「ちょっとした山じゃないが、これを乗り越えることはドラマチ ックになるんじゃないか」と勇気づいたと言っている。
その後、インターネット上のオークションサイトも無事に 1999 年 11 月にスタート することができ、またその後、システムも拡充、順調に会員数は伸びるにいたった。
第6項 関係性について
次に村口と出資者、ベンチャー企業、及び市場・顧客との関係性についてまとめて みたい。
40 企業家倶楽部「ベンチャーキャピタリストがゆく」2006年1月号、79~81
① ベンチャーキャピタル投資システム全体の戦略構想
村口は 1988 年 11 月、日本で初めての投資事業有限責任組合(NTVPi-1 号)を設立 登記している。しかもベンチャー企業の育成という社会的意義に賛同してくれた堀場 製作所の掘場雅夫会長や店頭企業のオーナーなどから日本では珍しく個人の責任で資 金を集め、村口個人が業務執行組合員となりファンドを運用している。「ベンチャー 投資はベンチャーキャピタリストが責任を持ち、個人の判断で行うべきだ」との考え からである。そのため、村口に出資者は投資戦略や投資のパフォーマンスなど「出資 者のイノベーション」の側面をほとんど気にすることなく、思い切ってベンチャー企 業側に入り込んで育成することが出来るという投資システム全体の戦略構想を作り上 げた。機関投資家など「出資者のイノベーション」の側面を考えなければならない出 資者からは資金を集めず短期的な「出資者のイノベーション」をあまり考えなくても 良い出資者だけから資金を集めている。また、市場・顧客に対する付加価値創造支援 活動も、会社経営者が行うべきものとして村口はやっていない。図表7-9に示した ように、村口は出資者、ベンチャー企業、市場・顧客の間の三角形の中心に位置する のではなく、ベンチャー企業の中に大きく食い込んた立場として振舞うことが許され るように全体の戦略構想を組み立てている。
② 革新的プラットフォームの提供
村口はディー・エヌ・エーの投資に際しては、当時、優先株などの制度が日本では 整備されていなかったこともあって、特に新しいプラットフォームを提供していない。
③ 市場および顧客に対する付加価値創造支援活動
市場および顧客に対する活動は、経営者・経営チームが行うものであり、ベンチャ ーキャピタリストが支援するものではない、と村口は突き放している。ただ、ディー・
エヌ・エーに投資するに際しては、市場および顧客とベンチャー企業との距離が密接 なものであるか、マーケティング能力が高い経営者・経営チームであるかについて、
時間をかけてじっくり検討している。例えば、投資前にはNTVPの社員を半年ほど 出向に近い形で送り込み、その可能性を吟味している。つまり、村口自身は市場およ び顧客に対する付加価値創造支援活動を行っていないが、出資する段階で経営者・経 営チームに高いマーケティング能力がある企業にのみ、投資することでその機能を補 完しているものと思われる。
④ 出資者およびベンチャー企業に対するイノベーション支援活動
ベンチャー企業の支援をしたい個人投資家が具体的に支援できる投資の仕組みを提 供した側面はあるが、村口は出資者に対するイノベーションといえるほどのものは行 っていない。
ベンチャー企業のイノベーション支援活動としては、既存株主との関係調整を中心 的に実施することや会社の危機的状態での対応、経営者への動機付け、社員の声を経