小学校算数における小数を含むかけ算・わり算文章題の解決過程に関する研究
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(2) はじめに. 「計算問題はできるが文章題はできない」ということをよく耳にする。現場の経験のな い自分はそんなことを聞いても「自分で問題文を読み、式を作って答えを出すのだから当 たり前ではないのか」ぐらいとしか思っていなかった。. しかし、大学院に進学し、算数・数学教育についていろいろなことを学んでいくうちに、. 文章題には解決の過程があることや、その中の過程で児童がつまずくことをはじめて知っ た。この文章題の解決過程について研究をすることで、文章題解決のことを学び、児童は 文章題のどのようなところを難しく感じているのか知ることは、これから現場に出た際の 算数・数学の授業全般で役に立つと考え文章題解決の研究を行った。. そして、大学院への進学が決まってから、ぜひ研究してみたいテーマとして、最初から 興味のあったものの1つに「小数・分数」があった。「小数・分数」の計算ができないのは、. 児童に限らず自分の周りにも多数いた。大人でもできない人がいることを、児童が学ぶの だから当然難しいものだろうとは思っていた。. この児童にとっては難しい「小数・分数」と「文章題」の二つを組み合わせた「小数の 文章題」は児童にとっても難しく、教える教師にとっても難しいものだと考えた。 そこで私は、「小数の文章題」の中でも、より児童の苦手とする「割合」を扱う問題に着 目した。「小数を含む割合の文章題」の難しさの要因を明らかにすることは、自分が将来現. 場に出たとき必ず役に立つと考え「小学校算数におけるかけ算・わり算文章題の解決過程 の研究」というテーマで研究を行った。. 2008年2,月. 福永康彦.
(3) 目. 次. はじめに. 1. 第1章 児童の算数に対する意識と本研究の目的 第1節. 児童の算数の好き嫌い. 1. 第2節. 計算問題と文章題に対する児童の成績. 5. 第3節. 本研究の目的. 8. 9. 第2章 本研究に関わる先行研究 第1節. 9. 演算の意味の拡張. 第2節 文章題解決の過程. 13. 第3節 計算力と文章題解決力の関連. 16. 第4節. 19. 文章題解決でのつまずき発生の箇所. 19. ω坂本ピ1ρ9」りの磯. 24. αり坂:本θρ98ソの耽. 第3章 第1節. 小数を含むかけ算・わり算文章題の解決過程についての調査_32 調査の目的. 32. 第2節 調査問題. 33. 第3節. 調査の方法. 38. 調査の結果. 40. 第4節. ω筆癖の正答率. 40. ω局題擶萱の遅611仁よる此較. 43. ‘3ソ教値の運6,、仁よる正答率の此較. 50. で4ノ雛文所の違611ごよる正斧率の此較. 57. 副講鎌のまとめ. 59.
(4) 第4章 文章題指導の現状と指導への示唆. 第1節小数を含むかけ算・わり算文章題の現行の指導方法. 60 60. r1ノ教:揮諄で扱わカτ6,る教量澱孫を表姻. 60. ω教:霧唇で扱わ虎てρる囎)之所. 66. 第2節小数を含む文章題指導での改善点. 71. ω線分図κ醐ずる改善1点. ω雛)擁に灘する改誉点. 刀. %. おわりに. 80. 引用・参考文献. 82. 引用文献. 82. 参考文献. 84.
(5) 第1章 児童の算数に対する意識と本研究の目的 第1節 児童の算数の好き嫌い. 「理数離れ」が騒がれる最近、児童の算数に対する意識は、どのように変容してきてい るのだろうか。日本数学教育学会算数・数学意識調査委員会(2006)は、平成17年に小学. 校児童の算数に対する興味・関心や態度について調査を行っている。その際、平成10年に 行った同様の調査の結果と比較させて、児童の意識の変化について調べている。【図1】【図. 2】はそれぞれ、「好きな科則と「嫌いな科目」に算数をあげた児童の割合の変化を表し たものである。. 圖平成伯年. 匿平成17年. 100% 80% 60% 40% 20% O%. 1年生. 2年生. 3年生. 4年生. 5年生. 6…年生. 【図壌:好きな科目に算数をあげる児童の変容】. 100% 80% 60% 40% 20%. 0%. 【図2:嫌いな科自に算数をあげる児童の変容】. 1.
(6) 平成10年から平成17年の7年間で、児童の意識が大きく変化しているのは、小学4年 生で嫌いの割合が減少していることである。しかし、全体的に見て、7年間で算数に対する. 児童の好き嫌いの傾向はそれほど変化していない。算数が好きな児童はどの学年も20%前 後なのに対して、嫌いな児童は30%前後である。この7年間で、算数が嫌いな児童は増加 しなかったが、好きな児童も増加しなかった。. この調査と同時に、どのぐらいの児童が、算数を「大事だ」と思っているか、また、ど のくらいの児童が、算数を「できるようになりたい」と思っているのかも調査されている。 その結果を、次の【図3】【図4】に示す。. 團平成10年圃平成17年 100%. 80% 60% 40% 20% 0%. 審年生2年生3年生4年生5年生6年生 【図3:算数を大事だと思う児童の変容】. 【図4=算数をできるようになりたいと思う児童の変容】. 算数を大事だと思っている児童が、2年忌以降で6割近くいることは7年間で変化ないが、. できるようになりたいと思っている児童は7年前から明らかに減少し4割前後となってい. 2.
(7) る。この7年間で、児童にとっての算数の重要性には差はできなかったが、算数に対する 意欲の低下は、「理数離れ」の進行を表している可能性がある。. 次に、どの学年を境にして、算数が好きな児童と嫌いな児童の数に差が生まれるのであ ろうか。国立教育研究所が1995年に行った調査によると、児童・生徒の算数・数学に対す. る意識は、次の【図5】のように変容している。(実際の調査では、小学校1年生∼高校2 年生まで調査を行っているが、ここでは、小学生の部分のみを示している。) 鰯→一・好き融遡ゆ嫌い 100% 80% 60%. 40% 20%. 0% 小学1年 小学2年 小学3年 ’1、学4年 小学5年 小学6年. 【図5:児童の算数の好き・嫌いの割合】. 2年生と、4年生以降で好きと嫌いの割合に差が生まれている。この調査は3月上旬に行 われたので、該当学年の内容は、ほぼ終わっていると考えられる。つまり、4年生の内容の 中の何かに、児童が嫌いになる原因となる単元があるのではないかと考えられる。. 小学4年生以降で算数が嫌いな児童は増加するのだが、児童は算数のどのような内容が 嫌いなのだろうか。先ほどの調査と同時に小学校の中学年、高学年の好きな内容、嫌いな 内容も調査されている。その結果が、次の【表1】である。. 3.
(8) 【表1:児童の単元の好き嫌い】 好き. 嫌い. 3年. 4年. 5年. 6年. 3年. 4年. 5年. 6年. 1.計算. 56.8%. 45.5%. 39.8%. 42.9%. 27.7%. 37.4%. 42.5%. 38.1%. 2.図形. 32.8%. 37.5%. 48.0%. 55.8%. 27.9%. 27.3%. 24.3%. 18.7%. 3.長さや面積. 12.6%. 21.0%. 28.4%. 22.4%. 40.8%. 38.8%. 32.9%. 38.9%. 4.表やグラフ. 46.9%. 53.4%. 46.7%. 51.5%. 19.3%. 13.9%. 18.7%. 17.1%. 5.文章題. 21.1%. 20.1%. 192%. 13.6%. 53.0%. 5L3%. 58.6%. 70.7%. 6.その他. 25.3%. 18.0%. 14.0%. 9.5%. 7.5%. 9.1%. 8.0%. 9.9%. おおまかに結果をみると、児童の好きな単元内容は、「表やグラフ」→「計算」→「図形」. →「長さや面積」→「その他」→「文章題」と続く。特に、文章題を嫌いな児童は全学年 で50%を超えている。この結果からも児童が文章題を嫌いなことがわかる。. 4.
(9) 第2節 計算問題と文章題に対する児童の成績. 第1節より、多くの児童は文章題が嫌いなことがわかった。では、「文章題が嫌い」なの は、「文章題が苦手」だからなのだろうか。. 三浦ら(1993)は、小学校の算数の教科指導が全て終わった時点で、基礎計算能力を把 握するための試験を行っている。そこでは、次のような結果が述べられている。次頁【表2】 は「計算問題」の正答率を、【表3】は「文章題」の正答率を表している。. 5.
(10) 【表2:計算問題の正答率】. 乗法. 除法. 32×123. 89.9%. 397÷7. 93.8%. 7×716. 81.9%. 200÷5. 97.3%. 62×518. 75.8%. 2117÷29. 81.3%. 204×60. 89.1%. 18.2÷13. 76.6%. 0.2×0.3. 70.6%. 600÷1.2. 76.6%. 24÷6÷2. 89.4%. 【表3:文章題の正答率】 文章題. 式. 正答率. 62円切手5枚と41円はがき2枚を買って1000円出す. 1000一(62×5十41×2). 75.8%. 523÷55. 76.0%. 5000十300×6. 74.4%. 800÷30. 66.5%. ニおつりはいくらでしょう。. 55人乗りのバスがあります。全校児童523人が遠足に sくには、二二必要:ですか 由美ちゃんは5000円の貯金があります。これから毎月300円ずつ 刹烽オていくと、6ヶ月後には貯金はいくらになるでしょうか。. いちごが800個あります。一箱に30個つめて市場に出 ラするとしたら、出荷できるものは何箱になりますか。. 600粒入りのビタミン剤があります。家族5人前1日3. 600÷(5×3). 83.7%. 200×(12÷3). 80.4%. アずつのむと、何日でなくなりますか。. 3本200円のえんぴつは、12本でいくらでしょう。. 時速60キロで1時間30分走ると、何キロ走るでしょ 、。. 6. 60×1.5. 57.9%.
(11) 全体的に見て、文章題の正答率の方が低い。しかしそれは、文章題を解くために必要な 計算が難しかったためかもしれない。そこで、問題が要求する計算の複雑さに着目したい。. 除法の「2117÷29」と文章題の「55人乗りのバスがあります。全校児童523人が遠足に行 くには、何台必要ですか(523÷55)」の2題は、両方ともほぼ同じ計算の複雑さと思われ る。計算式だけに着目ずれば、除法の問題は「4桁÷2桁」なのに対し、文章題は「3桁÷2. 桁」である。計算式だけで見れば、文章題の方が簡単かもしれない。それにも関わらず文 章題の正答率の方が低いのは、児童は計算問題よりも文章題を苦手としているからだとい えると考えられる。. 7.
(12) 第3節本研究の目的 これまでのことより、以下のことがわかった。. ・算数を「好き」と答える児童よりも、「嫌い」と答える児童が多い。. ・小学校4年生以降で算数が嫌いになっていく児童が増える。 ・ 「算数をできるようになりたい」と思う児童が少なくなっている可能性がある。. ・児童の過半数以上が、文章題を嫌いである。 ・児童は、計算問題より文章題の方が苦手である。. そこで、本研究では、まず、4年忌以降に学習する文章題、特に小数を含むかけ算・わり 算:文章題について、以下のことを明らかにする。. ・文章題を解決する過程の中で、児童は何につまずいているのか。 ・文章題の問題の難易度には何が起因しているのか。. このために、小数のかけ算・わり算が既習である小学校6年生を対象に調査を行い、そ の結果をもとに、児童のつまずきの原因を明らかにする。. 調査の結果から、明らかになった児童のつまずきを解決するには、どのような指導法が 有効か、教科書の指導法を参考にしながら考察していく。. 8.
(13) 第2章本研究に関わる先行研究 第1節 演算の意味の拡張. 算数・数学では、正の整数から始まり、小数、分数、中学校では負の数と徐々に数の範 囲が拡張されていく。その数の拡張に伴い、演算の意味も拡張されていく。その意味を児 童がどのように理解しているのか、浅田(2006)は、かけ算で扱われる数が整数から小数に拡. 張されるとき、特に乗数が小数になるときに、児童は演算の意味をどのように理解してい るのかを調査している。調査結果の分析の際、同様の目的で行われた中島(1968)の研究にお. ける調査の結果との比較が行われている。調査問題は全部で4題で、各問の設問意図は以 下のとおりである。. (問1):乗数が整数から小数になるときに意味の拡張の必要を感じているか。具体的には、乗数. が整数から小数に変化しても同数累加で考えることができると思っているかを質問し ている。 (問2):小数の乗法の意味をどのように認識しているのかを質問している。. (問3):倍の考えを発展させ、割合の考えや、「1とみる」考えと結びつけて考えることができ るかを質問している。 (問4):小数乗法の問題作りができるかを質問している。. ここでは、児童が演算の意味をどのように認識しているかを調べている(問1)、(問2) を紹介する。(【表4】). 9.
(14) 【表4:浅田の調査問題(問1)】 (問1). 2年生で『「かけざん」は「同じ大きさのもの」が「いくつかある」とき、その「ぜんたい の大きさ」を求める計算である』と学習してきました。. たとえば、7×4は「7が4つあつまった大きさ」を表していて、たし算で7+7+7+7と書 くことができます。. 次に、7×2.4という、かける数が小数になっているかけ算を考えてみましょう。上で言っ ていることと同じように考えられるでしょうか? 自分が正しいと思うもの1つの□に○をつけましょう。. □①同じように考えられる □②同じように考えられない □③どちらとも言えない. 問1は児童が「7×2.4」を同数累加で考えることができるかを質問している。その結果 は次の【表5】の通りであった。. 【表5:拡張の必要性の認識】. 昭和42年. 平成17年. 同じように考えられる. 46.2%. 36.7%. 同じように考えられない. 45.8%. 52.7%. 8.0%. 10.7%. どちらともいえない. 【表5】の通り、中島(1968)の調査のときよりは、同数累加では考えることができな いと思っている児童は増加している。それでも半分である。まだまだ児童は意味の拡張の 必要性を感じているとはいえない。. 10.
(15) 次に問2では、児童が小数の乗法の意味をどのように認識しているのかを調査している。 この調査問題を【表6】に示す。. 【表6:浅田の調査問題(問2)】. 問2 7×2.4のように、かける数が小数のかけ算は、どのように考えているといえますか?①. ∼⑤で、自分がもっともよいと思うもの1っだけに○をっけましょう。また、他の考え 方の人は右上の⑥に書きましょう。. □①7を2.4回たすと考える。 □② たて7cm、よこ2.4cmの長方形の面積を表すと考える。 2.4c. 7cm. □③. (もとにする大きさ)×(倍)の式で「もとにする大きさ」が7、「倍」が2.4 と考える. □④. 下の図のように、7の大きさを1目もりにして数:直線をかいたとき、2.4の目も りのところになる大きさを表すと考える。. 0. 0. 7. 1. 14. 2. 2.4. □. 21. 3. □⑤7×2.4は、7を1とみたとき、2.4にあたる大きさを表すと考える。. E]⑥その他の考え. 11.
(16) 次の【表7】は(問2)の結果を表わしている。 【表7:乗法の意味理解】. 昭和42年. 平成17年. ①2.4回(同数累加). 22.8%. 4.4%. ②長方形の求積. 16.6%. 42.3%. 一. 24.8%. 14.2%. 一. ④数直線図. 18.5%. 19.7%. ⑤「1とみる」考え. 23.5%. 6.0%. 4.3%. 一. 一. 2.2%. }. 0.6%. ③倍の考え 基準×割合. 拡大. ⑥その他. 無解答、複数解答. 教科書には数直線を多く用いているが、この結果から、児童はあまり数直線や「1とみる」. 考えを情報の意味とは考えていない。これは教科書では多くの数直線図を使っていても、 「∼を1とみて…」といった記述がなされないことから、児童にはこのようなものは乗法 の意味として理解されていない。. その逆に、長方形の求積の解答が非常に多い。これより、児童は乗法の意味を考えるの ではなく「たて×よこ」といった公式に当てはめることに慣れてしまっているようである。. また、問1では4割近い児童が「7×2.4」を同数累加で考えることができると思ってい た。しかし、問2では4.4%の児童しか同数累加を解答していない。このことから、児童は 同数累加で考えることには違和感を覚えているといえる。. 12.
(17) 第2節 文章題解決の過程. 石田・多鹿(1993)では、Lewis&Mayer(1987)の研究を引用しながら文章題の解決 過程を、文章題を理解する過程(問題理解過程)と、それを解く過程(解決実行過程)と に区分している. ・問題理解過程…. 一文ずつの意味内容を理解することから始まり文間の関係を. 理解することからなる。. ・解決実行過程…. 理解した内容に即して立式を構成して、構成した式を計算す. ることからなる。. さらに、これら2つの過程は、次のような下位過程に分けられたる。. 一過程… 解決実行過程…. ここに示した文章題の解決過程を図に表すと、次のようになる。. 問題理解過程. 文章題 解決実行過程. 変換過程 統合過程. プラン化過程. 実行過程. 【図6=文章題の解決過程】. 13. 答え.
(18) 先に示した各解決過程でどのような思考. 文章題. が用いられているか具体的な文章題を用い. 金魚を6びき買って1000さっを出すと、. て考えてみる。(【図7】). おつりは430円でした。. まず問題を読み、そこで、「聞かれている. 金魚は1びきいくらでしょうか。. こと」と「わかっていること」を抜き出す。. この問題であれば、「聞かれていること」は 「金魚1匹の値段」であり、「わかっている. 問題理解過程. こと」は「買った金魚は6匹、払ったお金. が1000円、おつりは430円」である。こ こまでが変換過程である。. 変換過程 統合過程では、変換過程の数量を問題内 聞かれていること・. ・・. 煖宸P匹の値段. わかっていること・. ・・. モチた金魚は6匹. 容に即して関係付けることとなる。この場 合はたとえば、「払ったお金一金魚1匹の値 払ったお金が1000円. 段×買った金魚の数=おつり」という関係 おつりは430円 になるので、. 1000一□×6=430 ノ. 統合過程. が、一つのアウトプットとなる。. 払ったお金一金魚1匹の値段X買った金魚の数=おつり. 1000一□×6=430. 【図7:問題理解過程】. 14.
(19) 解決実行過程では、問題理解過程でわか ったことをもとにして、問題の解答を導い. 解決実行過程 ていく。. プラン化過程では、問題理解過程で読み 取ったことをもとに、解決に向けての方法 を考える。おつりと払った金額がわかって プラン化過程 いるので、「1、払ったお金からお釣りをひ P.払ったお金からお釣りをひいて、. いて、使った金額を求める」といった計画 @ 使った金額を求める. を立てる。次に、買った金魚の数もわかっ Q.使った金額を金魚の数で割って、. ているので、「2、使った金額を金魚の数で @ 金魚1匹の値段を求める. 割って金魚1匹の値段を求める。」といった 計画を立てる。. 実行過程. 実行過程では、これらの計画をもとに、. 煖宸P匹の値段=(1000−430)÷6. 次のような計算を実行することになる。. 煖宸P匹の値段=95円. ①使った金額=1000−430 =570. ②金魚1匹の値段=570÷6 答え. =95. 【図8:解決実行過程】. 15.
(20) 第3節 計算力と文章題解決力の関連. 文部省による達成度調査(1995)は、小学生は計算力に比べて、算数文章題の成績が悪 いことを報告している。では、計算力と文章題解決力はどのように関連しているのだろう か。石田・多鹿(1993)は、計算力の高い児童と低い児童では、文章題の解決過程のどこ でつまずきやすいのかに違いがあるのかを調べている。. 彼らの調査の概要は、次のとおりである。. 目的=計算問題の得点の高い子どもと低い子どもが、3つの下位過程(変換、統合、プラン 化)に対応するように構成された文章題を解くときに、どの種類の問題タイプで誤 答が多いのかを調べる。. 方法:対象は公立の小学5年生。. 計算問題と文章題2種類のテスト課題があり、計算問題は例題1題、本テスト15題 からなり、文章題は例題3題本テスト18題からなっていた。 計算問題が実行過程、文章題の例題3題がそれぞれ、変換・統合・プラン化過程に. 対応しており、計算問題が本テスト15題、文章題が各過程6題の計18題となって いる。計算問題の中には、6年生で習う分数のかけ算・わり算も含まれている。使用 された問題例は、次ページの【表8】の通りである。. 16.
(21) 【表8:石田・多鹿の調査問題例】. 変換「つぎの文を式にあらわすと、どの式が正しいでしょうか」. はるお君の犬の体重はたかし君の犬よりも6kg重い。 a.はるお君の犬の体重=6+たかし君の犬の体重 b.はるお君の犬の体重+6=たかし君の犬の体重 c,はるお君の犬の体重+たかし君の犬の体重=6 d.はるお君の犬の体重=6 統合「どのような数字を使えば、つぎの問題がとけるでしょうか」. 5本1組の鉛筆のねだんは59円です。たろう君は3組買って200円はらいました。 たろう君は何本鉛筆を買いましたか。 a. 5,59,3,200. b.59,3,200 c. 5,59,3. d.5,3 プラン化「どのような計算をすれば、つぎの問題がとけるでしょうか」 200人の子どもが学校からバスで遠足にいきます。 1台のバスに50人乗ることができます。バスは何台必要ですか。. a.わりざんをしてからたしざんをする b.ひきざんだけでよい c.かけざんだけでよい d.わりざんだけでよい 実行「左がわの計算をすると、どの答えが正しいでしょうか」. 5)彌. a.556 b.656 c.656あまり1 d.その他. 17.
(22) 調査結果を分析する際に、まず計算問題の結果で上位群(【表9】)と下位群(【表10】). に分けている。そして、それぞれの群ごとで、文章題の問題に対する正答率の上位群と下 位群に分けている(【表9】【表10】中の左の「条件」の欄). 【表9:計算問題上位群の文章題正答率】. 問題タイプ 条件. 全体. 変換. 統合. プラン化. 文章題上位群. 0.90. 0.91. 0.92. 0.88. 文章題下位群. 0.51. 0.51. 0.41. 0.62. 【表⑳:計算問題下位群の文章題正答率】. 問題タイプ 条件. 全体. 変換. 統合. プラン化. 文章題上位群. 0.74. 0.68. 0.89. 0.65. 文章題下位群. 0.41. 0.42. 0.36. 0.45. これらの調査結果から、石田・多鹿は、以下のことをまとめている。. ・計算能力の良し悪しに関わらず、文章題の成績の良い児童は統合過程の成績がよく、文 章題の成績の悪い児童は統合過程の成績が悪い。 ・文章題解決には計算力だけではなく、問題状況全体を正しく把握することも大切である。. この石田・多鹿の研究から、文章題解決の成功にとっては、統合過程が重要であること が示唆されているといえる。. 18.
(23) 第4節 文章題解決でのつまずき発生の箇所. (1)坂本(1993)の研究. 坂本(1993)は、文章題解決の際に、児童がどこでつまずくのか、文章題の難しさは何 が起因しているのかを解明するために、調査を行なっている。この調査の特徴と工夫がな されている点は、文章題の解決過程を複数の下位過程に分け、その各過程に対応する設問 を作成しているところである。それらの設問への正答率を調べることによって、文章題解 決過程のどの段階において、児童の誤答が発生するのかを調べようというのが、この調査 の概略である。. [実験1]では、【表11】に示すような文章題が用いられた。同一の構造と状況(たとえ ば、【表11】の問題はすべて、構造は20×12、状況は「ジョギング」である)の問題に対 して、「過剰な情報」有り・無し、「単位変換」有り・無しの4パターンの問題が作られた。. ここで、「過剰な情報」有りの問題とは、【表11】の「1日に走る は3kmです」のよ うに問題を解決する際に必要が無い一文を含む問題のことであり、「単位変換」有りの問題 とは、「分」と「時間」の換算が要求される問題のことである。. 調査の対象は和歌山市立の小学校4年生55名、調査は1991年9,月上旬に行われている。 【表11:坂本が用いた調査問題例】 通常問題(単位変i換なし). 通常問題(単位変換あり). 過剰問題(単位変換あり). ゆたかさんは、毎朝20分間ジョ. ゆたかさんは、毎露分閲ジョギ. ゆたかさんは、毎朝20∠間ジョギ. Mングをしています。. 塔Oをしています。. 塔Oをしています。. P日に走る距離は3kmです。. 。日で12日走りました。全部で ス分間走ったことになりますか。. 。日で12日走りました。全部で何. …. 今日で12日走りました。全部で何. 條ヤ走ったことになりますか。∼. 條ヤ走ったことになりますか。. 19.
(24) 坂本は、各設問での解答を分析し、解決過程の各段階(A∼G)で誤答した被験者の人数 を、次の【表12】のように表している。【表12】の問題のタイプは上段が「通常問題」と 「過剰問題」の違いを、下段が単位変換を「単位変換なし」「単位変丁重さ」「単位変換長 さ」の3つに分けて表している。. 【表12:実験1での問題ごとの誤りの位置(人数)】. 問題のタイプ. ゚程. 通常. なし 重さ 長さ なし 重さ 長さ. A 求答事項選択. 3. `’ 求答事項選択(数値正解). @. 1. 2. 4 3[17]97. a 数値選択. 過剰. 2. 1 1. 6. 4. 82匡]・53. 2. 14. 4. 3. 9. 1. 15. a’ 数値選択(演算正解). b 演算選択. c 立式 d 演算実行 e 単位変換. f 解答. 25. 20. 1. 1. 15. 20. 1. この[実験1]では、坂本の関心が、解決過程での誤答の発生箇所よりも、「過剰な情報」. 「単位変換」といった問題要素の変化がもたらす影響にあったようで、分析結果は、次の ようにまとめられている。 (i)正答率について. (ア)「過剰な情報」問題の方が、正答率は低い。. (イ)「単位変換」有りの問題では、長さと重さの問題の正答率が低い。 (i)誤り発生の位置について. (ウ)「単位変換」無しの問題では、「B:数値選択」での誤答が多い。「単位変換」有. 20.
(25) りの問題では、「F:単位変換」での誤答が多い。. (エ)長さ問題では。「C:演算選択」での誤答も多い。. 次の[実験2]では、通常問題でのつまずきが「B:数値選択」に集中しているという[実. 験1]の結果を詳しく確認するために、この「B:数値選択」を独立した設問としている。 以下の【表13】が、その調査問題の一部である。. 調査の対象は和歌山市立の小学4年生145名、調査は1991年11月上旬に行われている。 【表13=実験2の調査問題の例】 通常問題1問目 く問題文〉. 夜店で金魚を6びき買って1000円さつをだすと、おつりは430円でした。金魚1びきはいくらで しょうか。. 〈歯答事項選択での質問と選択肢〉 「聞かれていることは何ですか。番号で一つ選んでください。」. ①金魚1びきのねだん ②金魚ぜんぶのねだん ③ おつりの金額 く数値選択での質問と選択肢〉 「問題を解くのに使う数字を○でかこんでください。」. 6・1000・430 〈演算選択での質問と選択肢〉 「問題を解くのに使う計算を○でかこんでください。」. たし算・ひき算・かけ算・わり算. 21.
(26) 次の【表14】は、調査問題ごとに、解決過程の各段階(A∼G)で誤答した被験者の人数 を表している。. 【表14:実験2での問題ごとの誤りの位置(人数)】 問題のタイプ. 通常. 解決過程. A. 1. 2. 3. 4 5. 求答事項選択. 3. 3. 1. 1. A’. 求答事項選択(数値正解). 2. 6. 3. 1. A”. 求答事項選択(演算正解). B B’. D. 立式. E. 演算実行. G. 解答. 2. 3. 4. 13. 3 2. 3 1. 1. 9. 3. 7. 12. 9. 8. 9. 16. 5. 4. 3. 1. 4. 1. 1. 25. 11. 7 6 3 1・. 8. 5回5[ヨ8回28. 16. 数値選択(演算正解). 演算選択. 1. 6. 数値選択. C. 過剰. 曹P3 6. 1. 3[コ 4 1. 6 1. 3. 2. 次頁の【図9】は、「通常問題」と「過剰問題」ごとに、解決過程の各下位過程(A∼G)で の平均正答率をグラフに表している。. 22.
(27) 4. +通常一劔一過剰. 3.62 3.5. R.82. 執ロ. H 3 2.5. 29ず、 @ 駕. 2β. 287. 2β. 2.54. 舞“瀕芝い舞噛ζ。。冒5. 2 求答事項選択. 数値選択. 演算選択. 立式. 演算実行. 解答. 解決過程. 【図9:下位過程の推移に伴う条件別平均正答率の変化】. 以上、坂本の行った2つの調査結果から、文章題解決の困難性の原因、特に、解決過程の どの段階でつまずきが発生しているのかに関して、以下のことが明らかになっている。. (ア)「過剰な情報」(必要な情報の選択を惑わす要因)や「単位変換」(余分な処理過程を. 要求する要因)が加わると、通常の問題に比べて、文章題は難しくなる。 (イ)文章題のつまずきは、その大半が演算選択まで、すなわち、文章題解決過程の前半部. 分である、問題理解過程において、発生する. 23.
(28) (2)坂本(1998)の研究. 坂本(1998)は、(1)の調査とおなじような目的のもとに調査を行っている。ただし、(1)の. 調査で使用された文章題が、「過剰な情報」と「単位変換」の2要素について操作されたの に対し、(2)では、「問題構造」と「数値」が操作されている。. ここでの文章題の「問題構造」とは、次に示す「比の三用法」のことを指している。か け算・わり算の文章題に対して、3つの用法のどれを用いて解決できるかは、この「問題構 造」によって決まってくる。. 第1用法:割合. = 比較量 ÷. 基準量. 第2用法:比較量. = 基準量 ×. 割合. 第3用法:基準量. = 比較量 ÷. 割合. また、「数値」とは、文章題の中で使用される数値のことを指し、ここでは、この調査で. は使用されている小数が「1以上、1以下」ということに限定される。. 「問題構造」が3種類、「数値」が2通りなので、それらの組み合わせば全部で6通りに なる。このうち、坂本(1998)の調査では、「問題構造」から2種類(第2用法・第3用法). のみが選ばれ、「数値」はそのまま2通り(小数が1以上・1未満)で、以下の4パターン の文章題が作成された。. ①第2用法・小数が1以上 ②第2用法・小数が1未満 ③第3用法・小数が1以上 ④第3用法・小数が1未満. 24.
(29) この4パターンの問題の例を、次に示す。. ①2用法・小数が1以上の例 ・サイダーが1.5リットルあります。. コーラの量は、サイダーの量の1.6倍にあたります。 コーラは何リットルありますか。. ②第2用法・小数が1未満の例 ・サイダーが1.5リットルあります。. コーラの量は、サイダーの量の0.6倍にあたります。 コーラは何リットルありますか。. ③3用法・小数が1以上の例 ・コーラが2.4リットルあります。. コーラの量は、サイダーの量の1.6倍にあたります。 サイダーは何リットルありますか。. ④第3用法・小数が1未満の例 ・コーラが2.4リットルあります。. コーラの量は、サイダーの量の0.6倍にあたります。 サイダーは何リットルありますか。. (1)の調査では、「過剰な情報」「単位変換」といった要因が操作されていた。これは、あ. えて問題を難しくすることで、文章題解決過程でのつまずきが発生しやすいようにしたも のと思われる。そのため、教科書などで扱われる標準的な文章題とは、かなり違った文章 題になってしまっていた。. 25.
(30) 一方、(2)の調査では、「問題構造」と「数値」の二つの要素を操作して実験を行っている。. これらの2つの要素は、文章題解決の困難1生に関する過去の研究においても、問題の難易 に影響を与える要因として挙げられているものである。「問題構造」の3種類はそれぞれ、 「割合」(第1用法)、「倍の意味のかけ算」(第2用法)、「単位当たりの量」(第3用法)と. いった算数科の指導内容に直結するものであり、これらに相当する文章題は、当然、教科 書でも扱われている。また「数値」に関しても、「1より大きい小数」、「1より小さい小数」. は、文章題のみならず計算:指導においても、十分な配慮がなされていることがらである。. したがって、調査問題において、これらを変化させても、標準的な文章題とそれほど違っ たものになることはない。. 要するに、(1)の調査問題が、「情報過多」「処理の複雑度」といった要素に視点をあてた. 心理学的な実験課題として作成され、児童に馴染みの少ないものであったのに対して、(2) の調査問題は、「問題構造」「数値」といった数学的概念に焦点をあてた算数的課題になっ ており、しかも、児童に馴染みのある標準的な問題となっているのである。. 調査の対象は小学5年生82名で、小数の乗除算および割合の文章題の解き方は学習済み であった。. [調査問題(質問)の工夫]. (1)の調査において、文章題解決におけるつまずきの多くは、演算実行ではなく、それ以. 前の段階にあることが明らかとされた。そこで、この調査では、演算実行の前段階、すな わち変換過程、統合過程、プラン化過程の3過程に対応する質問が、作成されている。 次頁に、調査問題の例を示す。. 26.
(31) ●●●●●●●●●●●●■●●■●●●●●●●■●●●●■●●●●●●■●●●●●●●●●●●●●●●■■■●●●●●●●●●●・●●●●●.●●●●●. :コーラが2.4リットルあります。 ・コーラの量は、サイダーの量の1.6倍にあたります。 :サイダーは何リットルありますか. : ・. :. ●●●●●●●●.○●●.●●●●●●●.●●●●.●●●・●●●・●●●●.●●●●●●●●b●・●●●●●●●●●●●●●●●●●●■●■●●●●●●. (1):聞かれていることはなんですか。. 次の中から1つ選んで、記号を○でかこんでください。 (わからない時は?マークに○をします。). ア、コーラは何リットルか イ、サイダーは何リットルか. ウ、コーラの量はサイダーの量の何倍か ? (2):次の文のうち、問題の内容にあっているのはどれですか。. 正しい文を1つ選んで、記号でかこんでください。 (わからない時は?マークに0をします。). ア、コーラの量はサイダーの量の2.4倍 イ、サイダーの量はコーラの量の2.4倍 ウ、コーラの量は’サイダーの量の1.6倍. 工、サイダーの量はコーラの量の1.6倍 ? (3):問題を図にしてみます。. コーラの量を下のような線で表すことにすると、. サイダーの量はどの位の長さで書けばいいですか (. ). (. ). (. ). (. )?. (4):問題をとく時に使う計算を○でかこんでください. たし算、ひき算、かけ算、わり算. 【図10:坂本(1998)の調査問題(第3用法、割合1以上)】. 27.
(32) (1)、(2)の質問が、変換過程に対応する。(1)では、問題文中で聞かれていることの理解を 確認し、(2)では、問題文に述べられている数量関係の理解を確認する。なお、この(1)、(2). の質問を、坂本は、それぞれ「二二事項選択課題」、「関係文選択課題」と呼んでいる。 (3)の質問が、統合過程に対応する。(3)は、問題中の量が線分図で表されており。その中. から正しい大きさを表しているものを選択させる課題となっている。この質問を、坂本は、 「見積もり課題」と呼んでいる。. (4)の質問が、プラン化過程に対応する。(4)では、解決に必要な演算がわかっているかを. 確認する。これを「演算選択過程」と坂本は呼んでいる。. [調査結果の分析]. 調査結果について、坂本は、次の3つの観点から分析を行っている。. i)全体的傾向 i)小数のタイプによる正答率の違い 世) 問題構造による正答率の違い. i)全体的傾向 【図11】は、各問題の正答率を表したグラフである。. 100% 80% 60% 40% 20% 0%. 質問文理解. 情報の統合. 関係文理解. 【図11:解決過程に対応させた課題の正答率】. 28. 解決のプラン.
(33) 全体的傾向として、以下のことが明らかにされている。. ①質問文理解は全ての問題で正答率が高い ②関係文理解では、小数が1未満のものが成績を下げる。なお、このときの誤答. のほとんどが、倍関係を逆に把握し、「aはbのx倍」の場合に「bはaのx 倍」を選ぶ誤答である。. ③ 情報の統合では、全ての問題でつまずきが見られた。特に、小数が1以上のも のはここで大きくつまずいている。. ④解決のプランでは第三用法、特に小数1未満が正答率を下げている。. i)小数のタイプによる正答率の違い 【図12】のグラフは、各質問への正答率を、数値の違い(小数が1以上、小数が1未 満)ごとで表している。. 【図12:数のタイプによる解決過程の遂行】. 29.
(34) 数値の違いによる正答率の変化から、坂本は、以下のような分析を行っている。. ① 小数1未満の文章題では、関係文理解の段階でつまずきが生じる。 ② 小数1以上の文章題では、情報の統合の段階でつまずきが生じる。. この結果は、文章題に使用される数値の違い、すなわち、小数が1以上か1未満かの違 いによって、児童のつまずきが発生する段階が異なってくることを示している。. 血) 問題構造による正答率の違い. 【図13】のグラフは、各質問への正答率を、問題構造(第2用法、第3用法)ごとで表 している。. 【図13:問題の構造による解決過程の遂行】. 30.
(35) 問題構造の違いによる正答率の変化から、坂本は、以下のような分析を行っている。. ①関係文理解までは正答率に違いが見られないことから、問題構造(第2用法か第3 用法)が、質問文理解、関係文理解に影響することはない。. ②第2用法の文章題では、情報の統合よりも、その後の過程である解決のプランで の正答率が高くなっている。これは、かなり多くの児童が、数量関係を正しく答 えている(解決プランで、かけ算を選択する)ことを意味する。. ③第3用法の文章題では、関係文理解から情報の統合にかけての段階で、正答率に おおきな落ち込みが見られる。これより、第3用法の文章題の難しさは、統合過 程以降にあると考えられる。. この調査からも、(1)の結果と同様に文章題のつまずきの多くは、その解決過程の前半部. 分(情報の統合過程まで)で生じていることが明らかにされている。さらに、問題構造や 数値といった文章題の構成要素を変化させると、つまずきの頻度や発生する段階に違いが 見られることも明らかにされている。文章題を最後まで解かせて、その正答率を測定した り、あるいは、解決に必要な式を作らせ、その立式の正誤を調べることで、問題構造や数. 値という構成要素と文章題の難易度の関連を調査している研究は、これまでにも成されて きている。しかし、児童が文章題解決に失敗するとき、「解決過程のどの段階でつまずいて いるのか」に焦点を当てたところに、(1)・(2)にあげた坂本の研究の独創性がある。. ただし、調査に使用された文章題の数と種類が少なく、問題構造、数値、あるいは、文 脈(問題の状況)といった要素の何が、どれほど、つまずきの発生に影響しているのかが、. まだ明らかとされていない。そこで、次の第3章では、この坂本の調査方法をもとにしな がら、文章題の構成要素(問題構造、数値、文脈)を体系的に変化させた調査問題を用意 し、このことについて明らかにしていくこととする。. 31.
(36) 第3章 小数を含むかけ算・わり算文章題の 解決過程についての調査. 第1節 調査の目的. 小数を含む文章題において「文脈の違い」(液量、長さ、生産)、「数値の違い」(割合が1. 以上、1未満)、「問題構造の違い」(比の三用法)が、文章題の難易度にどのような影響を 与え、正答率にどのような変化が生じるのかを調べる。その際、前章で紹介した坂本(1998). の先行研究と同様に、文章題の解決過程を、以下の4つの下位過程に分けて、調査を行っ た。なお、「文脈の違い」の3っの文脈は、次のような理由で選択した。液量問題は、坂本 (1993)の結果と比較をするために、長さ問題は教科書でよく扱われる典型的な問題として、. 生産問題は教科書で扱われないタイプの問題としてである。. ① 変換過程 質問文理解…. 問題文中で聞かれていることが理解できているか. ② 統合過程 情報の統合…. 問題文中の未知量と既知量の大小関係が理解できているか. ③プラン化過程 立式…. 解決に必要な演算を選択できているか. ④ 実行過程. 解答… ③で選択した演算を正しく実行できているか. この結果を、「文脈の違い」、「構造の違い」、「数値の違い」の3つの点から分析する。. 32.
(37) 第2節 調査問題. 坂本(1998)では、文脈が液量の問題のみで調査を行っていた。本調査では問題文脈の 違いの影響をみるために、液量、長さ、生産の3種類の問題文脈を作成した。そのうち、. 液量問題において、問題構造の違いの影響をみるために、第1用法、第2用法、第3用法 の3種類すべての問題を作成した。長さ問題、生産問題は、第1用法のみの問題を作成し た。その結果、【表15】に示すような5種類の問題ができあがった。 【表15:本調査で使用した調査問題の種類】 文脈. 構造. 問題文. 第1用法. サイダーがBリットルあります。コーラはAリットルあります。コーラはサイダーの何 {の量がありますか。. 液量問題. 第2用法. サイダーがBリットルあります。コーラはサイダーのP倍あります。灘一うは何リット 汲?閧ワすか。. 第3用法. コーラはAリットルあります。これはサイダーのP倍の量です。サイダーは何リットル ?閧ワすか。. 長さ問題. 第1用法. 青いリボンの長さはBmです。赤いリボンの長さはAmです。赤いリボンは青いリボンの ス倍の長さでしょうか。. 生産問題. 第1用法. 1時間にBmの針金を生産できる機械があります・この機械でAmの針金を生産するには ス時間かかりますか。. (注:問題文中のBは基準量、Aは比較量、 Pは割合を示す). さらに、上の5種類の問題に対して、割合Pの値が1以上の問題と1以下の問題の2種 類を作成した。数値を決定する際、プラン化過程での立式や実行過程での計算において難 易の差が出ないように、基準量・比較量・割合それぞれの数値を【表16】に示すように統 一した。. 33.
(38) 【表16:本研究で使用した数値】 B(基準量). A(比較量). 小数大. P(割合). 10.5. 1.4. 4.5. 0.6. 7.5. 小数小. 【表15】【表16】に示すように問題5種類×数値2種類の合計10種類の問題を作成した。 作成した調査問題の文脈を【表17】に示す。 ここで、たとえば、【表17】の左上の問題は、文脈が「液量」、構造が「第1用法」、割合 が「P>1」の問題になっている。この問題を以下では、「液量第一(P>1)」のように表す ことにする。. 34.
(39) 【表17:本調査で使用した問題文】. 第1用法. 第2用法. 液量. サイダーが7.5リットルありま. サイダーが7.5リットルありま. コーラは10.5 リットルありま. 竭閧. キ。コーラは10.5リットルあり. キ。コーラはサイダーの1.4倍. キ。これはサイダーの1.4倍の. o>1. ワす。コーラはサイダーの何倍の. ?閧ワす。コーラは何リットルあ. ハです。サイダーは何リットルあ. ハがありますか。. 閧ワすか。. 閧ワすか。. 液量. サイダーが7.5リットルありま. サイダーが7.5リットルありま. コーラは4.5 リットルありま. 竭閧. キ。コーラは4.5リットルあり. キ。コーラはサイダーの0.6倍. キ。これはサイダーの0.6倍の. o<1. ワす。コーラはサイダーの何倍の. ?閧ワす。コーラは何リットルあ. ハです。サイダーは何リットルあ. ハがありますか。. 閧ワすか。. 閧ワすか。. 長さ. 青いリボンの長さは7.5mです。. 竭閧. ヤいリボンの長さは10.5mで. o>1. キ。赤いリボンは青いリボンの何 {の長さでしょうか。. 長さ. 青いリボンの長さは7.5mです。. 竭閧. ヤいリボンの長さは4.5mです。. o<1. ヤいリボンは青いリボンの何倍 フ長さで麻うカ㌔. 生産. 1時間に7.5mの針金を生産でき. 竭閧. 驪@械があります。この機械で. o>1. P0.5mの針金を生産するには何 條ヤかかりますか。. 生産. 1時間に7.5mの針金を生産でき. 竭閧. 驪@械があります。この機械で. o<1. S.5mの針金を生産するには何時 ヤかかりますか。. 35. 第3用法.
(40) 次頁【図14】は、本調査で使用した調査問題の例である。以下に各問の説明を示す。 (1)の設問は、変換過程に対応しており、この問題で聞かれていることを問う「質問文 理解」の課題である。. (2)の設問は、統合過程に対応しており、未知量と既知量の大小関係を問う「情報の統 合」の課題である。この設問は坂本の調査問題形式と大きく異なる。坂本の調査問題では 液量の問題に対して抽象的な線分図で大小関係を質問していたが、本調査では、児童がイ メージしゃすいように具体的な液量を表す図を用いるようにした。なお、長さ問題と生産 問題でも、児童のイメージのしゃすさを考慮した図(テープ図)を用いている。. (3)の設問は、プラン化過程、実行過程に対応しており、実際に立式し、答えを求める 「立式」「解答」の課題である。この設問も坂本の調査問題形式とは異なる。坂本は、数値. 選択と演算選択を調査の対象としていた。そのため実行過程は調査の対象には含まれてい なかった。しかし本調査では、実際に立式させ、演算させることで、プラン化過程だけで なく、実行過程のつまずきについても調べることにした。. 36.
(41) 次の問題を読ん冒(7)∼(3)の質問に答えτください。 ●. ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●.●●●●●●●●●●●●●. ●問題:サイターカ岬.5醒侮トルあ‘1春す。コー弓信7051施ト’しあ‘惨す。コー憎憎骨イ :. :ダーの何倍の量揮あ‘階すか。. ●. ● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● (1):聞かれτいる。と:1さ次のア∼工のうちこ:れ石すか。. ’ア∼:工に○をつ8寸て:くださ61。. ア、コー弓の量 イ.サイ4・一の量 ウ.コー弓iさサイダーの何倍か. 工、サイ4一信コー弓の何倍か (2):サイ4一の量奄次のように表わすこコー弓の量信次のア∼ウのうちζれ石すか。 1ア∼」ウに○をつけτくだ亡い。. ●●サイター●● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●●●●●●●. ●●●●●●●●●コー弓 ●●●●●●●. : ア イ ウ :. ● ●. 「]. ●. ●. ●. ●. ●. ●. ●. ●. ●. ●. ●. ●. ●. ●. ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●. (3):Oの問題をこくた肋の式をつくり、答えを出しτく敏=い。. 式:. 答え. 【図14:本研究で使用した調査問題の例】. 37.
(42) 第3節 調査の方法 調査は2006年7月中旬に、名古屋市の公立小学校6年生46名を対象に行った。調査問 題は、児童一人にかかる時間を考慮に入れ、作成した10題のうち5題を児童に解かせる ことにした。【表18】は、5題の組み合わせ(A、B、 C、 Dの4つ)と、それぞれの組み 合わせに答えた人数を示している。【表19】は、それぞれの問題に解答した人数を示して. いる。なお、A∼Dの4つの組み合わせにしたのは、同じ児童が、たとえば液量第一(P> 1)と液量第一(P<1)を解くと、学習効果が生じてしまうので、この危険性を避けるためで ある。. 解答時間は、児童が全部の問題を解き終わるだけに十分な時問をとった。. 【表18調査問題の組み合わせ】 第一問. 第二間. 第三問. 第四問. 第五問. 組み合わせ. 液量第一. 液量第二. 液量第三. 長さ問題. 生産問題. @ A. @P>1. @P>1. @P>1. @P<1. @P>1. 組み合わせ. 液量第一. 液量第二. 液量第三. 長さ問題. 生産問題. @ B. @P〈1. @P<1. @P<1. @P<1. @P>1. 組み合わせ. 液量第一. 液量第二. 液量第三. 長さ問題. 生産問題. @ C. @Pく1. @P<1. @P〈1. @P>1. @P<1. 組み合わせ. 液量第一. 液量第二. 液量第三. 長さ問題. 生産問題. @ D. @P>1. @P>1. @P>1. @P>1. @P〈1. 38. 解答人数. 11人. 12人. 12人. 11入.
(43) 【表19:調査問題の種類と被験者数(人)】 構造. 文脈. 液量. 生産. 長さ. 第1. P>1. 22. 23. 23. p法. P<1. 24. 23. 23. 第2. P>1. 22. p法. P<1. 24. 第3. P>1. 22. p法. P<1. 24. 39.
(44) 第4節 調査の結果. (1)各問題の正答率. 調査結果の各下位過程での正答者数と正答率を、【表20】に示す。また、P>1とP<1 に分けた正答率のグラフを【図15】、【図16】に示す。. 【表201全体の正答者数(正答率)】 液量問題. 第1用法. 第3用法. 生産問題. 第1用法. 第1用法. P>1. P〈1. P>1. P<1. P>1. P〈1. P>1. P<1. P>1. P<1. 21. 24. 21. 23. 21. 24. 22. 21. 21. 23. i95). i100). i95). i96). i95). i100). i96). i91). i91). i100). 21. 22. 19. 15. 20. 15. 21. 21. 16. 17. i95). i92). i86). i63). i91). i63). i91). i91). i70). i74). 3,. 16. 15. 20. 21. 14. 15. 15. 14. 11. ァ式. i73). i63). i91). i88). i64). i63). i65). i61). i48). i26). 14. 13. 20. 19. 14. 14. 11. 11. 6. 5. i64). i54). i91). i79). i64). i58). i48). i48). i26). i22). 1,. ソ問文理解 2,. 﨣. 第2用法. 長さ問題. の統合. 4,. 40. 6.
(45) 一←一液量第一灘羅轍液量第二働炉液量第三一一長さ問題一※一生産問 100%. 國 」 一 一. 己. h. ρ 一 一. 國. 皿. 「 @「−1. 國. ..嚢. 噸緬騨. 、悔. 80%. L気. R献. 避. 60%. =. ㍉ 三. 険駄翫墨 =. 暢. 40%. 20%. 0% 1.質問文理解. 2.情報の統合. 3.立式. 4.解答. 【図15:全体の正答率比較P>1】. P>1の揚合、以下のような特徴が見られた。 ① 「液量第二」を除く全ての問題で、下位過程が進むにつれ正答率が下がる。 ② 「3,立式」の過程で、正答率が大きく下がる。. 41.
(46) 一・←繭液量第一齪懸磁液量第二四壷㎜液量第三ボ軸長さ問題一齢随生産問題 100%. .。∼畷 輔幽…「. 一紮. 80%. 1. 零馬. i. 60%. ・酒. i. −欄 モ. ㍉裂. @. ㍉暖. i. 40%. i. 20%. 0% 1質問文理解. 2情報の統合. 3.立式. 4解答. 【図16:全体の正答率比較P<1】. P<1の場合、以下のような特徴が見られた。. ①「液量第二」を除く全ての問題で、下位過程が進むにつれ正答率が下がる。 ②「液量第二」「液量第三」は、「2,情報の統合」で正答率が下がる。. ③第1用法の問題は、「3,立式」で正答率が下がる。. このような全体の傾向を踏まえた上で、以下では. ・構造の違い(第1用法・第2用法・第3用法の違い) ・数値の違い(P>1・P<1の違い) ・文脈の違い(液量・長さ・生産の違い) の3点に着目して結果を考察する。. 42.
(47) (2)問題構造の違いによる比較. (A)全体の正答率の違い. 【図17】は、構造の違い(第1用法・第2用法・第3用法)による各下位過程での正答 率の変化を表わす。 ・一. ゥ一液量第一醐瀞一液量第二纈嘘P液量第三. 100%. @. 停. 「. I羅. 80% 60%. 「. i. 鵬秦. 曇. 肚. @. …. @. }. 40% 20%. 0%. 1質問文理解 2情報の統合. 3立式. 4解答. 【図17:構造別比較】. このグラフから、第1用法は「3,立式」、第2用法、第3用法は「2,情報の統合」で多く の児童が最初につまずいていることがわかる。この結果は、先行研究の結果と比較しても おなじような結果といえる。. ここで注目したいのが、「2,情報の統合」から「3,立式」の過程における、正答率変化. のパターンでの第2用法と第3用法の違いである。第2用法は「2,情報の統合」でつまず いたあと、「3,立式」の過程で正答率を大きく上昇させ、第3用法は「2,情報の統合」で つまずいたあと、「3,立式」の過程で正答率を低下させている。この違いが何なのか児童 の誤答をもとに、この後検討していく。. 43.
(48) (B)P>1の正答率の違い. ここからは先ほどの結果を割合Pの値に着目し、P>1、 P〈1に分けて検討する。 まずはP>1の場合である。【図18】は、液量問題P>1の問題の正答率の変化を表して いる。. 鰯ウー液量第一㈱蜘蹴液量第二㈱鯉㎜液量第三. 100% @. 「. …静. 軸嘔蹴露. i. 鰹.. 80%. ア @. 60%. … 漁. i. 40% 20%. 0% 1質問文理解. 2.情報の統合. 3.立式. 4解答. 【図18:構造別比較P>1】. P>1の場合、第1用法、第3用法は「3,立式」の過程で、最初につまずいている児童 が多い(【図18】の(ア)の部分)。このときの誤答の傾向を見ると、第1用法は様々な. 誤答があり、特に多い誤答の傾向というものは見られなかったが、第3用法では乗法を 用いて解こうとしている児童が多かった。第3用法の問題では、「3、立式」の過程で誤 答した8名のうち4名がかけ算で立白していた。この4人の解答をみると、4人とも「2, 情報の統合」は正解している。つまり、「3,立式」以前からつまずいているのではなく、. この「3,立式」の過程で初めてつまずいている。この原因を問題文に着目し、以下のよ うに考えた。. 44.
(49) コーラは10.5リットルあり 1.4 ワす。これはサイダーの1.4. かけ算. 一. 増える. {の量. 倍の量です。サイダーは何リ ットルありますか。. i第3用法). つまり、児童の多くは、. 「∼倍」→増える→かけ算 と考えて立式しているのではないだろうか。【表21】に示すように、どの問題構造も問題文. の中に「∼倍」という言葉がある。特に、第2用法、第3用法は具体的な数で「1.4倍」と ある。この言葉が、児童にかけ算を連想させるのではないかと思われる。. 【表21=液量問題(P>Dの問題文】 文脈. 構造. 問題点. 第1用法. サイダーが7.5リットルあります。コーラは10.5リットルあります。コーラはサイダーの. ス倍の量がありますか。. 液量問題. 第2用法. サイダーが7.5リットルあります。:コーラはサイダーのユ∠坐音あります。コーラは何リ. bトルありますか。. 第3用法. コーラは10.5リットルあります。これはサイダーの1.4音の量です。サイダーは何リ bトルありますか。. しかし、問題文中にかけ算を連想させる言葉が含まれていても、実際にかけ算で立式す るのは第2用法だけである。そのため、「3,立式」過程において、第2用法は正答率をあ げ、第3用法は正答率を下げているのだと考えられる。. 45.
(50) (C)P<1の正答率の違い. 一◆一液量第一. 畷欝脚液量第二. ㈱禽一液量第三. 100%. ウ 墨. 一一一一’一一『簡『. 畷究塾. 80% 嚇噸. 工 60%. 襲. ξ. @. …. 40% 20%. 0% 1質問文理解. 2情報の統合. 3.立式. 4.解答. 【図19:構造別比較p<1】. P〈1では、第2用法、第3用法ともに「2,情報の統合」で大きくつまずいている(【図 19】のイの部分)。. このつまずきをP>1の場合と同じように「∼倍」だから増えると児童が考えたと仮定す ると、次のようになる。【図20】は第2用法の問題を、【図21】は第3用法の問題を示して いる。. 46.
(51) iサイダーが7,5リットルあります。コーラはサイダーi iの0.6倍あります。コーラは何リットルありますか。 i (2):サイダーの量を下のように表わすと、コーラの量はア∼. ウのうちどれですか。ア∼ウに○をつけてください。. サイダー. コーラ. 【図20=液量第二】. 児童が「∼倍→増える」と考えたとすると、量の多いコーラの図を選択して、不正解に なる(調査問題と合致する)。. iコーラは4,5リットルあります。これはサイダーの0.6i :倍の量です。サイダーは何リットルありますか。. =. (2):コーラの量を下のように表わすと、サイダーの量はア∼. ウのうちどれですか。ア∼ウに○をつけてください。 コーラ. サイダー. i日ii國團」ヨi 【図21:液量第三】. しかし、液量第二と同じように液量第三でも「∼倍→増える」と考えたとすると、量の 多いサイダーを選択して正解となってしまう(調査結果と食い違う)。. P<1の場合にP>1と同じように誤答したと考えると、「液量第二」は不正解するが、「液. 47.
(52) 量第三」は正解することになる。しかし、P<1の場合は、両方とも正答率が下がっている。. ∼倍. 増える. 量の多い方の図を選択. 第3用法. 第2用法 不正解. 正解. つまり、児童は単純に「∼倍→増える」と考えているのではないことがわかった。そこ で、「2,情報の統合」での児童の誤答に着目した。すると、「2,情報の統合」で誤答した. 児童は、第2用法、第3用法ともに9人であった。そのうち、第2用法で量の多い方の図 を選択したのは5名、第3用法で量の少ない方の図を選択したのは7名であった。 これは児童が、「サイダー<コーラ」と考えていることを、示しているのかもしれない。. 第2用法の演算は「サイダー×割合聯コーラ」で表される。そのため児童は、被乗数であ る「サイダー」は、かけ算の結果である「コーラ」より値が小さくなると考えているので はないだろうか。. つまり、児童は「基準量×割合=比較量」の関係で表されるものは、「基準量く比較量」. の関係になると考えているのではないだろうか。そのように考えると、今回は「サイダー ×割合ニコーラ」となるので、間違った考え方をしている児童は「サイダー<コーラ」と. 考えるので、第2用法で量の多いコーラ図を選択し、第3用法では量の少ないサイダーの 図を選択して不正解になるのだと考えられる。. 48.
(53) コーラは4.5リットルあります。これはサイダーの. サイダーが7.5リットルあります。コーラはサイダー. 0.6倍の量です。サイダーは何リットルありますか。. の0.6倍あります。コーラは何リットルありますか。. 液量:第三. 液量第二. ∼イ音・力輔ナ算. 増える. 基準量. 比較量. 少ない. 多い. 第三用法. 第二用法. 少ない図選択. 多い図選択. このように考えると、児童が「2,情報の統合」でつまずいた理由が説明できる。. さらに、児童がこの考え方でいるならば、第2用法は「サイダー×割合=コーラ」とな ることがわかっているので、「2,情報の統合」で数量関係が把握できていなくても、「3, 立式」で「7.5(サイダーの量)×0.6(割合)」と正しく立式でき、正答率を上げたのだと 考えられる。. 一49一.
(54) (3)数値の違いによる正答率の比較 次に、問題文中の数値の違いが、正答率に与える影響について考える。【表22】は、本調 査で使用した問題文中の数値である。. 【表22:本研究で使用した数値】 B(基準量). P(割合). A(比較量). 数値の組み合わせ①. 10.5. 1.4. 4.5. 0.6. 7.5. 数値の組み合わせ②. 数値の組み合わせ①、②ともに基準量は、7.5で同じである。割合の値を①のように1.4 とした場合は、「基準量く比較量」、割合の値を0.6とした場合は、「基準量〉比較量」とな. る。この2組の数値の違いが与える影響について検討していく。 【図22】は、問題全体での①と②の数値の違いによる各下位での過程正答率の変化を表 している。. 100%. 几『 駄 80%. 聡\こ、. 60%. 撫鞠恥. @ i. i. ξ ξ. 40%. i. 20%. 0%. 1質問文理解 2.情報の統合. 3立式. 【図22:数値の違いによる比較】. 一50一. 4解答.
(55) このグラフから、次のようなことが読み取れる。 ・数値の組み合わせ②は、「2,情報の統合」、「3,立式」での正答率が①よりやや低い。. ・数値の組み合わせ①、②ともに、下位過程が進むにつれ正答率を下げていく。. この結果をさらに問題構造(第1用法・第2用法・第3用法)ごとに分析していく。. (第1用法). 第1用法のみは「液量問題」、「長さ問題」、「生産問題」の3つの文脈について調査を行. っているので、それぞれの文脈ごとに数値の組み合わせ(①、②)による正答率の違いを 見ていく。. 【図23】は「液量問題」の正答率を、【図24】は「長さ問題」の正答率を、【図25】は 「生産問題」の正答率を、数値の組み合わせ(①,②)別に示したものである。. +①遡一② 100%. 監嚢………一1. ミ. 80% 60%. 甑灘. i. …. 40% 20%. 0% 1.質問文理解. 2情報の統合. 3立式. 【図23:数値の違いによる比較(液量問題)】. 一51一. 4解答.
(56) 100% 一. 融一. 血. 80%. 欄 “糠.. 60%. 騨. 1. 40% 20%. 0%. 1.質問文理解2.情報の統合. 3立式. 4解答. 【図24:割合の値による比較(長さ問題)】. 100% 80% 魅鮎. 60%. 40%. ㍉. 1. カ一一唖塑些し」. 20%. 0% 1質問文理解. 2情報の統合. 3立式. 4解答. 【図25:割合の値による比較(生産問題)】. 上の3つのグラフに共通して見られる特徴は、①と②のグラフに大きなずれが生じてい ないことである。これは、第1用法の問題構造においては、数値の違い(①、②)による 下位過程での正答率の変化が、どの文脈でも(異なる文脈でも)生じていないことを示す。 すなわち、第一用法では、数値の違いによる正答率の変化が下位過程で生じないといえる。. 3つのグラフを見ると、第1用法の問題は全て「3,立式」の過程でつまずいている。こ れは数値が違っても変わらないが、児童の誤答には数値が違うことによって、誤答の種類 に違いが出ていた。. 一52一.
(57) 【表23】は第1用法の問題での児童の誤答の種類をまとめたものである。. 【表23:第1用法の誤答一覧】 液量問題. 数値の組み合わせ①. 数値の組み合わせ②. 長さ問題. 生産問題. かけ算 3人. 空白. 言葉の式 1人. 空白. かけ算 1人. かけ算. 1人. 逆. 小数点. 1人. ひき算 1人. ひき算. 1人. たし算 1人. かけ算. 4人. 空白. 空白. 2人. 空白 逆. 2人 1人. 逆. 2人. 11人. 1人. 4人 3人. かけ算 2人. 空白 逆. 6人 5人. かけ算 3人. ひき算. 1人. ひき算 2人. たし算. 1人. たし算 1人. (表中の「逆」は除数と被除数を逆に立点したものを表す) 数値の組み合わせ①では、かけ算と空白が3つの文脈に共通してみられる誤答である。 問題構造別での比較でも述べたように、この原因は「何倍」という単語からかけ算を連想 したのだと考えられる。. 数値の組み合わせ②になると、除数と被除数を逆にする誤答が3つの文脈で見られるよ うになる。この「逆」の誤答をした児童の解答をみると、数値の組み合わせ①の場合は他 の第一用法では正解していて、数値の組み合わせ②になると逆に解答をしていることが確 認できた。「被除数〉除数」の場合は正解して、「被除数く除数」の場合は逆に立式して不 正解になっているのである。言い換えると、「大きい数÷小さい数」なら立式できるが、「小. さい数÷大きい数」なら逆に立式して、誤答することが増えるのである。これは、わり算 は必ず「大きい数÷小さい数」になると思っている児童がいる可能性を表していると考え られる。. 一53一.
(58) (第2用法). 【図26】は、「液量第二」の正答率を数値の組み合わせ①,②別に示したものである。. 100% .トー→ 歳. 80%. 饗\、 穰. 60%. 40% 20% 0% 1.質問文理解. 2.情報の統合. 3立式. 4解答. 【図26:割合の値による比較(液量第二)】. このグラフに見られる特徴は、「2,情報の統合」での正答率の差である。数値の組み合. わせ②は、「2,情報の統合」で大きく正答率を下げている。これは、割合Pが1未満にな ると「2,情報の統合」で児童は未知量と既知量の大小関係がわからなくなるということを あらわしている。. 「2,情報の統合」では、第2用法「B×P=AjのBとAの大小比較をさせている。そ の際、P>1(①の場合)とP<1(②の場合)の違いで、 BとAの大小を判断するのに難 易度の差が生じる。. しかし、前節で述べたように第二用法は問題文から、「∼倍→かけ算」と考えることで、 立式の方法がわかるため、「3,立式」以降の過程では,それ程正答率に差はできていない。. グラフから「2,情報の統合」過程をのぞく、その他の下位過程においては、数値の違い による難易度への影響は確認されない。次頁の【表24】は「液量第二」での「2,情報の統 合」「3,立式」での誤答の一覧を示している。. 一54一.
(59) 【表24=第2用法での誤答一覧】 2,情報の統合. 数値の組み合わせ①. 数値の組み合わせ②. 3,立式. 同じ. 2人. たし算 1人. ャさい. 1人. ャ数点. 多い. 5人. ッじ. 3人. 1人. わり算 1人. 1人 スし算. 1人. 1人. (注:図中の小数点は小数点の打ち間違い). (第3用法). 【図27】は、「液量第三」の正答率を数値の組み合わせ①,②別に示したものである。. 100% \ 嵐. 80%. 轡. \騒_ 鰹盟疋. 60%. 40%. 20%. 0% 1.質問文理解. 2.情報の統合. 3立式. 4解答. 【図27:割合の値による比較(液量第三)】. このグラフから見られる特徴は、「2,情報の統合」での正答率の差である。数値の組み. 合わせ②の方で、多くの児童がつまずいている。「2,情報の統合」では、第3用法「A÷. P=Bjの、 BとA大小比較をさせている。その際、 P>1(①の場合)とP<1(②の場. 一55一.
(60) 合)の違いで、BとAの大小を判断するのに難易度の差が生じる。 しかし、第3用法は第2用法と違い、問題文にわり算を連想させる言葉がないので、「3, 立式」の過程で、数値の組み合わせ①、②ともに正答率は同じぐらいになっている。. また,「液量第三」も数値の違いによって「2,情報の統合」以外の過程での難易度への 影響は見られない。. 【表25】は、「液量第三」での「2,情報の統合」「3,立式」での誤答の一覧を示してい る。. 【表25:第3用法での誤答一覧】 2,情報の統合. 数値の組み合わせ①. 3,立式. 同じ. 1人. かけ算. 4人. 多い. 1人. 小数点. 1人. ひき算. 1人. 空白. 数値の組み合わせ②. 1人. その他. 1人. 少ない 7人. かけ算. 6人. 同じ. 1人. たし算. 1人. 空白. 1人. 空白. 1人. その他. 1人. 問題構造ごとに見た、数値の違いによる問題への影響をまとめると、次のようになる。. ・第1用法では、特定の下位過程に影響を与えない ・第2用法・第3用法では、「2,情報の統合」の過程に影響を与える. 一56一.
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