93 ー93 −
監査証拠論の課題について
Ⅰ問題の所在
財務諸表監査は.,財務諸表が企業の財政状態および経営成績を適正に表示し ているか否かに∴ついて,独立の盤査人が,専門的意見を形成し,かつそれを報告 することを目的としている。ここにおける監査人の意見は,社会の多くの利害関 係者集団の意志決定に.蛋大な影響をおよばすので,十分に.有効な基礎に基づく
ものでなけれほならない。ここにいう意見形成の基礎が,監査証拠である。米 国公認全訳士協会の監査基準は.,その実施基準の第3項として,「監査される
財務諸表につい ての意見に.対して,合理的基礎を与え.る十分に有効な証拠
(sufficient competent evidentialmatter)を,実査,立会,質問および確
(1)
認によって入手しなければならない」としている。
こしに,監査証拠の蒐集および評価活動ほ,監査行為の主たる内容であると ともに.,財務諸表についての監査人の判断および意見の形成に,密接に関連し ていることが,認放されるのである。
監査証拠論ほ,すでにのべたところから明らかなように,監査理論で重要な 位置を占めているが,その研究ほ,それはど古くないし,またそれに関する論 文もそれはど多くない。というのは,従来は,具体的な監査項目に.ついての監 査手続についての議論が多く,監査手続の基礎にある監査証拠紅まで掘り下げ て,理論化されるに至らなかったからである。ところが,次第に,監査行為の 基礎理論として,監査証拠論が展開されるように.なってきた。しかしながら,
そこにおいて,監査証拠論の課題が ,十分な体系的内容をもって論じられてい るとはル、えない。本稿は,この問題について,若干の展開を試みるものであ
(1)AICPA,Auditing SiandaYds and ProcedureS,..P′16.
第38巻 第1・2弓
94
「− 94−
る。そこで,まず,監査証拠論が,どのようにして生成してきたかをとりあ げ,つぎに,米国公認会計士協会の帽左査基準および手続」において,監査証 拠論の現状をみ,さらに監査証拠論が,展開されるべきその課題の体系を展望 サーること紅したい。
‡Ⅰ監査証拠論の生成
(1)マッケソン・ロビンス会社事件と監査証拠論
監査証拠論が,米国で,どのような経緯を辿って,生成したかについて,こ れを明確に解明′したものほ,今までのところ見当らない。私見においても,文 献的な根拠をもって:いないが,論理的に考えて−,一応,監査証拠論は,1988年の マッケソン・ロビンス会社事件
たrld・般に・認められた監査基準(generallyacceptedauqitingstandards)」と 共に,展開されたものというこ.とができる。
すなわち,このマツダソン・ロビンス会社事件によって,そ・の当時まで行な われてきた,財務諸表監査についての会計士の慣行が,財務諸表に対する意見
について二,十分な基礎づけを行なうものであるかどうかについて,社会的観点 から問題提起されたのである。ここに,社会的な判定基準として−,「−・般に認 められた儲査基準」の概念が導入され,その内容の具体化に努力された。そし て,1947年の「監査基準額案」に・より,−・応,そ・の体系を備えたものとなり,
さらに,その後の議論の成果をとり入れて,1963年の「監査基準および手続」
となった。このような意味からい.え.ば,さきに掲げた,米国監査基準の実施基 準の第8項のいう,十分紅有効な証拠という考え方には,その奥に,マッケソ ン・ロビンス会社事件によって惹起された問題意識が,ひそんでいるというこ とができる。
マッケソン・ロビンス会社事件により,当時の監査慣行であった監査行為が 意見の基礎としで十分なものを入手していたかどうかが問題に.された。したが
って,本質的には,監査手続自体の問題ではなぐ,監査手続を通じてえられた 監査証拠が問題乾され,意見に対して監査証拠の十分性および有効性が,議論
−・95 一一
監査証拠論の課題について
95
の基礎に.あったものと考えなければならない。この事件に・ついて:のSECの緒論 の中にも,監査人が不正の摘発に失敗したのほ,監査人の不注意とか監査の程 度に不備があったということばかりでほなく,監査証拠の分析にも欠陥があっ
く2)
たことが指摘されている。
米国公認会計士協会ほ,マッケソン・ロビン∵ス会社事件の教訓に・基づいて,
1939年に,「監査手続の拡張(Extension of Auditing Proceture)」を発表し た。その要点は,第Ⅰに・,棚卸資産の監査においてほ,実地棚卸紅立会うこ
と,および受取勘定の監査においては,確認を行なうことを要求して,監査手 続を拡張したことである。第2の点ほ,会社の内部統制租織の検閲を重視した
(8)
ことである。ここに,監査証拠は,2っの方向に・おいて,問題とされたとみら れる。すなわち,第1点でとりあげられた監査手続の拡張は,いわゆる外部証 拠における問題であり,第2の内部統制鵜繊の検閲は,内部証拠に関する問題 が意識されたものと思われる。
(2)外部証拠論
1939年の「儲査手続の拡張」ほ,受取勘定の確認および棚卸資産の実地棚卸 の立会が,実施可能にして合理的であれは,必らず行なわれなけれほならないと
し養が,これほ,いわゆる外部証拠の霊視である。というのは,「監査手続の 拡張」発表甲契機となったマッケソン・ロビンス会社膚件における不正は,内 部証拠の弱点をついて行なわれた甲で,外部証拠による確証が要求されるよう になったのである。もっと詳しく説明すれば,同会社における不正は,取引契 約蕃,送状およびその他の通常の取引紅関する証拠資料を偽造することによっ
て,会計記録が形式上は,完全に.立証できるようにして,行なわれた。したが
って,証拠資料と会計記録との突合だけでは,不正は摘発できないように.なっ ていた。そこで,マッケソン・ロビンス会社事件を契機とした「監査手続の拡
(2)SEC,. Summary of Findings and Conclusionin the Matter of Mckesson&
Robins,Inc .,in Selected Readingsin Accounting and Auditing edited by M.
Mu工pby,p.119
く3)S.。丁.B王Oad,丁γβ〝♂ざゴ乃A感触摘g仇嘘1顆如府形g,p.12
第38巻 第1・2号
ー96 − 96
張」ほ,外部証拠を墓祝するに至ったが,それほ監査証拠の性賀を問題軋させ ずに・おかなかった。すなわち,外部証拠を重視したというこ.とは.,その背後に おいて,証拠力,項目の性質と証拠カとの関連,内部証拠と外部証拠との区別 などの問題を,認識していたということである。
監査証拠について,証拠力あるいは有効性の問題を認識していたというのは
「監査手続の拡張」が,「棚卸資産および売梯金の実在について,より強力か
(4)
つより直接的な証拠を要求」しているからである。監査手続は,
手することを目的としている。しかし,監査証拠の入手を目的とサーるとはいっ ても,監査証拠の入手それ自体が目的ではなくて,監査証拠のもつ証拠力が目 的であることが,気づかれなけれはならない。このような理解紅到達すれば,
監査証拠の種類によって,証拠力の強弱があることをしり,それ故に監査証拠 に∵ついて,証拠力を評価サーると.との必要性を認識し,これらの問題についての 理論化が進められる。「監査手続の拡張」は,棚卸資産および受取勘定の実在 に.ついてほ,会計記録と証拠資料との突合によるよりも,受取勘定の確認およ び棚卸資産の実地棚卸の立会の方が,より強力な証拠を入手できることを主張
したのである。
つぎ紅,監査すべき項目の性質と監査証拠の証拠力との関係の問題も,考慮 されねばならなかった。すなわち,「監査手続の拡張」が,受取勘定および棚 卸資産などの項目についてほ,より強力な監査証拠を要求したのほ,財務諸表 に.おいて,それらが財政状態および利益紅重大な影響を与えるこ.とを認識した
(5)
のである。ここに監査証拠の証拠力の十分性および有効性は.,その監査証拠の 関連する項目との相互関連紅おいて,考慮さるべきと.とが認識される。この点 からも,監査証拠論が論じられることになる。
さら紅,内部証拠と外部証拠との区分の問題も,また,マッケソン・占ピン ス会社事件を契機としているものと考えなければならない。内部証拠と外部証
(4)J∂オd.,p.2
(5)AICPA Codijicati on ofSiatemenis on.Auditing PYIOCedure,Pp.21〜2.
監査証拠論の課題につい て
97 ー97 鵬
(6)
拠の分類を提唱したのは,サミ∴エル・ブロードであり,米国公認会引土協会の 1947年の「監査基準試案」および1954年の「監査基準」は,このブロードの見 解に.準拠したものである。そこでいわれる内部証拠とは,被監査会社の組織の 内部から入手できる資料であり,会計帳侍および小切手,送状,銀行預金計算 書,契約書,取締役会などの,記録された取引につして一発生し,かつそれを立 証するH−・切の附属的覚書および文書が含まれる。これに.対して,外部証拠とほ 会社の正常な記録および手続の領域外で,監査人自身紅よって作り出された証 拠資料であり,確認,実査,立会および質問によってえられた証拠が含まれ る。
(7)
このような監査証拠の分類の意義に∴ついてほ,多くの議論があるが,私見に おいては,この分類は,証拠の入手源泉の別によるという通常の考え方をとら ない。監査証拠が,会計組織あるいは会社の内部からえられたものか,あるい ほ外部からえられたものかによって,区分することは,ブロー・ドが,内部証拠
と外部証拠の分類を考慮したときの,問題意識とほ別であると思われる。むし ろ,マック㌧/ン・ロビンス会社事件が,問題意識となって,内部証拠と外部証 拠とが,区分されたと考えなけれはならない。同事件は,いわゆる内部証拠の 偽造紅よる不正であり,内部証拠の証拠力は,他の種類の証拠紅よって確証さ れるまでは,形式的なもの紅留ることが認識された。それ故に,内部証拠と は,会社の正常な経営活動軋伴なって,会社が取得し,あるいほ作成して,会 社の内部に保管しているすべての記録および文書であり,・そ・れらには偽造の可 能性という共通の欠陥が認められる0 したがって,内部証拠と咋,監査人が,
それをとりあげようと,またとりあげないとに.拘わらず,監査人の意志とは無 関係に,財務諸表を立証する証拠資料として存在するものであると,そ・の本質 を規定することができる。
(6う S.T Broad,The Need for Statement of Auditing Standarqs,Jownalof A 伽㈲ね肌.y,−Tuly1942
(7)久保田音二郎博士は,内部証拠は,記録の系列にあるもの,外部証拠は,その記録の 背後にある事実の系列紅あるものとされている。久保田音二郎著『近代財務監査』78〜
80ぺ一−ジ。
第38巻 軍1・2弓
98
l=一 9ざ −‥これに対して,外部証拠は,マッケソン・ロビンス会社事件の結果として,
r ̄監査手凝の拡張」で重視されるようになったが,そこに.要求された受取勘定 の確認および棚卸資産の実地棚卸への立会ほ.,より強力な監査証拠を入手する 方法として考えられた。なぜならば,外部証拠ほ.,監査人の意志に・よって,あ るいは監査人自身によ、って作成されたもので奉り,内部証拠の形式的な立証を 確証するものであるからである。この意味でほ,外部証拠は,実質的かつ能動 的証拠であり,これに対して内部証拠は,形式的かつ受動的証拠であるという
ことができる。
このように,外部証拠と内部証拠との分類ほ,マッケソン・ロビンス会社事件 を契機と∵するものであり,従来のような内部証拠に重点をおいた機械的な監査 から,監査人の判断をより蚕視し,必要な場合には,外部証拠を求めて確証す るような監査を,強調した点において,有意義であったと思われる。しかし,
それで問題が解決されたのでほないことは,その後に,多くの論者が,療々の
(8)
観点から,分類を試みていることからも,うかがえるのである。
(5)内部証拠論
つぎに,内部証拠の問題についてのべることにする。さきにも説明したよう に,マッケソン・ロビンス会社事件は,内部証拠の弱点を指摘した。こ・の欠陥 を救うものとして,「監査手続の拡張」ほ,第1の方法として,さきにのべた
ように,棚卸資産および受取勘定の重要な項目について外部証拠によって補完 することを要求したが,さらに,第2の方法として.,監査人に・よる内部統制組 織の検閲を強調した。
監査人による内部統制組織の有効性の検閲の目的は,2つあげられている。
滞1は,会計帳簿への記入の信頼性を立証するものとして,それに対して監査 人が依存することができる程度を決定することである。第2咋,会計記録を試
(9)
査する範囲を決定することである。これらは,マッケソン・ロビンス会社事件に・
(8),.CRay, ・Classiffication of Audit Evidence ,Journalof Accounianc.y,
MaI・Ch1964
in!S.TB【Oad.T)(ltdsil[.4tLdifil)g a〃d P(♪0′1iltg.p 2
99 監査証拠論の課題について
一一 991一
よって指摘された内部証拠の欠陥を補うことを目的としていろ。すなわち,内 部証拠は,・・・−・一般にネ正および誤謬の可能性を含んでいるために・,証拠力ほ弱い
といわれるが,もしも,整備された内部統制組織が有効に機能している場合に は,そこからえられた内部証拠の証拠力ほ,増大させられる。それ故に,監査 人は内部統制組織を検閲することによって,内部証拠の証拠力を再検討し,そ の証拠力を強化することができる。したがって,「監査手続の拡張」が,まっ たく内部証拠を軽視するものではないことが,分るであろう。
つぎに.,監査人が,内部統制組織の有効性の検閲により,そ・の結果紅基づい て試査の程度を決定するということであるが,これは,監査証拠の証拠力につ いて,賀と鼠の2っの面が認識されたことを意味する。すなわち,もしも,内 部統制組織が整備され,かつ有効に.機能し七いる場合には,そ・のような状況の 下からえられた内部証拠ほ,より強い証拠力をもつと思われるので,より少晶 の証拠資料で,十分な立証が可能であり,逆に・,内部統制組織が;不完全であ るか,あるいほ有効に.道営されていない場合にほ,そのような状況の下からえ られた内部証拠は,より弱い証拠力しかないと思われるので,より多最の証拠 資料が必要になる。このように,内部統制組織の検閲ほ,監査証拠の鼻と質に
関する議論の出発点をなしたと考えられる。
「監査手続の拡張」は,マッケソン・ロビンス会社事件を契機として一生成し た,以上のような監査証拠論の問題意識をもっていた。1963年の米国公認会計 士協会の「監査基準および手続」は,監査証拠論に・1っの章を設けて,これま でに.展開された議論を整理しているので,つぎに,これをとりあげて検討する ことにする。
ⅠⅠI「監査基準および手続」における監査証拠論
(1)総 説
「監査基準および手続」は,監査証拠論の冒頭に,監査実施基準の第3項
(10)
を,そ・のまま掲げて,監査証拠論の出発点としている。すなわち,「監査され
(10)AICPA,Audirting Standards and Procedures,p34l
第38巻 第1・2号
100
一丁のクー一る財務諸表紅つレ、ての意見に対して,合理的基礎を与える十分に有効な証拠を 実査,立会,質問,確認に・よって入手しなけれほならない」という文章は,監 査証拠論の基本的課題と,その生成の素性とを,明確に示すものということが できる。−ず− なわち,監査証拠論の,基本的な問題意識ほ,意見に対する合理的 基礎としての十分軋有効な証拠資料に閲しでであり,監査証拠論の生成当初に は,具体的紅,受取勘定の確認および棚卸資産の実地棚卸の立会が,連接の問 題として提起されたのである。監査実施基準の第3項は,実査,立会,質問,
確認などの手続に.よってえられる,いわゆる外部証拠を重視するものとして−,
生成の素性を,ものがたるものといわざるをえない。
ところで,「監査基準および手続」は,監査証拠論における問題を,つぎの ように考えている。財務諸表監査ほ,財務諸表に対する意見の形成を目的とす るが,これ紅伴なう監査人の仕事の大部分は,監査証拠の蒐集お皐び検討であ るとして,意見形成行為と証拠蒐集,評価行為とが,監査業務において,表義 一・体的に,結合されていることを明らかにしている。つぎに,意見形成におい
て1監査証拠を利用するためには,′その有効性を測定しなければならないが,
これは監査人の判断に.委ねられているとして,監査証拠のとりあつかいにおい て,監査人の判断の重要性を強調している。それ故に,証拠資料が,監査人の 意見形成紅およばす影響力は一服ではなし、ので,監査人は,監査証拠の有効性 を判断するために,証拠資料の適合性,客観性,適時性およびその他の証拠の
(11)
存在などの諸要素を,考慮しなけれはならないとしている。
(2)監査証拠の性質
「監査基準および手続」は,監査証拠を,その性質によって分けているが,
従来のような,外部証拠と内部証拠の分類ほ,とられていない。
すなわち,財務諸表を立証する証拠資料ほ,(1)基本的会計資料(underlying accounting data)と,(2)監査人が利用しうるすべての確証的情報(corrobo−
(11)J勃んp。34。
監査証拠論の課題につい て
101 −一女〃・,・・・−
(12)
ratinginformation)とに.分けられる。
基礎的会計資料として,原始記入帳簿,総勘定元帳および補助元帳,会計使 鬼および非公式的かつ覚書的記録(原価配賦,計算,調整などを立証する運算 表のようなもの)があげられる。そして−,これらの基礎的会計資料は,それ自 体では,財務諸表を十分に立鱒するものとは考えられないが,そうかといって 基礎的会計資料の適否および正否を十分に.考慮しなければ,財務諸表に対する
(13)
意見ほ,まったく根拠のないものになってしまうとしている。
これに対して,確証的証拠資料にほ,小切手,送状,契約書,議事録のよう な文書的資料;確認および知識をもつ人の文書に・よる表明;質問,観客,検閲 および実査によって.えられた情報;および監査人が正しい論理を通じて結論 するときに.,監査人が作成したか,あるいは利用できたその他の情報が,含ま
(14)
れるとしている。
つぎ紅,とのような分類が,どのような意図の下に,行なわれたかを,考泰 しなければならない。「監査基準および手続」は,基礎的会計資料を,1っの 監査証拠の種類として,まとめたのであるが,その内容ほ,従来の内部証拠の なかから,小切手,送状,契約書および議事録などの文書的資料を,除いたも のとなっている。それに対しで,′確証的証拠は.,従来の外部証拠に,内部証拠 から除かれた文書的資料を,加えたものと考えられる。より厳密にいえは,確 証的証拠は,基礎的会計資料以外の,監査人が作成したか,あ\るいほ.利用でき るすべての情報というこ.とができる。
ここで,内部証拠から除かれることになった小切手,送状,契約書および議 事録などの文書的資料は,いわゆる記録された取引について発生し,かつそれ を立証する文書的資料であり,この点から考えれほ,基礎的会計資料とは,佐 賀を異にするもめである。すなわち,これらは,経営活動において∵発生した文 吉的資料であるので純粋の会斜行為として作成された基礎的会計資料と区別さ
5 〜. 4・4 5 3 3 3
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第38巻 第1・2雪
−JO2−−叫
1q2れ,そ・こから除かれたものと考えられる。
元来,内部証拠は,監査人の意志とは無関係に存在する証拠資料とし,外部 証拠は,監査人の意志に.より作成された証拠資料としたが,この考え方では,
小切手,送状,契約書および議事録などの取引に関連して発生した文酋的資料 は,そ・れが監査証拠となるために.ほ,監査人の意志紅よってとりあげられなけ ればならないという欠点があった。「監査基準および手凝」は,もともとの主 張を展開して,その欠陥を除去したもので,その理論は,より明快に.なったと いえる。すなわち,監査証拠は,純粋に会計行為として作成された基礎的会計 資料と ,これを確証するために監査人がとりあげた証拠資料とに.分けられるこ とになった。
それでほ,このように分けられた2つの監査証拠が,どのような関連に.ある かをしるために,「監査基準および手続」の,監査証拠の種類とその蒐集活動
との関係について説明を,もう少しとりあげることにする。
まず,基礎的会計資料紅ついてであるが,監査人は,それ紅ついて,分析お よび検討,会計のプロセネおよび精算表の作成とか配列の場合の手続的段階を さかのぼっで調べること,再計算,関連する情報の調整および同種の情報の適 用などによって検討するとしている。そして,堅実に考案され,かつ注意深く 道営されている会計記録組織では,これらの手続を通じで,財務諸表が,財政 状態および経営成績を適正濫表示しているという説得的証拠である,内的一・貫
性および相互関連性(internalintegrityandineterrelationship)が発見でき
(15)
るとする。
また,確証的証拠については,その内容が多様であるので,個別的紅説明し ている。すなわち,諸帳簿への記入および財務諸表の表示を立証する適当な文 苔的資料は,普通は,会社が保管しており,監査人が検査することができる。
会社の内外の人には,直接に貿粧間することができる。会社の人々の諸活動は,
観察することができる。監査人が観察する状況,たとえば,内部統制組織の諸 状況に基づいて,監査人は,財務諸表の表示の真実性に潤する結論を導くこと 鮎)ノ≠痛.,p35.
監査証拠論の課題について
103
ー封じ㌧−
(16)
ができる。
以…Lのような説明であ′り,基礎的会計資料と確証的証拠との関係についての 明確な表現は,どこにもない。しかし,「 監査基準および手続」は,基礎的会
計資料は,それ自身でほ,財務諸表の十分な立証でほないとするが,それを1
つの証拠の種類として強調している。それほ,監査人が,
基礎的会計資料を検討する ことによって:,そのなかに,一・賞性および相互関連性が発見されれは,
それは財務諸表の表示の適正性に対する説得的証拠となるがらである。このよ うにしてえられた結論は,1っの仮説であって,これが十分な立証となるため には,確証的証拠によって,種々の点から,検討され,確証されなければなら ない。このこ.とは,確証的証拠が,個別的に説明されてル、ることからも,う一か がわれる。
したがって,基礎的会計資料ほ,財務諸表に対する第1次的証拠資料であり 確証的証拠ほ.これに.よってえられた結論を,検証し,確証する第2次的証拠で
ある。それ故に,確証的証拠は,基礎的会計資料の証拠としての価値を検証す
る証拠資料であるとともに,基礎的会計資料と結合して意見形成の基礎ともな る証拠資料である。(5)監査証拠の有効性
監査言椚処の有効性(competence)ほ.,信頼性と適合性の′2っの要素に依存
(17)
するものとしている。
つぎに.監査証拠の信頼性ほ,事情によって異なるので,例外のあることを前提
(18) 忙して,−・般的に.いえば,つぎの3っの原則があげられるとされる。
a.証拠資料が,企業外部の独立の源泉から入手されたときほ,単紅企業内 部から入手された証拠贅料よりも,独立的監査の目的のために,より大なる信 偵性をもつ。
﹁〇 5 6 3 3 3
n.p p
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′ ︑一− 一 ■人U−ク︐八U ▼′一▼′ ▼ノ
︵1㈹㈹姻
第38巻 第1・2号
104
−J¢4−−
b.会計資料および財務諸表が,満足的な内部統制組織の状況の下で作成さ れた場合は,不満足な内部統制組織の状況の下で作成された場合よりも,イ言頼 性が大である。
C.実査,立会,計算および検閲を通じて,監査人が,入手した直接的な個 人的知識(direct personalknowledge)ほ,間接的に.えられた情報よりも,よ
り説得的である。
いずれも,従来の,監査証拠論の結果をとり入れて:,明快紅整理したとみら れる。aでほ,監査証拠の入手源泉が,企業の内部であるか,外部であるかに
よって,証拠資料の信頼性が異なるキされる。これは,従来の内部証拠と外部 証拠について−ご通常いわれていたものであるが,内部証拠と外部証拠とめ区分 ほ,もともと別の論理を抱いているので,企業の内部,外部という入手源泉に よっては,説明のつかない多くのものを含んでいる。こ.のような意味で,従来 の議論のあいまいさを,除去したものといえ.る。
bほ,証拠資料の信頼性と内部統制組織の有効性との−・般的関係を表明した ものである。従来は,内部統制組織め整備および運用の程度は,主として,監 査手続の適用の範囲を決定する要素として−論じられることが多かった。ここ把 おいては,証拠資料の信頼性を判断する要素として,内部統制親織の整備およ び運用の程度を,簡明鱒規定したものといえる。
Cは,内部証拠と外部証拠の分類の,本来の意図を,のべたものと考えるこ とができる。すなわち,さきに・,内部証拠ほ,監査人の意志とは無関係に存在 する証拠資料であるとし,外部証拠は,監査人の意志に・よって作成された証拠 顔料とされたが,それは「監査基準および手続」が,実査,立会,計算および 検閲を通じて監査人が入手した直接的な個人的知識というものに,内容を等し くしていると思われる。しかし,直接的な個人的知識と間接的情報の,内容お よび区別は,それはど明確でなく,今後,議論の対象になると思われる。
(4)監査証拠の十分性
「監査基準および手続」ほ,監査証拠の有効性(competence)と十分性(su二
監査証拠論の課題につい て
−・却β−
105
fficiency)とを区別している。監査証拠の有効性は,その信頼性の問題であ り,監査証拠の十分性は,立証すべき意見紅対して必要な監査証拠の藍と種類 の問題である。
「監査基準および手続」は,思慮深い意見の立証に・頻要な証拠資料の鼠と種 類は,具体的場合の諸条件を,注意深く検討した後に・,専門的判断に・よって,
決定されるべきであるとしている。そして,その決定に.あたって,考慮すべき ものとして−,監査項目の性質に.関して,3っの要素を指摘して:いる。すなわち 蚤要性,含まれる危険の程度,利用できる監査証拠の種類と有効性である。こ
こに.,監査証拠の十分性は,意見が表明される項目の性質の観点から決定され る。何故ならば,項目の性質に・よって,必要な証拠カの大きさが決定され,ま
(19) た利用できる監査証拠の種類および有効性が決定されるからである。
そこで,つぎに.,「監査基準および手続」は,財務諸表を立証するために利 用できる監査証拠の−・般的性質をとりあげる。すなわち,監査の目的は,十分 K,有効な証拠資料の蒐集に.あるが,多くの場合に・,確信的証拠(convincing evidence)よりも説得的証拠(persuasiveevidence)に・依存しなければなら ないという。なぜならば,財務諸表の個々の項目も,をの全体的表示も,全然 疑惑がなくなるまでに.確信することができるということは,めったに:ないから
(20)
である。
「監査基準および手続」の監査証拠論に・は,その起草委員の1人であるマク ツの意見が反映されていると思われるが,この部分は,とくに,かれの見解が 強くあらわれている。すなわち,マクツは,監査を1っの立証行為と考え,立 証すべき命題とそれを立証する証拠とを対置して考える。そして,財務諸表は
(21) 立証すべき命題の総合されたものであるとし,財務諸表上の命題の性質を分析
(22)
している。マクツほ,まず,財務諸表上の命題をつぎのように.分類する。
(19)J∂よd。.p.36 榊J∂オ♂.,pp・36〜7
臣1)R,KMautz and HA Sharaf,The Pkilosobh.y ofAudiiing,pり 79 但2)〃舶.,p.80.
第38巻 第1・2号
106
ーヱ06−ニ1.実在または非実在についてこの主張
A.有 形 物
(1)現在被監査企業の手許に存在するもの
(2)現在被監査企業の手許に/存在しないもの B.無 形 物
2.過去の事項についての主張 3.墓的な状態に.ついての主張
A.単純な数藍
B.価値判断を含む数藍 4.質的な状態に.ついての主張
A.明確に表明された主張 B.暗黙に.表明された主張 5.数学上の主張
A.単一・の計算からもたらされたもの B.複合的引算からもたらされたもの
マクツは,このような財務諸表上の諸命題を,詳細に・検討して,これらに・対し て,強制的な証拠力をもつ証拠ほ,非常に限られており,大部分の命題は,単
(28)
に説得的な信嬢性の証拠しかもたないものであるとしている。このような観点
(24)
に.よる命題の分類をつぎのよう紅行なっている。
1.強制的な証拠力をもつ証拠が利用できる命題
(1)被監査企共内に.ある有形物の存在
(2)単純な鼠的金額
(3)数学的主張
2・強制的な証鱒力をもつ証拠が利用できない命題
(1)被監査企業内に.ない有形物の存在
(2)無形物の存在
(2剖J∂紹.,p‖ 84 朗 再読.,p.84.
監査証拠論の課題について
−−JO7−・
107
(3)有形物およ鱒無形物の非存在
(4)過去の事項の発生
(5)価値判断を含む金額
(6)明確に.,または暗黙に表明された質的状態
財務諸表の個々の項目も,そ・の全体的表示も,全然疑がなくなるまで確信す ることのできない性質のものであるといっても,重要な項目に/ついて重大な疑
惑がある場合に.,そのままに放置してもよいということに.ほならない。そこ
で,こ.のような場合に」は,その重大な疑惑を除去するに.十分に.有効な証拠を蒐 集するか,あるいほ限定意見を表明するか,または意見を差捷えなければなら
(25)
ないとしている。
さらに.,「監査基準および手続」は,監査証拠の十分性は,経済性の枠内で 考慮されるべきことを,強調している。すなわち,合理的な時間と合理的費用 の範囲内で,意見が形成されるこ.と紅よって,意見は経済的に有用であるとい われる。この合理的費用ほ.,証拠資料の入手の費用と監査証拠としての有用性
との関係によって判断される。また,ノ監査癒拠の有用性は.,相対的危険紅よっ
(亡tミ1 て決定される。
統討的サンプリング技術は,最近たおいて,非常に.議論されているが,「監 査基準および手続」も,これに・ふれている。すなわち,試査の範囲の決定およ び監査項目の選択において,統計的サンプリング技術が,有用である場合が参 るこ.とを認めるが,統計的サンプリング技術の採用が,監査人の判断を減少せ しめるものでほなく,ただ,試査の結果の測定尺度がはかにない場合に・,統計
(27)
的尺度を与え.るにすぎないと,注意を与えている。
最後に.,「監査基準および手続」は,監査手続の選択に・おいては,財務諸表 が不適正に表示されているかもしれないという可能性を,認識しなければなら ないとする。監査人は,意見を形成する場合には,財務諸表の表示を立証する,
C25)AICPA,OP.cit.,p‖ 37
価)∫∂オd山,p・37
(27)∫∂∠d.,pい 37
第38巻 解1・2号
ーJ〃∂−・・
108
あるいは反証する証拠資料を,考慮しなけれほならない。それ故に,財廟諸表 の表示を,疑わせるようなものは何もなかったというだけでは,意見を形成す るに十分であるとはいえない。監査人は,監査証拠の蒐集において.完全であり
(28) 監査証拠の評価に.おいて客観的でなければならない。
ここ.紅ほ,マクツの主張する懐疑主義が,採用されて:いると考えられる。マ クツほ,監査証拠を蒐集し,利用する方法として,論理学を利用し,権威主義,
神秘主義,合理主義,経験主義,実用主義の積極的方法と,懐疑主義の消極的
(29)
方法を,監査誠拠に・結びつけて,論じて:いる。そしてこれらの方法を結合する
(30)
ことによって−,より確実な監査証拠がえられ,\相互の方法ほ強化される。ここ に,懐疑主義とは,十分な根拠がえられるまでほ.,疑問をもちつづけるという ことであり,他の5つの方法によってえられた証拠資料紅対して−,その信頼性
(81)
を確立するまでは,疑うとととされる。このような懐疑主義は,監査人が,正 しい判断を行なうための精神的なセルフ・コントロ・−ルとして,役立つであろ う。すなわち,マクツは,判断に到達するに必要な監査証拠の種類および範囲 を決定し,監査証拠を蒐果し,かつそれを批判的紅検討するまでは,財務諸表
($2)
は,1っの仮定としてのみ,みるべきであるとし七いる。
(5)売掛金および棚卸資産
1989年に.,「監査手続の拡張」紅おいて,受取勘定の確認および棚卸資産の 実地棚卸の 立会が,′実施可能にして合理的であり,かう当該資産が,財政状態 および営業成積に関して重要であるときは,−・般に認められた監査手続とされ た。「監査基準および手続」が,「監査手続の拡張」.の基本的.立.場をうけつぎ,
(33)
立会および確認の手続を説明したことほ,うなづけるに・して−も,なぜに,監査 証拠論の最後に,別の1つの項目として掲げたのか,納得の行く説明が見られ
(28】∫∂よd‖,pp.37〜8
;29)R.K.Mautz and HASharaf,OPCit=,p91
(30)∫みgd.,pp、98〜9 飢〃揖.りpp・96〜7.
鋤 一抽■d.,p−・109
03)AICPA,OP.cit・,pp.38〜9
監査証拠論の課題について
ーーJ∂クー
109
ない。すなわち,監査証拠論の体系の中で,この2っの手続の占める位置が,
問題にされなけ■ればならない。
それは,ただ単に,重要な歴史的事件として,とりあげられたのではないで
あろう。現在の財務諸表監査に.おいて−も,十分な意義あるものと ノして考えてル、
ることは,その記載の位置からもうか窄える。とするならば,それは・,監査証 拠論に.おいても,1っの意図を示すものと考えなければならない。この2つの 監査手続の規制は,監査証拠論の他の部分とほ,性質を異に・している。こ.れま での部分では,監査証拠論は,どこまでも,−・般論としてとりあげられてい た。ところが,翠、うの監査手続にづいては,財務諸表監査の目的と具体的年監 査項目とが結びつけられて,一問題とされている。それは,−・般論とほ.異なっ
て,監査人の判断を,より強く規制するもぁとして−あらわれている。このこと は,1951年のコジフィケージョンが,「これらの2っの手続をとりだして,と
くに.考察したのは,棚卸資産と受取勘定が,財政状態と利益の決定要因とし
しこl小
て,・−・般大衆および会計士が,大きな関心をよせていたことに原因する」と,
のべているこ.とに.もあらわれている。
したがって,この事つの監査手続の規制を,監査証拠論の最後に.位置づけた のは,この2っの監査手続が,監査証拠の−・般原則に.よって衷づけられたもの であること,およびそれが,監査証拠論が財務諸表監査を目的として具体化し た部分であることを意味するものであると思われる。しかし,こめような具体 化は,歴史的経緯は別として,何故に・2つの手続に・限られているのか,監査革 拠論の理論的体系として明らか紅されていない。
ⅠⅤ 監査証拠論の課題
−・むすびにかえて叫
監査証拠論の基本目的ほ,財務諸表が,企業の財政状態および経営成績を適 正に.表示しているか否かに.ついての,監査人の意見の形成の合理的基礎となる
(34)AICPA,Codificaiion ofSiatemenis on Auditing Procedure,pp・21〜2・
叫上わー 第38巻 第1・2号
110
ペき,十分に.有効な監査証拠に関する展開に・あることは,明らかである。この ような問題意識をもった監査証拠論を,生成せしめる契機となったぁが,マッ クソン・ロビンス会社の不正事件であったことは,すでに.指摘したとおりであ る。したがって,そこ・に生成した監査薩拠論は,その不正事件の影響を,直接 に反映するものであった。
すなわち,その不正事件によって,財務諸表の表示の適正性紅対する意見の 基礎として−,より強力な証拠の必要性が,社会的な問題となり,そこにおい
て,より強力な証拠を入手する方法として,受取勘定の確認および棚卸資産の 実地棚卸の立会の監査手続が導入せられた。さらに.,こ.のような事情に.基づい
て,証拠カの強弓宕の観点から,監査証拠の性質を説明し,こ.れ紅よって,内部 証拠と外部証拠とに分類する紅至ったのである。また,そのさいに.,内部統制 組織の検閲が,そこそ主張されたのも,同じように.不正事件の結果であったと 考えられる。かくて,生成した監査証拠論では,−・方 に‥おいて,監査証拠の信 頼性に.関する原則化が試みられ,他方に.おいて,監査項目と証拠との関係に∴つ いての原則化が考察され,「監査基準および手練」の監査証拠論に.,展開され るに至ったものと考えられる。
「監査基準および手続」に.おいて−は,監査証拠論の課題は,つぎのように展 開されているものと考えられる。基本的課題ほ,意見の合理的基礎としての十 分に有効な監査証拠の展開であり,これは2っの部分に分けられる。その1っ ほ,′監査証拠の本質の問題であり,今トっは,監査証拠紅関する行為原則の問 題である。監査証拠の本質論とは,財務諸表監査に..おいて−,監査人がとりあつ かう監査証拠は,どういう性質のものであるかを,説明するものであり,監査 証拠の基礎理論である。「監査基準および手続」は.,監査証拠の本質払おいて,
基礎的会計資料と確証的証拠とに.分ける。基礎的会計資料は,財務諸表を作り あげた会計行為そのものであり,財務諸表を第1次的に.立証する資料であり,
この弟1次的立証を竣証する証拠資料として,監査人がとりあげた確証的資料 を,第2次的証拠資料とするものと考えられる。
監査証拠論の第2の課題は,第1の課題のような本質論でほなくて,証拠に
監査証拠論の課題について
一一J〃㌧_
111
関する行為原則の展開である。すなわち,どのように.して−,十分に有効な証拠 資料を入手し,かつ使用するかをこついての−・般原則に・関するも甲である。「監 査基準および手続」は,これを,監査証拠の有効性と十分性とに分けてニ,その 理論化を進めていることは,さきに説明したとおりである。
しかし,監査証拠の有効性および十分性に関する理論ほ,それが実際に・適用 されることを考えて,行為原則として有効に機能するものでなければならな い。したがって,それほ,単紅原則として,個別的に,あるいほ列挙的に示さ れるだけでは不十分であり,その原則が適用される方向を体系づけることが,
必要である。こ.の点に.おいて,マクツの主張ほ.,有用であろう。
マクツは.,監査証拠論と判断形成論とを,統合して,つぎのように・方式化し ている。
1.立証すべき命題の認識
財務諸表は,立証すべき命題が総合されたものであるので,監査証拠の蒐集 活動に入るまえにり 財務諸表のなかには,立証すべき命題として,どのような
ものが含まれているかについて,十分に.認識しておか
(35) ねぼならない。
2.命題が,高度の信頼性をもつ監査証拠を必要とするものであるか否かの
評価
財務諸表にゃける命題が,より重要なものであれほ,そうでないものよりも,
より大なる信頼性をもつ監査証拠が,その命題を立証するため紅必要であるの
(36)′
で,その命題自体について評価しなければならない。
3.時間および費用の枠内での監査証拠の蒐集
立証すべき命題に.対して必要な監査証拠を蒐集するために,監査証拠の種類 その適用可能性および基礎的監査技術の知識に基づいて,活動する。その場合
(37)
経済性を考慮しで,証拠蒐集活動が行なわれる。
4.入手した監査証拠が,正当なものであるか否かの評価 65)RLK Mautz and H..AShaIaf,0♪.ci t.,ppl103〜6
(36)∫∂査d.りpp.104〜6 即)∫み≠■♂.,p・106
第罪巻 第1・2号 112
−」ヱ2−
入手した監査証拠を,判断形成のために使用するまえに,監査証拠の適合性 信頼性および有用性を絵詞しなければならない。監査人が,入手した資料を,
監査証拠として承認する払至ろまで,疑問をもちつづけ,かつ注意深く評価し
(38) なければならない。
5.立証すべき命題軋対する判断の形成
監査人は,十分に.自制して−,財務諸表の命題は,判断に・必要な監査証拠の種 類と範囲がそろうまでほ,あくまでも仮定的なものに・すぎないと考えなければ ならない。このような態度に.よって,命題紅対する必要な証拠が入手され,合
(89)
理的な判断が形成される。
このよ1うなマクツの判断形成の方式化は,監査証拠の行為原則を体系づける のに.,有用であると思われる。したがって,監査証拠論は,判断あるいは意見 の形成理論を中核に.して体系づけられるべきであり,監査証拠論ほ,そ■の−・部 に.,判断あるいは意見形成に関する理論を含むべきである。それは,監査証拠 の蒐集,評価活動が,判断あるいは意見形成活動と,表裏一・体をなすことから
も当然のこ.とである。
さらに.,監査証拠論に.おいては,監査証拠の本質論,証拠蒐集,評価活動に 関する行為原則た.っいで,それらの基礎理論を具体的な監査手続論に・橋渡しす
る理論が,必要であると思われる。 すなわち,財務諸表に・対する意見形成を目 的として二,監査証拠が,どのような方向に累積されるべきか,たとえば,財務 諸表の項目を中心に.監査証拠が累積されるのか,あるいは,わが国の監査実施 準則のように.,会計プロセスを中心にして,監査証拠を累積するのか,という 問題に.ついて,1っの方向づけを行なう理論があってよいと思われる。これに 関して理論化が行なわれるならば,「監査基準および手続」が受取勘定の確認 および棚卸資産の実地棚卸の立会を,監査証拠論の最後に・おいていることの,
説明もえられるであろう。
錮.抽吼,pp・106〜9。
捌Jろ紀.,pい109・