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修士論文・博士論文一覧|九州大学 大学院人間環境学府

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(1)

36-1

1. 研究の背景と目的

 近年、公立小中学校建築ストックの急速な老朽化の

進 行 が 憂 慮 さ れ て お り、 非 木 造(大 半 が RC 造)施 設 は

約1億5千万㎡と膨大なストックを有している。この内、

早 急 な 改 修 が 必 要 な 老 朽 施 設 は 約 1 億 ㎡ と 想 定 さ れ て

おり、 建築後 25 年以上の施設の約 9 割を占めるが、こ

れ ら の う ち 必 要 な 老 朽 改 修 を 済 ま せ た 施 設 は 約 1 千 万

㎡、全体の 1 割弱にとどまっている 1)

 このような状況の中で、これまでの学校建築に関す

る研究は新築・改築のものが中心で、改修に関するも

の は 構 造 や 環 境 的 観 点 か ら の 分 析 に と ど ま り 2),3)

、 建

築計画的視点から改修方式を類型化し、施設改修が学

校空間に与える影響について言及した研究は見られな

い。そこで本研究では、大規模な施設改修が行われた

公立小中学校の内、特に改修前後で空間構成に変化が

見られるものを対象に、建築計画的視点から改修方式

を類型化し、それを用いて改修前後の空間相互のつな

がりや機能配置の変化等を分析することで今後の学校

施設改修の指針となる知見を得ることを目的とする。

2. 研究の方法

2-1. 調査対象

 本研究では、建物機能の現代化の要求に対して老朽

化した校舎を改修することで対応した全国の公立小中

学校施設を対象に研究を行う。中でも、文部科学省が

推 進 す る 老 朽 化 対 策 推 進 事 業 に お い て 長 寿 命 化 改 修

の 先 導 的 事 例 と し て 取 り 上 げ ら れ て い る 公 立 小 中 学

校 施 設 及 び、 環 境 省 に よ っ て「学 校 エ コ 改 修 と 環 境 教

育事業モデル校」に指定された公立小中学校施設の内、

特に改修前後で平面プランや諸室配置に変更が見られ

るものを対象とする ( 表 1)。

2-2. 分析方法

 本研究では、改修前後の図面から学校空間の変化を

分析する。分析に際しては、改修によって学校空間が

機能的側面と物理的側面の双方において変化すること

を踏まえ、機能的な側面に着目した分析と、スペース

シ ン タ ッ ク ス 理 論 ( 以 下 SS 理 論 ) を 用 い た 物 理 的 な 建

築空間の分析を組み合わせることで、改修前後の空間

構成の変化を明らかにする。

小中学校の改修方式と空間構成の変化に関する研究

野嶋 淳平

表 1. 調査対象校の概要

学校名 建設年改修年延床面積 ( ㎡ )改修校舎 生徒数 ( 人 )児童 既存校舎 改修方式 番号

K 市立 Ot 中学校 K 町立 Km 中学校 S 市立 Nk 小学校 W 町立 Mk 中学校 K 市立 Sn 小学校 T 町立 Tm 小学校 N 市立 Hs 小学校 K 市立 Nh 中学校 H 市立 Ht 小学校 K 市立 Sz 小学校 I 市立 Sg 小学校 Y 市立 Gt 中学校 M 市立 Mm 中学校 ①

② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬

1978 1978 1978 1966 1977 1981 1961 1974 1974 1975 1981 1980 1976

2016 2007 2010 2010 2008 2007 2016 2008 2017 2012 2016 2016 2012

5355 2694 2252 2917 3922 6590 2467 3183 3698 4355 5131 3348 5455

5384 2759 2305 3500 3922 6686 2467 4139 3698 4677 5173 3387 6101

216 88 143 260 410 366 253 83 257 662 605 647 282

185 81 128 210 465 386 285 561 288 689 566 689 260

多軸型 一文字型 一文字型 分棟型 一文字型 ロの字型 一文字型 多軸型 一文字型

分棟型 ロの字型 一文字型 ロの字型

面積維持型 面積維持型 面積維持型 増築型 面積維持型 面積維持型 面積維持型 増築型 面積維持型

増築型 面積維持型 面積維持型 増築型

前 後 前 後

3. 改修方式の類型化と改修手法の傾向

3-1. 平面変化率からみた改修の特徴

 改修による床面積の変化を捉えるために、改修対象

校舎の改修後の延床面積に対する平面的に変更が行わ

れた部分の面積の割合を平面変化率と定義して分析を

行った ( 図 2)。 その結果、 本研究の対象となった学校

施 設 13 校 の 内 8 校 が 平 面 変 化 率 20%~40% の 範 囲 に 集

中する傾向にあり、現在行われている学校改修が既存

校 舎 の 平 面 プ ラ ン の 6~8 割 を 維 持 し た ま ま 部 分 的 に

行われていることが明らかになった ( 図 2)。

3-2. 面積変化率からみた改修方式の類型化と特徴

 改修対象校舎の改修前の延べ床面積に対する改修後

の延床面積の割合を面積変化率と定義して分析を行う

こ と で、 改 修 方 式 を 面 積 維 持 型 と 増 築 型 の 2 つ に 分 類

した。まず、面積維持型は一文字型を中心に既存校舎

の 形 状 に 関 わ ら ず 比 較 的 多 く 見 ら れ、 面 積 増 加 率 が

5% 以 下 と 比 較 的 小 さ い こ と、 改 修 前 後 で 校 舎 形 状 に

変化が見られないことが特徴である。

 次に増築型は多軸型、分棟型、ロの字型校舎で見ら

れ た。 面 積 の 増 加 率 は 大 き い も の で 30% を 越 え、 改 修

前後で既存校舎の校舎形状に変化が見られることが特

徴として挙げられる。特に校舎形状の変化については、

増 築 型 4 施 設 中 3 施 設 が 回 遊 型 の プ ラ ン に 変 更 さ れ て

いる ( 図 2)。 非回遊型校舎

一文字型 多軸型 分棟型 ロの字型 8 の字型

回遊型校舎

後 N=6N=6 N=2N=2 N=2N=0 N=3N=4 N=0N=1

(2)

36-2 3-3. 改修手法の類型化と特徴

 研究対象校の改修前後の図面を比較することで、平

面 計 画 上 共 通 し て み ら れ る 改 修 手 法 の 類 型 化 を 行 い、

改修方式と改修手法の類型との関係性を捉えた(図3)。

その結果、単室改修は改修方式に関係なく比較的多く

採用されており、中でも分割・機能変更・縮小が単室

改 修 全 体 の 9 割 を 占 め て い る こ と が 明 ら か と な っ た。

特に面積維持型は全体の7割を単室改修が占めており、

各教室を適正規模に調整し、再配置することによって

児童生徒の学習・生活形態の変化に対応していると考

え ら れ る。 一 方、 増 築 型 で は 室 改 修 以 外 の 動 線 改 修、

増築改修も比較的多く採用されており、教室以外の学

校空間に対しても積極的に変化を与えることで施設機

能の現代化が図られている。

4. 機能別の空間構成の変化からみた学校改修の動向

4-1. 面積維持型及び全体の傾向

  改 修 に よ る 機 能 別 の 空 間 構 成 の 変 化 を 捉 え る た め、

学 校 空 間 を CR 系、SCR 系、 管 理 系、 共 用 系、 接 続・ 移

動系、補助系の 6 種類に分類した。

 まず、面積維持型の各空間の変化は全体の動向とよ

く 一 致 し て お り、CR 系・ 共 用 系 の 増 加、SCR 系 の 減 少

が特徴的であり、管理系・接続・移動系・補助系には

大 き な 変 化 が 見 ら れ な か っ た。CR 系 は 特 に 普 通 CR の

増 加 が 顕 著 で あ り、 こ れ に つ い て 各 校 の 普 通 CR 数 の

増減と児童生徒数の増減の関係を見ると、各校の児童

生徒数は一概に減少傾向にあるとは言えないため、普

通 CR 数 の 増 減 に も 学 校 ご と に 幅 は 見 ら れ た が 13 校 中

8 校 で 室 数 が 増 加 さ れ る 傾 向 に あ っ た。 ま た、 児 童 生

徒数の増減とクラス規模の増減の関係を見ると、児童

生徒数の増減に関わらずクラス規模が縮小傾向にある

学 校 が 13 校 中 8 校 見 ら れ た。 さ ら に グ ル ー プ A の よ う

に 児 童 生 徒 数 が 減 っ て る 状 況 の 中 で も、 普 通 CR 数 を

縮 小 し な い 学 校 が 4 校 見 ら れ、 改 修 に 伴 っ て 学 習 集 団

の小規模化が図られる傾向が明らかとなった。

  次 に SCR 系 の 空 間 の 変 化 に つ い て 比 較 的 減 少 数 が 大

きかった特別教室と準備室に着目し、教科ごとの室数

の変化を捉えた。その結果、理科系・音楽系は特別教

室と準備室共に改修前後で室数に変化が見られず、美

術系・技術家庭系及び視聴覚室が減少傾向にあること

が明らかとなった。これは例えば、技術家庭系の教室

が改修前は被服室・料理室・金工室・木工室と何種類

にも細分化されているものが、改修によって家庭科室・

技術室に集約することが可能であることに加え、理科

室・ 音 楽 室 は 機 械 設 備 及 び 防 音 等 の 制 約 か ら 改 修 の

ハードルが高いためであると考えられる。

図 2. 面積と校舎形状からみた改修の傾向

図 3. 改修手法の類型と改修方式ごとに見た利用状況 ■改修対象校舎と平面変更部分の延床面積比及び平面変化率

■改修前後における校舎延床面積・校舎形状・面積変化率の関係

凡例

平面変更部分面積

(b)

面積変化率

=(a

2

)/(a

1

)×100

平面変化率

=(b)/(a)×100

改修後校舎延床面積 (a)

改修前校舎延床面積 (a1) 及び改修後校舎延床面積 (a2)

0

0

1000

105

110

115

120

125

130(%)

2000

3000

50[%]

10

20

30

40

1000 2000

2000 3000 4000 5000 6000 7000 3000 4000 5000 6000 7000 ( ㎡ )

(㎡)

( ㎡ ) +28.7 +95.8 +42.2

+322.6

+645.3

+38.8 +589.9

+955.7

+53.5 +64.7

一文字型

校舎形状: 多軸型 分棟型 8 の字型 ロの字型

±0 ±0 ±0

増築型

面積維持型

①分割 ■平面計画上の改修手法の類型化

■改修方式と改修手法の関係

⑦分割変更 ( 増加 ) ⑧分割変更 ( 維持 )

⑨分割変更 ( 減少 ) ⑩集約

⑪複合

⑫間仕切りの撤去

⑮廊下型増築

⑬間仕切りの増設

⑯中庭型増築

⑭垂直動線の増設

⑰室型増築

②機能変更 ③縮小

④拡張 ⑤新設 ⑥接続変更

例 教室 廊下・オープンスペース 既存校舎 増築部分 機能 A 機能 B

平面改修手法

単室改修 室改修複室改修 複合改修 動線改修 増築改修

改修手法

凡  例 ①④ ⑤② ⑥③ ⑦⑨ ⑧⑩ ⑪ ⑫⑭ ⑬ ⑮⑰ ⑯

97 20

34

44 2 3 12

51

28 16

134 1

7

5

56 10 15

53 3

22

53

150 35 15 25 21

114 132

246 13

9

6

4 0

21 21

1

3

(3)

36-3

4-2. 増築型の特徴

 増築型の改修においても CR 系、SCR 系の空間につい

て 面 積 維 持 型 と 同 様 の 傾 向 が 明 ら か と な っ た。 ま た、

増築型の特徴として共用系の空間と接続・移動系の空

間の増加が顕著であった。これは、増築型の改修によっ

て新設される空間が学習的な利用よりも生活的な利用

を想定しているためであると考えられ、増築型改修は

面積の増加と併せて直接的に学習空間を生み出すので

はなく、児童生徒の生活空間を増やすことで、日常生

活を含めた多様な学習に対応することが試みられてい

ると言える ( 図 4)。

5. 空間のまとまりからみた学校改修の特徴

5-1. 面積維持型の特徴

 改修前後の各室の配置関係、まとまりの変化を見る

と、まず面積維持型の CR 系は改修によって大きさ 5 の

比 較 的 大 き な ま と ま り が 解 体 さ れ、3~4 の ま と ま り

に再編成されることが明らかとなった。これと前章の

普 通 CR の 増 加 傾 向 を 併 せ る と、 面 積 維 持 型 の 改 修 に

お い て CR 系 教 室 は、 新 設 さ れ る 普 通 CR を 含 め て 各 階

に 3~4 の ま と ま り を 形 成 し て 配 置 さ れ る 傾 向 が あ る

と 考 え ら れ る。 ま た、 管 理 系 の 空 間 は ま と ま り 2 の 比

較的小さく分散的な室配置が改修対象となり、大きさ

3~6 以 上 の 比 較 的 大 き な ま と ま り に 集 約 さ れ る 傾 向

にあることが明らかとなった。これに機能別の空間変

化の傾向を併せると、面積維持型では管理系の空間は

再配置の対象となっており、分散傾向にあった各室を

1 階 部 分 に 集 約 す る こ と に よ っ て、 主 に 教 員 に と っ て

利用しやすい空間構成に変化していることがわかる。

5-2. 増築型の特徴

 増築型の改修では、空間のまとまりと配置傾向の分

析から特徴的な変化はほとんど見られなかった。これ

は、増築型が面積維持型の改修と比べて、既存の室配

置を活かす傾向にあるためと考えられる。一方で共用

系 の 空 間 は、 ま と ま り 2 と 4 に お い て 増 加 傾 向 が 見 ら

れた。これに機能別の空間変化の傾向を併せると、増

築型の改修において新設される共用系の空間は、単独

で配置されることは少なく、いくつかのまとまりを形

成して集約的に配置される傾向にあるといえる(図5)。

6.SS 理論による中心性の概念からみた改修の動向

6-1. 面積維持型の動向

 改修による物理的側面の変化を捉えて施設改修の空

間 へ の 影 響 を 把 握 す る た め、SS 理 論 に よ る 中 心 性 の

概念を用いて分析を行った。その結果面積維持型では、

施 設 全 体 の 空 間 的 繋 が り や す さ を 表 す Int.V に 大 き な

変化が現れた学校は少なかった。すなわち、面積維持 図 4. 機能別の空間構成の変化からみた改修の動向

■特別教室及び準備室の変化の詳細 ■普通 CR 数の変化と児童生徒数変化の関係性 ■改修前後における各空間の変化・全体の傾向

■類型ごとにみた各空間の変化の内訳 ■機能的観点による学校空間の分類

CR 系

CR

系 前

面積維持型 (N=9) 増築型 (N=4)

面積維持型(N=9) 増築型(N=4)

CR 系

分類 機能・役割 空間例

SCR 系 管理系 補助系 凡 例

凡 例

共用系 接続・移動系

200 173

127

N=127

N=140

N=114

N=99

N=89

N=86

N=40

N=43 N=52

N=40 N=46

N=58

46 52 40 21 71 19

58 40 43 45 81

114 89 58 112 21

140 99 86 71 115

198 166

139 129

129 79

116

183

196 40

46 面積維持型

増築型

普通CR 特支CR 少人数CR 多目的CR HR

150 100 50

22 24 SCR 系

管理系

共用系

補助系

主に児童生徒が日常の学習・生活のために利用する教室の内、 特別教室に属さないもの。

主に児童生徒が日常の生活のために利用する空間。 理科や音楽等実技を伴うような特別教科のための教室及び図 書室等特別な施設設備が常設されている教室。

主に教員や事務員が日常の執務・生活のために利用する室。

普通教室・多目的教室 少人数教室等 各種特別教室及び準備 室・PC 室・図書室等 職員室・校長室・会議室 事務室など 児童生徒用トイレ・ギャ ラリー・テラス等

接続・移動系 廊下や階段室など異なる階や空間同士をつなぎ、施設の利用者が主に動線として日常的に利用する空間。 教材室や機械室の様に、学校施設を運営する上で必要になる 資料・装置等が保管、設置されている室。

廊下・階段室・昇降口・ EV・前室・ホール等 倉庫類・資料室・機械室・ 楽器庫等

SCR

後 凡 例 管理系 前

後 凡 例

特別教室 準備室 図書室・PC室 学習室・プレイルーム その他

職員室・校長室・会議室 保健室 相談室 用務員室・事務室 その他

97 9

9

8 2 31

8 4 8 5

8 13 110

40

45 1

44

36 29

35

15 15 16 12 7

4

25

19 8

11

6 4 3

7 54

20 19

9

9 44

39 9 8

7

11 10

10

4 3 4

8 43

19

18

N=58

N=71

N=112

N=115

N=71

N=81 N=21

N=45 共用系 前

凡 例 WC・多目的WC WS ギャラリー・ラウンジ テラス・屋上 中庭 配膳スペース 60

55 21

27 11

6

13122 5

1

接続・移動系

凡 例 廊下・ホール 階段室・EV 昇降口・玄関・風除室 前室 ベランダ・デッキ 45

45 27

30 20

23 16

13 4 4

30

36 20

21 8

9 9 4

5 10

N=21

N=25

N=36 N=19

N=35 N=11

N=29 N=8

N=24

N=19

N=22 補助系 前

凡 例 倉庫・資料室・楽器庫・教材室 機械室・電気室 ロッカールーム等

凡 例 面積維持型 増築型

凡 例 理科系教室 美術系教室 技術家庭系教室 音楽系教室 視聴覚教室 19

20 1 3

11

14 20

16

後 10

10

8

8

9 9

8

5

4 3

3

2 21 1

1 1 2

6 2 9 3 1

13 8 4

8

8

5 11

10

6 2

6

9 7 2

N=44

児童生徒数の増減

(人

)

児童生徒数の増減 ( 人 ) 普通 CR 数の増減 ( 室 )

1クラス規模

(人

/室

)

-60 -40 -20 0 20 40 60 478

-6 -4 -2 0 2 4 9 -60 -40 -20 20 40 60 478 23.5

10

5

0

0 -5

-10

(4)

36-4 型の主流である室改修は学校空間全体のつながりに影

響しにくいことが明らかとなった。

6-2. 増築型の動向

  一 方 増 築 型 で は 中 心 性 は 上 昇 傾 向 と 減 少 傾 向 の 2 種

類に分けられる。しかし減少傾向にある学校④、⑬が

どちらも間仕切りの増設を比較的多く採用しているこ

と を 考 え る と、 減 少 傾 向 の 要 因 は 暖 房 区 画 の 設 置 と

いった環境的側面によるものと考えられる。このこと

から増築型の改修には、施設全体の空間的つながりを

向上させる効果があり、新設される空間は動線空間と

しても有効に働いていることが明らかとなった(図6)。

7. まとめ

 以下に、本研究で明らかになったことと今後の学校

改修のあり方についての考察を示す。まず、平面変化

率 に 着 目 す る こ と で 1) 現 在 行 わ れ て い る 学 校 改 修 は

既 存 平 面 の 60~80% を 維 持 す る 傾 向 に あ り、 既 存 平

面を活かす形で改修を行う必要があること。また改修

方 式 の 類 型 化 よ り、2) 平 面 計 画 上 の 改 修 手 法 は 室 改

修 が 中 心 的 で あ り、 中 で も 分 割・ 機 能 変 更・ 縮 小 が

よ く 見 ら れ る こ と、3)CR 系 の 空 間 は 増 加 傾 向 に あ り、

学習集団の小規模再編の傾向が見られるが、学校毎に

ばらつきがあるため児童生徒数の変化を予測して改修

を行う必要があること。4) 一方 SCR 系の空間は減少傾

向にあり、中でも音楽室を除く副教科の特別教室と準

備 室 は 集 約 化 の 対 象 と な り や す い こ と。 ま た 各 類 型

に着目すると、 まず、 面積維持型は 5)CR 系の空間が 3

~4 室 を 1 ユ ニ ッ ト と し て 再 配 置 さ れ、 管 理 系 の 空 間

は 1 階に集約的に再配置される傾向にあること。6) 増

築型と比較して学校空間全体のつながりと生活空間へ

の働きかけが少なく、室改修以外に部分的な増築を含

めた改修手法の検討が必要であること。次に、増築型

は 7) 既 存 校 舎 の 形 状 や 費 用 面 で の 制 約 は 多 い が、 既

存の室配置を活かしたまま、学校空間全体のつながり

を向上させ、生活空間の幅を広げる上で有効な改修方

式であることが明らかとなった。

 今後は、長寿命化改修が行われる学校施設について

児 童 生 徒 の 改 修 前 後 の 空 間 の 利 用 実 態 を 捉 え る こ と

で、学校改修が児童生徒の施設利用に与える影響につ

いてより詳細な分析を行う必要があると考えられる。

面積維持型

N=9 CR 系 SCR 系 学校空間の分類管理系 共用系 補助系

1前

2前

3前

4前

5前

6 前 後

増築型 N=4

凡 例

CR 系 SCR 系 管理系 共用系 補助系

学校空間の分類

1前

2前

3前

4前

5前

後 N=13

N=11

N=29

N=25

N=18 55

62 62 N=23

N=16

N=20

N=38 N=4

N=6

N=2

N=2

N=3

N=3 N=36

N=32 N=14

N=6 N=6 N=0

N=12 N=9 N=3

N=20

N=20 N=8

N=4

N=10 N=0

N=5 N=10

N=18

N=16

N=24

N=24

N=44

N=30

N=15

N=18

N=24

N=4

N=5

N=21

N=10

N=12

N=12

N=22

N=26 N=11

N=15

N=24

N=28 N=14

N=12

N=12 N=0 N=8

N=14 N=14 N=6

N=12

N=12

N=21

N=18

N=12

N=9

N=4 N=0

N=8 N=4

N=8

N=8

N=5 N=0

N=12

N=6

N=19

N=29 N=30

4441

1

2 3

3 4

4

42 2

2 2

2 3

3

3 3 1

3 4 2

2 12 2

2

3 33

3 33

4

5

5

1

11

3 31 53 2 3

3

3

44

4

4

5

3 3 333

3 3 3

2

2 2 3 1

44

4

4 4

4

4

4 4 4

2 2 2

442 2

111

55 5

5 4 44

4 4

6

6 8

10

8

8

555

8 8

12 12 20 20 12

14 23 22 14 9 7

28 12

18 10 12

9

12 9

9

20

12 24

15

6 66 9

12

8 8

8

8

10 10

10 10

4 6

6

6 86

6 6 19

29 6

6 6 12

12 12

14

10 6

8

88 6

7

7

6

6 10

11 7

6 66

6

6 6

6

8

6 6 8

6 9

9

66 6

6

8 6 6

1F 2F 3F 4F ※同種類の N 個の空間の隣接を大きさ N のまとまりと定義する。

図 5. 空間のまとまりからみた改修による室配置の変化

図 6. 施設全体の中心性 ( 平均値 ) の変化と改修手法の関連 改修手法の利用状況 中心性 (Int.V)

項目別 Int.V の平均値 室改修 動線改修増築改修

② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ ⑯ ⑰

態 1.0 1.25 1.5 1.75 2.0 前

後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 凡 例

1.772

1.869 1.685

2.093 1.371

1.366

1.401 1.350

1.408

1.457 1.357

1.653

1.648 1.208

1.457

1.203

1.099 1.184

1.705 1.073

1.306

1.172

1.706 1.204

1.634 1.591

3

3

2

1

3

3

3

3

1

2

2

3 5 1 2 3 1 10 2

12 3 1 3

2 1 1 1 2 6 2 1 1 4

8

3 6 2 1 1 2 3 5 1 2 9 4 2 1 1 1 1

3 1 1

1 2 16

8

1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 6

4 2 3 1 1 1 1 6 4 1 1 1 1 1 3 1 8 7 2 1 2 2

施設全体 Int.V 平均 改修前後 Int.V 比較 施設間改修前後 Int.V 比較

参考文献

1)「学校施設の老朽化対策について~学校施設における長寿命化の推進~」

 2013 年 文部科学省

2)「耐震性向上を伴う総合的改修における建築関連法規制への設計対応について」

大島隼 角田誠 日本建築学会計画系論文集 .2013 年 3 月

3)「既存学校施設の長期使用を視野に入れた改修手法に関する研究」

平井健嗣 李祥準 堤洋樹 小松幸生 高口洋人日本建築学会計画系論文集 .2011 年 6 月 謝辞

  調 査 に あ た り 各 自 治 体 の 関 係 者 の 方 々 に 多 大 な る ご 協 力 を 頂 き ま し た。 末 筆 な が

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