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デコリンを用いた肺癌の腫瘍増殖抑制、抗腫瘍免疫増強、血管新生制御の試み

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(1)

デコリンを用いた肺癌の腫瘍増殖抑制、抗腫瘍免疫

増強、血管新生制御の試み

著者

渡辺 彰

(2)

デコリンを用いた肺癌の腫癌増殖抑制、抗腫癌免疫増強、

血管新生抑制の試み

研究課題番号11670561 平成1 1年度一平成1 2年度科学研究費補助金(基盤研究(C) (1 ))研究成果報告書 平成1 3年3月

研究代表者渡辺彰

(東北大学・加齢医学研究所・助教授) 00021005占61 -   ■____

(3)

はしがき プロテオグリカンの-つであるデコリン(DC)は、細胞外マトリクスにおいて細胞の接着、移動、増殖 において重要な役目を担っている。デコリンは組織ではⅠ型コラーゲン、ファイブロネクテン、 TGト betaなどと結合し、それらの活性を調節している。一方デコリンは様々な上皮系腫癌において発現 が低下しており、デコリンを恒常的に発現するように形質転換した腫癌細胞は増殖が抑制されるこ とも報告されている。本研究ではin vJ't'0で、デコリンによる癌増殖.転移抑制をめざした遺伝子治 療の開発に資することを目的として、デコリンを発現するアデノウイルスベクターを作製し、実験動 物に接種した腫癌へ感染させ、腫癌の増殖・転移、血管新生、などを検討した。 (1)ヒト・デコリンの GDNAを用い、デコリンを発現する非増殖性のアデノウイルスベクター(AdCMV.DC)を作製した。 (2) ヒトA549肺癌細腹にAdCMV.DCベクターを感染させ、デコリンの発現とTGF-beta抑制能を確認した。 (3)腫癌細胞にAdCMV.DCベクターを感染させて培養したが、コントロール群(AdCMV.Nullベクタ ー)に比べて有意な腫癌細胞増殖抑制効果は認められなかった。 (4)ヒト肺癌細胞をマウスに接 種し作製した移埴腫癌にAdCMV.DCベクターを直接投与したところ、コントロールベクター(AdCMV. NulJ)投与に比べ23.3%の腫癌増殖抑制が認められたが有意差は認めもれなかった(p=0.19)。また 腫癌血管新生抑制効果は認められなかった。今回の研究ではデコリン遺伝子導入による有意な 腫癌増殖抑制効果は認められなかったが、その原因として,腫癌局所におけるデコリンの発現の 多少.デコリンの有するTGトβ結合以外の生理機能や安定性の問題などが考えられた。デコリン とアデノウイルスベクターを使用した本研究の結果では,肺癌に対するデコリン遺伝子治療の応用 に向けて,いくつかの解決すべき課題が示された。しかしながら,今後, (i)腫癌への遺伝子導入法 の改良や遺伝子導入経路の検討, (ii)発現効率が良く,かつ免疫原性の少ないベクターの開発, (ii i)選択的かつ効率的なTGF-β阻害物質の活用などにより.肺癌治療に対しても同療法の応用が 期待できると考えられる。

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研究組簸

研究代表者: 渡辺 彰    (東北大学・加齢医学研究所・助教授) 研究分担者: 海老名一雅仁 (東北大学・医学部附属病院・助手) 研究分担者: 鳴海 晃   (東北大学・医学部附属病院・助手) 研究分担者: 宗像 浩   (近畿大学・医学部・教授)

研究軽費

研究発表

平成11年度: 2, 400千円 平成12年度: 1, 300千円 計     3, 700千円 (1)学会誌等

1.海老名雅仁.清水川稔.鳴海晃.他:ブレオマイシン肺線維症モデルに対するデコリン遺

伝子導入:デコリンによる肺線維症遺伝子治療の臨床応用への可能性の検討.厚生省特

定疾患臓器線維症における線維化抑制物質の誘発を活用した治療法開発に関する研究班

平成11年度研究報告書: 33-38. 2000 2.海老名雅仁,鳴海晃.佐藤 研,他:デコリンの肺線維化抑制機能の基礎的研究.厚生省 特定疾患 臓器線維症における線維化抑制物質の誘発を活用した治療法開発に関する研究 班 平成11年度研究報告書:39-44.2000 (2)口頭発表 なし (3)出版物 なし

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研究背景および目的

デコリンは問質に広く分布し,構造上約45kDaのコア蛋白と、 grycosaminogrycan (糖とヘキソサ ミンの繰り返し構造からなる直鎖高分子)の側鎖を1本有し、細胞外マトリクスにおいて細胞の接 着、移動、増殖において重要な役目を担っている。デコリンは組織ではⅠ型コラーゲン、ファイブロ ネクテン、 TGトβなどと結合し、それらの活性を調節している。特にデコリンはそのコア蛋白のロ イシンリッチリピート構造においてTGF-βに結合し不活性化することが. Yarnaguchiらにより最初 に報告された(1)。すなわち, CHO細胞にデコリンを強制発現させると.デコリンの分泌が多いクロ ーンほど細胞増殖が抑制され(2),その細胞増殖抑制活性の一部はデコリンとTGF-βの結合に よることが示され、抗TGトβ療法としてのデコリンの有用性が示された。 一方細胞の癌化や癌組織におけるTGトβの作用はきわめて多彩である。発癌初期の過程で は腫癌抑制因子として作用しているが、細胞は癌化の過程でTGF-βに対する反応性を失ってし まう。 TGFTβに反応しなくなった癌細胞では正常細胞に比べ、大量のTGF-βを分泌することが 多い。細胞が癌化した後はこのTGF-βがパラクライン的に周囲の正常組織に作用し、血管新生、 細胞外マトリクスの蓄積や免疫抑制を促進し、腫癌浸潤や転移を引き起こす、いわゆる腫癌増殖 因子として作用すると考えられている。そこで本研究ではTGF-βの阻害により腫癌増殖抑制を試 みる「抗TGF-β療法」を検討した。

TGF- βはLAP (latency-associated peptjde)に結合した不活性な潜在型(latent form)として分

泌され, LAPの解散による活性化後に.シグナル受容体であるTGF-β Ⅱ型受容体に結合可能と なる(3)。 /n tp'voでTGF-βを活性化する物質として,プラスミン,活性酸素,トロンボスポンジン (TSPト1などが報告されている。 TGトβ阻害のターゲットポイントとしては, ①TGF-βの発現の 榔臥②潜在型TGF-βの活性化の跡臥③活性型TGトβの中札④細胞内シグナル伝達レベ ルでの阻害.などがあげられる。TGF-βのシグナル受容体はTGF-β Ⅱ型受容体であり, TGト β /Smad経路を介し細胞内シグナルが伝えられる(4) 。これとは別に生体内には, TGトβと中∼

(6)

低親和性の結合能を有するが.シグナル伝達には関与しない成分が複数存在することが報告さ れており(5. 6).それらは細胞外マトリックスの中においてTGトβの貯蔵装置としての機能を持つ と考えられてきた。そうした成分の一つに,小分子proteoglycanであるデコリンがあげられる。これ までデコリン以外にもTGF-βの競合阻害物質として.中和抗体(7-9),リコンビナントLAP(10), TGF-β可溶型受容体(1 1)などが試みられ,一定の効果が報告されている。しかしながら.その持 続的な効果発現には,いずれも大量ないし頻回の蛋白の投与が必要であった。その間題を解決 する」つの手段として,近年研究の進んでいる遺伝子導入法の応用が考えられる。遺伝子導入 法の利点には. (かリコンビナント蛋白投与では達成し得ない,高濃度かつ持続的な生理活性物質 の発現が期待できること, ②発現する蛋白は生体内でposttranslational modificationを受けるた め,リコンビナント蛋白に比べより生理的であること, ③局所への導入・発現が可能であり非目的 部位への影響を避けることができること.などがある(12)。遺伝子導入法のうち,アデノウイルスベ クターは非分裂細胞にも感染し,発現・導入効率が良いことが特徴であり,同ベクターをI'n tu'voで 授与した際の動態・発現についてはよく研究されている(13. 14)。また呼吸器領域においては,気 道より直接肺局所-のアプローチが可能であるため.同ベクターを用し†た遺伝子導入が広く用い られてきた(1 5)。 以上の背景から,本研究では肺癌に対する遺伝子導入による「抗TGF-β療法」の臨床応用の 可能性の探索を目的とし.そのため肺癌の疾患モデルであるA549肺癌細胞のマウス皮下腫癌モ デルに対し,ヒトデコリンcDNAを組み込んだアデノウイルスベクターAdCMV.DCを腫癌内に投与 し.腫癌増殖抑制効果を検討した。デコリンは異なる種間の相同性が高く(16),かつこれまでヒト デコリンの諸動物実験における線維化抑制効果などが既に報告されていることから,本研究にお いてはヒトデコリン遺伝子の発現による,腫癌増殖抑制効果の検討を試みた。

(7)

材料と方法

本研究に使用した細胞株と動物

アフリカミドリザル線維芽細胞由来cos-7細胞(TKG 0514)は東北大学加齢医学研究所附属

医用細胞資源センターより分与された。ヒト肺胞上皮細胞由来A549細胞(ATCC CCL185)およ

びヒト胎児腎由来293細胞(ATCC CRL-1573)はATCC (American Type Cu一ture Collectjon,

Rto'ckville, MD)より購入した。 MLEC-PAL/Luc細胞は,ヒトplasminogen activator inhibitor (PAlト1

遺伝子のTGF-βレスポンス・プロモーター領域の下涜に,レポーター遺伝子としてルシフェラー

ゼ遺伝子を結合し.ミンク肺上皮細胞に恒常的に発現させたものである。この細胞を利用したアツ

セイにて, TGF-βによる転写活性刺激をルシフェラーゼの発現レベルとして測定することが可能

である(1 7) 。 MLEC-PAl/LuC細胞は東北大学加齢医学研究所腫癌循環研究分野の安部まゆみ

博士より供与された。以上の細胞の維持には, 10%ウシ胎児血清含有DLJJbeco■s modified Eagle's

rnediurn (FCS/DMEM)を使用した。動物は12週齢の雌性C57BL/6マウスを使用した。日本チヤー

ルスLJJバー(横浜)より購入し.東北大学加齢医学研究所附属動物実験施設腫癌分室にて飼育

管理された。

非増殖型組換えアデノウイルスベクター

ヒトデコリンcDNAく1 8)を発現する,非増殖型組換えアデノウイルスベクターAdCMV.DCを作製

したく19. 20) (Fig. 1)。ヒトデコリンcDNAはBurnam lnstitute, La Jolla Cancer Centerの山口祐博

士より供与された。ヒトデコリンCDNAを, cMVプロモーター(21)を含むシャトルベクター・プラス

ミド(PCMV-SV2つ(22)に組み込み,これとEIAおよびE3領域を除く5型アデノウイルスゲノムを

含むプラスミド(pJM1 7)(23)を. 293細胞にリン酸カルシウム法(cafcium phosphate transductjon

SyStem, GIBCO BRL, Grand kland, NY)にてco-レansfection L.相同組換えにより非増殖型アデノ

(8)

ルス液を精製し実験に使用した。ウイルス液の力価は. 293細胞を使用したプラーク・アツセイにて

測定し. PAJ (plaque forming units)にて表示した。 AdCMV.DCのDNAを抽出し. EIA領域を増幅す

るプライマーを用いてPCRを行ない.同領域の混入が無いことを確認した。対照として,外来性の

挿入遺伝子を組み込んでいない非増殖型アデノウイルスベクターAdCMV.Nu"を使用した。

ノーザンプロット

I '培養A549細胞に,無血清DMEMに培地交換後, AdCMV.DC(10 multjplicity ofinfectjon lMOl])

を感染させた。 2日後に細胞を回収し, RNA抽出用試薬kogen (ニッポンジーン.東京)を使用し,

Acid guanidine phenol ch一oroform (AGPC)法(24)にてtotal RNAを抽出した。また, C57BL/6マウ

スにAdCMV.DCを経気道的または経静脈的に投与し, 3日後の摘出肺および肝臓のホモジネート

より同方法にてtotal RNAを抽出した。

各サンプル由来の20〟 gのtotal RNAを, 2%ホルムアルデヒド/1%アガロースゲルで電気泳動後, ナイロンメンブレンにトランスファーした。 uvクロスリンカーGS GENE LtNKERTM uv CHAMBER

(Bio⊥Rad. Hercules, CA)にてク。スリング後, 【 α -32p] dCTP (ArTlerSham Life Science.

Buckinghamshire, UK)にて標識したデコリンcDNAプローブとハイブリダイズを行なった。デコリン

cDNAプローブの標識にはRandom Prhers DNA Labeling System (Life Technologies, Rockvilte,

MD)杏,ハイブリダイズにはQuick hybTM hybridization solution (Stratagene. La Jo"a, CA)を使用し

た。最終0.1% SSC/0.1% SDSにて60℃で30分洗浄後,イメージングプレートとバイオイメージング アナライザー(BAS2000,富士写真フイルム,東京)を使用しオートラジオグラフィーを行なった。対 照として,同じメンブレンを洗浄してデコリンプローブを除去後, glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GAPDH)プロ-ブでハイブリダイズを行なった。 ウエスタンプロット 培養A549細胞およびcos-7細胞に.段階希釈したAdCMV.DC (10 MOl)を感染させ, 20時

(9)

間後に無血清DMEMに交換し,さらに40時間インキュベ-トした。この培養上清を採取し,デコリ

ンの側鎖を外すために.コンドロイテナーゼABC(生化学工業,東京)にて37℃で90分消化し(25),

メルカプトエタノール含有sample Buffer (和光純薬,大阪)にて溶解し, 95℃で5分熟処理後. lo≠

トリスーグリシンゲル(Novex. Sam Diego, CA)にて電気泳動し, poly vinilidem dif)uoride (PVDF)メン

ブレンにトランスファーした。電気泳動およびトランスファーにはXceH ltTM Min卜Cell (Nove東)を使用

した。メンブレンを10%BSA/PBSにてブロッキング後, 500倍希釈した1次抗体と室温で1時間反 ‥応させた。洗浄後2000倍希釈したアルカリフオスフアターゼ標識2次抗体と室温で30分反応させ.

BClP/NBT Phosphatase Substrate System (KPL, Gaithersburg. MD)にて発色した。

なおデコリンを認識する抗体として.抗ヒトデルマタン硫酸プロテオグリカン・モノクローナル抗体 6-B-6(生化学工業) (26).および近畿大学医学部第2生化学教室の宗像浩博士より供与された, ヒトデコリンC末端の20個のペプチド(lQPSTFRCVYVRSAtQLGNY)を抗原として作製したポリク ローナル抗体を使用した。また. 2次抗体として. 6-B-6モノクロール抗体に対してはアルカリフオ スプアターゼ標識ヤギ抗マウスlg G (H+L) (Promega, Madison, Wl)杏,抗ペプチドポリクローナル抗 体に対してはアルカリフオスフアターゼ標識ヤギ抗ウサギlg G (Fc) (Promega)を使用した。対照と

してDMEMにて希釈したウシデコリン(Sigma Chemicals, St. Louis, MO)を使用した。

ルシフェラーゼ・アツセイ

MLEC-PAT/Luc細胞を96穴プレートに培養し(2.5 × 104 cells/we"),培養上溝を吸引後, 0.1%

ウシ血清アルブミン(BSA)含有DMEMにて段階希釈したリコンビナント・ヒトTGF-β 1仙TGF-β

1) (R&D systems, Minneapo一is, MN),および段階希釈したウシデコリンを同時に加え, 14時間イン

キュベート後,ルシフェラーゼの発現レベルを, Luciferase Assay System (Promega. Madison, Wl)

およびルミノメーター(AB-210. ATTO,東京)を用いて測定した。

(10)

^549細胞を96ウエルプレートに培養し(1 × 103 cell /well)、 24時間後にAdCMV.NK4 (20 MOt)

とコントロールベクターとしてAdCMV.Null (20 MOI)を感染させ24時間毎に96時間目まで細胞活

性をce‖ viability assay (AIamarBIue, Biosource lntemationaI. Camar日0, CA)用い測定した。

/n vT'vo抗腫癌効果

A549 (1xlO7個)を7-8週齢Balb/Cヌードマウスに皮下移埴し、各4匹ずつに3群に分け、腫癌

が樹立した後、 AdCMV.DC (1xlO9 PAJ)、 AdCMV.Nu" (1xlO9 pb)、 PBSをそれぞれ1回ずつ腫癌 内に局所投与を行った。腫癌径を3ないし4日毎に測定し腫癌増殖を評価した。

血管新生抑制効果の検討

腫癌を摘出し、 10%ホルムアルデヒドで24時間固定後、抗cD31 (血管内皮マーカー)抗体を 用いて免疫染色を行った。 統計学的解析 異なる2群のデータを,対応のないtテストにて検定し, P<0.05を有意差ありと判定した。

(11)

結 果 AdCMV.DCによるデコリンの発現 作製した非増殖型アデノウイルスベクター(Fig. 1)によるデコリンの発現を,まず/n ln'trlOにて確認 した。 AdCMV.DC (10MOl)をA549細胞に感染させ,デコリンmRNAの発現をノーザンプロットにて 確認した(Fig. 2A)。次にAdCMV.DCをA549およびcos-7細胞に感染させ,培養液中へのデコ リンの分泌をウエスタンプロットにより確認した(Fig. 2B)。コンドロイテナーゼABC処理にて側鎖 の外れたデコlJンのコア蛋白が.約45kDaのバンドとして確認され.さらにMOl依存性に発現の 増加が認められた。一次抗体は6-B-6モノクローナル抗体および抗ペプチドポリクローナル抗体 によらず,同位置にバンドが認められた。 A549およびcos-7の両細胞で同様の結果が得られ た。 ルシフェラーゼ・アツセイ デコリンのTGF-β阻害活性を検討するために, MLEC-PAl/Luc卵胞(8)によるルシフェラーゼ・ アツセイを施行した。その結果.低濃度のデコリンはrhTGF-β 1刺激によるMLEC-PAT/Luc細胞 のルシフェラーゼの発現レベルに影響を与えなかったが. 10JJ g/mlのデコリンにてルシフェラーゼ の発現レベルは-部抑制され(Fig. 3), 100JJ g/mlのデコリンではほぼ完全に抑制されたくFig. 3)。 また,その抑制効果はrhTGF-β 1の濃度によらなかった。すなわち高濃度のデコリンは, MLEC-PAI/LuC細胞に対するTGトβ 1の転写活性刺激を.その濃度に関わらず抑制した。

細胞増殖および腫癌増殖、腫癌血管新生に及ぼす影響

In vJ'LnoではAdCMV.DCはA549肺癌細胞株の細胞増殖曲線には全く影響を与えず、非感染群、 AdCMV.NuJl感染群と同様の増殖を示した(Fig 4.)。 /n LIJ'tnIでのAdCMV.DCベクターをA549肺癌細胞による皮下腫癌に投与したところ、コントロー

(12)

ルベクター(AdCMV.Null)投与に比べ23.3%の腫癌増殖抑制が認められたが有意差は認められな

かった(p=0.19) (Fig 5.)。またその腫癌を摘出して腫癌血管を免疫染色法により評価したが、

(13)

考 察 本研究ではI'n tu'Lので、デコリンによる癌増殖・転移抑制をめざした遺伝子治療の開発に資すること を目的として、デコリンを発現するアデノウイルスベクタ-を作製し、実験動物に接種した腫癌へ感 染させ、陣痛の増殖.転移、血管新生、などを検討した。まずヒト・デコリンのGDNAを用い、デコリン を発現する非増殖性のアデノウイルスベクター(AdCMV.DC)を作製し、ヒトA549肺癌細胞にAdCMV. DCベクターを感染させ、デコリンの発現を確認した(Fig 1. 2)。次に腫癌細胞にAdCMV.DCベクター を感染させて培養したが、コントロール群(AdCMV.NuJIベクター)に比べて有意な腫癌細胞増殖抑 制効果は認められなかった。ヒト肺癌細胞をマウスに接種し作製した移櫨腫癌にAdCMV.DCベクタ ーを直接投与したところ、コントロールベクター(AdCMV.Null)投与に比べ23.3%の腹痛増殖抑制が 認められたが有意差は認められなかった(p=0.1 9)。また腫癌血管新生抑制効果は認められなかっ た。 デコリンによるがん治療 デコリンは様々な上皮系腫癌において、発現が低下している(27)。またデコリンを恒常的に発現す るように形質転換した腫癌細胞、あるいはデコリン・タンパクの投与は、腫癌増殖を抑制する。そし てそのメカニズムとしては、 ①p21を介した細胞分裂停止(28)、 ②TGF-beta抑制、 ③腫癌免疫増 強(29)、 ④EGFレセプター活性化(30)などが報告されている。デコリンを用いた治療は、従来の癌 治療法とは異なり、腫癌の増殖抑制のみならず、腫癌免疫の増強やTGF-beta作用抑制など、多 岐にわたる複合的な効果が期待できる点、 2)直接I'n vivoで、細胞外マトリクスを発現させる癌遺 伝子治療の最初の基礎的研究となる点、 3)デコリンのリコンビナント・タンパクではなく、アデノウイ ルスベクターを用いることにより、生体内でより簡便に十分量の生物活性物質を発現し得るので、 より臨床応用に近づける点が特色である。デコリン発現アデノウイルスベクターによる、移植腫癌 内におけるデコリンの高発現が期待される。 2)本ベクターから発現したデコリンの、 TGF-betaに対

(14)

する競合阻害、皮下腫癌や転移性腫癌の増殖抑制、周囲組織への浸潤抑制、腫癌血管新生の 抑制、転移の抑制、腫癌免疫の増強などの効果が予想される。 3)デコリンはTGF-beta作用抑制 により腎糸球体の線維化を抑制したとの報告もあり(31)、本研究で作製したアデノウイルスベクタ ーによるデコリンの局所発現は、肺線維症など他臓器の線維性疾患の機序解明や治療など、他 分野への応用も期待できる。 TGF-β阻害治療 本研究においては.活性型TGF-βの中和を目的としてデコリンを使用したが,活性型TGトβの 中和以外の阻害法として,これまでアンチセンスオリゴヌクレオチドによる直接的なTGトβ発現 の抑制(32).遺伝子導入による変異型TGトβ受容体の発現(33),抑制性smadであるSmad7 による細胞内シグナルの阻害(34)などが報告さている。しかしながら,このうちアンチセンスオリゴ ヌクレオチドは持続的な効果発現には不十分であり.また遺伝子導入による変異型受容体の発 現も.標的臓器の全ての細胞に持続的な発現が必要であり現実的には困難である。さらに,細胞 内シグナルの阻害に関しては,標的分子がいまだ明確ではなく,またSmadの変異は発癌への関 与が報告されており(35),さらなる基礎的な理解が必要である。したがって,現時点において TGF-β阻害法として最も臨床応用への可能性があるのは.活性型TGトβの中和と考えられる。 これまで活性型TGF-βの中和物質として,デコリン以外に,中和抗休(7-9),リコンビナントLAP (10),可溶性受容体(ll).などが報告されている。このうち,可溶型TGトβ受容体の遺伝子導 入によるTGトβ活性抑制と線維化抑制効果が, Thy-1腎硬化症モデル(36)および肝硬変モデル (37)において最近報告されたが,一般に,シグナル受容体の細胞外ドメインにヒト免疫グロブリン (lg G-Fc)を結合し二量体化した可溶性受容体は,中和抗体や単量体の可溶性受容体比較し, 血中半減期が長く,リガンド-の親和性が大きいことが報告されている(38-40) 。一万,本実験で 使用したデコリンのTGF-βへの親和性(Kd 1.5× 10 9M (1))は,内在性TGF-β Ⅱ型受容体(Kd5 -30× 10 12M (5))に比べ低い。デコリンおよびTGFβ可溶性受容体の抗TGF-β活性を,直接比

(15)

較検討した報告はこれまでないが, Isakaらの報告では. in vivoでのTGF-β活性の抑制に 1.25mg/mlのリコンビナントTGトβ可溶性受容体を要したのに対し(36),実験系は異なるが,本 研究においてはTGF-β活性の抑制に. 10mg/ml以上のウシデコリンを要した。分子量の違い(前 者は約130kDa.後者はコア蛋白のみで約40kDa)を考慮しても,前者の方が一分子あたりの抗 TGF-β活性は高いと考えられる。 デコリン遺伝子導入による癌治療 今回の研究ではデコリン遺伝子導入による有意な腫癌増殖抑制効果は認められなかったが、そ の原因として,腹痛局所におけるデコリンの発現の多少,デコリンの有するTGF-β結合以外の 生理機能や安定性の問題などが考えられた。デコリンとアデノウイルスベクターを使用した本研究 の結果では.肺癌治療に対する遺伝子導入による「抗TGF-β療法」の応用に向けて,いくつかの 解決すべき課題が示された.しかしながら,今後, (i)腫癌への遺伝子導入法の改良や遺伝子導 入経路の検討, (ii)発現効率が良く,かつ免疫原性の少ないベクターの開発, (iii)選択的かつ効率 的なTGF-β阻害物質の活用などにより,肺癌治療に対しても岡療法の応用が期待できると考え られる。

(16)

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(20)

図の説明

Fig. 1 AdCMV.DCの構造

非増殖型アデノウイルスAdCMV.DCの構造を示す.目的遺伝子の挿入のためにEIA領域および

E3領域が欠損している. CMVプロモーター,ヒト・デコリンのcDNA, SV40 polyadenylation signal

を含む.

Fig. 2 AdCMV.DCによるデコリンの発現

(A)ノーザンプロット. A549細胞にAdCMV.DC (10MOt)を感染後. total RNAを抽出し,ノーザンプロ

ットにてデコリンmRNAの発現を確認した.下段は対照としてのGAPDHを示した・ (B)ウエスタンプロットA549細胞に段階希釈したAdCMV.DCを感染後,培養液を回収しウエスタ ンプロットを施行した.コンドロイチナーゼABC処理にて側鎖が外れ,デコリンのコア蛋白が約 45kDaのバンドとして確認された.発現はAdCMV.DCのMOl依存性に増加した. 1次抗体はモノ クロール抗体6-B-6を使用した.対照としてウシデコリンを使用した. Fig. 3 MLEC-PAl/Luc細胞によるルシフェラーゼ・アツセイ MLEC-PAl/Luc細胞を96穴プレートに培養し,段階希釈したrhTGF-β 1およびdeocorinを加え 14時間刺激後,ルシフェラーゼの発現レベルを測定した. 10〟g/mlのデコリンの存在下では, rhTGF-β 1の転写活性は部分的に抑制され(●), 100JL g/mlのデコリンの存在下では. rhTGF-β 1による転写活性はほぼ完全に抑制されたく■).各値n=4で.平均値±標準誤差を示した・ *印は デコリンを加えないサンプルに比べ,有意差あり(P<0.05). Fig. 4 /n vitylDにおける肺癌細胞株の増殖抑制

(21)

コントロールベクターとしてAdCMV.NuJl (20 MOI)を感染させ24時間毎に96時間目まで細胞活

性をceJI viabi一ity assay用い測定した。 AdCMV.DCはA549肺癌細胞株の細胞増殖曲線には全く

影響を与えず、非感染群、 AdCMV:NuH感染群と同様の増殖を示した。

Fig. 5 /n vivoにおける抗腫癌効果

A549 (1xlO7個)を7-8遇齢Balb/Cヌードマウスに皮下移埴し、腫癌が樹立した後2遇以内に2

回、 AdCMV.DC (1xlO9 PAJ)、 AdCMV.Nu" (1xlO9 PAJ)、 PBSをそれぞれ腫癌内に局所投与を行っ

た。 AdCMV.DCベクターの投与により、コントロールベクター(AdCMV.Nu川)投与に比べ23.3%の腫

(22)

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(28)

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