博 士 ( 理 学 ) 金 吉 正 実
学位論文題名
Study on Layered Double Hydroxide (層状複水酸化物に関する研究)
学位論文内容の要旨
層状 複水 酸化 物(LDH)は、 水 酸化 マグ ネシ ウ ム( ブル サイ ト) の 構造を基本と し、その 一 部が3価 陽イ オン で置換 されることにより生じる正荷 電シートの層間に、交換可 能ナょ陰 イ オン と結 晶水 が 挿入して いる層状物質である。2価陽 イオンとして、Hg、Co、Ni、Cu、Zn な ど、3価 陽イ オン とし て、Al、Cr、Feなど を シー ト構 成成 分と し て含むことが でき、ま た 眉間 陰イ オン と しては多 くの無機および有機陰イオ ンが可能である。LDHは、陰 イオン交 換 性、 塩基 性、 焼 成し て得 られ る酸 化 物の 高い比表面 積などのため、各種触媒お よびその 担 体、 特定 陰イ オ ンの 回収 、吸 着剤 、 眉間 を反応場と した機能性分子の配列など 幅広い応 用が可能であ る。
ニト リロ 三酢 酸(NTA)陰イ オ ンが 挿入 したllg−Al LDHの生成について調べた。 この研究 は 、環 境に 放出 さ れる のが 好ま しく な い物 質をLDHを用 いて 吸着 除 去することの 可能性に 結 び っ く も の で あ る 。NTA挿 入LDHは、pHを10に保 って 、NTA共 存下 で 金属 塩と アル カ り を 反 応 させ る 共沈 法に よっ て 得ら れた 。た だし 、 かな りのHgお よびAlが沈 殿せ ずに 溶 液 中 に 残 留 し た 。 こ のLDHは 、 眉 間 隔 が 約12A( 挿 入 層 厚 み は7.2 A)で あっ た。 炭酸 イ オ ン 挿入LDHの焼 成(500゜C)で得られた聡―Al混合酸化 物の再水和によってもNTA−LDHは得 ら れた 。こ のこ と は、 この 混合 酸化 物 がNTAの 吸着 除去 に使 える 可 能性を示す。 さらに、
硝 酸イ オン を含 むLDHもNTAによ って 陰 イオ ン交 換さ れた が 、炭 酸イ 丶オン型LDHのイオン 交 換は 困難 だっ た 。ま た、 逆イ オン 交 換の 実験 から もNTAの 眉間 挿 入への親和性 は硝酸イ オ ンと 炭酸 イオ ン の間 であ るこ とは 裏 付け られ た。NTAは2価陰 イオ ンまたは、3価陰イオ ンとして眉間 に存在した。特殊な場合には[Mg→NTA].として挿入されることも示唆された。
一方 、NTAは キレ ート 配位 能 を有 する ので 、LDHのさ らなる修飾に使えると期待 できる。
NTA挿ー丶Mg―Al−LDHを硝酸ランタンの溶 液と反応させたところ、キレート錯体を生成しなが ら 、Laが眉 間に 取 り込 まれ 、硝 酸イ オ ンも 、同時に電 荷の補償のため取り込まれ た。また こ の 反 応 で 、 眉 間 隔 は11.9Aか ら13. 9Aに 増 加 し た 。LaとNTAは 眉 間 で1:1お よ び1:2 の 錯体 を形 成し てL、る 。こ のLaとNTAを含 む水酸化物 を焼成すると、粉体混合法 よりかな り 低 い 温 度(1100 QC)でIAAI03相 が生 じた 。し か も、 この 相の ほか にLaを 含有 する 相 は
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生じなかった。これは、焼成前の前駆体中にLaが極めて良く分散しているために、反応が 起こりやすいことを示している。
乢―Al−La酸化物触媒を、上記のように、NTAとLaを含むLDHを前駆体として調製した。
この触媒の活性を、アセトンの転化反応について、やはりLDHの焼成によって得られた取―
Al酸化物触媒と比較した。Hg−Al―La触媒はMgーAl触媒と比べて、活性が高く(最高時37% 対31%)、その持続性も良かった。Hg―Al触媒の失活は炭素数12以上の生成物の増加を伴 って起こってくるのに対し、Mg―Al−La触媒では、炭素数12以上の化合物が殆ど生じず、高 活性が維持された。また、生成物の選択性の点でも、Hg―Al―La触媒は商品価値の高いイソ ホロンへの選択性が高かった。さらにHgーAlーLa触媒の特徴として、初期にのみ、高い選択 性でメシチレンを生じた、これは、塩基性活性中心の他に、失活しやすい酸性活性中心が あることを示唆する、。二つの酸化物の細孔分布では、llg‑Al触媒の細孔はは20〜80 nmに広 く分布しているのに対し、llg一Al―La触媒は、殆ど6nm程度の細孔からなっており、この特 徴 的 な 細 孔分 布 が 、高 い 触 媒活 性 と 選択 性 に 関 係し て い るこ と が 示唆 さ れ た。
眉間に挿入された、テレフタル酸(TA)陰イオンのイオン交換について、いくっかの陰 イオンを用いて調べた。この研究は、LDH挿入化合物の分子設計にっながるものである。TA は、炭酸イオンおよび硫酸イオンでは、十分イオン交換されるが、塩化物イオン、硝酸イ オンでは 、ほん の一部し か交換 されなか った。 イオン交 換反応の過程で、交互積層
(interstratified)相が生成することを見出した。このような交互積層相は、これまでは合 成時の生成のみが知られていた。交互積眉相の起源は、TAのニつの配向、っまりLDH層に 対して垂直か平行かによるものと考えられる。
以上のように、層状複水酸化物の化学において、応用展開へもっながるいくっかの有意 義な新知見を加えることができた。
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学位論文審査の要旨
学位論文題名
Study on Layered Double Hydroxide
(層状複水酸化物に関する研究)
粘土は、層状結晶であり層間にイオンや極性分子を自発的に取り込む性質があ る。その結果生成する層間化合物は、分子オーダーで有機物質と無機物質が融合 した有機・無機ハイブリッド材料としての現在多くの応用がなされている。本研 究 はこのよ うな粘土 鉱物のな かで層状複 水酸化物 (LDH )として知られている 鉱物群を用いた機能材料への展開研究である。
LDH はブ ル サイト(水 酸化マグ ネシウム の 8 面体シ ート)の 構造を基 本とし て いる。このうちで Mg (II) イオンの一部がAl(IID によって置き換わったものは Mg‑Al 型LDH とよ ばれ、本研 究におい てとりあ げられた 。その顕 著な特徴 は大 きな陰イオン交換性を有することで、触媒担体、有害陰イオンの回収あるいは吸 着剤として広く用いられている。この粘土粒子と有機分子をナノメーターレベル で複合化した新しい分子組織膜の構築を目的としたものである。本研究の主要た 内 容 は 大別 して2 っ に分かれ る。まず 始めに、 ニトリロ 三酢酸( NTA )陰イオ ン が挿入し たLDH の構造 と、希土 類元素を含 んだ新材 料の開発およぴ触媒への 応 用につい てである 。次に、 芳香族陰イオンであるテレフタル巌(TA )がっく る 交 互 積 層 化 合 物 の 形 成 に つ い て で あ る 。 以 下 に そ の 詳 細 を 述 べ る 。 1 .ニトリロ三酢酸(NT A) 陰イオンが挿入したLDH の構造
これについては本論文の3 ,. 4 ,5 章に述べられている。この研究は、環境 に 放出され るのが好 ましくな ぃ物質をLDH を 用いて吸 着除去するための新方法 の 開 発 をめ ざ して 始 め られ た 。ま ず NTA のLDH へ の 挿入 の 条件 を 確 立し 、挿 入 のための2 つの方法を開発した(共沈法と混合酸化物の再水和法)。得られた NTA 挿 入 型 LDH の 構 造 は X 線 解 析 に よ っ て 詳 細 に 調 べ ら れ た 。 特 に NTA 分 子の配向と挿入条件との関係カs 、明らかにされた点は特筆すべきである。さらにN TA が 強い キ レー ト 化 剤で あ る ごと に 着目 して 、別の金 属イオン をNTA 錯体と し て LDH の 層 間 に 取 り 込 む こ と が 試 み ら れ た 。 た と え ぱ NTA 挿 入 型 LDH に
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彦
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田
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山 長
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授 授
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主 副
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硝 酸 ラ ンタ ン La を 反 応さ せ る と La を含 む LDH が容 易に得ら れた(Mg‑Al‑La) 。 この物質を1100 °C において焼成すると、La 」Al03 相が出現した。このような比較 的低い温度において稀土類元素をふくむ酸化物が形成される手法が開発されたこ とは、今後磁性材料の開発など大きな応用的価値を持ちものと評価される。焼成 前 の 前 駆体 で ある La を含 む LDH にお い て、 La が極 めて均一 を分布を している ために形成が容易であったためと考えられる。
上 記で得ら れたMg‑Al‑La は、 触媒としても有用なことがわかった。たとえぱ アセトンの転化反応に対して大きた活性を示し、商品価値の高いイソホロンを高 収 率で与え た。また 活性の持 続時間も長かった。炭素数12 以上の化合物をほと ん ど生ぜず 、不要な 副産物を 与えたかった。細孔分布を調べると、触媒は6 nm の細孔からなっており、このことが上で見られた高い活性と選択制性の原因であ ると考えられた。、
2‑ テレフタル酸(TA) がっくる交互積層化合物の形成
こ れについ ては本論 文の6 章に 述べられ ている。芳 香族陰イ オンである TA が 層 間に挿入した化合物をイオン交換によって合成し、主にX 線解析による構造的 研 究を行っ た。その 結果、本 来LDH に強く 結合する事 が知られ ている炭酸イオ ン と は 容易 に 交換 し て TA ― LDH 化合 物 をっ く る が、弱い 相互作用 をすると考 えられている硝酸イオンとはわずかしか交換しないことが見出された。このイオ ン 交換の過 程で、2 種 のTA が異な る配向を している層 が交互に 積み重なった化 合物(交互積層相)を出現させることが解った。粘土鉱物の交互積層相は天然に おいては知られているが、人工生成物では極めてめずらしい。本研究者はここで 見出した例について、交互積層相ができる条件(交換の程度、水和度、温度等)
に つ い て 詳 し く 研 究 し 、 そ の 出 現 す る た め の 因 子 を 明 ら か に し た 。
これらの研究は、イギリス化学会等の雑誌に8 報の論文としてまとめられてい る。本論文は層状複水酸化物の化学において、合成と反応さらには応用にもっな がるいくっかの新しい知見を得ており、粘土化学分野に対して貢献するところが 大きい。よっで著者は、北海道大学(理学)の学位を授与される資格あるものと 認める。
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