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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 伊 藤    啓

     学 位論 文題名

Structural studies into the signal transducer proteins     byX ― ray crystallography

(X 線結晶構造解析法による,情報伝達夕ンパク質の構造学的研究)

学位論文内容の要旨

  バクテリアなどの単純な単細胞生物から、植物やほ乳類といった複雑な多細胞生物に至るま で、全ての生物種において幾種もの情報伝達システムが存在しており、それら生体内で生命維 持に不可欠な役割を果たしている。単細胞生物においては、情報伝達システムは主に細胞内で 完結しており、例えぱ外部環境変化を察知しそれに能動的に対応する為の情報伝達システムが 知られている。細胞を様々に分化させ、それぞれ特化した機能を有する複数の器官が組み合わ り一個体を形成している多細胞生物においては、個々の器官、ひいてはその器官を構成してい るーつーつの細胞の活動が個体全体のレベルにて統合されている必要がある為に、その情報伝 達システムも細胞内部はもとより、近傍のみならず遠位にある細胞間にまでわたり、より複雑 かつ厳密に制御される事で恒常性が維持されている。生体内において各種情報の伝達は、夕ン バク質のりン酸化リレーや、cAMPや金属イオンといったセカンドメッセンジャー分子などに より行われているが、この生体内情報伝達システムの全てのステップにおいてタンパク質は、

レセプターやレギュレーター等などとして重要な役割を果たしており、生命維持に必須な役割 を果たすそれら情報伝達システムの詳細な理解の為には、システムを構成しているこれらタン バク質の機能についての分子レベルでの解明が必要である。本研究では、X線結晶構造解析法 により生体内情報伝達システムを構築しているタンパク質の立体構造解析を行い、構造学的見 地よりこれらタンパク質の機能の詳細を明らかとし、それらタンバク質が含まれる情報伝達シ ス テ ム 全 体 の 分 子 レ ベ ル で の 理 解 に 貢 献 す る こ と を 目 的 と し て い る 。

第一章:ヒト由来MRP14 (S100A9)夕ンパク質のX線結晶構造解析

  human MRP14は分子量約13 kDaのタンパク質であり、単量体当たり2つのEF―Handを有し、

Sl00ファミリーに属するCa2゛結合夕ンパク質で、二量体にて機能する。MRP14はそのホモ口 グ・夕ンバク質であるMRP8と共に分化中の骨髄細胞にて時期特異的に発現が見られる他、リ ユーマチなどの炎症疾患組織血清中でその濃度が増大することが知られている。これらタンバ

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ク質はCa2゛濃度依存的にホモ及びへテ ロ二量体を形成、好中球の 血管内壁への接着促進に直接 的に関与し ている事が明らかとなるな ど、Ca2゛濃度依存的に炎症 反応を促進する因子として注 目 を集 めて い るが 、そ の機 能の 詳 細は 未だ 不明 であ る 。こ れらMRPが関 与す る炎 症 反応の調 節 機構 の解 明 に向 けホ モ二 量体MRP14の 立 体構 造行 い、 電子 密 度が 弱く モデ ルが 構 築できな か ったC末 端側 領域 を除 く 部分 で決 定し た(2.1A分解 能 )。 得られた構造は既に明 らかとされ て い る 他 のSl00フ ん ミリ ータ ン パク 質と 同様4つ のaヘリ ック スか ら 構成 され 、単 量体 間 の 疎 水性 相互 作 用に て二 量体 を形 成 していた。構造決定 出来なかったC末端領域は分 子表面に位 置 しフ レキ シ ブル な構 造を とっ て いる 事が 予想 され た 。こ のC末端領域はGly、His、Proに富 みNIF (neutrophil immobilizing factor)と相同なアミノ酸配列を持っなどMRP14に特徴的な領域 で あり 他分 子との相互作用 部位であるとされているが、 本領域にアサインされてい る様々な機 能を発揮す る為に、この領域の自由度 の高さは不可欠であると考えられた。2つのEF‑Hand motif を 繋ぐhinge領 域に はCHAPS分子 が 疎水 性相 互作 用に よ って 結合しており、複合体 での構造解 析 が為 され て いる 他のSl00夕ン バ ク質 との 比較 から 、 この 領域が本夕ンパク質の りガンド結 合 領域 であ る 事が 示さ れた 。さ ら に本 夕ン パク 質が 協 調的 に作用を行うMRP8の立 体構造との 比 較よ り、 これら分子表面 にそれぞれ異なった電荷及び 疎水性領域の偏りが存在す ることが明 ら かと なり 、Ca2+濃度依存 的にホモ・ヘテロ二量体状態 を変化させるこれら分子が 有意に異な る 他分 子と の相互作用部位 を持つことが判明した事から 、このニ量体形成状態の変 化が炎症反 応 の 進 行 調 整 に お い て ス イ ッ チ 的 な 役 割 を 果 た し て い る 事 が 示 唆 さ れ た 。

第 二 章 : 大 腸 菌 由 来 シ グ ナ ル 伝 達 因 子OmpRフ ァ ミ リ ー タ ン パ ク 質 の 構 造 学 的 考 察   変 化し 続け る外部環 境に直接さらされている原 核生物は、生存の為にその環 境変化に能動的 に適 応す る必 要 があ る。 大腸 菌由 来OmpR夕ン バク 質 は、 バク テリアの中で最 も良く知られた 環境 適応 のた め の情 報伝 達シ ステ ム を構 成し てい る レギ ュレ ータータンパク 質であり、OmpR に情 報を 伝達 す るセ ンサ ータ ンパ ク 質EnvZと 組み と なり 二成 分情報伝達系と 呼ばれる最も基 本的 な情 報伝 達 シス テム を形 成し て いる 。大 腸菌 に はこ の他 にもOmpRと類似 したアミノ酸配 列を 有す る15種 のレ ギュ レー ター が 存在 して おり 、OmpRファ ミリーと呼ばれ る一群を形成し て い る 。 我 々 の グ ル ー プに より 既に 解析 が 為さ れて いるOmpR‑DNA結 合ド メイ ン の立 体構 造 を基 に、 近年 構造解析 例が増えつっあるこれらフ んミリータンパク質の立体構 造を、一次構造 と併 せて 比較 検討する 事により、類似した全体構 造を保ちつっも、それぞれの タンパク質に特 異的 な機 能を 発 揮し てい るOmpRフ ん ミリ ータ ンパ ク 質に つい て、その立体構 造と機能との相 関に つい て構 造 学的 側面 より 考察 し た。

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学位論文審査の要旨

主査   教授   田中   勲 副査   教授   新田勝利 副査   助教授   渡邉信久

副査   助教授   西平   順(北海道大学大学院医学研究科)

     学 位 論 文 題 名

Structural studies into the signal transducer proteins     by X‑ray crystallography

   ( X 線 結 晶 構 造 解 析 法 に よ る , 情 報 伝 達 夕 ン パ ク 質 の構 造 学 的 研 究 )

   バクテリアなどの単純な単細胞生物から,植物やほ乳類とぃった複雑な多細胞 生 物に 至る まで ,全 ての 生物 種にお いて 幾種もの情報伝達システムが存在して お り, 生体 内で 生命 維持 に不 可欠な 役割 を果たしている,単細胞生物において は ,情 報伝 達シ ステ ムは 主に 細胞内 で完 結しており,例えば外部環境変化を察 知 し そ れ に 能 動 的 に 対 応す る為 の情 報伝 達シ ステ ムが 知ら れて いる. 細胞 を 様 々に 分化 させ ,そ れぞ れ特 化した 機能 を有する複数の器官が組み合わり一個 体 を形 成し てい る多 細胞 生物 におい ては ,個々の器官,ひいてはその器官を構 成 して いる ーつ ーっ の細 胞の 活動が 個体 全体のレベルにて統合されている必要 が ある 為に ,そ の情 報伝 達シ ステム も細 胞内部はもとより,近傍のみならず遠 位 にあ る細 胞間 にま でわ たり ,より 複雑 かつ厳密に制御される事で恒常性が維 持 され てい る, 生体 内に おい て各種 情報 の伝達は,タンパク質のりン酸化リレ ー や, cAMP や金 属イ オン とい ったセ カン ドメッセンジャー分子などにより行わ れ てい るが ,こ の生 体内 情報 伝達シ ステ ムの全てのステップにおいてタンパク 質 は, レセ プタ ーや レギ ュレ ーター 等な どとして重要な役割を果たしており,

生命維持に必須な役割を果たすそれら情報伝達システムの詳細な理解の為には,

シ ステ ムを 構成 して いる これ らタン パク 質の機能についての分子レベルでの解 明 が必 要で ある ,本 研究 では ,X 線 結晶 構造 解析 法に より 生体内 情報 伝達シス テ ムを 構築 して いる タン パク 質の立 体構 造解析を行い,構造学的見地よりこれ ら タン パク 質の 機能 の詳 細を 明らか とし ,それらタンパク質が含まれる情報伝 達システム全体の分子レベルでの理解に貢献することを目的としたものである.

本 研究 では ,ま ず炎 症反 応に おいて カル シウム濃度依存的に機能するヒト由来

MRP14 タ ン パ ク 質 の 立 体 構 造 を X 線 結 晶 構 造 解 析 法 を 用 い て 解 析 し , 構 造

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学的側面よルカルシウム依存的にスイッチング因子として機能する本タンパク 質の機能を解明した,また,原核生物においては, 2 成分情報伝達系と呼ばれ る最も基本的な情報伝達系を構築しているレギュレータータンパク質群Omp R ファミリータンパク質について立体構造と機能について検討し,本タンパク 質の構造機能相関について重要な知見を提示した.

以上,本論文は,情報伝達タンパク質の構造を決定することにより,その構造,

機能相関を明らかにしたものであり,本研究が生物科学に及ばす貢献には多大

なものがあると考えられ,よって審査員一同は申請者が博士(理学)の学位を

得る十分の資格があるものと認めた.

参照

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