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Guun効果によるGaAs半導体からの電磁放射に関する研究 利用統計を見る

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(1)

Gunn効果によるGaAs半導体からの

電磁放射に関する研究

(昭和47年8月31日受理)

伊藤千秋

清水庄一

今西泰雄

鈴木恒夫

Studies on Electromagnetic Emission from n-GaAs by Gunn Effect

ChiakiITO ShyoichiSHIMIZU YasuoImanishi TsuneoSUZUKI

       SynOpsis  In this paper, the experiments of Gunn oscillation and photon emission by electron− hole recombination in the state of the avalanche caused by high field domain are shown.  Main experimental results are as follows: (1)As the excitation becomes stronger, Gunn oscillation frequency in the state of an  avalanche becomes higher. (2) The electron−hole recombination is direct transition・ (3)Stimulated emission is recognized, but the directivity and spectrum of photon emission  are fairly broad.

1.はじめに

 1963年,Gunnはn−GaAs・ミルクにオーミックコン タクトを施こしDC電圧を加えてゆくと,初めは電流 が増加してゆくが,ある閾値をこえると発振が起こる ことを発見した1)。この発振は動く電荷二重層,いわゆ るhigh field domainが試料中をカソードからアノー ドに向って走行することによっておこることがわかっ た。このn’GaAs中のバルク負性抵抗の存在は,Gunn の実験より前に1962年Hilsum2}によって伝導帯の 二谷エネルギ構造で高移動度をもつ下の谷の電子が電 界により加速され,エネルギを得て低移動度である上 の谷に遷移することにより電圧制御形のバルク負性コ ンダクタンスが生ずることを予言している。その後, 多くの人々によってn・GaAsのもつバルク負性抵抗3} に関して研究され,現在ではエピタキシャルウェハを

用いて数10GHzぐらいまでのGunn発振ダイオード

が作られ,またバルクの負性抵抗を使ってマイクロ波 の増幅などの研究が進められている。筆者らはhigh field domainがなだれを起すような状態でのGunn発 振や電子一正孔対再結合発光およびレーザ素子として の可能性を調べたので以下にその報告をする。 2.n−GaAsの負性コンダクタンスとdomainのなだ  れによる発光について  GaAsのエネルギ帯構造は図一1のようになってい る2)半導体中伝導帯の電子の速度びおよび有効質量 m*はV・=方一idE(le)/耽, m*=・ h2/d2E(ゐ)/磁2で与       伝導帯

     u,      /

       。.5。v L   ・.36。V 三 m串=O.072mo m*=1.2 mo 価電子帯 /

〈111>._0−〈100>

         k  図一1GaAsのエネルギ帯構造

(2)

山梨大学工学部研究報告 第23号 えられる。ここでE(le)はエネルギ,ゐは波数であ る。 図一1で低電界では伝導帯電子は下の谷Lに存在 するが,電界の増加とともにエネルギを得て上の谷U に遷移してゆく。下の谷の曲率は上の谷のそれよりも 大きい。そのため下の谷の電子は軽くて移動度が大き く速度が速いが,上の谷の電子は移動度が小さく速度 が遅い。<100>方向に例にとると,上の谷では移動 度μ一5000cm2/V. secであるのに対し,上の谷のそ れは100cm2/V. secで非常に小さい。このため電界を 上げてゆくと,下の谷にいるときには速い速度で走っ ているが,やがてエネルギを電界からもらい上の谷に 遷移すると重く遅い電子に変わってしまう。すなわ ち,電子はエネルギをもらうと減速されることになる。 これはバルクが負性コソダクタンスを示すことを意味 する。D. E. McCumberらの解析3)によると,試料中 に不純物濃度(電子)の不均一部分が存在するとそこ の部分でhigh field domainの核が発生し,アノード に向かって走行しながら成長し,やがて飽和し,high field domainといわれる動く電荷二重層が形成され る。アノードに到達し消滅すると再び新しいhigh field domainが成長する。このような状態をくり返えすの がGunn発振である。その発振周波数アはカソード・ アノード間隔を1,負性コソダクタソスの閾値を与え るときの速度をVLとすれぽ,おおよそ     1   ∫=−     VL で与えられる。またGunn発振になる条件3)として nol>1012Cm”2(noは不純物濃度)がみたされなけれぽ ならない。high field domainの前側(アノード側)は 数10kV/cmと非常に高電界となっており,この部分 の電子の速度は遅いが,それ以外のところでは電界が 小さいので速度が速い。そのためdomainの後の電子 はdomainに追つき, domainの前方では電子がアノー 芦     0       2    カソード      ァノード 図一2high field domainに対する電荷および電界分布 ドの方へ掃出され空乏層化される。このためdomain は極端に電子および電界が集中する。このhigh丘eld domain:の様相を図一2に示す。さて試料に過剰な電圧 を加えてゆくと,不純物濃度が1014’“15cm−3ではdo・ main幅はあまり広がらないままで,過剰電圧の電圧 降下はほとんどhigh field domainに集中してしま う4)。そのため過剰電圧を増加してゆくと,やがて domainの高電界によりなだれをおこし高濃度の電子 一正孔対が発生する。この電子一正孔対は再び再結合 をして光を放出する。もし試料をへき開面でファブリ ペロー共振器状態にしておけば,へき開面の法線方向 に強い指向性をもった誘導放出光が観測されるはずで ある。

3.実

験  本実験で用いた半導体ウエハはモンサソト社製のも のでオリエソティションは<111>,抵抗率は試料 No.1では2.8Ω一cm(no・=4.2×10i4 cm”3),試料No. 2では0.52Ω一cm(no=3.99×1015cm−3)を用いた。 試料のオーム接触はウェハの<111>面を研摩・エッ チングし破壊層を除去したのちSnを蒸着し, N2雰囲 気中で合金(400°C,30sec)して得られた。形状は図 一3のように切り出された。試料No.2では<110>面 をへき開してファブリ・ペロー共振器状にした。マウ ソトには1N23形ダイオードパッケージを用いた。用 いた励起用電源は内部インピーダンス50Ωでパルス幅 1μsec,1くり返えし70 Hz,またはパルス幅500 n sec くり返し10Hzまたは単一パルスのものを用いた。こ れらの使いわけは試料の熱的破壊を考慮したためであ る。っぎに各種実験結果を示そう。実験はすべて同軸 系を用いた。  3.1電圧・電流特性  まず電圧・電流特性を試料No.1とNo.2について 測定した。その結果を図一4に示した。図一4に示すよう に,濃度の小さいNo.1の試料では電圧制御形の負性 抵抗を示す。一方,キャリア濃度の高い試料No.2で は300°KでははっきりしたGunn効果による電圧制御 形特性を示さず,直ちにdomainがなだれを生じさせ 試料 No l No2 α  400μ300μ b  400 500 2 330 100 Sn蒸着.

図一3試料の形状

(3)

 0.3 曾 差 : o.2

5

脚O.1         電圧〔V〕(No.2)        50         100 CO      100        200        300         電[E 〔V〕 (No,1) 図一4 電圧・電流特性(試料No.1およびNo.2) 6

 Q

 2

4…至 2暗P 低域ろ波器 (60MHz) 試料 ショート フフンジャ 図一5 電圧および電流波形 電流制御形特性に移行してしまう。しかしNo.2でも 77°Kの低温にするとキャリア濃度が減少するため, やはりNo.1と同様な電圧制御形の負性抵抗部分が現 われてくる。図一5(a)に300°KにおけるNo.1の電流お よび電圧波形を,また(b)には300°KにおけるNo.2の 電流および電圧波形を示した。  3.2 Gunn発振の周波数特性  つぎにGunn発振特性を調べるために図一6のよう な構成をした。励起パルスは低域ろ波器(遮断周波数 60MHz)を通して試料に加えられ,ショートプラソジ ャで同調をとった。出力はヘテロダイン検波で測定し た。測定結果を試料No.1については図一7,8,9に,ま たNo.2については図一10に示した。 No.1ではなだれ は起きていないがNo.2ではなだれ状態にある。 No. 1, No.2のGunn発振周波数の設計値はそれぞれ300 MHz,1GHzである。図一8,9からわかるように,

⊥:t!;iL・budiiL L E−一一

パルス1コニ_:[r

100 冨 〕 R 80 冨 〕 ヘテロダイン検波    シンクロスコーフ 図一6Gunn発振実験図 250       300       350        400    450         周波数[MHz] 図一7Gunn発振スペクトラム(試料No.1) 380 冨37 邑 蘂360 搭350 180    200    220    240   260       電圧〔V] 100  冨

goE

80 図一8電圧に対する発振周波数(試料No.1) 100   300       350      400       450       周波数〔MHz〕 図一9Gunn発振同調特性(試料No.1)

(4)

昭和47年12月 山梨大学工学部研究報告 ■

5

一 2.1 2.0        5       10          電流〔A〕 図一10電流に対する発振周波数変化(試料No.2) No.1では励起電圧の増加とともにスペクトラム幅が 225V付近から急速に10 MHzぐらいに狭まってコヒ ーレソシイになり,周波数は下がってゆく傾向にあ る。この傾向はHakki5}らの実験と一致する・しか し,不純物濃度の高いNo.2では,なだれ状態で発振 している発振周波数は設計値の約2倍のところから電 流の増加とともに増加し,No.1と傾向が異なる。 No.1での傾向は励起電圧の増加により空乏層が伸び, domainが走行する距離が長くなるためであると解釈 されている5}。この解釈はなだれ状態を伴うNo.2の 傾向説明には適用できない。No.2の場合,発振周波 数が設計値の約2倍であるから,LSAモードの発振 が考えられるが,LSAの場合には外部共振器の共振

周波数で発振周波数が決るのでLSAモードではな

く,考えられる原因としては,励起電圧の増加により domainの成長速度が促進され,なだれで消滅するま での走行距離が短縮されるために周波数が増加するも のと考えられる。図一9はNo.1の同調持性であるが, かなり広い範囲で同調する。  3.3 発光特性  っぎの試料No.2についてのdomainのなだれ発光 特性の測定について述べる。測定方法を図一11に示 100PF 低域ろ波器  (60MHz)

几訂

t。/ヒ ローカル 発振器 30MHz アンプ 分光器.  (ホトマル) シンクロ スコープ 図一11発光スペクトラムおよび周波数測定図 す。図一12に電流に対する発光相対強度を示す。図で みるように,3A付近から急速に発光強度が指数関数 的に増加する。この増加傾向はなだれによる電子一正 孔対発生数の増加およびへき開面による誘導(再結合) 放出の過程が指数関数的であるからであると考えられ る。図一13,14に励起パルス500κsecを用い電流をパ ラメータとしたときのそれぞれ300°K,77°Kにおけ るパルス継続時間内で積分した発光のスペクトラム分       o布である。300°Kでは,スペクトラムは8800∼9600A (1.42∼1.3eV)とかなり広い範囲に分布している。こ 1000 300 t7y 100 蓑 奪 来 30 韻 #5 栗 10  0         5         10       電流〔A〕 図一12 電流に対する発光強度特性     8800     9000    9200     9400    9600          波長〔A〕 図一13300°Kにおける発光スペクトラム分布(試料No.2)  4 田 畢2   0    8200    8400    8600    8800     9000       o          波長〔A〕 図一1477°Kにおける発光スペクトラム分布(試料No.2)

(5)

のような広がりの原因として,なだれ励起により生じ た電子のエネルギが広いエネルギ帯を占めるため,お よび時間経過とともにエネルギギャップが減少し,発 光の中心が短波長から長波長に移行しているのを時間 的に積分した結果,スペクトルが広くなっているなど である。図一15は図一13のそれぞれのパラメータに対 応した発光強度波形であるが,これらの波形は図一13 の対応するスペクトラム分布の形と非常によく類似し ている事実からも,時間経過とともに発光中心が長波 長側に推移していることが推測される。  つぎに,スペクトラムのピーク点の遷移について考        o察してみる。300°Kではピーク点は9070A(1.38eV)        o で,また77°Kでは8450A(1. 48eV)で生じている。 一般にエネルギギャップVg(のは   Vg(T)−Vg(0)一βτ (a)7A (b)9A        (c)12A 図一15電流をパラメータとする発光波形 上側:発光波形(負極性),下側:電流波形 y 10° 10A。 2.0 5° 2.5 3.0      、 3.5 5°   10°κ   図一16発光の指向特性 原点はへき開面<110>の法線方向 で温度とともに減少する。それ故ピーク点のエネルギ ギャップを0°Kまで外挿してみると,Vg(0)−1.52eV となり,下の谷の下端と価電子帯の上端のエネルギギ ャップ1,53eVに非常に近い。それ故スペクトラムの ピーク点は直接遷移であると考えられる。また発光し ている幅は1、42−1.3−0.12eVであるが,これは下 の谷と上の谷とのエネルギ差0.36または0.5eVより はるかに小さい。それ故発光に寄与した電子はすべて 下の谷から価電子帯に直接遷移していることがわか る。最後に発光の指向特性を測定した結果を図一16に 示す。図からわかるように,へき開面<110>方向に 対して約20°ぐらいの放射角をもって光が放射されて いる。したがってへき開面による共振器で誘導放出の 効果は多分に認められるが,まだ横方向モードが多数 存在し,レーザ素子として用いるには良質の空間的コ ヒーレンシイはあまり期待できないと思われる。

4.結

言  以上n−GaAsでのhigh丘eld domainのなだれに よる電子・正孔対角結合による発光機構を中心に諸特 性を調べた。その結果つぎのようなことが判った。① 濃度の高い資料では常温でhigh field domainのな だれのため見掛け上電流制御形の特性を示し,励起を 強めるとともに走行距離が短縮し,発振周波数が上が る傾向がある。②発光スペクトラムは熱のため幅0.12 eVと広い範囲に分布し, 発光は下の谷から価電子帯 への直接遷移でおこる。③へき開面を利用した共振器 により誘導放出は強調されるが,レーザ素子として用 いる場合スペクトラムが広く横モードが多いのでコヒ ーレンシイのよい光は期待できない。  終りに日頃ご指導を賜わる本学の電子工学科石田哲 朗教授および清水東助教授に感謝する。

(6)

第23号 1) 2) 3)       参考文献 J.B. Gunn“Microwave oscillations of current in 皿・Vsemiconductors”. Solid State Commun., voL 1. PP.88−91 (sept.1963). C.Hilsum,“Transferred electron amplifiers and oscillators”, Proc. IRE, vol.50, pp.185・189(Feb., 1962). 例えばD.E. McCumber and A. G. Chynoweth, “Theory of negative・conductance amplification    and of Gunn instabilities in‘two’valley’semi・    conductors”, IEEE Trans. Electron Devices, vol.    ED・13, pp.4・21(Janu.,1966). 4) J.A. Copeland,“Stable space−charge layers in    two−valley semiconductors”, J. ApPl. Phys., vol.    37,pp.3602−3609(August,1966). 5)B・W.Hakki and S. Knight,“Microwave pheno・    mena in bulk GaAs”, IEEE Trans. Electron De・    vices, vol. ED・13, pp.94・105(Janu.,1966).

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