235 ー 43−・
長文式監査報告書について
森 実
Ⅰ ほ じ 逆) に
米国でほ.,監査報告書は,一般に短文式監査報告書(ShoIt−Form Report)
と長文式監査宇陀書(LongpForm Report)とに分けられる。短文式監査報告 書ほ,−・般に公表する目的で作成されるために,きわめて簡潔かつ標準化された 様式および内容をもっている。これに対して,長文式監査報彗酋は,ある限られ た範囲の関係者把捉示することを目的として作成されるので,短文式監査報告 書より相当詳細な内容が記載されるが,その内容お手び様式は統一的でほない。
ここで,米国の監査報告書が,短文式監査報告書と長文式監査報告書に・分け
られるといっても,これら2つが結合して,1つのまとまった監査報告として
機能するとか,あるいほ,すべての監査業務にほ,この2つの監査串良含蓄を,監
査の結論として,何時でも作成しなけれはならないというのでほない。たとえ
ば,米国の短文式監査報告書と長文式監査報告書に類似したものに,西独の株
式法(Aktiengesetz1965)の第166条の監査報告書(Priifungsbericht)と欝
167条の監査証明書(Bestatigungsvermerk)、がある。E..の西独の監査報告書
ほ,米国の長文式監査報告書紅類似して,相当詳細な内容が記載されるもので
あり,しかもその記載内容ほ株式法紅よって規定されている。西独の監査証明書
は米国の短文式報告番紅類似して,監査の結論を簡潔に表明し,一般紅公表され
る。とれに対して,西独の監査報告書は,会社の機関へ提出されて,公表され
ない云 米国の監査報告書と西独の監査報告書の性格の対比も,興味のある問題
であるが,本稿でほ,そこまでとりあげない。ただ,ここで指摘しておきたい
のほ,西独の株式法では,監査報告苔と監査証明書との2つを,必ず作成しな
ければならないのであって,どちらか・一方だけで,すませるということは許さ
れないということである。これに対しで,米国の長文式監査報告杏と短文式監
罪40巻 罪3・4幸;
236
ーー イ▲才 一−
査報告書との関係ほ,西独における関係とほ柏達して,その両方を作成すること
し11
は別にさしつかえないが,どちらか一一・方の作成のみでよいという関係把.ある。
もちろん,米国でも,−・般に対して■公表する監査報告雷の場合にほ,短文式 報告書を作成しなければならないことは.明ら【かであるが,すべての監査業務を 通じてみた場合,長文式監査報告書と短文式監査報告書の両方が作成される場 合も多く,さら紅長文式監査報告書のみが作成される場合が,ずっと多いとい
(2)
われる。したがって,米国では,短文式監査報告酋よりも長文式監査報告書の はうが非常に.多く作成され,それだけ,長文監査報告書が広く普及していると いえる。
このような事情を背景に.して考えれば,米国の監査報告書を論じる場合紅は,
単に.,短文式監査報告書だけをとりあげるので転十分といえ.ない。やほり,長 文式監査報告書をもとりあげて,それが米国でそれはど普及したのは.,どのよ
うな理由があったのか,また,その本質的な目的および性格をどのように規定 することができるか,その記載内容の構成ほ.どのようになっているのか,さら
に長文式監査報告書を作成する場合にほ,どのような注意が必要であるかとい
うこ√となどを,究明しておかなければならない。
本稿ほ,この間題に関連して,若干の接近を試みるものであるが,短文式監 査報告酋との本賀的関連につい
また,長文式監査報告書といっても,その内容紅ついてほあまりしられていな いので,その議論の理解を助ける意味で,長文式監査報告書の具体例を,末尾 に掲げておいた。あまり長くないものを選んだが,もちろん,この例が,標準 的あるいほ模範的な意味をもつものでほなく,単なる一例にすぎない。
Ⅱ 長文式監査報告一番の概念
立ち入った議論紅入るまえに,その間題の対象自体を,ある程度,明確濫し
(1)西独株式法は,監査報告苔にづいて,第166条と167条とによって規定している。これ については,高柳電芳著i「監査報告讃論・・一一一ニドイツ法定監査を主題としてT月が,非常 に詳細な研究を展開している。
(2)AICPA,Auditing Standardsand ProceAnres,p.84.
長文式監奄報告書に.ついて
237
ー イ5・一一−ておかなければならない。すなわち長文式監査報告諸とほ.,何を指すのかとい うことを明らかにしておかなければならないが,本質的な概念規定ほ,すべて の議論が終った後でなければできないであろう。いま,ここでほ,一応の規定 を行なうにとどめて−おこう。
米国において,短文式報悪書については,その概念ほ.,かなり明確であるが,
長文式監査報告書紅ついてほ,まだ,十分に.整理されているということはでき ない。長文式監査報告書という名称自体が,種別を示す一般的な名称であって,
正式の,あるいほ具体的な呼称でほない。実際に.は,「監査報告書」とか,「監査 人報告書」とか,「検査報告書」とか,その他の標題がつけられていて,標題の
、二丁て1
統−・すら行なわれていない。長文式監査報告書の標題ですら,このような現状 であるので,いわんや,その記載される内容には,非常に.多くの相違があり,
その性格として中間報告章とか非公式な覚書のようなものまで含あている場合
(4) もある。
しかし,理論的紅は,長文式監査報告潜のいくつかの点について−,共通の理 解が可能に思われる。
その第1点は,それは正式の監査報告書であって,非公式のものでほないと いうことである。マクツほ,監査報告書を,正式のものと非公式のものとに分 ける。ここで正式の監査報告書というのほ.,監査の結果を要約し,それを文書 にしたものであり,これに対して非公式の監査報告苔というのは,正式の監査 報告書からほ除かれるが伝えたい情報,あるいは正式の監査報告書でほ時機を 失するような情報を伝えたいと思うとき,手紙またほ覚書のような非公式な形 で作成する監査報告書である。このように分けたとき,長文式監査報告書は,監
(5)
査の結果を正式紀伝える正式の監査報告書と考えられる。なお,AIAの調査で ほ,正式のものをオピニオンタイプのものとし,こ.の他に中間報告書も,長文
(3)AIA,Long Form Report PIaCtice,P・11
(4)Ibid、,p・11
(5)RKMautz,Eundamentalsof A11diting,p。504=l.マクツの監査報告沓の考え方に ついては,つぎの拙稿を参照されたい。「監査報告書の機能と機構紅ついて」,『香川
大学経済論温喜j,昭和33年5月。
238
節40巻 第3・4号− イ(;−
\6〕
式監査報告書紅含めてとりあげている。
つぎに,飴2点としてほ.,長文式監査報告書は,総合的な財務諸表監査の結 果として作成されるものであって,特別の目的に・よって行なわれた,あるいは特 定の範囲に制限された監査,いわゆる特別監査の結果として作成される特別報 告書とほ,区別されなければならない。これほ,多くの論者の指摘するところ
しニ)
である。とくに.,スデットラーは,これを強調して,真正長文式監査報告書
(8)
(True Long・Form Report)という言葉を用いている。
第3点は,短文式監査報告書も,義文式監査報告書も同じように財蘭諸表監 査の結果として作成されるものであるが,両者は,相違する内容をもつ。マク
ツは,ただ1つの相違があり,それほ,長文式監査報告書が,読者に関心のあ
(9)
る種々の問題紅ついて.の注釈を含んでいることであるとする。また,スタット ラ−は,この点について,短文式監査報告書ほ,監査の範囲と専門的意見とを 記載したものであり,これに対して長文式監査報含蓄は,これに加えて,詳細
(10)
な注釈を記載したものとしている。同じように,グー・シソおよびオーエンスも,
両者の間の相違ほ,「補足的情報(supplementaryinformation)」にあるにすぎ
l11)
ないという。いずれに.して:も,長文式監査報告書の特質は,詳細な補足的情報 を含むことにある。
これに対して−,グリネエ−か−およびバーほ,補足的情報の内容を分析して−,
若干異なる見解をのべている。かれらは,短文式監査報告書と長文式監査報告 書との相違点には,2つあるとする。その筋1は,長文式監査報告書ほ,経営 者の表明を拡張しているというこ.とである。すなわち,経営者の表明が,財務 諸表から補足的財務情報に.まで拡張される。その節2は,長文式監査報告書は,
監査人の表明を拡張しているというこ.とである。すなわち,そこでは,補足
(6)AIA,Op小Citu,p一11.
(7)R.K・Mau㍑,Op・Cit小,p・504
(8)H.Stettler,Auditing,p心600
(9)R∴K.Mautz,Op・Cit.,pp・509〜10
(10)HStettlei,Pn571・
(11)J AlCashinandG小CいOwens,Auditing,p・r535
長文式監査稲葉苦について ーーJ7 −一
239的財務情報把.対して.監査人の着任を拡張するとともに,監査範囲の記述を拡張
(12)
して:いる。
このようなグリネエ−か−・およびバーの見解ほ,いわゆる二重責任の考え方 に基づくものである。長文式監査報悪書における補足的情報の表示に・ついて は,監査人の引き受ける責任の程度を明確に記載しなけ■ればならないというこ
とについてほ,後でまたふれるところである。かれらが,こ.こで,補足的財務 情報に対して監査人の責任を拡張するというのほ,すべて−の補足的財務情報に 対して自動的に.拡張されるのでほなく,監査人が責任をもちうるものに・ついて だけ,限定して,拡張されるものと考えるのが妥当であろう。
一応,以上のような3つの要件を備えたものとして,長文式監査報告書をと りあげていくことにしよう。
Ⅲ 長文式監査報告書の普及の要因
米国紅おいて−,長文式監査報告書が,何時頃か年,どのような夷機によって 作成されるようになり,それがどのような経過を辿って,かつどのような要図 の影響をうけて普及するようになったかということを,明確にするのは困難で あろう。この理由の1つは,長文式監査報告書ほ,法律によってその作成を要 求されたものでほないから,その様式および内容が,非常紅多様であって,統 一・されていないということである。もう1つの理由は,この長文式監査報告書 ほ,・一・般に公表を目的とせず,社会の表面にあらわれることが,非常に少なく
〈13)
て,議論の対象とされることがあまりないということである。このような理由 から,長文式監査報含蓄について,文献的紅明確に跡づけることほ・できない0
これに対して,米国の短文式監査報告書の場合に.は,1930年代の1連の証券 投資家保護の法律紅よって,証券市場で資永調達を行なう会社に.対して会計監 査を要求するように.なるまでは,それほ,任意の監査契約において作成されて いた。しかし,短文式監査報告書は,−・般への1公表を目的としていたので,早く
(1辺 R.L.Grinake工and B.BhBarr,A11diting,p.517
(13)AIA,Op.Cit.,p、9
第40巻籍3・4弓
−⊥ 4β一
240から,その様式は統一・される傾向にあった。この米国の短文式監査報告番に二.大 きな影響を与えたのは,英国の監査報告書であるととほいうまでもない。
英国の株式会社の会計監査は,1844年の会社法以来,法的な支持が与・えられ,
これに基づいて公共会計士軋よる会計監査が発展してきた。ところが,前世紀 末頃紅,英国の資本家の米国企業への投資を契機把して,公共会討士による監 査が,英国から米国に.伝えられることに∴なった。このような事情を背景にし
て,当時の米国で作成された短文式監査報告書ほ,英国の実務そのものの模倣 であり,このような状態は,1920年代の後半頃までも醜いた。しかも,その米 国の会計監査が,今世紀のほじめごろから,英国式の会計監査を脱して,米国 独自のいわゆる貸借対照表監査へと展開していったときでさえも,その短文式 監査報告書ほ,やほり,英国の実務の模倣のまま紅とどまっでいた。そして,
米国独自の短文式監査報告書として発展するよう把なったのほ.,証券投資家保 護の思想があらわれてからであり,会計原則および監査基準の導入とともに行 なわれた。このように,米国の短文式監査報告書の発展についてほ,かなり明
(14)
確に跡づけることができる。
ところが,長文式監査報告書の場合に.は,その事惜をあまり明確にすること ほできない。たとえば,米国へ会計監査が伝えられた当時の英国に,長文式監 査報告書が存在していたのかどうか明らかでない。しかし,米国のよう紅,短 文式監査報告書と対比される形にまで普及していなかったようである。また,
英国では,前世紀末までに,監査報告書が,極端紅まで簡単紅なって,問題に なったことが文献にみえている。したがって,米国の長文式監査報告書に.,英
(16)
国の実務が影響をおよばしたということほ考え.られない。
米国の長文式監査報告畜ほ,短文式監査報告寄を,補足したり,また,それ
(1亜 米国における監査報告書の展開の歴史については,つぎの拙稿を参照されたい。「米 国払おける生成期の監査報告婁濫ついて」,『■香川大学経済論道』,昭和34年7月。「米 国における監査報告婁の発展」(1)および(2),『香川大学経済論温』,昭和35年7月および i2月。
u5)BいMagee,Dicksee′s Auditing,ppハ294〜5・これについて㌧は,つぎの拙稿でも,と りあげている。「英国の監査報告書の構造と論理」,『 香川大学経済論鼠』,昭和41年6
月。
長文式監査報告書について
241 ー 49 −・
(16)
を包括したり,あるいほそれに代脊するものであるとされる。したがって,長 文式監査宰帽章の作成にほ,いろいろなケースがあり,腰丈式監査宰瞳讃と一 諸に作成される場合もあり,また,長文式監査報告書たけが即独に作成▲される 場合もある。そして,実際に.ほ,長文式監査報告告が,単独で作成され、る場合が 非常に多く,また,作成される長文式監査報告者の数ほ,短文式監杏報告書の数 倍にものぼるといわれる。このように,米国でほ,長文式監査報告苔の作成ほ,
非常に普及しているといえるが,これがどのような要因に基づいているかを,
考えていかなけれほならない。
第1の要因としてほ,米国でほ,公典会討士による会計監査ほ,英国紅おけ るように法砕の支持から出発したものでほなく,任意のもとのされていたので,
公共会言†士が自分のカで,会討監査の意義を依願人に理解させ,監査業務の契 約を開拓していかなければならなかったということをあげることができる。こ のような事情の下においてほ,短文式監査報告普は,実際的にほ,あまり意味が 認められなかったであろう。というのほ,米国では,前世紀末においてほ,公 共会計士による会討監査の意味は,まだ社会的に認められていないで,渾に,
英国の実務の模倣として−しか行なわれず,あるいは,ニ部の巨大会社とか生命 保険会社のように社会を意識しほじめた会社が,自発的に.公共会計士による会 計監査を採用した以外ほ,従業員の会計上の不正または誤謬の摘発という目的
も1:1
紅利用されるにとどまっていたからである。
このような段階でほ,公共会計士は,監査報告書において,会計監査とほど のようなものであり,とのような業務が行なわれるかについて詳細な事項を記 載することが必要であったであろう。このような詳細な事項の報告によって,
依頼人は,公共会計士が実施した業務の内容をしり,したがって会言十監査の意 義および有用性を理解することができるし,公共会討士も,自己の責任を明ら かにすることができると考えたであろう。
(161E‖LhKohler,A Dictionary for Accountants,p.46。
郁 拙稿,「米国における生成期の監査報告書」,ト香川大学経済論叢ノ峰柵34年7月
第40巻 第3・4号
242ー50−
このよう紅監査手続紅関する注釈の多く記載された長文式監査報告書が多か らたことほ.,マクツの指摘にもある。すなわち,従来ほ.,貸侶対照表について ほ,はとんどすべての項目に.ついて,また,損益計算書についてほ,相当の項
目紅ついて,監査人が実施した監査手続が,長文式監査報賃雷紅記載されると いうことが,−・般的であった。しかし,次算に,監査意見について標準形式が 形成されるようになり,また公共会計士の職業的地位が高まってくるにつれて,
長文式監査報告書において,会計監査の性格を示す必要が,だんだんと減少し
(18)
てきたことが指摘される。
当初において,会計監査紅ついての結論よりも,むノしろ,実施された監査手 続を詳細に記載したということが,1つにほ,公共会計士の責任回避の手段で
(ユ9)
あったことほ,モン寸ゴメリ−の畜に.もみられるが,そのような実務が,現在 に.まで残って,1つの最文式監査報告書の特徴となっているぁほ,一腰に認め
(20)
られた監査基準のなかった時代の遺物であるともいうことができる。
ともかく,このような事実は,長文式監査報告書が,実施された詳細な監査 手続を報告することを,その橡能の1つとしていたということ,いわば公共会計 士の会計監査の業務報告の機能をもっていたことを示すものであるが,これは,
当時の公共会計士の会計監査が,任意契約の業務として行なわれなければなら なかったことから,公共会計士が実施した業務を依頼人に伝えることが必要で あったという歴史的事情に起因すると考えることができる。
第2点は,米国でほノ,公共会討士による会計監査が,企業の自発的採用に.ま かせられたので,公共会計士ほ,会討監査業務の他に,企業の経営者に役立つ 各種の建設的な業務にも,積極的紅力を入れなけれはならなかったということ である。たとえば,決算代理,各種の会計報告召の作成,会計組織の設定およ び立案などによって,公共会計士ほ・,企業に・,公共会計士の業務の有印性を認 識させようと努力する。このような公共会計士の儲度ほ,英国のように,法的
α8)R K.Mautz,OpCit,p,524
(19)Montgomery,Auditingt1912,p209
(抑 H.Stettler,OpCitL,p1631,
長文式監査報告普に.ついて
243
ー∂ユ ー
支持が与えられたところでほみられない。英国の公共会計士は,会計監査業務 とこのような建設的業務とを明確に区別し,同一・契約において引きうけようと ほしない。
これに対して,米国の場合にほ,会計監査の業務の過程において,このよう な建設的サービスを提供する機会を,積極的紅とらえようとする。そこで,会 計監査の業務と建設的サ−ビス業務を,同一・公共会計士が行なうととが多くな
る。 このような状況の下で,長文式監査報告書が作成されたと考え.られる。
すなわち,企業の会計帳簿に基づいて決算を行ない,ついで財務諸表を作成 する過程で多くの監査手続がとられる。たとえば,現金および有価証券の実査 を行なうとか,売掛金の確認を行なうとか,棚卸資産の実査またほ.立会を行な
うとかいった具合である。したがって,長文式監査報告杏に.,財務諸表項目に ついて実施された監査手続が記載される理由も理解されるし,また,同時紅,
公共会計士が作成した財務諸表について,依頼人が読んで理解し易いように,個 々の項目紅.ついての注釈をつけることも,至って自然なことである。これほ,
現在でも,ペルべおよびと−Fンが,公共会計士の業務において,会討監査と 財務諸表の作成とは相互結合的(inteIlocking)であるといっている点にも,
(21)
米国監査の素性が認められる。
このことほ,初期の監査報告書が,長文式監査報告書とはよばれないで,単 把.,報告書とか,監査報告書とよばれていたこと,さらに,長文式監査報告苔の 内にほ,必ず基本的財務諸表を含むこと紅なっていることに.よっても,示され ている。このように.,米国の公共会計士の会計監査が,建設的サービス業務と,
密接な関係を保ちながら発展してせたという事情が,長文式監査報告書の普及 に.大きく影響したと考えられる。
■欝亭の要因ほ,米国に.おける公共会計士の会計監査の発展紅ほ,金融機関の 要請が,大きく作用していたということである。英国から米国へ,前世紀末紅,
公共会計士による会計監査が伝えられたときにっ 米国でほ,株主保護のための
C21)SW..Peloubet and H‖Heaton,Integrated Auditing,p.73..
244
欝40巻 第3・4号
ー 52−
会計監査といった英国の制度が採用されないで,米国独自の貸借対照表監査
(22)
が,金融機関の強い要請を背景にして,あらわれてきた。
このような酬青の下に.おいて,長文式監査報告書砿・も金融機関の要請が反映 する。モソトゴメリーの『監査論』の1912年版に・も,これに関連した記述がみら れる。かれほ,投資銀行についてのべて−いるように思われるが,つぎのようにい っている。すなわち,銀行家ほ,顧客に.提供する有価証券について,企業全体 を保証する義務がある。そこで,鏡石家ほ,(1)公表に・通した様式での資産,負 債,純益の表示,(2)読み易い証明書,(3)銀行家自身が利用するために,できる
だけ多くの点に.ついて,監査人の注釈のついた補足的報告書などを希望すると
(23) いう。当時の米国でほ,銀行が,短期から長期までの−‥切の資本調達の面倒を
み,かつ企業の設立から解散までのすべての手続に参加し,指導的な立場をと
(24)
っていたという事情がある。そこで,社債などを発行する場合に.は,目論見書 につける一・般公表日的の短文式監査報告書(これほ,当時,−・般に,証明音と
よばれた)と,銀行自身が,企業の状態を判断する資料として,長文式監査報 告書せ要求したのであろう。
しかし,当時,貸借対照表監査紅,大きく影轡したのほ,銀行の短期金融で あったといわれる。これほ,単名手形の割引によるものであるが,この場合,
米国でほ,手形仲買人が,必ず介在する。そこで,銀行が,手形仲買人から手 形を買い入れるときは,監査証明苔つきの貸借対照表を提出させることを常と
(25)
したことから,信用監査の盛行をみた。このような信用監査紅関連して,長文 式監査報告書の意義は.,どのように考えられるであろうか。この場合でも,必 要であれば,長文式監査報告書を要求したであろう。しかし,当時,手形を発 行する企業ほ,−・般に.,大規模で,しかも優良会社であったので,企業の短期 の流動性をみればよいという考えから,短文式監査報告書つきの貸借対照表で
提2)拙稿,「米国における監杏報告書の発展(1)」,軒香川大学経済論粗製昭和35年7月。
C23)Montgomry,Op・Cit,,p208り
(2咄 =拙稿,「米国における監査報告書の発展(1)」57〜63ぺ−ジ。
(251前掲稿59ぺ・−汐。
245
長文式監査報告憩について −・JJl
(26)
満足したと考えられる。
ここで,このことを例証するために.,現在紅おいて,長文式監査被告書が,
金融機関の要請をどのように.みたしていると考えられているかをとりあげて−み よう。スチットラ−は,金融機関の必要性を,いくつかの場合に分けて二者えて いる。すなわち,多くの場合に.,金融機関ほ,短文式監査報告書で満足するの が常である。とくに・,大会社であり,かつ信用度が高い場合には,短文式監査報 告書で十分である。しかし,中小規模の会社で,しかも信用疋が限界.灼である
場合に・は,金融機関ほ.,長文式監査宰陀古を要求し ,それに.よってえられた惜
(27)
報から,企業の信用度を判定する。以上のような論理ほ,当時においても,あ る程度妥当したであろう。
これに・関連して重要であるのは,長文式監査報告酋に,監査人が,財務諸表 の項目に.関して実施した監査手続を詳細に記載サーるのほ.,1つに.ほ,金融機阻 の要請であったということである。グリネエ−か−およびバ−は,つぎのよう に.指摘している。すなわち,監査人が実施した監査の性格を示すため紅は,か れの監査が,−・般に認められた監査基準に/準拠して行なわれたということを表 明すれほ,十分である。それに.もかかわらず,金融機関などの要請に.よって,
従来通り,詳細な監査手続を記載することが行なわれている。その要諦と.して
(28)
非常に多い甲は,受取勘定の確認と実地棚卸の立会とに・関するものである。
金融機関が,長文式監査報告書に.おいて,このような事項の記載を要求する のほ.,これらの詳細な監査手続に・よって実施された監肇が,とくに・かれらが重 大な関心をもつ受取勘定とか棚卸資産について,どれはど信頼できるかを判断 し,さらに.企業の信用度ノの判定に役立たぜようという考えに.基づくのであろ う。しかし,これは,公共会計士の職業的地位が高まり,かつ一般に.認められ た監査基準が明らかに.された今日に.おいては.,もほや必要ゐない要求であると いえる。そこで,グリネェ−か−およびバ−は,公共会計士闇.,依通人に,こ
㈹ 拙著,『近代監査の理論と制度㍑138ぺ一汐。
C27)HSttetler,Op.Cit.,p608,
C8)R L.Grinaker and B.BBarr,Op.Cちt..,p。520
246
第40巻 第3。4号−− 5凄 一
のような情報の不必要なことを納得させるように,努力しなけれほならないと
(29)
いう。
欝4の要因としては,企業の経営者の要請があげられる。前世紀末あるいは 今世紀初の米国の企業に.おいてほ,経営者に,経営管理に.役立つように,企業 の状態を,理解し易い形に.まとめた会計資料を作成し,かつ提出することので きる会計鶴城や,それを担当する有能な職員を備えたものは少なかった。これ に.対して,公共会討士ほ,会言†監査の業務の過程において−経営者紅有用な多く の情報を入手し,さらに.理解し易い形に.まとめる機会があり,またその能力お よび経験を十分に.もっている。また,さきにものぺたよう把.,公共会討士は,そ の中心的業務である会計監査が,企業⑳自発的な採用にまかせられていたの で,公共会討士業の有用性を示すことのできる建設的サービス紅ほ,積極的に 手をだす傾向があった。このような状況の下に.おいて,企業の経営者が,直接 的な有用性を認識することのできる,朗務諸表項冒紅ついて詳細な説明的注釈 を加.えたり,企業の財政状態とか経営成績についての説明を記哉した長文式監 査報告書を希望したことほ,当然であろう。
しかし,企業の経営組織が近代化されるにつれて,大規模の企業ほ.,自己の 内部観織把.,このような経営管理に必要な会計資料を作成し,かつ提供する会 計組織を備えるように・なる。というのは,公共会計士が,このよう年会計資料 を作成するよりも,企業の内部機関が,担当するはうが,企業の必要町応じた
(30)
資料を,能率的に作成することができるからである。したがっモー,現在の企業 において,公共会計士に.よる長文式監査報告書に.よって,経営管理に.必要な情 報を求めようとしているのは,このような組織を設け,かつその担当者をおく
(飢)
だけの力のないような小規模の企業だけであるということに.なる。
さらに,スデットラーは,このようないわば経営者目的の長文式監査報告苗 も,次第に−L般的でほなぐなりつつあるという。なぜかといえ.ば,もしも,経
桝りIbidn;p..520
即)EL.KohleI,Auditing,p‖598
飢Ibid.,p.608.
長文式監査報告蛮濫ついて
247 ー・55 −
営管理笹必要な会計資料が入手できない場合に・は,企業に,・それらの会剖資料 を提供できるように・会計粗相の改層を提案する与とが,公共会討士のサービス の有用性を示すこと紅なる。また,たとえ.,会計組織を設けたり,そのための 職員を雇うこキのできないような小規模の企業であっても,長文式監査報告書
以外の方法をとるようになる。すなわち,問題を特定して,それを特別に調査 してもらって,特別報告書を作成してもらうようになる。このように,スタッ
トラニーは,経常者目的の長文式監査報告苫が,特別視彗書に代わっていくこと
(32)
を指摘している。
このような議論が,ある程度正しいことほ,AIA(現在のAICPA)の長文式監 査報告書の実儲調査に・おいて,その収集した資料の大部分が,小規模企業のも
(33)
のであったということによってもうかがわれる。
しかし,若干,別の考え方もありうる。もしも,企業が,内部に,経営管理 紅必要な資料を作成する組織を備えていたとしても,その資料にほ,それを内 部組織が作成したということに.よって限界がある。たとえば,視野が狭くて大 局的な判断ができないとか,内部的な情実がからんで,問題点を明確に/できな いとかいうことがある。これに.対して,外部の公共会計士であると,視野も広 く,また多くの企業に.ついての経験をもっているので,より的確な論評を加え ることができるし,企業に・対する第三者としての客観的な見解を示し,遠慮す ることなく問題点を指摘することができるという利点がある。したがって,魂 在でも,経営者目的の長文式監査報告書が有用であるという見解があろう。
Ⅳ 長文式監査報告書の本質
米国において,長文式監査報告書が,非常に.普及した要因を,これまで探っ てきたが,それでほ,その本質をどう考えればよいかほ,なかなかむずかしい 問題である。それが,米国に.おいて,どのような札的をもち,どのような機億 が期待されていたかに.ついてほ,これまでにものべたところであるが,ここで
州〃二刊叫 β 侍 ︑
Ibidりp633小
AIA,Op.Cit.,p.633,
248
第40巻 箆3。4弓ー 言(;l一
は,若干,論理を整理してみようと思う。
ペルベおよびと−トンほ,長文式覧査報告讃ほ,多目的であるとし,それほ.,
つざの4っの機能をもつとしている。
その第1の磯掛ま,それが仝封記録の正式な部分としてほたらくことである。
すなわち,公共会封士が,その業務においてり 財務諸表と会計監査とを相互 結合的にしたり,また立証するために非常な注意をほらったということによっ
て,長文式監査報皆讃には,真実性および壌終性が与え.られる。その結果と して,それは,放高経営者,租税査察官,軍収の監査官およぴその他の人々に よって,基本的に.参照すべき資料として承認されるように.なる。ところが,こ
ういった機能ほ,監査調書ももたないし,大会社の討辞書類および報曽書もも っていないものである。このように,ペルベおよびヒートンほ,長文式監査報 告召が,信頼性を賦与された会計記録の1部分として役立つことを,算1の機
(3i)
能としてあげている。
つぎに.第2の機能として,ぺルべおよぴヒートンほ,それが,貸借対照表お よび損益計算書に表示された以上の情報を提供することをあげている。克とえ ば,銀行家の補足的情報に対する最少限の要求として−,投資に・例をとれば,そ の性質,取得価額,時価,帳簿価額などに・ついて,投資の各内訳項目毎に.,十 分な説明が必要である。これほ.,単に・,1例にすぎないが,多くの関係者が,
様々な補足的情報を要求しており,長文式監査報誓書ほ.,このような補足的惜
(35)
報を提供する機能をもっている。
ぺルべおよび宰一−トンは,さらに・,第3の機能として,長文式監査報告書は,
情報を文章の形で提供することをあげている。すべての問題が,数字で表示で きるわけではない。そこで,長文式監査報告書の本文には,たえば,貸付契約 の条件の概略を記載したり,ストライキの日付を記載したり,rさらに利益分配計 画の採用を髄烏したりする。−・般に,長文式ざ左査韻語茸の本文iこは,財務諸表お
よび付属明細L表がものがたることを,適正に糾萌するのに必要な事実に閲す
(34)S.W・Peloubet andⅡ・Heaton,OplCitりpp74〜5
(35)Ib沌.,p,75,
長文式監査報告畜について
249 ・−57 −
($6)
る情報が,記載される。
これに関連して,ぺルべおよびと−・トンは,つぎのような注意を与.えてい る。かれらは,長文式監査報告書には,監査人の勧告および解釈を記載すべき でほないという。なぜかといえば,もしもこのようなことを記載すれば,全体 としての長文式監査報告苔の正しさというものを,そこなってしまうからであ る。そして,勧告とか解釈が必要な場合にほ,特別報告竃とか毘二.婆とか,ある
(37)
いほ口頭紅よって行なうペきであるという。
このような考え.方は.,実務においても,かなり支持されているようで,内部 統制組織とか会討処理に.ついての助言あるいほ勧告についてほ,別個の文書と
(さ8) して,作成されることが多いといわれる。
しかし,そうほいっても,これほ監査人自身の解釈を差し控えるようにと注 意しているだけであって,長文式監査報告苫に.おいては,監査人は,読者の解 釈を助けるように・しなければならない。そのために,重要な金額および諸関係 に.注意を与えたり,集計したり,再分耕したりして,その鼠点を魂らかにする。
(39)
本文も,その役割をもっている。
最後に,第4の機能として,監査範囲についての追加的情報の提儲をあげて いる。というのは,短文式監査報告書の範囲区分は,極端に一・般化された記載
しか行なっていないが,関係者のなかには,より詳細な情報を欲するものがい る。たとえば,信用供与者は,ある特別の監査手続がとられたことを確かめる ために,補足的情報を必要とする。経営者およびその他の関係者も,また,補 足的情報を必要とするかもしれない。また,関係者のなかに偲,監査手続の内 容をしらないものもいるので,長文式監査報告書のなかに.,監査範囲について
(40)
注釈を加えておくと,有用的であり,また,啓蒙的であるとのべている。
以上が,ぺルべおよびと・−トンの,長文式監査報告書の機能濫潤する見解であ
(36)Ibid.,p∴75
(37)Ibid.,p75
(38)MElMuIphy,Auditing and Theory,p195
(39)S.WPeloubet and王‡.Heaton,Op。Cit..,p,75
Ibidりpp.75〜6.第40巻 発3・4号 250
− ∂β −・
る。しかし,かれらのあげた4つの機能をみてみると,いずれも,補足的情報の 提供というこ.とに.しぼれるように思われる。すなわち,第1の長文式監査報告 書が,会計記録の正式な部分となるということも,それは,補足的情報が,長文式 監査報告書に含められるらと紅よって,正式の補足的情報として提示されるこ
とになると考えることができる。また,第2の機能ほ.,基本的財務諸表以外の補
足的情報を提供するものである。さら紅,第3の機能ほ,数字以外の文章によっ て表現した補足的情報を提供するものである。そして最後の第4の機能は,監 査範囲に.関する補足的情報を提供するものである。このように,補足的情報の 提供という与とに・,長文式監査報告書の本質を求めることができるであろう0
しかし,これに.は,基本的前提が必要である。それほ,長文式監査報告書が,
全体的な財務諸表監査の結果作成されるものであるということである0 このよ うな基本的前提の下に,補足的情報の提供という機能を考えなければならな い。いわば,そこに限界あるいぼ粋が設定されているのであり,これをこえた 機能を考えるならば,別の性質のものに移行してしまうことになる0 このよう な点から,監査人の責任の配慮とか,まえにのべたように,事実に関する情報 に限定して解釈を記載しないとか,助言あるいぼ勧告は記載しないようにする といった注意が必要になる。
ところで,短文式監査報告書も長文式監査報告書も,いずれも財務諸表監査 の結果を報告するという機能を,基本的にもっている。このi撮りでは,両者の 間には相違はない。そこに.おける相違を明らかにするものとして,補足的情報
(4ユ)
の提供があげられる。これほ,多くの論者が,とっている立場である。
それだから,財務諸表監査との関連で緒足的情報の提供の機能を考えていか なければならない。長文式監査報告書に記載する補足的情報は,すべて財務諸
(42)
表監査において監査人が作成した監査調書からえられる。ここでは,財務諸表
仏1)R.KMautz,Op.Cit。,pp509〜10・J・A・CashinandGC・Owens,Op,Cit,p一5351
(4訝 スタットラ−は,財務諸表の適正性紅対する意見の形成の過程で考慮しなければなら ない資料が,長文式監査報告書に・,補足的情報として記載されるのであり,これらほ,
すべて監査調書に.記入されているものであるという0‡王・Stettler,Op・Cit ,pl・631・
長文式監査報告藷砿ついて
251 ー∂9−
の作成とその監査とは,相互に.密接に結合している。長文式監査報告書ほ,こ れを整理した形で記載したものであるといえる。この意味では,長文式監査報
告書は,米国式の会計監査を,率直に反映したものということができる。
一般に.,補足的情報は,監査範囲に関する注釈と財務諸表に対する説明との 2つに分けられる。これは,マクツのいう手続的タイプの注釈と説明的タイプ
(43)
の注釈との分け方に該営する。監査範囲に関する注釈は,実施された監査の性 質を示すものとして,また監査業務の報告としての機能を,本来,有したもの と考えられるが,現在では,そのような記載は不必要と考えるものが多い。ま た,財務諸表に.対する注痍はゝ財務諸表をより理解し易いように.し,かつより 詳細な情報を提供するもので,企業に対して直接的かつ具体的関心をもつ関係 者が,必要とするものであり,現在では.,このような資料を作成する組織をも たない中→\企業に必要であると考えられる。
このよう隼,長文式監査報告書は,財務諸表監査紅おいて,そこに作成され た監査調書を,要約し,整理したままの形のものが,本来の姿であり,かつ財 務諸表とその監査とが,相互に結合した関係を示すものであったと考えられ
る?したがらて,本来,米国の長文式監査報告書は,会計監査の報告書として,
当然の形式であり,公共会計士の会計監査の企業への普及に.伴って,長文式監 査報告書も,企業のなかへとけこんでいったのである。
ところが,企業が大規模に・なり,資本調達の規模が全国的に.なってくると,
企業の利害関係者は,企業の財務諸表の総合的適正陰についての専門的会計士 の意見を求めるようになり,短文式監査報告書によって−満足することに.なる。
また,このような企業は,経営者の経営管理に必要な会計資料を提供する組織 を備えるように.なるので,このような点からも,長文式監査報告書は必要とさ れなくなる。
これに対して,公表目的の短文式監査報告書を必要としないような小規模の 企業に,公共会計士による監査が普及するにつれて ,これらの企業ほ,経営者
鳩)R.K.Mautz,Op・Cit.,pp.524〜5.、
第40巻 第3・4号 252
一−6〃−−
の経営管理紅必要な会計資料を必要とし,このような企業に.対する金融機関 は,信用の判定資料として−より詳細な情報を要求するので,長文式監査串良告召 が,より多く利用されるように.なる。これほ,現在において,長文式監査報告 書だけが作成されることが非常に.多いということに.よって,立証されるであろ
(44)
う。
ここで,スタットヲ岬のような,経営者目的の長文式監査報告書は,次欝広 一般的でなくなっていき,特別報告書が,これに・とって代わるという見解は,ど
う説明できるであろうか。その1つの理由ほ,長文式監査報告書の場合に.ほ,
そ・の読者の範囲が限られているので,読者の目申に・応じた報告番を作成するは うが合理的であ卑ということである。そのため問題を特定し,それを特別に調 査し,それについて特別報告書を作成したはうが有効であるというのである。
もう1つの理由は,長文式監査報告書は,あくまでも,財務諸表監査の枠内 にとどまる。ところが,公共会計士の有用性ほ,単に.,財務諸表について注釈 を加えることによってよりも,むしろ積極的に.,かれらの知識および産験を生 かして経営上の種々の問題点について,助言とか勧告とか,公共会計士の見解 を示したはうが,より大きく発揮される。ところが,長文式監査報告古ほ,こ のような助言とか,勧告とか,公共会計士の見解を記載すべきではなく,事実 に閲す−る情報鱒とどめなければならない。したがって,このような記戟は,特 別報告書によって行なわれる。このような公共会計士のサービス菜務が,現在,
マネL−汐メソト・サービスとして,その主要な業務として発展しつつあること は,こ.のような傾向を意味するものであろう。
これまでのべてきたように,長文式監査報告書は.,財務諸表の作成とその監 査の相互的結合を示すことであり,その意味における補足的情報の提供を本質 とする。このような機能によって,長文式監査報告書ほ,米国の企業のすみず みまで普及してきたのであるが,マネ一汐メソト・サ・−・ビス業務の盛行によっ て,特別報告書の形に.移行することが多くなると予想される。
㈲ AICPA,Op‖ Cit.,p.84:
長文式監査報告書について −− 6J−
253
Ⅴ 長文式監査報告書の内容
長文式監査報草書は,−・般公表目的の報告書でほ・なくその時々の契約によっ て,種々の内容を含むので,厳密な統一・性はない。しかし,それは,−・般的に,
短文式監査報告書,基本的財務諸表および補足的情報を含んでいる。
ぺルべおよびヒートンは,責任の観点からみれば,それは,(1)会社の責任の 部分と,(2)監査人の責任の部分からなるとする。会社の斉任の部分とは,基本 的財務諸表およびその付属明細表であり,監査人の責任の部分とは,監査範囲の 記述,意見の表明,および経常成績,励政状態,経営方針および諸状況の変化
の要約および説明である。かれらは,また,報告書作成の観点からみれば,(1)
前文または本文,(2)財瘍諸表,(3)付属明細表の8つからなり,8っとも,公共
(4〈i)
会計士が,作成するのが,−・般であるとする。
まえにものべたように,長文式監査報告書の特徴は,′補足的情報に.ある。マ クツほ.,この補足的情報には,一・般に,基本的財務諸表の明細事項,付表,統
りl;)
討的資料,説明的注釈,監査範囲の記述などが含まれるとする。そしてマクツ は,長文式監査報告書を特徴づけるものとして,とくに痙釈を■とりあげ,これ を手続的タイプの注釈(procedural−type COmment)と説明的タイプの注釈
(explanatorIy−type COmment)との2つに分ける。ここで,手続的タイプの注 釈とは,監査において実施した監査手続を,財務諸表の項目紅ついて記述する ものである。これに対して,説明的タイプの注釈とは,企業の観点から貸借対 照表および損益計算書に偏する情報を記載して,そこに表示された情報を読者
(47)
紅理解し易ぐするものである。
そして−,従来ほ,手続的タイプの注釈が,一・般的に行なわれ,貸借対照表の すべての項目および損益計算書の相当部分の項目について実施された監査手続 が記載された。ところが,意見の標準形式が形成され,かつ公共会計士の職業的 地位が高まるにつれて,監査の性質を詳細紅説明する必要が,次第紅少なくな
(i5)S.W.Peloubet and HHeaton,OpCit.,p73
(46)RK.Mautz,Op.Cit.,p.523
(47)IbidL.,pい524
欝40巻 欝3・4号
254ー62−
ってきた。さらに,公共会計士が,すぐれた思考能力をもち,また,企業の経 営活動や状況を説明する能力をもっていることを,−・般的に/認識させたので,
説明的タイプの注釈の機会が多くなってきた。この説明タイプの注釈にほ,い ろいろな種類のものがあるが,一一般に,総利益率の増減,運転資金の状態の変 動,費用の増減およびそれらの原因などが含まれる。こゐように,マクツほ,
長文式監査報告書の内容の特徴が注釈にあり,かつそれが手続的タイプのもの
(48)
から説明的タイプのものに移行してきたことを指摘する。
長文式監査報告書の記載内容の体系が,どのようなものが標準的であるかほ,
なかなかとらえにくい問題である。たとえば,グリネ,エーーカーおよぴバーほ,
長文式監査報告書の補足的財務情報を,財政状態に関するものと,経営成績常 関するものとに分けて記載するという形をとっている。このように,問題中心 に.,記載すると,読者の−・般的な理解がえられ易いであろうb これは.,つぎの ようになってし、るが,その例ほ,参考のために.本稿の末尾に掲げる。
1.独立監査人の報告書 2.基本的財務諸表
a.貸借対照表 b.損益計算書 C.剰余金計算書 3・補足的財務情報
a.沿革
b.財政状態の分析
(1)比較要約貸借対照表
(2)運転資本の分析
(a)資金運用表
(b)運転資本の個別項日の注釈
(3)その他の適当な貸借対照表項目の分析および注釈
極窃‡bid.,ppけ524〜5.
長文式監査報告啓に、ついて
255
ー63−
C.経営成績の分析
(1)比佼要約損益計算署
(49) (2)適当な個別的損益項目の分析および注釈
つぎに.,より具体的な内容の問題について.,『モソトゴメリー儲査論』転よっ て,説明を加えて−いくこと匡.する。そこでは,長文式監査報告書の内容を,(1)
本文,(2堪本的財務諸表,および(3)付属的またほ補足的計算書および明細表の 3つに分け,本文には,意見,監査範囲,説明的注釈,比較,比率および統計
(50)
的資料を含むものとする。以下,本文について−の説明をみてみよう。
(1)監査範囲および意見についての注釈
すべて−の監査手続を実施し,そして財務諸表に対して無限定の意見が表明で きる場合には,短文式監査報告苔の範囲区分の文章が,監査範囲の簡明な表現 として−,すぐれている。それにもかかわらず,金融機関などほ,監査手続に.つ いて−補足的情報を要求する場合が多い。監査手続の詳細な報告の方法には,2 つある。その1つほ,実施した監査手続を,ひとまとめに.して−記載する方法で あり,もう1つは,貸借対照表および損益計罫書の各項目毎に.記載する方法で ある。そしで,もしも意見に限定事項がつけられる場合には,適当な見出しを
(51)
つけて,それについて詳細な注釈を加えることが必要である。
(2)沿革(Organization and History)
初度監査の場合,またほ経営者が交代したような場合には,沿革を記載する のが望ましい。この沿革として,一・般に.,つぎのような項目が含まれる。
設立の日付および場所,営業の性質,当初の授権資本および発行済株式数お よびその後の変化,株式発行により取得した資産,会社の合併または買収が行 なわれた場合には,その会社についての説明,初度監査以前の代表的な期間
(たとえば10年間)の利益および配当の要約,過年度に購入した固定資産の内 容,固定負債の目的と内容,子会社がある場合には,その株式所有の割合,営
(49)RL.Grinaker and B・BIBarr,Op・Citりp 319
(50)NlJ‖Lenhartqnd PlL Defliese,Montgomery′s Auditingl1957∩
臥)Ibid‖,pp.518′・・′9
鰐40幾 筋3・4号 256 一64−
(52) 業の性質およぴその他の資料が記載される。
(3)年度中の重要な変化の要約
これほ,通常,詳細な注釈のまえに記載することが必要なものである。これ紅 ほ債務の返済,増資,新設備またほ研究開発に対する投資,新製昔の発売,市 場または販路の拡張,販売方針およびその他の経常方針の変更,年金制度また
(53)
は利益分配制度の導入などの記載が含まれる。
(4)経常成績について−の注釈
企業の経営成績について注釈を行なうまえに.,比較要約損益計算書を記載し て,ここから出発する。比較損益計罫書によって,損益の増減変動の原因せ 究明していく辛がかりがえられる。たとえば,なぜ,売上が増加したのにもか ゃわらず,総利益が減少したのかとか,売上が増加すれば,売⊥の単位当りの
販売費ほ減少するのが普通であるのに,なぜ上昇しているのかといった具合で ある。
ところで,損益の増減変動に.注釈を加えるまえに,すべての事実を入手して いることを確かめなければならない。また,前年度と今年度の経営成績を比較 するのに障害七なる重要な変化ほ,詳細かつ愚的に記載しなければならない。
なお,会計処理の継続性の違区も,比較可能性に関連する問題であるが,これは
(4$)
意見区分の限定事項を立証するものとして,詳細に記載しなければならない。
(5)貸借対照表の諸項目に対する注釈
この部分には,資産および負債の構成内容およびその表示の基礎について詳 細に.記載するのが適当である。この場合,監査範囲についての注釈とか,監査 における発見事項が,貸借対照表項目についての注釈に含まれることがある。
貸借対照表項目の注釈の出発点となるのは,比較要約貸借対照表である。
(イ)資金運用表
比較要約貸借対照表から,運転資本の源泉と用途とを明らかに.する資金運 62)Ib沌,p519
(5謝Ibid.,p519
(54)Ibid。,Pp519〜20
257
長文式監査報告苔について ーー65 −
用衰を作成する。この資金運用表に・よって,比較貸借対照表では明らかに.する ことのできない財政状態を,的確に.分析す・さことができる。したがって,事業 家は,この計算書のはうが,より容易に.理解できるので,長文式監査報告畜の
、ユニー1
なかでほ,こ.れをもっとも有用なものであるとしている。
(ロ)現
金
現金に㌧関連して−,承認をうけていない証憑書類で支払が行なわれたり,承認 をうけずに従業員に対して貸付が行なわれたりしている場合にほ,長文式監査 報告書に,注釈を記載しなければならない。また,多額の預金が,少緻ずつ分 散しているような場合には,手数料の節約のために統合するように注意するゐ
(56) が適当である。
H 受取勘定
長文式監査報告書の読者ほ,受取勘定の状態およびそ・の貸倒損失の引当の十 分性についての監査人の意見に.関心をもっている。短期資金を貸し付けたもの は,前年と今年度とを比較した受取勘定の年令調べを希望するのであろう。受 取勘定のなかで,期限の到来したものがあれば,決算日後に.回収された金額も,
興味のある資料と視るであろう。国外の顧客に対する受取勘定は,その回収に 特別の問題があるような場合には,一腰のものとは区別したはうがよい。平均 の回収期間を計算し,会社の信用条件と比較する。異常な条件で,多額の受取 勘定がある場合,または特定の顧客に異常なはど多額の売上が行なわれて−いる 場合には,注釈をつけておかなければならない。信用保険の契約価額も,記載
しておく必要がある。貸倒引当金勘定の分析も含まれる。受取勘定残高に.対し て実施した確認の程度,および確認に対してうけとった回答の程度を記載す
(57〉
る。役員および従業員に対する受取勘定を記載する。
国 棚卸資産
在庫管理,棚卸,値付けの方法について注釈を加え,必要であれば改善を提 駒Ibid.,ppい521〜3.
伽)Ibid.,p‖523
6ⅥIbid.,p一523258
第40巻 簡3・4弓
・− 66 −−
案する。種類別および場所別の棚卸資産の明細表,流行遅れのまたほ売れ行き の遅い棚卸資産および評価損欠の計穿表も記載される。棚卸資産の評価基準お
(58)
よび低価法の低価を計算する方法の記載が含まれる。
糾 工場設備資産
工場設備資産,減価償却引当金,修繕費の会討方針などについて,補足的情報 が記載される。また,資産の評価基準も記載される。工場設備資産の種類別に・,
期首残高,期中の増減,期末残高,減価偵却累計高,減価償却率などを記載し た表を含むことも多い。減価横却率の重大な変吏および会計処理の重大な変更
(59) などに.、ついても記載しなければならない。
目 線延費用
この項目に.ついてほ.,通常の辟借対照表よりも,より詳細な記我が行なわれ る。たとえば,その金額の計算基準,その償却の方針,期中のその償却額を記
(80) 載する。
(ト)支払手形
支払手形の内訳明細を表に作成する。借入契約の重大な条項は,財務諸表の
(¢1)
脚注に再三記する。
研 支払勘定
営業上の支払勘定を,年令別に.要約するのが望ましい。その他の支払勘定も,
重大な金額のものは表に作成する。支払勘定が,役員,株主および醜係会社に 対するものを含んでいる場合には,その個々の金額に・ついて表を作成する0 ま
し62)
た,その期中の変動および異常な支払勘定を記載する。
(リ)見越勘定
利益分配制度または賞与制度が設けられている場合に.は,その制度の条件の 概要,期中に発生した超過報酬の金額の計算,債務の流動部分と非流動部分と
(5B)Ibid.,pp.523〜4・
醐Ibid.,p.524・・
(醐Ibid.,p.5241・
酎)Ib沌.,p、524.
旧功Ibid.,p・524・
259
長文式監査報告苔について − 67 −
を記載する。また,株主総会によるその承認の日付も記載する。所得税および そ・の交渉の概略を記載する。特許権使用料に.ついての注釈,特許権契約の重要 な条項,特許権使用料の分析,期中の重要な特許権使用料の計算などが記載さ
(63)
れる。
(ヌ)長期債務
社債契約のなかの重要な会計条項を記載し,これに対する違反があれば指摘 する0 これに・関して記載するのに適当な補足的情報としては,利子率,期日,
(銅)
減債基金の条項などである。
叫 資 本 金
資本構成の変化,償還株式または優先株式の償還基金の運用などが記載され る0 ストソク・オプション制度がある場合,その条件,承認されたオプション,
行使されたオプション,期限のきれたオプション,期末に未済のオプションな
(l11)
どについての計算書が含まれる。
(ヲ)剰 余 金
会社更生の場合,▲その影響を表に作成する。また,借入契約とか社債契約に
(66) よって−拘束される剰余金の金額および拘束されない金額を記載する。
(ワ)偶発債務
この問題については.,詳細な注釈を記載するのが通常である。クレームとか 訴訟中とかの場合には,その現状,顧問の評価した債務額およびそれに対する
(67) 引当額などを記載する。
(5)監査手続に対する注釈
この注釈の記載には,1つの箇所にまとめて記載する方法と財務諸表の項目 毎に記載する方法とがある。受取勘定の確認と実地棚卸の立会とは,関連する 項目のところに記載されるのが通常である。しかし,すべての詳細な監査手続を 棉Ibidりpp.524〜5.
剛Ibid小,p.525‖
碍5)Ibid‖,p.525‖