1.先行研究などから導出した第 1 次仮説を統計データ、アンケート、ケーススタディを用 いて3回、修正を加え、「日本のベンチャーキャピタルは、育成方法の中でもベンチャー 企業との協創関係を構築すれば日本でも高いIRRは達成できる。」という最終仮説を導 出した。また、その戦略的行動は、①投資システム全体の戦略構想、②革新的プラット フォームの提供、③市場および顧客に対する付加価値創造支援活動、④出資者およびベ ンチャー企業に対するイノベーション支援活動、⑤組織間学習による知識創造の活性化 の 5 つであると確認された。
2.本論文は、これまで日本においてベンチャーキャピタル研究の中で、IRRに焦点を当 てた統計的な分析がほとんどなされてこなかったなか、初めて統計的な分析、アンケー トを実施したことと、ベンチャーキャピタリストとして活動している日本を代表する5 人のケーススタディを行うことで利害関係者とベンチャーキャピタルとの関係性を詳し く検証した初めての論文である。
今回のベンチャーキャピタリストアンケート調査及びケーススタディを実施するに当 たっては、調査対象を特定し、有効な回答率を得ることに苦労した。現時点の日本にお いては 1000 人から 2000 人のベンチャーキャピタリストがいる中で、ベンチャーキャピ タリストとして自分の投資理念と投資方針を持ち、自信をもって利害関係者との関係を 構築している者が極めて少ないことが明確になった。
今後、自信をもって活動するベンチャーキャピタリストが増加することと、外部への ディスクローズが増加することに伴って、ベンチャーキャピタルと出資者、ベンチャー 企業、市場及び顧客との協創関係の構築手法についても、更に検討してゆきたい。本論 文では、データの制約の理由から、ベンチャー企業との関係性を中心とした議論となっ ているが、特に出資者との関係、市場及び顧客との関係性についての分析が足りず、今 後の課題にしたい。
第9章 結論と課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 253
第1節 結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 253
第2節 今後の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 254
第9章 結論と課題
第1節 結論
本研究の目的は、「日本のベンチャーキャピタルの投資パフォーマンス(IRR)を向上さ せるためにどうしたらよいか」という課題解決のための仮説を導出することである。本論文は、
欧米のベンチャーキャピタルを中心に検証されてきたIRR向上に関する先行研究(投資期間 の研究、シンジゲーションの研究、バリュエーションの研究、段階的投資の研究、EXIT 戦略の 研究、オーナー系ベンチャーキャピタルの研究、専門性の追求など)の結果が日本のベンチャ ーキャピタル市場においても適用できるかどうか、その項目や優先順位がどのように異なるの か、という観点から展開してきた。すなわち、日本のベンチャーキャピタルの置かれている環 境状況が欧米と異なる日本においては欧米の先行研究とは異なる要素もあることを前提として、
欧米の先行研究の結果が日本のベンチャーキャピタルにどの程度、適用できるかを独自データ により分析し、結果として、日本で投資パフォーマンスを高めるための手法についての仮説を 導出してきた。
先行研究などから導出した第 1 次仮説を統計データ、アンケート、ケーススタディを用いて 3回、修正を加え、「日本のベンチャーキャピタルは、育成方法の中でもベンチャー企業との協 創関係を構築すれば日本でも高いIRRは達成できる。」という最終仮説を導出した。また、そ の戦略的行動は、①投資システム全体の戦略構想、②革新的プラットフォームの提供、③市場 および顧客に対する付加価値創造支援活動、④出資者およびベンチャー企業に対するイノベー ション支援活動、⑤組織間学習による知識創造の活性化の 5 つであると確認された。
図表9-1 ベンチャーキャピタルの協創関係の構築仮説
全体戦略の構想