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協創関係の構築方法と、投資の手法

第8章 要旨

1.第5章、第6章、第7章を経て導き出された「協創関係の構築仮説」を実行する に際して、実際にベンチャーキャピタリストが活用した手法を詳説し、協創関係の 構築の仕方を確認する。特に成長段階における協創関係の構築方法の変化と、ベン チャーキャピタル投資の手法について論述している。

まず、協創関係構築の仕方として、ベンチャーキャピタルが出資者およびベンチ ャー企業との協創関係を生み出す手法として、ケーススタディからは以下のような 4つのポイントが指摘できる。①知り合ってからの年数及び仲介者の信頼の付与、

②理念及び考え方に対する共鳴、③ベンチャーキャピタルの中立性、客観性、専門 性、頼り甲斐のある人格、④過去の投資実績、ベンチャー企業での評判、がケース スタディから指摘できる。

また、協創関係の維持・強化の仕方としては、①中立性、客観性の主張、②経営 者、チームのベクトル合わせ③危機を一緒に乗り越えたという一体感、の3つが有 効であることがケーススタディから指摘できる。

さらに、ベンチャー企業が成長する過程で、スタートアップ期、急成長期および、

投資条件を決定する時点、事業縮小・撤退の時、株式公開前後を加えた 5 つの時期 における協創関係の構築方法の変化をまとめている。

2.ベンチャーキャピタルが利害関係者との協創関係を構築するための手法の中で、

ベンチャーキャピタルが投資を実行するに際して、①将来価値の評価方法、②時価 総額主義の算定、③段階的投資(マイルストン投資)、④シンジゲート投資について 詳説している。特に、②時価総額主義の算定では、アンジェスエムジー、トランス ジェニック、セラーテムテクノロジーのケースを分析している。

第8章 協創関係の構築方法と、投資の手法 ・・・・・・・・・・・・・ 226

第1節 成長段階による協創関係の構築方法の変化 ・・・・・・・・・・・・・・・ 226 第 1 項 協創関係の構築と維持・強化の手法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・226

(1)協創関係構築の仕方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・226

(2)協創関係の維持・強化の仕方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 228 第 2 項 成長段階における協創関係の構築方法の変化 ・・・・・・・・・・・ 230

(1)成長段階に係わらず、投資条件を決定する時点 ・・・・・・・・・・・ 231

(2)スタートアップ期 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 232

(3)急成長期 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 233

(4)事業縮小・撤退の時 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 233

(5)株式公開前後 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 234 第2節 ベンチャーキャピタル投資の手法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 237 第1項 将来価値の評価方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 237 第 2 項 時価総額主義の算定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 242

(1)アンジェスエムジー(4563)のケース ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 242

(2)トランスジェニック(2342)のケース ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 243

(3)セラーテムテクノロジー(4330)のケース ・・・・・・・・・・・・・・・ 244

第3項 段階的投資(マイルストン投資) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 245

第4項 シンジゲート投資 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 247

第8章 協創関係の構築方法と、投資の手法

第1節 成長段階による協創関係の構築方法の変化

第5章、第6章、第7章を経て導き出された「協創関係の構築仮説」を実行するに

第 1項 協創関係の構築と維持・強化の手法

(1)協創関係構築の仕方

ベンチャーキャピタルが出資者およびベンチャー企業との協創関係を生み出す手法 と

①知り合ってからの年数及び仲介者の信頼の付与

てからの年数の長さが協創関係、特

お互いに信頼している共通の友

ービスは、資金の90%以上は欧米の 際して、実際にベンチャーキャピタリストが活用した手法を詳説し、協創関係の構築 の仕方を確認する。特に成長段階における協創関係の構築方法の変化と、ベンチャー キャピタル投資の手法について論述している。

して、ケーススタディからは以下のような4つのポイントが指摘できる。

出資者及びベンチャー企業の経営者と知り合っ

に信頼感の醸成のために重要である。例えば、山口はゴルフダイジェスト・オンライ ンの創業メンバーである玉置浩伸取締役(最高経営責任者)と下田八道取締役(最高 財務責任者)が山口とラ・サール中学、高校(鹿児島県)において同窓及び 1 年先輩 で、かつ、バスケットボール部をともに過ごした仲間であったことに端を発している。

また、関野は、1998 年 12 月に最初にアプリックスの郡山社長に出会ってから本格的に 支援するようになる 2002 年後半まで 4 年程度、赤浦も最初にサイボウズの高須賀社長 に 1997 年に出会ってから 99 年 5 月に投資をするまで 2 年強の期間をかけている。そ の間に、お互いの考え方や行動を見ており、本格的に係わる時点でお互いの信頼感は 出来ており、協創関係も築きやすい状況であった。

また、村口とディー・エヌ・エーの南場社長とは、

人が推薦したことがきっかけであるし、仮屋園と株式会社GDHの村濱社長と知り合 ったのも、投資銀行にいて共通の知人が紹介してくれてたことがきっかけである。紹 介してもらった段階で、仲介者に対する信頼が付与されており、単なる出会いよりも 協創関係が構築しやすい環境が出来ていた。

出資者との関係でも、仮屋園の所属するグロ

出資者であるが、Apax社 と共同でファンドを組成しており、Apaxのこれまで 長年にわたって構築された出資者との協創関係が生かされていると思われる。

② 理念及び考え方に対する共鳴

ベンチャーキャピタルが自分の理念、会社経営に関する考え方を強く発信すること が重要で、その考え方に出資者及びベンチャー企業の経営者が共鳴することで、協創 関係が構築される。

例えば、村口は、堀場製作所の掘場雅夫会長や店頭企業のオーナーなどから資金を 集め、また、日本では珍しく個人の責任で資金を集め、村口個人が業務執行組合員と なりファンドを運用している。これは、1)日本からベンチャーを生み出す、2)テクノ ロジー型ベンチャーで世界に出る、3)スタートアップ段階から投資する、4)会社では なくパートナーシップでやる、という 4 つの理念を強力に発信し、キャピタルゲイン だけでなくベンチャー企業の育成という社会的意義に賛同してくれた出資者が集まっ た。このベンチャーキャピタルと出資者との協創関係は非常に強固なものとなった。

また、関野はアプリックスの郡山社長に会った時に「日本から世界に発信できる技 術を出したい、という理念と、技術的に尖がった才能」に共感を持ったし、郡山社長 も関野の率直にものをいい、考え方のぶれないベンチャーキャピタルとしてのスタン スを尊敬した。これをきっかけに信頼感が生まれている。

③ ベンチャーキャピタルの中立性、客観性、専門性、頼り甲斐のある人格

ベンチャーキャピタルの代表としてベンチャーキャピタリストの人格も利害関係者 との協創関係の構築には重要である。今回の 5 つのケースにおけるベンチャー企業の 経営者にベンチャーキャピタリストの人格について聞いたところ、共通して中立的な 意見を言ってくれるところ、自社の役員、幹部にはない客観的な意見を言ってくれる ところ、何らかの専門性を持っているところ、及び危機的な状況に際して頼り甲斐の ある人であることなどが挙げられた。確かに筆者から見ても、村口、赤浦、山口、仮 屋園、関野の 5 人は上記のような人格を持っており、この人格がベンチャー企業の経 営者との信頼感を生み、協創関係の基礎を生み出したものと考えられる。

④ 過去の投資実績、ベンチャー企業での評判

ベンチャーキャピタル、及びその代表としてのベンチャーキャピタリストのこれま での投資実績や、他のベンチャー企業に対する育成の評判などもベンチャー経営者及 び出資者との協創関係を生み出すのに役立っている。例えば、村口の場合、株式会社 日本テクノロジーベンチャーパートナーズを設立して投資を実施する以前に、ジャフ コでの多くの投資実績、10 件以上の公開会社を輩出、キャピタルゲインも 150 億円以 上でIRRは 58.6%(成功報酬控除前)と、国際的にも高水準であることが有名であ った。さらに、会社の内部にまで入り込んだ「心の熱い支援」をしてくれるという評 判が立っていた。そのため、出資者もベンチャー企業の経営者も、村口の投資後の支

援については信頼して任せることができた。

(2)協創関係の維持・強化の仕方

次に、一旦構築された協創関係を維持して、また強固なものにする手法について、

ケーススタディから以下の3点があげられる。

①中立性、客観性の主張

投資した後に、更に協創関係を強固にするに際しては追加増資のタイミングにおい て、ベンチャーキャピタルの態度が出資者寄りなのか、ベンチャー企業寄りなのか、

それとも中立的なスタンスを持とうとしているのかがわかる。それにより、出資者及 びベンチャー企業の経営者もベンチャーキャピタルとの協創関係が一層、強固なもの になってゆく。

例えば、村口は、ディー・エヌ・エーの 2001 年 3 月の第三者割当増資に際して、増 資後時価総額をそれ以前の152億円から127億円と評価している。この 5 億 7000 万円がなければ資金ショートを起す直前の状態であった。村口は会社の時価総額を適 正に評価したもので、出資者寄りでもベンチャー企業寄りでもないと考えているし、

出資するときには思い切った金額を出資すべきであると考えている。

また、関野は、2003 年 2 月のアプリックスの第三者割当増資に際して、直前の 1 株 30万円、増資後時価総額 42.9 億円に対して、1 株20万円で増資前の時価総額を 28.8 億円と評価した。ベンチャーキャピタルとして出資者の立場寄りの立場に立てば 1 株 15万円にすべきとの意見も出たが、それはフェアでない、断じて 1 株20万円であ ると主張、増資を10億円程度の増資をすれば増資後の時価総額が40億円となり、

経営者の株式希薄化が許容範囲となると既存株主を説得した。このような場面の対処 を見ても、関野が出資者、ベンチャー企業、市場・顧客の間のどれかに偏ることなく、

三角形の中心に位置しようとしていたスタンスがわかる。

このスタンスについては、ディー・エヌ・エーの南場社長、アプリックスの郡山社 長は高く評価しており、一層協創関係が強化されたと述べている。

②経営者、チームのベクトル合わせ

人材のマネジメント力が乏しいベンチャー企業においては、経営者及び経営幹部、

経営チームの意見対立が顕在化し、進もうとするベクトルが合わなくなることで経営 がうまく行かなくなることが多い。その場合ににも、ベンチャーキャピタルがベクト ルの違いが顕在化する前に、各メンバーの意見を吸い上げ、そのベクトルを外部の客 観的な立場から調整する役割は非常に有効で、ベンチャーキャピタルと経営者との協 創関係の強化に役立っている。

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