リハビ リテ ー シ ョ ン 研 究
名 寄市病誌 20:35〜37,2012
当院 にお け る嚥下 食 の検 証 と今後 の課題
定 木 玲 子1),坂 本 雅 則1),高 橋 春 美2),神 野 朋 美3),瀬 川 美 香 穂3)
Key Words: 嚥 下 障 害,嚥 下 食
【は じ め に 】
嚥 下 障 害 患 者 に 提 供 す る 食 事 は,適 切 な 量 と形 態 を 考 慮 し な い と 患 者 は む せ を繰 り返 し,食 事 を 十 分 に 摂 取 で き ず 体 力 を 著 し く 消 耗 し,さ ら に は 気 管 侵 入 が お こ り誤 嚥 性 肺 炎 を 引 き 起 こ す リ ス ク も あ る.嚥 下 障 害 や 長 期 の 臥 床 に よ り 口腔 機 能 が 低 下 し た 患 者 に 提 供 す る 食 事 は 量 の 調 整 だ け で な く気 管 侵 入 の リス ク が 少 な く,飲 み 込 み 易 い 形 態 に 調 整 す る こ と が 必 要 で あ る.
そ こ で 当 院 は 平 成23年3月 よ り,言 語 聴 覚士 を 中 心 と し て 脳 外 科 看 護 師,栄 養 科 ス タ ッ フ の 協 力 を 得 て 嚥 下 食 を 立 ち 上 げ,嚥 下 機 能 評 価 の チ ェ ッ
ク シ ー トを 作 成 し病 棟 に て 実 践 し た.
「チ ェ ッ ク シ ー ト」 「嚥 下 食 」 が 実 際 に 患 者 の 回 復 過 程 に 対 応 で き て い る の か,現 状 の 把 握,今 後 の 課 題 を 分 析 し,嚥 下 食 を よ り 良 い 食 事 基 準 に 改 善 して い く た め に デ ー タ 集 積 お よ び ア ン ケ ー ト 調 査 を 行 っ た.
【結 果 】
嚥 下 食 が 提 供 され た 脳 外 科 患 者 は3月 で7件.
同 じ く4月7件.5.月 は14件 で あ り,合 計28件 で あ っ た(図 ① 参 照).
口 嚥 下食提 供件 数
【方 法 】
① デ ー タ 抽 出 期 間 :平 成23年3月 〜5月.対 象 :嚥 下 食 を 提 供 した 脳 外 科 病 棟 患 者.方 法 :平 成23年3 月 〜5月 に 嚥 下 食 を 提 供 され た 件 数 を 電 子 カ ル テ
よ り抽 出.
② ア ン ケ ー ト期 間 :平 成23年6月7日 〜 平 成23年6 月14日.対 象 :食 事 に 対 す る 患 者 の 訴 えや 摂 食 の 様 子 等 を 詳 細 に 知 る 看 護 師 の 意 識 を 調 査.方 法 : 期 間 内 に 無 記 名 式 質 問 紙 を 配 布.STが 嚥 下 機 能 評 価 と して 使 用 し て い る 食 事 ア ップ の チ ェ ッ ク シ ー ト も ア ン ケ ー トに 別 紙 添 付 し
,こ の シ ー トが 患 者 の 嚥 下 機 能 の 評 価 に 適 して い る か に つ い て 調 査 を 実 施.記 述 し た 用 紙 は 記 入 後 回 収 した.
ア ン ケ ー トに 対 して,結 果 は 図 ② が 示 す 通 り と な っ た.
設 問1: 嚥 下 食 を 立 ち 上 げ て 以 降,個 々 の 患 者 に 適 し た 食 形 態 が 提 供 で き る よ うに な った と思 い ます か?
名 寄 市 立 総 合 病 院
リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 科1),栄 養 科2),看 護 科3),
35
5% 翔思う 馴やや思う 顯あまり患わない 翻思わない 繍無回答
設 問2: 嚥 下 食 を段 階 に分 けた ことで 、個 々の 患者 に適 した形態 対応 が で きてい る と思 い ますか?
29弘
難懲 う 繕や や 愚う
繊畠塞り懲 わない 翻懸 わない 織撫 厨笹
設 問3: 嚥 下 食 を 段 階 に 分 け た こ と で 、 個 々 の 患 者 に 適 した 形 態 対 応 が で き て い る と思 い ま す か?
4%
74%
5瓢 醜 う
臓やや懸う
■あまり思わない 睡愚わない
●無墜讐
・嚥 下 食 の 段 階 に 合 せ て も 患 者 が 咽 せ る こ と が あ る .
・嚥 下 の 機 能 評 価 に使 用 され る チ ェ ッ ク シ ー トは使 い に くい.
・形 態 だ け で な く患 者 の 嗜 好 に も応 え る 食 事 が 望 ま し い.
… … な ど の 意 見 が 寄 せ られ た . 図2の2: ア ン ケ ー ト結 果
ア ン ケ ー ト項 目の 他 に 自 由 記 述 形 式 で さ ら に 意 見 を 求 め た と こ ろ 得 られ た 意 見 は 上 記 の 左 下 の 通
りで あ る.
機 能 評 価 の チ ェ ッ ク シ ー トに つ い て 「使 い に く い と い う意 見 の 中 で 最 も 多 か っ た の が 「チ ェ ッ ク リス トは 食 事 ア ッ プ の 指 標 に な る が 記 述 に 時 間 を 要 す る と 思 う」 「重 症 度 を も っ と わ か りや す く し て ほ しい 」 等 の 意 見 で あ っ た.
【考 察 】
嚥 下 食 開 始 か ら3〜4,月 は 提 供 件 数 が 少 数 で あ っ た が,5月 か ら14名 と倍 に な っ て い る.こ れ は 患 者 の 状 態 に 対 応 し た 食 事 を提 供 す る こ と が 徐 々 に 可 能 と な り,か つ,病 棟 の ケ ア に 嚥 下 食 が 徐 々 に 浸 透 して 行 っ た 結 果 で あ る と考 え る.
7〜8割 近 く が 「適 し た 食 事 が 提 供 で き る よ う に な っ た 」 と 回 答 し て い る.以 前 は 普 通 食 の1品
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を 刻 む,ミ キ サ ー に か け る 等 の 対 応 で あ っ た.そ れ で も む せ が 頻 発 した 場 合 は プ リ ン か ゼ リー(嚥 下 用 で な い)を 代 替 食 と して 提 供 し て い た.嚥 下 食 の 段 階 を提 示 し た こ と に よ り,食 事 の 再 検 討 を 繰 り返 す 手 間 が 省 け,患 者 の 機 能 回 復 に 合 わ せ た 対 応 が 徐 々 に 可 能 に な っ た と考 え る,
し か し,設 問2,3で 約4割 が 現 状 の 段 階 食 や チ ェ ッ ク シ ー トは 不 十 分 で あ る と して お り,ア ン ケ ー トの 自 由 記 述 で も 同 様 の 意 見 が あ っ た.
従 来 の チ ェ ッ ク シ ー トで は 段 階 毎 の 条 件 全 て を ク リ ア す る こ と が,次 段 階 の 食 事 に 移 行 す る 条 件 で あ っ た.
ST側 で チ ェ ッ ク シ ー トを 実 際 に 使 用 す る と 実 際 に 嚥 下 障 害 の 多 様 な 症 状 を 包 括 的 に 評 価 す る 事 は 困 難 で,評 価 結 果 と経 過 観 察 で は 実 際 の 摂 食 ・ 嚥 下 能 力 に 乖 離 が 見 られ る 症 例 が 多 か っ た.
多 様 な 症 状 に 対 応 し,患 者 の 摂 食 機 能 を 正 し く 把 握 す る た め に は,チ ェ ッ ク シ ー トの 機 能 評 価 基 準 に 柔 軟 性 が 求 め られ る と 考 え た.「 形 態 だ け で な く患 者 の 嗜 好 に も応 え る 食 事 が 望 ま し い 」 との 意 見 が あ っ た よ うに,確 か に,嚥 下 食 が 連 日続 く
と 単 一 な 食 形 態 に 食 欲 が そ が れ る ケ ー ス も少 な く な か っ た.
嚥 下 食 は 形 態 加 工 され て い る た め,他 の 食 事 基 準 よ り も 水 分 を 多 く含 む.総 カ ロ リー も低 く,嚥 下 食 の み で は1日 必 要 栄 養 量 に 満 た な い.食 事 と
し て の 満 足 度 が 得 られ に く く,不 足 分 を 他 の 栄 養 補 助 食 品 や 輸 液 等 で 補 わ ざ る を 得 な い.
結 果 を 踏 ま え て,今 後 嚥 下 食 を よ り良 い 食 事 基 準 に す る た め に は,チ ェ ッ ク シ ー トと段 階 食 の 再 考 が 不 可 欠 で あ る と考 え た.
(従 来 との 比 較)
段 階的 嚥 下食 の 改 善 案
テ ス ト食 を段 階 食 の 中 に組 み 込 む こ とで,早 期 の機 能 把握 と経 口移 行 の 計 画 を立 て やす い よ うに 配 慮.
段 階 が 上 が る毎 に品 目を増 や し,食 事 の満 足 度 も考慮 した.
嚥 下 食 皿 以 降 は経 口摂 取 だ け で1日 必 要 で あ る 総 カ ロ リー を補 え る よ う設 定 した.
チ ェ ッ ク シ ー トの 改 善 点
● 摂 取 量 よ り も 嚥 下 機 能 面 に 着 目 して 項 目 を 設 定 した.
●チ ェ ッ ク 項 目が 多 い 段 階 が 患 者 の 嚥 下 機 能 に 相 当.
● 患 者 の 嚥 下 機 能 を 明 確 に 提 示 で き る よ う に し た.
●チ ェ ッ ク シ ー トの 段 階=嚥 下 食 の 段 階 と した.
【お わ り に 】
デ ー タ の 収 集 とア ン ケ ー ト調 査 を 行 っ た こ と に よ り,改 善 す べ き 点 を 具 体 的 に把 握 し,嚥 下 食 再 考 に 向 け て 方 向 性 を 得 る こ とが で き た.
今 後 は 改 善 案 を も と に 再 度,他 部 門 ス タ ッ フ と 綿 密 に 検 討 し,実 行,再 評 価 を 行 い,当 院 の 嚥 下 食 を よ り有 効 な も の に 改 善 し て ゆ き た い.
文 献
図⑥ 改 善 案 にお けるチェックシー ト項 目
・CTSで肺炎所購, j.1性状が羅 日
}i・̀謄 『≡¶ ・^●
(段 階0)
・覚 醒不 良(意 識 障 害あ り), 経 口摂敏 不可.
食 鋤 認知 不 可, 口腔ケアにて対応.
・口唇 閉鎖 不可 で戴 りこぼしが 多い.
・晒 せ あり,湿 性 嘆 声 あり.
・促 せ ば覚 醒,食 物 翻知 が 反射 的 に可. (殺 階1解H)
・t 閉鎖 できるが 取 サこぼしや獲 渣あ り. (飲み込 みだけの
・嚥 下後 口腔 内に残 澄 あり,湿 性腰 声 あり, 単 一な嚥下運 勤).
。姻 せ なし,2圃 に 分 けて嚥 下,湿 性 曖 声あ り. 麟 下 倉1勘 韮
・明 哨 運動 なく丸のみ 、
・常 時 覚醒,食 物 認 蜘 慶好. (段階 麗)
。取9こ ぼ しがなく、m閉 鎖 できるがスプー ンに少 量の 汚 の送 り込み 唖嚥下運 動
残渣. が で きる.
。醸 下 後 ほぼ 口腔 内 残 留なし.
・粗 鰯 蓮動 ある が弱 い. 嚥 下食 斑
・常 時 覚醒 ,震 物 認 知 良好. (段 N}
・R唇 閉鎖 良 蜂. 鳴囎→嚥 下の協調 された
・咽 せ なし,1園 で膿 下. 嚥 下運 動ができる.
・顎 の 上下 ,す りつ ぶ しの咀 囎 運勤 あ り. 縢下食N
※もクリアなら移行 食でも 良 い.
蕪※ 義 歯 はめ て十分 な哩 暇 ができる.
1)脳 卒 中の摂食 ・嚥 下障害 第2版 :藤 島一 郎 医歯薬 出版 株 式会社
2)嚥 下 障 害ポ ケ ッ トマ ニ ュア ル第2版 :聖 隷 三方 病 院嚥 下チー ム 医歯薬 出版株 式会 社
3)NST活 動 に活 かす ナ ー スが取 り組 む 栄養 療法 :丸 山道 生 大 久保 病 院 外 科部 長 日本 経 腸 栄養 学 会NSTプ ロ ジ ェク ト実行 委員 会 株 式会 社 ア ンファ ミエ
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