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淀川表流水の細菌増殖ポテンシャルと凝集処理によるその改善

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Academic year: 2022

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(1)VII-236. 淀川表流水の細菌増殖ポテンシャルと凝集処理によるその改善 ○ 大阪工業大学工学部 正員 笠原 伸介 大阪工業大学工学部 正員 石川 宗孝. 1. はじめに 飲料水の輸送、貯留過程における水質劣化を阻止するには、水中の生物易分解性成分濃度を浄水処理によ り削減し、生物学的に安定した水道水を供給することが重要である. 1). 。しかし、わが国では、細菌増殖ポテ. ンシャルを指標とした水道原水の水質評価や浄水処理のプロセス評価はこれまで十分に行われてこなかった。 本研究では、大阪府下の代表的な水道水源である淀川下流部の表流水を対象とし、生物同化可能有機炭素 (AOC)濃度 2) の挙動や凝集処理に伴う細菌増殖ポテンシャルの変化などについて検討した。 2. 実験概要 本研究の対象とした淀川表流水は、大阪市旭区にある菅原城北大橋と豊里大橋の中間点付近(大阪工業大 学北側)で採取した(以下、原水)。採水した試料は、実験室に持ち帰った後速やかに分析を行うとともに 回分の凝集処理(PAC 注入率 2〜3 mg Al/L、凝集 pH 7.0 付近)に供した。試料は、すべて 0.45〜0.50μm のメンブランフィルター(材質 PTFE または Mixed Cellulose Ester)でろ過した後、DOC、E260、PO43--P を 測定するとともに、AOC の測定と淀川表流水中に生息する土着細菌の回分培養に供した。AOC の測定で は、 試料を 60℃で 30 分間滅菌した後、P. fluorescens P17 株と Spirillum sp. NOX 株を同時に接種し、15℃で培養 中の最大コロニー数から酢酸当量として求めた。土着細菌の回分培養では、試料を 60℃で 30 分間滅 菌した 後、未ろ過の淀川表流水 1 mL を接種し、15℃で培養中の従属栄養細菌数(R2A 寒天培地法)と全菌数(DAPI 蛍光染色法)の経日変化を求めた。 3. 淀川表流水の溶存有機物と AOC 表-1 に示した水質測定結果によると。原水の DOC、E260、DOC/E260 は、それぞれ 1.6〜4.8 mg/L(平均 3.0 mg/L)、0.031〜0.051(平均 0.040)、40〜100 程度で推移し、淀川下流部には、比較的多くの E260 非発 現性すなわち生物易分解性成分の含有していることが示唆された。また、DOC 濃度が 高い時ほど DOC/E260 が高くなる傾向も同時に確認され、生物易分解性成分の混入割合は、季節的に大きく変動していることがわ かった。さらに、原水の AOC 濃度に注目すると、AOC-P17 を主体として約 80〜600μg ac-C eq/L の AOC が検出され、特に、DOC 濃度、DOC/E260 共に高かった 2000 年 9〜10 月に かけては AOC 濃度が 400μg ac C eq/L を超過した。このように、淀川表流水中に含有する有機成分の生分解ポテンシャルは、一般の河川 表-1 淀川表流水および凝集処理水中の AOC、DOC、および E260 Raw water AOC (μg ac-C eq/L) AOC (μg ac-C DOC E260 DOC/ (mg/L) (1/cm) E260 P17 NOX Total P17 NOX 99.6.16 84 2 86 3.0 0.034 88 99.7.29 72 9 81 1.6 0.040 40 99.10.6 90 43 133 1.8 0.036 50 41 52 99.11.4 238 5 243 1.8 0.032 56 99.12.8 112 24 136 2.0 0.031 65 00.1.7 209 12 221 2.6 0.035 74 00.7.28 193 95 288 4.2 0.048 88 N.D. 105 00.9.1 563 43 606 4.1 0.048 85 N.D. 146 00.9.20 487 46 533 4.8 0.048 100 N.D. 179 00.10.26 353 53 406 3.2 0.051 63 N.D. 98 00.11.19 175 55 230 3.7 0.042 88 N.D. 149. Coagulated water eq/L) DOC E260 (mg/L) (1/cm) Total. DOC/ E260. 93. 1.0. 0.021. 47. 105 146 179 98 149. 2.4 3.1 2.4 2.3. 0.025 0.032 0.024 0.021 0.018. 96 129 114 128. キーワード:飲料水・細菌の二次増殖・生物同化可能有機炭素(AOC) ・凝集処理 連 絡 先:〒535-8585 大阪市旭区大宮 5 丁目 16 番 1 号,大阪工業大学工学部土木工学科,Tel.&Fax. 06-6954-4165. -472-. 土木学会第56回年次学術講演会(平成13年10月).

(2) VII-236. に比べて比較的高いことが示された。 200. 4. 凝集処理に伴う AOC の変化. 原水では約 130〜600μg ac-C eq/L 検出された AOC が、凝集 処理水では 90〜180μg ac-C eq/L と、凝集処理により最大で 約 75 %低下し、その変動も原水に比べ小さくなることがわ. AOC (μg ac-C eq/L). 180. 表-1 において、凝集処理前後の AOC 濃度を比較すると、. AOC-NOX AOC-P17. KH2PO4 addition. 160 140 120 100 80. (0.07). (0.12). 60. (N.D.). 40. かっ た。 ま た 、 凝集 処 理に 伴 う AOC 濃 度 の 低 下 は、 特 に. (0.04). 20. AOC-P17 において顕著に見られ、原水中の AOC 濃度が 230. 0 Raw water. μg ac-C eq/L を上回った 2000 年 7 月以降においては、凝集. Coagulated water. (a) 1999.10.6. 処理水中に AOC-P17 が一切検出されなかった。ただし、本 700. 研究で測定された AOC 濃度は、無機塩を添加しないいわゆ. 度の低下要因としては、AOC として検出される有機成分の 除去、もしくは主としてリンと考えられる共存無機成分の減 少が考えられる。そこで、試料中の最終濃度が 0.045 mg P/L. AOC (μg ac-C eq/L). る見かけの AOC 濃度であるため、凝集処理に伴う AOC 濃. KH2PO4 addition 500 400 300 200 (0.09). となるよう KH 2PO 4 溶液を添加し後 AOC 濃度を測定したと. 100. ころ、図-1 に示すように AOC-P17 を中心に最大約 200μg. 0. (0.14) (0.02) Raw water. ac-C eq/L の AOC 濃度が増加し、さらに、水中のリン濃度が 十分に高かったと考えられる 1999 年 10 月 6 日のリン添加系. AOC-NOX AOC-P17. 600. (0.07). Coagulated water. (b) 2000.11.19. 図-1. においては、凝集処理に伴う AOC 濃度の低下は見られなか. 凝集処理に伴う AOC 濃度の変化 ※ ( ) 内はリン酸濃度 (mg P/L). 3). の結果と一致しており、凝集処理に伴う見かけ AOC 濃度の 低下は、リン濃度の減少に起因していることがわかった。 5. 見かけ AOC 濃度と土着細菌の増殖ポテンシャル 見かけ AOC 濃度と回分培養時の最大増殖細菌数との関係 をプロットした 図-2 によると 、全菌数を指 標とした場合 は 試料中の基質の構成や制限因子の違いにより多少のばらつき. Total cell number (cells/mL). 分子で、凝集処理を行っても除去され難いとした Volk ら. 4.0E+06. 1.4E+06. 3.5E+06. 1.2E+06. 3.0E+06. 8.0E+05. 2.0E+06 6.0E+05. 1.5E+06. 4.0E+05. 1.0E+06. 2.0E+05. 5.0E+05 0.0E+00. 0.0E+00 0. が見られたが、従属栄養細菌数を指標とした場合には、増殖 制限 因子 に か か わ ら ず 両 者 の 間 に良 好 な 比 例 関 係 ( 2.6*10 6. 1.0E+06. 2.5E+06. HPC (CFU/mL). った。このことは、AOC として検出される有機物は主に低. 100. 200. 300. 400. 500. AOC (μg ac-C eq/L). 図-2. 見かけ AOC 濃度と土着細菌の最大増. CFU/μg of AOC)が得られた。このことから、二種類の純. 殖量との 関係 ( □ :全菌 数 , ● : 従 属. 粋培養細菌を用いて測定される見かけの AOC 濃度は、淀川. 栄養細菌数). 下流部の表流水中に生息する従属栄養細菌の増殖ポテンシャ ルを概ね代表していたと考えられる。 6. おわりに 本研究により、淀川表流水の細菌増殖ポテンシャル削減に対する凝集処理の有効性が示された。今後は、 生物学的安定に必要な見かけ AOC 濃度、およびそれを達成するための効果的な処理条件等について検討す る必要がある。最後に、本実験に協力頂いた本学衛生工学研究室の学生諸氏に、謝意を表す。 【 参考文献 】 1) 金子光美監訳:飲料水の微生物学,技報堂出版株式会社,1992,2) APHA, AWWA, WEF: Standard Methods for The Examination of Water and Wastewater, 20th Edition. 1998,3) Christian Volk, Kimberly Bell, Eva Ibrahim, Debbie Verges, Gary Amy and Mark Lechevallier: Impact of Enhanced and Optimized Coagulation on Removal of Organic Matter and Its Biodegradable Fraction in Drinking Water, Wat. Res., pp.3247-3257, 2000. -473-. 土木学会第56回年次学術講演会(平成13年10月).

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