Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
Influence of grade and surface topography of
commercially pure titanium on fatigue properties
Author(s)
鈴木, 薫
Journal
歯科学報, 119(4): 348-349
URL
http://hdl.handle.net/10130/4957
Right
論 文 内 容 の 要 旨 1.研 究 目 的 チタンは優れた耐食性および生体適合性を有し,インプラント材料の主体となっている。しかしながら,純 チタン製インプラントが破折する症例が稀に認められる。インプラント体の破折は,インプラント自体の抜去 に直結するため深刻な問題である。このような破折の原因のひとつに,インプラント材料が咬合力や咀嚼力に よる繰り返し荷重を受けることが考えられる。 純チタンは,ISO 規格で4種類のグレードに規定されており,インプラント体には主にグレード2またはグ レード4が用いられている。グレードが高くなるにつれ,強度は大きくなるが,一方で伸びが小さくなる。こ のようにグレードによって機械的性質が異なることから,疲労特性もグレードによって異なる可能性がある。 また,インプラント体にはさまざまな表面処理が行われているが,これも疲労強度に影響を与えるとの報告も ある。インプラントには垂直方向からだけでなく,斜め方向からの荷重もかかるため,臨床を想定した条件下 での疲労試験が求められる。しかし斜め方向からの荷重を用いて,純チタンのグレードごとの疲労特性を比較 したものはない。そこで本研究は,純チタンのグレードおよび表面処理の違いが,疲労特性に与える影響を明 らかにすることを目的とした。 2.研 究 方 法 純チタングレード2(G2)およびグレード4(G4)の丸棒(直径3mm,長さ17mm)各50本を試料とし,機 械加工群(MS 群)と表面処理群(RS 群)とに分けた。表面処理群にはアルミナショットブラスト(250∼300μm) および塩酸と硫酸による酸エッチングを行った。3D-SEM にて試料表面を観察し,粗さを測定した。その 後,各群5本に対し静的荷重試験,20本に対し繰り返し荷重試験を行った。荷重方向は ISO14801に準拠して 試料の長軸に対し30°とした。繰り返し荷重試験は,ステアケース法を用いて行った。各荷重試験後の試料に 対し,顕微鏡による組織観察とビッカース硬さ試験を行った。統計解析は,静的降伏荷重に対しては二元配置 分散分析を行い,ビッカース硬さに対しては一元配置分散分析後,Dunnett 検定を行った。有意水準は0.05と した。 3.研究成績および考察 静 的 降 伏 荷 重 で は G2の MS 群 が672±51N,RS 群 が724±100N,G4で は MS 群 が1088±94N,RS 群 が 氏 名(本 籍) すず き かおる
鈴
木
薫
(静岡県) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 2136 号(甲第1341号) 学 位 授 与 の 日 付 平成28年3月31日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当学 位 論 文 題 目 Influence of grade and surface topography of commercially pure titanium on fatigue properties
掲 載 雑 誌 名 Dental Materials Journal 第37巻 2号 308−316頁 2017年
doi:10.4012/dmj.2017125 論 文 審 査 委 員 (主査) 佐藤 亨教授 (副査) 櫻井 薫教授 矢島 安朝教授 河田 英司教授 武本 真治講師 歯科学報 Vol.119,No.4(2019) 348 ― 90 ―
1118±96N であり,MS 群および RS 群ともに G2と G4間で統計学的有意差を認めた。G2の疲労降伏荷重 では MS 群が473±82N,RS 群が560±68N,G4では MS 群が620±58N,RS 群が675±51N であった。組織観 察では G2にのみ双晶が認められ,G2,G4ともに引張り側に亀裂が観察された試料があった。ビッカース 硬さ試験では試験後の試料の圧縮側および引張り側と試験前の試料の間で有意差を認めた。 G2では疲労降伏荷重が静的降伏荷重よりも約25%減少したのに対し,G4では約43%減少した。これは, G4が G2に比べ伸びが小さいことと,G2ではすべり変形だけでなく,双晶変形も起こったことが原因と考 えられる。また,金属であるチタンは表面処理によってできる表面の亀裂が内側に伝播しないことから,表面 処理による影響が見られなかったと考える。 4.結 論 シリンダー形状の純チタングレード2および4試料に対する静的荷重試験,および繰り返し荷重試験の結果 以下のことが明らかになった。⑴純チタングレード2およびグレード4の疲労降伏荷重は,純チタングレード 2で静的降伏荷重の約25%,グレード4で静的降伏荷重の約40%減少した。⑵ショットブラストおよび酸エッ チングの併用処理は,純チタンの疲労特性に影響を与えなかった。 論 文 審 査 の 要 旨 本研究は,グレードおよび表面処理の違いが,純チタンの疲労特性にどのような影響を与えるかを検討する ことを目的としたものである。 本審査委員会において,研究方法の妥当性や得られた結果についての解釈,意義などを中心に以下のような 質疑が行われた。主な質問としては,①純チタングレード2とグレード4を選択した理由,②試料を直径3 mm,長さ17mm にした理由,③グレード2およびグレード4の疲労降伏荷重は異なる荷重を用いて試験して いるため,グレード間での比較はできないのではないか,④表面粗さの計測倍率(500倍と5,000倍)が異なる と,Sa 値も異なるのはなぜか,またカットオフ値の記載は必要ないのか,⑤荷重−変位曲線を用いて降伏荷 重を求めているが,各グレードの弾性係数の違いによる影響はないのか,などについてであった。 これらの質問に対し,①現在市販されているインプラント体に用いられている純チタンがグレード2または グレード4の2種類が多いこと,②直径に関しては,最も細い市販のインプラントの直径が3.3mm であるた め,それよりやや細い3mm とし,長さに関しては,インプラントの強度試験条件の規格である ISO14801に 則り決定したこと,③グレード間の比較に関しては,考察中にのみ得られた結果から推察されることとして記 載し,結論では各グレードの減少率の記載に変更すること,④今回はカットオフ値を設定していないこと, 5,000倍においては500倍よりもごく微小な領域を観察しているため,500倍で観察した凹凸のさらに表面の凹 凸を観察することとなるため,Sa 値が小さくなること,⑤純チタンの弾性係数は105∼110GPa であり,実測 した荷重−変位曲線の傾きもグレードおよび表面処理で相違がなかったため弾性係数を考慮する必要はないと 考えるなどの回答があり,その他の質問に関しても,概ね妥当な回答が得られた。さらに,英文の不適切な表 現,図についての改善などが指摘され,審査後これらの訂正が行われた。 以上より,本研究で得られた結果は,今後の歯学の進歩,発展に寄与するところ大であり,学位授与に値す るものと判断した。 歯科学報 Vol.119,No.4(2019) 349 ― 91 ―