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連続一離散混合力学系におけるフラク゛夕ル集合 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 工 学 ) 西 川 学 位 論 文 題 名

連続一離散混合力学系におけるフラク゛夕ル集合 学位論文内容の要旨

  連続変数と離散変数が混在する現象の解明と応用が、異なる多くの分野で問題になっている。

例えぱ、量子計算機の基礎となる量子現象は、連続変数である状態密度の時間発展を記述する ブ口ッホ方程式を離散的なバルス列による切り換えを行うことで生じる。また、ナノテクノ口 ジ ー と して 活 発に 研 究 され て い るマ イ ク口 電 気 機械系(MEMS)・ ナノ電気機 械系(NEMS)で は、電気伝導に寄与する離散変数である電子の個数が、微小機械や単分子の連続的なカ学運動 に よって大 きく変化 する。ま た、ポス トゲノムの 大きな研究課題である細胞内のDNA.蛋白 質・糖鎖・脂質などの超分子系の相互作用ダイナミクスは、Glassモデルなどの微分方程式で記 述できることが知られており、連続的な超分子系の運動と離散的な遺伝子発現の相互作用が重 要となる。また、情報化にともなう工学機械システムの制御においては、コンピュ一夕の急速 な普及によって、連続的に動作する機械系をデジタル信号によって離散的に制御するという要 求が増大している。さらに、脳科学においても、ヒトの脳において計画・判断を司っている前 頭前野が、連続的な運動機能を司っている運動野に指令を送り、それを離散的に切り換えるこ とで複雑な運動制御を実現していると考えられている。このような多くの異なる分野の現象を 統一的に理解するためには、連続変数と離散変数が混在したダイナミクスを扱う理論体系が必 要である。要素集団の時間発展を理論的に取り扱う学問体系として非線形動力学(力学系)が あるが、これは系の非線形性に由来する解のカオティックな挙動や分岐現象の分類・特徴付け などを通じて、現実の様々な複雑な現象を統一的に理解するための体系を作り出すことを目指 している。力学系では、連続力学系と離散力学系は別々に研究されて来たため、両者が混在す る場合についての研究は従来ほとんどなされていない。

  以上を背景として、本研究では、連続一離散混合力学系の理論的枠組みの構築を目的として、

常微分方程式の切り換えによって普遍的に生じるフラクタル集合に関する以下の三つの研究を 行った。まず第一に、フラクタルの自己相似性を定量化するためにフラクタル次元を用いた解 析を行った。その結果、ある条件のもとでフラクタル次元が理論的に導出され、それを二次元線 形系と非線形Duffing系における数値実験によって検証した。第二に、入カの切り換えを確率的 に決定するフイードフォワードシステムと、系の状態によって決定論的に切り換えを行うフイー ドバックシステムの関係をフラクタルの観点から解析した。その結果、後者のダイナミクスは 前者におけるフラクタル集合に包含されることを明らかにした。第三に、微分方程式の切り換 えによって生じるフラクタル集合を実験的に検証するために、電気回路とヒト脳電図(EEG)を 用いた実験を行った。その結果、双方の系において入力系列に対応した階層的なフラクタル集 合が得られた。

(2)

  本論文は全9章から構成されている。

  第1章では、本研究の背景および目的を述べる。

  第2章では、離散―連続混合力学系の一般的な特性を理解するために、確率的切り換え入カを 受けるカ学系を記述する理論的枠組みを導入し、系の振る舞いをべクトル場の切り換えによっ て生成される円筒空間上の軌道集合と、反復関数によって生成されるポアンカレ断面上の点集 合によって理解できることを示す。また、反復関数が縮小条件を満たす時、各集合がフラクタ ル集合上を遷移することを理論的に示す。

  第3章では、フラクタル集合の自己相似性の複雑さを定量的に評価する標準的な指標となっ ている様々なフラクタル次元について説明し、その一般的表式である一般化次元を導入する。

最後に、従来のフラクタル次元に関する理論的枠組みと距離の縮小率を用いて一般化次元の理 論式を解析的に導出する。

  第4章では、確率的切り換え入カを受ける線形系におけるフラクタル集合に対し、フラクタル 次元を用いた定量的解析を行う。具体例として二次元線形系におけるポアンカレ断面上の点集 合に対して相関次元を計算したところ、その切り換え時間長依存性に異常性が生じることが示 された。この異常性を説明する理論式を成分次元の方法を適用して解析的に導出し、その原因 が、特定の方向における縮小率の違いと、点集合のオーバーラップにあることを明らかにした。

  第5章では、確率的切り換え入カを受ける非線形系におけるフラクタル集合に対し、フラク タル次元を用いた定量的解析を行う。一般に非線形系においては距離の縮小率が一意に定まら ないた め、第3章で行った方法で理論式を求めることはできない。そこで、縮小性が各方向に 平均的に一様であると仮定することで、系の散逸係数を用いた次元の理論式を解析的に導出し た。例としてDuffing振動子系における相関次元を計算し、この理論式と一致する結果を得た。

  第6章では、離散ダイナミクスを持つ上位モジュールと連続ダイナミクスを持つ下位モジュー ルからなる離散‐連続混合力学系を導入し、理論解析と計算機実験を行う。その結果、上位モ ジュールが下位モジュールを確率的に切り換える場合にはフラクタル集合が得られるが、その 状態に依存して決定論的に切り換えを行う場合、系の振る舞いは確率的に切り換えた場合に生 成されるフラクタルの部分集合上を遷移し、さらにパラメータを変化させることで分岐現象を 通して多様な応答が生成され得ることを明らかにした。

  第7章では、フラクタル集合上の遷移が実際の物理系に存在することを示すために、電気回 路を用 いた検証実験を行う。二種類の入カを直列LCR回路に対し確率的に入カさせ、コンデン サーの両端電圧を測定した。その結果、状態空間中の軌道集合がフラクタル集合上を遷移する こ と が 示 さ れ 、 そ の 相 関 次 元 は 第3章 で 得 ら れ た 理 論 式 と 一 致 す る 結 果 を 得 た 。   第8章では、フラクタル集合上の遷移が、次々と切り換えられた入カの系列を処理する場合 に重要 な役割を 担うとい う作業仮 説から、 ヒトEEG計測 を用いた検証実験を行う。刺激系列 ごとに 別々の行 動を行う 系列弁別 課題を実 行する被 験者のEEGを計測し、刺激に対する脳活 動を反映した事象関連電位の各時刻における頭皮上電位分布のトポグラフを計算した。その結 果、各刺激系列に依存する時空間ダイナミクスが観測された。

  第9章 で は 、本 研 究で 得 ら れた成 果につい てまとめ 、その考察 と展望に ついて述 べる。

(3)

学 位論文 審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

郷 原 一 寿 石 政    勉 堤    耀 広 西 口 規 彦

学 位 論 文 題 名

連続 一離散 混合力学 系にお けるフラ クタル集合

  天 体 の 運 動 に 関 す る 三 体 問 題 を 解 決 す る た め 、19世 紀 後 半 に ポ ア ン カ レ が 創 始 し た 非 線 形 動 力 学 ( 力 学 系 ) は 、20世 紀 に 入 っ て 理 論 的 に 体 系 化 さ れ た 。 こ の 体 系 は 、 カ オ ス な ど に 代 表 さ れ る 非 線 形 現 象 の 解 析 に 広 く 用 い ら れ て き て お り 、 そ の 発 展 は 数 学 、 物 理 学 、 生 物 学 、 医 学 、 経 済 学 、 情 報 工 学 な ど 幅 広 い 異 な る 学 問 分 野 に 影 響 を 与 え て い る 。 力 学 系 に お い て は 常 微 分 方 程 式 系 で 表 現 さ れ る 連 続 力 学 系 と 写 像 系 で 表 現 さ れ る 離 散 力 学 系 が 別 々 に 研 究 さ れ て 来 た た め 、 両 者 が 混 在 す る 場 合 に つ い て の 研 究 は 従 来 ほ と ん ど な さ れ て い な い が 、 近 年 、 量 子 計 算 機 、 ナ ノ 電 気 機 械 系(NEMS)、 生 体 超 分 子 系 、 デ ジ タ ル 制 御 系 、 脳 科 学 な ど 非 常 に 広 い 学 問 領 域 に お い て 、 連 続 変 数 と 離 散 変 数 の 相 互 作 用 ダ イ ナ ミ ク ス が 問 題 と な っ て い る 。 こ れ ら の 系 の 振 る 舞 い を 理 解 す る た め に は 、 連 続 変 数 と 離 散 変 数 が 混 在 し た ダ イ ナ ミ ク ス を 扱 う 理 論 体 系 が 必 要 で あ る 。   本 論 文 で は こ れ ら を 背 景 に し て 、 連 続 一 離 散 混 合 力 学 系 の 理 論 的 枠 組 みの 構築 を 目 的 と し 、 常 微 分 方 程 式 の 切 り 換 え に よ っ て 普 遍 的 に 生 じ る フ ラ ク タ ル 集 合 に 関 す る 理 論 解 析 と 実 験 的 研 究 を 行 い 、 連 続 ― 離 散 混 合 力 学 系 の 振 る 舞 いに 対す る 新 た な 知 見 を 得 た 。 主 な 研 究 結 果 は 、 以 下 の3点 で あ る 。 ま ず 、 常 微 分 方 程 式 の 切 り 換 え に よ っ て 生 ず る 解 集 合 の フ ラ ク タ ル 次 元 を あ る 条 件 の も と で 解 析 的 に 導 き 、 数 値 実 験 に よ っ て そ れ を 検 証 し た 。 次 に 、 連 続 変 数 と 離 散 変 数 が 混 在 す る 閉 じ た シ ス テ ム の ダ イ ナ ミ ク ス が 、 開 い た シ ス テ ム の ダ イ ナ ミ ク ス に 包 含 さ れ る こ と を 示 し た 。 そ し て 、 常 微 分 方 程 式 の 切 り 換 え に よ っ て 生 成 さ れ る フ ラ ク タ ル 集 合 を 、 電 気 回 路 と ヒ ト 脳 電 図(EEG)に お い て 実 験 的 に 検 証 し た 。   本 論 文 は 全9章 か ら 構 成 さ れ て い る 。

  第1章 で は 、 本 研 究 の 背 景 お よ び 目 的 を 述 べ る 。

  第2章 で は 、 確 率 的 切 り 換 え 入 カ を 受 け る カ 学 系 に 対 す る 一 般 的 な 理 論 的 体 系 を ま と め 、 そ の ダ イ ナ ミ ク ス が フ ラ ク タ ル 集 合 に よ っ て 特 徴 付 け ら れ る こ と を 示 し た 。

    ―1151―

(4)

  第3章では、フラクタル集合の自己相似性の複雑さを定量的に評価するフラ クタル次元を導入し、写像の縮小率を用いてフラクタル次元が解析的に導ける ことを示した。

  第4章では、線形力学系における解集合のフラクタル次元が不連続的に変化 する異常性を数値計算によって示した。さらに、この異常性を説明する理論式 を成分次元の方法により解析的に導出し、その原因が、特定の方向における縮 小 率 の 違 い と 、 点 集 合 の オ ー バ ー ラ ッ プに あ るこ と を明 ら かに し た 。   第5章では、非線形力学系における解集合のフラクタル次元を円筒状態空間 の特徴とポアンカレ写像の等方的縮小性を利用して解析的に導出した。さらに、

代表的な非線形系であるDuf fing振動子系におけるフラクタル次元を数値計算 し 、 そ れ が 解 析 的 に 導 い た 次 元 と 良 く 一 致 す る こ と を 示 し た 。   第6章では、離散変数で記述される上位モジュールと連続変数で記述される 下位モジュールからなる連続一離散混合力学系のダイナミクスは、上位モジュー ルが確率的に切り換えられた場合に得られるフラクタル集合に包含されると同 時 に 、 分 岐 現 象 を 通 じ て 多 様 な 応 答 を 生 成 で き る こ と を 示 し た 。   第7章では、切り換え入カを受ける電気回路系の状態がフラクタル集合上を 遷移することを実験的に検証した。さらに、得られた解集合のフラクタル次元 が理論値と良く一致することを示した。

  第8章では、刺激系列ごとに別々の行動を行う系列弁別課題を実行するヒ卜 のEEG計測を行い、脳活動を反映した事象関連電位の時空間ダイナミクスが各 刺激系列に対する依存性を持っていることを示した。

  第9章では、本研究の総括を行った。

  これを要するに、著者は連続一離散混合力学系におけるフラクタル集合に関し て理論的および実験的考察を行い、連続ダイナミクスと離散ダイナミクスの相 互作用系に対する基本的特徴の一端を明らかにしたものである。この知見は、

非線形、非平衡、開放系を対象とする複雑系の解明に貢献するとともに、非線 形 動 力 学 、 応 用 物 理 学 の 発 展 に 寄 与 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。   よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと 認める。.

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図2に実験装置の概略を,表1に主な実験条件を示す.実